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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】下水中継装置及び下水中継方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/06 20060101AFI20221219BHJP
   C02F 3/12 20060101ALI20221219BHJP
   E03F 5/22 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C02F3/06
C02F3/12 A
C02F3/12 B
E03F5/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018191195
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2020058975
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小峰 英明
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-246279(JP,A)
【文献】実開平02-037800(JP,U)
【文献】特開2000-015274(JP,A)
【文献】特開2002-126771(JP,A)
【文献】特開2005-248516(JP,A)
【文献】実開昭50-096365(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00-34
E03F 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数地点で発生する下水を集約して下水処理場に移送する下水管渠網の中継地点において、自然流下による前記下水の移送を前記下水の揚水によって中継する下水中継装置であって、
前記中継地点の上流側から流入する下水を蓄える貯水槽と、
前記貯水槽に流入した下水を下流側に送出するために揚水するポンプと、
前記ポンプによって揚水される、又は揚水された下水に対して活性汚泥を供給する活性汚泥供給部と、
を備え
前記活性汚泥供給部は、前記下水に供給される活性汚泥を保持する担体であり、
前記ポンプは、前記担体から剥離した前記活性汚泥を含む下水を揚水して前記中継地点の下流側に送出する、
下水中継装置。
【請求項2】
前記ポンプが前記下水を揚水する第1流路と、
前記貯水槽内における前記下水の流れの形成に用いられる第2流路と、
前記第1流路及び前記第2流路に流れる下水の流量を調整する流量弁と、
をさらに備え、
前記ポンプ及び前記流量弁は、前記第2流路に前記下水を流通させることにより、前記貯水槽内において、前記担体からの前記活性汚泥の剥離を促進するための前記下水の流れを形成する、
請求項1に記載の下水中継装置。
【請求項3】
前記ポンプは、前記下水が前記担体を流通するように前記貯水槽内に前記下水の流れを形成する、
請求項に記載の下水中継装置。
【請求項4】
前記ポンプを複数備え、
複数の前記ポンプの運転パターンを変更することによって前記下水の流れを変更する、
請求項3に記載の下水中継装置。
【請求項5】
活性汚泥よりも大きい物体を透過させないことで、前記貯水槽の内部に1つ以上の前記活性汚泥供給部が流動可能な領域を確保する膜材をさらに備え、
前記活性汚泥供給部は前記領域内を流動しながら自身を流通する下水に活性汚泥を供給する、
請求項に記載の下水中継装置。
【請求項6】
前記貯水槽において、前記下水が前記担体を流通するように前記下水の移動方向を所定の方向に制限する案内板をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の下水中継装置。
【請求項7】
前記活性汚泥供給部は、前記下水に供給される活性汚泥を保持する担体として、前記ポンプが前記下水を揚水する流路に設置され、
前記ポンプは、前記担体から剥離した前記活性汚泥を含む下水を揚水して前記中継地点の下流側に送出する、
請求項1に記載の下水中継装置。
【請求項8】
前記ポンプによって揚水された下水を蓄える第2の貯水槽と、
前記活性汚泥供給部は、前記下水に供給される活性汚泥を保持する担体として前記第2の貯水槽内に設置される、
請求項1に記載の下水中継装置。
【請求項9】
複数地点で発生する下水を集約して下水処理場に移送する下水管渠網の中継地点において、自然流下による前記下水の移送を前記下水の揚水によって中継する下水中継方法であって、
前記中継地点の上流側から流入する下水を貯水槽に貯える貯水ステップと、
前記貯水槽に流入した下水を下流側に送出するために下水をポンプにより揚水する揚水ステップと、
前記揚水ステップにおいて揚水される、又は揚水された下水に対して活性汚泥を供給する活性汚泥供給ステップと、
を有し、
前記活性汚泥供給ステップでは、活性汚泥を保持する担体により前記下水に前記活性汚泥を供給し、前記ポンプが、前記担体から剥離した前記活性汚泥を含む下水を揚水して前記中継地点の下流側に送出する、
下水中継方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、下水中継装置及び下水中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業排水や生活排水等の下水を集約して下水処理場に送る下水管渠網が整備されている。下水管渠網を介して下水処理場に送られた下水は、物理学的処理や生物学的処理、高度処理等によって浄化された後に放流又は再利用される。従来このような下水管渠網は戸別に発生する下水を集約して下水処理場に収集することだけを目的とするものであったが、近年では下水処理場に流入する以前の下水に簡易的な下水処理(以下「簡易処理」という。)を施すことができる下水管渠網が検討されている。
【0003】
しかしながら、下水管渠網での簡易処理を実現するために検討されてきた方法は広範囲に敷設された管渠に関して特殊な施工や維持管理を必要とするものであり必ずしも容易に導入することができない場合があった。また、従来の下水管渠網では、簡易処理のための動力源が必要となる場合もあり運用コストが増大してしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-126771号公報
【文献】特開2008-126169号公報
【文献】特開2005-199240号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】管路内浄化システム、積水化学工業株式会社、https://www.jase-w.eccj.or.jp/technologies-j/pdf/factory/F-73.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、下水の移送のみを目的とした従来の下水管渠網において下水の簡易処理が行われるようにすることができる下水中継装置及び下水中継方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の下水中継装置は、複数地点で発生する下水を集約して下水処理場に移送する下水管渠網の中継地点において、自然流下による前記下水の移送を前記下水の揚水によって中継する下水中継装置であって、ポンプと、活性汚泥供給部と、を持つ。ポンプは、前記中継地点の上流側から流入する下水を揚水する。活性汚泥供給部は、前記ポンプによって揚水される、又は揚水された下水に対して活性汚泥を供給する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】従来の下水処理のイメージを示す概略図。
図2】従来の中継ポンプ場の具体例を示す図。
図3】第1の実施形態の中継ポンプ場の構成例を示す図。
図4】第1の実施形態の中継ポンプ場において、第1貯水部に蓄えられている下水に活性汚泥が供給される様子を示す図。
図5】第1の実施形態の中継ポンプ場において、第1貯水部に蓄えられている下水に活性汚泥が供給される様子を示す図。
図6】第2の実施形態の中継ポンプ場の構成例を示す図。
図7】第2の実施形態の中継ポンプ場において、第1貯水部に蓄えられている下水に活性汚泥が供給される様子を示す図。
図8】第2の実施形態の中継ポンプ場において、第1貯水部に蓄えられている下水に活性汚泥が供給される様子を示す図。
図9】第3の実施形態の中継ポンプ場の構成例を示す図。
図10】実施形態の中継ポンプ場の効果を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の下水中継装置及び下水中継方法を、図面を参照して説明する。
【0010】
(概略)
図1は、従来の下水処理のイメージを示す概略図である。図1に示すように、一般に下水管渠網が整備された地域では各住戸や施設等の排水管が地下の下水管渠網に接続されており、各住戸や施設等で発生した下水は下水管渠網で集約されて下水処理場に流入する。また、下水管渠網には地表を流出する雨水等が流入する場合もある。例えば、図1は、地表を流出する雨水がマンホールMを介して下水管渠網に集約される例を示している。
【0011】
ところで、下水管渠網は自然流下により下水を下水処理場に送るものが一般的であるが、地形や土地の利用形態等によっては十分は高度差を取ることができない場合もある。このような場合、図1に示すように、下水管渠網の途中に下水の自然流下を中継するための中継ポンプ場が設けられる場合がある。中継ポンプ場は、流入する下水をポンプによって揚水することにより、下水の自然流下を中継する施設であり、下水の揚水のためのポンプを備えている。
【0012】
中継ポンプ場等を経て下水処理場に送られた下水は物理学的処理や生物学的処理、高度処理等によって浄化される。処理済み水は、図1に示すように河川等の公共水域に放流されてもよいし、任意の用途に再利用されてもよい。
【0013】
図2は、従来の中継ポンプ場の具体例を示す図である。図2に示す中継ポンプ場9は、流入口91、第1貯水部92、第2貯水部93、流出口94及び揚水ポンプ95を備える。流入口91は、下水管渠網の中継地点に存在する中継ポンプ場9に対して上流側から流入する下水を受け入れる。第1貯水部92は、流入口91から流入する下水を蓄える貯水槽である。第2貯水部93は第1貯水部92から揚水された下水を蓄える貯水槽である。流出口94は、第2貯水部93に蓄えられている下水を中継ポンプ場9の下流側に送り出す。揚水ポンプ95は、第1貯水部92に蓄えられている下水を第2貯水部93に揚水するポンプである。揚水流路96は、第1貯水部92に蓄えられている下水が、揚水ポンプ95によって第2貯水部93に揚水される際に流通する流路である。
【0014】
なお、図2において下水は下水管渠網の勾配によって矢印方向に流下する。中継ポンプ場9では、揚水ポンプ95が上流側から流入する下水を高い位置に引き揚げて下流側に送ることにより、自然流下によって移送される下水の中継が行われる。
【0015】
このように、従来の中継ポンプ場9は、下水の揚水に特化した設備であり、下水の簡易処理に貢献するものではなかった。これに対して、以下では、下水の水質を変化させることにより、下水の簡易処理に貢献することができる中継ポンプ場9の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態の中継ポンプ場によれば、下水管渠網の構成によらずに下水の簡易処理を実現することができる。そのため、下水の移送のみを目的とした従来の下水管渠網においても、特殊な施工や維持管理を必要とせずに、下水の簡易処理を実現することが可能となる。
【0016】
(第1の実施形態)
図3は、第1の実施形態の中継ポンプ場の構成例を示す図である。図3に示す中継ポンプ場1は、第1の実施形態の中継ポンプ場の一例である。中継ポンプ場1は、流入口91、第1貯水部92、第2貯水部93、及び流出口94を備える点で図2に示した従来の中継ポンプ場9と同様であり、2基の揚水ポンプ11、各揚水ポンプ11が下水を送り出す揚水流路12、及び濾床13をさらに備える点で従来の中継ポンプ場9と異なる。ここでは、従来の中継ポンプ場9と同様の構成については図2と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0017】
揚水ポンプ11は、第1貯水部92に蓄えられている下水を第2貯水部93に揚水する点で従来の揚水ポンプ95と同様である。具体的には、揚水ポンプ11は、第1貯水部92に蓄えられている下水を吸入して揚水流路12に送り出す。揚水ポンプ11から送り出された下水は揚水流路12を通って第2貯水部93に揚水される。
【0018】
濾床13は、第1貯水部92に蓄えられている下水に活性汚泥を供給するための構造物又は部材である。下水は、下水管渠網内を大気開放状態で流下するためその間に下水への酸素の溶解が期待でき、中継ポンプ場1において濾床13から活性汚泥が供給されることによって、下水処理場まで流下するまでの間に汚濁物質をある程度分解することができる。
【0019】
例えば、濾床13は、好気性微生物の担体となる濾材で構成される。濾床13は、自身の保持する微生物が下水中に剥がれ落ちて活性汚泥となることで、活性汚泥を下水に供給する。なお、下水中の微生物は下水中の有機物を代謝することにより徐々に増殖し、濾材に蓄積していく。このため、濾床13には継続的に微生物を補充する必要はない。また、上述の濾材は、自身を流通する下水に活性汚泥を供給できるものであればどのようなものであってもよい。
【0020】
図4及び図5は、第1の実施形態の中継ポンプ場1において、第1貯水部92に蓄えられている下水に活性汚泥が供給される様子を示す図である。上述のとおり、濾床13に保持されている活性汚泥は、下水が濾床13を流通する際に濾材から剥がれ落ちることで下水に供給される。そのため、下水に活性汚泥を供給するためには、第1貯水部92において下水が濾床13を流通するような水流を形成する必要がある。
【0021】
例えば、揚水ポンプ11-1が揚水流路12-1に下水を送り出す場合に揚水ポンプ11-1の吸入口を濾床13側に向けることにより、揚水ポンプ11-1と濾床13との間の下水が揚水ポンプ11-1に吸入され、濾床13を図4の矢印方向に流通する下水流が形成される。
【0022】
またこれとは逆に、揚水ポンプ11-2が揚水流路12-2に下水を送り出す場合に揚水ポンプ11-2の吸入口を濾床13側に向けることにより、揚水ポンプ11-2と濾床13との間の下水が揚水ポンプ11-2に吸入され、濾床13を図5の矢印方向に流通する下水流が形成される。
【0023】
第1の実施形態の中継ポンプ場1は、このような複数(3台以上であってもよい)の揚水ポンプ11を備え、複数の揚水ポンプ11の運転パターンを変更することにより、濾床13を流通する複数パターンの下水流を形成する。これにより、第1の実施形態の中継ポンプ場1は、濾床13に保持されている活性汚泥を効率良く下水に供給することができる。
【0024】
このように構成された第1の実施形態の中継ポンプ場1によれば、下水の移送のみを目的とした従来の下水管渠網に対して特殊な施工や維持管理を行うことなく下水の簡易処理を実現することができる。
【0025】
なお、第1の実施形態における中継ポンプ場1において、複数の揚水ポンプ11の吸入口の向きは所望の下水流の向きに応じて任意に変更されてよい。また、揚水ポンプ11は吸入口の向きを任意に変更可能なものであってもよい。また、複数の揚水ポンプ11は、必ずしも1基ずつ作動する必要はなく、複数台が同時に作動するものであってもよい。例えば、図4及び図5に示す中継ポンプ場1において、2基の揚水ポンプ11-1及び11-2の両方が同時に作動することにより、第1貯水部92において濾床13を図4及び図5に示した向きとは異なる方向に流通する下水流を形成することも可能である。
【0026】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態の中継ポンプ場の構成例を示す図である。図6に示す中継ポンプ場1aは、第2の実施形態の中継ポンプ場の一例である。中継ポンプ場1aは、循環流路14、及び制御弁15をさらに備える点で第1の実施形態の中継ポンプ場1と異なる。ここでは、第1の実施形態の中継ポンプ場1と同様の構成については図3と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0027】
循環流路14は第1貯水部92に蓄えられている下水に所定の水流を発生させるために用いられる流路である。図6は、循環流路14が揚水流路12の途中で揚水流路12から分岐して構成された例を示している。
【0028】
制御弁15(流量弁の一例)は、揚水流路12及び循環流路14に設けられた弁であり、下水流のパターンを切り替えるために用いられる。図6は、第1の制御弁15-1及び第2の制御弁15-2を閉じ、第3の制御弁15-3を開いた状態を示しており、この状態で揚水ポンプ11を作動させることにより、第1貯水部92に蓄えられている下水が第2貯水部93に引き揚げられる。
【0029】
図7及び図8は、第2の実施形態の中継ポンプ場1aにおいて、第1貯水部92に蓄えられている下水に活性汚泥が供給される様子を示す図である。例えば、図7に示すように、第1の制御弁15-1及び第3の制御弁15-3を閉じ、第2の制御弁15-2を開いた状態で第2の揚水ポンプ11-2を作動させることにより、第1貯水部92において矢印方向の下水流を形成することができる。また、これとは逆に、図8に示すように、第2の制御弁15-2及び第3の制御弁15-3を閉じ、第1の制御弁15-1を開いた状態で第1の揚水ポンプ11-1を作動させることにより、第1貯水部92において図7とは逆方向の下水流を形成することができる。
【0030】
このように、2基の揚水ポンプ11、揚水流路12、循環流路14、第1~第3の制御弁15を用いて下水が濾床13を流通するような下水流を形成することで、第1貯水部92に蓄えられている下水に活性汚泥を供給することができる。
【0031】
このように構成された第2の実施形態の中継ポンプ場1aによれば、下水の移送のみを目的とした従来の下水管渠網に対して特殊な施工や維持管理を行うことなく下水の簡易処理を実現することができる。
【0032】
(第3の実施形態)
図9は、第3の実施形態の中継ポンプ場の構成例を示す図である。図9に示す中継ポンプ場1bは、第3の実施形態の中継ポンプ場の一例である。中継ポンプ場1bは、流入口91、第1貯水部92、第2貯水部93、及び流出口94を備える点で図2に示した従来の中継ポンプ場9と同様であり、濾床13b、第1スクリーン16及び第2スクリーン17をさらに備える点で従来の中継ポンプ場9と異なる。ここでは、従来の中継ポンプ場9と同様の構成については図2と同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0033】
濾床13bは、第1貯水部92に蓄えられている下水に活性汚泥を供給するための構造物又は部材である点で第1及び第2の実施形態における濾床13と同様であり、好気性微生物の担体となる濾材で構成される。一方、濾床13bは、第1貯水部92内で下水中を流動可能に設置される点で第1及び第2の実施形態における濾床13と異なり、第1貯水部92内に少なくとも1つ設置される。図9は、濾床13bが5つ設置されて例を示している。
【0034】
第1スクリーン16及び第2スクリーン17(膜材の一例)は第1貯水部92内に濾床13bの設置場所を確保するための膜である。具体的には、第1スクリーン16及び第2スクリーン17は、活性汚泥よりも大きい物体を透過させない膜を用いて構成され、第1貯水部92内に濾床13bの流動可能領域を形成する。この流動可能領域に濾床13bを配置することにより、濾床13bは流動可能領域を通過する下水に活性汚泥を供給することができる。
【0035】
このように構成された第3の実施形態の中継ポンプ場1bは、下水の流れに応じて下水中を流動可能な1つ以上の濾床13bを第1貯水部92内に備えることにより、濾床13bに保持されている活性汚泥を効率良く下水に供給することができる。具体的には、第1又は第2の実施形態では、固定的に設置された濾床13に対して流通する下水流のパターンを変更することで下水に対する活性汚泥の供給を促進したのに対し、第3の実施形態では濾床13b自体の流動により下水に対する活性汚泥の供給が促進される。
【0036】
すなわち、第3の実施形態では、下水流を操作するため各種装置(揚水ポンプや制御弁、循環流路等)を中継ポンプ場に設置する必要がないため、第1又は第2の実施形態に比べて導入コストを抑えることが可能になる。なお、第3の実施形態の中継ポンプ場1bでは、濾床13bが必ずしも意図したとおりの流動を行うとは限らない。そのため、第3の実施形態の中継ポンプ場1bには、第1又は第2の実施形態と同様に下水流を操作するための各種装置が簡易的に備えられてもよい。
【0037】
このように構成された第3の実施形態の中継ポンプ場1bによれば、下水の移送のみを目的とした従来の下水管渠網に対して特殊な施工や維持管理を行うことなく下水の簡易処理を実現することができる。
【0038】
図10は、上述した第1~第3の実施形態の中継ポンプ場による効果を説明する図である。図10に示すように、実施形態の中継ポンプ場において活性汚泥が供給された下水は、活性汚泥の働きにより汚濁物質を分解しながら下水処理場まで流下する。そのため、下水処理場(終末処理場ともいう)では、簡易処理が行われた分だけ処理負荷が低減されることになり、下水処理場の処理余力が増大する。このため、全体としてより多くの下水を処理することが可能になるとともに、突発的な処理量の増加にも対応できるようになるなど、水処理に関する社会インフラを強化することができる。
【0039】
また、下水処理場では、低減された処理負荷の分だけエネルギー消費量が削減されることになるため、下水処理に関する省エネルギーが実現される。また、実施形態の中継ポンプ場1は、このような処理負荷の低減を、従来の下水管渠網を変更することなく実現することができるため、下水処理に関する経済的な負荷も低減され、簡易処理の普及に大きく貢献するものと期待される。
【0040】
以下、実施形態の中継ポンプ場の変形例を説明する。以下に説明するように、実施形態の中継ポンプ場は、上流側の下水管渠網から流入した下水を揚水して下流側の下水管渠網に送り出す機能と、流入した下水が濾床13を流通するように絶対的又は相対的な下水流を形成する機能と、を備えれば、どのように変形されてもよい。
【0041】
例えば、中継ポンプ場1が備える揚水ポンプ11の数は1台であってもよいし、3台以上でってもよい。また、これに応じて、揚水流路12及び循環流路14は、揚水ポンプ11の台数に応じて変形されてもよい。
【0042】
また、実施形態の中継ポンプ場は、下水に活性汚泥を供給するための下水流を形成する専用のポンプを備えてもよい。この場合、中継ポンプ場には下水流を操作するため各種装置(揚水ポンプや制御弁、循環流路等)が設置されなくてもよい。また、この場合、専用ポンプは、その吐出方向を濾床方向に向けて第1貯水部内に配置され、吸い込んだ下水を濾床方向に吐出することにより下水を濾床に流通させてもよい。
【0043】
また、濾床は必ずしも第1貯水部に設置される必要はなく、自身に下水を流通させることができれば、中継ポンプ場内のどのような場所に設置されてもよい。例えば、濾床は、揚水流路の途中に配置され、揚水流路を流れる下水を自身に流通させるように構成されてもよい。また、例えば、濾床は、第2貯水部において、第1貯水部から流入する下水を自身に流通させるように構成されてもよい。また、濾床が第2貯水部に配置される場合、上記の専用ポンプが第2貯水部に配置されてもよい。
【0044】
また、実施形態の中継ポンプ場では、第1貯水部において、その時々に応じた下水流が形成されるように各部が制御されてもよい。例えば、下水流の変更は、各揚水ポンプの吸入位置や吸入方向を変更することによって実現されてもよいし、複数の揚水ポンプの運転パターンを変更することによって実現されてもよい。また、例えば、下水流の変更は、循環流路の流出部の向きを変えることによって実現されてもよい。
【0045】
上記の実施形態では、以下の条件を満足することを理由に、濾床を下水管渠網の中継点である中継ポンプ場に設置する例を説明したが、下記の条件を満足すれば濾床は中継ポンプ場以外の場所に設置されてもよい。
・濾床を設置することができるスペースを有する
・設置点に流下するまでに下水への酸素溶解が進んでいると期待できる
・設置点から下水処理場までにさらなる酸素溶解が期待できる
【0046】
通常、水槽内に濾床を設置する生物処理では、曝気装置を用いた酸素供給及び槽内撹拌を行う(接触曝気法)のに対して、上記の実施形態は、下水管渠網内での簡易的な生物処理(簡易処理)を前提とするものである。また、自然流下時において下水に対するある程度の酸素溶解が期待できることから、実施形態の中継ポンプ場には曝気装置が設置されてもよいが、必須ではない。
【0047】
また、通常の生物処理では、過剰に増殖した余剰汚泥を剥離させるために槽内撹拌及び水流逆転が行われるが、本実施形態では曝気装置の設置を前提としていないため、その代わりとして揚水ポンプを用いて槽内の水流を変化させることで、余剰汚泥の剥離を促している。具体的には、第1及び第2の揚水ポンプを常用/予備として異なる吸入位置に設置し、交互に運転することでこれを実現している。なお、所望の下水流を形成するために、第1貯水部には下水の流れを整流する(移動方向を制限する)ための案内板等が設けられてもよい。
【0048】
第1貯水部における下水流の形成は、第1貯水部に蓄えられている下水の揚水と同時に行われてもよい。また、下水流の形成のための下水の循環量と、下水の揚水量とは、各制御弁24の開度によって調整することができる。
【0049】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、複数地点で発生する下水を集約して下水処理場に移送する下水管渠網の中継地点において、自然流下による下水の移送を揚水によって中継する下水中継装置が、中継地点の上流側から流入する下水を揚水する揚水ポンプと、揚水ポンプによって揚水される、又は揚水された下水に対して活性汚泥を供給する濾床(活性汚泥供給部)と、を持つことにより、下水の移送のみを目的とした従来の下水管渠網における下水の簡易処理を促進することができる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0051】
1,1a,1b…中継ポンプ場、11,11-1,11-2…揚水ポンプ、12,12-1,12-2…揚水流路、13,13b…濾床、14…循環流路、15,15-1~15-3…制御弁、16…第1スクリーン、17…第2スクリーン、9…従来の中継ポンプ場、91…流入口、92…第1貯水部、93…第2貯水部、94…流出口、95…揚水ポンプ、96…揚水流路
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