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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】鉄道車両用電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   B61C 17/00 20060101AFI20221219BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20221219BHJP
【FI】
B61C17/00 B
B61C17/00 E
B61C17/00 D
H02M7/48 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018174184
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020044949
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 宏和
(72)【発明者】
【氏名】岡田 洋祐
(72)【発明者】
【氏名】青谷 智明
(72)【発明者】
【氏名】横井 浩司
(72)【発明者】
【氏名】矢野 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 将光
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-057466(JP,A)
【文献】特開2017-135953(JP,A)
【文献】実開昭53-078969(JP,U)
【文献】実開昭59-009501(JP,U)
【文献】特開平02-194597(JP,A)
【文献】特開2008-295142(JP,A)
【文献】国際公開第2017/088056(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61C 17/00
H02M 7/42- 7/98
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に搭載される電力変換素子部を含む電力変換ユニットと、
内部に前記電力変換ユニットが配置され、外部からの空気を取り入れる給気口と、前記給気口から取り入れた空気を外部に排気する排気口とを含む筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記給気口から前記排気口までを繋ぐ導風通路と、
前記導風通路内に配置され、前記導風通路に前記給気口から前記排気口への空気の流れを発生させる冷却ファンとを備え、
前記導風通路は、前記電力変換ユニットの内部を通過するユニット通路部と、前記給気口から流入した空気の空気流れ方向を曲げて前記ユニット通路部に流入させる第1曲がり部とを含み、
前記冷却ファンは、前記導風通路内において、前記第1曲がり部よりも下流側に配置されるとともに、前記導風通路における空気流れ方向に直交する方向の所定位置に配置され
前記電力変換ユニットは、空気流れ方向に沿って延びるように設けられた仕切壁を含み、
前記仕切壁は、前記ユニット通路部の空気流れ方向に直交する方向の略中央部に設けられ、
前記冷却ファンは、前記仕切壁の空気流れ方向の下流側に配置されている、鉄道車両用電力変換装置。
【請求項2】
前記電力変換ユニットは、電力が供給されることにより発熱する前記電力変換素子部に接続され、前記ユニット通路部に配置される放熱フィン部をさらに含み、
前記電力変換素子部は、前記ユニット通路部の前記給気口側の第1位置および前記給気口側とは反対側の第2位置の両方に配置され、
前記冷却ファンの中央部は、前記仕切壁よりも前記給気口側にずれた前記所定位置に配置されている、請求項に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項3】
前記仕切壁は、空気流れ方向の前記排気口側の端部に形成され、空気流れ方向とは反対方向に切り欠いた排気側切欠部を有し、
前記排気側切欠部の空気流れ方向とは反対側の端部は、前記冷却ファンの上流側に離間して配置されている、請求項またはに記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項4】
前記仕切壁は、空気流れ方向の前記給気口側の端部に形成され、空気流れ方向に切り欠いた給気側切欠部を有し、
前記給気側切欠部の空気流れ方向の端部は、前記電力変換ユニットの前記給気口側の端部よりも下流側に配置されている、請求項のいずれか1項に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項5】
前記排気口は、前記給気口が設けられる前記筐体の側面と同じ側面に設けられ、
前記導風通路は、前記ユニット通路部から流出した空気の空気流れ方向を曲げて前記排気口に流す第2曲がり部をさらに含み、
前記冷却ファンは、前記第2曲がり部の空気流れ方向の上流側の端部よりも、上流側に配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両用電力変換装置に関し、特に、鉄道車両に搭載される電力素子部を含む電力変換ユニットを備える鉄道車両用電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両に搭載される電力素子部を含む電力変換ユニットを備える鉄道車両用電力変換装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、電力が供給されることにより発熱する半導体素子(電力変換素子部)と、半導体素子を冷却する半導体冷却装置とを備える鉄道車両用の電力変換装置が開示されている。半導体冷却装置は、半導体素子が内部に配置される装置筐体(筐体)と、装置筐体中に形成され、走行方向に沿って直線的に延びる風洞(導風通路)と、風洞外の半導体素子が取り付けられ、一部が風洞中に配置される放熱フィンと、風洞の走行方向の一方側の開口および他方側の開口の各々に配置される電動送風機とを含んでいる。
【0004】
上記特許文献1に記載の鉄道車両用の電力変換装置では、鉄道車両の走行方向に合わせて一方側または他方側に配置された電動送風機により、走行方向とは反対方向に流れる風を放熱フィンに当てることによって、放熱フィンが冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-295142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された鉄道車両用の電力変換装置では、風洞が直線的であるので、風洞内に侵入した異物が放熱フィンおよび電動送風機に付着しやすいという不都合がある。このため、異物に起因して半導体素子(電力変換素子部)の冷却効率の低下が生じてしまうという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、電力変換素子部を含む電力変換ユニットの冷却効率の低下を抑制させることが可能な鉄道車両用電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の一第1の局面による鉄道車両用電力変換装置は、鉄道車両に搭載される電力変換素子部を含む電力変換ユニットと、内部に電力変換ユニットが配置され、外部からの空気を取り入れる給気口と、給気口から取り入れた空気を外部に排気する排気口とを含む筐体と、筐体内に設けられ、給気口から排気口までを繋ぐ導風通路と、導風通路内に配置され、導風通路に給気口から排気口への空気の流れを発生させる冷却ファンとを備え、導風通路は、電力変換ユニットの内部を通過するユニット通路部と、給気口から流入した空気の空気流れ方向を曲げてユニット通路部に流入させる第1曲がり部とを含み、冷却ファンは、導風通路内において、第1曲がり部よりも下流側に配置されるとともに、導風通路における空気流れ方向に直交する方向の所定位置に配置され、電力変換ユニットは、空気流れ方向に沿って延びるように設けられた仕切壁を含み、仕切壁は、ユニット通路部の空気流れ方向に直交する方向の略中央部に設けられ、冷却ファンは、仕切壁の空気流れ方向の下流側に配置されている
【0009】
この発明の一の局面による鉄道車両用電力変換装置では、上記のように、導風通路は、電力変換ユニットの内部を通過するユニット通路部と、給気口から流入した空気の空気流れ方向を曲げてユニット通路部に流入させる第1曲がり部とを含んでいる。また、冷却ファンは、導風通路内において、第1曲がり部よりも下流側に配置されるとともに、導風通路における空気流れ方向に直交する方向の所定位置に配置されている。これにより、第1曲がり部に空気が当たることにより、異物が導風通路内にたとえ進入したとしても、第1曲がり部の下流のユニット通路部および冷却ファンに到達するのを抑制することができる。この結果、電力変換ユニットの冷却効率の低下を抑制することができる。また、冷却ファンにより、第1曲がり部を設けたとしても、ユニット通路部に空気を確実に流入させることができる。また、仕切壁により仕切られたユニット通路部の通路では、仕切壁の下流側に配置された冷却ファンにより空気の流れが生じた際に、空気の空気流れ方向に直交する方向の往来が仕切壁により抑制されることによって、空気を確実に空気流れ方向に向けて流すことができる。なお、略中央部とは、ユニット通路部の空気流れ方向に直交する方向の中央部および中央部付近を示す広い概念である。
【0011】
上記ユニット通路部に仕切壁が設けられた鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、電力変換ユニットは、電力が供給されることにより発熱する電力変換素子部に接続され、ユニット通路部に配置される放熱フィン部をさらに含み、電力変換素子部は、ユニット通路部の給気口側の第1位置および給気口側とは反対側の第2位置の両方に配置され、冷却ファンの中央部は、仕切壁よりも給気口側にずれた所定位置に配置されている。このように構成すれば、第1曲がり部に起因して、仕切壁により仕切られたユニット通路部の給気口側とは反対側の部分に風量(空気の流量)が偏るのを抑制することができる。これにより、第1位置および第2位置に配置された電力変換素子部に接続された放熱フィン部を満遍なく冷却することができる。
【0012】
上記ユニット通路部に仕切壁が設けられた鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、仕切壁は、空気流れ方向の排気口側の端部に形成され、空気流れ方向とは反対方向に切り欠いた排気側切欠部を有し、排気側切欠部の空気流れ方向とは反対側の端部は、冷却ファンの上流側に離間して配置されている。このように構成すれば、冷却ファンと仕切壁の空気流れ方向側の端部との間に隙間ができるので、隙間部分で仕切壁により分割された空気を合流させることができる。これにより、冷却ファンによる仕切壁により分割された空気の吸込みを容易にすることができる。
【0013】
上記ユニット通路部に仕切壁が設けられた鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、仕切壁は、空気流れ方向の給気口側の端部に形成され、空気流れ方向に切り欠いた給気側切欠部を有し、給気側切欠部の空気流れ方向の端部は、電力変換ユニットの給気口側の端部よりも下流側に配置されている。このように構成すれば、風量が大きく偏る第1曲がり部の下流側において、仕切壁によって仕切られたユニット通路部の上流側端部の空気を給気側切欠部を介して空気の流れ方向に直交する方向に往来させることができるので、第1曲がり部に起因する空気の流量の偏りを緩和して、ユニット通路部内の風量のバランスを向上させることができる。
【0014】
上記ユニット通路部に仕切壁が設けられた鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、排気口は、給気口が設けられる筐体の側面と同じ側面に設けられ、導風通路は、ユニット通路部から流出した空気の空気流れ方向を曲げて排気口に流す第2曲がり部をさらに含み、冷却ファンは、第2曲がり部の空気流れ方向の上流側の端部よりも、上流側に配置されている。このように構成すれば、第2曲がり部に空気が当たることによって空気の流速を遅くすることができるので、排気口から空気が逆流したとしても冷却ファンにかかる負荷を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、上記のように、電力変換素子部を含む電力変換ユニットの冷却効率の低下を抑制することが可能な鉄道車両用電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による鉄道車両の一例を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態による鉄道車両の床下を下方から視たときの電気機器の配置図である。
図3】本発明の一実施形態による電力変換装置の正面図である。
図4】本発明の一実施形態による電力変換装置の背面図である。
図5図3の100-100線に沿った断面図である。
図6図6(A)はインバータユニットを分解した分解図である。図6(B)はインバータユニットの第1カバー部を示した正面図である。図6(C)はインバータユニットの仕切壁を示した正面図である。
図7】本発明の一実施形態による電力変換装置の平面図である。
図8】本発明の一実施形態による電力変換装置の比較例を示した断面図である。
図9】本発明の一実施形態による電力変換装置のユニット通路部内の風量を示した断面図である。
図10】本発明の一実施形態による電力変換装置のユニット通路部内の風量のシミュレーションを行った際の数値および風量の計測位置を示した模式図である。
図11】本発明の一実施形態による電力変換装置におけるユニット通路部内の風量の第1シミュレーション結果を示した表である。
図12】本発明の一実施形態による電力変換装置におけるユニット通路部内の風量の第1シミュレーション結果を示したグラフである。
図13】本発明の一実施形態による電力変換装置におけるユニット通路部内の風量の第2シミュレーション結果を示した表である。
図14】本発明の一実施形態による電力変換装置におけるユニット通路部内の風量の第2シミュレーション結果を用いて第2測定位置と第5測定位置との風量バランスの変化を示したグラフである。
図15】本発明の一実施形態の第1変形例による電力変換装置を示した断面図である。
図16】本発明の一実施形態の第2変形例による電力変換装置を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1図10を参照して、本発明の一実施形態による鉄道車両1用の電力変換装置8の構成について説明する。なお、電力変換装置8は、特許請求の範囲の「鉄道車両用電力変換装置」の一例である。
【0019】
まず、電力変換装置8を備える鉄道車両1の概略構成について説明する。鉄道車両1は、図1に示すように、車体2と、架線3に供給されている電力を受電(集電)するパンタグラフ4と、架線3からの電力を利用して駆動輪5を回転させる誘導電動機6(破線で示す)と、空調機や制御機器などその他の複数の機器類7とを備えている。鉄道車両1は、走行時において、架線3からの電力を半導体素子のスイッチングにより変換して、誘導電動機6の回転制御を行う電力変換装置8を備えている。以下では、鉄道車両1の走行方向をX軸方向とし、X軸方向と直交する枕木方向をY軸方向とし、X軸方向およびY軸方向に共に直交する上下方向をZ軸方向として説明を行う。
【0020】
図2に示すように、電力変換装置8は、下方からの平面視において空調機や制御機器などその他の複数の機器類7に囲まれた位置に配置されている。そして、電力変換装置8は、図3に示すように、電力変換装置8は、車体2の床下空間において車体2の下面2aに吊り下げられて固定されている。また、電力変換装置8は、筐体8aと、導風通路8bと、インバータユニット8cと、冷却ファン8dとを備えている。なお、インバータユニット8cは、特許請求の範囲の「電力変換ユニット」の一例である。
【0021】
筐体8aは、図3および図4に示すように、インバータユニット8cを収納するように構成されている。具体的には、筐体8aは、内部に収納空間が形成された箱形形状に形成されている。筐体8aでは、内部の収納空間に複数(2個)のインバータユニット8cが配置されている。筐体8aは、Y2側の面部に収納空間に半導体装置を挿入するための収納口11を有している。筐体8aには、収納口11を閉塞する蓋部12が設けられている。蓋部12は、複数の留め具13により筐体8aに取り付けられている。
【0022】
筐体8aは、図4に示すように、外部からの空気を取り入れる給気口14と、給気口14から取り入れた空気を外部に排気する排気口15とを有している。筐体8aには、複数(2個)のインバータユニット8cに対応させて、給気口14および排気口15の組が複数(2個)配置されている。複数の給気口14および排気口15の組は、それぞれ、同じ構成であるので、X1側に配置された給気口14および排気口15の組について説明する。
【0023】
給気口14および排気口15は、筐体8aのY1側の面部に形成されている。すなわち、排気口15は、給気口14が設けられる筐体8aの面部(側面部)と同じ面部に設けられている。ここで、給気口14および排気口15は、それぞれ、筐体8aのY1側の面部を貫通する複数の楕円形状の貫通孔Hを有している。給気口14は、筐体8aのY1側の面部のZ2側の部分に配置されている。排気口15は、筐体8aのY1側の面部のZ1側の部分に配置されている。
【0024】
図3に示すように、筐体8aには、車体2の下面2aに固定するための固定部16が設けられている。固定部16は、筐体8aのZ1側の面部に複数(2個)設けられている。複数の固定部16には、それぞれ、筐体8aを車体2の下面2aに固定するための締結具を挿通させる挿通孔16a(図7参照)が複数(2個)形成されている。
【0025】
導風通路8bは、図5に示すように、給気口14から流入した空気を排気口15まで導くように構成されている。具体的には、導風通路8bは、給気側通路部21と、第1曲がり部22と、ユニット通路部23と、排気側通路部24とを有している。なお、導風通路8bは、図3に示すように、複数のインバータユニット8cに対応して複数配置されている。複数の導風通路8bは、それぞれ、同じ構成を有しているので、以下ではX1側のインバータユニット8cに対応する導風通路8bについて説明する。
【0026】
図5に示すように、給気側通路部21は、筐体8aに設けられ、給気口14から流入した空気を第1曲がり部22に流入させるように構成されている。給気側通路部21は、給気口14から第1曲がり部22に行くにしたがい、空気流れ方向に直交する方向の断面積が小さくなる。
【0027】
第1曲がり部22は、インバータユニット8cに設けられ、給気側通路部21から流入した空気をユニット通路部23に流入させるように構成されている。第1曲がり部22は、給気側通路部21から流入した空気の空気流れ方向(Y1方向の流れ)を曲げて、空気をユニット通路部23に流入させる。第1曲がり部22では、給気口14側とは反対側の通路壁部22aが、給気口14側とは反対側に向かうにしたがいユニット通路部23側に傾斜する。第1曲がり部22では、空気流れ方向の上流側端部が給気側通路部21の下流側端部に接続される。第1曲がり部22では、ユニット通路部23に連通するように、空気流れ方向の下流側端部がユニット通路部23の上流側端部に接続されている。
【0028】
ユニット通路部23は、インバータユニット8cに設けられ、第1曲がり部22から流入した空気を排気側通路部24に流出させるように構成されている。ユニット通路部23は、Z1方向に延びる直線状の通路である。ユニット通路部23では、排気側通路部24に連通するように、空気流れ方向の下流側の端部が排気側通路部24に接続されている。なお、ユニット通路部23の詳細な構成については後に説明する。
【0029】
排気側通路部24は、筐体8aに設けられ、ユニット通路部23から流入した空気を排気口15から排出させるように構成されている。具体的には、排気側通路部24は、第2曲がり部24aと、排出通路部24bとを有している。
【0030】
第2曲がり部24aは、ユニット通路部23から流入した空気の空気流れ方向(Z1方向の流れ)を曲げて、排出通路部24bに流入させる。第2曲がり部24aでは、ユニット通路部23に連通するように、空気流れ方向の上流側端部がユニット通路部23の下流側端部に接続される。第2曲がり部24aでは、空気流れ方向に排気口15側とは反対側の通路壁部24cが、排気口15側に向かうにしたがいユニット通路部23側とは反対側に傾斜する。排出通路部24bは、第2曲がり部24aと連通し、第2曲がり部24aから流入した空気を排気口15から排気するように構成されている。
【0031】
インバータユニット8cは、コンバータ部(図示せず)およびコンデンサ(図示せず)により整流された直流を、交流に変換して出力するように構成されている。ここで、図3に示すように、インバータユニット8cは、筐体8a内にX方向に複数(2個)並んで配置されている。複数のインバータユニット8cは、同様の構成を有しているので、以下では、X1側に配置されたインバータユニット8cについてのみ説明を行う。
【0032】
具体的には、図5に示すように、インバータユニット8cは、第1ケース部31と、第2ケース部32と、第1電力変換素子部33と、第2電力変換素子部34と、第1放熱フィン部35と、第2放熱フィン部36とを有している。
【0033】
第1ケース部31は、断面C字状の箱形形状に形成されている。第1ケース部31は、給気口14側(Z2側)の底面部31a、排気口15側(Z1側)の天面部31b、および、底面部31aと天面部31bとを接続する複数の側面部31cとを有している。複数の側面部31cは、X1側、X2側およびY1側の側面部31cを有しているが、Y2側の側面部31cは有していない。すなわち、第1ケース部31は、Y2方向に開口31dを有している。
【0034】
第1ケース部31の天面部31bは、図6(A)に示すように、Y2側の端部に、Y1方向に延びる第1切欠41、第2切欠42および第3切欠43を有している。第1ケース部31の天面部31bにおいて、第1切欠41、第2切欠42および第3切欠43は、X2側からこの順に配置されている。ここで、第1ケース部31の底面部31aも、第1ケース部31の天面部31bと同様の構成を有しているので説明は省略するが、同様の第1切欠、第2切欠および第3切欠が形成されている。また、第2ケース部32は、第1ケース部31と同様の構成を有しているので説明を省略する。
【0035】
第1電力変換素子部33は、図5に示すように、第1ケース部31の内部に配置されている。第1電力変換素子部33は、半導体素子およびコンデンサを含んでおり、電力が供給されることにより発熱する。第1電力変換素子部33は、ユニット通路部23の給気口14側と反対側の第1位置A1に配置されている。第1電力変換素子部33は、ユニット通路部23にY方向に隣接している。また、第2電力変換素子部34は、ユニット通路部23の給気口14の第2位置A2に配置されている。第2電力変換素子部34は、ユニット通路部23にY方向に隣接している。なお、第2電力変換素子部34は、第1電力変換素子部33と同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0036】
第1放熱フィン部35は、第1電力変換素子部33において発生した熱をユニット通路部23に放熱させるように構成されている。第1放熱フィン部35は、図6(A)に示すように、金属製(たとえば、アルミニウム、銅など)により形成され、Y2方向に突出する凸部51を複数有している。第1放熱フィン部35の複数の凸部51は、それぞれ、X方向に等間隔に並んでいる。また、第1放熱フィン部35の複数の凸部51の各々の先端部は、天面部31bの第1切欠41および第3切欠43のY1側の端部よりもY1側に配置されている。なお、第2放熱フィン部36は、第1放熱フィン部35と同様の構成を有しているので説明を省略する。
【0037】
インバータユニット8cは、図5に示すように、第1カバー部37と、第2カバー部38と、仕切壁39とを有している。第1カバー部37は、第1ケース部31のY2方向の開口31dに設けられている。また、第1カバー部37は、図6(A)に示すように、第1ケース部31の天面部31bの第2切欠42よりもY1側に配置されている。第1カバー部37は、図6(B)に示すように、内側に第1放熱フィン部35の複数の凸部51が挿通する挿通孔37aが形成されている。このように、第1カバー部37は、第1ケース部31のY2方向の開口31dのうち第1放熱フィン部35との間に形成された隙間を覆う。なお、第2カバー部38は、第1カバー部37と同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0038】
仕切壁39は、図5および図6(C)に示すように、ユニット通路部23を仕切ることにより、ユニット通路部23内の空気の流れを分割するように構成されている。具体的には、仕切壁39は、仕切本体部61と、第1排気側突出部62と、第2排気側突出部63と、第1給気側突出部64と、第2給気側突出部65と、排気側切欠部66と、給気側切欠部67とを有している。
【0039】
仕切本体部61は、第1ケース部31のX方向の幅と同じ幅を有している。仕切本体部61は、第1ケース部31のZ方向の高さと同じ高さを有している。第1排気側突出部62は、仕切本体部61のZ1側の端部におけるX1側の端部からZ1方向に突出している。第2排気側突出部63は、仕切本体部61のZ1側の端部におけるX2側の端部からZ1方向に突出している。第1給気側突出部64は、仕切本体部61のZ2側の端部におけるX1側の端部からZ2方向に突出している。第2給気側突出部65は、仕切本体部61のZ2側の端部におけるX2側の端部からZ2方向に突出している。
【0040】
排気側切欠部66は、仕切本体部61の空気流れ方向の排気口15側の端部に形成され、空気流れ方向とは反対方向に切り欠かれている。すなわち、排気側切欠部66は、仕切本体部61のZ1方向の端部をZ2方向に窪ませることにより形成されている。また、排気側切欠部66のX方向の幅は、排気側切欠部66のZ方向の長さよりも大きく形成されている。排気側切欠部66は、第1排気側突出部62と第2排気側突出部63との間に配置されている。
【0041】
給気側切欠部67は、仕切本体部61の空気流れ方向の給気口14側の端部に形成され、空気流れ方向に切り欠かれている。すなわち、給気側切欠部67は、仕切本体部61のZ2方向の端部をZ1方向に窪ませることにより形成されている。また、給気側切欠部67のX方向の幅は、給気側切欠部67のZ方向の長さよりも大きく形成されている。給気側切欠部67は、第1給気側突出部64と第2給気側突出部65との間に配置されている。
【0042】
ここで、図5に示すように、第1ケース部31、第1カバー部37、第2ケース部32および第2カバー部38によって、ユニット通路部23が形成されている。また、図6(A)に示すように、第1ケース部31の天面部31bの第2切欠42と第2ケース部32の天面部31bの第2切欠42とによりユニット通路部23の流出口が形成されている。図示はしないが、ユニット通路部23の流入口も同様に、第1ケース部31の底面部31aの第2切欠42と第2ケース部32の底面部の第2切欠とにより形成されている。
【0043】
また、給気側切欠部67の空気流れ方向の端部は、インバータユニット8cの給気口14側の端部よりも空気流れ方向の下流側に配置されている。排気側切欠部66の空気流れ方向とは反対側の端部は、後述する冷却ファン8dの空気流れ方向の上流側に配置されている。さらに、仕切壁39の仕切本体部61が、ユニット通路部23の空気流れ方向に直交する方向の略中央部に配置されている。また、仕切壁39は、ユニット通路部23において空気流れ方向に沿って延びている。
【0044】
冷却ファン8dは、図5および図7に示すように、導風通路8b内に配置され、導風通路8bに給気口14から排気口15への空気の流れを発生させるように構成されている。具体的には、冷却ファン8dは、インバータユニット8cの第1ケース部31および第2ケース部32に固定されるフレーム部71と、フレーム部71の内部に取り付けられる羽部72とを有している。冷却ファン8dでは、ユニット通路部23の流出口に一部が挿入された状態で固定されることにより、羽部72がユニット通路部23内に配置される。ここで、冷却ファン8dは、導風通路8b内において、第1曲がり部22よりも空気流れ方向の下流側に配置されている。また、冷却ファン8dは、導風通路8b内において、第2曲がり部24aよりも空気流れ方向の上流側に配置されている。すなわち、冷却ファン8dは、第2放熱フィン部36の下流側の近傍に配置されている。また、冷却ファン8dは、仕切壁39の空気流れ方向の下流側に配置されている。
【0045】
〈冷却ファンの位置〉
上記した導風通路8bは、ユニット通路部23を仕切壁39で分割することにより、給気口14とは反対側に設けられる第1分割通路部23aと、給気口14側に設けられる第2分割通路部23bとを有している。ここで、導風通路8bでは、図8に示す比較例のように、冷却ファン8dをユニット通路部23の空気流れ方向に直交する方向の略中央部に配置すると、第1曲がり部22に起因して、第1分割通路部23aおよび第2分割通路部23bの各々を流れる空気の風量に偏りが生じてしまう。この場合、給気口14から第2分割通路部23bよりも離れた位置に配置された第1分割通路部23aの風量が大きくなる。
【0046】
そこで、本実施形態の電力変換装置8では、図9に示すように、導風通路8bにおける空気流れ方向に直交する方向の中央部よりも給気口14側にずれた所定位置Dに、冷却ファン8dが配置される。
【0047】
具体的には、冷却ファン8dの空気流れ方向に直交する方向の中央部は、仕切壁39よりも給気口14側にずれた所定位置Dに配置されている。また、冷却ファン8dの空気流れ方向に直交する方向の中央部は、第2分割通路部23bの空気流れ方向に直交する方向における中央部よりも、仕切壁39側に配置されている。
【0048】
これにより、第1分割通路部23aに対向する冷却ファン8dの面積が、冷却ファン8dが給気口14側にずれた分だけ小さくなる。この結果、冷却ファン8dにより第1分割通路部23a内の空気を排気口15側に引く力が小さくなるので、第1曲がり部22から第1分割通路部23a内に引く空気の流量が小さくなる。また、第2分割通路部23bに対向する冷却ファン8dの面積が、冷却ファン8dが給気口14側にずれた分だけ大きくなる。この結果、冷却ファン8dにより第2分割通路部23b内の空気を排気口15側に引く力が大きくなるので、第1曲がり部22から第2分割通路部23b内に引く空気の流量が大きくなる。
【0049】
このように、電力変換装置8では、冷却ファン8dの位置を給気口14側にずらすことにより、第1分割通路部23aの風量と第2分割通路部23bの風量(空気の流量)とのバランスが調整されるので、第1放熱フィン部35による第1電力変換素子部33の放熱と、第2放熱ファン部による第2電力変換素子部34の放熱とのバランスが調整される。
【0050】
(ユニット通路部の風量のシミュレーション)
次に、上記した電力変換装置8において、図10図14を参照して、冷却ファン8dを給気口14側にずらしたときのシミュレーションについて説明する。
【0051】
図10にシミュレーションを行ったときの電力変換装置8の各部の寸法を示す。筐体8aの底面部31aから冷却ファン8dのZ2側の端部までの寸法L1は、367.5[mm]であり、冷却ファン8dの羽部72のZ方向の寸法L2は、25[mm]である。また、冷却ファン8dの羽部72のY方向の寸法L3は、60[mm]である。また、排出通路部24bのY方向の長さL4は、120[mm]である。また、排気口15から冷却ファン8dの羽部72のY2側の端部までの長さL5は、137.5[mm]である。また、ユニット通路部23のY方向の幅L6は、95[mm]である。
【0052】
また、ユニット通路部23において風量を算出する位置を、第1測定位置P1、第2測定位置P2、第3測定位置P3、第4測定位置P4、第5測定位置P5および第6測定位置P6とする。このとき、第1測定位置P1は、第1分割通路部23aの排気口15側の位置である。第2測定位置P2は、第1分割通路部23aのZ方向の中央部の位置である。第3測定位置P3は、第1分割通路部23a部の給気口14側の位置である。第4測定位置P4は、第2分割通路部23bの排気口15側の位置である。第5測定位置P5は、第2分割通路部23bのZ方向の中央部の位置である。第6測定位置P6は、第2分割通路部23bの給気口14側の位置である。
【0053】
シミュレーションでは、冷却ファン8dが基準位置Tに位置する場合および冷却ファン8dを基準位置T(仕切壁39の中央位置)からY2側に所定距離ずらした場合の、第1測定位置P1、第2測定位置P2、第3測定位置P3、第4測定位置P4、第5測定位置P5および第6測定位置P6のそれぞれの位置における、通路の断面を通過する風量を算出した。
【0054】
〈第1シミュレーション結果〉
次に、第1シミュレーション結果について、図11および図12を参照して説明する。
【0055】
冷却ファン8dを基準位置Tに配置したときは、図11に示すような数値となり、第1分割通路部23aの風量の平均値が約0.0028[m3/s]、第2分割通路部23bの風量の平均値が約0.0013[m3/s]になった。このように、第1分割通路部23aの平均風量と第2分割通路部23bの平均風量との差が約0.0015[m3/s]であるため、ユニット通路部23内の風量のバランスは崩れていた。
【0056】
冷却ファン8dを基準位置Tから2.5[mm]ずらした位置に配置したときは、図11に示すような数値となり、第1分割通路部23aの風量の平均値が約0.0025[m3/s]、第2分割通路部23bの風量の平均値が約0.0016[m3/s]になった。このように、第1分割通路部23aの平均風量と第2分割通路部23bの平均風量との差が約0.0009[m3/s]であるため、ユニット通路部23内の風量のバランスは、基準位置Tの場合よりも改善した。
【0057】
冷却ファン8dを基準位置Tから5[mm]ずらした位置に配置したときは、図11に示すような数値となり、第1分割通路部23aの風量の平均値が約0.0022[m3/s]、第2分割通路部23bの風量の平均値が約0.0019[m3/s]になった。このように、第1分割通路部23aの平均風量と第2分割通路部23bの平均風量との差が約0.003[m3/s]であるため、ユニット通路部23内の風量のバランスは、基準位置Tおよび2.5[mm]ずらした場合よりも改善した。
【0058】
冷却ファン8dを基準位置Tから7.5[mm]ずらした位置に配置したときは、図11に示すような数値となり、第1分割通路部23aの風量の平均値が約0.0017[m3/s]、第2分割通路部23bの風量の平均値が約0.0022[m3/s]になった。このように、第1分割通路部23aの平均風量と第2分割通路部23bの平均風量との差が約0.005[m3/s]であるため、ユニット通路部23内の風量のバランスは、基準位置Tから5[mm]ずらした場合よりも悪化した。
【0059】
上記した第1シミュレーション結果を、図12においてグラフにより表示している。グラフから、第1分割通路部23aの風量の大きさは、冷却ファン8dが基準位置Tからずれる量が大きくなるにしたがい小さくなることがわかる。また、グラフから、第2分割通路部23bの風量の大きさは、冷却ファン8dが基準位置Tからずれる量が大きくなるにしたがい大きくなることがわかる。このことから、第1曲がり部22が位置するY1側から給気口14が位置するY2側に、冷却ファン8dを移動させることにより、第1分割通路部23aの風量が大きくなり、第2分割通路部23bの風量が小さくなることが確認できた。そして、第1分割通路部23aの風量は、基準位置Tから5[mm]ずれた位置を境にして、第2分割通路部23bの風量よりも小さくなった。
【0060】
第1シミュレーション結果から、冷却ファン8dは、基準位置Tから約5[mm]前後のずれた位置に配置することにより、ユニット通路部23の風量のバランスが最適となることがわかる。そして、冷却ファン8dをずらし過ぎると、第2分割通路部23bの風量が大きくなってしまうためユニット通路部23の風量のバランスは崩れてしまうことがわかる。
【0061】
〈第2シミュレーション結果〉
次に、第2シミュレーション結果について、図13および図14を参照して説明する。第2シミュレーション結果は、第1シミュレーション結果とは別途行ったシミュレーションであり、冷却ファン8dをずらす量が第1シミュレーション結果の場合とは異なっている。
【0062】
また、冷却ファン8dを基準位置Tに配置したときの風量バランスを求めた。風量バランスは、|第2測定位置P2の風量-第5測定位置P5の風量|/(第2測定位置P2の風量+第5測定位置P5の風量)×100という計算により求まる百分率の値である。
【0063】
冷却ファン8dを基準位置Tに配置した場合、風量バランスは、図13に示した数値に基づいて算出することにより、約25%になった。また、冷却ファン8dを基準位置Tから2[mm]ずらした場合、風量バランスは、約14%になった。また、冷却ファン8dを基準位置Tから4[mm]ずらした場合、風量バランスは、約5%となった。また、冷却ファン8dを基準位置Tから6[mm]ずらした場合、風量バランスは、約18%となった。また、冷却ファン8dを基準位置Tから8[mm]ずらした場合、風量バランスは、約25%となった。また、冷却ファン8dを基準位置Tから10[mm]ずらした場合、風量バランスは、約28%となった。
【0064】
上記した風量バランスの結果をグラフにしたのが図14である。グラフから、ユニット通路部23の風量のバランスは、冷却ファン8dの基準位置Tからずれる量を大きくすると改善していくことがわかる。しかし、ユニット通路部23の風量のバランスは、冷却ファン8dの基準位置Tからずれる量を適正値(この場合5[mm]前後)よりも大きくすると急激に悪化することがわかる。
【0065】
第2シミュレーション結果から、冷却ファン8dは、基準位置Tから約5[mm]前後のずれた位置(ずれ量/ユニット通路部23の幅L6が5/95)に配置することにより、ユニット通路部23の風量のバランスが最適となることがわかる。また、図14のグラフから、風量のアンバランスを5%以内に抑制したい場合には、冷却ファン8dの基準位置Tからのずれ量を、4[mm]以上5.2[mm]以下の値(ずれ量/ユニット通路部23の幅L6が4/95以上5.2/95)とすればよいと考えられる。また、風量のアンバランスを10%以内に抑制したい場合には、冷却ファン8dの基準位置Tからのずれ量を、2.5[mm]以上5.5[mm]以下の値(ずれ量/ユニット通路部23の幅L6が2.5/95以上5.5/95以下)とすればよいと考えられる。また、風量のアンバランスを13%以内に抑制したい場合には、冷却ファン8dの基準位置Tからのずれ量を、2[mm]以上5.6[mm]以下の値(ずれ量/ユニット通路部の幅L6が2/95以上5.6/95以下)とすればよいと考えられる。
【0066】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
本実施形態では、上記のように、導風通路8bは、インバータユニット8cの内部を通過するユニット通路部23と、給気口14から流入した空気の空気流れ方向を曲げてユニット通路部23に流入させる第1曲がり部22とを含んでいる。また、冷却ファン8dは、導風通路8b内において、第1曲がり部22よりも下流側に配置されるとともに、導風通路8bにおける空気流れ方向に直交する方向の所定位置Dに配置されている。これにより、第1曲がり部22に空気が当たることにより、異物が導風通路8b内にたとえ進入したとしても、第1曲がり部22の下流のユニット通路部23および冷却ファン8dに到達するのを抑制することができる。この結果、インバータユニット8cの冷却効率の低下を抑制することができる。また、冷却ファン8dにより、第1曲がり部22を設けたとしても、ユニット通路部23に空気を確実に流入させることができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、インバータユニット8cは、ユニット通路部23の空気流れ方向に直交する方向の略中央部に、空気流れ方向に沿って延びるように設けられた仕切壁39を含んでいる。冷却ファン8dは、仕切壁39の空気流れ方向の下流側に配置されている。これにより、仕切壁39により仕切られたユニット通路部23の通路では、仕切壁39の下流側に配置された冷却ファン8dにより空気の流れが生じた際に、空気の空気流れ方向に直交する方向の往来が仕切壁39により抑制されることによって、空気を確実に空気流れ方向に向けて流すことができる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、インバータユニット8cは、電力が供給されることにより発熱する第2電力変換素子部34のそれぞれに接続され、ユニット通路部23に配置される第1放熱フィン部35および第2放熱フィン部36を含んでいる。第1電力変換素子部33および第2電力変換素子部34は、それぞれ、ユニット通路部23の給気口14側の第1位置A1および給気口14側とは反対側の第2位置A2の両方に配置され、冷却ファン8dの中央部は、仕切壁39よりも給気口14側にずれた所定位置Dに配置されている。これにより、第1曲がり部22に起因して、仕切壁39により仕切られたユニット通路部23の給気口14側とは反対側の部分に風量(空気の流量)が偏るのを抑制することができる。この結果、第1位置A1および第2位置A2のそれぞれに配置された第1電力変換素子部33に接続された第1放熱フィン部35および第34電力変換素子部に接続された第2放熱フィン部36を満遍なく冷却することができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、仕切壁39は、空気流れ方向の排気口15側の端部に形成され、空気流れ方向とは反対方向に切り欠いた排気側切欠部66を有している。排気側切欠部66の空気流れ方向とは反対側の端部は、冷却ファン8dの上流側に離間して配置されている。これにより、冷却ファン8dと仕切壁39の空気流れ方向側の端部との間に隙間ができるので、隙間部分で仕切壁39により分割された空気を合流させることができる。この結果、冷却ファン8dによる仕切壁39により分割された空気の吸込みを容易にすることができる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、仕切壁39は、空気流れ方向の給気口14側の端部に形成され、空気流れ方向に切り欠いた給気側切欠部67を有している。給気側切欠部67の空気流れ方向の端部は、インバータユニット8cの給気口14側の端部よりも下流側に配置されている。これにより、風量が大きく偏る第1曲がり部22の下流側において、仕切壁39によって仕切られたユニット通路部23の上流側端部の空気を給気側切欠部67を介して空気の流れ方向に直交する方向に往来させることができるので、第1曲がり部22に起因する空気の流量の偏りを緩和して、ユニット通路部23内の風量のバランスを向上させることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、排気口15は、給気口14が設けられる筐体8aの側面と同じ側面に設けられている。導風通路8bは、ユニット通路部23から流出した空気の空気流れ方向を曲げて排気口15に流す第2曲がり部24aを含んでいる。冷却ファン8dは、第2曲がり部24aの空気流れ方向の上流側の端部よりも、上流側に配置されている。これにより、第2曲がり部24aに空気が当たることによって空気の流速を遅くすることができるので、排気口15から空気が逆流したとしても冷却ファン8dにかかる負荷を小さくすることができる。
【0073】
[変形例]
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0074】
たとえば、上記本実施形態では、導風通路8bが、第1曲がり部22と第2曲がり部24aとを有する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、導風通路は、図15に示す第1変形例のように、第1曲がり部22のみを有するL字形状の導風通路208bであってもよい。
【0075】
また、上記本実施形態では、インバータユニット8c内に、第1電力変換素子部33がユニット通路部23の給気口14側とは反対側に配置され、第2電力変換素子部34がユニット通路部23の給気口14側に配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図16に示す第2変形例のように、インバータユニット308c内に、第1電力変換素子部33のみが配置されていてもよい。この場合、冷却ファン8dは、ユニット通路部23のY方向の中央部、または、ユニット通路部23のY方向の中央部よりもY1側に配置されることが好ましい。また、図示はしないが、インバータユニット内に、第2電力変換素子部のみが配置されていてもよい。この場合、冷却ファンは、ユニット通路部のY方向の中央部、または、ユニット通路部のY方向の中央部よりもY2側に配置されることが好ましい。これらにより、ユニット通路部23内の第1曲がり部22に起因する風量の偏りを利用して、第1放熱フィン部35または第2放熱フィン部36の根元に風を当てることにより、第1電力変換素子部33または第2電力変換素子部34付近の第1放熱フィン部35または第2放熱フィン部36の部分に風を当てることが可能であるので、第1放熱フィン部35または第2放熱フィン部36の冷却効率を向上させることが可能である。
【0076】
また、上記本実施形態では、冷却ファン8dは、第2曲がり部24aの上流側の近傍に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、冷却ファンは第1曲がり部の下流側の近傍に配置されてもよい。
【0077】
また、上記本実施形態では、給気口14と排気口15とが、筐体8aの同じ側面部31cに配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、給気口と排気口とが、異なる側面に配置されてもよい。
【0078】
また、上記本実施形態では、筐体8aの側面部31cのZ2側に給気口14を配置し、筐体8aの側面部31cのZ1側に排気口15を配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、筐体の側面部のX1側およびX2側にそれぞれに、給気口および排気口を配置するなどしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、仕切壁39に排気側切欠部66および給気側切欠部67が形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、仕切壁に排気側切欠部および給気側切欠部が形成されていなくともよい。また、仕切壁に給気側切欠部のみを形成してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、車体2の床下空間に設置された電力変換装置8に対して本発明を適用したが、本発明はこれに限られない。たとえば、車体の屋根上に設置された電力変換装置に対して、本発明を適用してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、架線3からの電力を利用して走行する架空電車線方式の鉄道車両1の電力変換装置8に本発明を適用したが、本発明はこれに限られない。走行用のレールとは別に並行して第三の給電用レール(第三軌条)が敷設され、この第三軌条に対して車体側に設けられた集電靴(コレクターシュー)が擦って集電する第三軌条方式の鉄道車両の電力変換装置に対して本発明を適用してもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、架線3からの電力を利用して走行する架空電車線方式の鉄道車両1の電力変換装置8に本発明を適用したが、本発明はこれに限られない。すなわち、ディーゼル機関を直接的な駆動源とする気動車に搭載された電力変換装置の冷却や、ディーゼル機関の発電によって誘導電動機を回転させる電気式気動車などの鉄道車両の電力変換装置の冷却に対して、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0083】
8 電力変換装置
8a 筐体
8b 導風通路
8c インバータユニット(電力変換ユニット)
8d 冷却ファン
14 給気口
15 排気口
22 第1曲がり部
23 ユニット通路部
24a 第2曲がり部
34 第1電力変換素子部(電力変換素子部)
35 第2電力変換素子部(電力変換素子部)
35 第1放熱フィン部(放熱フィン部)
36 第2放熱フィン部(放熱フィン部)
39 仕切壁
66 排気側切欠部
67 給気側切欠部
P1 第1位置
P2 第2位置
T 所定位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16