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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】制御装置及び固液分離システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20221219BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20221219BHJP
   C02F 1/28 20060101ALI20221219BHJP
   C02F 1/54 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B01D21/30 A
B01D61/02 500
C02F1/28 D
C02F1/54 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018152659
(22)【出願日】2018-08-14
(65)【公開番号】P2020025932
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永森 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】茂庭 忍
(72)【発明者】
【氏名】仕入 英武
(72)【発明者】
【氏名】早見 徳介
(72)【発明者】
【氏名】木内 智明
(72)【発明者】
【氏名】大月 伸浩
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044149(JP,A)
【文献】特開2002-136809(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099857(WO,A1)
【文献】特開2000-258407(JP,A)
【文献】特開2010-046627(JP,A)
【文献】特開2016-123929(JP,A)
【文献】特開2018-030065(JP,A)
【文献】特開2011-131191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/28
C02F 1/44
C02F 1/52- 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭処理によって希釈水から残留塩素成分を除去する改質装置と、高分子凝集剤と前記残留塩素成分が除去された希釈水とを混合して高分子溶液を調製する溶解槽と、前記溶解槽において調製された高分子溶液を被処理水に注入して被処理水中の固形物を凝集させる凝集槽と、前記固形物が凝集した被処理水を固形物と水分とに分離する固液分離装置と、前記残留塩素成分が除去された希釈水の残留塩素濃度を測定する水質計と、を備える固液分離システムの制御装置であって、
前記水質計が測定した残留塩素濃度に基づいて前記改質装置の動作を制御する
制御装置。
【請求項2】
記残留塩素濃度が所定の閾値以上である場合、前記改質装置が希釈水を改質する動作、又は改質後の希釈水を前記溶解槽に供給する動作を抑止する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記改質装置は、更に逆浸透膜処理によって前記希釈水中の2価イオン成分を除去し、
前記水質計は、更に前記2価イオン成分が除去された希釈水の2価イオン濃度又は導電率を測定し、
前記改質装置によって改質された希釈水の2価イオン濃度又は導電率に基づいて前記改質装置の動作を制御する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記2価イオン成分は、硫酸イオン、カルシウムイオン又はマグネシウムイオンである、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記2価イオン濃度又は導電率が所定の閾値以上である場合、前記改質装置が希釈水を改質する動作、又は改質後の希釈水を前記溶解槽に供給する動作を抑止する、
請求項3又は4に記載の制御装置。
【請求項6】
活性炭処理によって希釈水から残留塩素成分を除去する改質装置と、
高分子凝集剤と前記残留塩素成分が除去された希釈水とを混合して高分子溶液を調製する溶解槽と、
前記溶解槽において調製された高分子溶液を被処理水に注入して被処理水中の固形物を凝集させる凝集槽と、
前記固形物が凝集した被処理水を固形物と水分とに分離する固液分離装置と、
前記残留塩素成分が除去された希釈水の残留塩素濃度を測定する水質計と、
前記水質計が測定した残留塩素濃度に基づき、前記改質装置の動作を制御する制御装置と、
を備える固液分離システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記残留塩素濃度が所定の閾値以上である場合、前記改質装置が希釈水を改質する動作、又は改質後の希釈水を前記溶解槽に供給する動作を抑止する、
請求項6に記載の固液分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、制御装置及び固液分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
排水や汚泥等の被処理水を浄化する方法の一つに固液分離処理がある。排水処理では、前処理として固液分離処理を行い、分離された固形物と排水とをそれぞれに適した方法で処理することで処理コストを削減することができる。また、汚泥処理では、汚泥の脱水処理として固液分離処理を行い、汚泥の減容を図ることで輸送や処分に要するコストを削減することができる。このような固液分離処理では、固液分離性能を高めるために被処理水に高分子凝集剤が注入される場合がある。高分子凝集剤は、被処理水中の固形物を凝集させる作用を有し、固形物の沈降性を高める効果を奏するため、固液分離性能の向上に寄与する。
【0003】
一方で、高分子凝集剤の注入量が不足すれば固液分離性能が低下し、注入量が多すぎると被処理水中に多くの高分子凝集剤が残留することになり処理水の悪化を招くため、高分子凝集剤の注入量は、被処理水中の固形物量の変動に応じて適切に調整される必要がある。また、固液分離処理では、顆粒状で流通することが多い高分子凝集剤を水に溶解させて被処理水に注入するのが一般的であるが、高分子凝集剤の水溶液(以下「高分子溶液」という。)の性状によっては固液分離の性能が低下する場合がある。このような背景により、従来は、被処理水に注入する高分子凝集剤の性状や注入量に起因して固液分離性能が低下してしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-57288号公報
【文献】特開2011-167651号公報
【文献】特開2004-202400号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Gehr, Ronald & Kalluri, Ramesh. (1983). EFFECTS OF SHORT-TERM STORAGE AND ELEVATED TEMPERATURES ON THE FLOCCULATION ACTIVITY OF AQUEOUS POLYMER SOLUTIONS.. Water pollution research journal of Canada. 18. 23-43.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被処理水の固液分離性能の低下を抑制することができる制御装置及び固液分離システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の制御装置は、活性炭処理によって希釈水から残留塩素成分を除去する改質装置と、高分子凝集剤と前記残留塩素成分が除去された希釈水とを混合して高分子溶液を調製する溶解槽と、前記溶解槽において調製された高分子溶液を被処理水に注入して被処理水中の固形物を凝集させる凝集槽と、前記固形物が凝集した被処理水を固形物と水分とに分離する固液分離装置と、前記残留塩素成分が除去された希釈水の残留塩素濃度を測定する水質計と、を備える固液分離システムの制御装置である制御装置は、前記水質計が測定した残留塩素濃度に基づいて前記改質装置の動作を制御する
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】従来の固液分離システムの構成例を示す図。
図2】第1の実施形態の固液分離システムの構成例を示す図。
図3】第1の実施形態における制御装置の機能構成の具体例を示す図。
図4】第2の実施形態の固液分離システムの構成例を示す図。
図5】第2の実施形態における制御装置の機能構成の具体例を示す図。
図6】第3の実施形態の固液分離システムの構成例を示す図。
図7】第3の実施形態における制御装置の機能構成の具体例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の制御装置及び固液分離システムを、図面を参照して説明する。
【0010】
(概略)
図1は、従来の固液分離システムの構成例を示す図である。固液分離システム90は、溶解槽91、第1攪拌機92、高分子溶液注入ポンプ93(注入装置の一例)、凝集槽94、第2攪拌機95及び固液分離装置96を備える。溶解槽91は、顆粒状の高分子凝集剤を溶媒である水(以下「希釈水」という。)に溶解させ、高分子凝集剤の水溶液(以下「高分子溶液」という。)を調製するための水槽である。第1攪拌機92は、溶解槽91に投入された高分子凝集剤及び希釈水を攪拌する装置である。高分子溶液注入ポンプ93は、溶解槽91において調製された高分子溶液を凝集槽94に注入する装置である。凝集槽94は、高分子溶液と被処理水とを混和させて被処理水中の固形物を凝集させるための水槽である。第2攪拌機95は、高分子溶液と被処理水とを混和させるために攪拌する装置である。固液分離装置96は、固形物が凝集した被処理水を固形物と水分とに分離する装置である。
【0011】
ここで、高分子溶液注入ポンプ93は、実験室Lで行われた固液分離の模擬試験の結果に基づいて決定された注入率(以下「設定注入率」という。)で動作するように構成される。基本的に、設定注入率は、良好な固液分離性能が得られた試験結果に基づいて決定された注入率であるが、被処理水の水質は時々刻々と変動するものであるため、設定注入率が設定時において必ずしも最適であるとは限らない。設定注入率が、最適な注入率より小さい場合、固液分離性能が低下してしまい、被処理水を望ましい性状の水分と固形分とに分離することができなくなる。また、注入率が最適な注入率より大きい場合も、やはり固液分離性能は低下する。また、高分子凝集剤の注入量が増大するため薬品コストも増大する。さらに、水分中に多くの高分子凝集剤が残留することになり、処理水の水質悪化も懸念される。
【0012】
また、高分子凝集剤と希釈水とを攪拌して高分子溶液を調製する場合、継粉(ままこ)の発生等により高分子凝集剤を均一に溶解させるのに時間がかかる場合がある。このために、攪拌時間を長くとろうとすると、その分だけ溶解槽91の容量も大きくしなければならず、装置が大型化してしまう。装置の大型化は、装置コストの高騰につながるとともに、設定場所の確保も困難にする。さらに、従来は、高分子凝集剤の溶解状態を検知する手段がなかったため、不均一な溶解状態の高分子溶液が注入されてしまい、望ましい固液分離性能が得られない場合があった。
【0013】
また、固液分離性能において望ましい高分子溶液の性状は、貯留時間や貯留環境によって悪化することが知られている。しかしながら、従来は、その性状の悪化を防止又は検知する手段がなかったため、実際の注入率が最適な注入率よりも少なくなり、望ましい固液分離性能が得られない場合があった。
【0014】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態の固液分離システムの構成例を示す図である。第1の実施形態の固液分離システム100は、溶解槽1、高分子溶液注入ポンプ2、凝集槽3、固液分離装置4及び制御装置5を備える。溶解槽1は、顆粒状の高分子凝集剤を溶媒である水(以下「希釈水」という。)に溶解させ、高分子凝集剤の水溶液(以下「高分子溶液」という。)を調製するための水槽である。溶解槽1には、高分子溶液を攪拌する第1撹拌機11が備えられる。
【0015】
また、溶解槽1には、高分子溶液中の高分子凝集剤の濃度(以下「凝集剤濃度」という。)に相関する水質(以下「濃度指標」という。)を測定する水質計12が備えられる。水質計12は、高分子溶液のUV-VIS(Ultra Violet - Visible:紫外可視光)吸光度、コロイド電荷量、流動電流値の少なくとも1つを測定する。水質計12は、制御装置5と通信可能に接続され、測定データを制御装置5に送信する。
【0016】
高分子溶液注入ポンプ2は、溶解槽1において調製された高分子溶液を凝集槽3に注入する装置である。高分子溶液注入ポンプ2は制御装置5と通信可能に接続される。高分子溶液注入ポンプ2は、制御装置5から通知される注入率に基づいて高分子溶液の注入動作を行う。
【0017】
凝集槽3は、高分子溶液注入ポンプ2によって注入された高分子溶液と被処理水とを混和させて被処理水中の固形物を凝集させるための水槽である。凝集槽3には、高分子溶液と被処理水との混和水を攪拌する第2攪拌機31が備えられる。また、凝集槽3の前段には、槽内に流入する被処理水の流量を測定する流量計32と、槽内に流入する被処理水の固形物濃度を測定する固形物濃度計33と、が設けられる。流量計32及び固形物濃度計33は、制御装置5と通信可能に接続され、測定データを制御装置5に送信する。
【0018】
固液分離装置4は、高分子溶液の注入により固形物が凝集した被処理水(混和水)を固形物と水分とに分離する装置である。
【0019】
制御装置5は、溶解槽1で調製された高分子溶液の凝集剤濃度に応じて凝集槽3に注入される高分子溶液の注入量を調整する機能を有する。具体的には、制御装置5は、水質計12によって測定される濃度指標値に基づいて高分子溶液注入ポンプ2の注入率を決定する。
【0020】
図3は、第1の実施形態における制御装置の機能構成の具体例を示す図である。第1の実施形態における制御装置5は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。制御装置5は、プログラムの実行によって通信部51、記憶部52、測定データ取得部53及び注入率制御部54を備える装置として機能する。なお、制御装置5の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0021】
通信部51は通信インタフェースである。通信部51は、有線通信インタフェースであってもよいし、無線通信インタフェースであってもよい。通信部51は、水質計12、高分子溶液注入ポンプ2、流量計32及び固形物濃度計33と通信可能に接続される。
【0022】
記憶部52は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部52は、水質計12、流量計32及び固形物濃度計33の測定データを記憶する。また、記憶部52には、高分子溶液の濃度指標値と凝集剤濃度との関係性を示す関係情報を予め記憶されている。
【0023】
測定データ取得部53は、通信部51を介して水質計12、流量計32及び固形物濃度計33から測定データを取得する。測定データ取得部53は取得した測定データを記憶部52に保存する。
【0024】
注入率制御部54は、高分子溶液注入ポンプ2の注入率を制御する機能を有する。具体的には、注入率制御部54は、溶解槽1において調製された高分子溶液の凝集剤濃度に応じて高分子溶液注入ポンプ2の注入率を決定し、決定した注入率を通信部51を介して高分子溶液注入ポンプ2に通知する。
【0025】
より詳細には、以下の手順例で生成される関係情報を予め記憶部52に記録しておく。
[手順1]高分子凝集剤と純水との混合比が異なる複数パターンの高分子溶液を調製する。
[手順2]手順1で調製した各パターンの高分子溶液の濃度指標値を測定する。
[手順3]手順2で測定された濃度指標値と、混合比から算出される凝集剤濃度とをパターンごとに対応づける。
【0026】
注入率制御部54は、このようにして生成された関係情報と、固液分離処理の実施中に取得される高分子溶液の濃度指標値の測定データとに基づいて、溶解槽1に貯留されている高分子溶液の凝集剤濃度を推定する。一方で、固形物の凝集に必要な高分子凝集剤の量は、被処理水中に含まれる固形物の量に応じて定まる。そのため、注入率制御部54は、推定した凝集剤濃度と、測定データが示す被処理水の流量及び固形物濃度と、に基づいて高分子溶液注入ポンプ2の注入率を決定する。
【0027】
ここで、高分子溶液の濃度指標値としては、高分子溶液のUV-VIS吸光度、コロイド電荷量又は流動電流値を用いることができる。注入率制御部54は、これらの濃度指標値のうちのいずれか1つの測定値に基づいて注入率を決定してもよいし、複数の測定値に基づいて注入率を決定してもよい。例えば、複数の濃度指標値に基づいて注入率を決定する場合、注入率制御部54は、複数の濃度指標値ごとに得られた注入率の平均的な値を実際の注入率として決定してもよいし、濃度指標ごとの関係情報に代えて、複数の濃度指標値と凝集剤濃度との対応関係を示す関係情報を用いて注入率を決定してもよい。
【0028】
このように構成された第1の実施形態の固液分離システム100によれば、被処理水に対する高分子凝集剤の注入量を、流入する被処理水の水質の変動、又は、高分子溶液の凝集剤濃度の変動に応じて調節することが可能になるため、被処理水の固液分離性能の低下を抑制することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態の固液分離システムの構成例を示す図である。第2の実施形態の固液分離システム100aは、流量計32及び固形物濃度計33を備えない点、制御装置5に代えて制御装置5aを備える点で第1の実施形態の固液分離システム100と異なる。また、制御装置5aは、高分子溶液注入ポンプ2の注入率を制御することに代えて高分子溶液注入ポンプ2の動作状態を切り替える制御を行う点で第1の実施形態における制御装置5と異なる。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、図4では同様の構成について図2と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0030】
図5は、第2の実施形態における制御装置の機能構成の具体例を示す図である。第2の実施形態における制御装置5aは、記憶部52に代えて記憶部52aを備える点、測定データ取得部53に代えて測定データ取得部53aを備える点、注入率制御部54に代えて動作状態制御部55を備える点で第1の実施形態における制御装置5と異なる。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、図5では同様の構成について図3と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0031】
記憶部52aは、関係情報に代えて判定情報を予め記憶している点で第1の実施形態における記憶部52と異なる。判定情報は、溶解槽1における高分子凝集剤の溶解状態を判定する際の条件を示す情報である。ここでは、その一例として、高分子凝集剤の溶解状態を示す指標値の閾値が判定情報として予め記憶部52aに記憶されるものとする。
【0032】
測定データ取得部53aは、第1の実施形態における測定データ取得部53が水質計12、流量計32及び固形物濃度計33の測定データを取得するのに対して、水質計12の測定データのみを取得する点で第1の実施形態における測定データ取得部53と異なる。
【0033】
動作状態制御部55は、溶解槽1における高分子凝集剤の溶液状態に応じて、高分子溶液注入ポンプ2の動作状態を切り替える機能を有する。ここで、高分子溶液注入ポンプ2は、高分子溶液の注入動作を行うことが可能な状態(以下「注入可能状態」という。)と、高分子溶液の注入動作が抑止されている状態(以下「注入抑止状態」という。)と、の2つの動作状態を取りうるものとする。動作状態制御部55は、水質計12によって取得される時系列の測定データに基づいて高分子凝集剤の溶解状態の変化を観測し、高分子凝集剤がある程度均一に溶解したことが観測されたタイミングで、高分子溶液注入ポンプ2の動作状態を注入抑止状態から注入可能状態に遷移させる。
【0034】
一般に、高分子溶液の凝集剤濃度の変化の大きさは、高分子凝集剤の溶解状態が均一に近づくほど小さくなっていくため、高分子溶液の濃度指標値の変化の大きさを観測することで高分子凝集剤の溶解状態の変化の大きさを観測することができる。具体的には、動作状態制御部55は、水質計12の測定データに基づいて過去の所定期間における濃度指標値の分散値を計算し、この分散値の変化を観測することで、高分子凝集剤の溶解状態を変化を観測する。この場合、分散値は、高分子凝集剤のより均一に溶解するほど、小さい値を示すため、動作状態制御部55は、分散値が所定の閾値以下となったタイミングで高分子溶液注入ポンプ2の動作状態を注入抑止状態から注入可能状態に遷移させる。この場合、記憶部52aには、分散値の判定に用いる閾値が判定情報として予め記憶される。
【0035】
なお、動作状態制御部55は、高分子溶液のUV-VIS吸光度、コロイド電荷量及び流動電流値のうちのいずれか1つの測定値に基づいて溶解状態を判定してもよいし、複数の測定値に基づいて溶解状態を判定してもよい。例えば、複数の測定値に基づいて溶解状態を判定する場合、動作状態制御部55は、各濃度指標値の分散値が全て閾値以下となった場合に高分子溶液注入ポンプ2の動作状態を変更してもよいし、一部の分散値が閾値以下となった場合に高分子溶液注入ポンプ2の動作状態を変更してもよい。また、例えば、動作状態制御部55は、各分散値に基づいて溶解状態の指標値を算出し、その指標値が閾値以下となった場合に高分子溶液注入ポンプ2の動作状態を変更してもよい。
【0036】
このように構成された第2の実施形態の固液分離システム100aによれば、高分子凝集剤が十分に均一に溶解した高分子溶液が被処理水に注入されるため、被処理水の固液分離性能の低下を抑制することができる。
【0037】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態の固液分離システムの構成例を示す図である。第3の実施形態の固液分離システム100bは、水質計12、流量計32及び固形物濃度計33を備えない点、制御装置5に代えて制御装置5bを備える点、改質装置6、希釈水注入ポンプ7及び水質計71をさらに備える点で第1の実施形態の固液分離システム100と異なる。また、制御装置5bは、高分子溶液注入ポンプ2の注入率を制御することに代えて改質装置6及び希釈水注入ポンプ7の動作状態を切り替える制御を行う点で第1の実施形態における制御装置5と異なる。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、図6では同様の構成について図2と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0038】
改質装置6は、高分子溶液の調製に用いられる希釈水を改質する装置である。具体的には、改質装置6は、希釈水から所定の成分を除去する処理(以下「改質処理」という。)を行うことにより希釈水を改質する。例えば、改質処理は、膜処理(例えば逆浸透膜処理)及び活性炭処理のいずれか一方又は両方によって実現される。改質装置6の動作は制御装置5bによって制御される。
【0039】
希釈水注入ポンプ7は、改質装置6によって改質された希釈水(以下「改質希釈水」という。)を溶解槽1に供給する装置である。希釈水注入ポンプ7の動作は制御装置5bによって制御される。希釈水注入ポンプ7の前段には、改質希釈水の水質を測定する水質計71が設置される。具体的には、水質計71は、改質希釈水の水質として、カルシウム濃度、残留塩素濃度及び導電率の一部又は全部を測定する。水質計71は、制御装置5bと通信可能に接続され、測定データを制御装置5bに送信する。なお、希釈水注入ポンプ7は改質装置6の一部として構成されてもよい。
【0040】
図7は、第3の実施形態における制御装置の機能構成の具体例を示す図である。第3の実施形態における制御装置5bは、記憶部52に代えて記憶部52bを備える点、測定データ取得部53に代えて測定データ取得部53bを備える点、注入率制御部54に代えて動作状態制御部55bを備える点で第1の実施形態における制御装置5と異なる。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、図7では同様の構成について図3と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0041】
記憶部52bは、関係情報に代えて判定情報を予め記憶している点で第1の実施形態における記憶部52と異なる。判定情報は、改質希釈水の水質は判定する際の条件を示す情報である。ここでは、その一例として、改質希釈水の水質の指標値の閾値が判定情報として予め記憶部52bに記憶されるものとする。また、以下では、第2の実施形態における判定情報と区別するため、第3の実施形態における判定情報を第2判定情報と称する。
【0042】
測定データ取得部53bは、水質計12、流量計32及び固形物濃度計33の測定データに代えて水質計71の測定データを取得する点で第1の実施形態における測定データ取得部53と異なる。
【0043】
動作状態制御部55bは、改質希釈水の水質に応じて改質装置6又は希釈水注入ポンプ7の動作状態を切り替える機能を有する。ここで、改質装置6は、改質処理を実行可能な状態(以下「実行可能状態」という。)と、改質処理の実行が抑止されている状態(以下「実行抑止状態」という。)と、の2つの動作状態を取りうるものとする。同様に、希釈水注入ポンプ7は、改質希釈水の注入動作を行うことが可能な状態(以下「注入可能状態」という。)と、改質希釈水の注入動作が抑止されている状態(以下「注入抑止状態」という。)と、の2つの動作状態を取りうるものとする。
【0044】
一般に、被処理水の固液分離性能の低下は、希釈水中に存在する所定の成分(以下「要因成分」という。)に起因することが知られている。具体的には、要因成分は、残留塩素成分やイオン成分であることが知られている。特に、イオン成分では、カルシウムイオンやマグネシウムイオン、硫酸イオン等の2価イオンが固液分離性能の低下に寄与するとされている。これらの要因成分のうち、残留塩素成分は活性炭処理によって除去することが可能であり、イオン成分は膜処理によって除去することが可能である。しかしながら、このような改質処理による要因成分の除去性能は、一般に処理量の増加に応じて低下することが知られている。そのため、改質処理が良好に機能している状況では、改質希釈水中の要因成分の濃度は低い値で観測されるが、改質処理の性能劣化が進むにつれてより高い値が観測されるようになる。
【0045】
そこで、動作状態制御部55bは、水質計71によって時系列に取得される測定データに基づいて改質希釈水中の要因成分に起因する水質の変化を観測し、要因成分の濃度が所定の閾値以上となったことが観測されたタイミングで、改質装置6の動作状態を実行可能状態から実行抑止状態に遷移させる、又は希釈水注入ポンプ7の動作状態を注入可能状態から注入抑止状態に遷移させる。なお、要因成分のうちのイオン濃度は、改質希釈水の導電率に相関するため、動作状態制御部55bは、改質希釈水の導電率が所定の閾値以上となったタイミングで改質装置6又は希釈水注入ポンプ7の動作を制御してもよい。
【0046】
このように構成された第3の実施形態の固液分離システム100bによれば、高分子溶液の調製に要因成分濃度の低い希釈水を用いることができるため、被処理水の固液分離性能の低下を抑制することができる。
【0047】
(変形例)
第1実施形態の制御装置5は、注入率制御部54に加え、第2の実施形態における動作状態制御部55、及び第3の実施形態における動作状態制御部55bのいずれか一方又は両方を備えるように構成されてもよい。
【0048】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、希釈水の水質に基づいて高分子溶液の調製処理を制御する、又は高分子溶液の水質に基づいて被処理水に対する高分子溶液の注入処理を制御する制御装置を持つことにより、高分子凝集剤と希釈水とを混合して高分子溶液を調製する溶解槽と、溶解槽において調製された高分子溶液を被処理水に注入して被処理水中の固形物を凝集させる凝集槽と、固形物が凝集した被処理水を固形物と水分とに分離する固液分離装置と、を備える固液分離システムにおいて固液分離性能の低下を抑制することができる。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0050】
100,100a,100b…固液分離システム、1…溶解槽、11…第1撹拌機、12…水質計、2…高分子溶液注入ポンプ、3…凝集槽、31…第2攪拌機、32…流量計、33…固形物濃度計、4…固液分離装置、5,5a,5b…制御装置、51…通信部、52,52a,52b…記憶部、53,53a,53b…測定データ取得部、54…注入率制御部、55,55b…動作状態制御部、6…改質装置、7…希釈水注入ポンプ、71…水質計、90…従来の固液分離システム、91…溶解槽、92…第1攪拌機、93…高分子溶液注入ポンプ、94…凝集槽、95…第2攪拌機、96…固液分離装置
図1
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図7