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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電動工具
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/215 20160101AFI20221219BHJP
【FI】
H02K11/215
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018068827
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019180165
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(74)【代理人】
【識別番号】100124420
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】青山 清
【審査官】一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-116267(JP,A)
【文献】特開2016-178751(JP,A)
【文献】特開2009-112121(JP,A)
【文献】国際公開第2014/027631(WO,A1)
【文献】特開平9-308152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、前記ロータの回転を検出するセンサ回路基板と、を有するブラシレスモータを備えた電動工具であって、
前記ロータは、筒状又は柱状のロータコアと、前記ロータコアの軸方向に延びて周方向に並ぶように前記ロータコアに保持された複数の永久磁石と、を備えており、
前記センサ回路基板は、前記ロータコアの第1端部に隣接しており、
前記ロータコアは、
断面半円状であって各前記永久磁石の周方向における各端部において曲面が当該端部と対向するように配置されたフラックスバリアと、
各前記フラックスバリアの外側に配置された半円筒状の膨出部と、
隣接する前記永久磁石の各間の外方の側面において、前記第1端部から、前記ロータコアの軸方向に延びる溝部と、
を有しており、
各前記溝部は、隣接する前記膨出部の間に配置されていて、半円筒状に丸められており、
前記膨出部の外面の曲率半径中心と前記フラックスバリアの曲面の曲率半径中心とが一致しており、
各前記膨出部の側面は、前記フラックスバリアにおける前記永久磁石に対向する面と平行である部分を有している
ことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
各前記溝部は、前記第1端部に対向する第2端部に達している
ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
各前記溝部は、前記第1端部に対向する第2端部に達しない
ことを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項4】
前記ロータコアの軸方向における各前記溝部の長さは、1.2ミリメートル以上である
ことを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
各前記溝部及び各前記膨出部は、前記ロータの外部に配置されるステータに対して露出している
ことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載の電動工具。
【請求項6】
前記永久磁石は、4個あり、
前記膨出部は、8本あり、
前記溝部は、4本ある
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載の電動工具。
【請求項7】
ステータと、前記ステータの内方で前記ステータに対して回転可能なロータと、前記ロータの回転を検出するセンサ回路基板と、を有するブラシレスモータを備えた電動工具であって、
前記ロータは、複数の貫通孔を有する筒状のロータコアと、前記ロータコアの軸方向に延びて周方向に並ぶように各前記貫通孔に入れられた複数の永久磁石と、を備えており、
前記センサ回路基板は、前記ロータコアの第1端部に隣接しており、
前記ロータコアは、
各前記永久磁石の両端の径方向外側に配置されており、断面半円状であるフラックスバリアと、
各前記フラックスバリアの外側に配置された膨出部と、
隣接する前記永久磁石の各間の外方の側面において、前記第1端部から、前記ロータコアの軸方向に延びる溝部と、
を有しており、
各前記溝部は、隣接する前記膨出部の間に配置されていて、半円筒状に丸められており、
前記ロータコアは、複数の鋼板が積層されて形成されていて、モータ軸により貫通されており、
前記モータ軸と各前記溝部との間には、隣接する前記鋼板と連結するためのかしめ部が配置されている
ことを特徴とする電動工具。
【請求項8】
ステータと、前記ステータの内方で前記ステータに対して回転可能であるロータと、前記ロータの回転を検出するセンサ回路基板と、を有するブラシレスモータを備えた電動工具であって、
前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに対して固定される複数のコイルと、を備えており、
前記ロータは、モータ軸と、筒状のロータコアと、前記ロータコアの軸方向の延びるように前記ロータコアに保持された第1永久磁石、第2永久磁石、第3永久磁石、及び第4永久磁石と、を備えており、
前記ロータコアは、
(1)中央に設けられており前記モータ軸が挿入されるモータ軸孔と、
(2)前記モータ軸孔の径方向外側にそれぞれ配置される、前記第1永久磁石が入る第1貫通孔、前記第2永久磁石が入る第2貫通孔、前記第3永久磁石が入る第3貫通孔、及び前記第4永久磁石が入る第4貫通孔と、
(3)前記第1貫通孔の両端の径方向外側に配置されており、断面半円状である第1フラックスバリア及び第2フラックスバリアと、前記第2貫通孔の両端の径方向外側に配置されており、断面半円状である第3フラックスバリア及び第4フラックスバリアと、前記第3貫通孔の両端の径方向外側に配置されており、断面半円状である第5フラックスバリア及び第6フラックスバリアと、前記第4貫通孔の両端の径方向外側に配置されており、断面半円状である第7フラックスバリア及び第8フラックスバリアと、
(4)前記第1フラックスバリアが配置される第1の膨出部と、前記第2フラックスバリアが配置される第2の膨出部と、前記第3フラックスバリアが配置される第3の膨出部と、前記第4フラックスバリアが配置される第4の膨出部と、前記第5フラックスバリアが配置される第5の膨出部と、前記第6フラックスバリアが配置される第6の膨出部と、前記第7フラックスバリアが配置される第7の膨出部と、前記第8フラックスバリアが配置される第8の膨出部と、
(5)前記第1の膨出部と前記第8の膨出部との間に形成される半円筒状に丸められた第1の溝部と、前記第2の膨出部と前記第3の膨出部との間に形成される半円筒状に丸められた第2の溝部と、前記第4の膨出部と前記第5の膨出部との間に形成される半円筒状に丸められた第3の溝部と、前記第6の膨出部と前記第7の膨出部との間に形成される半円筒状に丸められた第4の溝部と、
を有しており、
前記第1の膨出部と前記第2の膨出部との間には、第1の面取部及び第2の面取部が形成されており、前記第3の膨出部と前記第4の膨出部との間には、第3の面取部及び第4の面取部が形成されており、前記第5の膨出部と前記第6の膨出部との間には、第5の面取部及び第6の面取部が形成されており、前記第7の膨出部と前記第8の膨出部との間には、第7の面取部及び第8の面取部が形成されている
ことを特徴とする電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバドリルを始めとする電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-123515号公報(特許文献1)に示されるように、ブラシレスモータを用いたドライバドリルが知られている。
このドライバドリルのブラシレスモータは、円筒状のステータ及びその内方に配置された円柱状のロータを有している。
ステータは、6個のコイルと、センサ回路基板と、を有している。
ロータは、複数の鋼板が積層されたロータコアと、ロータコアの中心に挿通され一体化されたモータ軸と、ロータコアにおいてその軸方向に形成された4つの貫通孔にそれぞれ挿入される4個の永久磁石と、を備えている。4個の永久磁石は、四角柱の4つの側面の各中央部を占めるように配置され、周方向(回転方向)において極が揃えられている。
【0003】
ロータコアの外周面であって、各永久磁石の両端外側に位置する部分には、ロータ製造時(ロータコアへの永久磁石の挿入時)にロータコアの位置決めを行う目的で、合計8つの面取部が設けられる(図5(A))。隣接する永久磁石の端部を挟む面取部間の内部であって、各永久磁石の端部の隣接部分には、磁束の通過を抑制して磁束の向き等を調整するフラックスバリアが設けられている。あるいは、ロータコアの外周面であって、各永久磁石の両端外側に位置する部分には、同様な目的で、合計4つの断面V字状の凹溝が設けられる(図5(B))。この場合、凹溝が磁束の流れ等を調整するため、ロータコア内部にフラックスバリアは設けられない。
【0004】
ブラシレスモータは、マイコンによって、次のように回転される。即ち、マイコンは、センサ回路基板の回転検出素子から出力される永久磁石の位置を示す回転検出信号を得てロータの回転状態を取得し、取得した回転状態に応じてコイルに対し順番に電流を流して、永久磁石にコイルの磁力を作用させる。
マイコンは、一般に、回転方向において隣接する永久磁石の端部間が最接近する時点前後において回転検出素子が検出するN極とS極との極の切り替わりによって、ロータの回転状態を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-123515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のドライバドリルのブラシレスモータの内、ロータコアに面取部が設けられる図5(A)のものでは、隣接する永久磁石の端部を挟む面取部間が、フラックスバリアを含んでおり、他の部分に対して径方向外方に突出している。よって、回転検出素子は、極の切り替わりの時点において、極の反転Rを検出する。かような極の反転Rは、回転検出信号の精度に影響を及ぼし得る。かような影響を軽減するため、回転検出素子と永久磁石との距離を大きくして反転Rがほぼ検出されないようにすることが考えられるが、その分スペースが必要となるし、全体的な回転検出信号の精度に影響が及ぶこととなるし、出力増加のためにコイルの磁力(ブラシレスモータの電力)が大きくされるほど回転検出素子による永久磁石の位置の検出が困難になる。
他方、ロータコアに凹溝が設けられる図5(B)のものでは、凹溝が他の部分に対して径方向内方に窪んでいる。よって、回転検出素子は、極の切り替わりの時点において、極の反転Rを検出しない。しかし、図5(A)のものに比べて、図5(B)のものでは凹溝の分だけロータのトルクが減少し、具体的には図5(A)のもののトルクを100とすると、図5(B)のもののトルクが99.5となる。
【0007】
本発明の主な目的は、ブラシレスモータにおけるロータの回転検出の精度が良好である電動工具を提供することである。
又、本発明の主な目的は、ブラシレスモータにおけるロータのトルクが確保される電動工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、ロータと、前記ロータの回転を検出するセンサ回路基板と、を有するブラシレスモータを備えた電動工具であって、前記ロータは、筒状又は柱状のロータコアと、前記ロータコアの軸方向に延びて周方向に並ぶように前記ロータコアに保持された複数の永久磁石と、を備えており、前記センサ回路基板は、前記ロータコアの第1端部に隣接しており、前記ロータコアは、断面半円状であって各前記永久磁石の周方向における各端部において曲面が当該端部と対向するように配置されたフラックスバリアと、各前記フラックスバリアの外側に配置された半円筒状の膨出部と、隣接する前記永久磁石の各間の外方の側面において、前記第1端部から、前記ロータコアの軸方向に延びる溝部と、を有しており、各前記溝部は、隣接する前記膨出部の間に配置されていて、半円筒状に丸められており、前記膨出部の外面の曲率半径中心と前記フラックスバリアの曲面の曲率半径中心とが一致しており、各前記膨出部の側面は、前記フラックスバリアにおける前記永久磁石に対向する面と平行である部分を有していることを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、各前記溝部は、前記第1端部に対向する第2端部に達していることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記溝部は、前記第1端部に対向する第2端部に達しないことを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、上記発明において、前記ロータコアの軸方向における各前記溝部の長さは、1.2ミリメートル以上であることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、上記発明において、各前記溝部及び各前記膨出部は、前記ロータの外部に配置されるステータに対して露出していることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、前記永久磁石は、4個あり、前記膨出部は、8本あり、前記溝部は、4本あることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、ステータと、前記ステータの内方で前記ステータに対して回転可能なロータと、前記ロータの回転を検出するセンサ回路基板と、を有するブラシレスモータを備えた電動工具であって、前記ロータは、複数の貫通孔を有する筒状のロータコアと、前記ロータコアの軸方向に延びて周方向に並ぶように各前記貫通孔に入れられた複数の永久磁石と、を備えており、前記センサ回路基板は、前記ロータコアの第1端部に隣接しており、前記ロータコアは、各前記永久磁石の両端の径方向外側に配置されており、断面半円状であるフラックスバリアと、各前記フラックスバリアの外側に配置された膨出部と、隣接する前記永久磁石の各間の外方の側面において、前記第1端部から、前記ロータコアの軸方向に延びる溝部と、を有しており、各前記溝部は、隣接する前記膨出部の間に配置されていて、半円筒状に丸められており、前記ロータコアは、複数の鋼板が積層されて形成されていて、モータ軸により貫通されており、前記モータ軸と各前記溝部との間には、隣接する前記鋼板と連結するためのかしめ部が配置されていることを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、ステータと、前記ステータの内方で前記ステータに対して回転可能であるロータと、前記ロータの回転を検出するセンサ回路基板と、を有するブラシレスモータを備えた電動工具であって、前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアに対して固定される複数のコイルと、を備えており、前記ロータは、モータ軸と、筒状のロータコアと、前記ロータコアの軸方向の延びるように前記ロータコアに保持された第1永久磁石、第2永久磁石、第3永久磁石、及び第4永久磁石と、を備えており、前記ロータコアは、(1)中央に設けられており前記モータ軸が挿入されるモータ軸孔と、(2)前記モータ軸孔の径方向外側にそれぞれ配置される、前記第1永久磁石が入る第1貫通孔、前記第2永久磁石が入る第2貫通孔、前記第3永久磁石が入る第3貫通孔、及び前記第4永久磁石が入る第4貫通孔と、(3)前記第1貫通孔の両端の径方向外側に配置されており、断面半円状である第1フラックスバリア及び第2フラックスバリアと、前記第2貫通孔の両端の径方向外側に配置されており、断面半円状である第3フラックスバリア及び第4フラックスバリアと、前記第3貫通孔の両端の径方向外側に配置されており、断面半円状である第5フラックスバリア及び第6フラックスバリアと、前記第4貫通孔の両端の径方向外側に配置されており、断面半円状である第7フラックスバリア及び第8フラックスバリアと、(4)前記第1フラックスバリアが配置される第1の膨出部と、前記第2フラックスバリアが配置される第2の膨出部と、前記第3フラックスバリアが配置される第3の膨出部と、前記第4フラックスバリアが配置される第4の膨出部と、前記第5フラックスバリアが配置される第5の膨出部と、前記第6フラックスバリアが配置される第6の膨出部と、前記第7フラックスバリアが配置される第7の膨出部と、前記第8フラックスバリアが配置される第8の膨出部と、(5)前記第1の膨出部と前記第8の膨出部との間に形成される半円筒状に丸められた第1の溝部と、前記第2の膨出部と前記第3の膨出部との間に形成される半円筒状に丸められた第2の溝部と、前記第4の膨出部と前記第5の膨出部との間に形成される半円筒状に丸められた第3の溝部と、前記第6の膨出部と前記第7の膨出部との間に形成される半円筒状に丸められた第4の溝部と、を有しており、前記第1の膨出部と前記第2の膨出部との間には、第1の面取部及び第2の面取部が形成されており、前記第3の膨出部と前記第4の膨出部との間には、第3の面取部及び第4の面取部が形成されており、前記第5の膨出部と前記第6の膨出部との間には、第5の面取部及び第6の面取部が形成されており、前記第7の膨出部と前記第8の膨出部との間には、第7の面取部及び第8の面取部が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の主な効果は、ブラシレスモータにおけるロータの回転検出の精度が良好である電動工具が提供されることである。
又、本発明の主な効果は、ブラシレスモータにおけるロータのトルクが確保される電動工具が提供されることである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1形態に係る震動ドライバドリルの右側面図(一部中央縦断面図)である。
図2図1の一部拡大図である。
図3図1におけるステータの斜視図である。
図4図1のロータの斜視図である。
図5】(a)は図4の側面図であり、(b)は(a)のA-A線断面図である。
図6】(a)は図5から45°回転した場合の側面図であり、(b)は(a)のB-B線断面図である。
図7図4のロータコアの前面図である。
図8】(a)は本発明において1個の回転検出素子がロータの半回転の間に検知する磁束密度を示すグラフであり、(b)は比較例1における(a)と同様のグラフである。
図9】(a)は凹溝の前後方向の長さL=0.9mm,1.0mm,1.5mmとした3つの場合に係る、図8(a)と同様のグラフであり、(b)は(a)の一部拡大図である。
図10】本発明の第2形態に係る震動ドライバドリルのロータの図4同様図である。
図11】第2形態に係る図5同様図である。
図12】第2形態に係る図6同様図である。
図13】第2形態に係る図7同様図である。
図14】第2形態に係る図8(a)同様図である。
図15】本発明の第3形態に係る震動ドライバドリルのロータの図4同様図である。
図16】第3形態に係る図5同様図である。
図17】第3形態に係る図6同様図である。
図18】第3形態に係る図7同様図である。
図19】第3形態に係る図8(a)同様図である。
図20】第3形態に係る図9同様図(但し溝部の前後方向の長さL2=1.1mm,1.2mm,1.3mmに関する)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態及びその変更例が、適宜図面に基づいて説明される。当該形態及び変更例における前後上下左右は、説明の便宜上定めたものであり、作業の状況及び移動する部材の状態等により変化することがある。又、本発明は、下記の形態及び変更例に限定されない。
【0012】
[第1形態]
図1は、本発明の第1形態に係る、電動工具の一例である震動ドライバドリル1の右側面図(一部中央縦断面図)である。図2は、図1の一部拡大図である。
震動ドライバドリル1は、中心軸を前後方向とする筒状の本体部2と、本体部2の下部から下方へ突出するように形成されたハンドル部3と、を有する。
本体部2の前端には、先端部においてビット(先端工具)を把持可能な先端工具保持部としてのドリルチャック4が設けられる。尚、図1において、右が前となる。
又、ハンドル部3の下端には、電源となるバッテリパック5が装着されている。
本体部2の後半部分及びハンドル部3の外郭であるモータハウジング6は、半割の左モータハウジング6a及び右モータハウジング6bを、複数の左右方向のネジ7によって組み付けることで形成されている。
モータハウジング6の後方には、上下左右に広がる円盤状のキャップハウジング8が、複数(上下2箇所)の前後方向のネジ10により組み付けられている。
【0013】
モータハウジング6における本体部2の後部内には、ブラシレスモータ20が保持されている。
ブラシレスモータ20は、図3にも示される筒状のステータ22と、図4ないしは図6にも示される、円柱状のロータ24と、を備えている。ロータ24は、ステータ22の内部に配置され、ステータ22に対して回転可能であり、インナロータ型となっている。ロータ24は、モータ軸26を備えている。
【0014】
ブラシレスモータ20の前側には、遊星歯車機構30、クラッチ機構(図示略)、振動機構(図示略)、及びスピンドル(図示略)が順次保持されている。遊星歯車機構30は、ギヤケース31を介して、モータハウジング6に保持されている。クラッチ機構、振動機構、及びスピンドルは、前ハウジング32に保持されている。前ハウジング32は、複数の前後方向のネジ33により、モータハウジング6の上前部に組み付けられている。
遊星歯車機構30は、ブラシレスモータ20のモータ軸26の回転を減速してスピンドルに伝達する。ドリルチャック4は、スピンドルに装着される。
ギヤケース31の後部の開口部は、上下左右に広がる板状のキャップ34で覆われている。キャップ34の中央には、モータ軸26を回転可能に支持する前モータ軸受35が保持されている。他方、キャップハウジング8の中央には、モータ軸26を回転可能に支持する後モータ軸受36が保持されている。
又、モータ軸26の前端部には、ピニオン37が固定されている。ピニオン37は、遊星歯車機構30の1段目の遊星歯車と噛み合っている。尚、ピニオン37は、モータ軸26の先端部に形成された歯とされても良い。
前ハウジング32の前方には、モード切替リング38と、クラッチ調整リング39とが、順次設けられている。クラッチ調整リング39の前方に、ドリルチャック4が配置されている。
【0015】
本体部2の下方であってハンドル部3の上部には、モータハウジング6から露出したトリガ40が配置されている。トリガ40は、モータハウジング6に保持されたメインスイッチ(図示略)とつながっている。
メインスイッチの上方には、モータ軸26の回転方向を切り替える正逆切替ボタン42が設けられ、その前方には、ドリルチャック4の前方を照射するLED(図示略)が斜め上向きに収容されている。
本体部2の上部であって遊星歯車機構30の上方には、ドリルチャック4の回転速度を切り替える速度切替レバー44が配置されている。
【0016】
ハンドル部3の下端には、バッテリパック5が前方からスライド装着される装着部50が形成される。
装着部50内には、バッテリパック5が電気的に接続される装着部側端子を備えた端子台(図示略)と、コントローラ(図示略)とが保持されている。コントローラは、制御回路基板と、これを保持するコントローラケースとを有する。制御回路基板は、ブラシレスモータ20を制御するマイコン及び6個のスイッチング素子等を備えており、メインスイッチ及びブラシレスモータ20のステータ22と電気的に接続されている。
装着部50の左右には、吊り下げ用のフック(図示略)を取り付けるフック取り付け部52(右側のみ図1に示される)が設けられる。
バッテリパック5には、10本の充電池セルを含み18Vの電圧を印加可能である充電池(図示略)と、装着時に装着部側端子と接続されるバッテリ側端子(図示略)と、装着時に装着部50の被係止部に係止する抜け止め用のバッテリ爪(図示略)と、バッテリ爪の係止解除操作を行うボタン(図示略)と、が設けられる。
【0017】
そして、三相のブラシレスモータ20のステータ22は、前後方向を軸方向とした筒状のステータコア60と、電気絶縁部材である前インシュレータ61及び後インシュレータ62と、複数(6個)のコイル64と、を有している。
ステータコア60は、上下左右に広がるリング状の複数の鋼板が前後方向に積層されて形成されている。ステータコア60は、その内周部において、内周部の他の部分に対して内方へ突出する6個のティース66が、周方向に等間隔で配置されている。
前インシュレータ61は、リング状の前部と、その前部からそれぞれ後方に半筒状に突出する6本の突出部とを有しており、ステータコア60の前端面に組み付けられている。当該突出部は、対応するティース66の側部を覆う。
後インシュレータ62は、リング状であり、ステータコア60の後端面に組み付けられている。
各コイル64は、前インシュレータ61及び後インシュレータ62を介して、対応するティース66に巻かれている。
【0018】
前インシュレータ61の前面には、他の部分に対しそれぞれ前方に突出して周方向に並ぶ一対の突起を有するヒュージング端子保持部68が、複数(6組)、周方向に等間隔に配置されている。各ヒュージング端子保持部68における一対の突起の径方向内側には、前後方向に延びる溝が形成されている。
又、ヒュージング端子保持部68の間(上下を除く4箇所)には、前方に円筒状に突出するネジボス(図示略)が配置されている。
更に、前インシュレータ61の後面であって、左右のヒュージング端子保持部68の後方の部分には、他の部分に対して後方に凹む上下一対の凹部70がそれぞれ設けられている(図3に右の一対の凹部70のみ示される)。又、前インシュレータ61における左右の凹部70を挟んだ上下側には、前インシュレータ61の前部における側周面の他の部分に対して径方向内方に三角形状に窪む第1窪み部72がそれぞれ形成されている(図3に右の一対の第1窪み部72のみ示される)。加えて、前インシュレータ61の前部における上部中央には、側周面の他の部分に対して径方向内方に四角形状に窪む第2窪み部74が形成されている。
【0019】
各ヒュージング端子保持部68には、金属製のヒュージング端子76が入れられている。各ヒュージング端子76は、ヒュージング端子保持部68における一対の突起の各溝に対して対応する辺部が入る板状のベース部と、その外面の後端部から径方向外方及び前方に連続的に延びる断面“J”字状の渡り線受入部とを有している。
各コイル64は、各ティース66に対し、1本の導線で順番に巻かれており、所定のコイル64の間において渡り線78が形成される。渡り線78は、ヒュージング端子保持部68の径方向外側、及びその一対の突起間に配置されたヒュージング端子76の渡り線受入部内を通っており、ヒュージング端子76によってヒュージングされることで、ヒュージング端子76と電気的に接続されている。
【0020】
前インシュレータ61の前面であって、各ヒュージング端子保持部68の内側には、ドーナツ状のセンサ回路基板80が取り付けられている。
センサ回路基板80は、前インシュレータ61の前部のネジボスに対応する透孔を備えた状態で径方向外方にそれぞれ突出する4つの突出部82を有しており、各突出部82の透孔内にネジボスが通されることで、前インシュレータ61の前部において位置決めされる。
センサ回路基板80は、ロータ24の回転位置を磁気により検出して回転検出信号を出力する複数(3個)の回転検出素子83(ホールIC)を搭載している。各回転検出素子83は、センサ回路基板80の下部から引き出された一対の回転検出信号線84(一部のみ図3に示される)と電気的に接続されている。
【0021】
センサ回路基板80の前側には、センサ回路基板80と略同径となるリング状の短絡部材90が取り付けられている。
短絡部材90は、センサ回路基板80の突出部82と同様に配置された円筒状のボス部92を備えている。各ボス部92は、前インシュレータ61の前部における対応するネジボスの前部と合わせられており、前後方向のネジ94が通されることで、前インシュレータ61に対して固定される。短絡部材90(各ボス部92)は、センサ回路基板80を押さえており、又はセンサ回路基板80に接触し若しくは隣接している。
短絡部材90は、樹脂製の短絡部材本体部96と、3本の円弧状(半円状)の板金部98とを有している。各板金部98の両端部には、径方向外方に突出する短絡片99が形成されている。各板金部98は、互いに接触しない状態で、又その弧の中心が前後方向に並ぶ状態で、短絡片99以外が短絡部材本体部96内となるように配置されている。短絡部材90は、各板金部98をインサートした状態で短絡部材本体部96を成形するインサート成形により形成される。各板金部98には、U相,V相,W相の何れかに係る電源線100(一部のみ図2及び図3に示される)が接続される。全3本の電源線100は、短絡部材90の下部から下方に引き出される。
各短絡片99は、対応するヒュージング端子76(ベース部の上端部)が入るスリットを有している。各短絡片99は、対応するヒュージング端子76と、ハンダ付けにより電気的に接合されている。これにより、点対称に位置するヒュージング端子76がそれぞれ板金部98で短絡され、隣接するコイル64間の各渡り線78が、3本の対角同士で電気的に接続される。よって、6個のコイル64は、パラ巻きのデルタ結線となる。
尚、ヒュージング端子76,センサ回路基板80,短絡部材90及びネジ94の少なくとも何れかは、ステータ22の構成要素とされても良い。
【0022】
ブラシレスモータ20(ステータ22)は、モータハウジング6の内面から内方に突出した複数のモータ支持リブ102によって保持されている。
又、各凹部70(ステータ22の側面において凹部70とステータコア60前面とで形成された径方向内方への穴)には、モータハウジング6の内面から内方に突出した突起(図示略)が入っており、ブラシレスモータ20は、前後方向(軸方向)及び周方向(軸周りの方向)に位置決めされる。
尚、ブラシレスモータ20がマルノコ等に使用される筒型ハウジングに保持される場合には、第1窪み部72及び第2窪み部74に対して筒型ハウジング内のリブが入るようにして、ブラシレスモータ20の位置決めが行える。
【0023】
ロータ24は、モータ軸26と、ピニオン37と、円筒状のロータコア110(図7)と、ロータコア110の内部に固定される4個の板状の永久磁石(焼結磁石)112と、ストッパ部材としての前ストッパ114及び後ストッパ116と、ファン118と、を有する。尚、前ストッパ114,後ストッパ116及びファン118の少なくとも何れかは、省略されても良い。又、ファン118は、ロータ24(ブラシレスモータ20)とは別の構成要素とされても良い。
【0024】
ロータコア110は、モータ軸26の周囲に同軸状に配置され、モータ軸26に貫通される。ロータコア110は、複数(80枚)の鋼板が積層されて形成されている。各鋼板は、上下左右に広がっており、隣接する鋼板と連結するためのかしめ部120を有する。
各永久磁石112は、ロータコア110の横断面(上下左右に広がる面)でモータ軸26を中心とした正方形の四辺の各角部以外にそれぞれ位置するように形成された貫通孔の何れかに挿入されており、ロータコア110内において接着剤による接着及び圧入の少なくとも一方により固定されている。各永久磁石112は、モータ軸26の軸方向に延びる。
【0025】
ロータコア110に係る80枚の鋼板の内の前の5枚の鋼板における、永久磁石112に係る正方形の各角部には、径方向内方に三角形状に凹む凹み部(特開2015-123515号公報の図5(B)と同様)が形成されており、これらが積層されることで、ロータコア110の前端部に、前後方向の凹溝122が形成される。凹溝122の前後方向の長さLは、1.0mm(ミリメートル)である。
ロータコア110に係る残りの75枚の鋼板における、各永久磁石112の両端部には、横断面がロータコア110の径方向外方に窄む半三角形状(特開2015-123515号公報の図5(A)の空間54aと同様)のフラックスバリア(空隙)124が設けられている。各フラックスバリア124は、永久磁石112の径方向外方の角部から永久磁石112の肉厚の3分の2程度内方の箇所にかけて設けられている。ロータコア110における、隣接する一対のフラックスバリア124の外側(回転方向で隣接する永久磁石112間の外方)は、ロータコア110の側面の他の部分に対して径方向外方に膨らむ膨出部125となっている。各膨出部125の外形は円弧状となっている。各膨出部125の前端は、凹溝122の後端となっており、凹溝122は、ロータコア110の前端部のみに配置される。あるいは、凹溝122は、各膨出部125の前端部に形成されている、と捉えられても良い。即ち、凹溝122は、ロータコア110のセンサ回路基板80に隣接する前端部から、後端部に達しない状態で設けられる。
ロータコア110に係る前の5枚の鋼板においては、凹み部(凹溝122)が形成されるため、各永久磁石112の両端部にフラックスバリア124は形成されず、鋼板と各永久磁石112の両端部とは(適宜接着剤を介して)互いに接触している。前5枚の鋼板における各永久磁石112の両端部外側の部分の幅(凹溝122の内壁面と永久磁石112との距離)は、0.7mm以上0.8mm以下である。
他方、ロータコア110に係る後の75枚の鋼板における、各永久磁石112の両端部の径方向外側の部分の幅(フラックスバリア124の径方向外側における鋼板部分の幅)は、0.6mmである。
よって、ロータコア110に係る前の5枚の鋼板における、隣接する永久磁石112間の部分の大きさ(0.7mm)は、ロータコア110に係る後の75枚の鋼板における、隣接する永久磁石112間の部分の大きさ(0.6mm)よりも大きい。即ち、ロータコア110の凹溝122の壁体の肉厚(0.7mm)は、凹溝122の後方におけるフラックスバリア124の壁体の肉厚(0.6mm)より大きい。
【0026】
更に、前の5枚の鋼板における各凹み部の周方向の両外側の外形と、後の75枚の鋼板における4組の隣接するフラックスバリア124の両外側の外形とには、永久磁石112の外面と平行な直線状部分が設けられており、これらの直線状部分が前後に連なることで、永久磁石112の外面と平行であり、前後方向でロータコア110全体に延びる面取部126が形成されている。面取部126は、各膨出部125及び各凹溝122における周方向の両側に配置される。
尚、ロータコア110における各種の構成は様々に変更可能であり、各種鋼板の積層枚数、凹溝122の長さL、凹溝122の壁体の肉厚、凹溝122の個数、凹溝122の配置、フラックスバリア124の壁体の肉厚、面取部126の前後方向の長さ、及び面取部126の幅の少なくとも何れかが、上述のものに対して増減されたり変更されたりしても良い。
又、以下、ロータコア110における後の75枚の鋼板と同等の鋼板が80枚積層されて成る本発明に属さないロータコアが、比較例1とされ、ロータコア110における前の5枚の鋼板と同等の鋼板(但し凹溝122の壁体の肉厚が0.6mmである)が80枚積層されて成る本発明に属さないロータコアが、比較例2とされる。
【0027】
前ストッパ114は、円筒状で金属(真鍮)製の部材であり、ロータコア110と隙間を空けた状態で、モータ軸26に同軸状に固定され、ロータコア110と前モータ軸受35との間に配置されている。前ストッパ114の外径は、ロータコア110の外径よりも小さい。又、前ストッパ114の外径は、各永久磁石112の内接円の径よりも大きく、各永久磁石112の前方に前ストッパ114が位置するようになっている。前ストッパ114は、前端部の外径が中心部の外径よりも小さい段付き形状となっており、前端部が前モータ軸受35の内輪のみに当接して、外輪との干渉が避けられている。
後ストッパ116は、ロータコア110と同じ外径を有する円盤状で金属(真鍮)製の部材であり、モータ軸26に同軸状に固定され、ロータコア110とファン118との間に配置されている。ロータコア110は、後ストッパ116の前面に固定される。
前ストッパ114の外周には、バランスを調整するための切り欠き127が形成されている。尚、前ストッパ114に代えて、あるいは前ストッパ114と共に、後ストッパ116に切り欠き127が形成されても良い。又、バランスが整っていれば、前ストッパ114の切り欠き127及び後ストッパ116の切り欠き127の内の少なくとも一方が省略されても良い。
【0028】
ファン118は、複数のフィンを有する遠心ファンであり、モータ軸26に同軸状に固定され、後モータ軸受36と後ストッパ116の間に配置されている。
ファン118の径方向外方におけるキャップハウジング8の側面には、排気口128が形成されており、ステータ22の径方向外方におけるモータハウジング6の側面には、吸気口(図示略)が設けられている。
【0029】
センサ回路基板80の径方向内方には、前ストッパ114が位置している。センサ回路基板80の後面には、ロータコア110の前面が非接触状態で隣接している。
センサ回路基板80の各回転検出素子83は、ロータ24に配置された永久磁石112の位置を検出する(磁気センサ)。各回転検出素子83は、センサ回路基板80の後面において周方向で所定間隔を置いて配置され、ここでは上,左上,左下に配置される。
各回転検出素子83は、ロータコア110の各凹溝122に隣接可能であるように配置されている。即ち、回転軸(モータ軸26の前後方向の中心軸)からの径方向の距離が、各回転検出素子83と各凹溝122とで同様であるように、各回転検出素子83と各凹溝122とがそれぞれ配置される。ロータコア110は、各回転検出素子83側の部分であり各凹溝122が配置される前部と、その反対側の部分であり各凹溝122が配置されない後部とで、異なる形状を有している。
尚、センサ回路基板80に温度検出素子を搭載して、その温度検出信号がコントローラに送信されるようにし、コントローラは当該信号を監視して所定温度以上の温度が検出されたことを把握するとブラシレスモータ20の駆動を停止させるようにしても良い。この場合、ブラシレスモータ20の温度上昇を抑制することができ、特に18Vの震動ドライバドリル1では比較的に温度上昇が起き易いことから効果的に温度上昇を抑制することができる。
【0030】
各回転検出素子83は、自身の隣接部分(後側)の磁束密度を検出し、コントローラは、隣接する永久磁石112の間の部分(凹溝122)が各回転検出素子83の前側を通過するときに発生する極の切り替わりによってロータ24の回転位置を把握する。
図8(a)は、1個の回転検出素子83がロータ24の半回転の間に検知する磁束密度(N極を正としS極を負とする)を示すグラフである。当該グラフの縦軸は磁束密度(単位T(テスラ))であり、横軸は磁束密度が0であるときを0°とした場合のロータ24の回転角度(ロータ角,単位°)である。震動ドライバドリル1の回転検出素子83が検知する磁束密度において、極の切り替わり時(グラフ中央の磁束密度0の部分)の前後で極の反転Rが起きていない。
図8(b)は、上述の比較例1(フラックスバリアが前後方向全体に含まれるタイプ)における図8(a)と同様のグラフである。比較例1では、極の切り替わり時に、一旦逆方向に極が戻る極の反転Rが生じている。
比較例2では、検知される磁束密度の変遷は本発明と同様であり、当該変遷における極の切り替わり時に極の反転Rは生じない。しかし、比較例2のロータのトルクは、比較例1におけるロータのトルクを100とすると、99.5まで低下する。これに対し、本発明の第1形態に係るロータ24のトルクは、99.9であり、比較例1と同じ程度に維持される。
【0031】
震動ドライバドリル1の動作例は、次の通りである。
使用者によりトリガ40が引かれてメインスイッチがオンとされると、コントローラのマイコンが、センサ回路基板80の回転検出素子83から出力されるロータ24の永久磁石112の位置を示す回転検出信号を得てロータ24の回転状態を取得し、取得した回転状態に応じて各スイッチング素子のオンオフを制御し、ステータ22の各相のコイル64に対し順番に励磁電流を流すことでロータ24を回転させる。
回転検出信号は、極の切り替わりに基づいて把握されるところ、極の切り替わり時に反転Rが生じないため、より正確に把握されることとなる。よって、コイル64のスイッチングないしはロータ24の回転が精度良くなされ、ブラシレスモータ20がより正確に駆動される。
図9(a)は、凹溝122の前後方向の長さL=0.9mm,1.0mm,1.5mmとした3つの場合に係る、図8(a)と同様のグラフである。図9(b)は、図9(a)の一部拡大図である。
L=0.9mmの場合、極の切り替わり時に僅かに反転Rが認められる。L=1.0mm,1.5mmの場合、極の切り替わり時に反転Rは認められない。L=1.5mmの場合、極の切り替わりが他の場合に比べて急激である。
よって、凹溝122の前後方向の長さL=1.0mm以上であると、ブラシレスモータ20の十分に正確な駆動が確保される。
他方、凹溝122の前後方向の長さLを短くするほど、凹溝122不設置時のロータのトルクに対するロータ24のトルクの低下が、より抑制される。
【0032】
かような制御により、ブラシレスモータ20が駆動されてモータ軸26が回転し、遊星歯車機構30を介してスピンドル及びドリルチャック4が選択された動作モードに従い回転し、ドリルチャック4に装着され回転されたビットが被加工材に適用される。
動作モードに関し、モード切替リング38の操作により、設定トルクで回転伝達が遮断されるクラッチ機構が機能するドライバモードと、クラッチ機構が機能しないドリルモードと、スピンドルが前後に震動する震動モードとが選択可能である。又、クラッチ調整リング39の操作により、ドライバモードでクラッチ機構が作動するトルクの設定が可能である。
【0033】
モータ軸26の回転に伴ってファン118が回転すると、空気が排気口128から排出され、モータハウジング6の側面の吸気口からステータ22の外側及び内側(ロータ24との間)を通って排気口128に至る風が形成されて、ブラシレスモータ20が冷却される。
更に、ロータ24では、前後に前ストッパ114と後ストッパ116とが設けられているため、各永久磁石112の前後方向の移動が規制され、ロータコア110からの脱落が防止されて、ブラシレスモータ20が信頼性の高いものとなる。
【0034】
以上の第1形態に係る震動ドライバドリル1は、ロータ24と、ロータ24の回転を検出するセンサ回路基板80と、を有するブラシレスモータ20を備えており、ロータ24は、筒状のロータコア110と、ロータコア110の軸方向に延びるようにロータコア110内に保持された4個の永久磁石112と、を備えており、センサ回路基板80は、ロータコア110の前端部(第1端部)に隣接しており、ロータコア110は、隣接する永久磁石112の間の外方の側面において、前端部から、前端部に対向する後端部(第2端部)に達しない状態で、ロータコア110の軸方向に延びる凹溝122を有している。よって、センサ回路基板80におけるロータコア110の回転の検出精度が向上してブラシレスモータ20が正確に駆動され、ロータコア110のトルクが十分に確保され、動作が正確で出力がより大きい震動ドライバドリル1が提供される。
又、ロータコア110の軸方向における凹溝122の長さLは、1.0ミリメートル以上である。よって、ロータコア110の回転の検出精度が十分に良好となる。
【0035】
更に、震動ドライバドリル1は、モータ軸26と、モータ軸26の軸方向に延びる複数の永久磁石112と、モータ軸26に貫通されるロータコア110と、永久磁石112の回転を検出する回転検出素子83と、を備えており、ロータコア110は、回転検出素子83側の部分(前部)と、その反対側の部分(後部)とで異なる形状を有している。よって、センサ回路基板80におけるロータコア110の回転の検出精度が向上してブラシレスモータ20が正確に駆動され、ロータコア110のトルクが十分に確保され、動作が正確で出力がより大きい震動ドライバドリル1が提供される。
又、モータ軸26と、モータ軸26の軸方向に延びる複数の永久磁石112と、モータ軸26に貫通されるロータコア110と、永久磁石112の回転を検出する回転検出素子83と、を備えており、ロータコア110の形状によって、極の切り替わり時に、極の反転が起きないように構成されている。よって、センサ回路基板80におけるロータコア110の回転の検出精度が向上してブラシレスモータ20が正確に駆動され、ロータコア110のトルクが十分に確保され、動作が正確で出力がより大きい震動ドライバドリル1が提供される。
【0036】
尚、本発明の形態は上記第1形態に限定されず、例えば上記形態に対して次のような変更を適宜施すことができる。
ブラシレスモータ20に関し、ロータコア110は角筒状,円柱状若しくは角柱状であっても良いし、複数本のワイヤでコイル64が形成されても良いし、各相のコイル64がY結線されても良いし、極数及びティースの数の少なくとも一方が増減されても良いし、ロータ24は永久磁石112を埋め込むIPM方式に代えて永久磁石112を表面に配置するSPM方式で形成されても良いし、ロータ24の永久磁石112は平板状のものに代えて回転方向に沿って湾曲したものであっても良い。電源線100は、センサ回路基板80を介してステータ22(コイル64)に接続されても良い。センサ回路基板80を取り付けるためのネジ94には、圧入ピン及び爪付きピンの少なくとも一方が含まれて良い。センサ回路基板80における回転検出素子83の配置は、全周に亘るものを始めとして様々に変更することができる。回転検出信号線84は、ステータ22の軸方向に延ばしても良い。センサ回路基板80に、インバーター回路を形成するスイッチング素子が設けられても良い。この場合、スイッチング素子は、軸方向で回転検出素子83に重なる位置に配置しても良いし、軸方向で重ならない位置に配置しても良い。センサ回路基板80は、ステータコア60の後方に設けられても良い。
又、ロータコア110は、凹溝122の設置の有無以外の態様で、回転検出素子83側の部分と、その反対側の部分とで異なる形状を有するものとされても良い。更に、上述のロータコア110の形状以外の形状を有するロータコアによって、極の切り替わり時に、極の反転が起きないように構成されても良い。
【0037】
ファン118は、ステータ22よりも前方に配置しても良い。バッテリパック5は、10.8V、14.4V、18V(最大20V),25.2V,28V,36V等の10.8~36Vの任意のリチウムイオンバッテリを用いることができ、10.8V未満あるいは36Vを超える電圧のリチウムイオンバッテリを用いることもできるし、他の種類のバッテリを用いることもできる。
ハウジングの区分の数、遊星歯車の設置数及び段数、減速機構の段数、ボールの数、ローラの数、各種突体の数、突片の数、ネジの数、各種センサの数、並びに各種の信号線及び電源線の数の少なくとも何れかが増減されても良い。
メインスイッチの切替形式がトリガ40からボタンあるいはレバーに変更されたり、永久磁石112がコイル(電磁石)とされたりする等、各種部材の数、形式、材質、配置、大きさ等は適宜変更されても良い。
【0038】
又、出力軸(先端工具保持部)の方向が動力部の方向(モータの軸方向あるいはその回転力を伝達する機構の伝達方向)と異なる(略90度となる)アングル電動工具にも、本発明を適用することができる。更に、商用電源で駆動されるものを始めとする充電式(バッテリ駆動)でないドライバドリル、震動しないドライバドリル、インパクトドライバ、グラインダ、マルノコ、ハンマ、及びハンマドリル等の他の電動工具、並びにクリーナ、ブロワ、あるいは園芸用トリマを始めとする園芸工具等に、本発明が適用されても良い。
【0039】
[第2形態]
図10は、本発明の第2形態に係る震動ドライバドリルの図4同様図である。図11は、当該震動ドライバドリルの図5同様図である。図12は、当該震動ドライバドリルの図6同様図である。図13は、当該震動ドライバドリルの図7同様図である。
第2形態に係る震動ドライバドリルは、ロータを除き、第1形態と同様に成る。第1形態と同様である部材及び部分には、同じ符号が付されて、説明が適宜省略される。
【0040】
第2形態に係る震動ドライバドリルにおけるロータ204のロータコア210は、フラックスバリア224を有する同一形状の80枚の鋼板が積層されたものである。ロータコア210は、前後方向におけるセンサ回路基板80側の一部にわたる第1形態の凹溝122は設けられない。
各フラックスバリア224は、横断面が半円状である。各フラックスバリア224は、永久磁石112の径方向外方の角部から永久磁石112の肉厚の3分の2程度内方の箇所にかけて設けられている。各フラックスバリア224は、半円筒状の曲面が永久磁石112の端部と対向するように設けられている。
ロータコア210における各フラックスバリア224の外側の部分は、半円筒状に膨出した膨出部225となっている。膨出部225の外面、即ち膨出部225におけるロータコア210の側面は、半円筒状である。膨出部225は、前後方向においてロータコア210の全体にわたっている。周方向で隣接する膨出部225間は、溝部222となっている。膨出部225は8本あり、溝部222は4本ある。各溝部222は、半円筒状に丸められている。かような構成は、一対のフラックスバリア224を含んでおり第1形態の膨出部125と同様である4本の膨出部における周方向中央に、前後方向の全体を占める溝部222が形成されたものと捉えられても良い。
膨出部225の外面は、フラックスバリア224における曲面(永久磁石112に対向する面)と平行である部分を有している。膨出部225の外面は、フラックスバリア224の曲面の径方向外側の半分程度と平行であり、膨出部225の外面における曲率半径の中心と、フラックスバリア224の曲面における曲率半径の中心とは、一致している。
【0041】
図14は、第2形態に係る図8(a)同様図である。第2形態においても、極の切り替わり時に極の反転Rは生じていない。
又、第2形態のロータ204のトルクは、上記と同様に比較例1のロータのトルクを100として、99.8であり、比較例1と同じ程度に維持される。
【0042】
第2形態に係る震動ドライバドリルでは、ロータ204と、ロータ204の回転を検出するセンサ回路基板80と、を有するブラシレスモータを備えており、ロータ204は、筒状のロータコア210と、ロータコア210の軸方向に延びるようにロータコア210内に保持された4個の永久磁石112と、を備えており、センサ回路基板80は、ロータコア210の前端部(第1端部)に隣接しており、ロータコア210は、断面半円状であって永久磁石112の周方向における端部において曲面が当該端部と対向するように配置されたフラックスバリア224と、隣接する一対の永久磁石112の間の外方の側面において、前端部から、ロータコア210の軸方向に延びる溝部222と、を有している。よって、センサ回路基板80におけるロータコア210の回転の検出精度が向上してブラシレスモータが正確に駆動され、ロータコア210のトルクが十分に確保され、動作が正確で出力がより大きい震動ドライバドリルが提供される。
又、フラックスバリア224の径方向外方におけるロータコア210の側面は、半円筒状であり、フラックスバリア224における永久磁石112に対向する面と平行である部分を有している。よって、正確な駆動及び十分なトルクの確保のための断面半円状のフラックスバリア224及び溝部222が、コンパクトで強度十分に設けられる。
【0043】
尚、第2形態は、第1形態と同様の変更例を適宜有する。又、溝部222の形状は、円筒状でなくても良い。更に、ロータコア210の側面がフラックスバリア224と平行である部分は、他の部分に配置されていても良く、ロータコア210の側面がフラックスバリア224の曲面全体と平行であっても良い。
【0044】
[第3形態]
図15は、本発明の第3形態に係る震動ドライバドリルの図4同様図である。図16は、当該震動ドライバドリルの図5同様図である。図17は、当該震動ドライバドリルの図6同様図である。図18は、当該震動ドライバドリルの図7同様図である。
第3形態に係る震動ドライバドリルは、ロータを除き、第2形態と同様に成る。第2形態と同様である部材及び部分には、同じ符号が付されて、説明が適宜省略される。
【0045】
第3形態に係る震動ドライバドリルにおけるロータ304のロータコア310は、80枚の鋼板が積層されたものである。
前6枚の鋼板は、第2形態の鋼板と同一形状である。
残り74枚の鋼板は、第1形態の75枚の鋼板と同一形状である。
ロータコア310は、これらの鋼板の積層により、前後方向の長さを除き第2形態の各溝部222と同様である溝部322と、前後方向の長さを除き第2形態の一対の膨出部225と同様である一対の膨出部325と、を有している。溝部322及び一対の膨出部325は、膨出部326の前端まで延びており、ロータコア310の後端部に達していない。溝部322及び一対の膨出部325の前後方向の長さL2は、1.2mmである。
ロータコア310は、前後方向に貫通するフラックスバリア324を、複数、第1形態のフラックスバリア124と同様に有している。各フラックスバリア324の前部の断面形状は、第2形態のフラックスバリア224の断面形状と同様であり、各フラックスバリア324の後部の断面形状は、第1形態のフラックスバリア124の断面形状と同様である。
【0046】
図19は、第3形態に係る図8(a)同様図である。第3形態においても、極の切り替わり時に極の反転Rは生じていない。
又、第3形態のロータ304のトルクは、上記と同様に比較例1のロータのトルクを100として、99.9であり、比較例1と同じ程度に維持される。
【0047】
図20(a)は、溝部322の前後方向の長さL2=1.1mm,1.2mm,1.3mmとした3つの場合に係る、図8(a)と同様のグラフである。図20(b)は、図20(a)の一部拡大図である。
L2=1.1mmの場合、極の切り替わり時に僅かに反転Rが認められる。L2=1.2mm,1.3mmの場合、極の切り替わり時に反転Rは認められない。
よって、溝部322の前後方向の長さL2=1.2mm以上であると、ブラシレスモータ20の十分に正確な駆動が確保される。
他方、溝部322の前後方向の長さL2を短くするほど、溝部322不設置時のロータのトルクに対するロータ304のトルクの低下が、より抑制される。
【0048】
第3形態に係る震動ドライバドリルでは、ロータ304と、ロータ304の回転を検出するセンサ回路基板80と、を有するブラシレスモータを備えており、ロータ304は、筒状のロータコア310と、ロータコア310の軸方向に延びるようにロータコア310内に保持された4個の永久磁石112と、を備えており、センサ回路基板80は、ロータコア310の前端部(第1端部)に隣接しており、ロータコア310は、断面半円状であって永久磁石112の周方向における端部において曲面が当該端部と対向するように配置されたフラックスバリア324と、隣接する一対の永久磁石112の間の外方の側面において、前端部から、前端部に対向する後端部(第2端部)に達しない状態で、ロータコア310の軸方向に延びる溝部322と、を有している。よって、センサ回路基板80におけるロータコア310の回転の検出精度が向上してブラシレスモータが正確に駆動され、ロータコア310のトルクが十分に確保され、動作が正確で出力がより大きい震動ドライバドリルが提供される。
又、ロータコア310の軸方向における溝部322の長さL2は、1.2ミリメートル以上である。よって、ロータコア310の回転の検出精度が十分に良好となる。
【0049】
更に、第3形態に係る震動ドライバドリルは、モータ軸26と、モータ軸26の軸方向に延びる複数の永久磁石112と、モータ軸26に貫通されるロータコア310と、永久磁石112の回転を検出する回転検出素子83と、を備えており、ロータコア310は、回転検出素子83側の部分(前部)と、その反対側の部分(後部)とで異なる形状を有している。よって、センサ回路基板80におけるロータコア310の回転の検出精度が向上してブラシレスモータが正確に駆動され、ロータコア310のトルクが十分に確保され、動作が正確で出力がより大きい震動ドライバドリルが提供される。
又、モータ軸26と、モータ軸26の軸方向に延びる複数の永久磁石112と、モータ軸26に貫通されるロータコア310と、永久磁石112の回転を検出する回転検出素子83と、を備えており、ロータコア310の形状によって、極の切り替わり時に、極の反転が起きないように構成されている。よって、センサ回路基板80におけるロータコア310の回転の検出精度が向上してブラシレスモータが正確に駆動され、ロータコア310のトルクが十分に確保され、動作が正確で出力がより大きい震動ドライバドリルが提供される。
【0050】
尚、第3形態は、第2形態と同様の変更例を適宜有する。又、溝部322及び膨出部325の長さは、より長くても良い。
【符号の説明】
【0051】
1・・震動ドライバドリル(電動工具)、20・・ブラシレスモータ、24,204,304・・ロータ、26・・モータ軸、80・・センサ回路基板、83・・回転検出素子(磁気センサ)、110,210,310・・ロータコア、112・・永久磁石、122・・凹溝、124,224,324・・フラックスバリア、222,322・・溝部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図20