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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20221219BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20221219BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221219BHJP
   G03G 15/02 20060101ALI20221219BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20221219BHJP
   G03G 15/08 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G21/00 384
G03G15/00 303
G03G15/02 102
G03G15/01 114A
G03G15/01 R
G03G15/08 235
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018143285
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020020920
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】西村 静磨
(72)【発明者】
【氏名】中居 智朗
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173800(JP,A)
【文献】特開2015-176135(JP,A)
【文献】特開2006-133333(JP,A)
【文献】特開2000-172089(JP,A)
【文献】特開平11-052762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0378283(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
G03G 21/00
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/01
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に対向して配置される現像部材を有し、前記像担持体に形成された静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、を有する画像形成部と、
前記像担持体に担持されたトナー像が1次転写される中間転写体と、
前記中間転写体に接触して転写部を形成し、前記像担持体から前記中間転写体に1次転写されたトナー像を、前記中間転写体から転写材に2次転写するための転写部材と、
前記転写部材に転写電圧を印加する転写電源と、
前記画像形成部の積算駆動時間、前記現像部材もしくは前記像担持体の回転数の積算値、前記現像手段に収容されたトナー量、前記像担持体の膜厚、のうち少なくとも1つを記憶する記憶部と、
前記像担持体の回転速度に対する前記現像部材の回転速度の速度比が第1の速度比となるように制御して画像形成を行う第1のモードと、前記像担持体の回転速度に対する前記現像部材の回転速度の速度比が前記第1の速度比よりも値が大きい第2の速度比となるように制御して画像形成を行う第2のモードと、を実行することが可能な制御手段と、を備える画像形成装置において、
前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記画像形成装置の周囲環境が第1の環境である場合における前記転写部材から前記中間転写体に向かって流れる転写電流の値が、前記周囲環境が前記第1の環境よりも湿度が低い第2の環境である場合における前記転写電流の値よりも大きい値になるように、前記転写電源を制御し、
前記制御手段は、前記記憶部に記憶された前記画像形成部の積算駆動時間、前記現像部材もしくは前記像担持体の回転数の積算値、前記現像手段に収容されたトナー量、前記像担持体の膜厚、のうち少なくとも1つを用いて、前記画像形成部の使用度合いを算出し、
前記第2のモードにおいて、前記画像形成部の使用度合いが第1の使用度合いである場合の、前記第1の環境における前記転写電流の値であるT1と前記第2の環境における前記転写電流の値であるT2と、の比であるT2/T1は、前記画像形成部の使用度合いが第1の使用度合いよりも大きい第2の使用度合いである場合の、前記T2/T1と、が異なるように前記転写電流の値を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、同じ前記周囲環境においては、前記第2のモードにおける前記転写電流の値が、前記第1のモードにおける前記転写電流の値よりも大きい値になるように、前記転写電源を制御することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記周囲環境における温度と湿度を検知する検知手段を備え、
前記制御手段は、前記第2のモードを実行する場合に、前記検知手段による検知結果に基づいて、前記転写電源を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第2のモードを実行する場合に、前記検知手段による検知結果から得られる絶対湿度に基づいて設定された前記転写電流が前記転写部材から前記中間転写体に向かって流れるように、前記転写電源を制御することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記画像形成部の使用度合いと、前記周囲環境と、に基づいて、前記転写電源を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体を帯電することで帯電部材と、前記帯電部材に帯電電圧を印加する帯電電源と、前記帯電部材によって帯電された前記像担持体を露光することで前記静電潜像を形成する位置に潜像電位を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーによって現像するための現像電圧を前記現像部材に印加する現像電源と、を備え、
前記制御手段は、前記第2のモードにおいて前記潜像電位と前記現像電圧との間に形成される第2の電位差が、前記第1のモードにおいて前記潜像電位と前記現像電圧との間に形成される第1の電位差よりも大きい値となるように、前記帯電電源の出力を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第2のモードにおける前記帯電電圧の絶対値が、前記第1のモードにおける前記帯電電圧の絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第2のモードを実行する場合に、転写材の搬送方向に関して、前記中間転写体から転写材に2次転写されるトナー像の後端を含む第1の領域において前記転写部材から前記中間転写体に流れる第1の電流値が、前記搬送方向に関して、転写材の先端よりも上流側であって前記第1の領域よりも下流側に設けられる第2の領域において前記転写部材から前記中間転写体に流れる第2の電流値よりも大きい値となるように、前記転写電源を制御することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記搬送方向に関して、前記第1の領域の幅が前記第2の領域の幅よりも狭いことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体に対向して配置される現像部材を有し、前記像担持体に形成された静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、
前記像担持体に担持されたトナー像が1次転写される中間転写体と、
前記中間転写体に接触して転写部を形成し、前記像担持体から前記中間転写体に1次転写されたトナー像を、前記中間転写体から転写材に2次転写するための転写部材と、
前記転写部材に転写電圧を印加する転写電源と、
前記像担持体の回転速度に対する前記現像部材の回転速度の速度比が第1の速度比となるように制御して画像形成を行う第1のモードと、前記像担持体の回転速度に対する前記現像部材の回転速度の速度比が前記第1の速度比よりも値が大きい第2の速度比となるように制御して画像形成を行う第2のモードと、を実行することが可能な制御手段と、を備える画像形成装置において、
前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記画像形成装置の周囲環境が第1の環境である場合における前記転写部材から前記中間転写体に向かって流れる転写電流の値が、前記周囲環境が前記第1の環境よりも湿度が低い第2の環境である場合における前記転写電流の値よりも大きい値になるように、前記転写電源を制御し、
前記中間転写体から転写材に2次転写されるトナー像の後端が前記転写部材を通過した後に前記転写電圧の出力を停止するタイミングが、前記第1のモードを実行する場合における、前記中間転写体から転写材に2次転写されるトナー像の後端が前記転写部材を通過した後に前記転写電圧の出力を停止するタイミングよりも遅くなるように、前記転写電源を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記画像形成部の使用度合いが第1の使用度合いである場合の前記T2/T1は、前記第2の使用度合いである場合の、前記第1の環境における前記T2/T1より大きくなるように前記転写電流の値を制御することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式や静電記録方式を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置として、中間転写ベルトなどの中間転写体の移動方向に関して複数の画像形成部をそれぞれ配置したタンデム型の画像形成装置の構成が知られている。各色の画像形成部は、それぞれ像担持体としてのドラム状の感光体(以下、感光ドラムと称する)を有している。このような画像形成装置においては、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、定着工程を経ることで、紙やOHPシートなどの転写材に画像が形成される。
【0003】
ここで、現像工程では、現像手段に設けられた現像部材としての現像ローラに電圧を印加することで、現像ローラに担持されたトナーによって感光ドラムにトナー像を現像する。転写工程では、まず、各感光ドラムから中間転写ベルトにトナー像を1次転写する。その後、2次転写部材と中間転写ベルトとが対向する2次転写部において、2次転写部材に電圧(以下、2次転写電圧と称する)を印加することによって、中間転写ベルトから転写材にトナー像を2次転写する。
【0004】
特許文献1には、転写材に形成される画像の色再現範囲を拡大するモード(広色域モード)を実行可能な画像形成装置の構成が開示されている。特許文献1の広色域モードでは、感光ドラムの回転速度に対して現像ローラの回転速度を速く設定し、感光ドラムに担持される単位面積当たりのトナー量を増やすことで、色再現範囲を拡大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-173465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示される広色域モードにおいては、感光ドラムに担持される単位面積あたりのトナー量が、色再現範囲を拡大しない通常モードにおいて感光ドラムに担持される単位面積当たりのトナー量よりも多い。即ち、各色の感光ドラムから中間転写ベルトに1次転写されたトナー像の単位面積当たりのトナー量も、通常モードと比べて多くなる。したがって、広色域モードにおける2次転写電圧を、通常モードにおける2次転写電圧と同じ設定にしてしまうと、中間転写ベルトに担持されたトナー像を転写材Pに十分に転写できず、転写性が低下するおそれがある。
【0007】
このような課題に対しては、広色域モードにおける2次転写電圧の値を、通常モードよりも大きく設定すると転写性の低下を抑制できる。しかしながら、2次転写電圧を大きく設定しすぎると、2次転写部において局所的な放電が発生してしまうおそれがある。この場合、局所的な放電が発生した位置において、トナーが転写材Pに転写されず転写材Pの表面が露出することで画像が白く抜けてしまう現象(以下、白抜けと称する)が発生するおそれがある。
【0008】
このように、広色域モードを実行する際の2次転写電圧の設定は、増加したトナー量に応じて、転写性や白抜けの発生の有無を考慮しつつ適切に設定する必要がある。しかしながら、広色域モードにおいて感光ドラムに担持される単位面積当たりのトナー量は、画像形成装置が使用されている周囲環境の湿度などによって変動する。即ち、周囲環境によらず一律の2次転写電圧によってトナー像の転写を行った場合、2次転写部における電流の過不足が発生してしまうことで転写性が低下してしまうおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、感光ドラムに担持される単位面積当たりのトナー量を多くするモードを実行する場合に、周囲環境に関わらず転写性の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体に対向して配置される現像部材を有し、前記像担持体に形成された静電潜像をトナーによって現像する現像手段と、を有する画像形成部と、前記像担持体に担持されたトナー像が1次転写される中間転写体と、前記中間転写体に接触して転写部を形成し、前記像担持体から前記中間転写体に1次転写されたトナー像を、前記中間転写体から転写材に2次転写するための転写部材と、前記転写部材に転写電圧を印加する転写電源と、前記画像形成部の積算駆動時間、前記現像部材もしくは前記像担持体の回転数の積算値、前記現像手段に収容されたトナー量、前記像担持体の膜厚、のうち少なくとも1つを記憶する記憶部と、前記像担持体の回転速度に対する前記現像部材の回転速度の速度比が第1の速度比となるように制御して画像形成を行う第1のモードと、前記像担持体の回転速度に対する前記現像部材の回転速度の速度比が前記第1の速度比よりも値が大きい第2の速度比となるように制御して画像形成を行う第2のモードと、を実行することが可能な制御手段と、を備える画像形成装置において、前記制御手段は、前記第2のモードにおいて、前記画像形成装置の周囲環境が第1の環境である場合における前記転写部材から前記中間転写体に向かって流れる転写電流の値が、前記周囲環境が前記第1の環境よりも湿度が低い第2の環境である場合における前記転写電流の値よりも大きい値になるように、前記転写電源を制御し、前記制御手段は、前記記憶部に記憶された前記画像形成部の積算駆動時間、前記現像部材もしくは前記像担持体の回転数の積算値、前記現像手段に収容されたトナー量、前記像担持体の膜厚、のうち少なくとも1つを用いて、前記画像形成部の使用度合いを算出し、前記第2のモードにおいて、前記画像形成部の使用度合いが第1の使用度合いである場合の、前記第1の環境における前記転写電流の値であるT1と前記第2の環境における前記転写電流の値であるT2と、の比であるT2/T1は、前記画像形成部の使用度合いが第1の使用度合いよりも大きい第2の使用度合いである場合の、前記T2/T1と、が異なるように前記転写電流の値を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、感光ドラムに担持される単位面積当たりのトナー量を多くするモードを実行する場合に、周囲環境に関わらず転写性の低下を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像形成装置の構成を説明する概略断面図である。
図2】画像形成装置の制御部のブロック図である。
図3】画像形成部の構成を説明する模式図である。
図4】感光ドラムの層構成を説明する模式図である。
図5】通常モードと広色域モードにおける、感光ドラムに形成される電位について説明する模式図である。
図6】2次転写部において発生する画像不良について説明する模式図である。
図7】実施例1における、2次転写電源の制御を説明するタイミングチャートである。
図8】変形例における、2次転写部において転写材の後端に供給される電荷量について説明する模式図である。
図9】実施例2における、2次転写電源の制御を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。したがって、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
【0014】
(実施例1)
[画像形成装置の構成]
図1は、本実施例の画像形成装置100の概略構成図である。また、図2は、本実施例の画像形成装置100の制御部のブロック図である。図2に示すように、画像形成装置100は、ホストコンピュータ101に接続している。ホストコンピュータ101による動作開始指令と画像信号は、制御手段としてのコントローラ102に送信され、コントローラ102が各種手段を制御することによって画像形成装置100において画像形成が実行される。
【0015】
図1に示すように、本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を利用した、中間転写方式のカラー画像形成装置であり、複数の画像形成手段として、第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKはそれぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色の画像を形成するためのものである。これらの4個の画像形成部SY、SM、SC、SKは、一定の間隔をおいて1列に配置されており、更に、本実施例では、各画像形成部SY、SM、SC、SKは、重力方向に関して中間転写ベルト25よりも下面に配置されている。なお、本実施例では、第1~第4の画像形成部SY、SM、SC、SKの構成は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、特に区別しない場合は、いずれの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kを省略して、総括的に説明する。
【0016】
図3は、本実施例の画像形成部Sの構成を説明する模式図である。図3に示すように、画像形成部Sには、第1駆動源(図2に図示)からの駆動力を受けて図示矢印B方向に回転可能であって、トナー像が形成される像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと称する)1が設置されている。感光ドラム1の周囲には、感光ドラム1を帯電する帯電部材としての帯電ローラ2、現像手段9、及びクリーニング手段10が設置されている。また、感光ドラム1の回転方向に関して、帯電ローラ2よりも下流側であって且つ現像手段9よりも上流側には、露光手段20(レーザースキャナ)からのレーザー光が照射される露光部が設けられている。
【0017】
現像手段9は、現像部材としての現像ローラ3と、現像剤としてのトナーTと、現像ローラ3にトナーTを供給する供給ローラ6と、図示矢印E方向に回転する撹拌部材307と、現像剤規制手段としての現像ブレード8と、を有する。現像ローラ3は、第2駆動源(図2に図示)からの駆動力を受けて図示矢印C方向に回転可能である。クリーニング手段10は、感光ドラム1に当接するクリーニング部材としてのクリーニングブレード4と、クリーニングブレード4によって回収されたトナーを収容する廃トナー容器5と、を有する。
【0018】
次に、画像形成装置100の全体の構成について説明する。図1に示すように、画像形成部Sの感光ドラム1に対向して、無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト25が配置されている。中間転写ベルト25は、複数の支持部材に張架されており、駆動ローラ12によって図示矢印A方向に移動可能である。
【0019】
中間転写ベルト25を介して、感光ドラム1と対向する位置には、1次転写部材(転写部材)としての1次転写ローラ26が配置されている。1次転写ローラ26は、中間転写ベルト25を介して感光ドラム1に対して所定の圧力で付勢されており、中間転写ベルト25と感光ドラム1とが接触する1次転写部(1次転写ニップ)N1を形成している。また、1次転写ローラ26には、1次転写電源40が接続されており、1次転写電源40は、1次転写ローラ26に正極性又は負極性の電圧を印加することができる。
【0020】
中間転写ベルト25の外周面側において、駆動ローラ12と対向する位置には、2次転写部材としての2次転写ローラ11が配置されている。2次転写ローラ11は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ12に対して所定の圧力で付勢されており、中間転写ベルト25と2次転写ローラ11とが接触する2次転写部(2次転写ニップ)N2を形成している。2次転写ローラ11には、2次転写電源41が接続されており、2次転写電源41は、2次転写ローラ11に正極性又は負極性の電圧を印加することができる。
【0021】
中間転写ベルト25の移動方向に関して、各感光ドラム1よりも上流側であって2次転写部N2よりも下流側には、2次転写後に中間転写ベルト25に残留したトナー(以下、残留トナーと称する)を回収するクリーニング手段16が設けられている。クリーニング手段16は、中間転写ベルト25に当接するクリーニングブレード16aを有する。
【0022】
転写材Pの搬送方向に関して2次転写部N2よりも上流側には、転写材Pを収容する給紙カセット28と、給紙カセット28に収容された転写材Pを給送する給送手段29と、給送された転写材Pを2次転写部N2に搬送する搬送ローラ30と、が設けられている。また、転写材Pの搬送方向に関して、2次転写部N2よりも下流側には、熱源を備えた定着手段13と、定着手段13によってトナー像が定着され、画像形成装置100から排出された転写材Pを積載する排紙トレイ15と、が設けられている。
【0023】
[画像形成動作]
図3に示すように、画像形成動作が開始されると、各感光ドラム1、中間転写ベルト25、現像ローラ3、供給ローラ6は、それぞれ所定の回転速度で、図中矢印A~D方向に回転を始める。回転する感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2により所定の極性(本実施例では負極性)に略一様に帯電させられる。このとき帯電ローラ2には、帯電電源42から所定の帯電電圧が印加される。その後、感光ドラム1は、各画像形成部に対応した画像情報に応じて露光手段20によって露光されることにより、感光ドラム1の表面に、画像情報に従った静電潜像が形成される。
【0024】
現像ローラ3は、供給ローラ6によって供給されたトナーであって現像ブレード8によってトナーの正規の帯電極性(本実施例においては負極性)に帯電されたトナーを担持し、現像電源43から所定の現像電圧を印加される。これにより、感光ドラム1に形成された潜像が、感光ドラム1と現像ローラ3との対向部(現像部)において負極性のトナーによって可視化され、感光ドラム1にトナー像が形成される。
【0025】
次に、感光ドラム1に形成されたトナー像は、1次転写部N1において、1次転写ローラ26から感光ドラム1に流れる電流(以下、1次転写電流と称する)によって、回転駆動されている中間転写ベルト25に転写(1次転写)される。このとき、1次転写ローラ26には、1次転写電源40から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の電圧が印加される。即ち、本実施例の構成では、1次転写ローラ26から感光ドラム1に向かって所定の1次転写電流が流れるように1次転写電源40の出力を制御する定電流制御によって、感光ドラム1から中間転写ベルト25にトナー像を1次転写している。
【0026】
フルカラー画像の形成時には、各画像形成部Sにおいて各感光ドラム1に静電潜像が形成され、これが現像されて各色のトナー像となる。そして、各画像形成部Sの各感光ドラム1に形成された各色のトナー像が、各1次転写部N1Y、N1M、N1C、N1Kにおいて中間転写ベルト25に順次に重ね合わせるように転写され、中間転写ベルト25に4色のトナー像が形成される。
【0027】
また、収容部としての給紙カセット28に積載されている転写材Pは、給送手段29により搬送ローラ30に給送され、搬送ローラ30によって2次転写部N2に搬送される。そして、中間転写ベルト25上に担持された4色の多重トナー像が、2次転写部N2において、2次転写ローラ11から中間転写ベルト25に流れる電流(以下、2次転写電流と称する)によって、搬送される転写材Pに転写(2次転写)される。このとき、2次転写ローラ11には、2次転写電源41からトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の2次転写電圧が印加される。即ち、本実施例の構成では、2次転写ローラ11から中間転写ベルト25に向かって所定の2次転写電流が流れるように2次転写電源41の出力を制御する定電流制御によって、中間転写ベルト25から転写材Pにトナー像を2次転写している。
【0028】
その後、トナー像が転写された転写材Pは、定着手段13に搬送され、転写材Pの表面にトナー像を定着された後に画像形成装置100の装置本体の外部に排出され、排紙トレイ15に積載される。
【0029】
なお、1次転写後に感光ドラム1に残留したトナーは、クリーニングブレード4によって感光ドラム1の表面から除去される。また、2次転写部N2を通過した後に中間転写ベルト25に残った転写残トナーは、クリーニングブレード16aによって中間転写ベルト25の表面から除去される。
【0030】
[広色域モードによる画像形成]
本実施例の画像形成装置においては、基準画像形成モードとしての通常モード(第1のモード)に加えて、転写材Pに形成される画像の色再現範囲を拡大する広色域モード(第2のモード)を実行することが可能である。広色域モードでは、感光ドラム1の回転速度と現像ローラ3の回転速度の速度比を、通常モードにおける感光ドラム1と現像ローラ3の速度比よりも大きく設定している。これにより、感光ドラム1に担持される単位面積あたりのトナー量を増やすことで、色再現範囲を拡大している。なお、広色域モードを実行する場合、感光ドラム1と現像ローラ3の速度比を通常モードに対して変更するだけでなく、感光ドラム1の表面電位の設定も変更している。以下、通常モード及び広色域モードにおける各種設定について説明する。
【0031】
<通常モード及び広色域モードにおける各種設定>
図4は、感光ドラム1の層構成を説明する模式図である。図4に示すように、感光ドラム1は下層から、導電性材料からなる基体31と、光の干渉を抑え上層の接着性を向上させる下引き層32と、キャリアを生成する電荷発生層33と、発生したキャリアを輸送する電荷輸送層34と、を有する。
【0032】
基体31は接地されており、感光ドラム1が負極性の電圧を印加された帯電ローラ2によって帯電されることで、感光ドラム1の内側から外側に向けて電界が形成される。また、感光ドラム1に露光手段20による光が照射されると、電荷発生層33においてキャリアが生成される。電荷発生層33において生成されたキャリアは、前述の電界によって感光ドラム1の内側から外側に向かって移動し、帯電ローラ2によって帯電された感光ドラム1表面の電荷と対になる。その結果、感光ドラム1の表面電位が変化する。
【0033】
図5は、通常モードと広色域モードにおける感光ドラム1に形成される電位について説明する模式図である。図5においては、帯電ローラ2によって帯電されることで感光ドラム1に形成された電位を背景電位Vd、露光手段20によって露光されることで感光ドラム1に形成された電位を潜像電位Vl、現像ローラ3に印加される電圧を現像電圧Vdcとする。また、図5においては、通常モードに関する電位に添え字nを、広色域モードに関する電位に添え字wを付して説明を行う。
【0034】
図5に示すように、通常モードにおける現像電圧Vdcは、潜像電位Vlと背景電位Vdの間に設定されており、同様に、広色域モードにおける現像電圧Vdcは、潜像電位Vlwと背景電位Vdの間に設定されている。このため、通常モード及び広色域モードのいずれにおいても、現像ローラ3に担持された負極性のトナーは、露光手段20によって露光された露光部に静電的に移動し、露光手段20によって露光されていない非露光部には静電的に移動しない。
【0035】
ここで、現像ローラ3から感光ドラム1の露光部にトナーが移動することで現像が行われていくと、負極性に帯電されたトナーによって感光ドラム1の露光部における電位が負極性側に変化し、現像ローラ3と感光ドラム1との間に形成される電界が弱くなる。即ち、広色域モードを実行する場合に、感光ドラム1と現像ローラ3の速度比を大きくして、感光ドラム1における単位面積当たりのトナー量をより増加させようとしても、所定の速度比で感光ドラム1に担持させることが可能なトナー量が飽和してしまう。
【0036】
感光ドラム1に担持させる単位面積当たりのトナー量をより増加させて色再現範囲をより広げるためには、感光ドラム1に形成する現像電圧Vdcと潜像電位Vlとの間の電位差Vcontを十分大きく設定する必要がある。なお、帯電ローラ2によって帯電された電位が十分消失した状態で更に露光手段20による露光量を増やしたとしても、感光ドラム1内部の電界が弱まっているため電荷発生層33で生成されたキャリアが表面に移動せず、露光部の電位は変化しない。そのため、より高い電位差Vcontを設定するためには、背景電位Vdの値が大きくなるように帯電ローラ2による帯電を制御する必要がある。
【0037】
本実施例においては、広色域モードにおいて色再現範囲をより広げるために、感光ドラム1と現像ローラ3の速度比を通常モードよりも大きくするだけでなく、広色域モードの電位差Vcontを通常モードの電位差Vcontよりも大きく設定している。より詳細には、本実施例の通常モードでは、感光ドラム1の回転速度に対する現像ローラ3の回転速度の速度比(第1の速度比)を140%、背景電位Vdを-500V、現像電圧Vdcを-350V、潜像電位Vlを-100Vに設定した。また、広色域モードでは、感光ドラム1の回転速度に対する現像ローラ3の回転速度の速度比(第2の速度比)を280%、背景電位Vdを-850V、現像電圧Vdcを-600V、潜像電位Vlを-120Vに設定した。なお、本実施例においては、広色域モードを実行する場合に周囲環境によらず感光ドラム1の回転速度に対する現像ローラ3の回転速度の速度比を280%に設定している。
【0038】
[広色域モードにおける2次転写制御]
以上説明したように広色域モードにおいては、感光ドラム1に担持される単位面積あたりのトナー量が、通常モードにおいて感光ドラム1に担持される単位面積当たりのトナー量よりも多い。即ち、各色の感光ドラム1Y、1M、1C、1Kから中間転写ベルト25に1次転写されたトナー像の単位面積当たりのトナー量も、通常モードと比べて多くなる。したがって、広色域モードにおいて中間転写ベルト25から転写材Pにトナー像を2次転写するために2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する電圧(以下、2次転写電圧と称する)を、増加したトナー量に応じて適切に設定する必要がある。
【0039】
より具体的には、通常モードにおける2次転写電圧と同じ値に設定にしてしまうと、広色域モードにおいて中間転写ベルト25に1次転写されたトナー像を転写材Pに十分に転写できず、2次転写の転写効率が低下してしまうおそれがある。一方で、2次転写電圧を大きく設定しすぎると、2次転写部N2において発生する放電によって中間転写ベルト25に担持されたトナーの帯電極性が反転してしまうおそれがある。この場合、局所的な放電が発生した位置において、トナーが転写材Pに転写されず転写材Pの表面が露出することで画像が白く抜けてしまう現象(以下、白抜けと称する)が発生するおそれがある。
【0040】
したがって、広色域モードにおける2次転写電圧は、感光ドラム1に担持されたトナー量に応じて適切に設定する必要がある。しかしながら、感光ドラム1に担持されるトナー量は、感光ドラム1の回転速度に対する現像ローラ3の回転速度の速度比や画像形成装置100が使用される周囲環境の温度や湿度に影響を受ける。ここで、本実施例では、広色域モードを実行する場合に周囲環境によらず感光ドラム1の回転速度に対する現像ローラ3の回転速度の速度比を一定の値に設定しているため、感光ドラム1に担持されるトナー量は周囲環境の温度や湿度に影響を受ける。
【0041】
そこで、本実施例の構成においては、周囲環境を検知する検知手段としての検知センサ103によって温度、湿度を検知し、この検知結果から得られた重量絶対湿度に基づいて、最適な2次転写電圧を設定する。より詳細には、本実施例の構成においては、重量絶対湿度の値に基づいて2次転写電流の値が予め設定されており、この2次転写電流の値に基づいて2次転写電源41から2次転写ローラ11に適切な2次転写電圧が印加される。
【0042】
表1は、重量絶対湿度の値に基づく2次転写電流の値を示す表であり、本実施例においては、重量絶対湿度と2次転写電流の値は、ルックアップテーブル(LUT)として予めコントローラ102の記憶手段に格納されている。表1に示すように、例えば、重量絶対湿度が3.0(g/kg)の場合、コントローラ102は、2次転写ローラ11から中間転写ベルト25に向かって27μAの2次転写電流が流れるように、2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する電圧を制御する。
【0043】
【表1】
【0044】
次に、比較例1と本実施例に関して、各重量絶対湿度において広色域モードを実行し、転写効率や白抜けの発生の有無について評価を行った。比較例1では、いずれの環境においても、2次転写電流が、表1における重量絶対湿度が5(g/kg)以上15(g/kg)未満の場合の最適な2次転写電流である29μAとなるように、2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する電圧を制御した。なお、比較例1の構成は、重量絶対湿度に基づいて2次転写電流を変更しない点を除いて本実施例と同一であるため、本実施例と共通する部分に関しては同一の符号を付して説明を省略する。また、評価を行う際の転写材Pとしては、キヤノン株式会社製の高白色用紙GF-C081(坪量81.4g/m)を用い、画像形成部Sがほぼ新品の状態で評価を行った。
【0045】
表2は、本実施例と比較例1に関する評価結果を示す表である。なお、転写効率については、各色での差が小さかったので、画像形成部SCにおいて中間転写ベルト25に1次転写されたトナー像を転写材Pに2次転写する際の転写効率を評価した。具体的には、画像形成部SCにおいて形成されたトナー像を転写材Pに2次転写する際の転写効率が96%以上である場合を「○」、92%以上96%未満である場合を「△」、92%未満の場合を「×」として、表2に記した。また、白抜けの評価に関しては、発生しなかった場合を「○」、発生した場合を「×」として、表10に記した。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示すように、本実施例の構成によれば、広色域モードを用いて画像形成を行う場合に、いずれの環境においても良好な転写効率で画像形成を行うことができ、また、白抜けの発生も抑制することができた。一方で、比較例1においては、重量絶対湿度が15(g/kg)以上の環境においては十分な転写効率を得ることができず、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境においては白抜けが発生した。
【0048】
現像ローラ3から感光ドラム1に担持されるトナー量(以下、単にトナー載り量と称する)は、トナーの単位質量当たりの電荷量(以下、トリボと称する)によって変動し、トリボが高いとトナー載り量が少なくなり、トリボが低いとトナー載り量が多くなる。また、トリボは周囲環境によってその値が変動し、重量絶対湿度が低い側においては高くなり、重量絶対湿度が高い側においては低くなる。即ち、重量絶対湿度が5(g/kg)以上15(g/kg)未満の場合におけるトナー載り量に対して、重量絶対湿度が高い側においてはトナー載り量が多くなり、重量絶対湿度が低い側においてはトナー載り量が少なくなる。
【0049】
したがって、比較例1の構成では、重量絶対湿度が15(g/kg)以上の環境においては、重量絶対湿度が5(g/kg)以上15(g/kg)未満の環境よりもトナー載り量が多くなることで、2次転写電流が不足し、十分な転写効率が得られなかった。また、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境においては、重量絶対湿度が5(g/kg)以上15(g/kg)未満の環境よりもトナー載り量が少なくなることで、2次転写電流が過剰となり、放電の発生による白抜けが発生した。
【0050】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、画像形成装置100の周囲環境に基づいて、広色域モードで感光ドラム1から中間転写ベルト25にトナー像を転写する際に2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する2次転写電圧を制御する。これにより、周囲環境によらず、転写効率の低下や白抜けの発生を抑制することで、転写性の低下を抑制することが可能である。
【0051】
(実施例2)
実施例1においては、画像形成装置100の周囲環境に基づいて、広色域モードにおける2次転写電圧を設定する構成について説明した。これに対し、実施例2では、画像形成装置100の周囲環境と画像形成部Sの耐久度とに基づいて、広色域モードにおける2次転写電圧を設定する構成について説明する。なお、本実施例の構成は、画像形成装置100の周囲環境と画像形成部Sの耐久度とに基づいて2次転写電圧を設定する点を除いて、実施例1と同一の構成を有する。したがって、以下の説明において実施例1と共通する部分に関しては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
[広色域モードにおける2次転写制御]
実施例1で説明したように、広色域モードにおける2次転写電圧は、トナー載り量に応じて適切に設定する必要があり、トナー載り量はトリボによって変動する。そして、画像形成部Sの耐久度によっても、トナーのトリボは変動する。より具体的には、画像形成部Sの使用初期にくらべ、使用後期においてはトナーのトリボが低くなる傾向がある。そこで、本実施例においては、画像形成装置100の周囲環境から得られた重量絶対湿度と、画像形成部Sの耐久度と、に基づいて、最適な2次転写電圧を設定する。より詳細には、本実施例の構成においては、重量絶対湿度と、画像形成部Sの耐久度と、に基づいて2次転写電流の値が予め設定されており、この2次転写電流の値に基づいて2次転写電源41から2次転写ローラ11に適切な2次転写電圧が印加される。
【0053】
ここで、本実施例においては、コントローラ102によって各画像形成部Sの積算駆動時間を新品時から積算し、寿命と判断する積算駆動時間を100%とすることで、各画像形成部Sの耐久度を算出する。即ち、各画像形成部Sの耐久度は、新品時は0%であり、画像形成を行うにつれて増加し、寿命時には100%となる。なお、本実施例において、画像形成部Sの積算駆動時間は、画像形成が完了するごとにコントローラ102で算出され、逐次画像形成部Sに設けられた不揮発性メモリ(不図示)に書き込まれる。
【0054】
表3は、画像形成部Sの耐久度と重量絶対湿度とに基づく2次転写電流の値を示す表である。本実施例においては、画像形成部Sの耐久度と重量絶対湿度とに基づく2次転写電流の値は、ルックアップテーブル(LUT)として予めコントローラ102の記憶手段に格納されている。表3に示すように、例えば、画像形成装置Sの耐久度が40%で、重量絶対湿度が3.0(g/kg)の場合、コントローラ102は、2次転写電流が27μAとなるように、2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する2次転写電圧を制御する。
【0055】
【表3】
【0056】
次に、比較例2と本実施例に関して、画像形成部Sの耐久度ごとに、各重量絶対湿度において広色域モードを実行し、転写効率や白抜けについて評価を行った。比較例2では、いずれの耐久度、いずれの環境においても、2次転写電流が29μAとなるように、2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する電圧を制御した。ここで、2次転写電流として設定した29μAは、表3における、画像形成部Sの耐久度が40%で重量絶対湿度が5(g/kg)以上15(g/kg)未満の場合における最適な2次転写電流の値である。なお、以下の説明では、比較例2の構成において本実施例と共通する部分に関しては同一の符号を付して説明を省略する。また、評価を行う際の転写材P、及び、各評価基準は実施例1と同様であるため説明を省略する。
【0057】
表4は、本実施例と比較例2における、転写効率の評価結果を示す表であり、表5は、本実施例と比較例2における白抜けの評価結果を示す表である。
【0058】
【表4】
【0059】
表4に示すように、本実施例の構成によれば、広色域モードを用いて画像形成を行う場合に、いずれの耐久度、いずれの環境においても良好な転写効率で画像形成を行うことができた。一方で、比較例2においては、重量絶対湿度が15(g/kg)以上の環境において十分な転写効率を得ることができず、且つ、画像形成部Sの耐久度が高くなるにつれて、転写効率が更に低下する傾向がみられた。これは、重量絶対湿度が15(g/kg)以上の環境においては、トリボが低くなることでトナー載り量が増加し、比較例2の2次転写電流の設定値では電流が不足してしまうことで十分な転写効率が得られなかったものと考えられる。また、耐久度の上昇に伴う転写効率の低下に関しては、画像形成部Sの耐久度が高くなるにつれてトリボがさらに低くなり、トナー載り量がより増加したことで2次転写電流がより不足し、十分な転写効率が得られなかったものと考えられる。
【0060】
【表5】
【0061】
表5に示すように、本実施例の構成によれば、広色域モードを用いて画像形成を行う場合に、いずれの耐久度、いずれの環境においても白抜けの発生を抑制することができた。一方で、比較例2においては、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において白抜けを抑制することが困難であった。比較例2における白抜けの発生は、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境におけるトナー載り量が少なくなることで2次転写電流が過剰となってしまうことによるものと考えられる。
【0062】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、画像形成部Sの耐久度と画像形成装置100の周囲環境とに基づいて、広色域モードにおいて2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する2次転写電圧を制御する。これにより、周囲環境によらず、2次転写効率の低下や白抜けを抑制することで、2次転写における転写性の低下を抑制することが可能である。
【0063】
なお、本実施例においては、画像形成部Sの耐久度を、各画像形成部Sの積算駆動時間を新品時から積算して求めたが、これに限らない。例えば、現像ローラ3の回転数の積算値や、現像手段9に収容されたトナー量から、画像形成部Sの耐久度を求める構成としても良い。その他にも、感光ドラム1の膜厚や感光ドラム1の積算回転時間、感光ドラム1の表面移動量などから、画像形成部Sの耐久度を求めることも可能である。
【0064】
(実施例3)
実施例3では、実施例2の制御に加え、広色域モードを実行する場合に、転写材Pの搬送方向に関して転写材Pの後端部に印加する2次転写電圧を、転写材Pの中央部に印加する2次転写電圧よりも大きな値に設定する構成について説明する。なお、実施例3は、転写材Pの搬送方向に関して転写材Pの後端部と中央部とで2次転写電圧を異ならせる点を除いて、実施例2と同一の構成を有する。したがって、以下の説明において実施例2と共通する部分に関しては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
広色域モードを実行する場合、転写材Pの電気抵抗の値によっては、転写材Pの後端において画像部に2次転写されたトナー像が非画像部に飛び散る現象(以下、単に飛び散りと称する)が発生することがある。以下、図6(a)~(b)を用いて、広色域モードにおける飛び散りについて説明する。図6(a)は、通常モードにおける2次転写時の、転写材Pの後端に担持されたトナー像を説明する模式図であり、図6(b)は、広色域モードにおいて飛び散りが発生した場合の、転写材Pの後端に担持されたトナー像を説明する模式図である。
【0066】
図6(a)、(b)に示すように、中間転写ベルト25から転写材Pにトナー像を2次転写するために2次転写電源41から2次転写ローラ11に正極性の電圧を印加すると、2次転写ローラ11と対向する転写材Pの裏面には正極性の電荷が供給される。このとき、2次転写されるトナー像が保持している電荷よりも、転写材Pの裏面に供給された電荷が大きい場合には、飛び散りは発生しない。しかしながら、広色域モードを実行することによって中間転写ベルト25に担持されたトナーが多い場合においては、転写材Pに供給された電荷が、トナー像が保持している電荷よりも少なくなる可能性がある。転写材Pに供給された電荷が、トナー像が保持している電荷よりも少なくなると、図6(b)に示すように、転写材Pに2次転写されたトナーが非画像部に飛び散る現象(以下、飛び散りと称する)が発生してしまう。特に、この飛び散りは、転写材Pの電気抵抗が高くなる低温低湿環境で発生しやすい。
【0067】
そこで、本実施例においては、実施例2の制御に加え、低温低湿環境で広色域モードを実行する場合に、転写材Pの搬送方向に関して転写材Pの後端部に印加する2次転写電圧を、転写材Pの中央部に印加する2次転写電圧よりも大きな値に設定する。より詳細には、図7に示すように、重量絶対湿度と画像形成部Sの耐久度に基づいて、転写材Pの搬送方向に関して、転写材Pの後端部(第1の領域)における2次転写電流を転写材Pの中央部(第2の領域)における2次転写電流よりも大きな値に設定する。図7は、本実施例における2次転写電源41の制御を説明する模式的なタイミングチャートである。
【0068】
図7に示すように、本実施例の通常モード及び広色域モードにおいては、転写材Pに2次転写されるトナー像の先端が2次転写部N2に到達する前の時刻T11にて、2次転写電源41から2次転写ローラ11に2次転写電圧を印加する。この時、コントローラ102は、2次転写ローラ11から中間転写ベルト25に向かって流れる2次転写電流が、通常モードにおいては電流Inとなるように2次転写電源41の出力の値を制御する。また、広色域モードにおいては電流Iw(第2の電流値)となるように、2次転写電源41の出力の値を制御する。
【0069】
続いて、広色域モードにおいては、転写材Pに2次転写されるトナー像の後端が2次転写部N2に到達する時刻T12にて、2次転写電流が、電流Iwの値よりも大きい電流Iw(第1の電流値)となるように2次転写電源41の出力の値を制御する。その後、時刻T13において、2次転写電源41から2次転写ローラ11への電圧の印加を停止し、通常モード及び広色域モードにおける転写材Pへの画像形成を完了する。
【0070】
本実施例の構成においては、転写材Pの中央部における2次転写電流の値と、転写材Pの後端部における2次転写電流の値と、が予め設定されている。コントローラ102は、広色域モードを実行する場合に、それぞれの2次転写電流の値に基づいて2次転写電源41を制御し、2次転写ローラ11に適切な2次転写電圧を印加する。また、本実施例においては、飛び散りがより発生しやすい環境、即ち、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において、転写材Pの中央部と後端部とで2次転写電流の値を異ならせる構成とした。
【0071】
表6は、画像形成部Sの耐久度と重量絶対湿度とに基づく電流Iwの値を示す表であり、表7は、画像形成部Sの耐久度と重量絶対湿度とに基づく電流Iwが値を示す表である。表6及び表7に示すように、例えば、画像形成装置Sの耐久度が40%、重量絶対湿度が3(g/kg)の場合、コントローラ102は、以下のようにして2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する2次転写電圧を制御する。即ち、転写材Pの中央部に対応する2次転写電流である電流Iwが27μA、転写材Pの後端部に対応する2次転写電流である電流Iwが32μAとなるように、2次転写ローラ11に印加する2次転写電圧を制御する。ここで、本実施例では、広色域モードにおける第2の領域から第1の領域への2次転写電圧の切り替えは、転写材Pの後端が2次転写部N2を抜ける5mm前に行う構成とした。
【0072】
【表6】
【0073】
【表7】
【0074】
次に、比較例3と本実施例に関して、画像形成部Sの耐久度ごとに、各重量絶対湿度において広色域モードを実行し、白抜けや飛び散りについて評価を行った。なお、転写時Pとしては、キヤノン株式会社製の高白色用紙GF-C081(坪量81.4g/m)を用い、この転写材Pを各雰囲気環境下に4日間放置したのちに広色域モードを実行して白抜け及び飛び散りについての評価を行った。
【0075】
比較例3は、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において転写材Pの中央部と後端部とで2次転写電流の値を切り替えない構成である。即ち、比較例3においては、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境においても、転写材Pの中央部と後端部における2次転写電流が、電流Iwとなるように2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する電圧を制御した。なお、以下の説明では、比較例3の構成において本実施例と共通する部分に関しては同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
表8は、本実施例と比較例3における、白抜けの評価結果を示す表であり、表9は、本実施例と比較例3における飛び散りの評価結果を示す表である。なお、白抜けと飛び散りについては、発生しなかった場合を「○」、発生した場合を「×」として表8又は表9に記した。
【0077】
【表8】
【0078】
表8に示すように、本実施例および比較例3のいずれの構成においても、広色域モードを用いて画像形成を行う場合に白抜けの発生は確認されなかった。これは、本実施例及び比較例3においては、画像形成部Sの耐久度と画像形成装置100の周囲環境とに基づいて、広色域モードにおける2次転写電流を設定し、2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する電流を制御していることによるものである。この構成により、周囲環境によらず、2次転写効率の低下や白抜けを抑制することで、2次転写における転写性の低下を抑制することが可能である。
【0079】
【表9】
【0080】
表9に示すように、比較例3においては、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において、転写材Pの後端部で飛び散りが発生した。これは、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において4日間放置されたことで、転写材Pの電気抵抗が高くなり、2次転写ローラ11から転写材Pに供給された電荷が、トナー像が保持している電荷よりも少なくなったためと考えられる。これに対し、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において、転写材Pの後端部に対応する2次転写電流の値を、転写材Pの中央部に対応する2次転写電流の値よりも大きくした本実施例の構成においては、飛び散りの発生を抑制することができた。
【0081】
また、本実施例においては、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において、転写材Pの後端部に対応する2次転写電流の値を大きくしたが、2次転写電流が過剰となることによる白抜けは発生しなかった。これは、2次転写電流を大きくする第1の領域が、転写材Pの搬送方向に関して、トナー像が2次転写される画像形成領域の後端を含みつつも、転写材Pの後端から5mm以内の領域と比較的狭い領域であるためと考えられる。
【0082】
以上説明したように、本実施例の構成では、画像形成部Sの耐久度と周囲環境とに基づいて2次転写電流を設定し、且つ、転写材Pの搬送方向に関して、転写材Pの後端部における2次転写電流を中央部における2次転写電流よりも大きな値に設定している。これにより、実施例2と同様の効果が得られるだけでなく、転写材Pの後端部における飛び散りの発生を抑制することも可能である。
【0083】
なお、画像形成部Sの耐久度と周囲環境とに基づいて2次転写電流を設定する実施例2の構成を前提に説明を行ったが、これに限らない。2次転写部N2における飛び散りを抑制するためであれば、少なくとも、転写材Pの搬送方向に関して、転写材Pの後端部における2次転写電流を転写材Pの中央部における2次転写電流よりも大きな値に設定すればよい。また、実施例1の周囲環境に基づいて2次転写電流を設定する構成に対して、転写材Pの後端部における2次転写電流を転写材Pの中央部における2次転写電流よりも大きな値に設定する構成としてもよい。これにより、実施例1と同様の効果が得られるだけでなく、実施例1の構成において飛び散りを抑制することができる。
【0084】
また、本実施例においては、転写材Pの後端から5mm以内の領域に対して、2次転写電流の値を切り替える構成について説明したが、これに限らない。少なくとも、トナー像が2次転写される画像形成領域の後端を含み、且つ、転写材Pの搬送方向に関して、画像形成領域の後端に転写されたトナー像が飛び散る可能性のある上流側の領域を含んでいれば、飛び散りの発生を抑制することが可能である。即ち、転写材Pの搬送方向に関して、画像形成領域の後端よりも下流側において2次転写電流の値を切り替えてもよい。しかし、第1の領域を広く設定しすぎると、2次転写電流の値が大きいことによる白抜けが発生する可能性がある。第1の領域は、画像形成領域の後端を含み、且つ、転写材Pの搬送方向に関して、第1の領域の幅が第2の領域の幅よりも狭くなるように設定することが好ましい。
【0085】
なお、本実施例においては、画像形成部Sの耐久度を、各画像形成部Sの積算駆動時間を新品時から積算して求めたが、これに限らない。例えば、現像ローラ3の回転数の積算値や、現像手段9に収容されたトナー量から、画像形成部Sの耐久度を求める構成としても良い。その他にも、感光ドラム1の膜厚や感光ドラム1の積算回転時間、感光ドラム1の表面移動量などから、画像形成部Sの耐久度を求めることも可能である。
【0086】
<変形例>
本実施例においては、転写材Pの電気抵抗が高くなる重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において転写材Pの中央部と後端部とで2次転写電流の値を切り替える構成について説明した。これは、転写材Pの電気抵抗が高い場合に、2次転写ローラ11から転写材Pに供給される電荷量が下がることで飛び散りが発生する可能性が高くなるためである。ここで、2次転写ローラ11から転写材Pに供給される電荷量は、2次転写部N2における転写材Pの後端部の姿勢によっても左右される。以下詳細に説明する。
【0087】
図8(a)は、転写材Pが2次転写部N2を通過する際に、転写材Pの搬送方向に関して転写材Pの後端が中間転写ベルト25側に抜ける状態を説明する模式図である。また、図8(b)は、転写材Pが2次転写部N2を通過する際に、転写材Pの搬送方向に関して転写材Pの後端が2次転写ローラ11側に抜ける状態を説明する模式図である。
【0088】
重量絶対湿度が低い環境(低温低湿環境)においては、2次転写ローラ11から転写材Pへの電荷供給は放電が支配的となる。即ち、図8(a)に示すように、転写材Pの後端が中間転写ベルト25側に移動する状態においては、2次転写ローラ11から転写材Pの裏面への放電が増加することによって2次転写ローラ11から転写材Pへ供給される電荷量も増加する。一方で、図8(b)に示すように、転写材Pの後端が2次転写ローラ11側に移動する状態においては、2次転写ローラ11から転写材Pの裏面への放電が減少することによって2次転写ローラ11から転写材Pへ供給される電荷量も減少する。
【0089】
図8(b)に示されるような姿勢で転写材Pが搬送される場合、転写材Pの後端において飛び散りが発生する可能性がある。具体的には、2次転写部N2において第1面にトナー像を2次転写され、定着手段13において第1面にトナー像を定着された後に、両面搬送路を経て再度2次転写部N2に搬送された転写材Pは、図8(b)の姿勢になり易い。これは、両面搬送路を通過する際に、転写材Pがカールする可能性があるためである。
【0090】
ここで、本実施例においては、転写材Pの第1面又は第2面に関わらず、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において広色域モードを実行する場合に、転写材Pの後端部に電流Iwの値よりも大きい電流Iwが流れるように2次転写電源41を制御した。しかし、これに限らず、広色域モードを実行する場合であって転写材Pの第2面にトナー像を2次転写する場合にのみ、転写材Pの後端部に電流Iwの値よりも大きい電流Iwが流れるように2次転写電源41を制御する構成としてもよい。このような構成においても、本実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0091】
(実施例4)
実施例3では、転写材Pの搬送方向に関して、転写材Pの後端部における2次転写電流を転写材Pの中央部における2次転写電流よりも大きな値に設定することで、転写材Pの後端部における飛び散りを抑制する構成について説明した。これに対し、実施例4においては、重量絶対湿度が低い環境(低温低湿環境)で広色域モードを実行する場合に、2次転写電源41の出力をオフにするタイミングを通常モードよりも遅くする構成について説明する。なお、実施例4は、転写材Pの中央部と後端部とで2次転写電流を切り替えずに、2次転写電源41の出力をオフにするタイミングを異ならせる点を除いて、実施例3と同一の構成を有する。したがって、以下の説明において実施例2と共通する部分に関しては、同一の符号を付して説明を省略する。
【0092】
図9は、本実施例における2次転写電源41の制御を説明する模式的なタイミングチャートである。図9に示すように、本実施例の通常モード及び広色域モードにおいては、転写材Pに2次転写されるトナー像の先端が2次転写部N2に到達する前の時刻T21にて、2次転写電源41から2次転写ローラ11に2次転写電圧を印加する。続いて、通常モードにおいては、転写材Pに2次転写されるトナー像の後端が2次転写部N2を通過した後の時刻T22にて、2次転写電源41から2次転写ローラ11への電圧の印加を停止し、転写材Pへの画像形成を完了する。これに対し、広色域モードにおいては、時刻T22よりも遅い時刻T23にて、2次転写電源41から2次転写ローラ11への電圧の印加を停止し、転写材Pへの画像形成を完了する。
【0093】
実施例3で説明したように、重量絶対湿度が低くなる低温低湿環境においては、2次転写ローラ11から転写材Pへの電荷供給は放電が支配的となるが、転写材Pの後端部では、転写材Pの裏面への放電が減少することで転写材Pへ供給される電荷量も減少する。本実施例ではこの点を鑑み、広色域モード時の2次転写電源41の出力をオフにするタイミングを通常モード時より遅くすることで、転写材Pの後端部において転写材Pの裏面へ供給される電荷量を補う。
【0094】
なお、本実施例における広色域モードでの2次転写電流の値は、重量絶対湿度と画像形成部Sの耐久度に基づいて予め設定されている。この2次転写電流の値は、実施例3において表6で示した値と同一であるため、説明を省略する。コントローラ102は、広色域モードを実行する場合に、それぞれの2次転写電流の値に基づいて2次転写電源41を制御し、2次転写ローラ11に適切な2次転写電圧を印加する。また、本実施例においては、実施例3で説明したような、転写材Pの中央部と後端部とで2次転写電流の値を切り替える制御を行わない。
【0095】
次に、比較例4と本実施例に関して、画像形成部Sの耐久度ごとに、各重量絶対湿度において広色域モードを実行し、白抜けや飛び散りについて評価を行った。なお、転写時Pとしては、キヤノン株式会社製の高白色用紙GF-C081(坪量81.4g/m)を用い、この転写材Pを各雰囲気環境下に4日間放置したのちに広色域モードを実行して白抜け及び飛び散りについての評価を行った。
【0096】
比較例4の構成においては、転写材Pの搬送方向に関して、転写材Pの後端部における2次転写電源41の出力をオフにするタイミングが、通常モードと広色域モードとで同じタイミングとなるように、コントローラ102によって2次転写電源41を制御する。なお、以下の説明では、比較例4の構成において本実施例と共通する部分に関しては同一の符号を付して説明を省略する。
【0097】
表10は、本実施例と比較例4における、白抜けの評価結果を示す表であり、表11は、本実施例と比較例3における飛び散りの評価結果を示す表である。なお、白抜けと飛び散りについては、発生しなかった場合を「○」、発生した場合を「×」として表8又は表9に記した。
【0098】
【表10】
【0099】
表10に示すように、本実施例においては、広色域モード時の2次転写電源41の出力をオフにするタイミングを通常モード時より遅くしたが、2次転写電流が過剰となることによる白抜けの発生は確認されなかった。また、比較例4の構成においても、広色域モードを用いて画像形成を行う場合に白抜けの発生は確認されなかった。本実施例及び比較例4においては、画像形成部Sの耐久度と画像形成装置100の周囲環境とに基づいて、広色域モードにおける2次転写電流を設定し、2次転写電源41から2次転写ローラ11に印加する電流を制御している。この構成により、周囲環境によらず、2次転写効率の低下や白抜けを抑制することで、2次転写における転写性の低下を抑制することが可能である。
【0100】
【表11】
【0101】
表11に示すように、比較例4においては、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において、転写材Pの後端部で飛び散りが発生した。これは、重量絶対湿度が5(g/kg)未満の環境において4日間放置されたことで転写材Pの電気抵抗が高くなり、2次転写ローラ11から転写材Pに供給された電荷が、トナー像が保持している電荷よりも少なくなったためと考えられる。これに対し、広色域モードを実行する場合における2次転写電源41の出力をオフにするタイミングを通常モードを実行する場合より遅くした本実施例の構成においては、飛び散りの発生を抑制することができた。
【0102】
ここで、広色域モードにおいて2次転写電源41の出力をオフにするタイミングは、転写材Pの搬送方向に関する転写材Pの後端の位置、若しくは転写材Pの後端よりも下流側に設定することが好ましい。転写材Pの後端が2次転写部N2を通過した後に2次転写電源41の出力をオフにする構成の場合、転写材Pを介さずに2次転写ローラ11から中間転写ベルト25に向かって電流が流れることになる。この時、中間転写ベルト25に2次転写電流による静電的な履歴が残ってしまうことで、次の画像形成時に画像不良が発生するおそれがある。また、中間転写ベルト25にクリーニング部をすり抜けたトナーなどが残留していた場合、転写材Pを介さずに2次転写電流が流れることで、これらのトナーが2次転写ローラ11に付着し、次の画像形成時に転写材Pの裏面を汚してしまうおそれがある。
【0103】
以上説明したように、本実施例の構成では、画像形成部Sの耐久度と周囲環境とに基づいて2次転写電流を設定し、且つ、広色域モードにおける2次転写電源41の出力をオフにするタイミングを通常モードよりも遅く設定している。これにより、実施例2と同様の効果が得られるだけでなく、転写材Pの後端部における飛び散りの発生を抑制することも可能である。
【0104】
なお、本実施例においては、画像形成部Sの耐久度と周囲環境とに基づいて2次転写電流を設定する実施例2の構成を前提に説明を行ったが、これに限らない。実施例1の周囲環境に基づいて2次転写電流を設定する構成に対して、広色域モードにおける2次転写電源41の出力をオフにするタイミングを通常モードよりも遅く構成としてもよい。これにより、実施例1と同様の効果が得られるだけでなく、実施例1の構成において飛び散りを抑制することができる。
【0105】
本実施例においては、画像形成部Sの耐久度を、各画像形成部Sの積算駆動時間を新品時から積算して求めたが、これに限らない。例えば、現像ローラ3の回転数の積算値や、現像手段9に収容されたトナー量から、画像形成部Sの耐久度を求める構成としても良い。その他にも、感光ドラム1の膜厚や感光ドラム1の積算回転時間、感光ドラム1の表面移動量などから、画像形成部Sの耐久度を求めることも可能である。
【0106】
以上の実施例においては、転写材Pにトナー像を2次転写する際に、周囲環境に基づいて、2次転写ローラ11から感光ドラム1に向かって予め設定された所定電流が流れるように2次転写電源41の出力を制御する定電流制御の構成について説明した。しかし、これに限らず、周囲環境に基づいて、2次転写電源41から2次転写ローラ11に所定電圧を印加する定電圧制御によって、中間転写ベルト25から転写材Pにトナー像を2次転写する構成であっても、本実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0107】
なお、定電圧制御によってトナー像の2次転写を行う場合、画像形成動作を行う前の前回転動作において、以下に説明するような電圧設定制御を実行することで、適切な2次転写電圧を設定することが可能である。まず、コントローラ102は、前回転動作において、2次転写ローラ11に所定の目標電流が流れるように2次転写電源41の出力を制御し、2次転写ローラ11に所定の目標電流が流れた時の電圧値を得る。その後、コントローラ102における計算、若しくは、予めコントローラ102に格納された電圧値のルックアップテーブル(LUT)等によって、周囲環境に基づいて、適切な2次転写電圧を設定する。
【0108】
さらに、実施例1~4の広色域モードにおける、感光ドラム1の回転速度と現像ローラ3の回転速度の間に設ける第2の速度比に関しては、通常モードにおける第1の速度比よりも大きい値であれば、現像ローラ3と感光ドラム1のどちらを変更しても良い。例えば、現像ローラ3の回転速度は変更せずに、通常モードにおける感光ドラム1の回転速度に対して、広色域モードの感光ドラム1の回転速度を遅く設定することで、第2の速度比を設定しても良い。また、感光ドラム1の回転速度は変更せずに、通常モードにおける現像ローラ3の回転速度に対して、広色域モードの現像ローラ3の回転速度を速く設定することで、第2の速度比を設定しても良い。
【0109】
また、実施例1~4においては、検知センサ103による周囲環境の温度と湿度の検知結果から重量絶対湿度を求め、得られた重量絶対湿度に基づいて2次転写電圧を設定する構成について説明したが、これに限らない。例えば、検知センサ103による周囲環境の温度と湿度の検知結果に基づいて、2次転写電圧を設定する構成としても良い。この場合、コントローラ102に、予め、周囲環境の温度と湿度に基づいた2次転写電圧のルックアップテーブル(LUT)を格納しておけばよい。また、周囲環境の温度や湿度の情報の入手方法に関しては、必ずしも検知センサ103を用いなくてもよい。例えば、ホストコンピュータ101からコントローラ102に入力される画像形成条件などから周囲環境の温度や湿度の情報を得る構成としても良く、ユーザによって周囲環境の温度や湿度を画像形成装置100に入力する構成にしても良い。
【符号の説明】
【0110】
1 感光ドラム
3 現像ローラ
11 2次転写ローラ
25 中間転写ベルト
41 2次転写電源
102 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9