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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】車両の側部構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/20 20160101AFI20221219BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20221219BHJP
   B60R 13/04 20060101ALI20221219BHJP
   B60J 10/16 20160101ALI20221219BHJP
   B60J 10/84 20160101ALI20221219BHJP
【FI】
B60J10/20
B62D25/08 L
B60R13/04 Z
B60J10/16
B60J10/84
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018168736
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020040482
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】三垣 祐介
(72)【発明者】
【氏名】森 康輔
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058426(JP,A)
【文献】特開2009-056916(JP,A)
【文献】特開2007-210385(JP,A)
【文献】特開2008-207692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00-10/90
B60R 13/06
B60R 13/04
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪の外周形状に対応した切欠きであるホイールアーチに略一致する下端縁を有するとともに、車両の車体に開閉自在に支持されたサイドドアと、
前記後輪を覆うホイールハウス、及び前記サイドドアの間をシールするシール部材とを備えた車両の側部構造であって、
前記サイドドアが、
車幅方向で前記ホイールハウスの縁部に対面するドアガーニッシュを備え、
前記シール部材が、
前記ホイールハウスの縁部に取付けられる取付け部と、
弾性を有するとともに、車幅方向に沿った断面形状が前記ドアガーニッシュに当接する断面略舌片状のリップ部とで一体形成され、
前記後輪の中心から離間する前記後輪の径方向を径方向外方とし、径方向外方とは逆方向を径方向内方として、
前記リップ部が、
前記ドアガーニッシュに当接するリップ中間部よりも径方向外方の前記取付け部から延設された本体部分と、
前記リップ中間部から前記取付け部へ向けて延設された延設部分とで断面略舌片状に一体形成され、
前記延設部分が、
前記サイドドアが閉じた状態において、その先端が前記取付け部における径方向内方側の先端面に接触または近接する形状に形成された
車両の側部構造。
【請求項2】
前記シール部材の前記リップ部が、
前記サイドドアが開いた状態において、前記リップ中間部を頂部とする略V字状の断面略舌片形状に形成された
請求項1に記載の車両の側部構造。
【請求項3】
前記シール部材の前記リップ部が、
車幅方向に沿った断面において、前記ドアガーニッシュに当接する第1リップ層と、
該第1リップ層の車幅方向内側に位置するとともに、前記第1リップ層よりも高剛性な第2リップ層とで一体形成され、
該第2リップ層が、
前記リップ中間部近傍の前記本体部分から前記延設部分にかけて形成された
請求項1または請求項2に記載の車両の側部構造。
【請求項4】
前記シール部材の前記取付け部が、
前記サイドドアが開いた状態において、前記リップ部における前記延設部分の先端と車幅方向で略対向する位置に略円弧状の面取り部分を備えた
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の車両の側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばホイールハウスの縁部に取付けたシール部材を、サイドドアのドアガーニッシュに当接させるような車両の側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両において、後輪に隣接する車両側方のサイドドアと車体との隙間には、後輪によって巻き上げられた粉塵や雨水が車室内へ侵入することを阻止するシール部材が設けられている。
【0003】
例えば、後輪の外周形状に対応した切欠きであるホイールアーチに、下端縁が略一致するサイドドアを備えた車両の場合、サイドドアに対面するホイールハウスの縁部に、サイドドアに当接するシール部材を備えることで、後輪によって巻き上げられた粉塵や雨水の車室内への侵入を防止している。
【0004】
このようにサイドドアにシール部材を当接させる場合、サイドドアのインナパネルに直接的にシール部材を当接させると、サイドドアを開閉した際、シール部材に付着した粉塵がインナパネルの塗装を傷つけることで、サイドドアの見栄えが低下する、あるいはサイドドアに錆が発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、特許文献1のように、サイドドアの下部に設けたドアガーニッシュ(アーチモール)にシール部材を当接させることで、シール部材に付着した粉塵によるインナパネルの損傷を防止することが考案されている。
【0006】
ところで、特許文献1のように、ホイールハウスの縁部に取付けられる取付け部、及びドアガーニッシュに当接するリップ部(シール部)で一体形成されたシール部材は、サイドドアによって押圧された際の弾性変形量が、リップ部の先端近傍よりもリップ部の基部近傍の方が小さくなり易い。
【0007】
このため、車両が雪上を走行した際、後輪によって巻き上げられた氷雪がリップ部の基部近傍に付着すると、サイドドアの開閉によってシール部材が弾性変形した場合であっても、リップ部の基部近傍に付着した氷雪が、リップ部の基部近傍から剥離することなく、そのまま堆積し易いという問題があった。
【0008】
そして、リップ部の基部に氷雪が堆積した状態、あるいは堆積した氷雪が凍り付いた状態で、サイドドアが勢いよく閉じられた際、リップ部の基部近傍に堆積した氷雪がドアガーニッシュを車幅方向外側に押圧することで、ドアガーニッシュがサイドドアから浮き上がるように変形して車両側面の見栄えが低下する、あるいはドアガーニッシュが破損するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-180921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題に鑑み、ホイールハウスの縁部に設けたシール部材への氷雪の堆積を抑えて、車両側面における見栄えの低下やドアガーニッシュの破損を防止できる車両の側部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、後輪の外周形状に対応した切欠きであるホイールアーチに略一致する下端縁を有するとともに、車両の車体に開閉自在に支持されたサイドドアと、前記後輪を覆うホイールハウス、及び前記サイドドアの間をシールするシール部材とを備えた車両の側部構造であって、前記サイドドアが、車幅方向で前記ホイールハウスの縁部に対面するドアガーニッシュを備え、前記シール部材が、前記ホイールハウスの縁部に取付けられる取付け部と、弾性を有するとともに、車幅方向に沿った断面形状が前記ドアガーニッシュに当接する断面略舌片状のリップ部とで一体形成され、前記後輪の中心から離間する前記後輪の径方向を径方向外方とし、径方向外方とは逆方向を径方向内方として、前記リップ部が、前記ドアガーニッシュに当接するリップ中間部よりも径方向外方の前記取付け部から延設された本体部分と、前記リップ中間部から前記取付け部へ向けて延設された延設部分とで断面略舌片状に一体形成され、前記延設部分が、前記サイドドアが閉じた状態において、その先端が前記取付け部における径方向内方側の先端面に接触または近接する形状に形成されたことを特徴とする。
この発明により、径方向外方とは逆向きの径方向内方の位置からリップ部が延設された場合に比べて、後輪の中心からリップ部の基部までの距離を長く確保することができる。
【0012】
換言すれば、車両の側部構造は、取付け部における径方向内方の位置からリップ部が延設された場合に比べて、リップ部の基部を、後輪の中心からより離間した位置に設けることができる。
このため、車両の側部構造は、後輪によって巻き上げられた氷雪がリップ部の基部近傍に到達し難くなるだけでなく、リップ部の基部近傍への氷雪の堆積を抑えることができる。
【0013】
これにより、車両の側部構造は、サイドドアが勢いよく閉じられた場合であっても、リップ部の基部近傍に堆積した氷雪によって、ドアガーニッシュが車幅方向外側へ押圧されることを抑制できる。
従って、車両の側部構造は、ホイールハウスの縁部に設けたシール部材への氷雪の堆積を抑えて、ドアガーニッシュがサイドドアから浮き上がるように変形することによる車両側面の見栄えの低下やドアガーニッシュの破損を防止することができる。
【0014】
加えて、この発明は、前記シール部材の前記リップ部が、前記ドアガーニッシュに当接するリップ中間部よりも径方向外方の前記取付け部から延設された本体部分と、前記リップ中間部から前記取付け部へ向けて延設された延設部分とで一体形成され、該延設部分が、前記サイドドアが閉じた状態において、その先端が前記取付け部に接触または近接する形状に形成されたものである
【0015】
この構成によれば、車両の側部構造は、サイドドアが閉じた状態において、取付け部とリップ部の本体部分とで形成される開口を、リップ部の延設部分によって閉塞することができる。
これにより、車両の側部構造は、後輪によって巻き上げられた氷雪が、取付け部とリップ部の本体部分との間に侵入することを、リップ部の延設部分によって阻止することができる。
【0016】
さらに、本体部分の弾性変形が氷雪によって阻害されることがないため、車両の側部構造は、サイドドアが開閉された際、シール部材の延設部分を安定して変位させることができる。このため、車両の側部構造は、リップ部の延設部分に付着した氷雪を、サイドドアの開閉によって容易に剥離させることができる。
【0017】
従って、車両の側部構造は、ドアガーニッシュに当接するリップ中間部から延設した延設部分をリップ部に備えたことにより、ホイールハウスの縁部に設けたシール部材への氷雪の堆積をより抑えることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記シール部材の前記リップ部が、前記サイドドアが開いた状態において、前記リップ中間部を頂部とする略V字状の断面略舌片形状に形成されてもよい。
この発明により、車両の側部構造は、ホイールハウスの縁部に設けたシール部材への氷雪の堆積を確実に抑えることができる。
【0019】
具体的には、例えば、車幅方向に沿った断面におけるシール部材のリップ部の断面形状を、ドアガーニッシュへ向けて突出した略円弧状の断面略舌片形状に形成した場合、ドアガーニッシュが当接するリップ部の当接位置が、サイドドアの開閉角度の変化に追従して移動し易くなる。
【0020】
このため、サイドドアが閉じた状態において、取付け部に対するリップ部の延設部分の相対位置が安定しないだけでなく、取付け部とリップ部の本体部分とで形成される開口が、リップ部の延設部分によって閉塞されないおそれがある。
【0021】
これに対して、車幅方向に沿った断面におけるシール部材のリップ部の断面形状を、リップ中間部を頂部とする略V字状の断面略舌片形状に形成したことにより、車両の側部構造は、サイドドアの開閉角度に関わらず、略V字状のリップ部における頂部にドアガーニッシュを安定して当接させることができる。
【0022】
このため、ドアガーニッシュからの押圧荷重がシール部材のリップ部に作用した際、車両の側部構造は、車幅方向に沿った断面におけるリップ部の基部近傍を回転中心として車幅方向内側へ向けて回動するように、リップ部の延設部分を変位させることができる。
【0023】
これにより、車両の側部構造は、サイドドアが閉じた状態において、取付け部に対する延設部分の相対位置を安定させることができるため、取付け部とリップ部の本体部分とで形成される開口を、リップ部の延設部分で確実に閉塞することができる。
従って、車両の側部構造は、シール部材のリップ部を略V字状の断面略舌片形状に形成したことにより、ホイールハウスの縁部に設けたシール部材への氷雪の堆積を確実に抑えることができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記シール部材の前記リップ部が、車幅方向に沿った断面において、前記ドアガーニッシュに当接する第1リップ層と、該第1リップ層の車幅方向内側に位置するとともに、前記第1リップ層よりも高剛性な第2リップ層とで一体形成され、該第2リップ層が、前記リップ中間部近傍の前記本体部分から前記延設部分にかけて形成されてもよい。
【0025】
この発明により、車両の側部構造は、リップ部の本体部分に対する延設部分の相対位置の変化を、第2リップ層によって抑えることができる。このため、ドアガーニッシュからの押圧荷重がシール部材のリップ部に作用した際、車両の側部構造は、車幅方向に沿った断面において、本体部分と延設部分とがなす角度を略一定に維持したまま、リップ部の延設部分を変位させることができる。
【0026】
これにより、車両の側部構造は、サイドドアが閉じた状態において、取付け部に対する延設部分の相対位置をより安定させることができるため、取付け部とリップ部の本体部分とで形成される開口を、リップ部の延設部分でより確実に閉塞することができる。
【0027】
従って、車両の側部構造は、第1リップ層に対して高剛性な第2リップ層を、第1リップ層の車幅方向内側に設けたリップ部により、ホイールハウスの縁部に設けたシール部材への氷雪の堆積をより確実に抑えることができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記シール部材の前記取付け部が、前記サイドドアが開いた状態において、前記リップ部における前記延設部分の先端と車幅方向で略対向する位置に略円弧状の面取り部分を備えてもよい。
この発明により、車両の側部構造は、リップ部の延設部分が取付け部に接触した場合であっても、リップ部の延設部分の変位を、取付け部の面取り部分に沿って案内することができる。
【0029】
これにより、車両の側部構造は、リップ部の延設部分が取付け部に当接した際、リップ部の延設部分が意図しない形状に変形することを防止できる。このため、車両の側部構造は、意図しない形状に変形したリップ部の延設部分に氷雪が堆積することを抑制できる。
【0030】
さらに、リップ部の延設部分の変位が取付け部の面取り部分に沿って案内されることで、車両の側部構造は、取付け部とリップ部の延設部分とを隙間なく接触させることができる。このため、車両の側部構造は、取付け部とリップ部の本体部分とで形成される開口を、リップ部の延設部分で確実に閉塞することができる。
【0031】
従って、車両の側部構造は、取付け部に設けた面取り部分により、ホイールハウスの縁部に設けたシール部材への氷雪の堆積をさらに抑えて、車両側面における見栄えの低下やドアガーニッシュの破損をさらに確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、ホイールハウスの縁部に設けたシール部材への氷雪の堆積を抑えて、車両側面における見栄えの低下やドアガーニッシュの破損を防止できる車両の側部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】車両右側から見た車両の側部を示す左側面図。
図2図1中のA-A矢視断面図。
図3】サイドドアが開いた状態における要部の断面を示す要部拡大断面図。
図4】サイドドアが閉じた状態における要部の断面を示す要部拡大断面図。
図5】第2シール部材におけるリップ部の弾性変形を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態の車両1は、後輪2の外周形状に対応した切欠きであるホイールアーチWに、下端縁が略一致するサイドドア6を備えた車両である。このような車両1の側部構造について、図1から図5を用いて詳しく説明する。
【0035】
なお、図1は車両右側から見た車両1の左側面図を示し、図2図1中のA-A矢視断面図を示し、図3はサイドドア6が開いた状態における要部の要部拡大断面図を示し、図4はサイドドア6が閉じた状態における要部の要部拡大断面図を示し、図5は第2シール部材21におけるリップ部23の弾性変形を説明する説明図を示している。
【0036】
また、図5中において、図示を明確にするため、リップ部23のハッチングを省略するとともに、サイドドア6が開いた状態におけるリップ部23を実線で図示し、サイドドア6が閉じた状態におけるリップ部23を二点鎖線で図示している。
【0037】
また、図中において、矢印Fr及び矢印Rrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。さらに、矢印IN及び矢印OUTは車幅方向を示しており、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示している。
【0038】
まず、本実施形態における車両1について、図1及び図2を用いて簡単に説明する。
車両1は、図1に示すように、側面視において、二点鎖線で図示した後輪2と、後輪2の車両上方を覆うホイールハウス3と、ホイールハウス3内に配設された前側ホイールハウスカバー4、及び後側ホイールハウスカバー5と、後輪2の車両前方側に隣接するサイドドア6と、サイドドア6の下部を車両前後方向に延びるサイドシル7と、サイドドア6の車両後方に隣接するリヤフェンダ8と、リヤフェンダ8の車両下方に配設されたリヤバンパ9とを備えている。
【0039】
ホイールハウス3は、後輪2の外周形状に対応して車両側部を切り欠いた側面視略円弧状のホイールアーチW(図1参照)よりも僅かに大径の側面視略円弧状に形成されている。
このホイールハウス3は、図1及び図2に示すように、車幅方向内側に位置するホイールハウスインナ31と、ホイールハウスインナ31に対して車幅方向外側に位置するホイールハウスアウタ32とを、車幅方向に接合して車両上方に突出した略ドーム状に形成されている。
【0040】
さらに、ホイールハウス3には、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ホイールハウスアウタ32とで閉断面をなすボディアウタパネル33、及びホイールハウスレインフォースメント34が、ホイールハウスアウタ32における車幅方向外側の面に接合されている。
【0041】
具体的には、ホイールハウスアウタ32は、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、車両上方へ向けて立設されたアウタフランジ32aと、アウタフランジ32aの下端から車幅方向外側、かつ僅かに車両下方へ向けて延設されたアウタ本体32bと、アウタ本体32bにおける車幅方向側の縁端から車両下方、かつ僅かに車幅方向外側へ向けて延設されたアウタ縁部32cとで一体形成されている。
なお、アウタフランジ32aにおける車幅方向内側の面は、図2に示すように、車両上方へ向けて立設されたホイールハウスインナ31のインナフランジ31aが接合されている。
【0042】
ボディアウタパネル33は、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ホイールハウスアウタ32のアウタフランジ32aに接合される上側フランジ33aと、上側フランジ33aの下端から車幅方向外側、かつ車両下方へ略階段状に延設されたパネル本体33bと、パネル本体33bから車両下方へ延設されるとともに、ホイールハウスアウタ32のアウタ縁部32cに接合される下側フランジ33cとで一体形成されている。
【0043】
ホイールハウスレインフォースメント34は、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ホイールハウスアウタ32とボディアウタパネル33とがなす閉断面内に配設されている。
【0044】
より詳しくは、ホイールハウスレインフォースメント34は、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ボディアウタパネル33の上側フランジ33aよりも車両下方の位置で、ホイールハウスアウタ32のアウタフランジ32aに接合される上側フランジ34aと、上側フランジ34aの下端から車幅方向外側へ延設されたのち、車両下方へ延設されたレインフォースメント本体34bと、レインフォースメント本体34bの下端から車幅方向外側に延設されるとともに、図示を省略した位置でホイールハウスアウタ32のアウタ本体32bに接合された下側フランジ34cとで一体形成されている。
【0045】
また、前側ホイールハウスカバー4は、図1及び図2に示すように、例えば、比較的低剛性のPP製であって、ホイールハウス3の前部を車両下方から覆うように、車両上方へ突出した略ドーム状に形成されている。
また、後側ホイールハウスカバー5は、図1に示すように、例えば、比較的低剛性のPP製であって、ホイールハウス3の後部を車両下方から覆うように、車両上方へ突出した略ドーム状に形成されている。
【0046】
また、サイドドア6は、図1に示すように、側面視において、後輪2の外周形状に対応して車両側部を切り欠いた側面視略円弧状のホイールアーチWに、その下縁が略一致する形状に形成されている。なお、サイドドア6は、詳細な図示を省略するが、その前部がドアヒンジを介して車体に開閉自在に支持されている。
【0047】
このサイドドア6は、図2に示すように、車幅方向内側に位置するドアインナパネル61と、ドアインナパネル61に対して車幅方向外側に位置するドアアウタパネル62と、ドアアウタパネル62に連結された合成樹脂製のドアガーニッシュ63とで構成されている。
【0048】
具体的には、ドアインナパネル61は、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ボディアウタパネル33を挟んでホイールハウスアウタ32のアウタフランジ32aに車幅方向で対向するドア内壁部61aと、ボディアウタパネル33を挟んでホイールハウスアウタ32のアウタ本体32bに車両上方で対向するドア底面部61bと、ボディアウタパネル33を挟んでホイールハウスアウタ32のアウタ縁部32cに車幅方向外側で対向するドアインナ下縁部61cとで一体形成されている。
【0049】
なお、ドアインナパネル61のドア底面部61bは、図2に示すように、ドア内壁部61aの下端から車幅方向外側、かつ車両下方へ向けて略階段状に延設されている。
このドアインナパネル61のドアインナ下縁部61cは、図2に示すように、ホイールハウスアウタ32におけるアウタ縁部32cの上部に、その下端が位置する上下方向の長さで延設されている。
【0050】
また、ドアアウタパネル62は、サイドドア6の外観意匠面をなすパネル部材であって、図2に示すように、車幅方向外側に位置して、サイドドア6の外観意匠面をなすドア外壁部62aと、ドア外壁部62aの車両下方に位置して、ドアガーニッシュ63が装着されるガーニッシュ装着部62bと、ドアインナパネル61に連結されるドアアウタ下縁部62cとで一体形成されている。
【0051】
具体的には、ガーニッシュ装着部62bは、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ドア外壁部62aの下端を車幅方向内側、かつ車両下方へ延設したのち、車両下方へ延設した形状に形成されている。
ドアアウタ下縁部62cは、図2に示すように、ガーニッシュ装着部62bの下端をさらに車両下方に延設して形成されている。このドアアウタ下縁部62cは、図2に示すように、ヘミング加工によって、ドアインナパネル61のドアインナ下縁部61cに連結されている。
【0052】
また、ドアガーニッシュ63は、図1及び図2に示すように、サイドドア6の下部における外観意匠面をなす合成樹脂部材であって、サイドシル7に沿って車両前後方向に延びる側面視略矩形の矩形部分と、ホイールアーチWに沿って延びる側面視略円弧状の円弧部分とを一体的にした形状に形成されている。
【0053】
そして、ドアガーニッシュ63は、図1に示すように、側面視において、サイドシル7に沿った矩形部分の下端が、サイドシル7の下端よりも車両上方の位置で、サイドシル7の下端に対して略平行な縁端をなすように形成され、ホイールアーチWに沿った円弧部分の下端が、ホイールアーチWをなすように形成されている。
【0054】
このドアガーニッシュ63は、図2に示すように、ドアアウタパネル62とでサイドドア6における車幅方向外側の外観意匠面をなすアウタガーニッシュ631と、ドアインナパネル61とでサイドドア6における車幅方向内側の外観意匠面をなすインナガーニッシュ632とで構成されている。
【0055】
より詳しくは、アウタガーニッシュ631は、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ドアアウタパネル62のドア外壁部62aと略同じ車幅方向の位置に位置するガーニッシュ外壁部631aと、ガーニッシュ外壁部631aの下端から車幅方向内側へ延設されたガーニッシュ底部631bとで一体形成されている。
なお、アウタガーニッシュ631は、図2に示すように、ドアアウタパネル62のガーニッシュ装着部62bに対して点ファスナ10で連結固定されている。
【0056】
インナガーニッシュ632は、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ドアインナパネル61のドアインナ下縁部61cとドアアウタパネル62のドアアウタ下縁部62cとのヘミング加工部分と略同じ車幅方向の位置に位置するガーニッシュ内壁部632aと、ドアアウタパネル62のガーニッシュ装着部62bとアウタガーニッシュ631との間へ向けてガーニッシュ内壁部632aの上端を延設したインナ延設部分632bとで一体形成されている。
【0057】
このうち、ガーニッシュ内壁部632aは、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ホイールハウスアウタ32のアウタ縁部32cに対して、車幅方向に所定間隔を隔てて対向している。このアウタ縁部32cに対向するガーニッシュ内壁部632aの面は、後述する第2シール部材21が当接する当接面として形成されている。
【0058】
また、リヤフェンダ8には、図1に示すように、側面視において、ホイールアーチWに沿った側面視略円弧状のフェンダーガーニッシュ81が装着されている。このフェンダーガーニッシュ81は、図1に示すように、側面視において、サイドドア6のドアガーニッシュ63から連続する側面視略円弧形状に形成されている。
【0059】
引き続き、上述した車両1において、ボディアウタパネル33とサイドドア6との隙間を閉塞する第1シール部材11、及びホイールハウス3とサイドドア6との間を閉塞する第2シール部材21について説明する。
【0060】
第1シール部材11は、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ボディアウタパネル33におけるパネル本体33bの角部と、ドアインナパネル61におけるドア底面部61bの隅部との隙間をシールしている。
【0061】
この第1シール部材11は、弾性を有する合成ゴム製であって、図2に示すように、ボディアウタパネル33に当接する断面略円環状のシール部11aを有している。なお、第1シール部材11は、図2に示すように、サイドドア6のドアインナパネル61に装着固定されている。
そして、第1シール部材11は、図2に示すように、サイドドア6が閉じた際、シール部11aが弾性変形することで、ボディアウタパネル33とドアインナパネル61との隙間を閉塞している。
【0062】
第2シール部材21は、図2に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ホイールハウスアウタ32のアウタ縁部32cとドアガーニッシュ63との隙間をシールしている。この第2シール部材21は、弾性を有する合成ゴム製であって、図1及び図2に示すように、フェンダーガーニッシュ81からサイドシル7に至る範囲に対応するホイールハウス3のアウタ縁部32cに装着されている。
【0063】
より詳しくは、第2シール部材21は、図3及び図4に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ホイールハウスアウタ32のアウタ縁部32cに取付けられる断面略U字状の取付け部22と、取付け部22から車幅方向外側、すなわちドアガーニッシュ63へ向けて延設された断面略舌片状のリップ部23とで一体形成されている。
【0064】
ここで、後輪2の中心に向かう後輪2の径方向を径方向内方Diとし、後輪2の中心から離間する後輪2の径方向を径方向外方Doとして、第2シール部材21の取付け部22、及びリップ部23について、さらに詳述する。
【0065】
取付け部22は、図3及び図4に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、接合されたホイールハウスアウタ32のアウタ縁部32c、及びボディアウタパネル33の下側フランジ33cに、径方向内方Diから径方向外方Doへ向けて勘合可能に形成されている。
【0066】
この取付け部22は、図3及び図4に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、径方向外方Doが開口した断面略U字状の芯金24を、所定の弾性を有する合成ゴムで被覆して、径方向外方Doが開口した断面略U字状に形成されている。
【0067】
具体的には、取付け部22は、図3及び図4に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ホイールハウスアウタ32のアウタ縁部32cとボディアウタパネル33の下側フランジ33cとの接合部分を挟んで対向する内側部分221、及び外側部分222と、内側部分221の下端、及び外側部分222の下端を車幅方向に連結する連結部分223とで、径方向外方Doが開口した断面略U字状に形成されている。
【0068】
内側部分221は、図3及び図4に示すように、ホイールハウスアウタ32のアウタ縁部32cに対して、車幅方向内側に所定間隔を隔てて配設されている。この内側部分221には、アウタ縁部32cに当接する2つの脚部221aが車幅方向外側へ向けて延設されている。
【0069】
外側部分222は、図3及び図4に示すように、ボディアウタパネル33の下側フランジ33cに対して、車幅方向外側に所定間隔を隔てて配設されている。この外側部分222には、下側フランジ33cに当接する2つの脚部222aと、ホイールハウスアウタ32のアウタ縁部32cに当接する1つの脚部222bとが、車幅方向内側へ向けて延設されている。
【0070】
なお、外側部分222における径方向外方Doの先端は、図3及び図4に示すように、ホイールハウスアウタ32のアウタ縁部32cとボディアウタパネル33の下側フランジ33cとの接合部分に嵌合された状態において、ボディアウタパネル33に当接するように形成されている。
【0071】
連結部分223は、図3に示すように、サイドドア6が開いた状態において、後述するリップ部23の先端Sと略同じ径方向外方Doの位置で、内側部分221、及び外側部分222を車幅方向に連結している。
【0072】
さらに、車幅方向に沿った垂直断面において、内側部分221と連結部分223とがなす角部には、図3及び図4に示すように、緩やかな略円弧状で面取りした内側面取り部分22aが形成されている。
【0073】
同様に、車幅方向に沿った垂直断面において、外側部分222と連結部分223とがなす角部には、図3及び図4に示すように、緩やかな略円弧状で面取りした外側面取り部分22bが形成されている。この外側面取り部分22bは、図3に示すように、サイドドア6が開いた状態において、後述するリップ部23の先端Sと車幅方向で略対向している。
【0074】
一方、リップ部23は、図3及び図4に示すように、車幅方向に沿った垂直断面における断面形状が、ドアガーニッシュ63のインナガーニッシュ632に当接する当接部分であるリップ中間部Tを頂部とする略V字状の断面略舌片形状に形成されている。
【0075】
具体的には、リップ部23は、図3及び図4に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、取付け部22の外側部分222における径方向外方Doの位置から車幅方向外側、かつ径方向内方Diへ向けて延設された本体部分231と、本体部分231の先端であるリップ中間部Tから車幅方向内側、かつ僅かに径方向内方Diへ向けて延設された延設部分232とで略V字状の断面略舌片形状に形成されている。
【0076】
換言すれば、リップ部23は、ドアガーニッシュ63に当接するリップ中間部Tよりも径方向外方Doの取付け部22から延設された本体部分231と、リップ中間部Tから取付け部22へ向けて延設された延設部分232とで形成されている。
【0077】
本体部分231は、図3に示すように、サイドドア6が開いた状態において、車幅方向外側、かつ径方向外方Doへ緩やかに突出した断面略円弧状に形成されている。
延設部分232は、図3に示すように、サイドドア6が開いた状において、僅かに車幅方向外側、かつ径方向内方Diへ緩やかに突出した断面略円弧状であって、本体部分231から取付け部22の外側面取り部分22bへ向けて延設されるとともに、その先端Sが自由端となる形状に形成されている。
【0078】
なお、延設部分232は、図3及び図4に示すように、サイドドア6が開いた状態において、その先端Sが取付け部22の連結部分223に対して離間し、サイドドア6が閉じた状態において、その先端Sが取付け部22の連結部分223に接触する長さで形成されている。
【0079】
このような構成のリップ部23は、図3及び図4に示すように、リップ中間部T近傍の本体部分231、及び延設部分232における車幅方向外側部分の剛性と車幅方向内側部分の剛性とが異なるように、剛性の異なる合成ゴム製の第1合成ゴム層23aと第2合成ゴム層23bとを車幅方向で積層して形成されている。
【0080】
詳述すると、リップ部23は、図3及び図4に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、ドアガーニッシュ63に当接するリップ中間部Tを構成する第1合成ゴム層23aと、第1合成ゴム層23aの車幅方向内側に積層された第2合成ゴム層23bとで一体形成されている。
【0081】
第1合成ゴム層23aは、取付け部22の剛性よりも剛性が低い合成ゴム層に形成されている。この第1合成ゴム層23aは、図3及び図4に示すように、取付け部22とリップ部23との境界近傍、すなわちリップ部23の基部近傍から延設部分232の先端Sに至る範囲で、ドアガーニッシュ63に対向する車幅方向外側の部分と、リップ部23の基部近傍から本体部分231の略中央に至る範囲で、取付け部22に対向する車幅方向内側の部分とを構成している。
【0082】
第2合成ゴム層23bは、第1合成ゴム層23aの剛性よりも剛性が高く、かつ取付け部22の剛性と略同じ剛性の合成ゴム層に形成されている。この第2合成ゴム層23bは、図3及び図4に示すように、本体部分231の略中央から延設部分232の先端Sに至る範囲で、取付け部22に対向する車幅方向内側の部分を形成している。
なお、第2合成ゴム層23bは、図3及び図4に示すように、車幅方向に沿った垂直断面において、車幅方向外側で隣接する第1合成ゴム層23aの肉厚に対して厚肉に形成されている。
【0083】
次に、車幅方向に沿った垂直断面において、上述した構成の第2シール部材21におけるリップ部23の弾性変形について、図3から図5を用いて簡単に説明する。
まず、サイドドア6が開いた状態では、第2シール部材21は、図3及び図5中の実線で示したように、リップ部23における延設部分232の先端Sと取付け部22とが離間している。
【0084】
このような状態からサイドドア6が閉じられて、ドアガーニッシュ63がリップ部23のリップ中間部Tに当接開始すると、第2シール部材21は、図5に示すように、リップ部23の基部近傍を基点にして車幅方向内側へ向けて回動するように、本体部分231が弾性変形を開始する。
【0085】
この際、第2シール部材21のリップ部23は、断面略V字状の頂部であるリップ中間部T近傍が、サイドドア6の開閉角度に関わらず、ドアガーニッシュ63に押圧され続ける。さらに、第2合成ゴム層23bによってリップ部23の基部近傍における剛性よりもリップ中間部T近傍の剛性が高く、かつ延設部分232の先端Sが自由端のため、第2シール部材21のリップ部23は、図3から図5に示すように、本体部分231と延設部分232とがなす角度θを略一定に維持したまま弾性変形する。
【0086】
このため、第2シール部材21の延設部分232は、図5に示すように、リップ部23の基部近傍を回転中心として車幅方向内側へ回動するように、その位置が変位する。その後、延設部分232の先端Sが取付け部22に接触すると、第2シール部材21の延設部分232は、図5に示すように、取付け部22の外側面取り部分22bに案内されながら変位する。
【0087】
そして、サイドドア6が完全に閉じられると、第2シール部材21のリップ部23は、図4及び図5中の二点鎖線で示すように、延設部分232の先端Sが取付け部22の連結部分223に接触するとともに、本体部分231と取付け部22とで形成された開口を閉塞するように、径方向内方Diでリップ部23の基部に対向する位置に延設部分232を変位させて弾性変形を完了する。
【0088】
以上のように、後輪2の外周形状に対応した切欠きであるホイールアーチWに略一致する下端縁を有するとともに、車両1の車体に開閉自在に支持されたサイドドア6と、後輪2を覆うホイールハウス3、及びサイドドア6の間をシールする第2シール部材21とを備えた車両1の側部構造は、サイドドア6が、車幅方向でホイールハウス3のアウタ縁部32cに対面するドアガーニッシュ63を備え、第2シール部材21が、ホイールハウス3のアウタ縁部32cに取付けられる取付け部22と、弾性を有するとともに、車幅方向に沿った断面形状がドアガーニッシュ63に当接する断面略舌片形状に形成されたリップ部23とで一体形成され、後輪2の中心から離間する後輪2の径方向を、径方向外方Doとして、リップ部23が、車幅方向に沿った断面において、取付け部22における径方向外方Doの位置から車幅方向外側のドアガーニッシュ63へ向けて延設されたことにより、取付け部22における径方向内方Diの位置からリップ部が延設された場合に比べて、後輪2の中心からリップ部23の基部までの距離を長く確保することができる。
【0089】
換言すれば、車両1の側部構造は、取付け部22における径方向内方Diの位置からリップ部が延設された場合に比べて、リップ部23の基部を、後輪2の中心からより離間した位置に設けることができる。
このため、車両1の側部構造は、後輪2によって巻き上げられた氷雪がリップ部23の基部近傍に到達し難くなるだけでなく、リップ部23の基部近傍への氷雪の堆積を抑えることができる。
【0090】
これにより、車両1の側部構造は、サイドドア6が勢いよく閉じられた場合であっても、リップ部23の基部近傍に堆積した氷雪によって、ドアガーニッシュ63が車幅方向外側へ押圧されることを抑制できる。
従って、車両1の側部構造は、ホイールハウス3のアウタ縁部32cに設けた第2シール部材21への氷雪の堆積を抑えて、ドアガーニッシュ63がサイドドア6から浮き上がるように変形することによる車両側面の見栄えの低下やドアガーニッシュ63の破損を防止することができる。
【0091】
また、第2シール部材21のリップ部23が、ドアガーニッシュ63に当接するリップ中間部Tよりも径方向外方Doの取付け部22から延設された本体部分231と、リップ中間部Tから取付け部22へ向けて延設された延設部分232とで一体形成され、延設部分232が、サイドドア6が閉じた状態において、その先端Sが取付け部22に接触する形状に形成されたことにより、車両1の側部構造は、サイドドア6が閉じた状態において、取付け部22とリップ部23の本体部分231とで形成される開口を、リップ部23の延設部分232によって閉塞することができる。
【0092】
これにより、車両1の側部構造は、後輪2によって巻き上げられた氷雪が、取付け部22とリップ部23の本体部分231との間に侵入することを、リップ部23の延設部分232によって阻止することができる。
【0093】
さらに、本体部分231の弾性変形が氷雪によって阻害されることがないため、車両1の側部構造は、サイドドア6が開閉された際、第2シール部材21の延設部分232を安定して変位させることができる。このため、車両1の側部構造は、リップ部23の延設部分232に付着した氷雪を、サイドドア6の開閉によって容易に剥離させることができる。
【0094】
従って、車両1の側部構造は、ドアガーニッシュ63に当接するリップ中間部Tから延設した延設部分232をリップ部23に備えたことにより、ホイールハウス3のアウタ縁部32cに設けた第2シール部材21への氷雪の堆積をより抑えることができる。
【0095】
また、第2シール部材21のリップ部23が、サイドドア6が開いた状態において、リップ中間部Tを頂部とする略V字状の断面略舌片形状に形成されたことにより、車両1の側部構造は、ホイールハウス3のアウタ縁部32cに設けた第2シール部材21への氷雪の堆積を確実に抑えることができる。
【0096】
具体的には、例えば、車幅方向に沿った断面における第2シール部材21のリップ部23の断面形状を、ドアガーニッシュ63へ向けて突出した略円弧状の断面略舌片形状に形成した場合、ドアガーニッシュ63が当接するリップ部23の当接位置が、サイドドア6の開閉角度の変化に追従して移動し易くなる。
【0097】
このため、サイドドア6が閉じた状態において、取付け部22に対するリップ部23の延設部分232の相対位置が安定しないだけでなく、取付け部22とリップ部23の本体部分231とで形成される開口が、リップ部23の延設部分232によって閉塞されないおそれがある。
【0098】
これに対して、車幅方向に沿った断面における第2シール部材21のリップ部23の断面形状を、リップ中間部Tを頂部とする略V字状の断面略舌片形状に形成したことにより、車両1の側部構造は、サイドドア6の開閉角度に関わらず、略V字状のリップ部23における頂部にドアガーニッシュ63を安定して当接させることができる。
【0099】
このため、ドアガーニッシュ63からの押圧荷重が第2シール部材21のリップ部23に作用した際、車両1の側部構造は、車幅方向に沿った断面におけるリップ部23の基部近傍を回転中心として車幅方向内側へ向けて回動するように、リップ部23の延設部分232を変位させることができる。
【0100】
これにより、車両1の側部構造は、サイドドア6が閉じた状態において、取付け部22に対する延設部分232の相対位置を安定させることができるため、取付け部22とリップ部23の本体部分231とで形成される開口を、リップ部23の延設部分232で確実に閉塞することができる。
従って、車両1の側部構造は、第2シール部材21のリップ部23を略V字状の断面略舌片形状に形成したことにより、ホイールハウス3のアウタ縁部32cに設けた第2シール部材21への氷雪の堆積を確実に抑えることができる。
【0101】
また、第2シール部材21のリップ部23が、車幅方向に沿った断面において、ドアガーニッシュ63に当接する第1合成ゴム層23aと、第1合成ゴム層23aの車幅方向内側に位置するとともに、第1合成ゴム層23aよりも高剛性な第2合成ゴム層23bとで一体形成され、第2合成ゴム層23bが、リップ中間部T近傍の本体部分231から延設部分232にかけて形成されたことにより、車両1の側部構造は、リップ部23の本体部分231に対する延設部分232の相対位置の変化を、第2合成ゴム層23bによって抑えることができる。
【0102】
このため、ドアガーニッシュ63からの押圧荷重が第2シール部材21のリップ部23に作用した際、車両1の側部構造は、車幅方向に沿った断面において、本体部分231と延設部分232とがなす角度θを略一定に維持したまま、リップ部23の延設部分232を変位させることができる。
【0103】
これにより、車両1の側部構造は、サイドドア6が閉じた状態において、取付け部22に対する延設部分232の相対位置をより安定させることができるため、取付け部22とリップ部23の本体部分231とで形成される開口を、リップ部23の延設部分232でより確実に閉塞することができる。
【0104】
従って、車両1の側部構造は、第1合成ゴム層23aに対して高剛性な第2合成ゴム層23bを、第1合成ゴム層23aの車幅方向内側に設けたリップ部23により、ホイールハウス3のアウタ縁部32cに設けた第2シール部材21への氷雪の堆積をより確実に抑えることができる。
【0105】
また、第2シール部材21の取付け部22が、サイドドア6が開いた状態において、リップ部23における延設部分232の先端Sと車幅方向で略対向する位置に略円弧状の外側面取り部分22bを備えたことにより、車両1の側部構造は、リップ部23の延設部分232が取付け部22に接触した場合であっても、リップ部23の延設部分232の変位を、取付け部22の外側面取り部分22bに沿って案内することができる。
【0106】
これにより、車両1の側部構造は、リップ部23の延設部分232が取付け部22に当接した際、リップ部23の延設部分232が意図しない形状に変形することを防止できる。このため、車両1の側部構造は、意図しない形状に変形したリップ部23の延設部分232に氷雪が堆積することを抑制できる。
【0107】
さらに、リップ部23の延設部分232の変位が取付け部22の外側面取り部分22bに沿って案内されることで、車両1の側部構造は、取付け部22とリップ部23の延設部分232とを隙間なく接触させることができる。このため、車両1の側部構造は、取付け部22とリップ部23の本体部分231とで形成される開口を、リップ部23の延設部分232で確実に閉塞することができる。
【0108】
従って、車両1の側部構造は、取付け部22に設けた外側面取り部分22bにより、ホイールハウス3のアウタ縁部32cに設けた第2シール部材21への氷雪の堆積をさらに抑えて、車両側面における見栄えの低下やドアガーニッシュ63の破損をさらに確実に防止することができる。
【0109】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明のシール部材は、実施形態の第2シール部材21に対応し、
以下同様に、
ホイールハウスの縁部は、ホイールハウス3のアウタ縁部32cに対応し、
第1リップ層は、第1合成ゴム層23aに対応し、
第2リップ層は、第2合成ゴム層23bに対応し、
面取り部分は、外側面取り部分22bに対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0110】
例えば、上述した実施形態において、合成ゴム製の第2シール部材21としたが、これに限定せず、弾性を有して、ホイールハウス3とサイドドア6との隙間を閉塞可能であれば、合成樹脂製の第2シール部材としてもよい。この場合、リップ部23の第1合成ゴム層23a、及び第2合成ゴム層23bと同様に、剛性の異なる二つの合成樹脂層でリップ部を形成してもよい。
【0111】
また、サイドドア6が開いた状態において、第2シール部材21における延設部分232の先端Sが、取付け部22の連結部分223に対して離間する断面形状としたが、これに限定せず、サイドドア6が閉じた状態で、延設部分232の先端Sが取付け部22の連結部分223に接触または近接する断面形状であれば、サイドドア6が開いた状態において、延設部分232の自由端である先端Sが、取付け部22に近接する断面形状であってもよい。
【0112】
また、第2シール部材21のリップ部23を、車幅方向に沿った垂直断面において、リップ中間部Tを頂部とする略V字状の断面形状に形成したが、これに限定せず、車幅方向に沿った垂直断面において、断面略つ字状、断面略U字状、あるいは断面略C字状に形成されたリップ部23であってもよい。
【0113】
また、サイドドア6が閉じた状態において、第2シール部材21の延設部分232が取付け部22に接触する構成としたが、これに限定せず、取付け部22とリップ部23の本体部分231との開口を閉塞するように、取付け部22の連結部分223にリップ部23の延設部分232が近接する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…車両
2…後輪
3…ホイールハウス
6…サイドドア
21…第2シール部材
22…取付け部
22b…外側面取り部分
23…リップ部
23a…第1合成ゴム層
23b…第2合成ゴム層
32c…アウタ縁部
63…ドアガーニッシュ
231…本体部分
232…延設部分
Do…径方向外方
S…先端
T…リップ中間部
W…ホイールアーチ
図1
図2
図3
図4
図5