IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-平坦化装置、及び物品の製造方法 図1
  • 特許-平坦化装置、及び物品の製造方法 図2
  • 特許-平坦化装置、及び物品の製造方法 図3
  • 特許-平坦化装置、及び物品の製造方法 図4
  • 特許-平坦化装置、及び物品の製造方法 図5
  • 特許-平坦化装置、及び物品の製造方法 図6
  • 特許-平坦化装置、及び物品の製造方法 図7
  • 特許-平坦化装置、及び物品の製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】平坦化装置、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20221219BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 578
B29C59/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018125526
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020004920
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 陽司
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-120604(JP,A)
【文献】特表2011-529626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0166933(US,A1)
【文献】特開2016-034000(JP,A)
【文献】特開2011-114046(JP,A)
【文献】特開2012-244178(JP,A)
【文献】特開2019-021911(JP,A)
【文献】特開2015-050437(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/00
B29C 59/02
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の組成物に型を接触させることによって前記組成物の表面を平坦化する平坦化装置であって、
前記型と前記組成物を接触させた状態で、前記組成物を硬化させるための光を前記組成物に対して照射する光照射部と、
前記組成物に対して前記光照射部が前記光を照射する光照射領域を輪帯形状に変化させるとともに、前記組成物のうち前記光の照射が終了した部分から先に、前記型と引き離すように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする平坦化装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基板を吸着しながら前記光の照射が終了した一部の前記基板の高さを変えるように、前記基板を保持する基板保持部を制御することを特徴とする請求項1に記載の平坦化装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記光照射部に、前記基板の周辺部から前記基板の中心部に向かって光照射領域を変化させて前記組成物に光を照射させることを特徴とする請求項1または2に記載の平坦化装置。
【請求項4】
前記制御部は、硬化した前記組成物から順次、前記型を前記基板の周辺部から前記基板の中心部に向かって前記型を引き離すように、前記型を保持する型保持部を制御することを特徴とする請求項3に記載の平坦化装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記光照射部に、前記基板の中心部から前記基板の周辺部に向かって光照射領域を変化させて前記組成物に光を照射させることを特徴とする請求項1または2の平坦化装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記光の照射が終了した部分の前記組成物を順次、前記型の中心部から前記型の周辺部に向かって引き離すように前記基板の高さを変えるように、前記基板を保持する基板保持部を制御することを特徴とする請求項5に記載の平坦化装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記組成物のうち前記光の照射が終了した部分における前記組成物から前記型を引き離すとともに、前記光の照射が終了した部分とは異なる前記組成物に対して前記光を照射することを並行して行うように制御することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の平坦化装置。
【請求項8】
前記型に付着した前記組成物を除去するための前記型の洗浄を行う洗浄部を更に有することを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の平坦化装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記基板上の全面における前記組成物を一括して平坦することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の平坦化装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちいずれか1項に記載の平坦化装置を用いて、前記基板上の前記組成物の表面を平坦化する工程と、
前記平坦化された基板を加工して物品を得る工程と、を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平坦化装置、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィ技術に加えて、基板上の未硬化のインプリント材を型(モールド)で成形して硬化させ、基板上にインプリント材のパターンを形成する微細加工技術が注目されている。かかる技術は、インプリント技術と呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターンを形成することができる。
【0003】
インプリント技術の1つとして、例えば、光硬化法がある。光硬化法を採用したインプリント装置は、基板上(ショット領域)に供給された光硬化性のインプリント材を型で成形し、光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を引き離すことで、基板上にパターンを形成する。
【0004】
また、近年では、インプリント装置を用いて基板を平坦化する技術が提案されている(特許文献1)。基板の平坦化技術に関しては、一般的には、既存の塗布装置(スピンコーター)を用いて基板上に塗布膜を形成することで基板の段差を平坦化する技術が知られているが、基板の段差をナノスケールで平坦化するには不十分である。一方、特許文献1に開示された技術は、基板の段差に基づいてインプリント材を滴下し、滴下したインプリント材にテンプレートを接触させた状態でインプリント材を硬化することで平坦化の精度向上を図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2011-529626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の平坦化装置には、離型動作に対する対応が十分でない。平坦化装置では大面積の型と基板上の全面に供給されたインプリント材と接触させ、インプリント材を硬化させた後に型の全面を引きはがすことがある。大面積の型の全面が硬化したインプリント材に接触した状態から離型しようとすると、離型にかかるエネルギーが高くなり容易に離型することができない。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、硬化したインプリント材から大面積の型を引き離すのに有利な平坦化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の平坦化装置は、基板上の組成物に型を接触させることによって前記組成物の表面を平坦化する平坦化装置であって、前記型と前記組成物を接触させた状態で、前記組成物を硬化させるための光を前記組成物に対して照射する光照射部と、前記組成物に対して前記光照射部が前記光を照射する光照射領域を輪帯形状に変化させるとともに、前記組成物のうち前記光の照射が終了した部分から先に、前記型と引き離すように制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬化したインプリント材から大面積の型を引き離すのに有利な平坦化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一側面としての平坦化装置の構成を示す概略図である。
図2】平坦化処理の概要を説明するための図である。
図3】本発明の第1実施形態の平坦化処理時の基板と型の断面図である。
図4】本発明の露光時の光照射領域と遮光領域を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態の平坦化処理を説明するフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態の平坦化処理時の基板と型の断面図である。
図7】本発明の第2実施形態の基板ステージの断面図である。
図8】本発明の第2実施形態の平坦化処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明における平坦化装置100の構成を示す概略図である。平坦化装置100は、型(モールド、テンプレート)を用いて基板上のインプリント材(組成物)を成形する成形装置(所謂、インプリント装置)で具現化され、本実施形態では、基板上のインプリント材を平坦化する。平坦化装置100は、基板上のインプリント材と型とを接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を引き離すことで基板上にインプリント材の平坦面を形成する。インプリント材を硬化させる方法としては、光を照射することによってインプリント材を硬化させる光硬化法を用いる場合について説明する。本発明において、型11はインプリント材の平坦面を形成するための平面部が少なくとも基板1に対向する表面に形成されている。
【0013】
本発明で使用する基板は、シリコンウエハが代表的な基材であるが、これに限定されるものではない。基板1は、アルミニウム、チタン-タングステン合金、アルミニウム-ケイ素合金、アルミニウム-銅-ケイ素合金、酸化ケイ素、チッ化ケイ素等の半導体デバイス用基板として知られているものの中からも任意に選択することができる。なお、基板1には、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜、等の表面処理により密着層を形成し、硬化性組成物との密着性を向上させた基板を用いてもよい。なお、基板1は、典型的には、直径300mmの円形であるが、これに限定されるものではない。
【0014】
型11としては、光を照射してインプリント材を硬化させる工程を考慮して、光透過性の材料で構成されている。具体的には、型11を構成する材料としては、ガラス、石英、PMMA(Polymethyl methacrylate)、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が好ましい。なお、本発明では、型11は、300mmよりも大きく、500mmよりも小さい直径の円形であるが、これに限られない。また、型11の厚さは、好ましくは、0.25mm以上2mm未満であるが、これに限られない。
【0015】
インプリント材には、硬化用のエネルギーが与えられることによって硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱などが用いられる。電磁波としては、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される、赤外線、可視光線、紫外線などの光を用いる。
【0016】
硬化性組成物は、光の照射によって、或いは、加熱によって硬化する組成物である。典型的にはアクリレートやメタクリレートのようなモノマーを用いてもよい。光の照射によって硬化する光硬化性組成物は、重合性化合物と光重合開始剤とを少なくとも含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0017】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。また、インプリント材は、液体噴射ヘッドによって、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状で基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0018】
平坦化装置100は、図1に示すように、チャック2と、基板ステージ3と、ベース定盤4と、支柱5と、天板6と、ガイドバープレート7と、ガイドバー8と、型駆動部9と、支柱10と、型チャック12と、ヘッド13と、アライメント棚14とを有する。また、平坦化装置100は、供給部20と、オフアクシスアライメントスコープ(OAスコープ21)と、基板搬送部22と、アライメントスコープ23と、光照射部24とを有する。さらに、平坦化装置100は、ステージ駆動部31と、型搬送部32と、洗浄部33と、入力部34と、制御部200とを有する。本実施形態において、チャック2及び基板ステージ3は、基板1を保持する基板保持部を構成し、型チャック12及びヘッド13は、型11を保持する型保持部を構成する。ここでは、水平面をXY平面とし、鉛直方向をZ軸方向とするようにXYZ座標系が定義されている。
【0019】
図1を参照して平坦化装置の動作について説明する。基板1は、搬送ハンドなどを含む基板搬送部22によって、平坦化装置100の外部から搬入され、チャック2に保持される。基板ステージ3は、ベース定盤4に支持され、チャック2に保持された基板1を所定の位置に位置決めするために、X軸方向及びY軸方向に駆動される。ステージ駆動部31は、例えば、リニアモータやエアシリンダなどを含み、基板ステージ3を少なくともX軸方向及びY軸方向に駆動する(移動させる)が、基板ステージ3を2軸以上の方向(例えば、6軸方向)に駆動する機能を有していてもよい。また、ステージ駆動部31は、回転機構を含み、チャック2又は基板ステージ3をZ軸方向に平行な軸周り(θz方向)に回転駆動する(回転させる)。さらにステージ駆動部31は、基板1を傾ける機構を含み、チャック2又は基板ステージ3をX軸方向に平行な軸周り(θx方向)やY軸方向に平行な軸周り(θy方向)に回転駆動してもよい。
【0020】
型11は、搬送ハンドなどを含む型搬送部32によって、平坦化装置100の外部から搬入され、型チャック12に保持される。型11は、例えば、円形又は四角形の外形を有し、基板上のインプリント材に接触して基板1の表面形状に倣う平面部11aを含む。平面部11aは、本実施形態では、基板1と同じ大きさ、又は、基板1よりも大きい大きさを有する。型チャック12は、ヘッド13に支持され、型11のZ軸周りの傾きを補正する機能を有する。型チャック12及びヘッド13のそれぞれは、光照射部24から照射される光(紫外線)を通過させる開口(不図示)を含む。また、型チャック12又はヘッド13には、基板1上のインプリント材に対する型11の押し付け力(押印力)を計測するためのロードセルが配置されている。
【0021】
ベース定盤4には、天板6を支持する支柱5が配置されている。ガイドバー8は、天板6を貫通し、一端がガイドバープレート7に固定され、他端がヘッド13に固定される。型駆動部9は、ガイドバー8を介して、ヘッド13をZ軸方向に駆動して、型チャック12に保持された型11を基板1上のインプリント材に接触させたり、基板1上のインプリント材から引き離したりする。また、型駆動部9は、本実施形態では、ヘッド13をX軸方向及びY軸方向に駆動する(移動させる)機能、及び、型チャック12又はヘッド13をZ軸方向に平行な軸周り(θz方向)に回転駆動する機能を有する。さらに型駆動部9は、型11を傾ける機構を含み、型チャック12又はヘッド13をX軸方向に平行な軸周り(θx方向)やY軸方向に平行な軸周り(θy方向)に回転駆動してもよい。
【0022】
アライメント棚14は、支柱10を介して天板6に懸架される。アライメント棚14には、ガイドバー8が貫通している。また、アライメント棚14には、例えば、斜入射像ずれ方式を用いて、チャック2に保持された基板1の高さ(平坦度)を計測するための高さ計測装置(不図示)が配置されている。
【0023】
アライメントスコープ23は、基板ステージ3に設けられた基準マークと、型11に設けられたアライメントマークとを観察するための光学系及び撮像系を含む。但し、型11にアライメントマークが設けられていない場合には、アライメントスコープ23がなくてもよい。アライメントスコープ23は、基板ステージ3に設けられた基準マークと、型11に設けられたアライメントマークとの相対的な位置を計測し、その位置ずれを補正するアライメントに用いられる。
【0024】
供給部20(ディスペンサ)は、基板1に未硬化(液状)のインプリント材を吐出する吐出口(ノズル)を含むディスペンサで構成され、基板上にインプリント材を供給(塗布)する。供給部20は、例えば、ピエゾジェット方式やマイクロソレノイド方式などを採用し、基板上に1pL(ピコリットル)程度の微小な容積のインプリント材を供給することができる。また、供給部20における吐出口の数は、限定されるものではなく、1つ(シングルノズル)であってもよいし、複数であってもよく、例えば100を超えてもよい(リニアノズルアレイ)。さらに、供給部20は、複数のリニアノズルアレイを組み合わせてもよい。
【0025】
OAスコープ21は、アライメント棚14に支持される。OAスコープ21は、基板ステージ3に設けられた基準マークと、基板1の複数のショット領域に設けられたアライメントマークを検出し、複数のショット領域のそれぞれの位置を決定するグローバルアライメント処理に用いられる。アライメントスコープ23によって型11と基板ステージ3との位置関係を求め、OAスコープ21によって基板ステージ3と基板1との位置関係を求めることで型11と基板1との相対的な位置を合わせる(アライメント)ことができる。
【0026】
洗浄部33は、型11が型チャック12に保持された状態で、型11を洗浄する(クリーニングする)。洗浄部33は、本実施形態では、基板上の硬化したインプリント材から型11を引き離すことによって、型11、特に、平面部11aに付着したインプリント材を除去する。洗浄部33は、例えば、型11に付着したインプリント材を拭き取ってもよいし、UV照射、ウェット洗浄、プラズマ洗浄などを用いて型11に付着したインプリント材を除去してもよい。
【0027】
制御部200は、CPUやメモリなどを含み、平坦化装置100の全体を制御する。制御部200は、平坦化装置100の各部を統括的に制御して平坦化処理を行う処理部として機能する。ここで、平坦化処理とは、型11の平面部11aを基板上のインプリント材に接触させて平面部11aを基板1の表面形状に倣わせることでインプリント材を平坦化する処理である。なお、平坦化処理は、一般的には、ロット単位で、即ち、同一のロットに含まれる複数の基板のそれぞれに対して行われる。制御部200は、平坦化装置100内に設けてもよいし、平坦化装置100とは別の場所に設置し遠隔で制御しても良い。
【0028】
(平坦化処理方法について)
図2(a)乃至図2(c)を参照して、平坦化処理について概要を説明する。まず、図2(a)に示すように、下地パターン1aが形成されている基板1に対して、供給部20からインプリント材IMを供給する。図2(a)に示すように、供給部20は、下地パターン1aの有無や粗密に応じてインプリント材IMを基板上で分布を設けて供給することができる。図2(a)は、基板上にインプリント材IMを供給し、型11を接触させる前の状態を示している。次いで、図2(b)に示すように、基板上のインプリント材IMと型11の平面部11aとを接触させる。図2(b)は、型11の平面部11aが基板上のインプリント材IMと接触し、型11の平面部11aが基板1の表面形状に倣った状態を示している。そして、図2(b)に示す状態で、光照射部24から、型11を介して、基板上のインプリント材IMに光(紫外線)を照射してインプリント材IMを硬化させる。次に、図2(c)に示すように、基板上の硬化したインプリント材IMから型11を引き離す。これにより、基板1の全面で均一な厚みのインプリント材IMの層(平坦化層)を形成することができる。インプリント材IMによる平坦化層の表面は基板1の表面にならっていればよい。一般的に基板1の表面の状態よりも下地パターン1aの方が周期の短い凹凸形状が形成されている。図2(c)は、基板上にインプリント材IMの平坦化層が形成された状態を示している。
【0029】
このような平坦化処理を行う際、大面積の型11と基板1の全面に供給されるインプリント材IMと接触させ、全面に接触した状態から型11を引き離すことは困難である。型11とインプリント材との接触面積が大きいほど引き離しにくくなる。そのため、平坦化装置100の離型動作に時間を要したり、型11が破損したりする恐れがある。
【0030】
そこで、本実施形態の平坦化装置100は、型11と基板1上のインプリント材とを引き離す(離型する)為に、インプリント材を硬化させるために光を照射する面積を可変にする。平坦化装置100は、基板上のインプリント材の一部を硬化させ、一括で基板の全面を照射しないようにする。そして、平坦化装置100は、光を照射してインプリント材が硬化した部分から型11を引き離す。このように、本実施形態のインプリント装置は、基板上のインプリント材を部分的に硬化させることと、硬化したインプリント材から型を引き離すことを繰り返して行うことにより、一度に離型するエネルギーを小さくすることができる。
【0031】
本実施形態の平坦化処理について図3を用いて説明する。図3は、平坦化処理のうちインプリント材IMの硬化処理と硬化したインプリント材IMから型11を引き離す離型処理を示した、断面図である。
【0032】
まず、平坦化装置100は、図3(a)に示すように、型11と基板1上のインプリント材IMを接触させ、基板1上の全面で充填させた状態にする。次に、図3(b)に示すように、インプリント材IMを硬化させる領域は基板1の全面に対して一括でなく、基板1の周辺部(外周部)に部分的に光を照射してインプリント材を硬化させる。図4(a)に示すように、最初に光を照射する領域は基板1の周辺部なので、光照射領域は輪帯形状をしている。図4は、基板1を上面から観察した様子を示しており、基板1の周辺部の光照射領域41と基板1の中央部の遮光領域42からなる。
【0033】
基板の周辺部のインプリント材を硬化させた後、図3(c)に示すように基板の周辺部から型11と硬化したインプリント材IMの離型が開始される。その後、図3(d)に示すように基板の周辺部よりも中心部側の領域のインプリント材IMに部分的に光を照射する。平坦化装置100は、図3(c)で離型した領域よりも基板1の中心部側の領域のインプリント材IMを硬化させる。このとき、図4(b)に示すように輪帯形状の光照射領域41を図4(a)と比較して小さく絞って基板1上のインプリント材に光を照射する。
【0034】
図3(d)に示した領域のインプリント材を硬化させた後、図3(e)に示すように型11を硬化したインプリント材IMから引き離す。その後、図3(f)に示すように基板の中心部のインプリント材IMに部分的に光を照射する。平坦化装置100は、基板1の中心部のインプリント材IMを硬化させる。このとき、図4(c)に示すように基板1の中心部を光照射領域41として設定して基板1上のインプリント材に光を照射する。図3(f)に示した領域のインプリント材を硬化させた後、図3(g)に示すように型11を硬化したインプリント材IMから引き離す。
【0035】
このように、本実施形態の平坦化装置は、基板上のインプリント材を部分的に硬化させる工程と硬化したインプリント材から型を引き離す工程を繰り返し行うことにより、型11の全面をインプリント材IMから引き離すことができる。
【0036】
本実施形態の平坦化装置100の光照射部24には、基板1の周辺部から中心部に向かって光を照射できるように、光照射領域41を変えることが可能な機構が設けられている。例えば、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いたり、光照射部24に含まれる光源と型11の間に遮光板を配置したりして、光照射領域41と遮光領域42を制御することができる。本実施形態の平坦化処理は、基板1上のインプリント材を硬化する面積が一定以上大きくならないように制御し、離型時のエネルギーを小さい状態に保ち、容易に離型しやすくする。
【0037】
図5を参照して、本実施形態の平坦化装置100における平坦化処理について説明する。図5は、平坦化処理を示したフローチャートである。平坦化処理は、上述したように、制御部200が平坦化装置100の各部を統括的に制御することで行われる。
【0038】
S502では、型搬送部32によって、平坦化装置100に型11を搬入し、型11を型チャック12に保持させる。S504では、平坦化処理に関する設定情報を取得する。平坦化処理に関する設定情報は、光を照射してインプリント材を硬化させる処理と離型処理を制御するための、基板1と型11が接触している光照射領域の最大値などを含む。S506では、基板搬送部22によって、同一のロットに含まれる複数の基板のうち、平坦化処理の対象となる基板1を平坦化装置100に搬入し、かかる基板1をチャック2に保持させる。S508では、S506で搬入された基板1に対して、図2(a)のように、基板1上にインプリント材IMを供給する処理(滴下処理)を行う。S510では、図2(b)のように、基板1上のインプリント材IMに型11を接触させ、基板1と型11との間にインプリント材IMが充填した状態にする。
【0039】
S512では、S510で基板1と型11の間にインプリント材が充填した状態で、基板1の外周部より光を照射してインプリント材を硬化させる。平坦化処理に関する設定情報より、光照射領域が一定の面積に達したら、硬化したインプリント材と型の離型を開始する。離型を開始すると同時に、基板1上の光照射領域が一定の面積に達するように、未硬化のインプリント材に対して光を照射して順次インプリント材を硬化させる。このように、基板1上のインプリント材IMに光を照射する光照射領域の面積が一定になるように照射と離型を連動させてもよいし、光照射領域の面積が徐々に小さくなるように光照射領域を決定してもよい。
【0040】
S514では、基板搬送部22によって、平坦化装置100から平坦化処理が行われた基板1を搬出する。S516では、同一のロットに含まれる全ての基板に対して平坦化処理を行ったかどうかを判定する。S516での判定の結果、同一のロットに含まれる全ての基板に対して平坦化処理を行っていない場合には、次の処理対象の基板を平坦化装置100に搬入するために、S506に移行する。一方で、S516での判定の結果、同一のロットに含まれる全ての基板に対して平坦化処理を行っている場合には、S518に移行する。S518では、洗浄部33によって、型チャック12に保持されている型11を洗浄する。型11を洗浄することにより、型11の平面部11aに付着したインプリント材を除去することができる。S520では、型搬送部32によって、平坦化装置100から洗浄された型11を搬出する。
【0041】
なお、本実施形態では、同一のロットに含まれる全ての基板1に対する平坦化処理が終了し、平坦化装置100から型11を搬出する前に型11を洗浄しているが、これに限られるものではない。例えば、同一のロットに含まれる全ての基板1に対して平坦化処理が終了していなくても、型11を洗浄するようにしてもよい。また、型11の平面部11aにおけるインプリント材の付着状態を検出する検出部を平坦化装置100が備えている場合には、検出部の検出結果に応じて、型11を洗浄するようにしてもよい。また、平坦化装置100に洗浄部33が備えられていない場合には、平坦化処理が終わった型11を洗浄しないで平坦化装置100から搬出し、外部の洗浄装置で型11を洗浄してもよい。
【0042】
このように、本実施形態の平坦化装置100は、基板上のインプリント材の一部を硬化させ、硬化した領域から順に型を引き離すことにより、離型に対するエネルギーを低減することができる。
【0043】
(第2実施形態)
上記の第1実施形態の平坦化装置100は、図4(a)、図4(b)、図4(c)の順に光照射領域を周辺部から中心部に向かって変化させる場合について説明した。本発明の平坦化装置100は、光照射領域を図4(c)、図4(b)、図4(a)の順に中心部から周辺部に向かって変化させることも可能である。
【0044】
本実施形態の平坦化処理について図6を用いて説明する。図6は、平坦化処理のうちインプリント材IMの硬化処理と硬化したインプリント材IMから型11を引き離す離型処理を示した、断面図である。
【0045】
まず、平坦化装置100は、図6(a)に示すように、型11と基板1上のインプリント材IMを基板1の中心部から接触させた状態にする。次に、図6(b)に示すように、インプリント材IMを硬化させる領域は基板1の全面に対して一括でなく、基板1の中心部に部分的に光を照射してインプリント材を硬化させる。図4(c)に示すように、最初に光を照射する領域は基板1の中心部なので、光照射領域41は円形状をしている。
【0046】
基板の中心部のインプリント材を硬化させた後、図6(c)に示すように基板の中心部から型11と硬化したインプリント材IMの離型を開始する。さらに、離型しながら中心部の外側の領域を未硬化のインプリント材と接触させるように型11を変形させる。その後、図6(d)に示すように基板の中心部よりも周辺部側の領域のインプリント材IMに部分的に光を照射する。平坦化装置100は、図6(c)で離型した領域よりも基板1の周辺部側の領域のインプリント材IMを硬化させる。このとき、図4(b)に示すように輪帯形状の光照射領域41に変形させて基板1上のインプリント材に光を照射する。
【0047】
図6(d)に示した領域のインプリント材を硬化させた後、図6(e)に示すように型11を硬化したインプリント材IMから引き離す。さらに、離型しながら周辺部の未硬化のインプリント材と接触させるように型11を変形させる。その後、図6(f)に示すように基板の周辺部のインプリント材IMに部分的に光を照射する。平坦化装置100は、基板1の周辺部のインプリント材IMを硬化させる。このとき、図4(a)に示すように基板1の周辺部を光照射領域41として設定して基板1上のインプリント材に光を照射する。図6(f)に示した領域のインプリント材を硬化させた後、図6(g)に示すように型11を硬化したインプリント材IMから引き離すことで、基板1の全面でインプリント材を硬化させ、型11を離型することができる。
【0048】
図7に本実施形態で適用されうるチャック2を示す。図7は、基板1を保持した状態のチャック2の断面図である。本実施形態の平坦化装置100の基板1を保持するチャック2は、部分的に降下する機能を有する。
【0049】
図7(a)はチャック2の通常状態を示している。図7(a)の状態は、例えば、図6(a)や図6(b)の基板の中心部のインプリント材と型を接触させて硬化させる時のチャック2の状態とすることができる。図7(b)は型11から離型する基板の中心部に対応する部位のチャック2が基板1を吸着しながら降下した状態を示している。図7(b)の状態は、例えば、図6(c)や図6(d)の基板の中心部よりも周辺部側の領域のインプリント材と型を接触させて硬化させる時のチャック2の状態とすることができる。このように、チャック2が部分的に降下することで、基板1が中心部(離型部位)のみ下に引っ張られる形状を作ることができる。図7(c)は、図7(b)よりも広い範囲でチャック2が基板1を吸着しながら降下した状態を示している。図7(c)の状態は、例えば、図6(e)や図6(f)の基板の周辺部のインプリント材と型を接触させて硬化させる時のチャック2の状態とすることができる。このように、本実施形態の平坦化装置のチャック2は、平坦化処理に合わせて、図7(a)、図7(b)、図7(c)の順にチャック2の吸着面を部分的に降下するように制御されうる。
【0050】
本実施形態の平坦化装置100の光照射部24には、基板1の中心部から周辺部に向かって光を照射できるように、光照射領域を変えることが可能な機構が設けられている。例えば、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)を用いたり、光照射部24に含まれる光源と型11の間に遮光板を配置したりして、光照射領域を制御することができる。本実施形態の平坦化処理は、基板1上のインプリント材を硬化する面積が一定以上大きくならないように制御し、離型時のエネルギーを小さい状態に保ち、容易に離型しやすくする。
【0051】
図8を参照して、本実施形態の平坦化装置100における平坦化処理について説明する。図8は、平坦化処理を示したフローチャートである。平坦化処理は、上述したように、制御部200が平坦化装置100の各部を統括的に制御することで行われる。
【0052】
S802では、型搬送部32によって、平坦化装置100に型11を搬入し、型11を型チャック12に保持させる。S804では、平坦化処理に関する設定情報を取得する。平坦化処理に関する設定情報は、光を照射してインプリント材を硬化させる処理と離型処理を制御するための、基板1と型11が接触している光照射領域の最大値などを含む。S806では、基板搬送部22によって、同一のロットに含まれる複数の基板のうち、平坦化処理の対象となる基板1を平坦化装置100に搬入し、かかる基板1をチャック2に保持させる。S808では、S806で搬入された基板1に対して、図2(a)のように、基板1上にインプリント材IMを供給する処理(滴下処理)を行う。S810では、図6(a)のように、基板1上のインプリント材IMに型11の中心部から接触させ、設定情報に基づいて一定の面積の型と接触した状態となったら、光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材と型とを引き離す。その後、未硬化のインプリント材に対して接触(充填)、硬化、離型を繰り返すことで基板1上の全面においてインプリント材を硬化させることができる。なお、基板1上のインプリント材IMに光を照射する光照射領域の面積が一定になるように照射と離型を連動させてもよいし、光照射領域の面積が徐々に大きくなるように光照射領域を決定してもよい。
【0053】
S812では、基板搬送部22によって、平坦化装置100から平坦化処理が行われた基板1を搬出する。S814では、同一のロットに含まれる全ての基板に対して平坦化処理を行ったかどうかを判定する。S814での判定の結果、同一のロットに含まれる全ての基板に対して平坦化処理を行っていない場合には、次の処理対象の基板を平坦化装置100に搬入するために、S806に移行する。一方で、S814での判定の結果、同一のロットに含まれる全ての基板に対して平坦化処理を行っている場合には、S816に移行する。S816では、洗浄部33によって、型チャック12に保持されている型11を洗浄する。型11を洗浄することにより、型11の平面部11aに付着したインプリント材を除去することができる。S818では、型搬送部32によって、平坦化装置100から洗浄された型11を搬出する。
【0054】
なお、本実施形態では、同一のロットに含まれる全ての基板1に対する平坦化処理が終了し、平坦化装置100から型11を搬出する前に型11を洗浄しているが、これに限られるものではない。例えば、同一のロットに含まれる全ての基板1に対して平坦化処理が終了していなくても、型11を洗浄するようにしてもよい。また、型11の平面部11aにおけるインプリント材の付着状態を検出する検出部を平坦化装置100が備えている場合には、検出部の検出結果に応じて、型11を洗浄するようにしてもよい。また、平坦化装置100に洗浄部33が備えられていない場合には、平坦化処理が終わった型11を洗浄しないで平坦化装置100から搬出し、外部の洗浄装置で型11を洗浄してもよい。
【0055】
このように、本実施形態の平坦化処理は、接触・硬化・離型を並行して処理することにより、常に一定の面積が型11と基板1上のインプリント材とが接触している状態にすることができる。一定以上の接触面積が発生しないので、離型時のエネルギーを小さな状態に保つことができ、容易に離型することができる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。更に本発明は、平坦化装置について記載しているが、パターンが形成されている型を用いて基板の全面に一括してパターンを形成するインプリント装置にも適用しうる。
【0057】
また、上記の平坦化装置は、光硬化法を用いてインプリント材を硬化させる平坦化処理について説明したが、上述の実施形態は光硬化法に限らず、熱を用いてインプリント材を硬化させる方法でもよい。光硬化法では、紫外線硬化樹脂を使用し、樹脂を介して基板に型を押し付けた状態で紫外線を照射して樹脂を硬化させた後、硬化した樹脂から型を引き離すことによりパターンが形成される。上述の実施形態は硬化光として紫外線を照射するものとしたが、光の波長は、基板1上に供給されるインプリント材に応じて適宜決めることができる。これに対し、熱を用いた方法では、熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上の温度に加熱し、樹脂の流動性を高めた状態で樹脂を介して基板に型を押し付け、冷却した後に樹脂から型を引き離すことによりパターンが形成される。この場合、光照射領域を変化させる代わりに、加熱領域を順次変化させる。
【0058】
物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述した平坦化装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)に平坦化した組成物を形成する工程を含む。さらに、該製造方法は、平坦化された基板を加工する工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、平坦化処理に加えて、パターンを形成することによって基板を加工する他の処理を含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも一つにおいて有利である。
【符号の説明】
【0059】
100 平坦化装置
1 基板
11 型
9 型駆動部
31 ステージ駆動部
32 型搬送部
200 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8