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  • 特許-抵抗器及び抵抗器付きコンデンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】抵抗器及び抵抗器付きコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/00 20060101AFI20221219BHJP
   H01C 13/00 20060101ALI20221219BHJP
   H01C 1/034 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01C7/00 600
H01C13/00 C
H01C1/034
H01C7/00 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017239425
(22)【出願日】2017-12-14
(65)【公開番号】P2019106501
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591181908
【氏名又は名称】ミクロン電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】杉本 憲治
(72)【発明者】
【氏名】宮本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】永井 良二
【審査官】北原 昂
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-016174(JP,A)
【文献】特開2014-036145(JP,A)
【文献】特開2014-239095(JP,A)
【文献】特開2017-103945(JP,A)
【文献】特開2017-140979(JP,A)
【文献】特開2005-094942(JP,A)
【文献】特開平06-275402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/00
H01C 13/00
H01C 1/034
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載される主回路コンデンサに取り付けられる抵抗器であって、
セラミック材料からなる絶縁基板と、
該絶縁基板上に印刷され、前記主回路コンデンサの電荷を放電するための被膜抵抗素子と、
前記被膜抵抗素子を前記主回路コンデンサに並列接続可能にするため、前記絶縁基板上に印刷される回路パターンと
前記絶縁基板に穿設され、該絶縁基板を前記主回路コンデンサのハウジングに装着するための複数の貫通孔とを備えることを特徴とする抵抗器。
【請求項2】
前記被膜抵抗素子と前記回路パターンとを覆うオーバーコートを備えることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項3】
前記被膜抵抗素子を複数備えると共に、前記回路パターンは、前記主回路コンデンサに接続するための複数の端子部を備えることを特徴とする請求項1又に記載の抵抗器。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載の抵抗器を前記主回路コンデンサのハウジングに装着したことを特徴とする抵抗器付きコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載されている主回路コンデンサの電荷を放電するための抵抗器及び抵抗器付きコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
図2に示すように、従来、電気自動車には、動力源であるモータ15を制御するため、高圧バッテリ12にインバータ装置11が接続される。このインバータ装置11に搭載される主回路コンデンサ13の両端の電圧は、車両の電源を切ってから所定時間内に目標の値まで低下させるため、主回路コンデンサ13の電荷を常時放電する通常時放電抵抗16が設けられる。
【0003】
また、電気自動車の衝突時等には、主回路コンデンサ13の両端電圧を急速に目標電圧まで低下させる必要があるため、急速放電抵抗17を設け、急速放電時には遮断用スイッチ18がオフとなり、放電用スイッチ19がオンとなる。
【0004】
上記通常時放電抵抗16や急速放電抵抗17として、例えば図3に示すセメント抵抗器21が用いられている。このセメント抵抗器21は、絶縁基板(不図示)と、絶縁基板上に印刷される被膜抵抗素子(不図示)と、被膜抵抗素子を主回路コンデンサ13(図2参照)に並列接続するためのリード線22及び端子26と、絶縁基板、被膜抵抗素子及びリード線22の一部を収容し、セメント24で封止される磁器ケース23と、磁器ケース23をモータ制御インバータ装置11(図2参照)に取り付けるため、爪25aによって磁器ケース23に装着されるブラケット25とを備える。
【0005】
このセメント抵抗器21は、リード線22及び端子26を介して主回路コンデンサ13から離れた位置に取り付け可能なため、熱に弱い主回路コンデンサ13への影響を考慮しなくて済むことから、放熱構造を小規模にできる分だけ小型化を図ることができる。しかし、セメント抵抗器21そのものの製造コストが高いことに加え、端子26の結線を人手を介して行う必要があり、取付コストが高くなることも加味する必要がある。
【0006】
一方、上記セメント抵抗器21と同様の用途に図4に示すセメント抵抗器31が用いられている。このセメント抵抗器31は、絶縁基板(不図示)と、絶縁基板上に印刷される被膜抵抗素子(不図示)と、被膜抵抗素子を主回路コンデンサ13に並列接続するための端子32と、絶縁基板、被膜抵抗素子及び端子32の一部を収容し、セメント33で封止される磁器ケース34と、磁器ケース34を主回路コンデンサ13(図2参照)のハウジング等に取り付けるための貫通孔35とを備える。
【0007】
このセメント抵抗器31は、セメント抵抗器21のリード線22をなくし、端子32を外部に露出させたため、端子32を介して主回路コンデンサ13のハウジング等に自動で取り付けることができ、上記セメント抵抗器21よりも取付コストを低く抑えることができる。しかし、主回路コンデンサ13のハウジング等に自動で取り付けるためには、端子32と貫通孔35の位置関係の精度を高める必要があり、上記セメント抵抗器21よりも製造コストが高くなるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載される抵抗器等の製造コスト及び取付コストの両方を低く抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載される主回路コンデンサに取り付けられる抵抗器であって、セラミック材料からなる絶縁基板と、該絶縁基板上に印刷され、前記主回路コンデンサの電荷を放電するための被膜抵抗素子と、前記被膜抵抗素子を前記主回路コンデンサに並列接続可能にするため、前記絶縁基板上に印刷される回路パターンと、前記絶縁基板に穿設され、該絶縁基板を前記主回路コンデンサのハウジングに装着するための複数の貫通孔とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る抵抗器は、絶縁基板の表面に被膜抵抗素子及び回路パターンを印刷しただけであるため、従来に比べ製造コストを大幅に低下させることができる。また、自動装着機ライン等を用い、回路パターンの端子部を主回路コンデンサのハウジングに設けられた主回路コンデンサ側の端子と半田等で接続することができるため、取付コストを低く抑えることもできる。さらに、被膜抵抗素子で発生した熱がそのまま外部に放出されるため、熱に弱い主回路コンデンサへの影響を最小限に抑え、抵抗器の小型化も可能である。また、上記抵抗器は、前記絶縁基板に穿設され、該絶縁基板を前記主回路コンデンサのハウジングに装着するための複数の貫通孔を備えるため、これら複数の貫通孔を利用し、自動装着機ライン等を用いて抵抗器を主回路コンデンサのハウジングに固定することができる。
【0012】
また、上記抵抗器は、前記被膜抵抗素子と前記回路パターンとを覆うオーバーコートを備えることができ、オーバーコートによって被膜抵抗素子と回路パターンを保護することができる。
【0013】
さらに、上記抵抗器は、前記被膜抵抗素子を複数備えると共に、前記回路パターンは、前記主回路コンデンサに接続するための複数の端子部を備えることができる。
【0014】
また、本発明は、抵抗器付きコンデンサであって、上記いずれかの抵抗器を前記主回路コンデンサのハウジングに装着したことを特徴とする。これによって、製造コスト及び取付コストの両方を低く抑えた抵抗器付きコンデンサを提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、電気自動車のモータ制御インバータ装置に搭載される抵抗器等の製造コスト及び取付コストの両方を低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかる抵抗器を示す図であって、(a)は平面図、(b)は下側面図、(c)は右側面図である。
図2】電気自動車のモータ制御インバータ装置の構成を説明するための概略回路図である。
図3】従来の抵抗器を示す図であって、(a)は平面図、(b)は下側面図、(c)は右側面図である。
図4】従来の抵抗器を示す図であって、(a)は平面図、(b)は下側面図、(c)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明にかかる抵抗器の一実施の形態を示し、この抵抗器1は、絶縁基板2と、絶縁基板2の表面2aに印刷される常時放電抵抗としての被膜抵抗素子3と、被膜抵抗素子3をモータ制御インバータ装置に搭載される主回路コンデンサに並列接続するための回路パターン4と、被膜抵抗素子3と回路パターン4の一部を覆うオーバーコート5と、抵抗器1を主回路コンデンサのハウジング(不図示)に取り付ける際に用いる貫通孔6とを備える。
【0019】
絶縁基板2は、セラミック等の絶縁材料で矩形平板状に形成され、その表面2aには被膜抵抗素子3及び回路パターン4が印刷される。また、絶縁基板2の左右両側には貫通孔6が穿設され、回路パターン4の端子部4a~4dの内側には貫通孔7が穿設される。貫通孔6、7は絶縁基板2の焼成前の柔らかい状態で穿設され、被膜抵抗素子3及び回路パターン4は、焼成後に印刷される。
【0020】
被膜抵抗素子3は、上記常時放電抵抗16(図2参照)として機能するものであって、その抵抗値は例えば100kΩ程度である。
【0021】
回路パターン4は、銀、銅、ニッケル等からなり、被膜抵抗素子3の両端に2つずつ、又はそれ以上の複数の端子部4a~4dを有する。
【0022】
オーバーコート5は、被膜抵抗素子3及び回路パターン4の表面を保護するため、これらの表面を覆うものであって、ガラスペースト等を塗布した後硬化させたものである。
【0023】
貫通孔6は、上述のように、絶縁基板2の焼成前の柔らかい状態で穿設され、焼成後も正確な位置決めが可能であるため、自動装着機ライン等を用いて抵抗器1を主回路コンデンサのハウジング(不図示)に固定することができる。
【0024】
上記構成を有する抵抗器1は、絶縁基板2の表面に被膜抵抗素子3及び回路パターン4を印刷し、装着用の貫通孔6を穿設しただけの簡単な構成であり、従来のようにセメントを充填する必要もないため、上記セメント抵抗器21、31に比較して製造コストを大幅に低下させることができる。
【0025】
また、抵抗器1を主回路コンデンサのハウジングに取り付ける際には、自動装着機ラインを用い、ハウジング側から突出する樹脂等からなる突起を貫通孔6に挿入した後、貫通孔6から突出した頂部を溶かすなどして絶縁基板2に固定し、さらに回路パターン4の端子部4a~4dを主回路コンデンサのハウジングに設けられた主回路コンデンサ側の端子と半田等で接続する。これによって、自動的に抵抗器1の固定と端子接続を行うことができ、取付コストを低く抑えることができる。
【0026】
尚、上記実施の形態においては、絶縁基板2の表面2aに常時放電抵抗としての被膜抵抗素子3を設けたが、これに代えて、急速放電抵抗17(図2参照)として例えば100~500Ω程度の被膜抵抗素子を設けてもよい。また、被膜抵抗素子3を複数設けてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 抵抗器
2 絶縁基板
2a 表面
3 被膜抵抗素子
4 回路パターン
4a~4d 端子部
5 オーバーコート
6、7 貫通孔
図1
図2
図3
図4