(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】廃棄物焼却設備
(51)【国際特許分類】
F23G 5/00 20060101AFI20221219BHJP
F23G 5/44 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
F23G5/00 109
F23G5/44 F
(21)【出願番号】P 2018072171
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 勝久
(72)【発明者】
【氏名】池田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】小川 花織
(72)【発明者】
【氏名】柁山 航介
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253720(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115844(WO,A1)
【文献】特開2018-004113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00
F23G 5/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を燃焼させる火炉室と、前記火炉室での廃棄物の燃焼により生じた燃焼ガスを燃焼させる再燃焼室と、前記火炉室の底部で廃棄物の搬送方向に配列された、廃棄物を乾燥させる乾燥ストーカおよび廃棄物を燃焼させる燃焼ストーカと、を有する焼却炉と、
前記火炉室の上方空間のガスの一部を排出するガス排出路と、
前記ガス排出路を介して排出されたガスに含まれるアンモニアガスを水に接触させて、アンモニア水を生成する洗浄塔と、
前記洗浄塔にて生成されたアンモニア水を、脱硝薬剤として前記再燃焼室に吹き込む無触媒脱硝装置と、
前記火炉室の上壁の下流側端部から下方に延び
、前記火炉室の上方空間と前記再燃焼室とを仕切る中間仕切壁と、
前記火炉室の上壁の前記下流側端部より前記搬送方向における上流側の部分から下方に延び
、前記火炉室の上方空間を、前記搬送方向における上流側に位置する、ガスが一時的に滞留可能な上流側空間と、前記搬送方向における下流側に位置する、ガスが一時的に滞留可能な下流側空間とに仕切る火炉仕切壁と、を備え
る廃棄物焼却設備であって、
前記ガス排出路は、前記火炉室における前記上流側空間からガスを排出
し、
前記廃棄物焼却設備は、前記洗浄塔から前記火炉室における前記下流側空間につながるガス戻し路を備える、廃棄物焼却設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を焼却する廃棄物焼却設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃棄物を焼却する焼却炉を含む焼却設備が知られている。このような廃棄物焼却設備では、焼却の際に生じる排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を低減することが求められる。排ガス中の窒素酸化物を低減する1つの方法として、焼却炉で廃棄物を乾燥させる過程で発生するアンモニアガスを除去することが提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、乾燥ストーカおよび燃焼ストーカから成るストーカを備え、ストーカ下からストーカ上方の火炉室(一次燃焼室)に一次燃焼空気を供給してストーカ上の廃棄物としての汚泥を一次燃焼させると共に、火炉室上方の再燃焼室(二次燃焼室)で未燃ガスや未燃物を二次燃焼させるようにした焼却設備が開示されている。この焼却設備では、乾燥ストーカで汚泥から発生するアンモニアガスを空気供給路から引き抜き、洗浄塔で凝縮して除去する。このように、この焼却設備では、汚泥から発生するアンモニアガスを火炉室で燃焼する前に除去することにより、火炉室での窒素酸化物の発生の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より窒素酸化物の排出量を抑制することができる廃棄物焼却設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る廃棄物焼却設備は、廃棄物を燃焼させる火炉室と、前記火炉室での廃棄物の燃焼により生じた燃焼ガスを燃焼させる再燃焼室と、前記火炉室の底部で廃棄物の搬送方向に配列された、廃棄物を乾燥させる乾燥ストーカおよび廃棄物を燃焼させる燃焼ストーカと、を有する焼却炉と、前記火炉室の上方空間のガスの一部を排出するガス排出路と、前記ガス排出路を介して排出されたガスに含まれるアンモニアガスを水に接触させて、アンモニア水を生成する洗浄塔と、前記洗浄塔にて生成されたアンモニア水を、脱硝薬剤として前記再燃焼室に吹き込む無触媒脱硝装置と、を備える。
【0007】
上記の構成によれば、ガス排出路を介して火炉室からアンモニアガスを含むガスを排出するとともに、排出したガスに含まれるアンモニアガスを再燃焼室に吹き込み、火炉室にて発生した窒素酸化物に対する脱硝薬剤として利用する。このため、火炉室からアンモニアガスを除去するだけの従来の焼却設備に比べて、より窒素酸化物の排出量を抑制することができる。
【0008】
上記の廃棄物焼却設備において、前記火炉室には、前記火炉室の上壁から下方に延び、前記火炉室の上方空間を前記搬送方向における上流側空間と下流側空間とに仕切る火炉仕切壁が設けられており、前記ガス排出路は、前記火炉室における前記上流側空間からガスを排出してもよい。この構成によれば、上流側のストーカである乾燥ストーカにて廃棄物を乾燥させる際に発生するアンモニアガスの多くが、火炉室の上流側空間へと上昇する。このため、ガス排出路を介して排出するガス中のアンモニアガスの濃度を、火炉室の上方空間全体からガスを排出する場合に比べてより高い状態にして、効率よく火炉室からアンモニアガスを除去することができる。
【0009】
上記の廃棄物焼却設備において、前記洗浄塔から前記火炉室における前記下流側空間につながるガス戻し路を備えてもよい。この構成によれば、ガス排出路を介して排出された火炉室の上流側空間のガスを、当該ガス中のアンモニアガスを洗浄塔にて除去した後に、ガス戻し路を介して火炉室の下流側空間に戻すことができる。これにより、火炉室の上流側空間のガスに含まれていた未燃ガス(一酸化炭素など)を、火炉室の下流側空間に戻して燃焼させることができる。また、火炉室の上流側空間のガスにアンモニアガス以外の還元ガス(シアン化水素など)が含まれている場合には、当該還元ガスを火炉室での窒素酸化物との脱硝反応に利用することができる。
【0010】
上記の廃棄物焼却設備において、前記焼却炉は、前記火炉室の上壁の下流側端部から下方に延び、前記火炉室における前記下流側空間と前記再燃焼室とを前記搬送方向に分断するように仕切る中間仕切壁を備えてもよい。この構成によれば、火炉室の下流側空間が、火炉仕切壁と中間仕切壁により挟まれることで、ガスが滞留可能な空間として形成される。このため、ガス戻し路で戻されたガスに含まれる未燃ガスの燃焼反応をより発生させやすくすることができ、また、ガス戻し路で戻されたガスにアンモニアガス以外の還元ガスが含まれる場合には、当該還元ガスと窒素酸化物との脱硝反応をより発生させやすくすることができる。
【0011】
また、本発明の別の態様に係る廃棄物焼却設備は、廃棄物を燃焼させる火炉室と、前記火炉室での廃棄物の燃焼により生じた燃焼ガスを燃焼させる再燃焼室と、前記火炉室の底部で廃棄物の搬送方向に配列された、廃棄物を乾燥させる乾燥ストーカおよび廃棄物を燃焼させる燃焼ストーカと、前記火炉室の上壁から下方に延び、前記火炉室の上方空間を前記搬送方向における上流側空間と下流側空間とに仕切る火炉仕切壁と、を有する焼却炉と、前記火炉室の前記上流側空間のガスの一部を排出するとともに、排出したガスにおけるアンモニアガスの濃度を維持した状態で前記再燃焼室に供給するガス通路と、を備えてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、火炉仕切壁により、上流側のストーカである乾燥ストーカにて廃棄物を乾燥させる際に発生するアンモニアガスの多くを、火炉室の上流側空間へ集め、ガス通路を介して上流側空間のガスを排出する。これにより、火炉室の局所高温域で酸化されるアンモニアガスが低減して、火炉室での窒素酸化物の発生を抑制できる。さらに、火炉室にて少ないながらも発生した窒素酸化物に対しては、ガス通路を介して上流側空間から排出したガスを、火炉室に比べて比較的低温である再燃焼室に供給する。これにより、ガス通路を介して供給されるガス(すなわち、火炉室の上流側空間のガス)中のアンモニアガスを、再燃焼室での窒素酸化物の脱硝反応に利用することができる。このため、火炉室からアンモニアガスを除去するだけの従来の焼却設備に比べて、より窒素酸化物の排出量を抑制することができる。また、上記の廃棄物焼却設備が、アンモニア水を脱硝薬剤として再燃焼室に吹き込む無触媒脱硝装置を備える場合には、吹き込む脱硝薬剤を節約することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明の各態様によれば、より窒素酸化物の排出量を抑制することができる廃棄物焼却設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る廃棄物焼却設備の概略構成図である。
【
図2】第2実施形態に係る廃棄物焼却設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る廃棄物焼却設備1Aの構成を示す図である。廃棄物焼却設備1Aは、焼却炉2および脱硝システム3Aを備える。
【0017】
焼却炉2は、外部から供給される廃棄物を搬送しながら焼却処理する。焼却炉2は、火炉室11、再燃焼室12、および複数のストーカ(乾燥ストーカ13、燃焼ストーカ14、および後燃焼ストーカ15)を有する。なお、以下の説明において、「搬送方向」とは、焼却炉2内における廃棄物の搬送方向を指すこととする。
【0018】
火炉室11は、その内部に図略の給塵装置によって焼却炉2の入口2aから供給された廃棄物を燃焼する。再燃焼室12は、火炉室11の搬送方向下流側に配置されており、再燃焼室12は、火炉室11での廃棄物の燃焼により生じた未燃ガスを燃焼させる。火炉室11内の温度は、例えば1000℃~1200℃である。また、再燃焼室12内の温度は、例えば約900℃である。
【0019】
乾燥ストーカ13、燃焼ストーカ14、および後燃焼ストーカ15は、焼却炉2における火炉室11の底部で、搬送方向の上流側からこの順に配列されている。火炉室11には、ストーカ13~15越しに一次空気が供給される。
【0020】
焼却炉2の入口2aから供給された廃棄物は、まず乾燥ストーカ13に送られ、一次空気および火炉室11の輻射熱により乾燥される。乾燥ストーカ13において乾燥された廃棄物は、乾燥ストーカ13により燃焼ストーカ14に送られ燃焼され、火炎が発生する。燃焼ストーカ14における廃棄物および燃焼により発生した灰は、燃焼ストーカ14により後燃焼ストーカ15に送られる。後燃焼ストーカ15では、燃焼ストーカ14にて燃焼しきれなかった未燃焼分の廃棄物が燃焼され、廃棄物の燃焼後の灰は、後燃焼ストーカ15に隣接して設けられたシュート16から排出される。
【0021】
本実施形態の焼却炉2は、廃棄物を搬送する方向と廃棄物の燃焼により生じるガスの流れ方向が並行する並行流ストーカ式焼却炉である。具体的には、焼却炉2は、その入口2aが形成された上下方向に延びる側壁11aと、当該側壁11aの上端部から搬送方向に延びて、火炉室11の天井を構成する上壁11bを有する。上壁11bは、搬送方向における上流側部分よりも下流側部分が上方に位置するように、搬送方向に緩やかに傾斜する。火炉室11の上壁11bの下流側端部には、搬送方向に向かって斜め下方に延びる中間仕切壁17が設けられている。中間仕切壁17は、火炉室11の上方空間Sと再燃焼室12とを搬送方向に分断するように仕切る。このため、廃棄物の燃焼により生じたガスは、基本的に火炉室11の下流側端部まで流れた後に、再燃焼室12に入る。
【0022】
また、火炉室11には、上壁11bから鉛直下方に延びる火炉仕切壁18が設けられている。火炉仕切壁18は、火炉室11の上方空間Sを搬送方向における上流側空間S1と下流側空間S2とに仕切る。上流側空間S1は、搬送方向における側壁11aと火炉仕切壁18の間でガスが一時的に滞留する空間として形成され、下流側空間S2は、搬送方向における火炉仕切壁18と中間仕切壁17の間でガスが一時的に滞留する空間として形成される。
【0023】
火炉仕切壁18は、搬送方向における乾燥ストーカ13と燃焼ストーカ14の境界の上方付近に配置されている。すなわち、乾燥ストーカ13の上方に上流側空間S1が位置するため、乾燥ストーカ13にて廃棄物を乾燥させる際に発生するアンモニアガスの多くが上流側空間S1に集まる。上流側空間S1のガスは、火炉仕切壁18の下端部の下方を通過して、下流側空間S2に入るか、後述するガス排出路31から排出される。
【0024】
火炉室11の上壁11b(より詳細には、上壁11bの下流側空間S2の上方に位置する箇所)および中間仕切壁17には、複数の二次空気供給口21が設けられており、下流側空間S2に二次空気が供給される。また、火炉室11には、焼却炉2から排出された排ガスを供給するための複数の排ガス供給口22が設けられている。排ガスは、酸素濃度が空気より低いので、燃焼温度の局所的な過上昇を抑えるために火炉室11に供給される。例えば再燃焼室12より下流側に設けられた図略のボイラを通過した排ガスの一部が、排ガス供給口22を介して火炉室11に戻される。
【0025】
脱硝システム3Aは、焼却炉2から排出する排ガス中の窒素酸化物(NOx)を低減する。なお、「脱硝」とは、ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元ガスと反応させて、無害化することをいう。脱硝システム3Aは、ガス排出路31と、洗浄塔32と、制御装置33と、ガス戻し路34と、無触媒脱硝装置35とを備える。
【0026】
ガス排出路31は、火炉室11の上流側空間S1のガスの一部を排出して、洗浄塔32に供給するための流路である。ガス排出路31の上流側端部は、火炉室11における上流側空間S1に面する上壁11bに接続されている。ガス排出路31の途中には、ブロア31aが設けられている。火炉室11の上流側空間S1のガスは、ブロア31aにより誘引され、ガス排出路31を通って洗浄塔32に導かれる。
【0027】
洗浄塔32は、ガス排出路31から供給されたガスに含まれるアンモニアガスを水に接触させて、アンモニア水を生成する。洗浄塔32は、上下方向に延びる内部空間を有する塔本体41を備える。塔本体41には、図略の補給水口が設けられている。そして、当該補給水口から塔本体41の内部空間に水が補給され、塔本体41の底部に貯留される。
【0028】
塔本体41の側壁には、上述のガス排出路31の下流側端部が接続される。ガス排出路31を介して上流側空間S1から排出されたガスは、塔本体41の内部における気相(塔本体41の底部に貯留された水の上面より上方)へ供給される。
【0029】
塔本体41の底部に貯留された水は、循環路42により、塔本体41の外部に一旦排出されて、再度塔本体41の内部に導入されるように循環する。循環路42の上流側端部は、塔本体41の底部に接続されており、また、循環路42の下流側端部は、塔本体41の上部に接続されている。
【0030】
循環路42の途中には、循環用ポンプ43が設けられている。循環用ポンプ43の稼働は、制御装置33により制御される。循環路42の下流端には、放出部44が設けられている。放出部44は、ガス排出路31の下流側端部より上方に位置する。放出部44は、例えばシャワーノズルである。
【0031】
制御装置33により循環用ポンプ43が稼働することにより、塔本体41の底部に貯留された水は、循環路42を通って放出部44へと送られて放出され、その後、塔本体41内を降下する。一方、ガス排出路31の下流側端部から供給されたガスは、塔本体41の内部を上昇し、放出部44から放出されて降下する水と接触する。降下する水は、ガス中に含まれるアンモニアガスに接触して吸収し、塔本体41の底部に貯留された水へと落ちる。こうして、塔本体41の底部に貯留された水が循環することにより、ガス排出路31の下流側端部から供給されたガス中のアンモニアガスが回収され、塔本体41の底部に貯留された水(すなわち、アンモニア水)のアンモニア濃度は上昇する。
【0032】
ガス戻し路34は、火炉室11における上流側空間S1から排出したガスを、洗浄塔32に供給した後に、火炉室11における下流側空間S2に戻すための流路である。ガス戻し路34の上流側端部は、塔本体41の頂部に接続されており、ガス戻し路34の下流側端部は、火炉室11における下流側空間S2に面する上壁11bに接続されている。塔本体41の内部を上昇するガスは、降下する水と接触した後、ガス戻し路34を通って下流側空間S2に送られる。
【0033】
無触媒脱硝装置35は、洗浄塔32にて生成されたアンモニア水を脱硝薬剤として再燃焼室12に吹き込む装置である。無触媒脱硝装置35は、貯留タンク51と希釈装置52とを有する。
【0034】
貯留タンク51は、所定の濃度(例えばアンモニア濃度25%)のアンモニア水を貯留するタンクである。貯留タンク51には、図略の供給口から、所定の濃度の購入品であるアンモニア水が供給され、貯留される。また、貯留タンク51には、第1アンモニア水供給路53により洗浄塔32からもアンモニア水が供給される。第1アンモニア水供給路53には、制御装置33により稼働を制御される排出用ポンプ53aが設けられている。制御装置33により排出用ポンプ53aが稼働することにより、塔本体41の底部に貯留されたアンモニア水は、第1アンモニア水供給路53を通って貯留タンク51に供給される。
【0035】
ここで、制御装置33による制御の一例を説明する。塔本体41には、塔本体41の底部に貯留されたアンモニア水のアンモニア濃度を検出する濃度計45が設けられている。濃度計45により検出されるアンモニア濃度は、制御装置33に送られる。
【0036】
制御装置33は、濃度計45にて検出されるアンモニア濃度が貯留タンク51に対して設定された所定のアンモニア濃度(例えばアンモニア濃度25%)に到達するまでの間、循環用ポンプ43を稼働させ、排出用ポンプ53aを停止させる。上述したように、塔本体41の底部に貯留されたアンモニア水のアンモニア濃度は、循環路42を介して循環することで上昇していく。
【0037】
そして、制御装置33は、濃度計45にて検出されるアンモニア濃度が貯留タンク51に対して設定されたアンモニア濃度に到達したときに、循環用ポンプ43を停止させ、排出用ポンプ53aを稼働させる。こうして、洗浄塔32にて生成されたアンモニア水の一部または全部が、第1アンモニア水供給路53を介して貯留タンク51に供給される。その後、制御装置33は、排出用ポンプ53aを停止させ、その後、塔本体41内に水を補給し、循環用ポンプ43を稼働させる。
【0038】
なお、制御装置33による制御は、上述したものに限定されない。例えば、制御装置33は、排出用ポンプ53aを制御する代わりに、第1アンモニア水供給路53に設けた図略の開閉弁を制御することにより、第1アンモニア水供給路53を介して洗浄塔32から貯留タンク51にアンモニア水を供給してもよい。
【0039】
貯留タンク51に貯留されたアンモニア水は、第2アンモニア水供給路54により希釈装置52に導かれる。希釈装置52は、貯留タンク51から供給されるアンモニア水を、脱硝薬剤として再燃焼室12に吹き込むのに適した濃度(例えばアンモニア濃度2%)に希釈する。例えば、希釈装置52は、貯留タンク51から希釈装置52にアンモニア水を供給するポンプ、希釈装置52に供給されるアンモニア水の流量を制御する流量制御弁、および、希釈装置52に供給されるアンモニア水を、外部から供給された希釈水と混合する混合器などを有する構成である。
【0040】
希釈装置52にて希釈したアンモニア水は、脱硝薬剤供給路55により脱硝薬剤として再燃焼室12に供給される。例えば、脱硝薬剤供給路55は、途中で分岐する複数の分岐路(図示略)を有しており、各分岐路の下流端に設けられた噴霧ノズルから、脱硝薬剤供給路55により導かれたアンモニア水が再燃焼室12内に吹き込まれる。
【0041】
以上に説明したように、本実施形態に係る廃棄物焼却設備1Aでは、ガス排出路31を介して火炉室11からアンモニアガスを含むガスを排出するとともに、排出したガスに含まれるアンモニアガスを再燃焼室12に吹き込む脱硝薬剤として利用する。このため、火炉室11からアンモニアガスを除去するだけの従来の焼却設備に比べて、より窒素酸化物の排出量を抑制することができる。
【0042】
また本実施形態では、火炉仕切壁18が、当該火炉室11の上方空間Sを搬送方向における上流側空間S1と下流側空間S2とに仕切り、ガス排出路31が、火炉室11における上流側空間S1からガスを排出する。このため、上流側のストーカである乾燥ストーカ13にて廃棄物を乾燥させる際に発生するアンモニアガスの多くが、火炉室11の上流側空間S1へと上昇する。このため、ガス排出路31を介して排出するガス中のアンモニアガスの濃度を、火炉室11の上方空間S全体からガスを排出する場合に比べてより高い状態にして、効率よく火炉室11からアンモニアガスを除去することができる。
【0043】
また本実施形態では、ガス排出路31を介して排出された火炉室11の上流側空間S1のガスを、当該ガス中のアンモニアガスを洗浄塔32にて除去した後に、ガス戻し路34を介して火炉室11の下流側空間S2に戻すことができる。これにより、火炉室11の上流側空間S1のガスに含まれていた未燃ガス(一酸化炭素など)を、火炉室11の下流側空間S2に戻して燃焼させることができる。また、火炉室11の上流側空間S1のガスにアンモニアガス以外の還元ガス(シアン化水素など)が含まれている場合には、当該還元ガスを火炉室11での窒素酸化物との脱硝反応に利用することができる。
【0044】
また本実施形態では、火炉室11の下流側空間S2が、火炉仕切壁18と中間仕切壁17により挟まれることで、ガスが滞留可能な空間として形成される。このため、ガス戻し路34で戻されたガスに含まれる未燃ガスの燃焼反応をより発生させやすくすることができ、また、ガス戻し路34で戻されたガスにアンモニアガス以外の還元ガスが含まれる場合には、当該還元ガスと窒素酸化物との脱硝反応をより発生させやすくすることができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る廃棄物焼却設備1Bについて、
図2を参照して説明する。
図2は、第2実施形態に係る廃棄物焼却設備1Bの構成を示す図である。本実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0046】
本実施形態は、火炉室11の上流側空間S1のガスの一部を排出する点で、第1実施形態と共通するが、排出したガスを洗浄塔32に供給する代わりに、そのまま再燃焼室12に供給する点で、第1実施形態と異なる。
【0047】
具体的には、廃棄物焼却設備1Bは、脱硝システム3Bとして、火炉室11の上流側空間S1のガスの一部を排出するとともに、排出したガスにおけるアンモニアガスの濃度を維持した状態で再燃焼室12に供給するガス通路61を備える。ガス通路61の上流側端部は、火炉室11における上流側空間S1に面する上壁11bに接続されており、ガス通路61の途中には、ブロア61aが設けられている。また、ガス通路61の下流側端部は、再燃焼室12の側壁に接続されている。火炉室11の上流側空間S1のガスは、ブロア61aにより誘引され、ガス通路61を通って再燃焼室12に導かれる。
【0048】
ところで、アンモニアは、1000℃以上の高温域で窒素酸化物に転化しやすいが、900℃付近では、窒素酸化物の還元に寄与しやすくなる。本実施形態では、火炉仕切壁18により、上流側のストーカである乾燥ストーカ13にて廃棄物を乾燥させる際に発生するアンモニアガスの多くを、火炉室11の上流側空間S1へ集め、ガス通路61を介して上流側空間S1のガスを排出する。これにより、火炉室11の局所高温域で酸化されるアンモニアガスが低減して、火炉室11での窒素酸化物の発生を抑制できる。
【0049】
さらに、火炉室11にて少ないながらも発生した窒素酸化物に対しては、ガス通路61を介して上流側空間S1から排出したガスを、火炉室11に比べて比較的低温である再燃焼室12に供給する。これにより、ガス通路61を介して供給されるガス(すなわち、火炉室11の上流側空間S1のガス)中のアンモニアガスを、再燃焼室12での窒素酸化物の脱硝反応に利用することができる。このため、火炉室11からアンモニアガスを除去するだけの従来の焼却設備に比べて、より窒素酸化物(NOx)の排出量を抑制することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0051】
例えば、上記の第1および第2実施形態では、焼却炉2は、並行流焼却炉であったが、本発明の焼却炉はこれに限定されない。例えば焼却炉は、中間仕切壁17を備えていなくてもよく、例えば廃棄物を搬送する方向に対して廃棄物の燃焼により生じるガスが異なる方向にも流れる方式の例えば中間流焼却炉であってもよい。
【0052】
また、上記の第1および第2実施形態では、火炉仕切壁18は、鉛直下方に延びるものとして説明されたが、本発明の火炉仕切壁はこれに限定されない。例えば、火炉仕切壁は、下方にいくにつれ搬送方向上流側または下流側に向かうように、鉛直方向に対して斜めに延びてもよい。また、火炉仕切壁は、乾燥ストーカ13と燃焼ストーカ14の境界の上方に位置しなくてもよく、当該境界より搬送方向下流側または上流側に配置されてもよい。また、上記の第1実施形態では、火炉仕切壁18はなくてもよい。
【0053】
また、本発明のガス戻し路の上流側端部および下流側端部の接続箇所は、上記の第1実施形態で説明されたものに限定されない。例えば、また、ガス戻し路の上流側端部は、塔本体41の側壁に接続されていてもよいし、ガス戻し路の下流側端部は、下流側空間S2に面する火炉室11の側壁や中間仕切壁17に接続していてもよい。また、ガス戻し路の下流側端部は、再燃焼室12に接続されていてもよい。
【0054】
また、上述したガス排出路31やガス通路61などの気体が通過する通路、並びに脱硝薬剤供給路55などのアンモニア水が通過する通路は、1つの管路で構成されてもよいし、複数の管路で構成されてもよいし、途中で分岐する構成であってもよい。また、これらの通路には、開閉弁および/または流量制御弁などが適宜設けられていてもよい。
【0055】
洗浄塔32は、上記の第1実施形態で説明されたものに限定されず、ガス排出路を介して排出されたガス中のアンモニアを気液接触して吸収するものであればよい。例えば、洗浄塔32は、ガス排出路31から供給されたガスを塔本体41に貯留された水の中に噴出するように構成されていてもよく、この場合、塔本体41は上下方向に延びる空間を有していなくてもよい。
【0056】
また、上記の第1実施形態では、無触媒脱硝装置35は、貯留タンク51と希釈装置52とを有する構成であったが、本発明の無触媒脱硝装置は、これに限定されない。例えば、無触媒脱硝装置は、貯留タンク51と希釈装置52とを備えていなくてもよく、例えば脱硝薬剤供給路55の上流側端部が、直接洗浄塔32に接続されていてもよい。この場合、脱硝薬剤供給路55およびその下流端の噴霧ノズルなどが、本発明の無触媒脱硝装置に相当する。また、制御装置33は、濃度計45にて検出されるアンモニア濃度が、脱硝薬剤として再燃焼室12に吹き込むのに適したアンモニア濃度(例えばアンモニア濃度2%)となったときに、脱硝薬剤供給路55を介して洗浄塔32から再燃焼室12にアンモニア水を供給するようにしてもよい。
【0057】
また、上記の第2実施形態の廃棄物焼却設備1Bが、アンモニア水を脱硝薬剤として再燃焼室12に吹き込む無触媒脱硝装置を更に備えていてもよい。この場合、従来の無触媒脱硝装置を備えた廃棄物焼却設備に比べて、無触媒脱硝装置が吹き込む脱硝薬剤を節約することができる。
【符号の説明】
【0058】
1A,1B :廃棄物焼却設備
2 :焼却炉
11 :火炉室
12 :再燃焼室
13 :乾燥ストーカ
14 :燃焼ストーカ
17 :中間仕切壁
18 :火炉仕切壁
31 :ガス排出路
32 :洗浄塔
34 :ガス戻し路
35 :無触媒脱硝装置
61 :ガス通路