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特許7195859液体供給装置、液体吐出装置、及び液体供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】液体供給装置、液体吐出装置、及び液体供給方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221219BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20221219BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B41J2/175 131
B41J2/175 309
B41J2/175 121
B41J2/18
B41J2/19
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018189673
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020059141
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敦士
(72)【発明者】
【氏名】中川 善統
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】深澤 拓也
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-161973(JP,A)
【文献】特開2016-043601(JP,A)
【文献】特開2016-030365(JP,A)
【文献】特開2016-221848(JP,A)
【文献】特開2007-237552(JP,A)
【文献】特開2015-136903(JP,A)
【文献】特開2013-173274(JP,A)
【文献】特開2013-067032(JP,A)
【文献】特開2011-240628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0019575(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するメインタンクと、
前記メインタンクから供給される液体を貯留するサブタンクと、
前記メインタンクから前記サブタンクへの液体供給動作を行う液体供給手段と、
前記サブタンク内の所定の高さに液体があるか否かを検出する液体検出手段と、
前記液体供給手段の前記液体供給動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記液体供給動作が開始してから前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出するまでの間の液体供給条件に基づいて、前記液体検出手段が前記サブタンク内の前記所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が前記液体供給動作を継続する継続時間を設定することを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記液体供給条件は、前記液体供給動作が開始してから前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出するまでの液体供給時間であり、
前記制御手段は、前記液体供給時間が第1の時間の場合は前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が第1の継続時間のあいだ前記液体供給動作を継続するように制御し、前記液体供給時間が前記第1の時間より長い第2の時間の場合は前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が前記第1の継続時間より長い第2の継続時間のあいだ前記液体供給動作を継続するように制御することを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記液体供給条件は、前記液体供給動作が開始してから前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出するまでの間に前記サブタンク内に供給された液体供給量であり、
前記制御手段は、前記液体供給量が第1の量の場合は前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が第1の継続時間のあいだ前記液体供給動作を継続するように制御し、前記液体供給量が前記第1の量より多い第2の量の場合は前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が前記第1の継続時間より長い第2の継続時間のあいだ前記液体供給動作を継続するように制御することを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項4】
前記液体供給条件は、前記メインタンクの内部に保持されている体に対する泡の比率であり、
前記制御手段は、前記比率が第1の値の場合は前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が第1の継続時間のあいだ前記液体供給動作を継続するように制御し、前記比率が前記第1の値より大きい第2の値の場合は前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が前記第1の継続時間より長い第2の継続時間のあいだ前記液体供給動作を継続するように制御することを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項5】
前記液体供給条件は、前記メインタンクのサイズであり、
前記制御手段は、前記サイズが第1のサイズである場合は前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が第1の継続時間のあいだ前記液体供給動作を継続するように制御し、前記サイズが第1のサイズより小さい第2のサイズである場合は前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が前記第1の継続時間より長い第2の継続時間のあいだ前記液体供給動作を継続するように制御することを特徴とする請求項1に記載の液体供給装置。
【請求項6】
前記液体検出手段は、前記サブタンクの内部における前記所定の高さに配置された電極を含むことを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項7】
前記液体供給手段は、前記メインタンクから前記サブタンクに至る流路と、
前記流路の連通、遮断を切り換える弁と、により構成されることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の液体供給装置。
【請求項8】
前記液体供給手段は、前記サブタンクに負圧を発生させる負圧発生手段を、さらに備えることを特徴とする請求項に記載の液体供給装置。
【請求項9】
液体を貯留するメインタンクからサブタンクへ液体を供給する液体供給方法であって、
前記メインタンクから前記サブタンクへと液体を供給する液体供給工程と、
前記サブタンク内の所定の高さに液体があるか否かを検出する検出工程と
前記液体供給工程が開始してから前記検出工程により前記サブタンク内の前記所定の高さに液体があると検出されるまでの間の液体供給条件に基づいて、前記検出工程により前記サブタンク内の前記所定の高さに液体があると検出されてから前記液体供給工程を継続する継続時間を設定する時間設定工程と、を備えることを特徴とする液体供給方法。
【請求項10】
メインタンクから供給される液体を貯留するサブタンクと、
前記サブタンクから供給される液体を吐出する液体吐出ヘッドと、を備えた液体吐出装置であって、
前記メインタンクから前記サブタンクへの液体供給動作を行う液体供給手段と、
前記サブタンク内の所定の高さに液体があるか否かを検出する液体検出手段と、
前記液体供給手段の前記液体供給動作を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記液体供給動作が開始してから前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出するまでの間の液体供給条件に基づいて、前記液体検出手段が前記サブタンク内の所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が前記液体供給動作を継続する継続時間を設定することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
前記サブタンクから前記液体吐出ヘッドへ前記液体を供給するための供給流路と、
前記液体吐出ヘッドから前記サブタンクへ前記液体を回収するための回収流路と、を備え、
前記サブタンク、前記供給流路、前記液体吐出ヘッド、及び前記回収流路によって、体が循環する循環経路が構成されていることを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メインタンクからサブタンクへ液体を供給する液体供給装置、これを備えた液体吐出装置、及び液体供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、メインタンクに貯留されているインクを貯留部としてのサブタンクへ供給し、サブタンクに貯留されているインクを記録ヘッドから吐出して記録を行う記録装置が開示されている。サブタンクには、当該サブタンクの内部に供給されたインクの液面を検出する液面検出手段が設けられている。メインタンクからサブタンクへのインクの供給は、サブタンク内のインクの液面が液面検出手段によって検出された後、さらに一定時間行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010―4208151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メインタンクからサブタンクへとインクを供給するインク供給方式では、メインタンク内の泡がインクと共にサブタンクへ混入し、サブタンク内で泡立ちを発生させることがある。この場合、目標とするインク量がサブタンクに供給される前に、泡を含む液面が液体検出手段で検出されるため、その検出結果に従ってインクの供給を停止させた場合には、サブタンクにおいてインクの充填不足が発生する。
【0005】
特許文献1では、液面検出手段によって液面が検出された後も、インク供給動作を一定回数(一定時間)行うことによって一定量のインクを供給している。このため、サブタンクに混入した泡によって誤検出が発生したとしても、サブタンクへのインクの充填不足を補い得る場合もある。
【0006】
しかしながら、メインタンクからサブタンク内に発生する泡量(泡の占有容積)は、インクの供給条件によって種々変化する。例えば、サブタンクに混入する泡量はインク供給量と相関があり、インク供給量が多いほどサブタンクへ混入する泡量も多くなる。サブタンクに生じる泡量が多くなった場合、インク量の検出誤差も大きくなり、サブタンクにおいてインクの充填不足が発生する。従って、特許文献1のように、液面検出手段による液面検出後に一定量のインクを供給したとしても、サブタンク内に混入、発生する泡量によっては適正量のインクを供給できない可能性がある。
【0007】
本発明は、液体を貯留する貯留部に対して適正な量の液体を供給することが可能な液体供給装置、液体吐出装置、及び液体供給方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体を貯留するメインタンクと、前記メインタンクから供給される液体を貯留するサブタンクと、前記メインタンクから前記サブタンクへの液体供給動作を行う液体供給手段と、前記サブタンク内の所定の高さに液体があるか否かを検出する液体検出手段と、前記液体供給手段の前記液体供給動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記液体供給動作が開始してから前記液体検出手段が前記所定の高さに液体があると検出するまでの間の液体供給条件に基づいて、前記液体検出手段が前記サブタンク内の前記所定の高さに液体があると検出した後に前記液体供給手段が前記液体供給動作を継続する継続時間を設定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、液体を貯留するメインタンクからサブタンクへ液体を供給する液体供給方法であって、前記メインタンクから前記サブタンクへと液体を供給する液体供給工程と、前記サブタンク内の所定の高さに液体があるか否かを検出する検出工程と前記液体供給工程が開始してから前記検出工程により前記サブタンク内の前記所定の高さに液体があると検出されるまでの間の液体供給条件に基づいて、前記検出工程により前記サブタンク内の前記所定の高さに液体があると検出されてから前記液体供給工程を継続する継続時間を設定する時間設定工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体を貯留する貯留部に対して適正な量の液体を供給することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】記録装置が待機状態にあるときの図である。
図2】記録装置の制御構成図である。
図3】記録装置が記録状態にあるときの図である。
図4】記録装置がメンテナンス状態にあるときの図である。
図5】インク循環系の流路構成を説明する図である。
図6】吐出口と圧力室とを説明する図である。
図7】サブタンクにインクを充填した状態を示す図である。
図8】上流流路にインクを充填した状態を示す図である。
図9】記録ヘッドにインクを充填した状態を示す図である。
図10】回収流路にインクを充填した状態を示す図である。
図11】第1の実施形態における初期充填シーケンスを示すフローチャートである。
図12】サブタンクへのインク供給時間と液面高さとの関係を示す図である。
図13】インク供給量と供給継続時間との関係を示す図である。
図14】第2の実施形態におけるサブタンクへのインク供給時間と液面高さとの関係を示す図である。
図15】メインタンクのサイズと供給継続時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る液体吐出装置の実施形態について詳細に説明する。以下の説明においては、液体吐出装置として、インクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)を例に挙げて説明する。なお、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、「インク」は、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を意味する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態で使用する記録装置1の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド(液体吐出ヘッド)8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
【0014】
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFによって自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
【0015】
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0016】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19及びフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド(液体吐出ヘッド)8の上流側及び下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0017】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0018】
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。即ち、記録ヘッド8は、複数色のインクを吐出可能に構成されている。
【0019】
記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。
【0020】
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では、図3に示す循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
【0021】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8の吐出性能を維持・回復するためのメンテナンス動作(回復処理)を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
【0022】
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する制御手段として機能する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0023】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
【0024】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
【0025】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0026】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0027】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
【0028】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0029】
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
【0030】
記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
【0031】
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。図1でも説明したように、本実施形態のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。 図4は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図4に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から図4における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0032】
一方、記録ヘッド8を図3に示す記録位置から図4に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
(インク供給ユニット)
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置1で採用するインク供給ユニット15を示す図である。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14から記録ヘッド8へインクを供給する構成である。ここでは、1色のインクについての構成を示しているが、実際にはこのような構成が、インク色ごとに用意されている。インク供給ユニット15は、基本的に図2で示したインク供給制御部209によって制御される。以下、ユニットの各構成について説明する。
【0033】
インクは主にサブタンク151と記録ヘッド8の間を循環する。記録ヘッド8では画像データに基づいてインクの吐出動作が行われ、吐出されなかったインクが再びサブタンク151に回収される。
【0034】
所定量のインクを収容するサブタンク151は、記録ヘッド8へインクを供給するための供給流路C2と記録ヘッド8からインクを回収するための回収流路C4に接続されている。すなわち、サブタンク151、供給流路C2、記録ヘッド8、及び回収流路C4によってインクが循環する循環経路が構成される。
【0035】
サブタンク151には複数のピンを有する液面検出手段151aが設けられている。本実施形態では、液面を検出するための3本の電極ピン(第1ピンE1(第1電極)、第2ピンE2(第2電極)、第3ピンE3(第3電極))がサブタンク151内に鉛直方向に沿って配置されている。サブタンク151の底部と第1ピンE1の下端との鉛直方向における距離は、サブタンク151の底部と第2ピンE2の下端との鉛直方向における距離より短い。このため、サブタンク151内にインクが供給されたとき、まずインクの液面がまず第1ピンE1に接触し、その後、所定量のインクが供給された時点で第2ピンE2に接触する。また、第3ピンとサブタンクとの鉛直方向の距離は、第1ピンE1とサブタンク151の底部との鉛直方向における距離以下に設定されている。従って少なくとも第1ピンE1又は第2ピンE2が液面に接触する状態では、第3ピンE3は常に液面に接触した状態にある。
【0036】
第1ピンE1と第3ピンE3、及び第2ピンE2と第3ピンE3との間には、それぞれ所定の電圧が印加されており、第1ピンE1及び第2ピンE2はインクと接触することによって第3ピンE3と導通する。従って各ピンが導通状態にあるか非導通の状態にあるかに基づいて、インク液面の高さ、即ちサブタンク151内のインク残量を把握することができる。
【0037】
減圧ポンプP0は、サブタンク151の内部を減圧するための負圧発生源(負圧発生手段)である。大気開放弁V0は、サブタンク151の内部を大気に連通させるか否かを切り替えるための弁である。メインタンク141は、サブタンク151へ供給されるインク(液体)を収容するタンクである。メインタンク141は可撓性部材で構成され、可撓性部材の容積変化によってサブタンク151へインクが供給される。メインタンク141は、記録装置本体に対して着脱可能な構成である。サブタンク151とメインタンク141を接続するタンク接続流路C1の途中には、サブタンク151とメインタンク141との連通、遮断を切り換えるように開閉するタンク供給弁V1が配されている。
【0038】
以上の構成のもと、インク供給制御部209は、液面検出手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量より少なくなったことを検出すると、大気開放弁V0、供給弁V2、回収弁V4、及びヘッド交換弁V5を閉じ、タンク供給弁V1を開く。この状態において、インク供給制御部209は減圧ポンプP0を作動させる。すると、サブタンク151の内部が負圧となりメインタンク141からサブタンク151へインクが供給される。液面検出手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量に達すると、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1を閉じ減圧ポンプP0を停止する。なお、このサブタンク151へのインク供給動作(液体供給動作)は、インク供給ユニット15内でインクが正常に流動している場合に行われる動作である。後述のインク漏れ検出処理によってインク供給ユニット15内でインク漏れが生じていると判定された場合には、インクの供給は遮断される。
【0039】
供給流路C2は、サブタンク151から記録ヘッド8へインクを供給するためのインク流路であり、その途中には供給ポンプP1と供給弁V2が配されている。記録動作中は、供給弁V2を開いた状態で供給ポンプP1を駆動することにより、記録ヘッド8へインクを供給しつつ循環経路においてインクを循環させることができる。記録ヘッド8によって単位時間あたりに消費されるインクの量は画像データに応じて変動する。供給ポンプP1の流量は、記録ヘッド8が単位時間あたりのインク消費量が最大となる吐出動作を行った場合にも対応できるように決定されている。
【0040】
リリーフ流路C3は、供給弁V2の上流側であって、供給ポンプP1の上流側と下流側を接続する流路であり、リリーフ流路C3の途中には差圧弁であるリリーフ弁V3が配される。供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量(液体供給量)が、記録ヘッド8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2における単位時間あたりの流量との合計値よりも多い場合は、リリーフ弁V3は自身に作用する圧力に応じて開放される。これにより、供給流路C2の一部とリリーフ流路C3とで構成される巡回流路が形成される。上記リリーフ流路C3の構成を設けることにより、記録ヘッド8に対するインク供給量は記録ヘッド8でのインク消費量に応じて調整され、循環経路内の流圧を画像データによらず安定させることができる。
【0041】
回収流路C4は、記録ヘッド8からサブタンク151へインクを回収するための流路であり、その途中には回収ポンプP2と回収弁V4が配されている。回収ポンプP2は、循環経路内にインクを循環させる際、負圧発生源となって記録ヘッド8よりインクを吸引する。回収ポンプP2の駆動により、記録ヘッド8内のIN流路80bとOUT流路80cの間に適切な圧力差が生じ、IN流路80bとOUT流路80cの間でインクを循環させることができる。記録ヘッド8内の流路構成については後に詳しく説明する。
【0042】
回収弁V4は、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときのインクの逆流を防止するための弁である。本実施形態の循環経路では、サブタンク151は記録ヘッド8よりも鉛直方向において上方に配置されている(図1参照)。このため、供給ポンプP1や回収ポンプP2を駆動していないとき、サブタンク151と記録ヘッド8との水頭差によって、サブタンク151から記録ヘッド8へインクが逆流してしまうおそれがある。このような逆流を防止するため、本実施形態では回収流路C4に回収弁V4を設けている。
【0043】
同様に供給弁V2とヘッド交換弁V5も、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときに、サブタンク151から記録ヘッド8へのインクの逆流を防止するための弁として機能する。
【0044】
ヘッド交換流路C5は、供給流路C2とサブタンク151内の空気層(インクが収容されていない部分)とを互いに接続する流路であり、その途中にはヘッド交換弁V5が配されている。ヘッド交換流路C5の一端は供給流路C2における記録ヘッド8の上流に接続し、他端はサブタンク151の上方に接続して内部の空気層と連通する。ヘッド交換流路C5は、記録ヘッド8を交換する際や記録装置1を輸送する際など、使用中の記録ヘッド8からインクを回収するときに利用される。ヘッド交換弁V5は、記録装置1にインクを初期充填するときと記録ヘッド8からインクを回収するとき以外は閉じるように、インク供給制御部209によって制御される。また、上述した供給弁V2は、供給流路C2とヘッド交換流路C5との接続部と、リリーフ流路C3と供給流路C2との接続部の間に設けられている。
【0045】
次に、記録ヘッド8内の流路構成について説明する。供給流路C2より記録ヘッド8に供給されたインクは、フィルタ83を通過した後、弱い負圧(絶対圧の高い負圧)を発生する第1の負圧制御ユニット81と、強い負圧(絶対圧の低い負圧)を発生する第2の負圧制御ユニット82とに供給される。これら第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82における圧力は、回収ポンプP2の駆動により適正な範囲で生成される。
【0046】
インク吐出部80には、複数の吐出口が配列された記録素子基板80aが複数配置され、長尺の吐出口列が形成されている。第1の負圧制御ユニット81より供給されるインクを導くための共通供給流路80b(IN流路)と、第2の負圧制御ユニット82より供給されるインクを導くための共通回収流路80c(OUT流路)も、記録素子基板80aの配列方向に延在している。さらに個々の記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路が形成されている。このため、個々の記録素子基板80aにおいては、相対的に負圧の弱い共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い共通回収流路80cへ流出するような、インクの流れが生成される。記録素子基板80aで吐出動作が行われると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口から吐出されることによって消費されるが、吐出されなかったインクは共通回収流路80cを経て回収流路C4へ移動する。
【0047】
図6(a)は記録素子基板80aの一部を拡大した平面模式図であり、図6(b)は、図6(a)の断面線VIb-VIbにおける断面模式図である。記録素子基板80aには、インクが充填される圧力室1005とインクを吐出する吐出口1006が設けられている。圧力室1005において、吐出口1006と対向する位置には記録素子1004が設けられている。また、記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路1008と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路1009とが吐出口1006毎に複数形成されている。
【0048】
上述の構成により、記録素子基板80aでは、相対的に負圧の弱い(圧力の高い)共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い(圧力の低い)共通回収流路80cへ流出するインクの流れが生成される。より詳しくは、共通供給流路80b→個別供給流路1008→圧力室1005→個別回収流路1009→共通回収流路80cの順にインクが流れる。記録素子1004によってインクが吐出されると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口1006から吐出されることによって記録ヘッド8の外部へ排出される。一方、吐出口1006から吐出されなかったインクは、共通回収流路80cを経て回収流路C4へ回収される。
【0049】
以上の構成のもと、記録動作を行うとき、インク供給制御部209はタンク供給弁V1とヘッド交換弁V5を閉じ、大気開放弁V0、供給弁V2及び回収弁V4を開き、供給ポンプP1及び回収ポンプP2を駆動する。これにより、サブタンク151→供給流路C2→記録ヘッド8→回収流路C4→サブタンク151の循環経路が確立する。供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量が記録ヘッド8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2における単位時間あたりの流量の合計値よりも多い場合は、供給流路C2からリリーフ流路C3にインクが流れ込む。これにより、供給流路C2から記録ヘッド8に流入するインクの流量が調整される。
【0050】
記録動作を行っていないとき、インク供給制御部209は供給ポンプP1及び回収ポンプP2を停止し、大気開放弁V0、供給弁V2及び回収弁V4を閉じる。これにより、記録ヘッド8内のインクの流れは止まり、サブタンク151と記録ヘッド8の水頭差による逆流も抑制される。また、大気開放弁V0を閉じることで、サブタンク151からのインク漏れやインクの蒸発が抑制される。
【0051】
記録ヘッド8からインクを回収するとき、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1、供給弁V2及び回収弁V4を閉じ、大気開放弁V0及びヘッド交換弁V5を開き、減圧ポンプP0を駆動する。これにより、サブタンク151内が負圧状態になり、記録ヘッド8内のインクは、ヘッド交換流路C5を経由してサブタンク151へ回収される。このように、ヘッド交換弁V5は、通常の記録動作や待機時には閉じられており、記録ヘッド8からインクを回収する際に開放される弁である。但し、記録ヘッド8への初期充填においてヘッド交換流路C5にインクを充填する際もヘッド交換弁V5は開放される。
【0052】
<インク充填>
図5を参照して説明したインク循環系におけるインクの充填について説明する。インク充填は、例えば、インクタンクユニット14にメインタンク141が取り付けられた後、サブタンク151、記録ヘッド8及びインクが循環する流路にインクを充填するために行われる。なお、充填動作は記録装置1の着荷時に限らず、記録ヘッド8の交換後や輸送のために記録ヘッド8内のインクをサブタンク151内へ全て回収した後にも行われる。
【0053】
図7は、メインタンク141からサブタンク151へインクを供給する際のインク循環系の状態を示す。ここでは、大気開放弁V0、供給弁V2、ヘッド交換弁V5及び回収弁V4は閉じ(CLOSE)、タンク供給弁V1が開いている(OPEN)。また、供給ポンプP1及び回収ポンプP2は停止している。この状態で減圧ポンプP0を駆動すると、サブタンク151内に負圧が生じ、メインタンク141からタンク接続流路C1を介してサブタンク151へインクが供給される。サブタンク151に所定量のインクが供給されると、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1を閉じ、減圧ポンプP0を停止する。その後、インク供給制御部209は大気開放弁V0を開き、負圧になっているサブタンク151内の圧力を大気開放する。
【0054】
次いで、インク供給制御部209は、サブタンク151からインクを供給し、上流流路にインクを充填する。上流流路とは、サブタンク151と記録ヘッド8との間にある流路の総称であり、供給流路C2、リリーフ流路C3及びヘッド交換流路C5を含む。
【0055】
図8は、上流流路にインク充填する際のインク循環系の状態を示す。ここでは、サブタンク151へのインクの供給が完了した状態から、供給弁V2及びヘッド交換弁V5が開いている。この状態で供給ポンプP1が駆動されると、サブタンク151からインクが供給され、上流流路にインクが充填される。なお、回収ポンプP2は停止しており、差圧弁としての構成を有する第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82には所定の負圧がかからないため、両負圧制御ユニット81、82は閉塞されている。これにより、記録ヘッド8にはインクが供給されない。上流流路のインク充填が完了した後、インク供給制御部209は、記録ヘッド8にインクを充填する。
【0056】
図9は、記録ヘッドにインクを充填する際のインク循環系の状態を示す。図9に示す段階では、上流流路へのインク充填処理により、インクは記録ヘッド8の手前の供給流路C2まで供給された状態にある。ここで、インク供給制御部209は、キャップユニット10を駆動し、記録ヘッド8のキャップを行う。すなわち、キャップユニット10のキャップ部材10aによって、記録ヘッド8の吐出口面8aを覆う。次に、インク供給制御部209は、キャップユニット10の減圧ポンプP3を駆動する。すなわち、供給ポンプP1でインクを送液しながら、キャップユニット10内に負圧を発生させる。この負圧によって、記録ヘッド8内の負圧制御ユニットが開放され、吐出口までインクを引き込むことで、インクを充填する。インク供給制御部209は、所定時間の経過後、供給ポンプP1及び減圧ポンプP3を停止する。記録ヘッド8のインク充填が完了した後、インク供給制御部209は回収流路C4にインクを充填する。
【0057】
図10は、回収流路C4にインクを充填する際のインク循環系の状態を示す。ここでは、記録ヘッド8へのインクの充填が完了した状態から回収弁V4が開き、大気開放弁V0が閉じた状態で、サブタンク151の減圧ポンプP0が駆動されている。インク供給制御部209は、回収弁V4が開き、大気開放弁V0が閉じた状態で、サブタンク151の減圧ポンプP0を駆動する。減圧ポンプP0の駆動によって発生したサブタンク151内の負圧により、記録ヘッド8から回収流路C4へインクが流れる。インク供給制御部209は、回収流路C4のインク充填が完了した後、減圧ポンプP0を停止する。
【0058】
以上のように、サブタンク151、記録ヘッド8、及び流路内にインクを充填することにより、記録ヘッド8によるインク吐出動作、すなわち記録動作が可能になる。記録動作に際し、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1、ヘッド交換弁V5を閉じ、大気開放弁V0、供給弁V2、リリーフ弁V3、及び回収弁V4を開き、供給ポンプP1及び回収ポンプP2を駆動する。これにより、サブタンク151から記録ヘッド8を経て再びサブタンク151に戻るインク循環を行いつつ、記録ヘッド8からインクを吐出させて記録媒体への記録を行うことが可能になる。
【0059】
次に、インク循環系にインクを充填するためのインク充填シーケンス、及び同シーケンスの各工程においてサブタンク151内に貯留されるインク量について説明する。なお、以下の説明では、インクが供給されていない初期状態のインク循環系にインクを充填する、所謂初期充填を行う際のインク充填シーケンスを例に採り説明する。
【0060】
図11(a)はインク充填シーケンスを示すフローチャート、図11(b)は同図(a)に示す各工程において、サブタンク151内に貯留されるインク量を示す図である。図11(a)のフローチャートの各工程番号に付されている「S」は、工程(ステップ)を意味する。
【0061】
初期状態のインク循環系には、図5に示すようにインクが供給されておらず、サブタンク151にもインクは貯留されていない。図11(b)ではこの状態をL0で表している。この初期状態のインク循環系に対し、S1では1回目のインク供給動作を行う。この1回目のインク供給動作では、メインタンク141からサブタンク151へインクを供給し、サブタンク151内に所定量のインクを充填する。具体的には、液面検出手段151aの第2ピンE2が導通状態となるまでインクを供給した後、さらに所定の供給継続時間が経過するまでインクを供給する。これにより、サブタンク151には、後に行われる上流流路へのインク充填動作及び記録ヘッド8へのインク充填動作に必要とされるインク量以上のインクが供給される。このときのサブタンク151に貯留されるインク量を図11(b)においてL1で示す。
【0062】
なお、供給継続時間は、メインタンク141からサブタンク151へのインク供給条件(液体供給条件)に伴って変化する。この供給継続時間、インク供給条件については後に詳細に説明する。また、この1回目のインク供給動作を行う際のインク供給系の各部の動作は、図7において説明した通りであり、ここでは説明を省略する。
【0063】
次に、S2では、サブタンク151に充填したインクを上流流路へと送り、上流流路にインクを充填する(S2)。これにより、サブタンク151に貯留されているインク量は、図11(b)のL2に示すように減少する。なお、上流流路にインクを充填する際のインク供給系の各部の動作は、図8において説明した通りである。
【0064】
次に、S3では、上流流路まで供給されているインクをさらに下流側へと流動させることによって、記録ヘッド8に対するインクの充填を行う。この充填動作によって、サブタンク151に貯留されているインク量は、図11(b)のL3に示すように減少する。その結果、インクは液面検出手段151aの第1ピンE1から離間し、第1ピンE1は非導通の状態となる。記録ヘッド8へのインク充填動作を行う際のインク供給系の各部の動作は、図9において説明した通りである。
【0065】
次に、S4では、サブタンク151に対する2回目のインク供給動作を行う。この2回目のインク供給動作は1回目のインク供給動作と同様に行う。すなわち、図7に示すように、大気開放弁V0、供給弁V2、ヘッド交換弁V5及び回収弁V4を閉じる一方、タンク供給弁V1を開き、供給ポンプP1及び回収ポンプP2を停止させた状態で、減圧ポンプP0を駆動する。これにより、メインタンク141からサブタンク151へとインクが供給される。この2回目のインク供給動作によってサブタンク151には、図11(b)のL1に示す量のインクが貯留される。
【0066】
次に、S5では、記録ヘッド8を通じて回収流路C4へのインクの充填を行う。これにより、インク供給系全体にインクが充填される。このとき、サブタンク151に貯留されているインク量は、図11(b)のL4に示すように減少する。これにより、インクは第1電極E1から離間し、第1電極E1は非導通の状態となる。なお、回収流路C4にインクを充填する際のインク供給系の各部の動作は、図10において説明した通りである。
【0067】
次に、S6では、メインタンク141からサブタンク151への3回目のインク供給動作を行う。この3回目のインク供給動作は、1回目及び2回目のインク供給動作と同様に行う。これにより、サブタンク151には、図11(b)のL1に示す量のインクが貯留される。
【0068】
この後、S7では、記録ヘッド8内に存在する泡を除去するため、キャップユニット10を駆動し、記録ヘッド8から強制的にインクを吸引する吸引回復処理を行う。本実施形態では、この吸引回復処理において、チョーク吸引と称する吸引回復処理を行う。チョーク吸引は、次のようにして行う。まず、供給弁V2、ヘッド交換弁V5、及び回収弁V4を閉じ、記録ヘッド8aの吐出口面をキャップ部材10aで覆いながら、減圧ポンプP3を駆動し、キャップ部材10a内の負圧を高める(絶対圧を低下させる)。この後、キャップ部材10a内の負圧が所定値まで高まった時点で、供給弁V2を開き、供給ポンプP1を駆動する。これにより、記録ヘッド8内に形成されている流路(IN流路80b、OUT流路80c等)に存在する気泡がインクと共に強力に吸引され、キャップ部材10aに排出される。このチョーク吸引により、サブタンク151に貯留されているインク量は、図11(b)のL5に示すように減少する。
【0069】
次に、S8では、メインタンク141からサブタンク151への4回目のインク供給動作を行う。この4回目のインク供給動作は、1回目~3回目のインク供給動作と同様に行う。これにより、サブタンク151には、図11(b)のL1に示す量のインクが貯留される。
【0070】
次に、S9では、サブタンク151と記録ヘッド8との間でインクの循環を行い、インク流路全体に残留する泡をサブタンク151へ送ることによって、インク流路内の泡を除去する。この動作では、サブタンク151内に貯留されているインク量はL1に維持されている。
【0071】
この後S10では、記録ヘッド8に対して吸引ワイピング動作を実行し、記録ヘッド8の吐出口に残留する気泡の除去を行う。この吸引ワイピング動作は、吐出口面を払拭しつつ、吐出口面に形成されている吐出口から吸引を行う動作である。この吸引ワイピング動作によって、サブタンク151内に貯留されているインク量は僅かに減少し、図11(b)のL6に示すようになる。
【0072】
以上のように、サブタンク151に貯留されているインク量は、初期充填シーケンスの各工程に応じて図11(b)に示すように変化する。また、初期充填動作に限らず、メインタンク141からサブタンク151へのインクの供給量は、インク供給動作を行う直前にサブタンク151内に貯留されているインク量によって決定される。
【0073】
本実施形態では、メインタンク141からサブタンク151へのインク供給動作は4回行われる。そして、それぞれのインク供給動作を行う直前にサブタンク151に貯留されているインク量は、L0、L3、L4、L5であり、これらの大小関係はL5>L4>L3>L0となっている。
【0074】
メインタンク141からサブタンク151へ供給すべきインク量は、L0、L3、L4、L5に応じて変化させる。例えば、初期状態において行われる1回目のインク供給動作では(L1-L0)のインクが供給され、本実施形態ではこれが最大のインク供給量(液体供給量)となる。また、記録ヘッド8へのインク充填後に行われる2回目のインク供給動作では(L1-L3)のインクが供給され、これが2番目に多いインク供給量となる。回収流路C4へのインク充填後に行われる3回目のインク供給動作では(L1-L4)のインクが供給され、これが3番目に多いインク供給量となる。記録ヘッド8内の流路から泡を除去した後に行われる4回目のインク供給動作では(L1-L5)のインクが供給され、これが最も少ないインク供給量となる。
【0075】
上記のようにメインタンク141からサブタンク151へとインクを供給する場合、メインタンク141内の泡がインクと共にサブタンク151に混入することが知られている。このサブタンク151に混入する泡は、液面付近で泡立ち、かつサブタンク151内の減圧によって膨張する。その結果、泡立ちが生じていないインクの液面に対し、泡立ちが生じたインクの液面の高さは相対的に高くなり、その差は、サブタンク151へのインクの供給時間が多くなることにより大きくなる。この状態を図12に示す。
【0076】
図12は、メインタンク141からサブタンク151へのインク供給時間(液体供給時間)とサブタンク141における液面高さとの関係を示す。ここで、図12(a)は、初期充填シーケンスにおける1回目のインク供給動作を実施した場合を示している。また、図12(b)は、初期充填における4回目のインク供給動作を実施した場合を示している。なお、図12に示す破線は泡立ちを含むインクの液面の変化を、実線は泡立ちを含まないインクの液面の変化をそれぞれ示している。
【0077】
図12(a)、(b)に示すように、メインタンク141からサブタンク151へのインク供給時間がt1に達すると、泡立ちを含むインク液面は、図中の破線に示すように、液面検出手段151aのピン(ここでは第2ピンE2)により検出される高さに達する。このインク供給時間t1でインクの供給を停止した場合、泡立ちが消失した際にインク液面の高さは第2ピンE2の高さを下回り、実際のインク量は、本来供給すべきインク量より少なくなる。すなわち、泡立ちが生じていない液面がピンによって検出されたときのインク量未満となる。
【0078】
従って、液面検出手段151aにより液面が検出された時点でインクの供給を停止させず、インク供給時間がt2になるまでインクの供給を継続する。これにより、泡立ちが消失した後のインクの液面がピンの高さ以上となるようにインクを供給することができる。すなわち、泡立ちが生じていない液面がピンによって検出された際のインク量と同等以上のインク量を担保することができる。
【0079】
なお、泡の影響を避けるため、泡の消失を待ってインクの供給を行うようにすることも考えられるが、サブタンク151に発生した泡が消失するまでには、インクの特性も依るが、長時間を要する場合もある。このため、実際のインク供給シーケンス内において泡の消失を待ってインクの供給を行うことは効率的ではない。
【0080】
従って、サブタンク151内に泡が発生し得るインク供給方式を採る場合、液面検出手段151aによって液面が検出された後も、インクを継続して供給する制御を行うことが有効である。但し、サブタンク151内に適正な量のインクを供給するためには、サブタンク151a内に生じる泡量を考慮して、液面検出後に行なうインク供給動作時間(供給継続時間)を適正に定めることが必要となる。なお、本発明において泡量とは、泡によって占有される容積を意味する。
【0081】
サブタンク151内に発生する泡量は、メインタンク141からサブタンク151へのインク供給時間によって変動する。すなわち、インク供給時間が長い場合には、サブタンクからメインタンク141へのインク供給量が多くなり、インク供給量が多くなるほどサブタンク151に混入する泡量も増大する。
【0082】
例えば、前述の初期充填シーケンスで行われる4回のインク供給動作のうち、最もインク供給量が多くなるのは、1回目のインク供給動作である。従って、サブタンク151内に発生する泡量は、1回目のインク供給動作において最大となる。これに対し、4回目のインク供給動作によってサブタンク151に供給されるインクは、最も少量となる。このため、4回目のインク供給動作によってサブタンク151内に発生する泡量は最小となる。
【0083】
このようにサブタンク151に発生する泡量と、メインタンク141からサブタンク151へのインク供給量、すなわちメインタンク141からサブタンク151へインクを供給する時間(インク供給時間)との間には相関がある。そこで、液面検出手段151aで液面を検出した後に行うインク供給動作の時間(供給継続時間)をサブタンク151へのインク供給時間に応じて制御する。すなわち、サブタンク151へのインク供給時間が長い程、供給継続時間を長くする制御を行う。
【0084】
例えば、図12(a)に示す1回目のインク供給動作では、インク供給時間が最も長いため、供給継続時間(t2-t1)を最も長い時間T1とする。これに対し、図12(b)に示す4回目のインク供給動作では、インク供給時間が最も短いため、供給継続時間(t2-t1)を最も短い時間T4とする。
【0085】
これにより、いずれのインク供給動作においても、泡立ちのない液面が第2ピンE2に達したときのインク量と同量のインクを、サブタンク151に供給することができる。なお、この供給継続時間の制御は、プリントコントローラ202がインク供給制御部209を制御することによって行う。
【0086】
図13に本実施形態の記録装置1によって設定される供給継続時間の設定例、及び従来の記録装置によって設定される供給継続時間の設定例を示す。
【0087】
初期充填シーケンスで行われる4回インク供給動作では、それぞれ異なる量のインクが供給される。図13に示す表では、1回目のインク供給量を(大大)、2回目のインク供給量を(大)、3回目のインク供給量を(中)、4回目のインク供給量を(小)として表している。
【0088】
本実施形態では、インク供給量が(大大)及び(大)の場合、供給継続時間を10secとし、液面検出手段151aの第2ピンE2によって液面が検出された後のインク供給量を最も多くしている。また、インク供給量が(中)の場合、供給継続時間を7secとし、液面検出手段151aの第2ピンE2によって液面が検出された後のインク供給量を、インク供給量が(大大)及び(大)の場合より減少させている。さらに、インク供給量が(小)の場合、供給継続時間を4secとし、液面検出手段151aの第2ピンE2によって液面が検出された後のインク供給量をさらに減少させている。
【0089】
これに対し、特許文献1に示すような従来の記録装置では、メインタンクからサブタンクへのインク供給量の大小に拘わりなく、常に一定の供給継続時間(4sec)を設定している。このため、本実施形態の4回目のインク供給動作のように、インク供給量が(小)である場合には、適正なインク量がサブタンクに供給される可能性もある。しかし、メインタンクからサブタンクへのインク供給量が増大し、サブタンク1内に発生する泡量が増大した場合には、インク供給量が不足する虞がある。
【0090】
本実施形態では、サブタンク151へのインク供給量の増減に伴って、供給継続時間を増減させるようになっているため、サブタンク151には、過不足なく適正なインク量を供給することが可能になる。このため、記録装置1におけるインク循環系を常に適正なインク供給状態に保つことができ、良好な記録動作を実現することができる。
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態を説明する。
【0091】
上記第1の実施形態では、メインタンク141からサブタンク151へのインク供給時間(インク供給量)応じて変化する泡量の影響を考慮して供給継続時間を制御した。これに対し、第2の実施形態では、メインタンクのインク量に対する泡量の比率に応じて供給継続時間を制御する。なお、第2の実施形態においても図1ないし図3の構成を同様に備える。
【0092】
本実施形態では、同一の寸法形状を有するタンク本体に異なる量のインクを注入することによって、異なるサイズのメインタンクを構成しており、これらを必要に応じて使い分けることが可能になっている。このような構成のメインタンクは、その製造上、サイズの大小に拘わらず、一定量の泡がタンク本体に混入する。従って、タンク本体の内部に注入されるインク量が異なると、メインタンク141における泡量とインク量の比率(泡/インク比率)が、メインタンク141のサイズによって異なることとなる。
【0093】
そして、メインタンク141からサブタンク151へ一定量のインクを供給した場合にも、泡/インク比率が高い程、サブタンク151に混入する泡量は多くなる。従ってメインタンク141からサブタンク151へ一定量のインクを供給したとしても、メインタンク141のサイズによって、サブタンク151に混入する泡量には差が生じ、液面の高さにも差が生じる。つまり、使用するメインタンク141のサイズによって、液面検出手段151aが液面を検出するまでのインク量に差が生じる。
【0094】
そこで、本実施形態では、メインタンク141のサイズに応じた供給継続時間を予め設定し、装着されたメインタンク141のサイズに基づいて、液面検出後のインク供給動作を行う。これによれば、泡立ちがないインク液面が液面検出手段151aによって検出されたときのインク量以上のインクを、サブタンク151内に供給することができる。
【0095】
図14は、メインタンク141からサブタンク151へのインク供給時間とサブタンクにおける液面高さとの関係を示す図であり、(a)は大サイズのメインタンクを用いた場合を、(b)は小サイズのメインタンクを用いた場合をそれぞれ示している。なお、図14に示す破線は泡立ちを含むインクの液面の変化を、実線は泡立ちを含まないインクの液面の変化をそれぞれ示している。
【0096】
大サイズのメインタンク141は、泡/インク比率が低いため、サブタンク151に混入する泡量も少なく、液面検出手段151aに基くインク量の検出誤差も小さい。このため、図14(a)に示すように、比較的短い供給継続時間Ta(t2-t1)を設定している。
【0097】
これに対し、小サイズのメインタンク141は、泡/インク比率が高く、サブタンク151に混入する泡量も多くなり、液面検出手段151aに基くインク量の検出誤差が大きくなる。このため、小サイズのメインタンク141を用いる場合には、図14(a)に示すように、比較的長い供給継続時間Tb(t2-t1)を設定している。
【0098】
図15に、メインタンク141のそれぞれのサイズに対応する、泡/インク比率と、供給停止時間との関係を示す。ここでは、メインタンク141のサイズとして、大サイズ、中サイズ、小サイズが存在する場合を示している。図示のように、泡/インク比率は、メインタンク141のサイズが大きい程低くなる。すなわち、泡/インク比率は、小サイズ、中サイズ、大サイズの順で低くなる。
【0099】
従って、大サイズのメインタンク141には、4secの供給継続時間を設定し、中サイズのメインタンク141には7secの供給継続時間を設定している。また、小サイズのメインタンク141は、サブタンク151への泡の混入量が最も大きくなるため、10secの供給継続時間を設定している。
【0100】
一方、従来の記録装置では、メインタンクの泡/インク比率に拘わりなく、常に一定の供給継続時間(4sec)を設定している。このため、泡/インク比率の低い大サイズのメインタンクを使用する場合には、サブタンクに適正量のインクが供給される可能性もある。しかし、メインタンクの、泡/インク比率が増大し、サブタンク1内に発生する泡量が増大した場合には、サブタンクにインク不足が発生する。
【0101】
本実施形態では、メインタンク141のサイズの大小に伴って、供給継続時間を増減させるようになっているため、メインタンク141のサイズに拘わりなく、サブタンク151に対して適正な量のインクを供給することが可能になる。
(他の実施形態)
上記実施形態では、メインタンク141からサブタンク151へインクを供給するためのインク供給時間(インク供給量)、またはメインタンクにおける泡/インク比率をインク供給条件として、供給継続時間を制御する例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、インク供給時間、及び、泡/インク比率以外のインク供給条件に基づいて供給継続時間を制御するようにすることも可能である。
【0102】
例えば、サブタンク内に発生する負圧、あるいはサブタンクに供給するインクの種類などに基づいて供給継続時間を制御するようにすることも可能である。本発明は、サブタンク内に発生する泡量との相関を持つインク供給条件の中の1つ又は複数に基づいて供給継続時間を制御するものであり、これにより、適正量のインクをサブタンクなどの貯留部に供給することが可能になる。
【0103】
さらに、供給継続時間をインクの種類に応じて制御する構成であってもよい。具体的には、泡立ちやすいインクの供給継続時間を泡立ちにくいインクの供給継続時間より長くする制御を行ってもよい。また、上記実施形態では、インク循環系を構成する記録装置を例に採り説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、メインタンクからサブタンクへのインクの供給を行うインク供給方式を採る記録装置の全てに適用可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 記録装置(液体吐出装置)
8 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
141 メインタンク
151 サブタンク
151a 液面検出手段
202 プリントコントローラ(制御手段)
C1 タンク接続流路(流路)
P0 減圧ポンプ(負圧発生手段)
V1 タンク供給弁(弁)
図1
図2
図3
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図15