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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ポリビニルピロリドン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 26/10 20060101AFI20221219BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221219BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20221219BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221219BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20221219BHJP
   C08F 4/00 20060101ALN20221219BHJP
【FI】
C08F26/10
C08F2/06
A61K8/02
A61K8/81
A61Q5/02
A61Q19/00
A61Q5/06
C08F4/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018111177
(22)【出願日】2018-06-11
(65)【公開番号】P2019214643
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100161942
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨 みどり
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 宏和
(72)【発明者】
【氏名】池元 結衣
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-510043(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079539(WO,A1)
【文献】特開2005-272629(JP,A)
【文献】特開2006-2048(JP,A)
【文献】特開2008-120982(JP,A)
【文献】国際公開第2006/049214(WO,A1)
【文献】特開2000-273490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 26/00 - 26/12
C08F 2/00 - 2/60
C08F 4/00 - 4/82
A61K 8/00 - 8/99
A61Q 5/00 - 5/12
A61Q 19/00 - 19/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿重合法によるポリビニルピロリドン重合体の製造方法であって、
N-ビニルピロリドンを含むモノマー成分と、重合開始剤と、を別個に反応媒体中に滴下する滴下工程を含み、
該滴下工程前の初期反応媒体中の該重合開始剤量が、反応に使用する該重合開始剤全量の30質量%以下であり、
該滴下工程において、該重合開始剤を該モノマー成分の滴下時間より長い時間で滴下する、
ポリビニルピロリドン重合体の製造方法。
【請求項2】
重合温度が、前記開始剤の10時間半減温度に対し、+15℃以上+30℃以下である、
請求項1に記載のポリビニルピロリドン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記モノマー成分が、N-ビニルピロリドンを50質量%以上、100質量%以下の割合で含む、
請求項1または2に記載のポリビニルピロリドン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記モノマー成分が、さらに、前記N-ビニルピロリドン以外の水溶性モノマーを0.001質量%以上、50質量%以下の割合で含む、
請求項3に記載のポリビニルピロリドン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記水溶性モノマーが(メタ)アクリル酸である、
請求項4に記載のポリビニルピロリドン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記モノマー成分中の全てのモノマーが水溶性である、
請求項1~5の何れか1項に記載のポリビニルピロリドン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記モノマー成分が、多官能性モノマーを0.01質量%以上、5質量%以下の割合で含む、
請求項1~6の何れか1項に記載のポリビニルピロリドン重合体の製造方法。
【請求項8】
前記反応媒体として炭化水素系溶剤を用いる、請求項1~7の何れか1項に記載のポリビニルピロリドン重合体の製造方法。
【請求項9】
前記初期反応媒体中への前記重合開始剤の滴下時間が、前記モノマー成分の滴下時間に対して、1.10~3.00倍である、請求項1~8の何れか1項に記載のポリビニルピロリドン重合体の製造方法。
【請求項10】
前記モノマー成分が、架橋性単量体としてアリル基を2個以上有する化合物を含む、請求項1~9の何れか1項に記載のポリビニルピロリドン重合体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られたポリビニルピロリドン重合体を粉砕して、ポリビニルピロリドン重合体粉体を得る工程を含む、ポリビニルピロリドン重合体粉体の製造方法。
【請求項12】
一次粒子の集合体であり、マイクロスコープで観察した該集合体の直径が100μm以上、2000μm以下であり、SEMで観察した該一次粒子の粒子径が10nm以上、2000nm以下である、ポリビニルピロリドン重合体
【請求項13】
請求項12に記載のポリビニルピロリドン重合体を粉砕した粉体を含む、化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルピロリドン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルピロリドン重合体は、吸水性に優れるため、この性質を利用して様々な用途に利用される。特許文献1には、重合開始剤を入れた反応容器に、ビニルピロリドンと架橋剤とを導入してポリビニルピロリドン重合体を製造する方法が記載されている。重合温度は、重合開始剤の10時間半減温度に対し+10℃である。また、特許文献2には、上記と同様の方法で製造したポリビニルピロリドン重合体を含む化粧品組成物が記載されている。
【0003】
ポリビニルピロリドン重合体の製造方法としては、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、乳化重合法、逆相乳化重合法、沈殿重合法或いは注型重合法、薄膜重合法、噴霧重合法等の様々な方法が知られている。特許文献3には、ポリビニルピロリドン重合体を沈殿重合法で製造する方法として、アルキルビニルエーテル、N-ビニル化合物と無水マレイン酸を溶解し、3元共重合体は溶解しない有機溶媒存在下で、アルキルビニルエーテル、N-ビニル化合物と無水マレイン酸を共重合させて、生成した3元共重合体を沈殿物として回収する3元共重合体の製造方法が記載されている。また、特許文献4には、N-ビニルピロリドンを共重合形態で含む、沈殿重合により得られるポリマーが記載されている。この沈殿重合では、初期に高温用開始剤、滴下に低温用開始剤と2種類の開始剤が使用されている。
【0004】
ポリビニルピロリドン重合体は、その優れた吸水性により空気中の水分をよく吸収するため、粘性を示しやすく、容易に粉砕できる重合体が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5073614号公報
【文献】米国特許第5139770号公報
【文献】特開2004-149715号公報
【文献】特表2012-526882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の問題に鑑み、本発明の課題は、粉砕が容易で、取扱い性に優れたポリビニルピロリドン重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、沈殿重合法において、重合開始剤を特定の方法で反応系に導入することにより、粉砕が容易で、取扱い性に優れたポリビニルピロリドン重合体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法は、沈殿重合法によるポリビニルピロリドン重合体の製造方法であって、N-ビニルピロリドンを含むモノマー成分と、重合開始剤と、を別個に反応媒体中に滴下する滴下工程を含んでいる。該滴下工程前の初期反応媒体中の該重合開始剤量は、反応に使用する該重合開始剤全量の30質量%以下であり、該滴下工程において、該重合開始剤を該モノマー成分の滴下時間より長い時間で滴下する。
上記製造方法において、重合温度は、上記重合開始剤の10時間半減温度に対し、+15℃以上+30℃以下であることが好ましい。
また、上記モノマー成分は、N-ビニルピロリドンを50質量%以上、100質量%以下の割合で含むことが好ましい。
上記モノマー成分は、さらに、前記N-ビニルピロリドン以外の水溶性モノマーを0.001質量%以上、50質量%以下の割合で含むことが好ましく、また、上記水溶性モノマーは水酸基またはカルボキシル基、スルホン酸基を有することが好ましく、さらに、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
さらに、上記モノマー成分中の全てのモノマーは水溶性であることが好ましい。
さらにまた、上記モノマー成分は、多官能性モノマーを0.01質量%以上、5質量%以下の割合で含むことが好ましい。
【0009】
また、本発明のポリビニルピロリドン重合体粉体の製造方法は、上記のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られたポリビニルピロリドン重合体を粉砕してポリビニルピロリドン重合体粉体を得る工程を含む。
【0010】
さらに、本発明の化粧品組成物は、上記のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られたポリビニルピロリドン重合体、または、該ポリビニルピロリドン重合体を粉砕して得られた粉体を含む。
【0011】
さらにまた、本発明のポリビニルピロリドン重合体は、上記のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法によれば、粉砕が容易で、取扱い性に優れたポリビニルピロリドン重合体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施例のポリビニルピロリドン重合体の粉砕前の凝集体のマイクロスコープ写真である。
図2図2は、実施例のポリビニルピロリドン重合体の粉砕後の粉体のマイクロスコープ写真である。
図3図3は、実施例のポリビニルピロリドン重合体の粉砕後の粉体の1次粒子のSEM写真である。
図4図4は、他の実施例のポリビニルピロリドン重合体の粉砕前の凝集体のマイクロスコープ写真である。
図5図5は、比較例のポリビニルピロリドン重合体の粉砕前の凝集体のマイクロスコープ写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ポリビニルピロリドン重合体の製造方法>
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法は、沈殿重合法によるポリビニルピロリドン重合体の製造方法であって、N-ビニルピロリドンを含むモノマー成分と、重合開始剤と、を別個に反応媒体中に滴下する滴下工程を含んでいる。該滴下工程前の初期反応媒体中の該重合開始剤量は、反応に使用する該重合開始剤全量の30質量%以下であり、該滴下工程において、該重合開始剤を該モノマー成分の滴下時間より長い時間で滴下する。そして、凝集物として重合体を得る。上記凝集物は、好ましくは球形粒子を含んでおり、上記球形粒子としては、完全な球形の粒子のみならず、略球形の粒子、平面視で略楕円形の粒子等も含む。
【0015】
沈殿重合法とは、モノマー成分は重合溶媒と相溶・溶解するが、生成した重合体は上記重合溶媒に溶解しない重合系における重合法である。この重合法においては、重合反応の進行と共に、生成した重合体が析出(沈殿)する。析出した重合体はモノマー成分で膨潤しており、重合反応は、溶媒中と、ポリマー近傍において、それぞれ進行する。この場合に重合開始剤を使用するが、該重合開始剤は、上記重合溶媒とモノマー成分の両方に溶解可能であることが好ましい。
【0016】
上記滴下工程において、N-ビニルピロリドンを含むモノマー成分と、重合開始剤と、を別個に反応媒体中に滴下する方法としては、上記N-ビニルピロリドンを含むモノマー成分と、上記重合開始剤と、を別々の滴下ロートに入れ、初期反応媒体を入れた反応容器にそれぞれ別個に滴下すればよい。上記N-ビニルピロリドンを含むモノマー成分と、上記重合開始剤とは、それぞれ、溶剤との混合溶液であってもよい。
【0017】
上記滴下工程前の初期反応媒体中の該重合開始剤量は、反応に使用する該重合開始剤全量の30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは0~5質量%である。
【0018】
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法では、重合を行なう際には、反応媒体として溶剤を使用する。溶剤としては、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤が例示される。
【0019】
上記滴下工程前の初期反応媒体としては、上記溶剤、または、上記溶剤に加えて上記で示した範囲の重合開始剤が挙げられる。上記初期反応媒体中のモノマー成分量としては、上記モノマー成分全量の30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下であり、特に好ましくは0~5質量%である。
【0020】
上記初期反応媒体中へのモノマー成分の滴下時間は、0.5~10.0時間が好ましい。また、上記初期反応媒体中への重合開始剤の滴下時間は、上記モノマー成分の滴下時間より長く1.0~20時間が好ましい。上記初期反応媒体中への重合開始剤の滴下時間は、上記モノマー成分の滴下時間に対して、1.10~3.00倍であることが好ましく、1.15~2.50倍であることがより好ましく、1.20~2.00倍であることがさらに好ましい。
【0021】
上記重合を行なう際の重合温度は、上記重合開始剤の10時間半減温度に対し、+15℃以上+30℃以下であることが好ましい。重合温度はモノマーを滴下している間の反応液の温度であり、反応中に変動する場合は最大温度と最低温度の中間の値とする。
10時間半減温度とは、重合開始剤の濃度が反応開始から10時間後に初期値の1/2となる温度であり、重合開始剤の選択の基準として一般的に用いられている。
重合開始剤を初期一括で添加した場合、反応系内の開始ラジカル濃度は時間の経過と共に減少するのに対し、適切な温度の反応液に重合開始剤を滴下した場合は開始ラジカル濃度が一定に保たれ、モノマー消費が安定し、重合物の塊状化や器壁・攪拌羽への付着を抑制できる。重合開始剤については後述する。
【0022】
重合開始剤の10時間半減温度は製造メーカーが公開している値を用いることができる。有機過酸化物系開始剤では、例えば日油株式会社から公開されており、イソブチルパーオキシドでは32.7℃、クミルパーオキシネオデカノエートでは36.5℃、ジ‐n‐プロピルパーオキジカーボーネートでは40.3℃、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートでは40.5℃、ジ‐sec‐ブチルパーオキシジカーボネートでは40.5℃、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエートでは40.7℃、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートでは40.8℃、ジ(2‐エチルヘキシル)パーオキシジカーボネートでは43.6℃、t‐ヘキシルパーオキシネオデカノエートでは44.5℃、t‐ブチルパーオキシネオデカノエートでは46.4℃、t‐ヘキシルパーオキシピバレートでは53.2℃、t‐ブチルパーオキシピバレートでは54.6℃、ジ(3,5,5‐トリメチルヘキサノイル)パーオキシドでは59.4℃、ジラウロイルパーオキシドでは61.6℃、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエートでは65.3℃、ジサクシニックアシッドパーオキシドでは65.9℃、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(2‐エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサンでは66.2℃、t‐ヘキシルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエートでは69.9℃、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエートでは72.1℃、ジ(3‐メチルベンゾイル)パーオキシド,ベンゾイル(3‐メチルベンゾイル)パーオキシド,ジベンゾイルパーオキシドの混合物では73.1℃、ジベンゾイルパーオキシドでは73.6℃、1,1‐ジ(t‐ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサンでは87.1℃、1,1‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサンでは90.7℃、2,2‐ジ(4,4‐ジ‐(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパンでは94.7℃、t‐ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネートでは95.0℃、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエートでは97.1℃、t‐ブチルパーオキシラウレートでは98.3℃、t‐ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートでは98.7℃、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキシルモノカーボネートでは99.0℃、t‐ヘキシルパーオキシベンゾエートでは99.4℃、2,5‐ジメチル2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンでは99.7℃、t‐ブチルパーオキシアセテートでは101.9℃、2,2‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ブタンでは103.1℃、t‐ブチルパーオキシベンゾエートでは104.3℃、n‐ブチル 4,4,‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)バレレートでは104.5℃、ジ(2‐t‐ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンでは119.2℃、ジクミルパーオキシドでは116.4℃、ジ‐t‐ヘキシルパーオキシドでは116.4℃、2,5‐ジメチル2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサンでは117.9℃、t-ブチルクミルパーオキシドでは119.5℃、ジ‐t‐ブチルパーオキシドでは123.7℃、p‐メンタンハイドロパーオキシドでは128.0℃、2,5‐ジメチル2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3では128.4℃、ジイソプロピルベンゼンでは145.1℃、1,1,3,3‐テトラメチルブチルハイドロパーオキシドでは152.9℃、クメンハイロドパーオキシドでは157.9℃、t‐ブチルヒドロパーオキシドでは166.5℃である。また、アルケマ吉冨株式会社からも同様のデータが開示されている。
【0023】
アゾ系重合開始剤の10時間半減温度としては、例えば富士フィルム和光純薬株式会社より公開されており、2,2‐アゾビス(イソブチロニトリル)では65℃、2,2’‐アゾビス(4‐メトキシ‐2,4‐ジメチルバレロニトリル)では30℃、2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)では51℃、ジメチル2,2’‐アゾビス(2‐メチルプロピオネート)では66℃、2,2’‐アゾビス(2‐メチルブチロニトリル)では67℃、1、1’‐アゾビス(シクロヘキサン‐1‐カーボニトリル)では88℃、2,2’‐アゾビス(N‐ブチル‐2‐メチルプロピオンアミドでは110℃、ジメチル1,1‐アゾビス(1‐シクロヘキサンカルボキシレート)では73℃、である。
【0024】
1.モノマー成分
1-1 N-ビニルピロリドン
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で使用するモノマー成分は、N-ビニルピロリドンを含んでいる。上記モノマー成分は、N-ビニルピロリドンを50質量%以上、100質量%以下の割合で含むことが好ましく、60質量%以上、100質量%以下の割合で含むことがより好ましく、70質量%以上、100質量%以下の割合で含むことがさらに好ましい。
【0025】
モノマー成分に含まれるN-ビニルピロリドンとしては、N-ビニルピロリドンおよびN-ビニルピロリドンに含まれる1または2以上の水素原子が他の置換基で置換された化合物が使用できる。上記他の置換基としては、アルキル基、アリール基、水酸基、アルコキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アミド基等が例示される。上記他の置換基としては、炭素数が0~12の置換基が好ましく、1~4の置換基が好ましい。これらN-ビニルピロリドン単量体は、一種類のみを用いてもよく、二種類以上を併用しても良い。
【0026】
1-2 その他の単量体
N-ビニルピロリドン以外のモノマー成分としては、その他の単量体として、重合性の炭素-炭素二重結合を構造中に1つだけ有する化合物が挙げられる。上記その他の単量体は、好ましくはラジカル重合可能な化合物である。
上記その他の単量体としては、具体的には、(i)アクリル酸、メタアクリル酸等の不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩;(ii)フマル酸、マレイン酸、メチレングルタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩(一塩であっても二塩であっても良い);(iii)3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩;(iv)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等不飽和アルコール及びこれらの水酸基にアルキレンオキシドを付加したアルキレンオキシド付加物;(v)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(vi)(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド;(vii)スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;(viii)エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、オクテン等のアルケン類;(ix)酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル類;(x)N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールおよびこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;(xi)ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルオキサゾリドン等のビニルアミド類;(xii)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和無水物類;(xiii)ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;(xiv)(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル及びその誘導体;(xv)メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
なお、上記(i)~(iii)、(x)における塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が例示される。上記(iv)におけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が例示され、炭素数1~20のアルキレンオキシドが好ましく炭素数1~4のアルキレンオキシドがより好ましい。上記(iv)におけるアルキレンオキシドの付加モル数としては、上記(iv)の化合物1モルあたり0~50モルが好ましく、0~20モルがより好ましい。
【0027】
上記その他の単量体としては、炭素数2~20の単量体が好ましい。より好ましくは、炭素数2~15の単量体であり、更に好ましくは、炭素数2~10の単量体である。なお、その他の単量体がアルキレンオキシド付加物である場合は、アルキレンオキシド構造部位以外の構造部位の炭素数がこれらの値であることが好ましい。
【0028】
モノマー成分が上記その他の単量体を含んでいる場合、その他の単量体を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0029】
1-3 水溶性モノマー
上記その他の単量体としては、水溶性モノマーが好ましい。上記水溶性モノマーとしては水酸基またはカルボキシル基、スルホン酸基を有することが好ましく、上記(i)~(iv)、(x)等である。なお、本明細書において水溶性モノマーとは、アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸、N-ビニルピロリドン等の比較的分子量の小さいモノマーを指し、比較的分子量の大きいもので、界面活性剤のような親水基と疎水基を兼ね備える半水溶性モノマーは含まない。
上記水溶性モノマーとしては、中でも、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
【0030】
上記N-ビニルピロリドン以外の水溶性モノマーの含有量としては、モノマー成分100質量%中、0.001質量%以上、50質量%以下が好ましく、0.001質量%以上、40質量%以下がより好ましく、0.001質量%以上、30質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
ここで、N-ビニルピロリドンは上記したように水溶性モノマーである。そして、本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で使用するモノマー成分中の全てのモノマーは水溶性であることが好ましい。
【0032】
1-4 多官能性モノマー
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で使用するモノマー成分は、多官能性モノマー(架橋性単量体)を含んでいることが好ましい。上記架橋性単量体としては、具体的には、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の炭素数1~4のアルキレン基を有するN,N’-アルキレンビス(メタ)アクリルアミド;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の炭素数1~4のアルキレン基を有する(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の炭素数1~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドで変性されていてもよいトリメチロールプロパン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート;グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート等のグリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレ-ト等のジペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ)(メタ)アクリレ-ト;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アリルエーテル等のペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテル;トリアリルシアヌレート(シアヌル酸トリアリル)、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン等の炭素数9~20のトリアリル化合物;炭酸ジアリル、1,3-ビス(アリルオキシ)-2-プロパノール等の炭素数6~20のジアリル化合物;ジビニルエーテル、ジビニルケトン、トリビニルベンゼン等の炭素数4~20の(ジ、トリ)ビニル化合物;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素数2~20のジイソシアネート;ポリ(メタ)アリロキシアルカン等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記架橋性単量体の中でも、残存するN-ビニルピロリドン及び可溶分が低下する傾向にあることから、アリル基を2個以上有する化合物を使用することが好ましい。具体的には、シアヌル酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、炭酸ジアリル、1,3-ビス(アリルオキシ)-2-プロパノール、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテル等が好ましく、シアヌル酸トリアリル、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテルが最も好ましい。
【0034】
上記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、好ましくは1分子あたり2以上、50以下、より好ましくは2以上、20以下、さらに好ましくは2以上、10以下のオキシアルキレン基を有する。上記ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが有するオキシアルキレン基100モル%に対し、オキシエチレン基が50~100モル%であることが好ましく、80~100モル%であることが好ましい。
【0035】
上記トリメチロールプロパン(ジ、トリ)(メタ)アクリレートが炭素数1~4のアルキレン基を有するアルキレンオキサイドで変性されたものである場合の、トリメチロールプロパン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート1分子あたりのアルキレンオキサイドの平均付加数も同様であることが好ましい。
【0036】
上記架橋性単量体の使用量については、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜調整すればよい。例えば、上記モノマー成分は、架橋性単量体を、全単量体100質量%中、0.01質量%以上、5質量%以下の割合で含むことが好ましく、0.01質量%以上、1質量%以下有することがより好ましい。架橋性単量体の使用量を調整することで、得られるポリビニルピロリドン重合体が有する、界面活性剤や溶媒を吸収、保持する能力を調整することができる。ポリビニルピロリドンが溶媒を吸収し、膨潤してゲル化するものである場合、ポリビニルピロリドンは増粘剤としての効果を発揮することが期待でき、また、水を吸収、保持、徐放させることで保湿効果も期待できる。
【0037】
2.重合開始剤
重合開始剤としては公知のものを使用することができる。例えば、過硫酸塩類、過酸化水素、有機過酸化物、アゾ化合物、などであり、好ましくは油溶性有機過酸化物と油溶性アゾ化合物である。具体的には、有機過酸化物としては、ジイソブチルパーオキシド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ‐n‐プロピルパーオキジカーボーネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ‐sec‐ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2‐エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t‐ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t‐ブチルパーオキシネオデカノエート、t‐ヘキシルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5‐トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、ジサクシニックアシッドパーオキシド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(2‐エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ヘキシルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、ジ(3‐メチルベンゾイル)パーオキシドとベンゾイル(3‐メチルベンゾイル)パーオキシドとジベンゾイルパーオキシドの混合物、ジベンゾイルパーオキシド、1,1‐ジ(t‐ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2‐ジ(4,4‐ジ‐(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t‐ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキシルモノカーボネート、t‐ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5‐ジメチル2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシアセテート、2,2‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ブタン、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、n‐ブチル 4,4,‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2‐t‐ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ‐t‐ヘキシルパーオキシド、2,5‐ジメチル2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキシド、ジ‐t‐ブチルパーオキシド、p‐メンタンハイドロパーオキシド、2,5‐ジメチル2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3、ジイソプロピルベンゼン、1,1,3,3‐テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、クメンハイロドパーオキシド、t‐ブチルヒドロパーオキシドなどが例示できる。
【0038】
アゾ化合物としては、2,2‐アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’‐アゾビス(4‐メトキシ‐2,4‐ジメチルバレロニトリル)、2,2’‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’‐アゾビス(2‐メチルプロピオネート)、2,2’‐アゾビス(2‐メチルブチロニトリル)、1、1’‐アゾビス(シクロヘキサン‐1‐カーボニトリル)、2,2’‐アゾビス(N‐ブチル‐2‐メチルプロピオンアミド、ジメチル1,1‐アゾビス(1‐シクロヘキサンカルボキシレートなどが例示できる。また、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤も使用できる。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0039】
上記重合開始剤の使用量としては、単量体の使用量(N-ビニルピロリドンと上述したその他の単量体と架橋性単量体の合計の使用量)1モルに対して、0.01g以上、10g以下であることが好ましく、0.05g以上、7g以下であることがより好ましく、0.1g以上、5g以下であることがさらに好ましい。開始剤の使用量をこのような割合とすることで、得られる重合体に含まれる未反応の単量体の割合を充分に少なくすることができる。
【0040】
上記重合工程を行う反応容器の材質は、重合工程を行うことができるものである限り特に制限されないが、ステンレス等の材質の反応容器を用いることが好ましい。これらの熱が伝わりやすい材質の反応容器を用いて重合反応を行うことで重合反応を充分に進行させ、得られる重合体中に含まれる未反応の単量体(N-ビニルピロリドン等)の含有量を少なくすることができる。
また、ポリプロピレン等の鉄を溶出させない材質の反応容器を用いることも好ましく、これらの材質の反応容器を用いることで、得られる重合体中に含まれる鉄分の含有量を少なくすることができる。
【0041】
重合反応を行なう際の攪拌羽根の形状は、特に限定されるものではないが、パドル型、多段パドル型、傾斜パドル型、錨型、プロペラ型やこれらを組み合わせたもの、マックスブレンド型など公知のものを使用することができる。
【0042】
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法では、上記重合工程に加え、任意の工程を含んで製造してもよい。例えば、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、造粒工程、後架橋工程等を含んでいてもよい。
【0043】
3.重合体
本発明のポリビニルピロリドン重合体は、上記のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られる。本発明のポリビニルピロリドン重合体(PVP)の製造方法によれば、非常に小さい1次粒子が緩やかに凝集した球形粒子を含む重合体が得られ、この球形粒子はハンドリングし易いだけでなく、非常に容易に粉砕される。このため、特殊な粉砕が不要であるという優れた効果が得られる。また、上記凝集した球形粒子を溶液に投入すると、速やかに1次粒子となって分散し、短時間で均一な分散液またはゲル状物を得ることができる。同様に、粉砕後の球形粒子についても、溶液へ投入することで、速やかに1次粒子となって分散し、短時間で均一な分散液またはゲル状物を得ることができる。
【0044】
本発明のポリビニルピロリドン重合体(PVP)の製造方法で得られた重合体は、好ましくは数百μmの球形粒子となり、他の従来の製造方法で得られる沈殿重合品より大きくより整った球形粒子となる。上記球形粒子の大きさは、好ましくは100μm以上、2000μm以下であり、より好ましくは200μm以上、1500μm以下、さらに好ましくは300μm以上、1000μm以下ある。この粒子は非常に容易に粉砕される。
本発明の製造方法で得られるPVPに含まれる球形粒子は他の従来の製造方法で得られる沈殿重合品より静電気や気流の影響より自重が勝り粒子が飛び散り難くハンドリングが容易である。
本発明の製造方法では、好ましくは適切な温度の反応液に、開始剤とモノマーを滴下することによりモノマーの消費が常に安定している傾向がある。これにより、1次粒子が緩やかに凝集した大きな整った球形粒子を得ることが可能となる。
【0045】
本発明のポリビニルピロリドン重合体(PVP)の製造方法で得られた、好ましくは球形粒子である重合体は粒子径が2μm以下の不定形の一次粒子の集合体であり、一次粒子の粒子径は、好ましくは10nm以上、2000nm以下、より好ましくは20nm以上、1000nm以下である。上記範囲であることにより、界面活性剤担持剤とした場合の界面活性剤吸液能力が向上する傾向にある。重合体の平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0046】
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法では乾燥する工程を設けることが好ましい。なお、乾燥とは固形分の上昇操作をいい、通常、重合体全体の重量に対する固形分の割合が乾燥前と比較して上昇すればよい。乾燥は重合の一部と同時に行ってもよく、重合時の乾燥と重合後の乾燥とを併用してもよいが、より好ましくは、重合後に乾燥装置を用いて乾燥する乾燥工程が設けられる。
【0047】
上記乾燥工程は、好ましくは乾燥工程の時間全体の50%以上の時間、より好ましくは実質すべての乾燥工程をとおして80℃~250℃の範囲で行われる。上記範囲であることにより、重合体の諸物性がより向上する傾向にある。
なお、乾燥温度は熱媒温度で規定するが、マイクロ波等熱媒温度で規定できない場合は材料温度で規定する。乾燥方法としては、乾燥温度が上記範囲内であれば特に限定されるものではなく、熱風乾燥、無風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥等を好適に用いることができる。中でも、熱風乾燥を用いることがより好ましい。熱風乾燥を用いる場合の乾燥風量は、好ましくは0.01~10m/sec、より好ましくは0.1~5m/secの範囲である。乾燥温度の範囲はより好ましくは110℃~220℃、さらに好ましくは120℃~200℃の温度範囲である。また、乾燥は、一定温度で乾燥してもよく、温度を変化させて乾燥してもよいが、実質、すべての乾燥工程は上記の温度範囲内でなされることが好ましい。
【0048】
上記粉砕工程は、粉砕機を使用して行うことが好ましい。本発明の製造方法が乾燥工程を含む場合、粉砕は乾燥前、中、後のいずれに行っても良いが、好ましくは乾燥後である。上記粉砕機は特に限定されるものではないが、例えばロールミルのようなロール式粉砕機、ハンマーミルのようなハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、カッターミル、ターボグラインダー、ボールミル、フラッシュミル、ジェットミル等が用いられる。この中でも、粒度分布を制御するためにはロールミルを用いることがより好ましい。粒度分布を制御するため連続して2回以上粉砕することがより好ましく、連続して3回以上粉砕することがさらに好ましい。
また、2回以上粉砕する場合には、それぞれの粉砕機は同じであっても異なっていてもよい。異なる種類の粉砕機を組み合わせて使うことも可能である。
【0049】
例えば本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体を特定の粒度分布に制御するために、分級工程や造粒工程を設けてもよい。上記分級は、特定の目開きの篩を使用してもよい。篩で分級するために用いる分級機は特に限定されるものではないが、たとえば振動篩(アンバランスウェイト駆動式、共振式、振動モータ式、電磁式、円型振動式等)、面内運動篩(水平運動式、水平円-直線運動式、3次元円運動式等)、可動網式篩、強制攪拌式篩、網面振動式篩、風力篩、音波篩等が用いられ、好ましくは振動篩、面内運動篩が用いられる。
【0050】
<化粧品組成物>
本発明の化粧品組成物は、本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体、または、該ポリビニルピロリドン重合体を粉砕して得られた粉体を含んでいる。上記化粧品組成物に含まれる上記重合体、または、該ポリビニルピロリドン重合体を粉砕して得られた粉体は、より詳しくは、界面活性剤、芳香成分、消臭成分、化粧品成分等の担持剤、保湿剤、増粘剤、分散剤等に好適に用いられるが、後述する化粧品用途において好適に用いられる。化粧品の用途で用いられる重合体としては、吸液速度を早くするため、及び、肌触り、感触をよくするために、粒子径が小さいものが求められるが、本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体は、上記の通り、粉砕が容易で、粒子径が小さいものとすることができ、化粧品用途に好適である。また、本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体は一次粒子が分散しやすいため、特に肌触り、感触に優れている。
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体、または、それを粉砕して得られた粉体を含む化粧品組成物は、化粧品成分を含み、且つ、肌触り、感触に優れた化粧品組成物とすることができる。
【0051】
本発明の化粧品組成物の用途としては、その剤形や製品形態が特に限定されるものではなく、油中水型、水中油型、水分散型、プレス状、固形等、パウダーなどの剤形とすることができ、また製品形態としては、洗顔フォーム・クリーム、クレンジング、マッサージクリーム、パック、化粧水、乳液、クリーム、美容液、化粧下地、日焼け止めなどの皮膚用化粧料;ファンデーション、水白粉、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、アイブロウ、コンシーラー、口紅、リップクリーム等の仕上げ用化粧料;ヘアミスト、シャンプー、リンス、トリートメント、ヘアトニック、ヘアクリーム、ポマード、チック、液体整髪料;セットローション、ヘアスプレー、染毛料等の頭髪用化粧料;パウダースプレー、ロールオン等の制汗剤などを例示することができる。この中でも、ゲル、クリーム、乳液、ローションなどの粘性を有する製剤等が本発明の効果が発揮されやすい。
【0052】
本発明の化粧品組成物は、本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体(または、それを粉砕して得られた粉体)のみを含んでいてもよいが、その他の成分を含んでいてもよい。上記化粧品組成物は、本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体を、例えば、上記化粧品組成物100質量%中、0.1質量%以上、30質量%以下含んでいてもよい。
【0053】
その他の成分としては、通常化粧品に配合される成分、例えば、油性成分、粉体成分、界面活性剤、油ゲル化剤、水性成分、水溶性高分子、紫外線吸収剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0054】
油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源及び、固形、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、エステル油類、硬化油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、フィッシャートロプシュワックス、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類;モクロウ、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、ヒマシ油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類;ロジン酸ペンタエリスリットエステル、ホホバ油、トリ2―エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等のエステル類;オレイン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類;ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール類;メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、トリメチルシロキケイ酸、架橋型ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、メタクリル変性メチルポリシロキサン、オレイル変性メチルポリシロキサン、ポリビニルピロリドン変性メチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン等のシリコーン油類;ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類;イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上用いることができる。これらの中でもトリ2―エチルヘキサン酸グリセリル、イソノナン酸イソノニル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール等の低分子量エステル油が、伸び広がりや付着性の観点から好ましい。
【0055】
粉体成分としては、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色無機顔料;酸化鉄、カーボンブラック、酸化クロム、水酸化クロム、紺青、群青等の有色無機顔料;タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、シリカ等の白色体質粉体;二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄雲母、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔等の光輝性粉体;ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリル共重合体等のコポリマー樹脂;ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体;ステアリン酸亜鉛、N-アシルリジン等の有機低分子性粉体;澱粉、シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体;赤色201号、赤色202号、赤色205号、赤色226号、赤色228号、橙色203号、橙色204号、青色404号、黄色401号等の有機顔料粉体;赤色3号、赤色104号、赤色106号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号等のジルコニウム、バリウム又はアルミニウムレーキ等の有機顔料粉体あるいは更にアルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体;微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン二酸化珪素、酸化亜鉛二酸化珪素等の複合粉体;ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末のラメ剤、タール色素、天然色素等が挙げられ、これら粉体はその1種又は2種以上を用いることができ、更に複合化したものを用いても良い。尚、これら粉体成分は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックスクワランス、ロウ、界面活性剤等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0056】
界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等の非イオン性界面活性剤類;アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α-スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-メチル-N-アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩等の陰イオン性界面活性剤類;アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノイルアミン脂肪酸誘導体、アルキルアンモニウム塩、脂環式アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤類;レシチン、N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられ、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0057】
油ゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、疎水性煙霧状シリカ、有機変性ベントナイト等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
【0058】
水性成分としては、水及び水に可溶な成分であれば何れでもよく、水の他に、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液等が挙げられる。
【0059】
水溶性高分子としては、グアーガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等の天然系のもの、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の半合成系のもの、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成系のものを挙げることができる。
【0060】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系、PABA系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えばα-トコフェロール、アスコルビン酸等が挙げられる。
美容成分としては、例えばビタミン類、タンパク質、消炎剤、生薬等が挙げられる。
防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0061】
また、上記以外の各種成分としては、例えば、保湿剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、消泡剤、香料、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタンなどのフッ素系油剤;多価アルコール、糖類、アミノ酸、各種ポリマー、エタノール、増粘剤、PH調整剤、血行促進剤、冷感剤、殺菌剤、皮膚賦活剤なども、本発明の効果を損なわない範囲内で配合可能である。
【0062】
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体は、N-ビニルピロリドンの含有量が該重合体100質量%に対して1~1000ppmであることが好ましい。より好ましくは、1ppm以上、800ppm以下であり、さらに好ましくは、1ppm以上、500ppm以下である。上記範囲であることにより、色調や保存安定性が良好になる傾向にある。また、化粧品用途に使用される材料には高い安全性が求められるため、N-ビニルピロリドンの含有量が上記範囲であることで、より安全性が高く、化粧品用途に使用される材料としてより好適なものとなる。
【0063】
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体は、好ましくは界面活性剤の吸液能力が10g/g以上(すなわち、10倍以上)である。より好ましくは、15g/g以上(すなわち、15倍以上)であり、さらに好ましくは20g/g以上(すなわち、20倍以上)である。界面活性剤の吸液能力の上限に関しては、例えば50g/g以下(すなわち、50倍以下)である。
【0064】
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体は、粉末状で使用してもよいが、分散媒に分散させ分散体として使用したり、フィルム等に担持させてシート状に成形して使用してもよい。上記分散体やシート全体における含有量は、例えば1質量%~80質量%とすることができる。
【0065】
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体は、好ましくは界面活性剤の担持に用いられるが、担持可能な界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、或いは、高分子界面活性剤、反応性界面活性剤等が挙げられるが、特に限定されるものではない。中でも、アニオン性界面活性剤の担持に特に好適に用いられる。
【0066】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸(塩)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルメチルカルボン酸(塩)、リノール酸、オレイン酸等の高級脂肪酸およびその塩等が例示される。
【0067】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体等が例示される。
【0068】
両性界面活性剤としては、例えば、N-アシルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニオベタイン、N-アシルアミドプロピル-N’,N’-ジメチル-N’-β-ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタイン等が例示され、カチオン性界面活性剤としては、モノアルキルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、カチオン化セルロース等が例示される。
【0069】
上記界面活性剤は、単独で担持してもよく、また、二種類以上を担持してもよい。
【0070】
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体は、良好な界面活性剤の吸着能力と保持能力を有し、化粧品に使用することができるが、溶媒として水を含むものが多い化粧品に使用する場合、予め界面活性剤や界面活性剤と相溶する溶剤を担持させて使用することで、界面活性剤担持剤を吸収しやすいものにして、より多くの界面活性剤を吸収させることができる。
【0071】
上記予め担持させる界面活性剤や界面活性剤と相溶する溶剤の量は、上記重合体100質量%に対して、0.01質量%以上、3質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、3質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上、3質量%以下であることが更に好ましい。このような割合で担持させると、予め界面活性剤や界面活性剤と相溶する溶剤を吸収させることによる作用を充分に発揮しつつ、充分な量の界面活性剤を吸収することができる。
【0072】
上記界面活性剤担持剤に予め担持させる界面活性剤や界面活性剤と相溶する溶剤は、界面活性剤や界面活性剤と相溶する溶剤であれば特に制限されないが、アニオン性界面活性剤や炭素数2~12の低級~中級脂肪酸が好ましい。より好ましくは、リノール酸、オレイン酸等の25℃~45℃、常圧(1気圧)下で液状の低級~高級脂肪酸である。
【0073】
本発明のポリビニルピロリドン重合体の製造方法で得られた重合体に界面活性剤を担持させたものは、疎水成分を水系溶媒中で分散させる効果が期待できるため、水系溶媒を含む化粧品に添加することで、化粧品の成分中の疎水成分の分散剤としての効果も期待できる。この場合、上記重合体をそのまま化粧品に添加してもよく、界面活性剤や界面活性剤と相溶する溶剤を予め担持させたものを化粧品に添加してもよいが、分散剤としての効果を充分に発揮させる点から、界面活性剤を予め担持させたものを化粧品に添加することが好ましい。
また、上記化粧品組成物を人体に塗布した場合、上記重合体が吸液した水を徐放して保湿機能を発揮することも期待される。
【実施例
【0074】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
<平均粒子径の測定方法>
球形粒子等の観察は、ハイロックス社製デジタルマイクロスコープ KH‐8700を用い、10個以上の粒子の直径を計測し平均粒径を求めた。1次粒子の観察は、日本電子社製FE‐SEM JSM‐7600Fを用いた。
【0076】
<粉砕方法>
大阪ケミカル製 ラボ用粉砕機 OML‐1(回転数2万回/分 容量50ML)を用い、3秒粉砕した後にカップを転倒攪拌する事を3回繰り返した。
【0077】
<ゲルの調整>
粉砕前の、粉砕していない重合体0.5gを20mlサンプル瓶へ秤量し、5質量%となるようにイオン交換水を加えた。重合体の溶解・分散の様子と、得られたゲルの状態を確認した。
【0078】
略号と商品名の説明
NVP :N‐ビニルピロリドン
AA :アクリル酸
PETAE:ペンタエリスリトールトリアリレート (大阪ソーダ社製 ネオアリルP‐30M)
V‐601:ジメチル2,2’アゾビス(2‐メチルプロピオネート)[和光純薬工業社製 CAS番号2589‐57‐3 10時間半減温度66℃(トルエン中)]
V‐65 :2,2’アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業社製 CAS番号4419‐11‐8 10時間半減温度51℃(トルエン中)]
ルペロックス11 :t‐ブチルパーオキシピバレート[アルケマ吉冨社製 CAS番号927‐07‐1 10時間半減温度55℃(ベンゼン中)]
ルペロックス26 :t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート[アルケマ吉冨社製 10時間半減温度73℃(ベンゼン中)、77℃(ドデカン中)]
ルペロックス570:t‐アミルパーオキシイソノナノエート[アルケマ吉冨社製 10時間半減温度96℃(ドデカン中)]
【0079】
(実施例1) 攪拌装置(パドル翼タイプ)、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた容量300mlのフラスコに下記に示す初期仕込みを計量し、窒素雰囲気下で100℃のオイルバスで加熱した。フラスコ内の温度が一定になった後、下記に示す滴下1および滴下2の投入を開始した。滴下1は3時間、滴下2は4.5時間かけて一定速度で計量投入した。滴下開始から10分程度で、重合体の析出が始まり次第に析出量が増えていった。滴下2の投入終了後、さらに0.5時間加熱を継続した後、フラスコを冷却し反応を終了した。フラスコ内の温度は、85℃から95℃の間であり、概ね時間の経過と共に上昇する傾向であった(中間値は90℃)。
*初期仕込み:
ヘプタン 100g
*滴下1:
NVP 25g
AA 0.25g
PETAE 0.05g
*滴下2:
V-601 0.07g
ヘプタン 40g
【0080】
続いて、反応液をろ過して重合体である沈殿物を回収し、125℃で1時間減圧乾燥を行い、(重合体1)を得た。(重合体1)は、大部分が直径約300~600μmであり、平均粒径は480μmであった。適度な大きさの球形粒子として得られた為、短時間でデカンテーションとろ過が終了し、粉体を取り扱う際に気流や静電気の影響が小さく、取り扱いが容易であった。
球形粒子を粉砕するときめの細かい均一な粉体が得られ、この粉体をマイクロスコープで観察したところ、球形粒子は存在せず10~100μm程度の不定形粒子であり、平均粒径は50μmであった。続いてSEMで観察したところ、50~500nmの不定形の1次粒子が凝集した形態であった。(重合体1)の粉砕前のマイクロスコープ写真を図1に、粉砕後のマイクロスコープ写真を図2に、1次粒子のSEM写真を図3に示す。
【0081】
(実施例2)
初期仕込み、滴下1、滴下2を下記のように変更し、85℃のオイルバスで加熱した以外は実施例1と同様に(重合体2)を得た。フラスコ内の温度は、79℃から81℃の間であり、概ね時間の経過と共に上昇する傾向であった(中間値は80℃)。
*初期仕込み:
シクロヘキサン 100g
*滴下1:
NVP 25g
AA 0.025g
PETAE 0.05g
*滴下2:
V-65 0.075g
ヘプタン 40g
【0082】
続いて実施例1と同様にろ過・乾燥を行い(重合体2)を得た。(重合体2)は、適度な大きさの球形粒子として得られた為、短時間でデカンテーションとろ過が終了し、粉体を取り扱う際に気流や静電気の影響が小さく、取り扱いが容易であった。マイクロスコープで観察すると、大部分が直径約200~600μmの球形粒子であり、平均粒径は460μmであった。球形粒子を粉砕すると、きめの細かい均一な粉体が得られ、この粉体をマイクロスコープで観察したところ、球形粒子は存在せず10~100μm程度の不定形粒子であり、平均粒径は40μmであった。SEMで観察すると、50~500nmの不定形の1次粒子が凝集していた。(重合体2)の粉砕前のマイクロスコープ写真を図4に示す。
【0083】
(実施例3)
初期仕込み、滴下1、滴下2を下記のように変更し、滴下2の終了後4時間加熱を継続した以外は実施例1と同様に(重合体3)を得た。滴下開始から10分程度で、重合体の析出が始まり次第に析出量が増えていった。フラスコ内の温度は、88℃から96℃の間であり、概ね時間の経過と共に上昇する傾向であった(中間値は92℃)。
*初期仕込み:
ヘプタン 100g
*滴下1:
NVP 25g
PETAE 0.05g
*滴下2:
V-601 0.07g
ルペロックス570 0.25g
ヘプタン 40g
【0084】
続いて実施例1と同様にろ過・乾燥を行い(重合体3)を得た。(重合体3)は、適度な大きさの球形粒子として得られた為、短時間でデカンテーションとろ過が終了し、粉体を取り扱う際に気流や静電気の影響が小さく、取り扱いが容易であった。マイクロスコープで観察すると、大部分が直径約400~600μmの球形粒子であり、平均粒径は510μmであった。球形粒子を粉砕するときめの細かい均一な粉体が得られ、この粉体をマイクロスコープで観察したところ、球形粒子は存在せず10~100μm程度の不定形粒子であり、平均粒径は60μmであった。SEMで観察すると、50~500nmの不定形の1次粒子が凝集していた。
【0085】
(比較例1)
攪拌装置(錨型翼)、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた容量300mlのフラスコに下記に示す初期仕込みを計量し、窒素雰囲気下で65℃のオイルバスで加熱した。フラスコ内の温度が一定になった後、下記に示す滴下1の投入を開始した。滴下1は4時間かけて一定速度で計量投入した。滴下開始から10分程度で、重合体の析出が始まり次第に析出量が増えていった。滴下1の投入終了後、バス温度を約0.5時間かけて85℃まで上げ、さらに0.5時間85℃で加熱を継続した後、フラスコを冷却し反応を終了した。モノマー滴下中のフラスコ内の温度は、61℃から64℃の間であり、概ね時間の経過と共に上昇する傾向であった(中間値は62.5℃)。
*初期仕込み:
シクロヘキサン 100g
ルペロックス11 52μL (75%トルエン溶液)
*滴下1:
NVP 25g
PETAE 0.063g
【0086】
反応液をろ過して重合体である沈殿物を回収し、125℃で1時間減圧乾燥を行い、(比較重合体1)を得た。取り扱いの際、重合体1~3より粒子の飛散が多く、容器やさじへの付着も多かった。(比較重合体1)は、大部分が直径約100~400μmの不定形粒子であり、平均粒径は220μmであった。また、SEMで観察すると、50~500nmの不定形の1次粒子が凝集していた。(比較重合体1)の粉砕前のマイクロスコープ写真を図5に示す。
【0087】
(比較例2)
攪拌装置(パドル翼)、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた容量300mlのフラスコに下記に示す初期仕込みを計量し、窒素雰囲気下で64℃のオイルバスで加熱した。フラスコ内の温度が一定になった後、下記に示す滴下1と滴下2の投入を開始した。滴下1は3時間、滴下2は4時間、それぞれ一定速度で計量投入した。滴下開始から10分程度で重合体の析出が始まったが、析出量が増加は顕著ではなかった。滴下2の投入終了後、そのまま1時間反応を継続した時点で攪拌翼に多量の重合体が付着していたので、滴下3の投入を中止してフラスコを冷却し反応を中断した。モノマー滴下中のフラスコ内の温度は、62℃から64℃の間であった(中間値は63℃)。攪拌翼に粘ちょうなゲル状物が多量に付着しており、粒子状などの固形の重合物は得られなかった。
*初期仕込み:
酢酸エチル 107g
シクロヘキサン 38.4g
ルペロックス26 0.24g
滴下1と同じ組成の溶液 11.46g
滴下2と同じ組成の溶液 1.4g
*滴下1:
NVP 48g
酢酸エチル 9.3g
*滴下2:
V-65 0.04g
酢酸エチル 9.3g
*滴下3:
V-65 0.15g
ルペロックス26 0.24g
酢酸エチル 28g
【0088】
重合体1および2、3からゲルを調整したところ、いずれも速やかに分散・溶解し、自重で流動しないゲルが得られた。ゲルは均一で非常に滑らかな外観・感触であった。一方、比較重合体1では、速やかに分散したが粒状物が多数見られ、ゲルは粒状物を含んだ凹凸のある外観であり、ざらついて滑らかでない、不均一性を感じる感触であった。
【0089】
(配合例1)ヘアゲル
下記混合物1および2を、それぞれ溶解し均一化した。ついで、攪拌した混合物1に対し混合物2を少しずつ加えヘアゲルを得た。
*混合物1
CARBOPOL(商標)940 1g
水 149g
防腐剤 適量
トリエタノールアミン ph6.5~7.2に調整
*混合物2
重合体1 6g
香料 適量
水 44g
【0090】
(配合例2)シャンプー
下記混合物3および4を、それぞれ溶解し均一化した。ついで、攪拌した混合物3に対し混合物4を少しずつ加えシャンプーを得た。
*混合物3
ポリオキシエチレン(2)アルキルエーテル硫酸ナトリウム 14g
ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド 1g
重合体1 1.0g
水 54g
香料 適量
*混合物4
水 28g
塩化ナトリウム 1.0g
防腐剤 適量
【0091】
(配合例3)皮膚用クリーム
下記混合物5および6を、それぞれ80℃で溶解し均一化した。ついで、攪拌した混合物5に対し混合物6を少しずつ加え冷却し皮膚用クリームを得た。
*混合物5
ステアリルアルコール 1g
ポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル 2.3g
ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル 3.3g
モノステアリン酸グリセリン(HLB3.5) 5.0g
流動パラフィン 7.5g
セチルアルコール 2.5g
エチルヘキサン酸セチル 3.2g
酢酸トコフェロール 1.0g
防腐剤 適量
*混合物6
重合体1 1.0g
水 74g
1,2‐プロピレングリコール 1.5g
防腐剤 適量
【0092】
(配合例4)ローション
下記混合物7および8を、それぞれ80℃で溶解し均一化した。ついで、攪拌した混合物7に対し混合物8を少しずつ加え冷却しローションを得た。
*混合物7
ステアリルアルコール 0.5g
ポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル 1.0g
ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル 1.5g
モノステアリン酸グリセリン(HLB3.5) 5.0g
ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸 0.5g
流動パラフィン 3.5g
セチルアルコール 0.5g
エチルヘキサン酸セチル 10.0g
D(+)‐パンテノール 1.5g
酢酸トコフェロール 1.0g
ジメチルシリコーン(100cP) 0.3g
防腐剤 適量
*混合物8
重合体1 0.5g
水 71g
1,2‐プロピレングリコール 1.5g
防腐剤 適量
【0093】
配合例1~4の化粧品組成物は、いずれも、化粧品成分を含み、且つ、肌触り、感触に優れたものであった。
図1
図2
図3
図4
図5