(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置及び画像生成装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
A61B6/03 350V
A61B6/03 360P
(21)【出願番号】P 2018168189
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2017174931
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 泰男
(72)【発明者】
【氏名】塚越 伸介
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0308099(US,A1)
【文献】特開2010-063878(JP,A)
【文献】特開2010-042096(JP,A)
【文献】特開2003-175028(JP,A)
【文献】特開2010-279427(JP,A)
【文献】特開2013-000479(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0308101(US,A1)
【文献】特開2007-252898(JP,A)
【文献】特開2013-215468(JP,A)
【文献】国際公開第2005/122901(WO,A1)
【文献】特開2003-126080(JP,A)
【文献】特開2007-000348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンビーム形のX線を発生するX線発生部と、
前記X線発生部から発生され、被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記X線発生部が前記被検体の周囲を1回転すると共に、当該1回転分の投影データが揃う第1領域と、前記X線発生部の回転軸に沿った方向で前記第1領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わない第2領域との各領域の投影データを、前記X線検出部を介して収集するデータ収集部と、
前記第1領域のうち少なくとも一部の領域について、再構成処理に用いる投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、また前記第2領域について前記1回転分よりも狭い収集範囲の投影データを用いて前記再構成処理を行い、画像を取得する処理部と
を備え
、
前記処理部は、前記第1領域の投影データの収集範囲内で、当該第1領域の画像の前記再構成処理に用いる投影データの使用範囲を調整する、X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記第1領域と前記第2領域との境界近傍の連続性を保つように、前記一部の角度に対応する投影データを用いる、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記第1領域のうちの前記第2領域との境界を含む部分領域内で収集範囲を連続的に狭くして前記狭い収集範囲に一致させることにより、前記一部の角度を調整する、請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
コーンビーム形のX線を発生するX線発生部と、
前記X線発生部から発生され、被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記X線発生部が前記被検体の周囲を1回転すると共に、当該1回転分の投影データが揃う第1領域と、前記X線発生部の回転軸に沿った方向で前記第1領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わない第2領域との各領域の投影データを、前記X線検出部を介して収集するデータ収集部と、
前記第1領域のうち少なくとも一部の領域について、再構成処理に用いる投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、また前記第2領域について前記1回転分よりも狭い収集範囲の投影データを用いて前記再構成処理を行い、画像を取得する処理部と、
前記収集された投影データに基づいて、前記X線発生部の回転軸に沿った方向の直線上の位置と、前記収集範囲内の収集時刻に対応する前記X線発生部の回転角度とに関連付けて投影データを示す複数の投影データマップを記憶する記憶部
と、
を備え、
前記処理部は、
前記第1領域のうちの前記第2領域との境界を含む部分領域内で収集範囲を連続的に狭くして前記狭い収集範囲に一致させることにより、前記一部の角度を調整し、
前記複数の投影データマップのうちの1つの投影データマップを表示するように表示部を制御し、
操作者の操作に対応して、表示中の投影データマップの収集範囲内で前記回転角度のうちの一部の角度を調整し、
前記操作者の操作に対応して調整された一部の角度に対応して、前記表示中の投影データマップ以外の投影データマップの収集範囲内で前記回転角度のうちの一部の角度を調整し、
それぞれ調整された一部の角度をもつ複数の投影データマップに基づいて前記再構成処理を行い、前記第1領域の画像を取得し、
前記取得された第1領域の画像と、前記取得された第2領域の画像とを表示するように前記表示部を制御する
、X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
コーンビーム形のX線を発生するX線発生部と、
前記X線発生部から発生され、被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記X線発生部が前記被検体の周囲を1回転すると共に、当該1回転分の投影データが揃う第1領域と、前記X線発生部の回転軸に沿った方向で前記第1領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わない第2領域との各領域の投影データを、前記X線検出部を介して収集するデータ収集部と、
前記第1領域のうち少なくとも一部の領域について、再構成処理に用いる投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、また前記第2領域について前記1回転分よりも狭い収集範囲の投影データを用いて前記再構成処理を行い、画像を取得する処理部と、
前記収集された投影データに基づいて、前記X線発生部の回転軸を中心にした所定の半径をもつ円上の位置と、前記収集範囲内の収集時刻に対応する前記X線発生部の回転角度とに関連付けて投影データを示す複数の投影データマップを記憶する記憶部
と、
を備え、
前記処理部は、
前記第1領域のうちの前記第2領域との境界を含む部分領域内で収集範囲を連続的に狭くして前記狭い収集範囲に一致させることにより、前記一部の角度を調整し、
前記複数の投影データマップのうちの1つの投影データマップを表示するように表示部を制御し、
操作者の操作に対応して、表示中の投影データマップの収集範囲内で前記回転角度のうちの一部の角度を調整し、
前記操作者の操作に対応して調整された一部の角度に対応して、前記表示中の投影データマップ以外の投影データマップの収集範囲内で前記回転角度のうちの一部の角度を調整し、
それぞれ調整された一部の角度をもつ複数の投影データマップに基づいて前記再構成処理を行い、前記第1領域の画像を取得し、
前記取得された第1領域の画像と、前記取得された第2領域の画像とを表示するように前記表示部を制御する
、X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
コーンビーム形のX線を発生するX線発生部と、
前記X線発生部から発生され、被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記X線発生部が前記被検体の周囲を1回転すると共に、当該1回転分の投影データが揃う第1領域と、前記X線発生部の回転軸に沿った方向で前記第1領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わない第2領域との各領域の投影データを、前記X線検出部を介して収集するデータ収集部と、
前記第1領域のうち少なくとも一部の領域について、再構成処理に用いる投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、また前記第2領域について前記1回転分よりも狭い収集範囲の投影データを用いて前記再構成処理を行い、画像を取得する処理部と、
を備え、
前記処理部は、操作者の操作に応じて、前記一部の角度を調整する調整処理をオン状態又はオフ状態に切り替える
、X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記オフ状態のときに前記第1領域の画像と前記第2領域の画像とが再構成処理により取得された場合に、当該取得された両画像の間のギャップに基づいて、前記調整処理をオン状態に切り替える、請求項6記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記処理部は、
前記第1領域の画像のエッジを抽出し、
前記エッジの抽出結果に基づいて、前記ギャップの大小を判定し、
前記判定した結果、前記ギャップが大の場合、前記調整処理をオン状態に切り替える、請求項7記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
コーンビーム形のX線を発生するX線発生部と、
前記X線発生部から発生され、被検体を透過したX線を検出するX線検出部と、
前記X線発生部が前記被検体の周囲を1回転すると共に、当該1回転分の投影データが揃う第1領域と、前記X線発生部の回転軸に沿った方向で前記第1領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わない第2領域との各領域の投影データを、前記X線検出部を介して収集するデータ収集部と、
前記第1領域のうち少なくとも一部の領域について、再構成処理に用いる投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、また前記第2領域について前記1回転分よりも狭い収集範囲の投影データを用いて前記再構成処理を行い、画像を取得する処理部と、
操作者の操作に応じて、前記取得される画像に対し、解析用の後処理プログラムを実行する予定が設定される記憶部
と、
を備え、
前記処理部は、
前記予定が設定されたか否かを判定し、
前記判定した結果、前記予定が設定された場合には、前記第1領域の画像と前記第2領域の画像との間のギャップの大小に応じて、前記一部の角度を調整する調整処理を常にオン状態又は常にオフ状態に切り替え、
前記判定した結果、前記否の場合には、前記ギャップが閾値より大のときに対応する特定の時相毎に前記調整処理をオン状態に切り替える
、X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
被検体の周囲を1回転しながらX線発生部から発生され、前記被検体を透過したX線を
検出するX線検出部を介してデータ収集部により収集される、当該1回転分の投影データが揃う第1領域と、前記X線発生部の回転軸に沿った方向で前記第1領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わない第2領域との各領域の投影データを取得して、前記第1領域のうち少なくとも一部の領域における前記1回転分の投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、また前記第2領域における投影データを用いて、再構成処理を行い、画像を取得する処理部
を備え
、
前記処理部は、前記第1領域の投影データの収集範囲内で、当該第1領域の画像の前記再構成処理に用いる投影データの使用範囲を調整する、画像生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置及び画像生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography)装置の分野では、コーンビーム形のX線を発生するX線発生部と、当該X線を検出可能なX線検出器とを備えたX線CT装置が知られている。この種のX線CT装置は、X線を照射するX線発生部が円軌道に沿って被検体の周囲を1回転し、X線検出器から1回転分の投影データを収集するボリュームスキャンを実行することが可能である。また、この種のX線CT装置は、1回転分の投影データを用いて、回転軸方向に広い領域をもつ3次元画像を再構成することが可能である。
【0003】
但し、回転軸方向の中央平面(mid-plane)から離れるに従って、1回転分の投影データを収集できる範囲が減ってアキシャル面のFOV(Field Of View)が小さくなり、1回転分の投影データが揃う通常領域が小さくなる。また、通常領域が小さくなるに従い、通常領域の両側に位置して1回転分の投影データが揃わないマスク領域が大きくなる。なお、マスク領域は、1回転分の投影データを用いる再構成処理を実行できずに覆い隠されるマスク(mask)が設けられる領域である。
【0004】
これに対し、1回転分よりも狭い範囲で収集される投影データを用いて、マスク領域の画像を再構成する技術が実用化されている。以下、この技術をマスク領域再構成ともいう。このマスク領域再構成によれば、再構成されたマスク領域の画像と、通常領域の画像とを結合して3次元画像やその断層像を生成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-252898号公報
【文献】特開2010-63878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、通常領域及びマスク領域は、再構成に用いる投影データの収集範囲が互いに異なっている。なお、投影データの収集範囲は、X線発生部及びX線検出器を搭載した架台の回転角度の範囲や、ビューの範囲に対応する。また、架台の回転角度の範囲が異なることは、投影データの収集時刻の範囲や平均した収集時刻(平均時刻)が異なることを意味する。これに伴い、通常領域の画像とマスク領域の画像とを結合した3次元画像や断層像では、投影データの収集範囲(例、平均した収集時刻)の異なる画像が結合されている。
【0007】
ここで、被検体の部位のうち、動きが小さいか又は遅い部位をボリュームスキャンした際には、通常領域とマスク領域との間で平均した収集時刻が異なったとしても、通常領域の画像とマスク領域の画像との境界に大きなギャップは生じない。
【0008】
しかしながら、動きが大きいか速い部位(動きの激しい部位)をボリュームスキャンした際には、通常領域とマスク領域との間で平均した収集時刻が異なると、通常領域の画像とマスク領域の画像との境界にギャップが発生する。このようなギャップをもつ3次元画像やその断層像に基づいて、周辺との癒着、浸潤などを評価する場合などには、評価結果の精度を低下させるリスクがある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、動きの激しい部位をボリュームスキャンした際に、マスク領域の画像と通常領域の画像との境界に発生するギャップを低減し得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、X線発生部、X線検出部、データ収集部及び処理部を備える。
【0011】
前記X線発生部は、コーンビーム形のX線を発生する。
前記X線検出部は、前記X線発生部から発生され、被検体を透過したX線を検出する。
前記データ収集部は、前記X線発生部が前記被検体の周囲を1回転すると共に、当該1回転分の収集範囲の投影データが揃う第1領域と、前記X線発生部の回転軸に沿った方向で前記第1領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わない第2領域との各領域の投影データを、前記X線検出部を介して収集する。
前記処理部は、前記第1領域のうち少なくとも一部の領域について、再構成処理に用いる投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、また前記第2領域について前記1回転分よりも狭い収集範囲の投影データを用いて前記再構成処理を行い、画像を取得する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係るX線CT装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】同実施形態における通常領域及び収集範囲を説明するための模式図である。
【
図3】同実施形態における通常領域内の点Pkの角度位置と収集範囲Wfの中心の角度位置との関係を示す模式図である。
【
図4】同実施形態におけるマスク領域及び収集範囲を説明するための模式図である。
【
図5】同実施形態におけるマスク領域内の点Pkの角度位置と収集範囲Wmの中心の角度位置との関係を示す模式図である。
【
図6】同実施形態における直線上の各点に対応する収集範囲を示す模式図である。
【
図7】
図6の直線上の各点に対応する投影データマップの一例を示す模式図である。
【
図8】同実施形態における投影データマップの一例を示す模式図である。
【
図9】同実施形態における直線上の各点に対応する調整後の収集範囲を示す模式図である。
【
図10】
図9の直線上の各点に対応する投影データマップの一例を示す模式図である。
【
図11】同実施形態における動作を説明するためのフローチャートである。
【
図12】同実施形態の第1変形例における直線上の各点に対応する調整後の収集範囲を示す模式図である。
【
図13】
図12の直線上の各点に対応する投影データマップの一例を示す模式図である。
【
図14】同実施形態の第2変形例における投影データマップの一例を示す模式図である。
【
図15】同実施形態の第3変形例における投影データマップの一例を示す模式図である。
【
図16】同実施形態の第4変形例における投影データマップの一例を示す模式図である。
【
図17】同実施形態の第5変形例における投影データマップの一例を示す模式図である。
【
図18】同実施形態の第6変形例における調整機能の構成を説明するための処理回路のブロック図である。
【
図19】同実施形態の第6変形例における動作を説明するためのフローチャートである。
【
図20】同実施形態の第7変形例における動作を説明するためのフローチャートである。
【
図21】同実施形態の第8変形例における動作を説明するためのフローチャートである。
【
図22】同実施形態の第9変形例における極座標を説明するための模式図である。
【
図23】同実施形態の第9変形例における投影データマップの一例を示す模式図である。
【
図24】同実施形態における円上の各点に対応する調整後の収集範囲を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影(computed tomography (CT))装置及び画像生成装置について図面を用いて説明する。なお、X線CT装置には、X線発生部とX線検出部とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線発生部のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等の様々なタイプがあり、いずれのタイプでも一実施形態へ適用可能である。また、画像生成装置は、X線CT装置に内蔵させて設けてもよく、X線CT装置とは別体として設けてもよい。以下の説明は、第3世代CTと、第3世代CTに内蔵された画像生成装置とを例に挙げて述べる。
【0014】
(X線CT装置の構成)
図1は、一実施形態に係るX線CT装置の構成を示すブロック図である。X線CT装置1は、X線管11を有するX線発生部から被検体Pに対してX線を照射し、当該照射されたX線をX線検出器12で検出する。X線CT装置1は、当該X線検出器12からの出力に基づいて、被検体Pに関するCT画像を生成する。このようなX線CT装置1としては、例えば、1回転の収集データを用いて、回転軸方向に広い領域の再構成を実現するマルチスライスCT又はMDCT(multi-detector row CT)等のX線CT装置が適宜、使用可能となっている。
【0015】
図1に示すX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。架台装置10は、被検体PをX線CT撮影するための構成を有するスキャン装置である。寝台装置30は、X線CT撮影の対象となる被検体Pを載置し、X線CT撮影を実行する位置まで移動するための装置である。コンソール装置40は、架台装置10を制御するコンピュータである。
【0016】
例えば、架台装置10および寝台装置30はCT検査室に設置され、コンソール装置40はCT検査室に隣接する制御室に設置される。なお、コンソール装置40は、必ずしも制御室に設置されなくてもよい。例えば、コンソール装置40は、架台装置10及び寝台装置30とともに同一の部屋に設置されてもよい。いずれにしても架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とは互いに通信可能に有線または無線で接続されている。
【0017】
架台装置10は、X線管11、X線検出器12、回転フレーム13、X線高電圧装置14、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17及びDAS18を有する。
【0018】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射する真空管である。照射された熱電子は、ターゲットの焦点に衝突した際のエネルギーによってX線に変換される。これにより、X線管11は、熱電子が衝突したターゲットの焦点から、被検体Pへ照射するX線を発生する。X線管11で発生したX線は、コリメータ17を介してコーンビーム形に成形され、被検体Pに照射される。なお、X線管11及びコリメータ17は、X線発生部の一例である。
【0019】
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器(半導体検出器)であっても構わない。また、X線検出器12は、X線検出部の一例である。
【0020】
回転フレーム13は、X線発生部とX線検出器12とを回転軸回りに回転可能に支持する。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。回転フレーム13は、アルミニウム等の金属により形成された固定フレーム(図示せず)に回転可能に支持される。詳しくは、回転フレーム13は、ベアリングを介して固定フレームの縁部に接続されている。なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とそれぞれ定義するものとする。回転フレーム13は、制御装置15の駆動機構からの動力を受けて回転軸Z回りに一定の角速度で回転する。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に備えて支持する。このような回転フレーム13は、撮影空間をなす開口(ボア)が形成された略円筒形状の筐体に収容されている。開口はFOV19に略一致する。開口の中心軸は、回転フレーム13の回転軸Zに一致する。回転フレーム13の回転軸Zは、X線管11の回転軸Zと呼んでもよい。なお、DAS18が生成した検出データは、回転フレームに設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。なお、回転フレームから架台装置の非回転部分への検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0021】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧及びX線管11に供給するフィラメント電流を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置14は、後述する回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示しない)側に設けられても構わない。
【0022】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路は、ハードウェア資源として、CPUやMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。また、制御装置15は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。制御装置15は、コンソール装置40からの指令に従い、X線高電圧装置14およびDAS18等を制御する。当該プロセッサは、当該メモリに保存されたプログラムを読み出して実現することで上記制御を実現する。また、制御装置15は、コンソール装置40若しくは架台装置10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。なお、制御装置15は、当該メモリにプログラムを保存する代わりに、当該プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、当該プロセッサは、当該回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで上記制御を実現する。
【0023】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16(ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter))は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0024】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。
【0025】
DAS18(Data Acquisition System)は、X線発生部が被検体Pの周囲を1回転すると共に、当該1回転分の投影データが揃う通常領域(第1領域)と、X線発生部の回転軸に沿った方向で通常領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わないマスク領域(第2領域)との各領域の投影データを、X線検出器12を介して収集する。なお、「1回転分の投影データ」は、「1回転分の収集範囲の投影データ」と呼んでもよい。「1回転分よりも少ない角度の投影データ」は、「1回転分よりも狭い収集範囲の投影データ」と呼んでもよい。詳しくは、DAS18は、被検体Pにより減弱されたX線の強度を示すデジタル値を1ビューごとに収集する。DAS18は、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、増幅された電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、当該デジタル信号が示すデジタル値を有する検出データを生成する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、および収集されたビューを示すビュー番号により識別されたX線強度のデジタル値のセットである。なお、ビュー番号としては、ビューが収集された順番(収集時刻)を用いてもよく、X線管11の回転角度を表す番号(例、1~1000)を用いてもよい。また、DAS18が生成した検出データは、架台装置10に収容された非接触データ伝送回路(図示せず)を介してコンソール装置40へと転送される。また、DAS18はデータ収集部の一例である。なお、DAS18はデータ収集回路と呼んでもよい。
【0026】
ここで、通常領域、マスク領域及び収集範囲などについて
図2乃至
図7を用いて説明する。通常領域の両側にマスク領域が位置して、円柱状の再構成領域が形成されている。
【0027】
通常領域は、
図2に示すように、X線管11が回転軸Z回りに1回転すると共に、当該1回転分の収集範囲Wfの投影データが揃う領域である。回転軸方向の中央平面に近い位置では、開口に略一致するFOV19と、アキシャル面のFOV19xとが一致する。
図2及び
図3に示すように、通常領域内の点Pkに相当する角度位置と、収集範囲Wfの中心に相当する角度位置とは、回転軸Zを挟んで対向する関係にある。なお、点Pkは、対象画素Pkと呼んでもよい。例えば、角度位置は、X線管11が回転軸Z回りに1回転する円軌道の各位置を、回転軸Zから鉛直上向きにおける円軌道の最上部を0°として360°の範囲の角度で表すものであるとする。
図3(a)中、点Pkに相当する角度位置0°と、収集範囲Wf(0°~360°)の中心に相当する角度位置180°とは、回転軸Zを挟んで対向している。
図3(b)~(d)も同様である。
【0028】
マスク領域は、
図4に示すように、回転軸Zに沿った方向で通常領域の両側に位置して1回転分よりも狭い収集範囲Wmの投影データしか揃わない領域である。回転軸方向の中央平面から離れるに従い、開口に略一致するFOV19に比べ、アキシャル面のFOV19xが小さくなり、マスク領域が大きくなる。
図4及び
図5に示すように、マスク領域内の点Pkに相当する角度位置と、収集範囲Wmの中心に相当する角度位置とは、回転軸Zを挟んで対向する関係にある。例えば、
図5(a)中、点Pkに相当する角度位置0°と、収集範囲Wm((90°-α/2)~(270°+α/2))の中心に相当する角度位置180°とは、回転軸Zを挟んで対向している。αはファン角である。
図5(b)~(d)も同様である。
【0029】
よって、マスク領域内の点Pkに相当する角度位置(例、0°)と、通常領域内の点Pkに相当する角度位置(例、0°)とが同一の場合、各々の収集範囲Wm,Wfの中心に相当する角度位置(例、180°)も同一となる。但し、マスク領域内の点Pkに対応する収集範囲Wmは1回転分の収集範囲よりも狭い。通常領域内の点Pkに対応する収集範囲Wfは1回転分の収集範囲に等しい。
【0030】
このため、
図6に示すように、同一XY座標値上で、マスク領域と通常領域とを回転軸Z方向に平行に貫く直線Lzがある場合、直線Lz上に位置する複数の点Pk10~Pk50は、直線Lzに相当する角度位置が同一のため、各点Pk10~Pk50の収集範囲Wm,Wfの中心に相当する角度位置も同一となる。但し、マスク領域内の点Pk10,50に対応する収集範囲Wmは1回転分の収集範囲よりも狭い(Wm:180°+α)。通常領域内の点Pk20,Pk30,Pk40に対応する収集範囲Wfは1回転分の収集範囲に等しい(Wf:360°)。なお、図示の便宜上、点Pk30は通常領域内で且つ回転軸方向の中央平面上に位置するものとしている。点Pk10,Pk50は、マスク領域内にあり、それぞれ点Pk30から直線Lz上で等距離の位置にあるものとしている。点Pk20,Pk40は、通常領域内にあり、それぞれ点Pk30から直線Lz上で等距離の位置にあるものとしている。
【0031】
このような直線Lz上の各点Pkに対応した検出データ(投影データ)は、
図7に示す如き、投影データマップMpとして、後述するメモリ41に記憶される。この投影データマップMpは、縦軸を直線Lz上の各点Pkの位置とし、横軸をビュー(ビュー番号)としたとき、縦軸上の位置と横軸上の位置との交差する位置に、点Pkに対するX線強度のデジタル値が記録される。ある点Pkの位置において、X線強度のデジタル値が記録されるビューの範囲が、点Pkに対応する収集範囲又は(再構成時の)使用範囲に相当する。例えば、マスク領域内の点Pk10の位置において、X線強度のデジタル値が記録されるビューの範囲が、点Pk10に対応する収集範囲及び使用範囲Wmに相当する。同様に、通常領域内の点Pk20の位置において、X線強度のデジタル値が記録されるビューの範囲が、点Pk20に対応する収集範囲又は使用範囲Wfに相当する。なお、投影データマップMpの横軸は、ビュー番号に限らず、回転角度でもよく、収集時刻でもよい。このような投影データマップMpは、直線Lz毎に記憶される。
【0032】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備えている。
【0033】
基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。
【0034】
寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向に移動するモータあるいはアクチュエータである。寝台駆動装置32は、コンソール装置40による制御、または制御装置15による制御に従い、天板33を移動する。例えば、寝台駆動装置32は、天板33に載置された被検体Pの体軸が回転フレーム13の開口の中心軸に一致するよう、天板33を被検体Pに対して直交方向に移動する。また、寝台駆動装置32は、架台装置10を用いて実行されるX線CT撮影に応じて、天板33を被検体Pの体軸方向に沿って移動してもよい。寝台駆動装置32は、制御装置15からの駆動信号のデューティ比等に応じた回転速度で駆動することにより動力を発生する。寝台駆動装置32は、例えば、ダイレクトドライブモータやサーボモータ等のモータにより実現される。
【0035】
支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0036】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。このようなコンソール装置40において、処理回路44におけるシステム制御機能441のうち、架台装置10及び寝台装置30を制御する機能を除いた構成が画像生成装置45に相当する。このような画像生成装置45は、DAS18により収集される、第1領域と第2領域との各領域の投影データを取得して、当該投影データを用いて再構成処理を行い、画像を取得する処理回路44を備える。詳しくは、処理回路44は、DAS18又はメモリ41から投影データを取得して、第1領域のうち少なくとも一部の領域における1回転分の投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、また第2領域における投影データを用いて、再構成処理を行い、画像を取得する。このような画像生成装置45は、
図1に示した如き、X線CT装置1内に設けた構成に代えて、X線CT装置1とは別体として設けることも可能である。また、画像生成装置45は、X線CT装置1とは別体のサーバとして設けることも可能である。別体のサーバとして設ける場合、画像生成装置45は、例えば、ディスプレイ42と、入力インターフェース43のうちのキーボード等の操作デバイスとが省略される。
【0037】
メモリ41は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ41は、例えば、投影データや再構成画像データを記憶する。メモリ41は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ41の保存領域は、X線CT装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。例えば、メモリ41は、CT画像や表示画像のデータを記憶する。また、メモリ41は、本実施形態に係る制御プログラムや複数の投影データマップMp等を記憶する。例えば、DAS18により収集された投影データに基づいて、X線管11の回転軸Zに沿った方向の直線Lz上の位置と、収集範囲Wf,Wm内の収集時刻又はX線管11の回転角度とに関連付けて投影データを示す複数の投影データマップMpが前処理機能442により作成される。なお、X線管11の回転角度は、回転フレーム13の回転角度と呼んでもよい。しかる後、前処理機能442により、当該複数の投影データマップMpがメモリ41に書き込まれる。これにより、メモリ41は、複数の投影データマップMpを記憶する。なお、投影データマップMpは、調整機能443が調整する前に作成されていればよいので、前処理機能442による前処理の前又は前処理の後のいずれのタイミングで生成されてもよい。また、メモリ41は、投影データを記憶するものの、必ずしも投影データマップMpの形式で投影データを記憶する必要はない。いずれにしても、メモリ41は、第1領域と第2領域との各領域の投影データを記憶する。第1領域は、被検体の周囲を1回転しながらX線発生部から発生され、被検体を透過したX線をX線検出部を介してデータ収集部により収集される、当該1回転分の投影データが揃う領域である。第2領域は、X線発生部の回転軸に沿った方向で第1領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わない領域である。メモリ41は記憶部の一例である。
【0038】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。ディスプレイ42は表示部の一例である。
【0039】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。入力インターフェース43としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。なお、本実施形態において、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。
【0040】
処理回路44は、入力インターフェース43から出力される入力操作の電気信号に応じてX線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路44は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能441、前処理機能442、調整機能443、再構成処理機能444、画像処理機能445、切り替え機能446などを実行する。処理回路44は処理部の一例である。
【0041】
システム制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各機能を制御する。具体的には、システム制御機能441は、メモリ41に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路44内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線CT装置1の各部を制御する。例えば、処理回路44は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各機能を制御する。
【0042】
前処理機能442は、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。また、前処理機能442は、例えば、前処理後の投影データに基づいて、前述した複数の投影データマップMpを作成し、当該複数の投影データマップMpをメモリ41に書き込む。投影データマップは、例えば
図8に示すように、X線管11の回転軸Zに沿った方向の直線Lz上の位置(マスク領域上の位置及び通常領域上の位置)と、収集範囲Wf,Wm内の収集時刻又はX線管11の回転角度(使用範囲(ビュー))とに関連付けて投影データを示すマップである。前処理機能442により作成された投影データマップMpは、マスク領域での収集範囲Wmと通常領域での収集範囲Wfとに大きな差があり、この収集範囲の差が、動きの激しい部位の再構成画像上でギャップを生じさせる。但し、投影データは、必ずしも投影データマップMpの形式で管理される必要はない。
【0043】
調整機能443は、通常領域(第1領域)のうち少なくとも一部の領域について、1回転分の投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを再構成処理に用いるように、当該一部の角度を調整する。例えば、調整機能443は、通常領域の投影データの収集範囲Wf内で、当該通常領域の画像の再構成に用いる使用範囲を調整する。ここで、投影データの使用範囲は、投影データの角度(ビュー数)に対応する。なお、通常領域の画像の再構成に用いる使用範囲は、通常領域の投影データの収集範囲Wfと、マスク領域の投影データの収集範囲Wmとの間にあればよい。マスク領域の投影データの収集範囲Wmと、マスク領域の画像の再構成に用いる使用範囲とは同一の範囲である。ここで、調整機能443は、通常領域の画像の再構成に用いる使用範囲を、マスク領域における1回転分よりも狭い収集範囲Wmと同一の範囲に調整する機能としてもよい。例えば
図9の左側に示す如き通常領域において、
図9の右側に示すように、収集範囲Wfのうちの使用範囲を、マスク領域の収集範囲Wmと同一に調整する。これにより、調整後の投影データは、
図10に示す投影データマップMpのように、マスク領域での使用範囲Wmと通常領域での使用範囲Wmとに差がないため、動きの激しい部位の再構成画像上でも両領域の境界にギャップを生じさせない。
【0044】
このような調整機能443は、1回転で収集される360°のビューに満たない投影データを用いてマスク領域(第2領域)の画像を再構成する場合において、通常領域(360°の投影データが収集されている領域)の再構成に使用する投影データの収集範囲(収集時間範囲、回転角度範囲、ビュー番号範囲)を調整する。この調整機能443は、例えば、マスク領域の再構成に使用する投影データの収集範囲を基準にして調整してもよく、操作者の操作に応じて調整してもよい。例えば、調整機能443は、通常領域の再構成に使用する投影データの収集範囲を、マスク領域と同じ収集範囲にしてもよい。あるいは、調整機能443は、通常領域とマスク領域との境界近傍の連続性を保つように、1回転分の角度のうちの一部の角度に対応する投影データを用いるようにしてもよい。例えば、調整機能443は、通常領域の再構成に使用する投影データの収集範囲を、通常領域とマスク領域との境界で連続的に接続させ、通常領域内の一定の範囲のなかで連続的に変化させるようにしてもよい。調整機能443は、ユーザインタフェースUIを用い、操作者の操作に応じて、収集範囲を連続的に変化させるようにしてもよい。
【0045】
再構成処理機能444は、前処理機能442にて生成された投影データ又は調整機能443により調整した使用範囲の投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法、ショート再構成処理法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。ショート再構成処理法は、PBS(Pixel Based Sector Reconstruction)とも呼ばれる。ここで、再構成処理機能444は、調整機能443により調整した使用範囲の投影データを用いて通常領域の画像を再構成すると共に、狭い収集範囲の投影データを用いてマスク領域の画像を再構成する機能を含んでいる。また、再構成処理機能444は、調整機能443により調整された使用範囲をもつ複数の投影データマップに基づいて、通常領域の画像を再構成する機能を含んでもよい。CT画像データは、被検体Pに関するCT値の空間分布を表している。
【0046】
なお、再構成処理機能444は、調整機能443を含んでもよい。この場合、再構成処理機能444は、通常領域(第1領域)のうち少なくとも一部の領域について、再構成処理に用いる投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、またマスク領域(第2領域)について1回転分よりも狭い収集範囲の投影データを用いて当該再構成処理を行い、画像を取得する。このような再構成処理機能444は、通常領域のうちの一部の領域と、マスク領域とをそれぞれ再構成処理して画像を取得してもよい。あるいは、再構成処理機能444は、通常領域のうちの一部の領域と、マスク領域とを一度に再構成処理して画像を取得してもよい。
【0047】
画像処理機能445は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能444によって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。変換後の断層像データや3次元画像データは、ディスプレイ42に表示される。公知の方法としては、例えば、ボリュームレンダリングや、サーフェスレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理が適宜、使用可能となっている。
【0048】
切り替え機能446は、調整機能443をオン状態又はオフ状態に切り替える。切り替え機能446は、手動又は自動のいずれで実現してもよく、あるいは省略してもよい。手動の場合、切り替え機能446は、操作者の操作に応じて、一部の角度を調整する調整機能443(調整処理)をオン状態又はオフ状態に切り替える。自動の場合、切り替え機能446は、例えば、調整機能443がオフ状態のときに通常領域の画像とマスク領域の画像とが再構成処理により取得された場合に、当該取得された両画像の間のギャップに基づいて、調整機能443をオン状態に切り替える機能としてもよい。補足すると、切り替え機能446は、当該両画像の間のギャップの有無や大小に基づいて、調整機能443をオン状態又はオフ状態に切り替えてもよい。
【0049】
なお、システム制御機能441、前処理機能442、調整機能443、再構成処理機能444、画像処理機能445、切り替え機能446は、一つの基板の処理回路44により実装されてもよいし、複数の基板の処理回路44により分散して実装されてもよい。同様に、コンソール装置40は、単一のコンソールにて複数の機能を実行するものとして説明したが、複数の機能を別々のコンソールが実行することにしても構わない。また同様に、画像生成装置45は、単一の装置にて複数の機能を実行するものとして説明したが、複数の機能を別々の装置が実行することにしても構わない。
【0050】
次に、以上のように構成されたX線CT装置及び画像生成装置の動作について
図11のフローチャートを用いて説明する。以下の説明は、予めスキャノ撮影による位置決めや撮影条件の設定、架台の回転の立ち上げ等が終了した後の動作について述べる。また、ステップST10の開始時点において、調整機能443がオン状態又はオフ状態のいずれであってもよいが、ここでは調整機能443がオフ状態である場合を例に挙げて述べる。
【0051】
X線CT装置1は、X線管11及びコリメータ17からなるX線発生部の回転中に、ボリュームスキャンを実行する(ステップST10)。このとき、DAS18は、X線発生部が被検体Pの周囲を1回転すると共に、当該1回転分の収集範囲の投影データが揃う通常領域と、通常領域の両側に位置して1回転分よりも狭い収集範囲の投影データしか揃わないマスク領域との各領域の投影データを、X線検出器12を介して収集する。
【0052】
画像生成装置45の前処理機能442は、DAS18から出力された検出データに対して前処理を施したデータを生成する。また、前処理機能442は、前処理後の投影データに基づいて、
図8に示した如き、複数の投影データマップMpを作成してもよい。また、調整機能443は、前述した通り、オフ状態のために動作しない。
【0053】
再構成処理機能444は、前処理機能442にて生成された投影データに対して再構成処理を行ってCT画像データを生成する(ステップST20)。このCT画像データは、通常領域の画像データとマスク領域の画像データとを含んでいる。
【0054】
画像処理機能445は、ステップST20で生成されたCT画像データを任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。変換後の断層像データや3次元画像データは、ディスプレイ42に表示される(ステップST30)。
【0055】
ここで、例えば、表示された断層像データが、マスク領域と通常領域との境界でギャップを生じているとする。例えば、ステップST10において、時刻“10時0分0秒00”に収集を開始し、1回転分の投影データの収集を時刻“10時0分0秒30”に終了したとする。このとき、1回転分の投影データの収集時刻の範囲は、時刻“10時0分0秒0~10時0分0秒30”であり、平均した収集時刻が10時0分0秒15となる。一方、1回転分より狭い投影データとして、例えば、1回転分の投影データのうちの2/3回転分の投影データを用いるとする。分かり易い例では、2/3回転分の投影データの収集時刻の範囲は“10時0分0秒00~10時0分0秒20”となり、平均した収集時刻が10時0分0秒10となる。このように、投影データの収集範囲が異なると、投影データの平均した収集時刻が異なってくる。従って、動きの激しい部位をボリュームスキャンした際に、通常領域とマスク領域との間で平均した収集時刻が異なることから、マスク領域の画像と通常領域の画像との境界にギャップが発生する。
【0056】
このとき、切り替え機能446は、例えば操作者の操作に応じて、調整機能443をオン状態に切り替える(ステップST40)。
【0057】
調整機能443は、通常領域の投影データの収集範囲Wf内で、当該通常領域の画像の再構成に用いる使用範囲を調整する(ステップST50)。ここで、調整機能443は、例えば
図10に示したように、通常領域の画像の再構成に用いる使用範囲を、マスク領域における狭い収集範囲Wmと同一の範囲に調整する。
【0058】
再構成処理機能444は、当該調整した使用範囲の投影データを用いて通常領域の画像を再構成すると共に、狭い収集範囲の投影データを用いてマスク領域の画像を再構成する(ステップST60)。
【0059】
しかる後、画像処理機能445は、ステップST60で再構成された画像を任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。変換後の断層像データや3次元画像データは、ディスプレイ42に表示される(ステップST70)。
【0060】
上述したように本実施形態によれば、データ収集部は、X線発生部が被検体の周囲を1回転すると共に、当該1回転分の投影データが揃う第1領域と、X線発生部の回転軸に沿った方向で第1領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わない第2領域との各領域の投影データを、X線検出部を介して収集する。処理部は、第1領域のうち少なくとも一部の領域について、再構成処理に用いる投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、また第2領域について1回転分よりも狭い収集範囲の投影データを用いて再構成処理を行い、画像を取得する。これは、X線CT装置1及び画像生成装置45のいずれも同様である。
【0061】
従って、動きの激しい部位をボリュームスキャンした際に、マスク領域(第2領域)の画像と通常領域(第1領域)の画像との境界に発生するギャップを低減することができる。これは、ボリュームスキャンを同一位置で繰り返して行い、時系列に沿って複数の3次元画像データを再構成する4次元スキャンの場合でも同様である。なお、複数の3次元画像データは、互いに異なる時相でもよく、互いに同期した時相でもよい。
【0062】
また、本実施形態によれば、第1領域と第2領域との境界近傍の連続性を保つように、当該一部の角度に対応する投影データを用いる構成により、前述した境界に発生するギャップを無くすことができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、処理部が、操作者の操作に応じて、一部の角度を調整する調整処理をオン状態又はオフ状態に切り替える。これにより、例えば、4Dスキャンの結果としてギャップが生じた場合に、調整処理をオン状態に切り替えて、再構成をリトライすることができる。なお、調整処理を常にオン状態にすると、通常のボリュームデータ内でマスク領域と通常領域とでは使用する投影データの時間範囲が異なるため、ボリュームデータ内の等時刻性が失われる。例えば、動きの激しくない通常の部位をボリュームスキャンした際に、マスク領域の平均収集時刻が10時0分0秒10で、通常領域の平均収集時刻が10時0分0秒15だったとする。このとき、通常領域の画像の再構成に用いる使用範囲を、マスク領域における狭い収集範囲と同一の範囲に調整すると、ボリュームデータ全体の平均収集時刻がマスク領域の平均収集時刻にシフトしてしまう。このため、必要に応じて、調整処理のオン状態又はオフ状態を切り替え可能なことが好ましい。
【0064】
また、動きが激しくない部位のボリュームスキャンの際には、処理回路が調整処理をオフ状態に切り替えることにより、ボリュームデータ内の等時刻性を維持することができる。
【0065】
なお、投影データ収集後の処理回路44の動作は、X線CT装置1及び画像生成装置45のいずれも同様である。従って、前述した一実施形態の効果及び後述する各変形例の効果は、X線CT装置及び画像生成装置のいずれも得ることができる。
【0066】
(変形例)
次に、一実施形態の各変形例について説明する。
(第1変形例)
第1変形例は、調整機能443による調整方法を代えた例である。すなわち、調整機能443は、
図10に示した如き調整方法に代えて、
図12及び
図13に示すように、通常領域のうちの、マスク領域との境界を含む部分領域内で収集範囲WfをW2,W1,…と連続的に狭くして当該狭い収集範囲Wmに一致させることにより、一部の角度(使用範囲)を調整する。なお、
図13に示す投影データマップMpの例では、収集範囲Wfを連続的に狭くする際に、直線的に狭くしている。いずれにしても、第1変形例によれば、一実施形態と同様に、マスク領域の画像と通常領域の画像との境界に発生するギャップを低減できる。これに加え、第1変形例によれば、通常領域のうちの中央領域(境界を含む部分領域以外の領域)では、収集範囲Wfを狭くしないため、一実施形態に比べ、通常領域の画質を向上させることができる。
【0067】
(第2変形例)
第2変形例は、第1変形例の変形例であり、収集範囲Wfを連続的に狭くする際に、曲線的に狭くしている。すなわち、調整機能443は、
図14に投影データマップMpの一例を示すように、通常領域のうちの、マスク領域との境界を含む部分領域内で収集範囲WfをW2,W1,…と連続的且つ曲線的に狭くして当該狭い収集範囲Wmに一致させることにより、一部の角度(使用範囲)を調整する。このような第2変形例としても、第1変形例と同様の効果を得ることができる。
【0068】
(第3変形例)
第3変形例は、第2変形例の変形例である。すなわち、調整機能443は、
図15に投影データマップMpの一例を示すように、通常領域の部分領域内で収集範囲Wfを曲線的に狭くする際に、第2変形例に比べ、部分領域以外の中央領域を狭くしている。このような第3変形例としても、第1変形例及び第2変形例と同様の効果を得ることができる。但し、第3変形例によれば、部分領域以外の中央領域を狭くしているため、第1変形例及び第2変形例に比べ、画質を向上できる領域が狭くなっている。
【0069】
(第4変形例)
第4変形例は、一実施形態の変形例である。すなわち、調整機能443は、
図16に投影データマップMpの一例を示すように、通常領域の画像の再構成に用いる使用範囲を、マスク領域における狭い収集範囲と同一の範囲とし且つ連続的に移動するように調整している。このような第4変形例によれば、一実施形態と同様の効果に加え、通常領域の画像に生じるノイズを揃えることができる。
【0070】
(第5変形例)
第5変形例は、第2変形例と第3変形例とを組み合わせた例である。すなわち、調整機能443は、
図17に投影データマップMpの一例を示すように、通常領域のうちのマスク領域との境界を含む2つの部分領域のうち、一方の部分領域内で収集範囲WfをW2,W1,…と連続的且つ直線的に狭くして当該狭い収集範囲Wmに一致させる。また、調整機能443は、他方の部分領域内で収集範囲WfをW2,W1,…と連続的且つ曲線的に狭くして当該狭い収集範囲Wmに一致させる。このように、調整機能443は、使用範囲を調整する。このような第5変形例によれば、第2変形例及び第3変形例と同様の効果を得ることができる。
【0071】
なお、第1乃至第5変形例に限らず、一実施形態の調整機能443としては、ギャップが生じない範囲の傾きをもつ直線又は曲線で通常領域の使用範囲を、マスク領域の使用範囲まで狭くする構成に変形することができる。すなわち、通常領域の使用範囲は、1回転分の収集範囲Wfとマスク領域の収集範囲Wmとの間にあり、且つ隣接する位置の間でギャップが生じない程度の変化分であれば、任意の形態で連続的又は断続的に変化させることができる。
【0072】
(第6変形例)
第6変形例は、第1乃至第5変形例などのように、通常領域内の部分領域の使用範囲を連続的に調整する場合の変形例であり、調整機能443が、ユーザの操作に応じて、使用範囲を調整する構成となっている。また、第6変形例は、収集された投影データに基づいて、回転軸に沿った方向の直線上の位置と、収集範囲内の収集時刻に対応するX線管11の回転角度とに関連付けて投影データを示す複数の投影データマップMpを記憶するメモリ41を用いている。
【0073】
ここで、調整機能443は、
図18に示すように、表示制御機能443-1、操作対応機能443-2、対応調整機能443-3を備えている。
【0074】
表示制御機能443-1は、複数の投影データマップMpのうちの1つの投影データマップMpを表示するようにディスプレイ42を制御する。これに加え、表示制御機能443-1は、再構成された通常領域の画像と、再構成されたマスク領域の画像とを表示するようにディスプレイ42を制御する。
【0075】
操作対応機能443-2は、操作者の操作に対応して、表示中の投影データマップの収集範囲内で使用範囲(回転角度のうちの一部の角度)を調整する。
【0076】
対応調整機能443-3は、操作対応機能443-2により調整された使用範囲(一部の角度)に対応して、表示中の投影データマップ以外の投影データマップの収集範囲内で使用範囲(回転角度のうちの一部の角度)を調整する。
【0077】
これに伴い、再構成処理機能444は、操作対応機能443-2及び対応調整機能443-3によりそれぞれ調整された使用範囲をもつ複数の投影データマップに基づいて、再構成処理を行い、通常領域の画像を取得する。
【0078】
他の構成は、一実施形態と同様である。
【0079】
次に、以上のように構成された第6変形例の動作について
図11及び
図19のフローチャートを用いて説明する。
【0080】
いま、前述した
図11のフローチャートと同様に、ステップST10~ST40が実行されたとする。
【0081】
続いて、調整機能443は、通常領域の投影データの収集範囲Wf内で、当該通常領域の画像の再構成に用いる使用範囲を調整する(ステップST50)。但し、一実施形態とは異なり、調整機能443は、通常領域のうちのマスク領域との境界を含む部分領域内で収集範囲WfをW2,W1,…と連続的に狭くして当該狭い収集範囲Wmに一致させることにより、使用範囲を調整する。このステップST50は、
図19に示すように、実行される。
【0082】
すなわち、表示制御機能443-1は、複数の投影データマップのうちの1つの投影データマップMpを表示するようにディスプレイ42を制御する(ステップST51)。例えば、ステップST30により表示中の画像に対し、操作者による入力インターフェース43の操作により、画像の関心領域ROI内の画素が指定されたとする。このとき、表示制御機能443-1は、指定された画素を含む直線Lzに対応した投影データマップMpを表示するようにディスプレイ42を制御する。
【0083】
続いて、操作対応機能443-2は、操作者による入力インターフェース43の操作に対応して、表示中の投影データマップMpの収集範囲内で使用範囲を調整する(ステップST52)。
【0084】
対応調整機能443-3は、操作対応機能443-2により調整された使用範囲に対応して、表示中の投影データマップMp以外の投影データマップの収集範囲内で使用範囲を調整する(ステップST53)。
【0085】
しかる後、再構成処理機能444は、それぞれ調整された使用範囲をもつ複数の投影データマップに基づいて、通常領域の画像を再構成する(ステップST60)。
【0086】
表示制御機能443-1は、再構成された通常領域の画像と、再構成されたマスク領域の画像とを表示するようにディスプレイ42を制御する(ステップST70)。なお、表示された通常領域の画像とマスク領域の画像との間にギャップがあれば、再度、操作者の操作により、ステップST52~ST70までの処理が繰り返し実行される。
【0087】
従って、第6変形例によれば、操作者の操作に応じて、通常領域の使用範囲を調整する構成により、第1乃至第5変形例の効果に加え、操作者の操作に応じて、任意に画像の画質を調整することができる。
【0088】
また、操作対応機能443-2により調整された使用範囲に対応して、表示中の投影データマップ以外の投影データマップの収集範囲内で使用範囲を調整する。従って、操作者が全ての投影データマップを調整する場合に比べ、調整操作を円滑に行うことができる。
【0089】
(第7変形例)
第7変形例は、一実施形態及び第1乃至第5変形例の各々の変形例であり、切り替え機能446を自動で実現する場合の具体例である。自動の場合、切り替え機能446を実行する処理回路44は、例えば、調整機能443がオフ状態のときに通常領域の画像とマスク領域の画像とが再構成処理により取得された場合に、当該取得された両画像の間のギャップに基づいて、調整機能443をオン状態に切り替える。
【0090】
このような切り替え機能446は、例えば、抽出機能446-1、判定機能446-2、オン制御機能446-3を備えている。
【0091】
抽出機能446-1は、通常領域の画像のエッジを抽出する。なお、エッジ抽出処理としては、公知の画像処理技術が適宜使用可能である。また、エッジ抽出処理としては、画像の断面(アキシャル面、コロナル面、サジタル面)に応じたエッジの方向(円方向、斜め方向)を利用することが、エッジとノイズとを区別し易い観点から好ましい。また、エッジ抽出処理としては、例えば、入力インターフェース43の操作により指定された領域からエッジを抽出することが、処理を高速化する観点から好ましい。
【0092】
判定機能446-2は、当該エッジの抽出結果に基づいて、再構成処理により取得された両画像の間のギャップの大小を判定する。
【0093】
オン制御機能446-3は、判定機能446-2による判定の結果、ギャップが大の場合、調整機能443(調整処理)をオン状態に切り替える。
【0094】
他の構成は、一実施形態及び第1乃至第5変形例の各々と同様である。
【0095】
次に、以上のように構成された第7変形例の動作について
図11及び
図20のフローチャートを用いて説明する。
【0096】
いま、前述した
図11のフローチャートと同様に、ステップST10~ST30が実行されたとする。これにより、調整機能443がオフ状態のときに通常領域の画像とマスク領域の画像とが再構成処理により取得及び表示され、両画像の境界にギャップが発生しているとする。
【0097】
続いて、切り替え機能446は、調整機能443をオン状態に切り替える(ステップST40)。但し、一実施形態とは異なり、切り替え機能446は、当該取得された両画像の間のギャップに基づいて、調整機能443をオン状態に切り替える。このステップST40は、
図20に示すように、実行される。
【0098】
始めに、抽出機能446-1は、通常領域の画像のエッジを抽出する(ステップST41)。
【0099】
判定機能446-2は、当該エッジの抽出結果に基づいて、取得された両画像の間のギャップの大小を判定する(ステップST42)。なお、ギャップが閾値より小のとき、他の画像を表示するまで現在の画像の表示を継続する(ステップST43)。また、ステップST43の後、他の画像を表示した際には(ステップST44)、ステップST41に戻る。
【0100】
一方、ステップST42の判定の結果、ギャップが大の場合、オン制御機能446-3は、調整機能443(調整処理)をオン状態に切り替える(ステップST45)。
【0101】
しかる後、前述した
図11のフローチャートと同様に、ステップST50~ST70が実行される。
【0102】
従って、第7変形例によれば、再構成処理により取得された両画像の間のギャップに基づいて、調整機能443をオン状態に切り替える。これにより、一実施形態及び第1乃至第5変形例の各々の効果に加え、操作者による切り替え機能446を操作する手間を無くすことができる。
【0103】
また、第7変形例によれば、通常領域の画像のエッジを抽出し、当該エッジの抽出結果に基づいて、再構成処理により取得された両画像の間のギャップの大小を判定し、ギャップが大の場合、調整処理をオン状態に切り替える。これにより、既存のエッジ抽出技術を用いて容易に実現することができる。
【0104】
また、第7変形例によれば、一実施形態及び第1乃至第5変形例の各々の調整機能443をオン状態に切り替える構成により、自動的に、通常領域の使用範囲を調整することができる。但し、第7変形例は、手動で使用範囲を調整する第6変形例に組み合わせることも可能である。
【0105】
(第8変形例)
第8変形例は、第7変形例の変形例であり、切り替え機能446を自動で実現する場合の他の具体例である。すなわち、第8変形例は、次の方式(a)、(b)、又は(c)に示すように、切り替え機能446を自動で実現する。
【0106】
(a)4D画像全体について、調整機能443をオン状態に制御する方式。
【0107】
(b)4D画像全体について、調整機能443をオフ状態に制御する方式。
【0108】
(c)4D画像全体のうち、特定の時相について、調整機能443をオン状態に切り替え、特定の時相とは異なる時相について、調整機能443をオフ状態に制御する方式。
【0109】
ここで、方式(a)又は(b)は、4D画像に対し、例えば、動態解析などの解析用の後処理アプリケーションを使用する予定がある場合に、ノイズの均一性を高める観点から用いられる。当該予定の有無は、例えば、4D画像を取得するための4Dスキャン前に予め後処理アプリケーション名が設定されたか否かに応じて判定可能である。方式(a)は、4D画像全体のうち、1つ以上のギャップが閾値以上の場合に用いられる。方式(b)は、4D画像全体のうち、全てのギャップが閾値未満の場合に用いられる。
【0110】
方式(c)は、4D画像に対し、解析用の後処理アプリケーションを使用する予定がない場合に用いられる。方式(c)における特定の時相は、4D画像の各時相のうち、ギャップが閾値以上の時相とその前後の時相とを含む時相である。
【0111】
これに伴い、メモリ41は、操作者の操作に応じて、処理回路44により取得される画像に対し、解析用の後処理プログラムを実行する予定が設定される。ここでいう予定は、必ずしも日時情報を含まなくてよく、例えば、後処理プログラムの識別情報(例、名称)か、解析用の後処理ありを示す条件情報、といった何らかの予定情報を含んでいればよい。
【0112】
また、切り替え機能446は、例えば、前述したオン制御機能446-3が、次に示す機能を実現する。すなわち、オン制御機能446-3は、当該予定が設定されたか否かを判定する。オン制御機能446-3は、判定した結果、当該予定が設定された場合には、第1領域の画像と第2領域の画像との間のギャップの大小に応じて、一部の角度を調整する調整処理を常にオン状態又は常にオフ状態に切り替える。また、オン制御機能446-3は、判定した結果、否の場合には、当該ギャップが閾値より大のときに対応する特定の時相毎に当該調整処理をオン状態に切り替える。
【0113】
他の構成は、第7変形例と同様である。
【0114】
次に、以上のように構成された第8変形例の動作について
図21のフローチャートを用いて説明する。以下の説明は、予めスキャノ撮影による位置決めや撮影条件の設定、解析用の後処理アプリケーションを実行する予定の設定、架台の回転の立ち上げ等が終了した後の動作について述べる。なお、解析用の後処理アプリケーションを実行する予定は、当該予定がない場合には設定されない。また、ステップST10aの開始時点において、調整機能443がオフ状態である場合を例に挙げて述べる。
【0115】
いま、X線CT装置1は、前述したステップST10のボリュームスキャンを連続して実行することにより、被検体の4Dスキャンを実行する(ステップST10a)。4Dスキャンの実行結果に基づき、前述同様に、ステップST20~ST30が実行される。
【0116】
次に、処理回路44は、切り替え機能446におけるオン制御機能446-3を実行する。このとき、処理回路44は、4Dスキャンにより取得される画像に対し、解析用の後処理プログラムを実行する予定がメモリ41に設定されたか否かを判定する(ステップST31)。
【0117】
ステップST31により判定した結果、当該予定が設定された場合には、処理回路44は、第1領域の画像と第2領域の画像との間のギャップの大小に応じて、一部の角度を調整する調整処理を常にオン状態又は常にオフ状態に切り替える(ステップST32~ST34)。具体的には例えば、前述したステップST41~ST42と同様に、ギャップの大小を判定し(ステップST32)、当該ギャップが閾値未満の場合には、当該調整処理を常時オフ状態に切り替えて(ステップST33)、ステップST60aに移行する。また、ステップST32の判定の結果、ギャップが大の場合には、調整処理を常時オン状態に切り替えて(ステップST34)、ステップST50aに移行する。
【0118】
一方、ステップST31により判定した結果、否の場合には、当該ギャップが閾値より大のときに対応する特定の時相毎に当該調整処理をオン状態に切り替える(ステップST40a)。
【0119】
ステップST40a又はST34の後、ステップST50aにおいて、処理回路44は、調整処理がオン状態のとき、前述したステップST50と同様に、通常領域の投影データの収集範囲Wf内で、当該通常領域の画像の再構成に用いる使用範囲を調整する。
【0120】
ステップST50a又はST33の後、ステップST60aにおいて、処理回路44は、調整処理の切り替え後のオン/オフ状態に応じて、再構成処理を実行する。具体的には例えば、処理回路44は、当該オン/オフ状態に応じた使用範囲の投影データを用いて通常領域の画像を再構成すると共に、狭い収集範囲の投影データを用いてマスク領域の画像を再構成する。なお、オン状態に応じた使用範囲は、調整されている。オフ状態に応じた使用範囲は、調整されていない。
【0121】
しかる後、画像処理機能445は、ステップST60aで再構成された画像を任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。変換後の断層像データや3次元画像データは、ディスプレイ42に表示される(ステップST70)。
【0122】
上述したように第8変形例によれば、メモリは、操作者の操作に応じて、取得される画像に対し、解析用の後処理プログラムを実行する予定が設定される。処理部は、予定が設定されたか否かを判定し、判定した結果、予定が設定された場合には、第1領域の画像と第2領域の画像との間のギャップの大小に応じて、一部の角度を調整する調整処理を常にオン状態又は常にオフ状態に切り替える。また、処理部は、判定した結果、否の場合には、ギャップが閾値より大のときに対応する特定の時相毎に調整処理をオン状態に切り替える。
【0123】
このように、解析用の後処理プログラムを実行する予定がある場合に調整処理を常にオン状態又は常にオフ状態に切り替える。例えば、4D画像のうち、1箇所でもギャップが大であれば、調整処理を常にオン状態に切り替える。また、4D画像に全くギャップがなければ、調整処理を常にオフ状態に切り替える。このように、調整処理を常に同じ状態に制御する構成により、一実施形態の効果に加え、調整処理の切り替えに伴うノイズの変動を無くし、ノイズの均一性を向上できる。従って、後処理による解析結果の信頼性の向上を図ることができる。
【0124】
また、解析用の後処理プログラムを実行する予定がない場合に調整処理を特定時相毎にオン状態に切り替える構成により、4Dスキャンの結果として特定時相毎にギャップが生じる場合に、特定時相毎のギャップの発生を回避しながら再構成を行うことができる。
【0125】
(第9変形例)
第9変形例は、一実施形態及び第1乃至第8変形例の各々の変形例であり、投影データマップMpを極座標形式に基づいて作成する場合の具体例である。但し、以下では、通常領域の収集範囲Wfを連続的に狭くしてマスク領域の狭い収集範囲Wmに一致させる場合に対応する第1~第3変形例、第5~第8変形例への適用例について主に述べる。
【0126】
図22に示すように、通常領域の内周側にマスク領域が位置するアキシャル面において、マスク領域内の点Pk(r,θ)を回転軸Zからの所定の半径rと、水平軸Xからの角度θとの極座標により規定したとする。このとき、点Pk(r,θ)は、回転軸Zを中心にした所定の半径rをもつ円Lθ上の位置に相当する。また、マスク領域内の点Pkに相当する角度位置(θ)と、収集範囲Wmの中心に相当する角度位置(θ+180°)とは、回転軸Zを挟んで対向する関係にある。なお、点Pkは、画像を表示したときの対象画素に対応する。
【0127】
このような円Lθ上の各点Pkに対応した検出データ(投影データ)は、
図23に示す如き、半径r及び回転軸Z方向の位置を固定した投影データマップMpとして、メモリ41に記憶される。この投影データマップMpは、縦軸を円Lθ上の各点Pkの位置(θ)とし、横軸をビュー(ビュー番号)としたとき、縦軸上の位置と横軸上の位置との交差する位置に、点Pkに対するX線強度のデジタル値が記録される。ある点Pkの位置において、X線強度のデジタル値が記録されるビューの範囲が、点Pkに対応する使用範囲Wmに相当する。マスク領域内の点Pkに対応する使用範囲Wmは180°+αであり、点Pkの位置(θ)に応じて、使用範囲Wmの中心が位置(θ)に対向するように移動する。このような投影データマップMpは、円Lθ毎にメモリ41に記憶される。補足すると、前処理機能442は、例えば、前処理後の投影データに基づいて、このような複数の投影データマップMpを作成し、当該複数の投影データマップMpをメモリ41に書き込む。投影データマップMpは、回転軸Zを中心にした所定の半径rをもつ円Lθ上の位置(マスク領域上の位置又は通常領域上の位置)と、使用範囲(ビュー数)とに関連付けて投影データを示すマップである。なお、この例では、投影データマップMpの横軸のビューをX線管11の回転角度としており、ビューの範囲が収集範囲又は使用範囲に相当する。また、投影データマップMpの横軸は、収集範囲Wf,Wm内の収集時刻でもよく、ビュー番号でもよい。
【0128】
このため、
図24の左側に示すように、同一Z座標値上で任意の角度θにおいて、3つの半径r1,r2,r3(但し、r3<r2<r1)を用い、マスク領域内の点Pk1(r1,θ)、通常領域のうちのマスク領域との境界を含む部分領域内の点Pk2(r2,θ)、当該部分領域外の通常領域内の点Pk3(r3,θ)を表すとする。
【0129】
このとき、マスク領域内の点Pk1は、
図23と同様に、
図24の右上に示す如き投影データマップMpにより、点Pk1の位置(θ)に応じた使用範囲Wmが表される。
【0130】
部分領域内の点の点Pk2は、
図24の右中央に示す如き投影データマップMpにより、点Pk2の位置(θ)に応じた使用範囲W1(>Wm)が表される。なお、点Pk2の位置(θ)に応じた使用範囲W1は、通常領域の収集範囲Wfを狭くして、マスク領域の使用範囲Wmに近づけたものである(Wf>W1>Wm)。
【0131】
部分領域外の通常領域内の点Pk3は、
図24の右下に示す如き投影データマップMpにより、点Pk3の位置(θ)に応じた使用範囲Wf(=360°)が表される。なお、通常領域の収集範囲Wfをマスク領域の狭い収集範囲Wmと同一の範囲にする場合に対応する一実施形態、第4変形例に適用する際には、
図24の右中央と右下の投影データマップMpの使用範囲W1,Wfを、
図24の右上の投影データマップMpの使用範囲Wmと同一の範囲に調整すればよい。また、第4変形例に適用する際には、同一の使用範囲に調整した使用範囲を更に移動させればよい。
【0132】
投影データマップMp以外の構成及び動作は、適用する一実施形態及び第1乃至第8変形例の各々と同一である。
【0133】
以上のような第9変形例によれば、回転軸に沿った方向の直線上の位置に代えて、回転軸を中心にした所定の半径をもつ円上の位置を用いる構成により、一実施形態及び第1乃至第8変形例の各々と同様の効果を得ることができる。
【0134】
以上述べた少なくとも一つの実施形態及び各変形例によれば、データ収集部は、X線発生部が被検体の周囲を1回転すると共に、当該1回転分の投影データが揃う第1領域と、X線発生部の回転軸に沿った方向で第1領域の両側に位置して1回転分よりも少ない角度の投影データしか揃わない第2領域との各領域の投影データを、X線検出部を介して収集する。処理部は、第1領域のうち少なくとも一部の領域について、再構成処理に用いる投影データのうち、一部の角度に対応する投影データを用いて、また第2領域について1回転分よりも狭い収集範囲の投影データを用いて再構成処理を行い、画像を取得する。
【0135】
従って、動きの激しい部位をボリュームスキャンした際に、マスク領域(第2領域)の画像と通常領域(第1領域)の画像との境界に発生するギャップを低減することができる。
【0136】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
1…X線CT装置、10…架台装置、11…X線管、12…X線検出器、13…回転フレーム、14…X線高電圧装置、15…制御装置、16…ウェッジ、17…コリメータ、18…DAS、19,19x…FOV、30…寝台装置、31…基台、32…寝台駆動装置、33…天板、34…支持フレーム、40…コンソール装置、41…メモリ、42…ディスプレイ、43…入力インターフェース、44…処理回路、45…画像生成装置、441…システム制御機能、442…前処理機能、443…調整機能、443-1…表示制御機能、443-2…操作対応機能、443-3…対応調整機能、444…再構成処理機能、445…画像処理機能、446…切り替え機能、446-1…抽出機能、446-2…判定機能、446-3…オン制御機能、Mp…投影データマップ、Pk…点、Wf,Wm…収集範囲又は使用範囲、W1,W2…使用範囲、P…被検体。