(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】横架バランス装置及びそれを備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/72 20060101AFI20221219BHJP
B24B 47/12 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B23Q1/72 A
B24B47/12
(21)【出願番号】P 2018174494
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000174987
【氏名又は名称】三井精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098279
【氏名又は名称】栗原 聖
(72)【発明者】
【氏名】川田 英顕
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-025125(JP,U)
【文献】特開2011-031338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00-1/76;
B24B 47/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYZの3軸方向でのNC制御によりテーブル上に搭載されるワークへの3次元加工が可能であり、前記テーブル上に載置されたワークを滑台により前後(X軸方向)に移動させつつ、一対のコラム間に架設される横架に沿ってボールねじにより左右(Y軸方向)に主軸本体を移動させ、また、前記横架をボールねじにより左右のコラムに沿って上下動(Z軸方向)させることにより前記主軸の3次元移動を可能とする工作機械であって、前記主軸の下端には砥石とそれを回転させるための高周波モータが取り付けられたクイルが装着され、前記クイルを上下動(Z軸方向)させることによりワークへのチョッピング加工も可能な工作機械において、前記主軸を含む主軸頭が前記横架に沿って左右(Y軸方向)中心から両端側に移動する場合、前記主軸頭の重量の偏在により前記横架が傾き、水平に保持できなくなるのを防止するために、前記主軸頭を摺動可能に支持する横架の両端側に横架を支持する左右一対のエアシリンダを配設し、各エアシリンダに送る空気圧を調整することにより前記横架を水平に保持する横架バランス装置を備える工作機械において、圧力源と前記主軸位置が前記横架の左右(Y軸方向)中心から左右両端側のうちいずれの側に位置しているかを前記NC制御部により検出して該位置に比例した電圧として出力し、該電圧に比例して前記各エアシリンダに送る空気圧を調整する電空レギュレータを用いることで、前記NC制御部から受信する前記主軸のY軸位置に応じて各エアシリンダに対する圧力の増減方向が反対になり、前記主軸位置が中心より右側に移動すると、移動量に応じて前記横架が右に傾くのを防止するため、右用のエアシリンダに送る圧力が増加され、左用のエアシリンダに送る圧力は減少され、反対に、前記主軸位置が中心より左側に移動すると、移動量に応じて前記横架が左に傾くのを防止するため、右用のエアシリンダに送る圧力が減少され、左用のエアシリンダに送る圧力は増加されることを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横架バランス装置及びそれを備えた工作機械に関し、特に、いわゆるダブルコラム方式(門形機)のジグ研削盤における横架バランス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるダブルコラム方式(門形機)のジグ研削盤等においては、従来、主軸頭を摺動可能に支持する横架を水平バランスを保持して上下方向に移動するための装置(機構等)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1記載の横架バランス装置(機構等)では、横架の両端側に該横架を支持するエアシリンダを配設し、上記主軸頭の摺動方向に沿って適宜傾斜して上記横架側に固定される板カムと、該板カムに当接して上記主軸側に固定されると共に圧力源と上記エアシリンダ間に介設されてその移動量に対応する空気供給量を上記エアシリンダに供給する位置・空気圧変換器とを備えている。そして、上記板カムは、互いに交差して配設される一対の板カムから成り、位置・空気圧変換器が内蔵する一対のプランジャの先端が一対の板カムそれぞれの傾斜面に当接し、主軸頭が横架上を摺動するのに伴って各プランジャが滑動し、各プランジャの移動量の変化により横架の両端の各エアシリンダに送る空気供給量を変化させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ジグ研削盤等の工作機械においても加工の精密化と加工サイクルの短縮化が求められ、主軸頭の移動もNC(Numerical Control)制御による精密化と高速化が要求されている。そこで、主軸位置の検出及び横架のバランスを電気的に制御する方式の開発が切望されていた。また、機構的に横架バランスを制御する場合には、可動部の摺動(滑動)抵抗や摩耗を考慮する必要が大きくなるので、可動部を減らして機構を簡略化することも求められる。
【0005】
本発明は上述のような事情から為されたものであり、本発明の目的は、横架バランスを制御する機構を簡略化すると共に、主軸位置の検出及び横架のバランスをNC(Numerical Control)制御により電気的に行うことでジグ研削盤等の工作機械による精密・高速加工の促進に寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の工作機械は、XYZの3軸方向でのNC制御によりテーブル上に搭載されるワークへの3次元加工が可能であり、前記テーブル上に載置されたワークを滑台により前後(X軸方向)に移動させつつ、一対のコラム間に架設される横架に沿ってボールねじにより左右(Y軸方向)に主軸本体を移動させ、また、前記横架をボールねじにより左右のコラムに沿って上下動(Z軸方向)させることにより前記主軸の3次元移動を可能とする工作機械であって、前記主軸の下端には砥石とそれを回転させるための高周波モータが取り付けられたクイルが装着され、前記クイルを上下動(Z軸方向)させることによりワークへのチョッピング加工も可能な工作機械において、前記主軸を含む主軸頭が前記横架に沿って左右(Y軸方向)中心から両端側に移動する場合、前記主軸頭の重量の偏在により前記横架が傾き、水平に保持できなくなるのを防止するために、前記主軸頭を摺動可能に支持する横架の両端側に横架を支持する左右一対のエアシリンダを配設し、各エアシリンダに送る空気圧を調整することにより前記横架を水平に保持する横架バランス装置を備える工作機械において、圧力源と前記主軸位置が前記横架の左右(Y軸方向)中心から左右両端側のうちいずれの側に位置しているかを前記NC制御部により検出して該位置に比例した電圧として出力し、該電圧に比例して前記各エアシリンダに送る空気圧を調整する電空レギュレータを用いることで、前記NC制御部から受信する前記主軸のY軸位置に応じて各エアシリンダに対する圧力の増減方向が反対になり、前記主軸位置が中心より右側に移動すると、移動量に応じて前記横架が右に傾くのを防止するため、右用のエアシリンダに送る圧力が増加され、左用のエアシリンダに送る圧力は減少され、反対に、前記主軸位置が中心より左側に移動すると、移動量に応じて前記横架が左に傾くのを防止するため、右用のエアシリンダに送る圧力が減少され、左用のエアシリンダに送る圧力は増加されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、横架バランスを制御する機構を簡略化すると共に、主軸位置の検出及び横架のバランスをNC(Numerical Control)制御により電気的に行うことでジグ研削盤等の工作機械による精密・高速加工の促進に寄与することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るジグ研削盤の全体構成を示す図であり、そのジグ研削盤の正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るジグ研削盤における横架バランス装置の電気・空気(電圧から空気圧への変換)システム構成を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るジグ研削盤において、横架バランス装置の電空レギュレータによる主軸のY軸位置に比例した各エアシリンダへの圧力設定値を示す図であり、(a)は、エアシリンダ(右用)への圧力設定値、(b)は、エアシリンダ(左用)への圧力設定値、をそれぞれ示す。
【
図4】本発明の一実施形態に係るジグ研削盤の空気圧機器・電線・端子台収納箱の構成図であり、空気圧機器等の配置構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係るジグ研削盤の概要について説明する。
図1は、そのジグ研削盤の全体構成を示す正面図であり、
図2は、そのジグ研削盤における横架バランス装置の電圧から空気圧への変換システム構成を示す図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るジグ研削盤10は、いわゆるダブルコラム方式(門型機)のジグ研削盤であり、図示XYZの3軸方向でのNC制御によりテーブル17上に搭載される図示しないワークへの3次元加工(研削)が可能であり、そのテーブル17上に載置された図示しないワークを滑台17Aにより前後(X軸方向)に移動させつつ、一対のコラム16A、16B間に架設される横架20に沿ってボールねじにより左右(Y軸方向)に主軸本体(主軸頭18)側を移動させ、また、横架20そのものをボールねじにより左右のコラム16A、16Bに沿って上下動(Z軸方向)させることにより主軸18Aの3次元移動を可能としている。尚、主軸18Aの下端には、図示しない砥石とそれを回転させるための高周波モータが取り付けられた、いわゆるクイルが装着され、このクイルを上下動(Z軸方向)させることによりワークへのチョッピング加工等も可能である。このような主軸18Aを含む主軸頭18が横架20に沿って左右(Y軸方向)中心から両端側に移動する場合、主として主軸頭18の重量の偏在により、ほんのわずか数ミクロンの単位で横架20が傾き、水平に保持できなくなる虞がある。そこで、ジグ研削盤10は、その主軸頭18Aを摺動可能に支持する横架20の両端側に横架20を支持する一対のエア(バランス)シリンダ22A、22Bを配設し、各エアシリンダ22A、22Bに送る空気圧を調整することにより横架20を水平に保持する横架バランス装置30を備えている。即ち、ジグ研削盤10は、NC(Numerical Control)制御部12と、ベッド14と、ベッド14上の両側にそれぞれ立設される一対のコラム16A、16Bと、一対のコラム16A、16B間に架設される横架20と、主軸18Aの先端に工具(図示せず)が取付けられ横架20に摺動可能に支持される主軸頭18と、横架20の両端側に配設され横架20を支持する一対のエア(バランス)シリンダ22A、22Bと、各エアシリンダ22A、22Bに送る空気圧を調整することにより横架20を水平に保持する横架バランス装置30を有している。
【0011】
ここで、
図2を参照して、ジグ研削盤10における横架バランス装置30の電気・空気(電圧から空気圧への変換)システムについて説明する。
図2に示すように、本実施形態のジグ研削盤10における横架バランス装置30は、圧力源(空気圧発生源)32と上記一対のエアシリンダ22A、22B間に介設されて主軸18の位置に対応する空気圧を上記エアシリンダ22A、22Bにそれぞれ供給する主軸位置・空気圧変換部34(
図2に一点鎖線で囲んで示す)を備え、当該主軸位置・空気圧変換部34は、NC制御部12から主軸18のY軸位置に対応する信号を受信してそれに応じた電圧を出力する主軸位置・電圧変換部36(
図2に破線で囲んで示す)と、その電圧に比例して各エアシリンダ22A、22Bに送る空気圧を調整する電空レギュレータ38A、38Bを有している。
図3は、横架バランス装置30の電空レギュレータ38A、38Bによる主軸18のY軸位置に比例した各エアシリンダ22A、22Bへの圧力設定値を示す図であり、(a)は、エアシリンダ(右用)22Aへの圧力設定値、(b)は、エアシリンダ(左用)22Bへの圧力設定値、をそれぞれ示す。即ち、
図3(a)は、主軸18AのY軸ストロークを横軸、エア(バランス)シリンダ22A(右用)に対する圧力設定値を縦軸としたグラフであり、同図(b)は、主軸18AのY軸ストロークを横軸、エア(バランス)シリンダ22B(左用)に対する圧力設定値を縦軸としたグラフである。
図3(a)と(b)を対比して参照すれば分かるように、NC制御部12から受信する主軸18AのY軸位置に応じてエア(バランス)シリンダ22A、22Bに対する圧力の増減方向が反対になり、主軸位置が中心より右側に移動すると、移動量に応じて主軸頭18の重量等により横架20が右に傾くのを防止するため、右用のエアシリンダ22Aに送る圧力が増加され、左用のエアシリンダ22Bに送る圧力は減少される。反対に、主軸位置が中心より左側に移動すると、移動量に応じて主軸頭18の重量等により横架20が左に傾くのを防止するため、右用のエアシリンダ22Aに送る圧力が減少され、左用のエアシリンダ22Bに送る圧力は増加される。このように、ジグ研削盤10は、電気・空気(電圧から空気圧への変換)システム機能を有する横架バランス装置30を備えているので、各エアシリンダ22A、22Bに送る空気圧を調整することにより、主軸頭18がY軸方向に中心から移動しても、横架20を水平に保持することが可能である。
【0012】
図4は、ジグ研削盤10の空気圧機器・電線・端子台収納箱19の構成図であり、その空気圧機器等の配置構成を示す。
図4に示すように、空気圧機器・電線・端子台収納箱19には、右エア(バランス)シリンダ22A用の電空レギュレータ38Aと、左エア(バランス)シリンダ22B用の電空レギュレータ38Bが配置されている。これら電空レギュレータ38A、38Bは、エア発生源、バルブ、その他所要の空気圧機器乃至付属装置40に接続され、NC制御部12からの電気信号に比例して空気圧を無段階に調整(制御)可能になっている。
【産業上の利用可能性】
【0013】
以上に述べた実施形態では、本発明の横架バランス装置をジグ研削盤に適用したが、本発明は、NC制御部を有する門型工作機械であって、その主軸頭を摺動可能に支持する横架の両端側に該横架を支持する一対のエアシリンダを配設し、該各エアシリンダに送る空気圧を調整することにより横架を水平に保持する構成の工作機械であれば、ジグ研削盤以外にも適用され得るのは、勿論である。
【符号の説明】
【0014】
10 ジグ研削盤、12 NC(Numerical Control)制御部、14 ベッド、16A、16B コラム、17 テーブル、17A 滑台、18 主軸頭、18A 主軸、 19 空気圧機器・電線・端子台収納箱、 20 横架、22A、22B エア(バランス)シリンダ、30 横架バランス装置、 32 圧力源(空気圧発生源)、34 主軸位置・空気圧変換部、36 主軸位置・電圧変換部、38A、38B 電空レギュレータ、 40 空気圧機器乃至付属装置