(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】調理器用トッププレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F24C 15/10 20060101AFI20221219BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20221219BHJP
C03C 17/42 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
F24C15/10 B
H05B6/12 305
C03C17/42
(21)【出願番号】P 2018165760
(22)【出願日】2018-09-05
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2017241747
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593046429
【氏名又は名称】日電硝子加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 尚平
(72)【発明者】
【氏名】小西 弘孫
(72)【発明者】
【氏名】土谷 武史
【審査官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-216457(JP,A)
【文献】特開2017-145168(JP,A)
【文献】特開2016-011761(JP,A)
【文献】特開2015-055456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/10
H05B 6/12
C03C 17/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、
前記ガラス基板の前記裏面上に設けられており、第1の金属調顔料を含む、金属調層と、
前記金属調層上に設けられており、第2の金属調顔料を含む、第1の耐熱樹脂層と、
前記第1の耐熱樹脂層上に設けられており、無機顔料を含む、第2の耐熱樹脂層と、
を備え
、
前記第1の金属調顔料及び前記第2の金属調顔料が、それぞれ、金属酸化物により被覆された無機顔料であり、
前記第2の耐熱樹脂層に含まれる無機顔料が、前記第1の金属調顔料及び前記第2の金属調顔料とは異なる着色無機顔料である、調理器用トッププレート。
【請求項2】
前記第2の金属調顔料が、前記第1の金属調顔料と共通の金属調顔料を含む、請求項1に記載の調理器用トッププレート。
【請求項3】
前記第1の耐熱樹脂層は、質量%で、第1の耐熱樹脂40%~95%と、前記第2の金属調顔料5%~60%とを含む、請求項1又は2に記載の調理器用トッププレート。
【請求項4】
前記金属調層は、質量%で、ガラスフリット40%~60%と、前記第1の金属調顔料40%~60%とを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項5】
前記第1の耐熱樹脂層に含まれる単位体積当たりの前記第2の金属調顔料の含有量が、前記金属調層に含まれる単位体積当たりの前記第1の金属調顔料の含有量よりも少ない、請求項1~4のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項6】
前記第1の耐熱樹脂層の厚みが、1μm~30μmであり、
前記金属調層の厚みが、1μm~20μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の調理器用トッププレート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の調理器用トッププレートの製造方法であって、
前記第1の金属調顔料を含む金属調層形成用ペーストを前記ガラス基板の前記裏面に塗布し、焼成することにより、前記ガラス基板の前記裏面上に前記金属調層を形成する工程と、
前記金属調層上に、前記第2の金属調顔料を含む第1の耐熱樹脂層形成用ペースト及び前記
着色無機顔料を含む第2の耐熱樹脂層形成用ペーストをこの順に塗布する工程と、
前記第1の耐熱樹脂層形成用ペースト及び前記第2の耐熱樹脂層形成用ペーストを同時に又は片方ずつ焼成する工程と、
を備える、調理器用トッププレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器用トッププレート及び該調理器用トッププレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁調理器、ラジアントヒーター調理器、ガス調理器などの調理器用のトッププレートには、低い熱膨張係数を有する結晶化ガラスや硼珪酸ガラスなどからなる耐熱性を有するガラス基板が用いられている。ガラス基板として透明なガラス基板を用いる場合には、一般に、調理器内部の構造を隠蔽したり意匠性を向上させたりすることを目的として、調理器内部側に位置する裏面に、遮光層や金属調層が形成されている。
【0003】
下記の特許文献1には、加熱調理器の上部に配置されるガラストッププレートが開示されている。特許文献1のガラストッププレートでは、ガラスセラミックス基板の調理面とは反対側の裏側面上に、パール調層が設けられている。また、上記パール調層上には、保護層が設けられている。保護層は、耐熱樹脂と無機顔料により形成されている遮光部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、調理器用トッププレートの裏面において、金属調顔料が含まれる層上に耐熱樹脂層を設けた場合、十分なメタリック感が得られず、意匠性が損なわれることがある。一方で、耐熱樹脂層を設けない場合、加熱装置等が調理器用トッププレートに当接する際に、金属調顔料が含まれる層が剥がれたり、金属調顔料が含まれる層にクラックが生じたりすることがある。
【0006】
本発明の目的は、メタリック感に優れ、意匠性を向上させることができるとともに、金属調顔料が含まれる層の剥がれやクラックの発生が少ない、調理器用トッププレート及び該調理器用トッププレートの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る調理器用トッププレートは、調理器具が載せられる調理面及び該調理面とは反対側の裏面を有する、ガラス基板と、前記ガラス基板の前記裏面上に設けられており、第1の金属調顔料を含む、金属調層と、前記金属調層上に設けられており、第2の金属調顔料を含む、第1の耐熱樹脂層と、前記第1の耐熱樹脂層上に設けられており、無機顔料を含む、第2の耐熱樹脂層と、を備えることを特徴としている。
【0008】
本発明において、前記第2の金属調顔料が、前記第1の金属調顔料と共通の金属調顔料を含むことが好ましい。
【0009】
本発明において、前記第1の耐熱樹脂層は、質量%で、第1の耐熱樹脂40%~95%と、前記第2の金属調顔料5%~60%とを含むことが好ましい。
【0010】
本発明において、前記金属調層は、質量%で、ガラスフリット40%~60%と、前記第1の金属調顔料40%~60%とを含むことが好ましい。
【0011】
本発明において、前記第1の耐熱樹脂層に含まれる単位体積当たりの前記第2の金属調顔料の含有量が、前記金属調層に含まれる単位体積当たりの前記第1の金属調顔料の含有量よりも少ないことが好ましい。
【0012】
本発明において、前記第1の耐熱樹脂層の厚みが、1μm~30μmであり、前記金属調層の厚みが、1μm~20μmであることが好ましい。
【0013】
本発明に係る調理器用トッププレートの製造方法は、本発明に従って構成される調理器用トッププレートの製造方法であって、前記第1の金属調顔料を含む金属調層形成用ペーストを前記ガラス基板の前記裏面に塗布し、焼成することにより、前記ガラス基板の前記裏面上に前記金属調層を形成する工程と、前記金属調層上に、前記第2の金属調顔料を含む第1の耐熱樹脂層形成用ペースト及び前記無機顔料を含む第2の耐熱樹脂層形成用ペーストをこの順に塗布する工程と、前記第1の耐熱樹脂層形成用ペースト及び前記第2の耐熱樹脂層形成用ペーストを同時に又は片方ずつ焼成する工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メタリック感に優れ、意匠性を向上させることができるとともに、金属調顔料が含まれる層の剥がれやクラックの発生が少ない、調理器用トッププレート及び該調理器用トッププレートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照する場合がある。
【0017】
[調理器用トッププレート]
図1は、本発明の一実施形態に係る調理器用トッププレートを示す模式的正面断面図である。
図1に示すように、調理器用トッププレート1(以下、「調理器用トッププレート1」を、単に「トッププレート1」とする。)は、ガラス基板2を備える。ガラス基板2は、一方側の主面である調理面2bと、他方側の主面である裏面2aとを有する。調理面2bは、鍋やフライパンなどの調理器具が載せられる側の面である。裏面2aは、調理器の内部側において加熱装置と対向する面である。また、調理面2b及び裏面2aは、互いに表裏の関係にある。
【0018】
ガラス基板2の裏面2a上には、金属調層3が設けられている。金属調層3は、ガラスフリットと、第1の金属調顔料とを含む、多孔質膜である。もっとも、金属調層3は、実質的に空隙を有さない、緻密な膜であってもよく、第1の金属調顔料を含んでいる限りにおいて特に限定されない。
【0019】
金属調層3上(ガラス基板2と接する側とは逆側)には、第1の耐熱樹脂層4が設けられている。第1の耐熱樹脂層4は、第1の耐熱樹脂と、第2の金属調顔料とを含む。本実施形態では、第1の耐熱樹脂が、無色透明である。なお、本明細書において、無色透明であるとは、波長450nm~700nmにおける可視波長域の光透過率が70%以上であることをいう。
【0020】
第1の耐熱樹脂層4上(金属調層3と接する側とは逆側)に、第2の耐熱樹脂層5が設けられている。第2の耐熱樹脂層5は、第2の耐熱樹脂と、無機顔料とを含む。無機顔料は、第1の金属調顔料及び第2の金属調顔料とは異なる顔料である。本実施形態において、無機顔料は、着色無機顔料である。
【0021】
本実施形態の主たる特徴は、金属調層3と第2の耐熱樹脂層5との間に、第1の耐熱樹脂層4が設けられていることにある。金属調層3と第2の耐熱樹脂層5との間に、第1の耐熱樹脂層4が設けられているので、トッププレート1はメタリック感に優れ、意匠性を向上させることができる。なお、この理由については、以下のように説明することができる。
【0022】
上記のように、金属調層3は、ガラスフリットと、第1の金属調顔料とを含む、多孔質膜である。そのため、金属調層3上に、無機顔料として着色無機顔料のような他の無機顔料を含む第2の耐熱樹脂層5を直接形成すると、他の無機顔料が金属調層3に入り込みメタリック感が損なわれることとなる。
【0023】
これに対して、本実施形態のように、金属調層3と第2の耐熱樹脂層5との間に、第2の金属調顔料を含む第1の耐熱樹脂層4が設けられている場合、第1の耐熱樹脂層4の存在により第2の耐熱樹脂層5に含まれる他の無機顔料が金属調層3に入り込み難くなる。また、金属調層3上には第1の耐熱樹脂層4が直接形成されている。従って、たとえ第1の耐熱樹脂層4に含まれる第2の金属調顔料が多孔質の金属調層3内に入り込んだとしても、当該顔料は金属調顔料なので、メタリック感が損なわれ難い。よって、トッププレート1は、メタリック感に優れ、意匠性を向上させることができる。
【0024】
さらに、トッププレート1では、第1の耐熱樹脂層4及び第2の耐熱樹脂層5が設けられているため、加熱装置等がトッププレート1に当接しても、これらの樹脂層が衝撃を吸収し、金属調層3が剥がれたり、金属調層3にクラックが生じたりすることを抑制できる。
【0025】
以下、トッププレート1を構成する各層の詳細について説明する。
【0026】
(ガラス基板)
ガラス基板2は、波長450nm~700nmにおける少なくとも一部の光を透過する。ガラス基板2は、有色透明であってもよいが、トッププレート1の美観性をより一層高める観点から、無色透明であることが好ましい。
【0027】
トッププレート1は、繰り返し加熱及び冷却される。そのため、ガラス基板2は、高い耐熱性及び低い熱膨張係数を有するものであることが好ましい。具体的には、ガラス基板2の軟化温度は、700℃以上であることが好ましく、750℃以上であることがより好ましい。また、ガラス基板2の30℃~750℃における平均線熱膨張係数は、-10×10-7/℃~+60×10-7/℃の範囲内であることが好ましく、-10×10-7/℃~+50×10-7/℃の範囲内であることがより好ましく、-10×10-7/℃~+40×10-7/℃の範囲内であることがさらにより好ましい。従って、ガラス基板2は、ガラス転移温度が高く、低膨張なガラスや、低膨張の結晶化ガラスからなるものであることが好ましい。低膨張の結晶化ガラスの具体例としては、例えば、日本電気硝子社製の「N-0」が挙げられる。なお、ガラス基板2としては、ホウケイ酸ガラスなどを用いてもよい。
【0028】
(金属調層)
金属調層3は、ガラスフリットと、第1の金属調顔料とを含む。
【0029】
ガラスフリットとしては、例えば、B2O3-SiO2系ガラス粉末、ZnO-B2O3系ガラス粉末、SiO2-Al2O3系ガラス粉末などを用いることができる。
【0030】
金属調層3におけるガラスフリットの含有量(割合)は、質量%で、好ましくは40%以上、60%以下、より好ましくは45%以上、55%以下である。ガラスフリットの含有量が、上記範囲内にある場合、ガラス基板2と金属調層3との密着性をより一層高めることができる。なお、ガラスフリットの含有量は、金属調層3に含まれる材料全体を100質量%としたときの含有量である。
【0031】
また、第1の金属調顔料としては、例えば、無機顔料の表面を金属酸化物で被覆したものを用いることができる。
【0032】
第1の金属調顔料に含まれる無機顔料としては、カオリン、タルク、セリサイト、ピロフェライト、マイカ、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等を用いることができる。なかでも、天然のマイカを粉砕することにより得られたフレークを基材としてその表面を金属酸化物で被覆したパール顔料を用いることが好ましい。また、アルミナフレーク、シリカフレーク、フレーク状ガラスなど、人工的に作られたフレークを基材としてその表面を金属酸化物で被覆したエフェクト顔料を用いてもよい。なお、パール顔料やエフェクト顔料に用いられる金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化鉄等が挙げられる。また、これらの第1の金属調顔料は、単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0033】
金属調層3における第1の金属調顔料の含有量(割合)は、質量%で、好ましくは40%以上、60%以下、より好ましくは45%以上、55%以下である。第1の金属調顔料の含有量が、上記範囲内にある場合、金属調層3のメタリック感をより一層高めることができる。なお、第1の金属調顔料の含有量は、金属調層3に含まれる材料全体を100質量%としたときの含有量である。
【0034】
なお、金属調層3の厚みは、特に限定されない。金属調層3の厚みは、例えば、金属調層3の光透過率や、機械的強度、あるいは熱膨張係数などに応じて適宜設定することができる。なお、金属調層3は、通常、ガラス基板2と異なる熱膨張係数を有する。このため、繰り返しの加熱及び冷却により金属調層3が損傷する場合がある。
【0035】
この損傷をより一層抑制する観点から、金属調層3の厚みは、薄い方が好ましい。金属調層3の厚みは、好ましくは1μm以上、20μm以下、より好ましくは3μm以上、15μm以下である。
【0036】
(第1の耐熱樹脂層)
第1の耐熱樹脂層4は、第1の耐熱樹脂と、第2の金属調顔料とを含む。
【0037】
第1の耐熱樹脂は、無色透明であることが好ましい。この場合、トッププレート1のメタリック感をより一層高めることができる。もっとも、トッププレート1のメタリック感を損なわない限りにおいて、第1の耐熱樹脂は、着色されていてもよい。
【0038】
第1の耐熱樹脂は、高い耐熱性を有していることが望ましい。このような第1の耐熱樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができる。なかでも、シリコン原子に直接結合した官能基が、メチル基及びフェニル基のうち少なくとも一方であるシリコーン樹脂であることが好ましい。この場合、トッププレート1の耐熱性をより一層高めることができる。第1の耐熱樹脂は、単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0039】
第1の耐熱樹脂層4における第1の耐熱樹脂の含有量(割合)は、質量%で、好ましくは40%以上、95%以下、より好ましくは60%以上、90%以下である。第1の耐熱樹脂の含有量が、上記範囲内にある場合、トッププレート1の耐熱性をより一層高めることができる。なお、第1の耐熱樹脂の含有量は、第1の耐熱樹脂層4に含まれる材料全体を100質量%としたときの含有量である。
【0040】
第2の金属調顔料としては、上述の第1の金属調顔料の欄で説明したパール顔料やエフェクト顔料等を用いることができる。第2の金属調顔料は、上述のパール顔料やエフェクト顔料を、単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0041】
また、第2の金属調顔料は、第1の金属調顔料と異なる金属調顔料であってもよいが、第1の金属調顔料と同じ金属調顔料であることが好ましい。第2の金属調顔料が、第1の金属調顔料と同じ金属調顔料である場合、トッププレート1のメタリック感をより一層高めることができる。
【0042】
なお、金属調層3に第1の金属調顔料が複数種含まれる場合は、複数種の第1の金属調顔料のうち少なくとも1種と同じ第2の金属調顔料が第1の耐熱樹脂層4に含まれていることが好ましく、複数種の第1の金属調顔料のうち全てと同じ第2の金属調顔料が第1の耐熱樹脂層4に含まれていることがより好ましい。この場合においても、トッププレート1のメタリック感をより一層高めることができる。
【0043】
第1の耐熱樹脂層4における第2の金属調顔料の含有量(割合)は、質量%で、好ましくは5%以上、60%以下、より好ましくは10%以上、40%以下である。第2の金属調顔料の含有量が、上記範囲内にある場合、トッププレート1のメタリック感をより一層高めることができる。また、トッププレート1が繰り返し加熱及び冷却された場合においても、膨張及び収縮によるクラックからの剥離をより一層生じ難くすることができる。なお、第2の金属調顔料の含有量は、第1の耐熱樹脂層4に含まれる材料全体を100質量%としたときの含有量である。
【0044】
第1の耐熱樹脂層4に含まれる単位体積当たりの第2の金属調顔料の含有量は、金属調層3に含まれる単位体積当たりの第1の金属調顔料の含有量よりも少ないことが好ましい。この場合、第1の耐熱樹脂層4が金属調層3に浸透しやすく、かつ、第1の耐熱樹脂層4に第2の耐熱樹脂層5が浸透しにくい。
【0045】
また、第1の耐熱樹脂層4の厚みは、特に限定されない。第1の耐熱樹脂層4の厚みは、第1の耐熱樹脂層4の光透過率などに応じて適宜設定することができる。第1の耐熱樹脂層4の厚みは、例えば、1μm~30μm程度とすることができる。
【0046】
(第2の耐熱樹脂層)
第2の耐熱樹脂層5は、第2の耐熱樹脂と無機顔料とを含む。
【0047】
第2の耐熱樹脂としては、例えば、上述の第1の耐熱樹脂の欄で説明したシリコーン樹脂や、ポリイミド樹脂などを用いることができる。第2の耐熱樹脂は、単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0048】
第2の耐熱樹脂は、第1の耐熱樹脂と異なる樹脂であってもよいが、第1の耐熱樹脂と同じ樹脂であることが好ましい。第2の耐熱樹脂が、第1の耐熱樹脂と同じ樹脂である場合、第1の耐熱樹脂層4と第2の耐熱樹脂層5との密着性をより一層高めることができる。
【0049】
第2の耐熱樹脂層5における第2の耐熱樹脂の含有量(割合)は、質量%で、好ましくは40%以上、70%以下、より好ましくは50%以上、60%以下である。第2の耐熱樹脂の含有量が、上記範囲内にある場合、トッププレート1の耐熱性をより一層高めることができる。なお、第2の耐熱樹脂の含有量は、第2の耐熱樹脂層5に含まれる材料全体を100質量%としたときの含有量である。
【0050】
第2の耐熱樹脂層5に含まれる無機顔料は、着色顔料粉末であることが好ましい。着色顔料は、有色の無機物である。無機顔料として着色顔料粉末を用いる場合、第2の耐熱樹脂層5を着色することができるので、調理器内部の構造をより一層確実に隠蔽することができる。
【0051】
着色顔料粉末は、例えば、TiO2粉末、ZrO2粉末若しくはZrSiO4粉末などの白色の顔料粉末、Coを含む青色の無機顔料粉末、Coを含む緑色の無機顔料粉末、Ti-Sb-Cr系若しくはTi-Ni系の黄色の無機顔料粉末、Co-Si系の赤色の無機顔料粉末、Feを含む茶色の無機顔料粉末、Cuを含む黒色の無機顔料粉末などが挙げられる。
【0052】
Coを含む青色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Co-Al系又はCo-Al-Ti系の無機顔料粉末が挙げられる。Co-Al系の無機顔料粉末の具体例としては、 CoAl2O4粉末などが挙げられる。Co-Al-Ti系の無機顔料粉末の具体例としては、CoAl2O4-TiO2-Li2O粉末などが挙げられる。
【0053】
Coを含む緑色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Co-Al-Cr系又はCo-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末が挙げられる。Co-Al-Cr系の無機顔料粉末の具体例としては、Co(Al,Cr)2O4粉末などが挙げられる。Co-Ni-Ti-Zn系の無機顔料粉末の具体例としては、(Co,Ni,Zn)2TiO4粉末などが挙げられる。
【0054】
Feを含む茶色の無機顔料系粉末の具体例としては、例えば、Fe-Zn系の無機顔料粉末が挙げられる。Fe-Zn系の無機顔料粉末の具体例としては、(Zn,Fe)Fe2O4粉末などが挙げられる。
【0055】
Cuを含む黒色の無機顔料粉末の具体例としては、例えば、Cu-Cr系の無機顔料粉末やCu-Fe系の無機顔料粉末が挙げられる。Cu-Cr系の無機顔料粉末の具体例としては、Cu(Cr,Mn)2O4粉末や、Cu-Cr-Mn粉末などが挙げられる。また、Cu-Fe系の無機顔料粉末の具体例としては、Cu-Fe-Mn粉末などが挙げられる。
【0056】
第2の耐熱樹脂層5における無機顔料の含有量は、質量%で、好ましくは30%以上、60%以下、より好ましくは40%以上、50%以下である。無機顔料の含有量が、上記範囲内である場合、調理器内部の構造をより一層効果的に隠蔽することができる。なお、無機顔料の含有量は、第2の耐熱樹脂層5に含まれる材料全体を100質量%としたときの含有量である。
【0057】
また、第2の耐熱樹脂層5の厚みは、特に限定されない。第2の耐熱樹脂層5の厚みは、第2の耐熱樹脂層5の光透過率などに応じて適宜設定することができる。第2の耐熱樹脂層5の厚みは、例えば、1μm~30μm程度とすることができる。
【0058】
(他の実施形態)
上記実施形態では、金属調層3、第1の耐熱樹脂層4、及び第2の耐熱樹脂層5が、ガラス基板2の裏面2aの全面に形成されている場合について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。金属調層3、第1の耐熱樹脂層4、及び第2の耐熱樹脂層5は、例えば、ガラス基板2の裏面2aの一部に形成されていてもよい。例えば、調理器が電磁加熱調理器の場合、第1の耐熱樹脂層4及び第2の耐熱樹脂層5を、トッププレート1の電磁加熱部分のみに設けてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、ガラス基板2の調理面2bの上には、膜が形成されていない例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、調理面2bの上に、意匠性向上やヒーター位置の表示等のために、必要に応じて装飾被膜を形成してもよい。
【0060】
ガラス基板2の裏面2a側にも、さらに膜が形成されていてもよい。例えば、意匠性向上やヒーターの位置表示等を目的として、ガラス基板2と金属調層3の間に装飾被膜を形成してもよい。また、第2の耐熱樹脂層5の上に、第2の耐熱樹脂層5の保護層などが形成されていてもよいし、各層間に、密着層などが形成されていてもよい。
【0061】
(調理器用トッププレートの製造方法)
トッププレート1は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【0062】
まず、ガラス基板2の裏面2a上に、金属調層3を形成する。具体的には、まず、ガラスフリットと第1の金属調顔料粉末との混合粉末に溶剤を加えてペースト化する。得られた金属調層形成用ペーストをスクリーン印刷法等によりガラス基板2の裏面2a上に塗布し、乾燥させる。次に、乾燥させたペーストを焼成することにより金属調層3を形成することができる。なお、焼成温度及び焼成時間は、使用するガラスフリット等の組成などに応じて適宜設定することができる。焼成温度は、例えば、700℃~900℃程度とすることができる。焼成時間は、例えば、10分間~1時間程度とすることができる。
【0063】
次に、金属調層3上に、第1の耐熱樹脂層4を形成する。具体的には、まず、第1の耐熱樹脂と第2の金属調顔料粉末とを混合し、溶剤を加えてペースト化する。得られた第1の耐熱樹脂層形成用ペーストをスクリーン印刷法等により金属調層3上に塗布し、乾燥させる。次に、乾燥させたペーストを焼成することにより第1の耐熱樹脂層4を形成することができる。なお、焼成温度及び焼成時間は、使用する樹脂等の組成などに応じて適宜設定することができる。焼成温度は、例えば、250℃~500℃程度とすることができる。焼成時間は、例えば、10分間~1時間程度とすることができる。
【0064】
次に、第1の耐熱樹脂層4上に、第2の耐熱樹脂層5を形成する。具体的には、まず、第2の耐熱樹脂と無機顔料粉末とを混合し、溶剤を加えてペースト化する。得られた第2の耐熱樹脂層形成用ペーストをスクリーン印刷法等により第1の耐熱樹脂層4上に塗布し、乾燥させる。次に、乾燥させたペーストを焼成することにより第2の耐熱樹脂層5を形成することができる。なお、焼成温度及び焼成時間は、使用する樹脂等の組成などに応じて適宜設定することができる。焼成温度は、例えば、250℃~500℃程度とすることができる。焼成時間は、例えば、10分間~1時間程度とすることができる。
【0065】
なお、本実施形態の製造方法では、第1の耐熱樹脂層形成用ペーストを焼成した後、第2の耐熱樹脂層形成用ペーストを焼成したが、第1の耐熱樹脂層形成用ペースト及び第2の耐熱樹脂層形成用ペーストは同時に焼成してもよい。
【0066】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに詳細を説明する。但し、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0067】
(実施例1)
まず、ガラスフリット 50質量%と、第1の金属調顔料としてのメタリック顔料A 20質量%、メタリック顔料B 25質量%、及びメタリック顔料C 5質量%とを混合し、有機溶剤 200質量%を添加してペーストを作製した。ガラスフリットとしては、 B2O3-SiO2系ガラス粉末(日本電気硝子社製、商品名「NPF」)を用いた。メタリック顔料Aとしては、マイカの表面を酸化チタンでコーティングしたもの(シルバー系、平均粒子径:10μm~60μm)を用いた。メタリック顔料Bとしては、マイカの表面を酸化チタン及び酸化スズでコーティングしたもの(白系、平均粒子径:5μm~25μm)を用いた。メタリック顔料Cとしては、酸化ケイ素(シリカフレーク)の表面を酸化鉄でコーティングしたもの(ピンク系、平均粒子径:5μm~50μm)を用いた。
【0068】
次に、得られたペーストを透明結晶化ガラス板(日本電気硝子社製、商品名「N-0」、30℃~750℃における平均線熱膨張係数:0.5×10-7/℃)の全体の上に、厚みが20μmとなるように、スクリーン印刷した(スクリーンメッシュ;♯180M)。その後、100℃で5分間乾燥させ、さらに800℃で60分間焼成することにより金属調層を形成した。
【0069】
次に、透明なシリコーン樹脂 39質量%と、メタリック顔料A 9質量%と、メタリック顔料B 9質量%と、メタリック顔料C 4質量%とを混合し、有機溶剤 39質量%を添加してペーストを作製した。なお、メタリック顔料A,B,C及び有機溶剤は金属調層と同じものを用いた。また、シリコーン樹脂としては、メチル基とフェニル基双方が含まれるものを用いた。
【0070】
次に、このペーストを上記で作製した金属調層全体の上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した(スクリーンメッシュ;♯180M)。その後、70℃で5分間乾燥させ、さらに300℃で60分間焼成することにより第1の耐熱樹脂層を形成した。
【0071】
次に、シリコーン樹脂 34質量%と、Cu-Cr-Mn系黒色無機顔料(着色無機顔料) 2質量%と、TiO2粉末27質量%を混合し、有機溶剤 37質量%を添加してペーストを作製した。なお、シリコーン樹脂は、第1の耐熱樹脂層と同じものを用いた。
【0072】
次に、このペーストを上記で作製した第1の耐熱樹脂層全体の上に、厚みが10μmとなるように、スクリーン印刷した(スクリーンメッシュ;♯180M)。その後、70℃で5分間乾燥させ、さらに300℃で60分間焼成することにより第2の耐熱樹脂層を形成し、トッププレートを得た。
【0073】
(実施例2~4)
金属調層を形成するに際し、第1の金属調顔料を下記の表1に示す種類及び配合量に変更したこと、並びに第1の耐熱樹脂層を形成するに際しシリコーン樹脂及び第2の金属調顔料を下記の表2に示す種類及び配合量に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてトッププレートを得た。なお、表2の配合量は、固形分で表している。また、メタリック顔料Dとしては、マイカの表面を酸化鉄、酸化チタンでコーティングしたもの(オレンジ系、平均粒子径:5μm~35μm)を用いた。
【0074】
(比較例1)
第1の耐熱樹脂層を設けずに、金属調層の上に直接第2の耐熱樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてトッププレートを作製した。
【0075】
(評価)
実施例1~4及び比較例1で得られたトッププレートの調理面側から視たときのメタリック感について、目視で以下の判定基準により判定した。結果を表2に示す。
【0076】
[判定基準]
○…メタリック感に優れる
△…メタリック感にやや優れる
×…メタリック感が十分でない
【0077】
実施例1~4及び比較例1で得られたトッププレートの膜剥がれの評価法として、テーププル試験を行った。具体的には、各トッププレートの印刷された部位にセロハンテープを指で押し付けてからテープを剥がし、テープで剥離した箇所とそれ以外の箇所を目視により観察した。「○」は、剥離した箇所とそれ以外の箇所で違いがなかったことを示している。一方、違いが生じた場合を「×」で示している。
【0078】
【0079】
【0080】
表2から明らかなように、第1の耐熱樹脂層を設けた実施例1~4のトッププレートでは、第1の耐熱樹脂層を設けていない比較例1のトッププレートと比較して、メタリック感に優れるとともに、金属調顔料が含まれる層の剥がれやクラックの発生が少ないことを確認できた。
【符号の説明】
【0081】
1…調理器用トッププレート
2…ガラス基板
2a…裏面
2b…調理面
3…金属調層
4…第1の耐熱樹脂層
5…第2の耐熱樹脂層