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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】角錐包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/46 20060101AFI20221219BHJP
   B65D 77/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B65D65/46
B65D77/00 B
B65D77/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018175827
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020045150
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 薫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-500211(JP,A)
【文献】実開昭58-005962(JP,U)
【文献】特開平10-081360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0348319(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/46
B65D 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部および4つの頂部を有する角錐形状の包装フィルムと、
前記包装フィルムに収容された被包装物と、を備える角錐包装体であって、
前記包装フィルムは、水溶性紙と水溶性樹脂とが積層された構成からなり、
水系液体に投入された場合に、
4つの前記頂部のいずれか1つが液面から露出し且つ他の3つの前記頂部が液中に存在する姿勢で前記水系液体に浮かぶ第1状態と、
前記第1状態を経た後に、前記包装フィルムに溶解を起点とする破袋が生じつつ4つの前記頂部が未だ連結され且つ前記被包装物が前記水系液体に接触する第2状態と、
をとり、
前記包装フィルムは、前記第2状態において液面に接し且つ溶解を起点とする破袋を部分的に阻止する残存部を有することを特徴とする、角錐包装体。
【請求項2】
前記被包装物の重量は、前記収容部の容積と前記水系液体の密度との積である重量の20%以上80%以下である、請求項1に記載の角錐包装体。
【請求項3】
前記残存部は、前記包装フィルムの表面に設けられた溶解を阻止する材質からなる層によって構成されている、請求項1または2に記載の角錐包装体。
【請求項4】
前記残存部は、前記包装フィルムの一部同士がヒートシールされることによって構成されている、請求項1または2に記載の角錐包装体。
【請求項5】
前記包装フィルムは、前記水系液体への投入において把持すべき部分を指示する把持指示部を有する、請求項1ないしのいずれかに記載の角錐包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装フィルムによって被包装物が収容された角錐包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
角錐包装体は、自立可能な包装体の一形態として、広く用いられている。特許文献1(図4a)に開示された角錐包装体は、角錐形状の収容部を構成する包装フィルムと、収容部に収容された被包装物を備える。包装フィルムは、水等の液体に溶解する可溶性シートによって成形されている。この角錐包装体を水中に投じると、可溶性シートが溶解することにより、収容部が開口する。これにより、被包装物が水に接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2005-500211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、収容部が開口し被包装物が水に接触した後、包装フィルムが完全に溶解する前に水中を沈降して、底面に達する場合があった。特に、包装フィルムが水溶性樹脂フィルムのみである場合に、この現象が顕著であり、このように水没して底面に付着した包装フィルムは、塊となってしまい、その塊の表面からしか溶解が進まず、被包装物の溶解を阻害したり、溶け残った包装フィルムが周囲の環境を悪化させたりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、被包装物をより確実に液体に接触させ且つ包装フィルムが水没することを抑制可能な角錐包装体を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって提供される角錐包装体は、収容部および4つの頂部を有する角錐形状の包装フィルムと、前記包装フィルムに収容された被包装物と、を備える角錐包装体であって、前記包装フィルムは、水溶性紙と水溶性樹脂とが積層された構成からなり、水系液体に投入された場合に、4つの前記頂部のいずれか1つが液面から露出し且つ他の3つの前記頂部が液中に存在する姿勢で前記水系液体に浮かぶ第1状態と、前記第1状態を経た後に、前記包装フィルムに溶解を起点とする破袋が生じつつ4つの前記頂部が未だ連結され且つ前記被包装物が前記水系液体に接触する第2状態と、をとることを特徴としている。
【0007】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記被包装物の重量は、前記収容部の容積と前記水系液体の密度との積である重量の20%以上80%以下である。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記被包装物の重量は、前記収容部の容積と前記水系液体の密度との積である重量の60%以上80%以下である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記包装フィルムは、前記第2状態において液面に接し且つ溶解を起点とする破袋を部分的に阻止する残存部を有する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記残存部は、前記包装フィルムの表面に設けられた溶解を阻止する材質からなる層によって構成されている。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記残存部は、前記包装フィルムの一部同士がヒートシールされることによって構成されている。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記包装フィルムは、前記水系液体への投入において把持すべき部分を指示する把持指示部を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、前記角錐包装体は、前記水系液体に投入されると、前記第1状態をとった後に前記第2状態をとる。まず、第1状態をとることにより、たとえば前記角錐包装体が破袋の前に水系液体内に完全に水没したり、容器の底部等に到達したりすることを阻止することができる。次に、前記第2状態をとることにより、前記水系液体の液面付近に浮かんだ前記包装フィルムが破袋し、前記被包装物が前記水系液体と接触しつつ、前記水系液体内に放出することができる。さらに、前記第2状態において、4つの前記頂部が連結された状態が維持されることにより、前記包装フィルムの全体が浮かんだ状態をより長く維持することが可能であり、前記包装フィルムの一部が底部等に付着することを回避することができる。したがって、前記被包装物をより確実に前記水系液体に接触させ且つ前記包装フィルムが水没することを抑制することができる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態に係る角錐包装体を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る角錐包装体を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る角錐包装体の使用を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る角錐包装体の第1状態を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る角錐包装体の第2状態を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る角錐包装体の第1変形例の第1状態を模式的に示す断面図および要部拡大断面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る角錐包装体の第1変形例の第2状態を模式的に示す断面図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る角錐包装体の第2変形例の第1状態を模式的に示す断面図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る角錐包装体の第2変形例の第2状態を模式的に示す断面図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る角錐包装体の第3変形例を示す斜視図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る角錐包装体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る角錐包装体を示している。本実施形態の角錐包装体A1は、包装フィルム1、残存部4および被包装物8を有しており、一対の横シール部2および縦シール部3が形成されている。
【0018】
図1は、角錐包装体A1を示す斜視図である。図2は、角錐包装体A1を模式的に示す断面図である。図2においては、理解の便宜上、横シール部2および縦シール部3を省略している。
【0019】
包装フィルム1は、角錐包装体A1を構成する主材である。包装フィルム1は、図3および図4に示す水系液体9に溶解する水溶性材料からなる。水系液体9は、特に限定されず、水、水溶液等が例示される。
【0020】
水溶性材料としては、水溶性紙(不織布等の水溶性繊維材を含む)や水溶性樹脂が挙げられる。また、水溶性樹脂としては、天然高分子(デンプン誘導体等)、合成高分子(ポリビニルアルコール、ブテンジオール・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド等)及び半合成高分子(セルロース誘導体等)等が挙げられる。
【0021】
包装フィルム1の形態としては、水溶性紙と水溶性樹脂とを含む少なくとも2層の積層体又は、2枚の重ね合せ体から構成されている複合体である。
【0022】
本実施形態においては、後述する一対の横シール部2および縦シール部3の形成を実現するため、包装フィルム1は、内面層がシーラント層、外面層がベースフィルム層によって構成されている。例えば、ベースフィルム層として、水溶性紙(厚さ30μm)が用いられ、シーラント層として水溶性ポリビニルアルコール系樹脂(厚さ15μm)が用いられる。
【0023】
前記ベースフィルム層の好ましい厚みは、30μm~120μmであり、前記シーラント層の好ましい厚みは、10μm~90μmである。前記ベースフィルム層及び前記シーラント層の厚みが厚すぎると、水への溶解が完了するまでの時間が過度にかかることが懸念される。一方、前記ベースフィルム層及び前記シーラント層の厚みが薄すぎると、角錐包装体A1の形状を維持することが困難となったり、空気中の水分の影響を受けやすくなったりするといったことが懸念され、また、角錐包装体A1を水系液体9に投入したときに沈降するおそれもある。
【0024】
包装フィルム1は、一対の横シール部2及び縦シール部3が形成されることにより、収容部11および4つの頂部12を有する角錐形状とされている。
【0025】
一対の横シール部2は、互いに離間しており、互いに交差する方向に延びている。図示された例においては、一対の横シール部2は、互いに離間する方向から見た場合に、概ね直角である方向に延びている。一対の横シール部2は、包装フィルム1を構成する筒状のフィルム材料の両端開口部分が例えばヒートシールによって接合された部位である。
【0026】
縦シール部3は、たとえば帯状のフィルム材料を上述の筒状のフィルム材料とするために、帯状のフィルム材料の幅方向両端同士が例えばヒートシールによって接合された部位である。図示された例においては、縦シール部3は、包装フィルム1の内面同士が例えばヒートシールによって接合された、所謂合掌貼りの接合形態とされている。縦シール部3は、後述の収容部11を縦断しており、一対の横シール部2に到達している。
【0027】
収容部11は、一対の横シール部2の間に設けられており、被包装物8を収容する部位である。4つの頂部12は、角錐形状である収容部11の4つの隅部に相当する部位である。本実施形態においては、4つの頂部12は、1つの頂部121と3つの頂部122とを含む。
【0028】
残存部4は、包装フィルム1が水系液体9による溶解に起因した破袋することを部分的に阻止するためのものである。残存部4の具体例としては、たとえば包装フィルム1が水系液体9に接触することを抑制する構成や、水系液体9が接触した状態において、他の部位よりも破袋に至りにくい構成等が挙げられる。図示された例においては、残存部4は、水系液体9である水の浸透を抑制しうる材質が、たとえば印刷や接着等によって収容部11の一部を覆うように設けられた層とされている。このような残存部4としては、たとえばグラビア印刷やフレキソ印刷によって形成された層が挙げられる。なお、環境に配慮すると、水性インキ又は生分解性インキを用いた印刷が好ましい。
【0029】
残存部4が設けられる位置は、後述の第1状態および第2状態において水系液体9の液面91と接する位置である。その理由は後述する。なお、残存部の「残存」とは、完全に溶け残ることを意味するのではなく、角錐包装体の他の部位よりも溶解速度が遅いことを意味するものである。よって、溶解速度を遅らせることができれば最終的に完全溶解したとしてもそれは残存部に含まれる。
【0030】
被包装物8は、包装フィルム1の収容部11に収容されており、角錐包装体A1の使用において、水系液体9に接触させることにより、所望の機能を果たすことが意図されたものである。被包装物8は特に限定されず、食品、日用品、化粧品、あるいは薬品等である。
【0031】
次に、角錐包装体A1の実施例について、図3図5を参照しつつ、以下に説明する。
【0032】
本実施例の角錐包装体A1は、包装フィルム1が水溶紙(厚さ30μm)に水溶性高分子(ポリビニルアルコール:厚さ15μm)を積層させた構成である。包装フィルム1の収容部11の一辺の長さが75mm程度、収容部11の高さが61mm程度、横シール部2のシール幅が5mm程度、収容部11の容積が50cm3程度である。水系液体9としては、水道水(密度1g/cm3)を使用した。被包装物8は、過炭酸ナトリウムの粉末を用い、密度が2.1g/cm3程度、嵩密度が1g/cm3程度であった。被包装物8の重量は、10g、20g,30g、40g、50gの5通りを設定した。これらの被包装物8の重量は、収容部11の容積(50cm3程度)に水系液体9である水の密度(1g/cm3)の積(50g程度)の、20%、40%、60%、80%、100%に相当する。
【0033】
まず、図3に示すように、角錐包装体A1を指Fgで把持した。図示された例では、頂部121の近傍を指Fgで摘むことにより、角錐包装体A1を把持した。次いで、把持した指Fgを開いて角錐包装体A1を離し、図4に示すように、重力にしたがって角錐包装体A1を水系液体9に落下させた。角錐包装体A1は、頂部121が水系液体9の液面91から露出し、3つの頂部122が水系液体9中に存在する姿勢で浮かんだ。この状態は、本発明における第1状態である。また、本例においては、残存部4が、水系液体9の液面91に接している。包装フィルム1と液面91とが接する位置(たとえば頂部121からの距離)は、収容部11の容積、水系液体9の密度および被包装物8の重量から予測される。なお、本実施例においては、被包装物8の嵩密度が、水系液体9の密度と略同じであるため、被包装物8の上面と水系液体9の液面91とが略一致するか近い位置にあるがこれは、両者の関係の一例である。被包装物8の嵩密度や水系液体9の密度、さらには包装フィルム1の重量等によって、両者の関係は適宜変化する。
【0034】
角錐包装体A1が第1状態をとると、包装フィルム1が水系液体9に接する。これにより、水系液体9による包装フィルム1の溶解が始まった。この溶解が起点となって、図5に示すように、包装フィルム1が破袋し、包装フィルム1に破袋部13が形成された。これにより、破袋部13から収容部11内に水系液体9が浸入するとともに、被包装物8が水系液体9と接しつつ、収容部11外へと放出された。また、この際、包装フィルム1が破袋するものの、4つの頂部12(1つの頂部121と3つの頂部122)とは、未だ連結された状態であった。この状態は、本発明における第2状態である。
【0035】
なお、包装フィルム1の破袋は、水系液体9によって溶解され始めて強度が低下した部分に、被包装物8の重量が負荷されることによって生じたと考えられる。本発明者等が詳細に観察し検討したところ、このような破袋が最初に生じる箇所は、予想に反して、水系液体9中に位置し水系液体9に全面接触している部分ではなく、包装フィルム1のうち水系液体9の液面91と接する部分、いわゆる喫水線付近の部分であった。したがって、図示された例においては、包装フィルム1のうち液面91と接すると推定される部分に残存部4が設けられており、残存部4が喫水線付近に位置している。これにより、包装フィルム1の破袋は、残存部4によって阻止される。この結果、図5に示すように、破袋部13は、包装フィルム1を2つに分割する形態までは進展せず、4つの頂部12(1つの頂部121と3つの頂部122)が連結された状態が維持される。
【0036】
表1は、本実施例の結果を示している。水没深さDは、第1状態において角錐包装体A1が液面91から水没した深さである。破袋時間Tは、第1状態から包装フィルム1が破袋するまでに要する時間である。水没深さDは、重量Wが重くなるほど深くなっている。破袋時間Tは、重量Wが重くなるほど短くなる結果であった。
【0037】
【表1】
【0038】
次に、角錐包装体A1の作用について説明する。
【0039】
本実施形態によれば、角錐包装体A1は、第1状態をとった後に第2状態をとる。まず、第1状態をとることにより、たとえば角錐包装体A1が破袋の前に水系液体9内に完全に水没したり、容器の底部等に到達したりすることを阻止することができる。たとえば包装フィルム1が水溶性である場合、溶解によって包装フィルム1は粘着質の状態に変質する。このような包装フィルム1が底部等に付着すると、除去することが困難であり、水系液体9中の環境を乱しうる。次に、第2状態をとることにより、液面91付近に浮かんだ包装フィルム1が破袋し、被包装物8が水系液体9と接触しつつ、水系液体9内に放出することができる。たとえば、角錐包装体A1が完全に水没し底部に到達した後に破袋する場合と比較して、被包装物8をより確実に水系液体9に接しさせることが可能であり、水系液体9のより広い領域に被包装物8を分散させることができる。さらに、第2状態において、4つの頂部12が連結された状態が維持されることにより、包装フィルム1の全体が浮かんだ状態をより長く維持することが可能であり、包装フィルム1の一部が底部等に付着することを回避することができる。
【0040】
特に包装フィルム1が上述の水溶性紙および水溶性樹脂によって構成されている場合、水系液体9に投入される前の保存中や、水系液体9に投入された後に、角錐形状を保ちやすく、また水系液体9に投入したときに確実に浮揚させることができるという利点がある。たとえば、包装フィルム1が、水溶性紙の単層からなる場合、横シール部2や縦シール部3を形成するためのヒートシールが行えないこと、あるいは液体や細かい粉状の被包装物8を包装するのに不向きであること、等が懸念される。包装フィルム1に水溶性ポリビニルアルコール系樹脂がシーラント層として積層されていれば、より多くの種類の被包装物8を包装するのに適している。一方で、包装フィルム1が水溶性樹脂の単層からなる場合、上述したとおり水系液体9内に完全に水没したり、容器の底部等に到達したりするおそれがある。
【0041】
表1に示すように、重量Wが50gの場合には、水没深さDが59.5mmであり、収容部11の高さ61mmと近い値となっている。これは、収容部11のほぼ全体が水系液体9に水没していることを意味する。この場合、第1状態を確実に維持することが困難である。また、第2状態において包装フィルム1が破袋したとしても、破袋部13のサイズが顕著に小さくなり、被包装物8を水系液体9に十分に接しさせることが困難である。したがって、表1の実施例においては、重量Wが10g以上40g以下である場合が、第1状態の確実な維持と、十分な大きさの破袋部13の形成に好ましい。この場合は、重量Wが、収容部11の容積と水系液体9の密度との積である重量の20%以上80%以下に相当する。
【0042】
さらに、破袋時間Tについては、重量Wが30gおよび40gの場合に概ね7sec、未満であり、重量Wが10gおよび20gの場合に、概ね7sec以上であった。破袋時間Tが不当に長いと、喫水線付近での破袋以外に、意図しない箇所での溶解や破袋が進行したり、十分な破袋が生じなかったりするおそれがある。このような観点から、重量Wが30g以上40g以下であることが好ましい。この場合は、重量Wが、収容部11の容積と水系液体9の密度との積である重量の60%以上80%以下に相当する。
【0043】
包装フィルム1と液面91とが接する位置に残存部4が設けられていることにより、破袋部13が包装フィルム1の全周にわたって形成され、包装フィルム1が2つに完全に分割されることをより確実に防止することが可能である。残存部4を印刷等の手法を用いて形成された層によって構成することにより、包装フィルム1の所望の箇所に残存部4を設けやすいという利点がある。
【0044】
図6図11は、本発明の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0045】
<第1実施形態 第1変形例>
図6は、角錐包装体A1の第1変形例を示している。本変形例の角錐包装体A11は、残存部4の構成が上述した例と異なっている。本変形例では、残存部4は、包装フィルム1の一部が折り曲げられ、内面同士がヒートシールされることによって形成されている。なお、図6の円で囲まれた部分は、残存部4の図中上下方向と直角である要部拡大断面図である。ヒートシールされた残存部4は、周囲部分の2倍程度の厚さとなる。このため、周囲部分よりも水系液体9によって溶解されにくく、また、被包装物8の重量によって破袋しにくい部位となっている。このため、図6の示す第1状態の後に、図7に示す第2状態をとった場合、残存部4を構成するヒートシールされた部位が、頂部121と3つの頂部122とが連結された状態を維持する。
【0046】
このような変形例によっても、被包装物8をより確実に水系液体9に接触させ且つ包装フィルム1が水没することを抑制することができる。また、ヒートシールによる残存部4の形成は、たとえば一対の横シール部2の形成工程と前後してまたは一括して行うことが可能であるという利点がある。
【0047】
<第1実施形態 第2変形例>
図8は、角錐包装体A1の第2変形例を示している。本変形例の角錐包装体A12は、残存部4が縦シール部3の一部によって構成されている。なお、角錐包装体A1において述べた構成の縦シール部3は、一対の横シール部2の形成等によって、収容部11に沿って寝た状態となりやすいが、同図においては理解の便宜上、縦シール部3が収容部11に対して起立した状態で示している。また、図1に示す縦シール部3を例に挙げると、縦シール部3は、一対の横シール部2に到達する一方、頂部121には到達しない。言い換えると、図8の上下方向において、縦シール部3は、頂部122と同じ深さには存在しうるものの、頂部121の高さには存在しない。同図においては、この位置関係を模式的に表している。
【0048】
縦シール部3は、ヒートシールによって形成されると、角錐包装体A11における残存部4と同様に、包装フィルム1の破袋を阻止し、図9に示す第2状態において頂部121と3つの頂部122とを連結する機能を果たす。また、縦シール部3は、包装フィルム1の材料となる帯状のフィルム材料を筒状に仕上げるために設けられるものであり、同図に示すように、収容部11の高さ方向における大部分に重なるように形成される。これは、収容部11と水系液体9の液面91とが接する位置である喫水線が多少ずれたとしても、縦シール部3が液面91に接する限りにおいて残存部4を確実に構成することができるという利点がある。
【0049】
<第1実施形態 第3変形例>
図10は、角錐包装体A1の第3変形例を示している。本変形例の角錐包装体A13は、残存部4が、第1部41および第2部42を有する。
【0050】
図中には、第1状態および第2状態において、包装フィルム1と水系液体9の液面91とが接する線である喫水線WLを模式的に示している。第1部41は、喫水線WLよりも頂部122側(図中下方側)に位置している。第2部42は、喫水線WLと重なると想定される位置に設けられており、包装フィルム1の全周にわたって形成されている。
【0051】
角錐包装体A13が第1状態をとった後、第2状態においては、上述した例において破袋の起点となる喫水線WLに第2部42が重なっている。このため、包装フィルム1のうち喫水線WLの直下(頂部122側に隣接する部分)の溶解が、包装フィルム1の破袋の起点となる。したがって、包装フィルム1が破袋する位置を喫水線WLに対して下方にずらすことが可能である。また、第1状態から第2状態における破袋開始までの時間を遅らせる等、当該時間を調節することが可能である。一方、第1部41は、第2部42よりも部分的に下方に延出し横シール部2につながっている。このため、第2部42の直下において破袋が生じても、その破袋が包装フィルム1の全周に至ることを第1部41によって阻止することが可能である。これにより、3つの頂部122が頂部121から分離されてしまうことを回避することができる。
【0052】
なお、第2部42の構成は特に限定されず、図示された一様な帯状のほか、周方向に複数の小領域が点在する構成や、頂部121側から頂部122側に印刷密度が変化するグラデーションの構成であってもよい。また、第2部42の構成によって3つの頂部122と頂部121との分離が回避される場合や、縦シール部3によって3つの頂部122と頂部121との分離が回避される場合は、残存部4は、第1部41を有さない構成であってもよい。
【0053】
<第2実施形態>
図11は、本発明の第2実施形態に係る角錐包装体を示している。本実施形態の角錐包装体A2は、把持指示部5を備える点が、上述した実施形態と異なっている。なお、把持指示部5以外の構成については、上述した角錐包装体A1,A11,A12をはじめとする種々の構成が適宜採用可能である。
【0054】
把持指示部5は、角錐包装体A2の使用者に把持すべき部分を指示するためのものである。把持指示部5の構成は、使用者が把持すべき部分として認識可能な構成であれば、何ら限定されない。把持指示部5は、包装フィルム1への印刷等による所定の表示や、横シール部2および縦シール部3等に切り込みを形成する等による所定の形状、によって適宜構成される。図示された例においては、把持指示部5は、把持すべき部分である頂部121の周辺部分を囲む太線が包装フィルム1に印刷等によって設けられた構成である。
【0055】
本実施形態によっても、被包装物8をより確実に水系液体9に接触させ且つ包装フィルム1が水没することを抑制することができる。また、把持指示部5を設けることにより、角錐包装体A2の使用者が図3に示すように角錐包装体A2を把持する場合に、頂部121を確実に把持させることが可能である。これは、たとえば、角錐包装体A1や角錐包装体A11の残存部4のように、残存部4が一部に設けられた構成において、残存部4を液面91により確実に接しさせることができる点で好ましい。
【0056】
本発明に係る角錐包装体は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る角錐包装体の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、残存部4はその少なくとも一部が喫水線に接触する位置に設けられていれば、その面積、位置、数などは特に限定されない。これらを自在に設計することで、角錐包装体の破袋時間を所望の範囲にコントロールすることもできる。
【符号の説明】
【0057】
A1,A11,A12,A13,A2:角錐包装体
1 :包装フィルム
2 :横シール部
3 :縦シール部
4 :残存部
5 :把持指示部
8 :被包装物
9 :水系液体
11 :収容部
12,121,122:頂部
13 :破袋部
91 :液面
D :水没深さ
Fg :指
T :破袋時間
WL :喫水線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11