(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】パッドタイプ吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/514 20060101AFI20221219BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20221219BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20221219BHJP
A61F 13/475 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61F13/514 400
A61F5/44 H
A61F13/511 500
A61F13/475 112
(21)【出願番号】P 2018182936
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永橋 歩美
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-287791(JP,A)
【文献】特開2013-176695(JP,A)
【文献】特開2014-200372(JP,A)
【文献】特開2015-019724(JP,A)
【文献】特開2017-217329(JP,A)
【文献】特開2014-144050(JP,A)
【文献】特開2013-198651(JP,A)
【文献】特開2014-083170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0049889(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/514
A61F 5/44
A61F 13/511
A61F 13/475
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向中央を含む股間部と、前後方向中央より前側に延びる前側部分と、前後方向中央より後側に延びる後側部分とを有し、
前記股間部を含む範囲に内蔵された吸収体を有し、
前記吸収体は、前記股間部を含む前後方向の範囲に括れ部を有しており、
前記吸収体の幅方向両側に延び出たサイドフラップ部を有し、
前記サイドフラップ部は、前記股間部を含む前後方向の範囲に、前後方向に延びる細長状のサイド弾性部材を有しており、
前記サイドフラップ部における前記サイド弾性部材を有する領域は、前記サイド弾性部材の収縮により前後方向に収縮しているとともに前後方向に伸長可能である伸縮領域を有し、
裏面に粘着剤層が設けられている、
パッドタイプ吸収性物品において、
両側部における
、前後方向において前記括れ部の前後方向の中央と対応する位置に、取付位置確認用の目印が裏側から視認可能なように設けられて
おり、
前記目印は、前記括れ部の側縁よりも側方であって、かつ前記サイド弾性部材よりも幅方向中央側に設けられているとともに、
前記サイド弾性部材による伸縮領域は、前記目印よりも前側及び前記目印よりも後側にそれぞれ設けられており、前記目印を有する前後方向の範囲は非伸縮領域となっている、
ことを特徴とするパッドタイプ吸収性物品。
【請求項2】
両側部の股間部における、前記目印の前後両側に間隔を空けた各位置に、ズレ確認用の目印が裏側から視認可能なように設けられている、
請求項1記載のパッドタイプ吸収性物品。
【請求項3】
各目印の幅方向内側にそれぞれ隣接して前後方向に直線的に延びる縦基準線と、これら縦基準線の間における、
前後方向において前記括れ部の前後方向の中央と対応する位置に、幅方向に直線的に延びる横基準線とが、裏側から視認可能なように設けられている、
請求項1又は2記載のパッドタイプ吸収性物品。
【請求項4】
前記縦基準線は幅を有しており、
前記粘着剤層の側縁は、前記縦基準線の幅方向中央側の縁から10mm以内の位置を通り前後方向に沿って直線的に延びている、
請求項3記載のパッドタイプ吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリーフやショーツのような股下のない下半身用下着(以下、単に下着ともいう)の内面に固定して使用されるパッドタイプ吸収性物品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなパッドタイプ吸収性物品の一つとして、おむつ交換費用の低減や、トイレトレーニングを目的として下着の内面に取り付けて使用されるパッドタイプ吸収性物品がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
一般に、下着に固定されるパッドタイプ吸収性物品の裏面には、粘着剤層からなる粘着剤層が設けられており、この粘着剤層がおむつ又は下着の内面に粘着されることにより装着時のズレが防止されるようになっている。
【0004】
したがって、パッドタイプ吸収性物品は下着に対して適切な位置に取り付けることが重要であることはいうまでもない。このため、パッドタイプ吸収性物品のほか、下着にも取付位置の目安となるような目印を設けることが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0005】
このようなパッドタイプ吸収性物品は、下着を穿く前に、下着の内部にパッドタイプ吸収性物品を取り付けることが一般的である。
しかしながら、従来の目印は、パッドタイプ吸収性物品を下着に取り付ける際の目安とはなるものの、パッドタイプ吸収性物品を下着に取り付けた後、下着を穿く前に、下着の外部から位置確認を行うことはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-93438号公報
【文献】特開2006-136583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、下着に取り付けた状態で取付位置が適切であるかを容易に確認できるパッドタイプ吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決したパッドタイプ吸収性物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
前後方向中央を含む股間部と、前後方向中央より前側に延びる前側部分と、前後方向中央より後側に延びる後側部分とを有し、
裏面に粘着剤層が設けられている、
パッドタイプ吸収性物品において、
両側部における下着の最下部に位置するべき部位に、取付位置確認用の目印が裏側から視認可能なように設けられている、
ことを特徴とするパッドタイプ吸収性物品。
【0009】
(作用効果)
このパッドタイプ吸収性物品は、下着への取り付け後、装着者が下着を穿く前に、下着の脚開口から露出する、パッドタイプ吸収性物品の両側部の目印を下着の外部から視認し、その位置が下着の最下部であるか否か確認することにより、下着に取り付けた状態で取付位置が適切であるかを容易に確認できる。もちろん、本パッドタイプ吸収性物品の目印は、下着への取付けに際して利用することも可能である。なお、「下着の最下部」とは、折り畳まれていない自然長状態の下着で、前身頃のウエストの縁と後身頃のウエストの縁とを合わせた状態で、最も股間側に位置する端部を意味する。
【0010】
<第2の態様>
両側部の股間部における、前記目印の前後両側に間隔を空けた各位置に、ズレ確認用の目印が裏側から視認可能なように設けられている、
第1の態様のパッドタイプ吸収性物品。
【0011】
(作用効果)
このように、目印の前後両側に間隔を空けた各位置に、ズレ確認用の目印が設けられていると、前後どちらにどの程度ずれているかが分かりやすくなるため好ましい。例えば下着に取り付けた状態で下着の前面から見たときに、下着の脚開口から露出するパッドタイプ吸収性物品の両側部に、ズレ確認用の目印しか見えない場合、取付位置が後にずれていることが一目瞭然となる。
【0012】
<第3の態様>
各目印の幅方向内側にそれぞれ隣接して前後方向に直線的に延びる縦基準線と、これら縦基準線の間における、下着の最下部に位置するべき部位に沿って、幅方向に直線的に延びる横基準線とが、裏側から視認可能なように設けられている、
第1又は2の態様のパッドタイプ吸収性物品。
【0013】
(作用効果)
前述の目印に加えて、これら縦基準線及び横基準線を設けることにより、下着への取付けに際してパッドタイプ吸収性物品の向きを把握しやすいものとなる。また、縦基準線は目印に隣接している。よって、下着に取り付けた状態では縦基準線も下着の脚開口から露出するため、この縦基準線を視認することにより、下着に取り付けた状態でパッドタイプ吸収性物品の向きが適切であるかを容易に確認できる。
【0014】
<第4の態様>
前記縦基準線は幅を有しており、
前記粘着剤層の側縁は、前記縦基準線の幅方向中央側の縁から10mm以内の位置を通り前後方向に沿って直線的に延びている、
第3の態様のパッドタイプ吸収性物品。
【0015】
(作用効果)
縦基準線と粘着剤層の側縁とがこのような位置関係にあることにより、縦基準線を基準としてパッドタイプ吸収性物品の向きを調節しながら、容易にパッドタイプ吸収性物品を下着に取り付けることができる。
【0016】
<第5の態様>
前記股間部を含む範囲に内蔵された吸収体を有し、
前記吸収体は、前記股間部を含む前後方向の範囲に括れ部を有しており、
前記吸収体の幅方向両側に延び出たサイドフラップ部を有し、
前記サイドフラップ部は、前記股間部を含む前後方向の範囲に、前後方向に延びる細長状のサイド弾性部材を有しており、
前記サイドフラップ部における前記サイド弾性部材を有する領域は、前記サイド弾性部材の収縮により前後方向に収縮しているとともに前後方向に伸長可能である伸縮領域を有し、
前記目印は、前記括れ部の側縁よりも側方であって、かつ前記サイド弾性部材よりも幅方向中央側に設けられている、
第1~4のいずれか1つの態様のパッドタイプ吸収性物品。
【0017】
(作用効果)
このような括れ部及びサイドフラップ部を有するパッドタイプ吸収性物品は、サイドフラップ部にサイド弾性部材を設けることにより、下着に取り付けた状態で船形となり、特に装着者の脚周りに対するフィット性が高いものとなる。このようなパッドタイプ吸収性物品の場合、下着に取り付けた状態で股間部のサイドフラップ部が下着の脚開口から露出する。しかし、サイド弾性部材により目印を有する部分が収縮していると、目印が皺の中に隠れたり、目印の形状が崩れたりするため、目印を視認しにくくなるおそれがある。これに対して、目印が、括れ部の側縁よりも側方であって、かつサイド弾性部材よりも幅方向中央側に設けられていると、目印が皺が最も深く形成される部分に位置しない(つまりサイド弾性部材と重ならない)ため、目印の視認性低下を抑制することができる。
【0018】
<第6の態様>
前記サイド弾性部材による伸縮領域は、前記目印よりも前後両側に設けられており、前記目印を有する前後方向の範囲は非伸縮領域となっている、
第5の態様のパッドタイプ吸収性物品。
【0019】
(作用効果)
このように、目印を有する前後方向の範囲は非伸縮領域となっていると、目印が皺の中に隠れたり、目印の形状が崩れたりしにくくなり、目印の視認性が良好となるため好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、下着に取り付けた状態で取付位置が適切であるかを容易に確認できるパッドタイプ吸収性物品となる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの表側を示す平面図である。
【
図2】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの裏側を示す平面図である(図面の見やすさのため、目印は省略されている)。
【
図6】パッドタイプ使い捨ておむつの使用方法を概略的に示す斜視図である。
【
図7】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの裏側を示す平面図である。
【
図8】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの裏側を示す平面図である。
【
図9】展開状態のパッドタイプ使い捨ておむつの裏側を示す平面図である。
【
図10】パッドタイプ使い捨ておむつを装着した下着を、装着者が穿いた状態を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、パッドタイプ吸収性物品の一つである、パッドタイプ使い捨ておむつの例について添付図面を参照しつつ説明する。
図1~
図5は、パッドタイプ使い捨ておむつ200を示している。このパッドタイプ使い捨ておむつ200は、前後方向LDの中央201を含む股間部Mと、前後方向LDの中央201よりも前側に延在する前側部分F1及び前後方向LDの中央201よりも後側に延在する後側部分B1とを有するものである。各部の寸法は適宜定めることができ、例えば、物品全長(前後方向長さ)L1は200~480mm程度、全幅W1は120~200mm程度とすることができる。
【0023】
パッドタイプ使い捨ておむつ200は、股間部Mを含む範囲に内蔵された吸収体23と、吸収体23の表側を覆う液透過性のトップシート22と、吸収体23の裏側を覆う液不透過性シート21とを有している。以下、各部の素材及び特徴部分について順に説明する。なお、以下の説明における不織布としては、部位や目的に応じて公知の不織布を適宜使用することができる。不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維(単成分繊維の他、芯鞘等の複合繊維も含む)の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等、特に限定なく選択することができ、これらを混合して用いることもできる。不織布の柔軟性を高めるために、構成繊維を捲縮繊維とするのは好ましい。また、不織布の構成繊維は、親水性繊維(親水化剤により親水性となったものを含む)であっても、疎水性繊維若しくは撥水性繊維(撥水剤により撥水性となった撥水性繊維を含む)であってもよい。また、不織布は一般に繊維の長さや、シート形成方法、繊維結合方法、積層構造により、短繊維不織布、長繊維不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド(エアスルー)不織布、ニードルパンチ不織布、ポイントボンド不織布、積層不織布(スパンボンド層間にメルトブローン層を挟んだSMS不織布、SMMS不織布等)等に分類されるが、これらのどの不織布も用いることができる。
【0024】
吸収体23としては、パルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。必要に応じて、吸収体23はクレープ紙や不織布(図示せず)により包むことができる。また、吸収体23の形状は、長方形状等、適宜の形状とすることができるが、図示例では、股間部Mを含む前後方向LDの範囲に、前後両側よりも幅の狭い括れ部23nを有する形状(略砂時計形状)となっている。吸収体23における繊維目付け及び吸収性ポリマーの目付けは適宜定めることができるが、繊維目付けは100~600g/m2程度とするのが好ましく、また吸収性ポリマーの目付け0~400g/m2程度とするのが好ましい。
【0025】
吸収体23の裏側には、液不透過性シート21が設けられている。液不透過性シート21としては、ポリエチレンフィルム等の他、ムレ防止の点から遮水性を損なわずに透湿性を備えたシートも用いることができる。この遮水・透湿性シートは、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に無機充填材を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを用いることができる。図示例では、液不透過性シート21が吸収体23の周囲にはみ出しているが、吸収体23の周囲にはみ出していなくてもよい。
【0026】
液不透過性シート21の外面(裏面)は、外装シート25により覆われている。外装シート25としては各種の不織布を用いることができる。
【0027】
吸収体23の表側は、トップシート22により覆われている。図示例ではトップシート22の側縁から吸収体23が一部はみ出しているが、吸収体23の側縁がはみ出さないようにトップシート22の幅を広げることもできる。トップシート22としては、有孔又は無孔の不織布や穴あきプラスチックシートなどが用いられる。
【0028】
パッドタイプ使い捨ておむつ200の前後端部は、吸収体23の前後端よりも前後両側にそれぞれ延び出た、吸収体23の存在しないエンドフラップ部EFとなっている。エンドフラップ部EFを構成する素材は特に限定されるものではないが、図示例では、液不透過性シート21、外装シート25及びトップシート22における、吸収体23の前後両側に延び出た部分となっている。
【0029】
また、パッドタイプ使い捨ておむつ200の両側部は、吸収体の側方に延び出たサイドフラップ部SFとなっている。サイドフラップ部SFを構成する素材は特に限定されるものではないが、図示例では、液不透過性シート21、外装シート25、トップシート22、及びギャザーシート62における、吸収体23の幅方向WDの両側に延び出た部分となっている。これらを含め、素材の貼り合わせは、図中に点模様で示されたホットメルト接着剤の他、ヒートシール、超音波シール等の素材溶着により行うことができる。
【0030】
(起き上がりギャザー)
トップシート22上を横方向に移動する尿や軟便を遮り、横漏れを防止するために、使い捨ておむつの表面の幅方向WDの両側には、トップシート22の側部から肌側に立ち上がる(突出する)起き上がりギャザー60が前後方向全体にわたり設けられている。
【0031】
図示例の起き上がりギャザー60は、サイドフラップ部SFを含む領域に固定された付根部分65と、この付根部分65から延び出た突出部分66と、この突出部分の前後方向両端部が倒伏状態に固定された倒伏部分67と、突出部分66のうち前後の倒伏部分間に位置する非固定の起き上がり部分68と、この起き上がり部分68の少なくとも先端部に、前後方向に伸張した状態で固定されたギャザー弾性部材63とを有している。起き上がりギャザー60は、先端で折り返されたギャザーシート62により形成されており、ギャザー弾性部材63は、図示例のように各複数本、間隔を空けて設ける他、各1本設けることができる。ギャザー弾性部材63を有する部分の伸長率は特に限定されないが、通常の場合150~350%が好ましく、200~300%がより好ましい。
【0032】
図示例の起き上がりギャザー60の付根部分65は、サイドフラップ部SFにのみ設けられており、液不透過性シート21の側部及び外装シート25の側部に接合されているが、サイドフラップ部SFから吸収体23と重なる領域の側部まで延びていてもよい。
【0033】
起き上がりギャザー60の突出部分66は、前後方向LDの両端部が倒伏部分となっているものの、その間の部分は非固定の起き上がり部分68とされており、この起き上がり部分68がギャザー弾性部材63の収縮力により起立するようになる。おむつの装着時には、おむつが舟形に体に装着され、そしてギャザー弾性部材63の収縮力が作用するので、ギャザー弾性部材63の収縮力により起き上がりギャザー60が立ち上がり脚周りに弾力的に密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0034】
ギャザーシート62の素材としては、プラスチックシートやメルトブローン不織布を使用することもできるが、肌への感触性の点で、不織布にシリコーンなどにより撥水処理をしたものが好適に使用される。ギャザー弾性部材63としては、糸状、紐状、帯状等に形成された、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等、通常使用される素材を用いることができる。
【0035】
(サイドギャザー)
各サイドフラップ部SFは、股間部Mを含む前後方向LDの範囲に、前後方向LDに延びる細長状のサイド弾性部材64を有しており、このサイド弾性部材64を有する領域は、サイド弾性部材64の収縮により前後方向LDに収縮しているとともに前後方向LDに伸長可能である伸縮領域A1(サイドギャザー)を有している。サイド弾性部材64は、図示例のように、ギャザーシート62の接合部分のうち接合始端近傍の幅方向WD外側において、ギャザーシート62と液不透過性シート21との間に設けるほか、サイドフラップ部SFにおける液不透過性シート21と外装シート25との間に設けることもできる。サイド弾性部材64は、図示例のように各側に1本のみ設ける他、各側に複数本設けることもできる。サイド弾性部材64としては、ギャザー弾性部材63と同様の素材を使用することができる。
【0036】
サイド弾性部材64は伸縮領域A1のみに存在していてもよいし、伸縮領域A1よりも前側、後側又はその両側にわたり存在していてもよい。後者の場合、伸縮領域A1以外は、サイド弾性部材64が一か所又は多数個所で細かく切断されていたり、サイド弾性部材64を挟むシートに固定されていなかったり、あるいはその両方であったりすることにより、非伸縮領域A2(実質的には、弾性部材を設けないことに等しい)とされる。伸縮領域A1の前後方向LDの範囲は適宜定めることができるが、少なくとも股間部Mを含むことが望ましく、吸収体23が括れ部23nを有する場合にはその前後端部とほぼ同じ前後位置まで、前後方向LDの両側に延びていることが好ましい。
【0037】
(粘着剤層)
図2、
図3及び
図5に示すように、パッドタイプ使い捨ておむつ200の裏面、つまり図示例では外装シート25の裏面には、粘着剤層30が設けられている。粘着剤層30は、図示例のように、剥離シート31により剥離可能に被覆しておき、使用時に剥離シート31を剥離して粘着剤層30を露出させるのが望ましい。
【0038】
図示例では、粘着剤層30を前後方向に沿って連続的に設けているが、前側部分F1及び後側部分B1のそれぞれに設けたり、いずれか一方のみに設けたり、股間部M等の前後方向の中間部のみに設けたりしても良い。粘着剤層30を複数設ける場合、前側部分F1及び後側部分B1に各少なくとも一つは設けるのが好ましい。
【0039】
粘着剤層30は、その全体が吸収体23と重なる領域内に収まるような寸法及び配置となっているのが好ましい。具体的には、粘着剤層30の幅W3は吸収体23の幅W2の70~80%程度、前後方向長さL3(前後方向に複数設ける場合は総長さ)は吸収体23の全長L2の60~95%程度、又は物品全長L1の50~95%程度であるのが好ましい。粘着剤層30は吸収体23と重なる領域からエンドフラップ部EFまで延びていてもよい。
【0040】
(目印)
特徴的には、
図7に示すように、両側部における下着100の最下部101に位置するべき部位に、取付位置確認用の目印40がパッドタイプ使い捨ておむつ200の裏側(外側)から視認可能なように設けられている。このパッドタイプ使い捨ておむつ200は、
図6に示すように下着100に取り付けることができる。この取付けに際して目印40を利用することができる。さらに、
図10に示すように、下着100への取り付け後、装着者が下着100を穿く前に、下着100の脚開口LOから露出する、パッドタイプ使い捨ておむつ200の両側部の目印40を下着100の外部から視認し、その位置が下着100の最下部101であるか否か確認することにより、下着100に取り付けた状態で取付位置が適切であるかを容易に確認できる。
【0041】
「下着100の最下部101に位置するべき部位」は、製品よって適宜定めることができるが、図示例のように形状・構造が前後対称形状の場合、前後方向LDの中央とすることができる。また、吸収体23が括れ部23nを有する場合には、括れ部23nの前後方向の中央を「下着100の最下部101に位置するべき部位」とすることができる。
【0042】
目印40は、円形(
図8に示す例)、三角形、四角形、星形(
図7に示す例)、矢印形、又は文字等、位置を表示しうるものから適宜選択することができる。目印40は印刷により設けることができるほか、エンボス加工等の形状加工により設けることもでき、両者を組み合わせて設けることもできる。エンボス加工による目印40は凹凸を有するため、目印40が見にくい場合に手で触ることにより、その位置を把握できる利点がある。
【0043】
目印40は、パッドタイプ使い捨ておむつ200の裏側から視認可能である限り、どの既存部材に設けてもよく、また専用の部材を追加してもよい。例えば、目印40は液不透過性シート21の裏面に印刷し、この目印40が外装シート25を通して透けて視認できるようにしてもよい。また、液不透過性シート21と外装シート25との間に目印40を印刷した紙等からなる印刷シートを介在させ、この印刷シートの目印40が外装シート25を通して透けて視認できるようにしてもよい。さらに、外装シート25の裏面に目印40を直接に印刷してもよい。
【0044】
目印40の寸法は適宜定めることができるが、局所的な部位を表示するものであること、及び通常の使用における視認性を考慮すると、前後方向LDの寸法(全長)は8~20mmであることが好ましく、幅方向WDの寸法(全幅)は8~20mmであることが好ましい。
【0045】
目印40の位置は、側縁に近いほどよい。このため、図示例のようにサイドフラップ部SFを有するパッドタイプ使い捨ておむつ200では、サイドフラップ部SFに設けることが好ましい。具体的な寸法としては、幅方向WDにおけるパッドタイプ使い捨ておむつ200の側縁と目印40との間隔40dは35mm以下であることが好ましい。ただし、サイドフラップ部SFにサイド弾性部材64による伸縮領域A1を有する場合には、目印40は、括れ部23nの側縁よりも側方であって、かつサイド弾性部材64よりも幅方向WD中央側に設けられていると好ましい。前述のような括れ部23n及びサイドフラップ部SFを有するパッドタイプ使い捨ておむつ200は、サイドフラップ部SFにサイド弾性部材64を設けることにより、下着に取り付けた状態で船形となり、特に装着者の脚周りに対するフィット性が高いものとなる。このようなパッドタイプ使い捨ておむつ200の場合、下着に取り付けた状態で股間部Mのサイドフラップ部SFが下着100の脚開口LOから露出する。しかし、サイド弾性部材64により目印40を有する部分が収縮していると、目印40が皺の中に隠れたり、目印40の形状が崩れたりするため、目印40を視認しにくくなるおそれがある。これに対して、
図7及び
図8に示す例のように、目印40が、括れ部23nの側縁よりも側方であって、かつサイド弾性部材64よりも幅方向WD中央側に設けられていると、目印40が皺が最も深く形成される部分に位置しない(つまりサイド弾性部材64と重ならない)ため、目印40の視認性低下を抑制することができる。具体的な寸法としては、幅方向WDにおけるパッドタイプ使い捨ておむつ200の側縁とサイド弾性部材64との間隔64dは10mm以下であることが好ましい。
【0046】
図9に示すように、サイド弾性部材64による伸縮領域A1は、目印40よりも前後両側に設けられており、目印40を有する前後方向LDの範囲は非伸縮領域A2となっているのも好ましい。このように、目印40を有する前後方向LDの範囲は非伸縮領域A2となっていると、目印40が皺の中に隠れたり、目印40の形状が崩れたりしにくくなり、目印40の視認性が良好となる。
【0047】
他方、
図8に示すように、両側部の股間部Mにおける、目印40の前後両側に間隔を空けた各位置に、ズレ確認用の目印41が裏側から視認可能なように設けられているのは好ましい。このように、取付位置確認用の目印40の前後両側に間隔を空けた各位置に、ズレ確認用の目印41が設けられていると、
図10に示すように、前後どちらにどの程度ずれているかが分かりやすくなるため好ましい(ただし、
図10はズレていない状態を示している)。例えば下着100に取り付けた状態で下着100の前面から見たときに、下着100の脚開口LOから露出するパッドタイプ使い捨ておむつ200の両側部に、ズレ確認用の目印41しか見えない場合、取付位置が後にずれていることが一目瞭然となる。このズレ確認用の目印41は、前述の取付位置確認用の目印40と同様の形状、寸法で、同様の部材に、同様の手段で形成することができる。
【0048】
また、
図7~
図9に示すように、取付位置確認用の各目印40の幅方向WDの内側にそれぞれ隣接して前後方向LDに直線的に延びる縦基準線42と、これら縦基準線42の間における、下着100の最下部101に位置するべき部位に沿って、幅方向WDに直線的に延びる横基準線43とが、パッドタイプ使い捨ておむつ200の裏側から視認可能なように設けられているのも好ましい。これら縦基準線42及び横基準線43を設けることにより、下着100への取付けに際してパッドタイプ使い捨ておむつ200の向きを把握しやすいものとなる。また、縦基準線42は目印40に隣接している。よって、下着100に取り付けた状態では縦基準線42も下着100の脚開口LOから露出するため、この縦基準線42を視認することにより、下着100に取り付けた状態でパッドタイプ使い捨ておむつ200の向きが適切であるかを容易に確認できる。この縦基準線42及び横基準線43は、前述の取付位置確認用の目印40と同様の部材に、同様の手段で形成することができる。
【0049】
特に、縦基準線42は7~30mm程度の幅42wを有しているとともに、粘着剤層30の側縁は、縦基準線42の幅方向WD中央側の縁に対する幅方向の離間距離42dが10mm以下の位置を通り、前後方向LDに沿って直線的に延びていると好ましい。縦基準線42と粘着剤層30の側縁とがこのような位置関係にあることにより、縦基準線42を基準としてパッドタイプ使い捨ておむつ200の向きを調節しながら、容易にパッドタイプ使い捨ておむつ200を下着100に取付けることができる。
【0050】
<明細書中の用語の説明>
明細書中の以下の用語は、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
【0051】
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
【0052】
・「表側」とは着用した際に着用者の肌に近い方を意味し、「裏側」とは着用した際に着用者の肌から遠い方を意味する。
【0053】
・「表面」とは部材の、着用した際に着用者の肌に近い方の面を意味し、「裏面」とは着用した際に着用者の肌から遠い方の面を意味する。
【0054】
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
【0055】
・「ゲル強度」は次のようにして測定されるものである。人工尿(尿素:2wt%、塩化ナトリウム:0.8wt%、塩化カルシウム二水和物:0.03wt%、硫酸マグネシウム七水和物:0.08wt%、及びイオン交換水:97.09wt%を混合したもの)49.0gに、高吸収性ポリマーを1.0g加え、スターラーで攪拌させる。生成したゲルを40℃×60%RHの恒温恒湿槽内に3時間放置したあと常温にもどし、カードメーター(I.techno Engineering社製:Curdmeter-MAX ME-500)でゲル強度を測定する。
【0056】
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
【0057】
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディ圧縮計測プログラム)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
【0058】
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
【0059】
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【0060】
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、裏面に粘着剤層を有するパッドタイプ使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の、下着の内面に固定されるパッドタイプ吸収性物品に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
A1…伸縮領域、A2…非伸縮領域、B1…後側部分、F1…前側部分、LD…前後方向、LO…脚開口、M…股間部、SF…サイドフラップ部、WD…幅方向、21…液不透過性シート、22…トップシート、23…吸収体、23n…括れ部、25…外装シート、30…粘着剤層、31…剥離シート、40…目印、41…ズレ確認用の目印、42…縦基準線、43…横基準線、60…起き上がりギャザー、64…サイド弾性部材、100…下着、101…最下部、200…パッドタイプ使い捨ておむつ。