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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
G03G15/16 103
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018189458
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020060603
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 悠里
(72)【発明者】
【氏名】山名 健太郎
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-181352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像が形成される画像形成部と、
前記画像形成部で形成された画像が一次転写部で一次転写され、該画像を二次転写部で記録材に転写する無端状の中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架し、前記二次転写部を形成する二次転写内ローラと、
前記中間転写ベルトの移動方向に関して、前記一次転写部よりも下流で前記二次転写部よりも上流で前記中間転写ベルトを張架する第1ローラと、
前記中間転写ベルトの移動方向に関して、前記第1ローラよりも下流で前記二次転写部よりも上流で前記中間転写ベルトを張架する第2ローラと、
前記第1ローラは、前記一次転写部よりも下流で前記二次転写部より上流の領域で前記中間転写ベルトを張架するローラの中で前記中間転写ベルトの巻き掛け角が最大となるローラであり、
前記二次転写内ローラと前記第2ローラとの間で張架されている前記中間転写ベルトの長さをL1、前記二次転写内ローラと前記第1ローラとの間で張架されている前記中間転写ベルトの長さをL2としたときに、
L1/L2<1/2であり、
前記第2ローラのうち、前記中間転写ベルトとの接触する部分の慣性モーメントが30kgmm2以上1500kgmm2以下である特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2ローラの慣性モーメントが50kgmm2以上1000kgmm2以下であることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2ローラの表面は、前記中間転写ベルトの内面に対する静止摩擦係数が0.4以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
画像が形成される画像形成部と、
前記画像形成部で形成された画像が一次転写部で一次転写され、該画像を二次転写部で記録材に転写する無端状の中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架し、前記二次転写部を形成する二次転写内ローラと、
前記中間転写ベルトの移動方向に関して、前記一次転写部よりも下流で前記二次転写部よりも上流で前記中間転写ベルトを張架する第1ローラと、
前記中間転写ベルトの移動方向に関して、前記第1ローラよりも下流で前記二次転写部よりも上流で前記中間転写ベルトを張架する第2ローラと、
前記第1ローラは、前記一次転写部よりも下流で前記二次転写部より上流の領域で前記中間転写ベルトを張架するローラの中で前記中間転写ベルトの巻き掛け角が最大となるローラであり、
前記二次転写内ローラと前記第2ローラとの間で張架されている前記中間転写ベルトの長さをL1、前記二次転写内ローラと前記第1ローラとの間で張架されている前記中間転写ベルトの長さをL2としたときに、
L1/L2<1/2であり、
前記第2ローラの慣性モーメントは、30kgmm2以上1500kgmm2以下であり、
前記第2ローラは、表面に弾性層を備えたローラであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
L1/L2<1/3を満たすことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
0<L1<120mmを満たすことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像が形成される画像形成部と、
前記画像形成部で形成された画像が一次転写部で一次転写され、該画像を二次転写部で記録材に転写する無端状の中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトを張架し、前記二次転写部を形成する二次転写内ローラと、
前記中間転写ベルトの移動方向に関して、前記一次転写部よりも下流で前記二次転写部よりも上流で前記中間転写ベルトを張架する第1ローラと、
前記中間転写ベルトの移動方向に関して、前記第1ローラよりも下流で前記二次転写部よりも上流で前記中間転写ベルトを張架する第2ローラと、
前記第1ローラは、前記一次転写部よりも下流で前記二次転写部より上流の領域で前記中間転写ベルトを張架するローラの中で前記中間転写ベルトの巻き掛け角が最大となるローラであり、
前記二次転写内ローラと前記第2ローラとの間で張架されている前記中間転写ベルトの長さをL1、前記二次転写内ローラと前記第1ローラとの間で張架されている前記中間転写ベルトの長さをL2としたときに、
L1/L2<1/2であり、
前記第2ローラの慣性モーメントは、30kgmm2以上1500kgmm2以下であり、
前記第2ローラは、中空の円筒状の基材であって、鉄から構成された基材を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルトを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中間転写ベルトを用いた画像形成装置では、画像形成部にて形成されたトナー画像は一次転写部にて中間転写ベルトに転写され、二次転写部で紙などの記録媒体にトナー画像が転写される。
【0003】
この二次転写部を記録媒体が通過する際に、中間転写ベルトに速度変動が発生する場合がある。特に記録媒体として厚紙や高剛度紙を用いる場合、また印字速度が速い場合はこの速度変動が大きい。また、この速度変動は、一次転写された中間転写ベルト上の画像や感光ドラム上の画像に影響する。これにより、ベルト幅方向に伸びるスジ状の画像ブレ(以下ショック)や色ずれ等の画像不良が発生する。
【0004】
そこで従来技術として特許文献1では、中間転写ベルトを張架する従動ローラに対し回転慣性制御手段を同軸上に連結させ、その慣性により記録媒体突入時の衝撃が一次転写部へ伝達するのを防ぐ構成が開示されている。これにより、中間転写ベルト速度変動を低減させ、画像不良を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-264292
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では中間転写ベルトを張架する従動ローラに回転慣性制御手段を連結し、その慣性により速度変動伝達を低減している。しかしながら、回転慣性制御手段が連結された従動ローラの位置によっては、速度変動低減効率が低下してしまうことがわかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、二次転写部への記録材突入時における中間転写ベルトの速度変動を効率的に低減させることが可能な画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成することができる、本発明の画像形成装置は以下である。
【0009】
画像が形成される画像形成部と、前記画像形成部で形成された画像が一次転写部で一次転写され、該画像を二次転写部で記録材に転写する無端状の中間転写ベルトと、前記中間転写ベルトを張架し、前記二次転写部を形成する二次転写内ローラと、前記中間転写ベルトの移動方向に関して、前記一次転写部よりも下流で前記二次転写部よりも上流で前記中間転写ベルトを張架する第1ローラと、前記中間転写ベルトの移動方向に関して、前記第1ローラよりも下流で前記二次転写部よりも上流で前記中間転写ベルトを張架する第2ローラと、前記第1ローラは、前記一次転写部よりも下流で前記二次転写部より上流の領域で前記中間転写ベルトを張架するローラの中で前記中間転写ベルトの巻き掛け角が最大となるローラであり、前記二次転写内ローラと前記第2ローラとの間で張架されている前記中間転写ベルトの長さをL1、前記二次転写内ローラと前記第1ローラとの間で張架されている前記中間転写ベルトの長さをL2としたときに、L1/L2<1/2であり、前記第2ローラのうち、前記中間転写ベルトとの接触する部分の慣性モーメントが30kgmm2以上1500kgmm2以下である特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成によれば、二次転写部への記録材突入時における中間転写ベルトの速度変動を効率的に低減させることが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像形成装置の概略構成図
図2】中間転写ベルト周辺の概略構成図
図3】記録媒体の中間転写ベルト接触時の現象を説明する概略構成図
図4】本実施例に係る第一の実施形態の概略構成図
図5】本発明に係る慣性ローラの配置を説明する概略構成図
図6】慣性ローラの慣性モーメントと速度変動及びショックの関係を示すグラフ
図7】慣性ローラの配置と速度変動低減量の関係を示すグラフ
図8】本実施例に係る第二の実施形態の概略構成図
図9】本実施例に係る第三の実施形態の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図に沿って本実施例の実施形態について説明する。なお、画像形成装置の構成部品の寸法、材質及び、その相対位置等は、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、各図において同一の符号を付したものは、同一の構成または作用をなすものであり、これらについての重複説明は適宜省略した。
【0013】
[画像形成装置]
図1は本実施例に係る画像形成装置を断面図で示した概略構成図である。
【0014】
この画像形成装置100は、中間転写ベルト31の水平部に画像形成部1Y、1M、1C、1Kが直列状に配置されたタンデム型中間転写方式の画像形成装置である。画像形成装置100は、外部機器から送信された画像信号に応じて、電子写真方式により記録媒体Sにフルカラー画像を形成する。
【0015】
画像形成部1Y、1M、1C、1Kは感光ドラム11Y、11M、11C、11Kに、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの各色トナー像を形成して中間転写ベルト31上の同一画像位置に一次転写する。
【0016】
イエローのトナー像を形成する感光ドラム11Yの周囲には、帯電器12Yと、露光装置13Yと、現像器14Yと、クリーニング装置15Yが配置されている。帯電器12Yは、感光ドラム11Yの表面を一様に帯電させる。露光装置13Yは、感光ドラム11Yに像光を照射して表面に潜像を形成する。現像器14Yは、感光ドラム11Y上の潜像にトナーを転移させてトナー像を現像する。クリーニング装置15Yは、トナー像の一次転写後に感光ドラム11Yに残留するトナーを除去する。マゼンダ、シアン、ブラックのトナー像を形成する構成は、前記説明において添え字Yを、M、C、Kに置き換えて理解される。
【0017】
中間転写ベルト31は、複数のローラによって張架され、このローラのうちのいずれかに駆動が入力されることで回転する無端状のベルトである。中間転写ベルト31の内周面側には、感光ドラム11Y、11M、11C、11Kに対向する位置に一次転写を行うための一次転写ローラ35Y、35M、35C、35Kが配置され、一次転写部を形成している。
【0018】
一方、給紙カセット61、62、63に格納された記録媒体Sは、給紙ローラ71、72、73のいずれかが回転することで給紙搬送路81へ搬送される。レジストローラ74は、中間転写ベルト31上のトナー像とタイミングを合わせて二次転写部材41と二次転写内ローラ32の接触によって形成される二次転写部に記録材(記録媒体)Sを給送する。二次転写部によって記録媒体S上にトナー像が形成される。二次転写後に中間転写ベルト31上に残留した転写残トナーは、クリーニング装置36によって除去される。
【0019】
次に、トナー像が転写された記録媒体Sは、搬送ベルト42により熱定着装置5に搬送される。熱定着装置5は、記録媒体Sを加熱圧着することによりトナー像を記録媒体Sの表面に固着させてフルカラー画像を定着する。その後、記録媒体Sは、排紙搬送経路82を通って排紙トレイ64に送り出される。
【0020】
[中間転写ベルトの張架構成]
図2は、中間転写ベルト周辺部の概略構成図である。
【0021】
中間転写ベルト31は、複数の張架ローラによって張架されている。張架ローラの一つである上流張架ローラとしての駆動ローラ33は、中間転写ベルト31の移動方向に関して、一次転写部の上流側かつ二次転写部の下流側の領域に配置され、中間転写ベルト31を張架している。
【0022】
また、張架ローラの一つである下流張架ローラとしてのテンションローラ34は、中間転写ベルト31の移動方向に関して、一次転写部の下流側かつ二次転写部の上流側に配置されている。テンションローラ34は、中間転写ベルト31の内面に向けてバネで加圧されており、中間転写ベルト31にテンションを付与している。二次転写内ローラ32は、中間転写ベルト31を張架して二次転写部を形成する。
【0023】
図2中では上記ローラの他に、第一の従動ローラ37、第二の従動ローラ39及び第三の従動ローラ40が配置されている。第一の従動ローラ37は、二次転写内ローラ32とともに二次転写上流面を形成するために、二次転写内ローラ32の上流側に隣接して配置される。第二の従動ローラ39及び第三の従動ローラ40は、一次転写部のベルト面を平面に張架するために、それぞれ一次転写部の下流側と上流側に隣接して配置されている。
【0024】
これらのローラはベルトの張架が主な目的であるため、一般にアルミ三ツ矢管などの軽量化されたローラが用いられることが多い。
【0025】
なお、これらの従動ローラの位置については一例であり、これらをこの位置に限定するものではなく、さらにこれらローラの個数を限定するものではない。
【0026】
(記録媒体の二次転写部突入時に発生する現象)
図3を用いて、記録媒体Sが二次転写部へ突入する際の中間転写ベルトの挙動と、それらが画像に与える影響について説明する。図3は記録媒体Sが二次転写部に給送され、その先端部が中間転写ベルト31に接触する際の二次転写部の概略構成図である。
【0027】
このとき、中間転写ベルト31はベルト内周側に押し込まれ、第一の従動ローラ37はベルトとの間に働く摩擦力によって回転方向に力を受け加速する。第一の従動ローラ37が加速されることで、二次転写内ローラ32と第一の従動ローラ37との間のベルト張架面に湾曲が発生する。この湾曲はその後記録媒体Sの進行とともに解消される。
【0028】
このベルト湾曲の発生・解消によって中間転写ベルトに速度変動が生じ、この速度変動が二次転写部から一次転写部へ伝播することで、一次転写部や感光ドラム上で画像がぶれ、画像不良が発生する。
【0029】
特に記録媒体Sの坪量や剛度が大きい場合、また印字速度が速い場合は、ベルト湾曲が大きくなることで速度変動が大きくなるため、画像不良が発生しやすい。
【実施例1】
【0030】
本実施例では、上述のような記録媒体Sの二次転写部突入時の中間転写ベルト31の湾曲を発生させないように慣性ローラ38を設けている。具体的には、慣性ローラ38の配置する位置を、中間転写ベルト搬送方向に関して、下流張架ローラよりも下流で二次転写部よりも上流に配置する。本実施例では、中間転写ベルト31の移動方向に関して、一次転写部よりも下流側で二次転写部よりも上流の領域においてベルトを張架するローラのうち、ベルトの巻き掛け角が最大となるローラを指す。本実施例では、下流張架ローラは、テンションローラ34である。更に、慣性ローラ38は、下流張架ローラとしてのテンションローラ34と二次転写内ローラ32の間において二次転写部側に配置する。こうすることで、上述した中間転写ベルト31の湾曲の発生を効果的に抑制でき、ベルト速度変動を効果的に低減することができる。
【0031】
図4に本願の第一の実施形態を例示的に示す。先に説明したとおり、本願では、記録媒体Sの二次転写部突入時に中間転写ベルト31が湾曲しないようにするために、第一の従動ローラ37の代わりに円筒状の慣性ローラ38を配置する。
【0032】
図5に慣性ローラ38の配置を示す。本実施例では、慣性ローラ38の位置を上述したで定義した下流張架ローラを基準に規定している。即ち、慣性ローラ38と二次転写内ローラ32の間で張架される中間転写ベルト31の長さをLとする。また、二次転写内ローラ32と、下流張架ローラとしてのテンションローラ34と、の間で張架される中間転写ベルト31の長さをLとする。より詳細に説明すると、Lは、中間転写ベルト31の移動方向において、二次転写部の上流端から慣性ローラ38と中間転写ベルト31が接触する下流端との間に張架されている中間転写ベルト31の長さである。Lは、中間転写ベルト31の移動方向において、二次転写部の上流端からテンションローラ34と中間転写ベルト31が接触する下流端との間に張架されている中間転写ベルト31の長さである。後述するように、本実施例では、L/L<1/2を満たすように慣性ローラ38が配置されている。
【0033】
慣性ローラ38は、慣性モーメントが他の従動ローラよりも大きくなっている。即ち、駆動ローラ33を除いた従動ローラの中で、慣性ローラ38の慣性モーメントが最大となっている。このため、ベルトが記録媒体Sによって押し込まれベルトから通常時より大きな力を与えられたとしても加速しにくい構成となっている。このため、ベルトは安定的に回転し続けることができ、画像不良を発生させない画像形成装置を提供することができる。
【0034】
円筒状の回転体の慣性モーメントJは、以下の式(1)で表される。
J=πρL×(D-d)/32・・・式(1)
【0035】
上記式(1)中、ρは回転体の密度、Lは回転体の軸方向長さ、Dは円筒の外径、dは円筒の内径を表す。慣性ローラ38の慣性モーメントを大きくするために、式(1)から、慣性ローラ38をより重くより大径にすることが求められる。
【0036】
特に径が支配的であるが、過大な重量化を避けるために、本実施例では例えば、以下のような構成としている。
ρ=7850kg/m
L=364mm
D=30mm
d=19.8mm
【0037】
即ち、慣性ローラ38は、鉄からなる円筒状の中空管である基材38aを有する。そして、慣性ローラ38の慣性モーメントJは184kgmmとした。
【0038】
さらに中間転写ベルト31に対して慣性ローラ38が滑らないようにするために、慣性ローラ38の表面に弾性層(高摩擦層)を設けている。即ち、慣性ローラ38の表面に30μm程度のウレタンコーティング層38bを設けている。また、本実施例では、慣性ローラ38の表面の前記中間転写ベルトの内面に対する静止摩擦係数が0.4以上としている。こうすることで、慣性ローラ38による中間転写ベルト31の速度変動抑制効果を高めることができる。
【0039】
なお、ローラの形態としては中実でもよく、また高摩擦層を設ける手段としてはローラ表面にEPDMゴム等を巻き付ける等の策をとってもよい。
【0040】
図6に、L=0.26Lであるときの、慣性ローラ38の慣性モーメントと、記録媒体S(坪量350gsmの高剛度紙)の二次転写部突入時の速度変動及び成果物のショックの程度(画像不良の度合い)の関係をそれぞれ表したグラフを示す。
【0041】
ショックの程度は目視によって1~10の10段階で評価され、数字が小さいほど画像不良の度合いが悪く、10は画像不良が見られない状態で、8以上を画像不良が抑制できている状態としている。
【0042】
図6から、慣性モーメントが大きい方がより速度変動を低減でき、ショックを抑制できることが確認できる。また、慣性モーメントは30kgmm以上でショックを抑える効果があることが分かる。
【0043】
図7は、慣性ローラの配置(L/L)と速度変動低減量の関係を示すグラフである。図7の縦軸は、慣性ローラ38の慣性モーメントが21kgmmのときの慣性ローラの速度変動と、慣性ローラ38の慣性モーメントが100kgmmのときの速度変動との差分を示している。即ち、慣性モーメントを21kgmmから100kgmmまで大きくしたときの速度変動減少量である。図7の横軸は、L/Lである。Lは一定であり、中間転写ベルト31の移動速度は174mm/s、記録媒体Sは坪量350gsmの高剛度紙としている。尚、このときのLの長さは230mmであった。
【0044】
図7より、L/Lが小さいほど、慣性ローラの慣性モーメントを大きくしたときの速度変動低減効果が大きいことが分かる。この理由としては、慣性ローラ38が中間転写ベルト31に対してダンパの役割を果たしていることが考えられる。ダンパは速度に比例する抵抗力を与えるため、慣性ローラ38をより速度変動の大きい二転内ローラ32に近い位置、即ちL/Lが小さくなる位置に配置することで、より速度変動を抑制することができると考えられる。そこで、本実施例では、0<L<120mmとしている。より好ましくは、0<L<100mmである。
【0045】
/L<1/2であるときに速度変動の低減が確認でき、L/L<2/5を満たす場合に、十分な速度変動低減効果が確認できた。特にL/L<1/3を満たす場合に高い速度変動低減効果が確認できた。
【0046】
図6及び図7から、慣性ローラ38は、慣性モーメント30kgmm以上1500kgmm以下かつL/L<1/2であることが望ましい。また、慣性ローラ38の慣性モーメントは、より好ましくは、50kgmm以上1000kgmm以下が好ましい。また、慣性ローラ38の位置としては、L/L<1/3を満たすことがより効率よく画像不良を抑制でき好ましい。本実施例では、慣性モーメントを増加させるために、慣性ローラ38にフライホイールを取り付けずにローラ自体の慣性モーメントを高めている。これにより組立性の向上、装置の複雑化を抑制することができる。即ち、本実施例では、慣性ローラ38のうち、中間転写ベルト31と接触しているローラ部(両端の軸部を除く大径部)の慣性モーメントが、30kgmm以上1500kgmm以下となるように構成されている。本実施例における慣性ローラ38の回転体の軸方向長さLとは、慣性ローラ38が中間転写ベルトと接触している円筒面のローラ部の軸方向長さである。即ち、慣性ローラ38の両端の軸部を含まない。本実施例では、中間転写ベルトの幅は、360mmである。即ち、本実施例では慣性ローラ38のローラ部の長さは、中間転写ベルトの幅よりも短い構成となっている。
【実施例2】
【0047】
図8に、本願の第二の実施形態を例示的に示す。
【0048】
第一の実施形態と異なるのは、二次転写内ローラ32と慣性ローラ38の間に、第一の従動ローラ37が設置されている点である。この第一の従動ローラ37は、記録媒体Sと中間転写ベルト31の接触領域を増加させる等の効果がある。
【0049】
実施例1で規定した配置関係を満たせば、このように二次転写内ローラ32と慣性ローラ38の間に他のローラが設置されていてもよい。
【実施例3】
【0050】
本実施例では、第一及び第二の実施形態に対して、慣性ローラ38の構成を変更している。それ以外は第一及び第二の実施形態と同じである。これまでの第一及び第二の実施形態では、ベルトが張架されるローラそのものの慣性モーメントを大きくしていた。本実施例では、ベルトが張架されるローラ部分の慣性モーメントは小さくなっている。そして、図9で示すように慣性ローラ38の端部にフライホイール42を取り付けて慣性ローラ38の慣性モーメントを大きくしている。即ち、本実施例では、慣性ローラ38の同軸上にフライホイール38cを設けている。このとき、フライホイール42を含まないローラ部の慣性モーメントは、特に限定されない。例えば、アルミ三ツ矢管等軽量化されたローラであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
31 中間転写ベルト
32 二次転写内ローラ
33 上流張架ローラ(駆動ローラ)
34 下流張架ローラ(テンションローラ)
37 第一の従動ローラ
38 慣性ローラ
38a 基材
38b 高摩擦層
39 第二の従動ローラ
40 第三の従動ローラ
S 記録媒体
11 感光ドラム
35 一次転写ローラ
41 二次転写体
42 フライホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9