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特許7195871現像装置、現像剤担持体、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】現像装置、現像剤担持体、プロセスカートリッジおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20221219BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G03G15/08 235
G03G15/08 226
G03G21/18 114
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018200557
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020067577
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】進藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一成
(72)【発明者】
【氏名】川本 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】杉山 遼
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-224516(JP,A)
【文献】特開2016-164654(JP,A)
【文献】特開2017-134437(JP,A)
【文献】特開平04-031883(JP,A)
【文献】特開2015-041084(JP,A)
【文献】特開2002-278255(JP,A)
【文献】特開平04-031882(JP,A)
【文献】特開平06-130792(JP,A)
【文献】特開平04-218079(JP,A)
【文献】国際公開第2013/128551(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/08
G03G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体の表面に当接して配置され、前記現像剤担持体に担持される現像剤を規制する規制部材と
を有する現像装置であって、
前記現像剤担持体の表面には、第1の表面粗さおよび第1の電気抵抗を有する導電部と、前記第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さおよび前記第1の電気抵抗よりも大きい第2の電気抵抗を有する誘電部が設けられており、
前記誘電部の帯電極性は、前記規制部材との摩擦によって前記現像剤担持体に担持される現像剤が帯電されたとき、前記現像剤の帯電極性と同極性であり、
前記第1の表面粗さが、前記規制部材の前記現像剤担持体と相対する面の第3の表面粗さよりも大きい
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記第2の表面粗さが0.8μm未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第3の表面粗さが前記第2の表面粗さよりも大きい、ことを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤担持体の回転方向において、前記誘電部の幅の平均値が、前記規制部材と前記現像剤担持体との間に形成される当接部の当接幅の1/2よりも小さい、ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項5】
前記誘電部は、前記現像剤担持体の表面に形成された前記導電部の表面の一部を被覆することにより、前記現像剤担持体の表面に形成される、請求項1からのいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像剤担持体の表面において、前記誘電部は前記導電部の領域に散在するように構
成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記現像剤担持体の表面において、前記誘電部が占める面積は、前記導電部が占める面積よりも小さい、請求項に記載の現像装置。
【請求項8】
前記現像剤は、非磁性一成分現像剤である、請求項1からのいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項9】
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体の表面に当接して配置され、前記現像剤担持体に担持される現像剤を規制する規制部材と、
現像剤像を担持する像担持体と、を有するプロセスカートリッジであって、
前記現像剤担持体の表面には、第1の表面粗さおよび第1の電気抵抗を有する導電部と、前記第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さおよび前記第1の電気抵抗よりも大きい第2の電気抵抗を有する誘電部が設けられており、
前記誘電部の帯電極性は、前記規制部材との摩擦によって前記現像剤担持体に担持される現像剤が帯電されたとき、前記現像剤の帯電極性と同極性であり、
前記第1の表面粗さが、前記規制部材の前記現像剤担持体と相対する面の第3の表面粗さよりも大きい
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体の表面に当接して配置され、前記現像剤担持体に担持される現像剤を規制する規制部材と、
現像剤像を担持する像担持体と、
転写部材と、を有する画像形成装置であって、
前記現像剤担持体の表面には、第1の表面粗さおよび第1の電気抵抗を有する導電部と、前記第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さおよび前記第1の電気抵抗よりも大きい第2の電気抵抗を有する誘電部が設けられており、
前記誘電部の帯電極性は、前記規制部材との摩擦によって前記現像剤担持体に担持される現像剤が帯電されたとき、前記現像剤の帯電極性と同極性であり、
前記第1の表面粗さが、前記規制部材の前記現像剤担持体と相対する面の第3の表面粗さよりも大きい
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式や静電記録方式を利用したプリンター、複写機、ファクシミリ装置等の画像形成装置、当該画像形成装置に用いられる現像装置、現像剤担持体およびプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真画像形成プロセスを用いた画像形成装置の現像装置は、表面に現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、現像剤を貯溜する現像剤貯溜手段とを有する。さらに、現像装置は、現像剤担持体に接触し、現像剤貯溜手段に貯溜されている現像剤を現像剤担持体に供給する現像剤供給部材とを有する(特許文献1)。しかしながら、現像装置が寿命末期にある場合や現像装置が高温高湿度の環境下で使用される場合、現像剤の劣化や吸湿によって現像剤の帯電量が低下する可能性がある。このとき、現像剤供給部材によって物理的に現像剤を供給しても、現像剤の帯電量が低く、現像剤担持体との鏡像力が不十分となり、現像剤担持体によって現像剤を搬送できない現象が発生する。この結果、ベタ黒画像などの高印字画像で濃度が不足してしまう現象(いわゆるベタ黒追従不良)が発生する。
【0003】
このような課題を解決するため、特許文献2に示す現像装置では、現像剤供給部材の電位が、帯電系列上の現像剤および現像剤担持体との中間の電位に設定される。また、現像剤担持体は、導電体で構成された基体において導電性材料に絶縁性粒子を分散させることで微小閉電界を形成する誘電部が規則的あるいは不規則的に露出した表面層を有する。表面層が現像剤供給部材または現像剤によって摺擦されると、誘電部が現像剤の帯電極性とは反対の極性に帯電される。現像剤担持体の誘電部が現像剤供給部材と摩擦帯電することにより、誘電部に所定の電荷が付与され、付与された誘電部上に電界が発生する。特に誘電部と導電部との隣接部上には微小閉電界が発生し、現像剤担持体上の全体では、多数の微小閉電界が形成される。この電界により現像剤が表面層に付着する。現像剤容器内の無帯電または低帯電等の帯電量が不安定な現像剤は、現像剤担持体上の多数の微小閉電界等の電界の発生領域に搬送される。搬送された現像剤は、微小閉電界によって生じる力(グラディエント力)を受けて、特に現像剤と逆極性の誘電部にて吸着され担持される。これにより、現像剤の帯電量が著しく低い状況においても、現像剤搬送量を確保でき、ベタ黒画像などの高印字画像でも一様な濃度で画像出力が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-42672号公報
【文献】特開平4-156569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示す構成を有する現像装置では、無帯電又は低帯電量の現像剤の搬送が可能となり、ベタ黒追従不良は改善するが、現像位置において現像剤の帯電量が不十分であることで、かぶりなどの画像弊害が発生することがある。かぶりとは、所定の帯電量に帯電できない現像剤が、現像位置に搬送されたときに非現像部の電界であっても現像されてしまう現象である。この現象は、上記の微小閉電界の影響で現像担持体に付着された現像剤が、現像ブレードなどの電荷付与手段において転動による摩擦帯電機会を十分に得られない結果、所定の帯電量に帯電できないことが原因で発生する。
【0006】
また、特許文献2では現像剤供給手段の摺擦と現像剤とによって誘電部が帯電される。しかし、累計の印刷枚数の増加(例えば寿命末期の状態)や高温高湿度環境での使用の場合、現像剤の劣化や吸湿によって、現像剤から現像剤担持体表面の誘電部への電荷付与量が減少する。この結果、現像剤供給手段の摺擦による誘電部への電荷付与が支配的になる。現像剤担持体と現像剤供給手段の当接状態によっては誘電部において電荷付与が不均一になる。これにより、微小閉電界によるグラディエント力が部分的に低下する。このとき、印字率の高い画像形成を行うと、現像剤担持体上に担持および搬送される現像剤量が部分的に低下する。このため、現像担持体上のトナーコート量が現像担持体の誘電部の帯電量に従って変化することによって、ハーフトーン領域の濃度ムラといった問題が生じる場合がある。
【0007】
そこで本発明の目的は、簡易な構成で、現像剤の劣化や吸湿が生じた場合においても、濃度低下やベタ黒追従性不良の発生を抑制すること、かぶりやハーフトーン領域の濃度ムラの発生を抑制することが可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明である現像装置は、
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体の表面に当接して配置され、前記現像剤担持体に担持される現像剤を規制する規制部材と
を有する現像装置であって、
前記現像剤担持体の表面には、第1の表面粗さおよび第1の電気抵抗を有する導電部と、前記第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さおよび前記第1の電気抵抗よりも大きい第2の電気抵抗を有する誘電部が設けられており、
前記誘電部の帯電極性は、前記規制部材との摩擦によって前記現像剤担持体に担持される現像剤が帯電されたとき、前記現像剤の帯電極性と同極性であり、
前記第1の表面粗さが、前記規制部材の前記現像剤担持体と相対する面の第3の表面粗さよりも大きい
ことを特徴とする
た、上記目的を達成するために、本発明であるプロセスカートリッジは、
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体の表面に当接して配置され、前記現像剤担持体に担持される現像剤を規制する規制部材と、
現像剤像を担持する像担持体と、を有するプロセスカートリッジであって、
前記現像剤担持体の表面には、第1の表面粗さおよび第1の電気抵抗を有する導電部と、前記第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さおよび前記第1の電気抵抗よりも大きい第2の電気抵抗を有する誘電部が設けられており、
前記誘電部の帯電極性は、前記規制部材との摩擦によって前記現像剤担持体に担持される現像剤が帯電されたとき、前記現像剤の帯電極性と同極性であり、
前記第1の表面粗さが、前記規制部材の前記現像剤担持体と相対する面の第3の表面粗さよりも大きい
ことを特徴とする。
また、上記目的を達成するために、本発明である画像形成装置は、
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体の表面に当接して配置され、前記現像剤担持体に担持される現像剤を規制する規制部材と、
現像剤像を担持する像担持体と、
転写部材と、を有する画像形成装置であって、
前記現像剤担持体の表面には、第1の表面粗さおよび第1の電気抵抗を有する導電部と、前記第1の表面粗さよりも小さい第2の表面粗さおよび前記第1の電気抵抗よりも大きい第2の電気抵抗を有する誘電部が設けられており、
前記誘電部の帯電極性は、前記規制部材との摩擦によって前記現像剤担持体に担持される現像剤が帯電されたとき、前記現像剤の帯電極性と同極性であり、
前記第1の表面粗さが、前記規制部材の前記現像剤担持体と相対する面の第3の表面粗さよりも大きい
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記の現像装置において、現像剤の劣化や吸湿が生じた場合においても、ベタ黒追従性不良の発生を抑制しつつ、かぶりもしくはハーフトーン領域の濃度ムラなどの問題を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1に記載の現像ローラの説明図。
図2】実施例1に記載の画像形成装置の概略断面図。
図3】実施例1に記載の現像ユニットの説明図。
図4】実施例1に記載の現像ローラに働く微小閉電界を表す説明図。
図5】実施例1に記載のグラディエント力の説明図。
図6】実施例1に記載のトナー電荷付与作用の説明図。
図7】実施例1に記載の比較例1~4の現像ローラの説明図。
図8】実施例1に記載の比較例4の現像ローラ上の誘電部帯電の説明図。
図9】実施例2に記載のトナー電荷付与作用の説明図。
図10】実施例1に現像規制部の転動モデル説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を例示する。ただし、実施形態に記載されている構成部品の寸法や材質や形状やそれらの相対配置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件等により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。
【0012】
(実施例1)
以下、本発明の実施例1について説明する。まず、本実施例に係る電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置)の全体構成について説明する。図2は、本実施例の画像形成装置100の概略断面図である。
【0013】
本実施例の画像形成装置100は、いわゆるインライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザープリンタである。
【0014】
画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材P(例えば、記録用紙、プラスチックシート)にフルカラー画像を形成する。画像情報は、画像読み取り装置あるいは画像形成装置100に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器から、画像形成装置100に入力される。
【0015】
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdを有する。本実施例では、第1~
第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdは、鉛直方向(紙面上方向)と交差する方向に一列に配置されている。なお、本実施例では、第1~第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdの構成および動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。したがって、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して、総括的に説明する。
【0016】
本実施例では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に配置された4個のドラム型の電子写真感光体、すなわち、感光ドラム1(1a、1b、1c、1d)を有する。感光ドラム1は、図示しない駆動手段(駆動源)により回転駆動される。感光ドラム1の周囲には、帯電ローラ2(2a、2b、2c、2d)、スキャナユニット(露光装置)3(3a、3b、3c、3d)、現像ユニット(現像装置)4(4a、4b、4c、4d)が配置されている。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面を均一に帯電する帯電手段である。またスキャナユニット3は、パーソナルコンピュータ等のホスト機器から入力された画像情報からCPU(不図示)で演算された出力に基づき、レーザーを照射して感光ドラム1上に静電像(静電潜像)を形成する露光手段である。現像ユニット4は、静電像を現像剤(以下、トナー)像として現像する現像手段である。感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像ユニット4は一体化され、プロセスカートリッジSを形成する。プロセスカートリッジSは、画像形成装置100内の装着ガイドや位置決め部材等の装着手段によって、画像形成装置100に着脱可能に設けられる。
【0017】
また、各感光ドラム1に対向する位置には、感光ドラム1上のトナー像を記録材Pに転写するための中間転写体としての中間転写ベルト10が配置されている。中間転写ベルト10は、無端状のベルトで形成され、各感光ドラム1に当接し、図中矢印R3方向に循環移動(回転)する。中間転写ベルト10は、複数の支持部材として、二次転写対向ローラ13、駆動ローラ11、テンションローラ12に掛け渡されている。
【0018】
中間転写ベルト5の内周面側には、各感光ドラム1に対向するように、転写部材としての4つの一次転写ローラ14(14a、14b、14c、14d)が配置されている。一次転写ローラ14は、中間転写ベルト10を感光ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト10と感光ドラム1とが当接する一次転写部を形成する。
【0019】
また、中間転写ベルト10の外周面側において二次転写対向ローラ13に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ20が配置されている。二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10を介して二次転写対向ローラ13に圧接し、中間転写ベルト10と二次転写対向ローラ13とが当接する二次転写部を形成する。
【0020】
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置30に搬送される。定着装置30において記録材Pに熱および圧力が加えられることで、記録材Pにトナー像が定着される。なお、画像形成装置100は、いずれか一つの画像形成部あるいは複数(全てではない)の画像形成部を用いて、単色あるいはマルチカラーの画像を形成することもできる。本実施例における画像形成装置100は、一例として、プロセススピード148.2mm/sec、A4サイズ紙対応のプリンターである。
【0021】
<画像形成プロセス>
次に、画像形成装置100における画像形成プロセスについて説明する。画像形成時には、まず感光ドラム1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。次に、画像形成装置100の外部のホスト機器から入力された画像情報が、CPUによって静電像を形成するための演算処理が行われる。そして、演算結果を基にスキャナユニット3から出射さ
れるレーザー光で帯電した感光ドラム1の表面が走査露光され、感光ドラム1上に演算結果に従った静電像が形成される。感光ドラム1上に形成された静電像は、現像ユニット4によってトナー像(現像剤像)として現像される。そして、一次転写ローラ14に、一次転写電圧印加手段としての一次転写電圧電源15(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、感光ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト10上に一次転写される。フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、第1~第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdにおいて順次に行われ、中間転写ベルト10上に各色のトナー像が次に重ね合わせて一次転写される。
【0022】
その後、中間転写ベルト10の移動と同期が取られて記録材Pが二次転写部へと搬送される。そして、二次転写ローラ20に、二次転写電圧印加手段としての二次転写電圧電源21(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト10上の4色のトナー像は、記録材Pを介して中間転写ベルト10に当接している二次転写ローラ20の作用によって、給送手段によって搬送された記録材P上に一括して二次転写される。トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置30に搬送される。定着装置30において、記録材Pに熱および圧力が加えられることで、転写されたトナー像が定着され、画像形成装置100から排出される。
【0023】
なお、現像ユニット4は、トナーの現像量を制御するために、現像剤担持体としての現像ローラ22の回転速度を感光ドラム1の回転速度に対して差を持たせて現像ローラ22と感光ドラム1とを接触させて反転現像を行う。すなわち、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを、感光ドラム1上の露光により電荷が減衰した部分(画像部、露光部)に付着させることで静電像が現像される。本実施例において、一例として、現像ローラ22は、感光ドラム1の回転速度に対する現像ローラ22の回転速度の比が1.4倍となるように駆動される。
【0024】
また、一次転写工程で感光ドラム1の表面に残留したトナー(転写残トナー)は、後述の現像ローラ22によって回収され、再利用される。感光ドラム1の表面の転写残トナーは、帯電ローラ2を通過するときに正規帯電極性(負極性)に帯電される。その後、帯電ローラ2によって形成される感光ドラム1の電位と現像ローラ22に直流電圧を印加されて形成される現像ローラ22の電位との差に起因して生じる電界によって、転写残トナーは現像ローラ22に回収され、再利用される。
【0025】
<プロセスカートリッジの構成>
次に、本実施例の画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジSの全体構成について説明する。各色用のプロセスカートリッジSは、図示しない識別部等を除き、同一形状を有し、各色用のプロセスカートリッジSの現像ユニット4内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーが収容されている。なお、現像ユニット4のトナーとして非磁性一成分現像剤を用いる。
【0026】
プロセスカートリッジSは、感光ドラム1、帯電ローラ2を備えた感光体ユニットと、現像ローラ22等を備えた現像ユニット(現像装置)4と、を一体化して構成される。また、帯電ローラ2と現像ローラ22は、それぞれ回転軸である軸受(不図示)を中心に回転可能に構成される。
【0027】
感光ドラム1は、軸受を介して回転可能に支持されている。感光ドラム1は、図示しない駆動手段(駆動源)の駆動力が感光体ユニットに伝達されることで、画像形成動作に応じて図中矢印R1方向に回転駆動される。帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部が感光ドラム1に加圧接触し、従動回転する。
【0028】
一方、現像ユニット4は、図3に示すように、トナーを担持する現像ローラ22と、現像ブレード23(規制部材)と、現像ローラ22と接触するように設けられた供給部材26、これらを固定する現像枠体24と、を有する。現像枠体24は、現像ローラ22が配置された現像室24aと、現像室24aと現像枠体24の外部とを繋ぐ現像開口(開口部)を封止する吹き出し防止シート24bと、を備える。現像ブレード23の一端は現像枠体24に固定された固定部材25に固定され、現像ブレード23の他端が現像ローラ22に当接する。現像ブレード23は、現像ローラ22上のトナーコート量の規制と電荷付与とが可能となるように構成されている。現像ローラ22は現像開口に配置され、感光ドラム1に当接可能に設けられる。現像ローラ22の詳細については後述する。現像ローラ22は図中矢印R4方向に回転駆動するように配置されている。
【0029】
本実施例では、現像ローラ22と感光ドラム1とは、現像ローラ22と感光ドラム1の互いに向き合う各表面が同方向(本実施例では重力方向上方から下方に向かう方向)に移動するようにそれぞれ回転される。そして、所定の直流電圧が現像ローラ22に印加され、摩擦帯電によってマイナスに帯電したトナーが感光ドラム1に接触する現像部において、静電潜像が顕像化され、トナー像が形成される。
【0030】
図3に示すように、現像ブレード23は、その先端が現像ローラ22の回転方向に対して現像ローラ22の回転方向上流側に位置するカウンター方向を向いた状態で現像ローラ22の表面に当接し、トナーコート量の規制および電荷付与を行う。本実施例では、現像ブレード23は、厚さ50~120μmの板バネ状のSUS板の支持部材(不図示)のバネ弾性を利用して、現像ブレード23の表面が現像ローラ22に当接する。現像ブレード23は、短手方向において、一端にブレード部が形成され、他端が現像枠体24に固定されて支持さる。なお、現像ブレード23の支持部材としては、SUS板を用いる他、例えばリン青銅やアルミニウム等の金属薄板を用いて構成してもよい。一方、現像ブレード23は、支持部材の表面にポリアミドエラストマーやウレタンゴムやウレタン樹脂等からなる導電性樹脂からなる薄膜を被覆して形成したものを用いる。あるいは、支持部材そのものを現像ブレード23として現像ローラ22に当接させてもよい。さらに、所定の直流電圧がブレードバイアスとして現像ブレード23に印加され、現像ローラ22に印加される電圧との電位差が制御されることで、後述する現像ローラ22上のトナー搬送量が制御される。本実施例では、現像ローラ22の電位(基準電位)に対する現像ブレード23の電位はトナーと同極性とする。
【0031】
供給部材26は、φ4(mm)の導電性芯金と、その周囲に形成した柔軟性を有する連続気泡体からなるウレタンスポンジ層とで構成される。供給部材26の外径はφ11(mm)である。供給部材26に連続気泡体のウレタンスポンジを用いることで、スポンジ内部にトナーを蓄えることができる。画像形成装置100による現像処理時において、供給部材26は現像ローラ22に接触し、図中矢印R5方向に回転駆動できるように現像枠体24に支持されている。
【0032】
<現像ローラ22の説明>
図1A図1Bを用いて、本実施例における現像ローラ22の構成を詳細に説明する。現像ローラ22は、金属芯金22aに、下記の表1記載のシリコーンゴム組成物からなる基層22b、下記の表2記載のウレタンからなる表層22cが順次積層され、さらに表層22cに下記の表3記載の材料からなる絶縁性の塗料が塗布された構成を有する。なお、表層22cおよび基層22bには、金属芯金22aを介して現像バイアスが印加される。
【0033】
以下に本実施例における現像ローラ22の製法、材料、寸法等について述べる。
【0034】
1.金属芯金22aの形成
金属芯金22aは、一例として、外径6mm、長さ259.9mmのSUS304製の芯金にプライマー(商品名:DY35-051(東レ・ダウコーニング株式会社製))を塗布し、温度150℃で20分間加熱することで形成される。
【0035】
2.導電性弾性層の形成
現像ローラ22において、導電性弾性層は、1層構造または2層以上の積層構造を有する。導電性弾性層は、2層以上の積層構造を有することが好ましい。特に非磁性一成分接触現像系プロセスでは、現像ローラ22として2層の積層構造からなる導電性弾性層を有する現像ローラが好適に用いられる。本実施例では、基層22bと表層22cからなる2層積層構造の導電性弾性層について説明する。また、導電性弾性層は、導電性を得るために、導電剤を含有することが好ましい。導電剤としては、イオン導電剤やカーボンブラックのような電子導電剤が挙げられる。導電性弾性層の導電性と導電性弾性層のトナーに対する帯電性能とを制御することができる点で、カーボンブラックが導電剤として好ましい。また、導電性弾性層の体積抵抗率(第1の電気抵抗)は、1×10^3Ω・cm以上、1×10^11Ω・cm以下の範囲であることが好ましい。
【0036】
2-1.基層22bの形成
基層22bの形成においては、金属芯金22aを、内径10.0mmの円筒状金型内に、金型の円筒に同心となるように設置する。そして、基層22bの材料の一例として、下記表1に示す材料を混合機(商品名:トリミックスTX-15(井上製作所社製))で混合した付加型シリコーンゴム組成物を、温度120℃に加熱した金型内に注入する。材料注入後、温度120℃にて10分間加熱成型し、室温まで冷却後、金型から脱型すると、軸芯体の外周に厚み2.00mmの基層22bが形成された基層ローラが得られる。
【表1】
【0037】
2-2.表層22cの形成
表層22cの形成においては、下記表2に示す材料を秤量し、撹拌混合する。そして、得られた混合物を固形分濃度28質量%になるようにメチルエチルケトン(Aldrich社製)に加えて混合し、ビーズミル(アシザワファインテック社製)にて均一に分散し、塗料を得る。さらに、基層ローラを、オーバーフロー式循環塗工機にてこの塗料中に浸漬して塗工することにより、表面層の膜厚が15μmとなるように塗布する。その後、温度130℃にて90分間加熱して、塗膜を乾燥、硬化し、基層ローラ上に表層22cが形成された弾性層ローラが得られる。なお、後述する導電部粗しとは、下記表2に記載の樹脂粒子の添加制御により導電部22eの表面粗さを制御する領域を指す。
【表2】
【0038】
3.誘電部22dの形成
現像ローラ22の表面上の一部の領域には、複数の誘電部22dが存在する。より具体的には、現像ローラ22の表面は、少なくとも、複数の誘電部22dの表面と、誘電部22dで被覆されていない導電性弾性層の露出部分とを含んで構成されている。これにより、誘電部22dは、導電部22eの表面の一部を被覆することにより、現像ローラ22の表面に形成される。また、誘電部22dは、導電部22eの領域に散在するように設けられている。さらに、現像ローラ22の表面において、誘電部22dが占める面積は、導電部22eが占める面積よりも小さくなるように構成されている。現像ローラ22の誘電部22dの体積抵抗率(第2の電気抵抗)は、1×10^13Ω・cm以上、1×10^18Ω・cm以下であることが好ましい。すなわち、本実施例では、誘電部22dの電気抵抗は、導電部22eの電気抵抗よりも大きい。
【0039】
誘電部22dの形成においては、下記表3に示す材料を秤量し、撹拌混合する。そして、得られた混合物を固形分濃度3質量%になるようにメチルエチルケトン(Aldrich社製)に溶解、混合し、誘電部形成用の塗料を得る。
【0040】
導電性弾性層上に誘電部22dを形成する方法としては、各種印刷方法が挙げられるが、導電性弾性層の表面上の一部の領域に複数の誘電部22dを存在させるためには、ジェットディスペンサー法およびインクジェット法が好ましい。このとき、表層22cにおいて誘電部22dが形成されず、露出している面を導電部22eと呼ぶこととする。本実施例においては、誘電部22dの帯電極性は、現像ブレード23との摩擦によって現像ローラ22に担持される現像剤が帯電されたとき、現像剤の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)である。
【表3】
【0041】
<導電性弾性層と誘電部の粗さ>
誘電部22dの表面粗さと導電部22eの表面粗さとは異なっている。より具体的には、誘電部22dの表面粗さRayは、導電部22eの表面粗さRadよりも低い、すなわちより平滑になっている。本発明者らの検討の結果、導電部22eの表面粗さ(第1の表面粗さ)は0.8μm<Rad<2.7μm、誘電部22dの表面粗さ(第2の表面粗さ)はRay<0.8μm(0.8μm未満)であることが好ましい。本実施例では、誘電部22dは樹脂粒子を含有しないのに対し、導電部22eは樹脂粒子を含有する。これにより誘電部22dと導電部22eとで表面粗さの違いを得られる。
【0042】
後述するトナー電荷付与作用は規制部にて行われ、導電部22eと現像ブレード23の間でトナーを転動させることで電荷付与を行う。すなわち、誘電部22d上のトナーを、速やかに現像ローラ22の回転方向下流側に存在する導電部22eへ搬送することで、導電部22e上にてトナー電荷付与を行う。誘電部22dの表面粗さが0.8μm以上である場合、現像ローラ22上に担持されるトナーが増加して、導電部22eにて電荷付与を行う機会を得られないトナーが発生し、結果としてトナー電荷付与作用が低減する。また、導電部22eの表面粗さが2.7μm以上であっても、現像ローラ22上に担持されるトナーが増加し、トナー電荷付与作用が低減するため好ましくない。
【0043】
<誘電部と導電部の表面粗さの測定方法>
本実施例では、誘電部22dの表面粗さRayと導電部22eの表面粗さRadの粗さは、以下のように測定される。
【0044】
レーザー顕微鏡VK-X100(商品名、キーエンス社製)に、拡大倍率20倍の対物レンズを設置する。そして、当該顕微鏡の画像連結機能を用いて1.5mm×1mmの領域の現像ローラ22の表面をレーザー共焦点光学系で二次元走査を行うことにより、現像ローラ22の表面の像と高さ情報を取得することができる。この中で一辺900μmの正方形の領域(評価領域と称する)内を評価対象とする。
【0045】
この高さ情報に基づいて二次曲面補正モードで傾き補正を行った後に、誘電部22dの抽出を行う。測定器に付属の解析用ソフトウェアを用いて表面粗さを測定するモードにて評価を行い、上記評価領域における表面粗さRayを算出する。また、導電部22eの表面粗さは、評価領域から誘電部22dを除いた領域を抽出し、抽出した領域について誘電部22dの表面粗さの算出と同様に表面粗さRadを算出する。
【0046】
本実施例で使用する現像ローラ22における、現像ローラ22の回転駆動方向の誘電部22dの幅の平均値Sy(以下、平均誘電部幅Syと称する)は60μmである。以下に評価方法について説明する。
【0047】
<平均誘電部幅の測定方法>
本発明において、現像ローラ22の回転方向の平均誘電部幅Syは、以下のように測定される。レーザー顕微鏡VK-X100(商品名、キーエンス社製)に、拡大倍率10倍の対物レンズを設置して、1.5mm×1mmの領域の現像ローラ22の表面をレーザー共焦点光学系で二次元走査を行う。これによって、現像ローラ22の表面の高コントラスト画像を取得することができる。そして、取得した画像において一辺900μmの正方形の領域(評価領域と称する)を評価対象とする。
【0048】
続いて、評価領域の画像から誘電部22dを抽出し、画像の二値化を行う。そして、得られた二値化画像を解析し、現像ローラ22の回転方向において連続する誘電部22dの画素数を算出する。そして、算出した画素数の平均値を算出し、さらに解像度を基に平均誘電部幅Syを算出する。
【0049】
本実施例では、現像ブレード23の表面が現像ローラ22に当接することで、トナーコート量の規制およびトナーの電荷付与を行っている。現像ブレード23によってトナーコート量の規制およびトナーの電荷付与が行われる部分を規制ニップ部と称する。この規制ニップ部では、現像ローラ22の誘電部の帯電も行われる。本実施例では、規制ニップ部の幅W(当接幅)は130μm程度であり以下の方法で測定される。なお、規制ニップ部が、規制部材と現像剤担持体との間に形成される当接部に相当する。
【0050】
<規制ニップ部の幅Wの測定>
規制ニップ部の幅の測定においては、現像ブレード23に油性マジックインクで現像ローラ22との当接領域にマーキングを行い、マーキングを乾燥させた後、現像ローラ22を当接させて100枚程度印字する。その後、現像ブレード23の表面をVK-X100(商品名、キーエンス社製)で観察する。
【0051】
現像ブレード23の規制ニップ部は、現像ローラ22からトナーを押し付けられた状態で回転するため、マーキングのインクが剥がれる結果、現像ブレード23にスジ状の摺擦痕が発生する。そこで、この摺擦痕の幅を基に規制ニップ部の幅が算出される。
【0052】
<グラディエント力の作用>
現像ローラ22は、図1Bに示す通り、表面に誘電部22dと導電部22e(基層22bと金属芯金22aとは導通されている)とが混在して分布している。現像ローラ22の表面に、規制部材である現像ブレード23が直接あるいはトナーを介して摺擦されることにより、現像ローラ22の誘電部22dに電荷が付与される。そして、電荷が付与された誘電部22dに電界が発生する。誘電部22dと導電部22eとが互いに隣接する部分においては微小閉電界Eが発生し、現像ローラ22の全体では、多数の微小閉電界Eが形成される。
【0053】
例えば、トナーを介した現像ブレード23の現像ローラ22への摺擦により誘電部22dに電荷が付与されると、図4に示すように誘電部22dから導電部22eへ円弧状に延びる微小閉電界Eが形成される。この結果、現像ローラ22上には現像室24a内の無帯電あるいは低帯電等の帯電量が不安定なトナーが、現像ローラ22上の微小閉電界E内に搬送される。微小閉電界E内に搬送されたトナーは、電界によって生じる静電的な力、また、無帯電の現像剤の場合は微小閉電界Eによって生じる後述のグラディエント力(Gradient Force)を受け、現像ローラ22の表面に引きつけられて担持される。
【0054】
ここで、図5を参照しながらグラディエント力について説明する。図5A図5Bは、電界中の誘電体粒子(現像剤粒子)の運動を模式的に示す。図5Aに示すように、帯電した誘電体粒子(トナー粒子)71は、外部から与えられた電界内にあるときは、その帯電電荷の極性の正負に応じて、電界の方向と同一方向あるいは逆方向の静電的な力を受ける。また、図5Bに示すように、位置によって大きさが異なるいわゆる不平等電界が形成されている場合は、不平等電界内にある無帯電の誘電体粒子(トナー粒子)72は、電荷を持たなくとも電界の強い領域(図5Bでは紙面右方向)に向かう力を受ける。この力をグラディエント力という(上田他著「静電気の基礎」,p.15,昭和46年朝倉書店発行)。
【0055】
<トナー電荷付与作用>
グラディエント力によって現像ローラ22に担持されたトナーは、現像ブレード23によって所定の厚さに規制される。さらに、現像ブレード23がトナーを介して現像ローラ22の表面を摺擦することにより、トナーは、現像ローラ22と現像ブレード23の材料の摩擦帯電系列上の位置に応じた極性で、現像に必要な所定の帯電量に帯電される。
【0056】
現像ローラ22は、図6に示す通り、表面において、誘電部22dの表面粗さと導電部22eの表面粗さとが異なるように構成されている。現像ローラ22がトナーを介して現像ブレード23と摺擦する際、誘電部22d側に付着したトナーは現像ブレード23の規制力によって掻き取られるか、あるいは現像ローラ22の回転方向下流側の導電部22eに移動される。導電部22eに付着したトナーは、導電部22eの表面から現像ローラ22の移動方向へ搬送される力を受ける。また、当該トナーは、現像ブレード23との摺擦によって現像ローラ22の回転方向とは逆の方向に力を受ける。この結果、トナーは転動
し、転動による摺擦で摩擦帯電が促進されることで、トナーが帯電される。以上により、現像ローラ22上には現像に必要な付着量および帯電量の多層のトナーが安定して担持される。
【0057】
<作用効果の説明>
次に、本実施例における、現像剤の劣化や吸湿が生じた場合のベタ黒追従性不良、かぶりに関する作用効果について、比較例を用いて説明する。比較例の概要は以下の通りである。
【0058】
(比較例1)
現像ローラの導電部の表面粗し処理:あり
現像ローラの誘電部:なし
図7Aに、比較例1における現像ローラ22の断面図を示す。本実施例との違いは、誘電部22dを有しないように構成されている点である。
【0059】
(比較例2)
現像ローラの導電部の表面粗し処理:あり
現像ローラの誘電部:あり、現像剤の正規帯電極性と逆極性
平均誘電部幅Sy=60μm
図7Bに、比較例2における現像ローラ22の断面図を示す。本実施例との違いは、誘電部の材料にトナーの正規帯電極性と逆極性の塗料を用いて誘電部22d’が形成されている点である。
【0060】
(比較例3)
現像ローラの導電部の表面粗し処理:なし
現像ローラの誘電部:あり、現像剤の正規帯電極性と同極性
平均誘電部幅Sy=60μm
図7Cに、比較例3における現像ローラ22の断面図を示す。本実施例との違いは、導電部22eの表層が樹脂粒子を含有しない点である。すなわち、誘電部22dの表面粗さと導電部22eの表面粗さが同等に構成されている点である。
【0061】
(比較例4)
現像ローラの導電部の表面粗し処理:あり
現像ローラの誘電部:あり、現像剤の正規帯電極性と同極性
平均誘電部幅Sy=140μm
図7Dに、比較例4における現像ローラ22の断面図を示す。本実施例との違いは、誘電部22dの平均誘電部幅Syが、本実施例の平均誘電部幅よりも大きく、かつ規制ニップ部Nの幅よりも大きくなるように構成されている点である。
【0062】
<比較結果>
本実施例、比較例1、比較例2における現像装置を、図2の画像形成装置100、具体的にはMF726Cdw(商品名、キヤノン社製)を用いて画像評価試験を行った。具体的には、高温高湿度環境(温度30℃湿度80%)下における現像装置の通紙前(0枚通紙)における「新品時」と、5000枚通紙を行った後における「耐久時」とにおいて画像評価試験を行った。画像評価は、ベタ黒追従性についてはいわゆるベタ黒画像を用い、かぶりについてはいわゆるベタ白画像を用いて評価した。画像評価の試験結果を表4に示す。
【表4】
【0063】
以下に、本実施例と各比較例の現像装置を用いた場合の「新品時」と「耐久時」における、ベタ黒追従性、かぶり、ハーフトーン領域の濃度ムラに関する評価結果について説明する。
【0064】
(ベタ黒追従性の評価基準)
ベタ黒追従性の評価においては、画像形成装置100によってベタ黒画像を出力し、目視によって、以下の基準により判定する。
A:白抜け(ベタ黒追従性不良)発生なし
B:白抜け(ベタ黒追従性不良)発生あり
【0065】
(かぶりの評価基準)
かぶりの評価においては、画像形成装置100によってベタ白画像を出力した紙と、同時に転写材にマスキングをすることで、かぶりトナーを転写材に付着させずに出力した紙(基準紙)を使用する。そして、反射率計を用いてベタ白画像を出力した紙の反射率と基準紙の反射率を測定し、それぞれの反射率の差分値をかぶりを示す指標値とする。
A:差分値が3.0未満
B:差分値が3.0以上
【0066】
(ハーフトーン領域の濃度ムラの評価基準)
ハーフトーン領域の濃度ムラの評価においては、25%濃度のハーフトーン画像を出力したときの均一性と濃度ムラを評価する。一例として、光学スキャナCS9000F M
arkII(商品名、キヤノン社製)を用いて1200dpiモードで画像を取り込む。さらに、当該光学スキャナで、σ=100μmのガウシアンフィルタでぼかし処理を行ったときの濃度幅比=中心濃度値に対する最大濃度値と最小濃度値との比を以下の基準により判定する。
A:濃度幅比が30%未満
B:濃度幅比が30%以上
【0067】
(ベタ黒追従性に関する本実施例の効果)
比較例1では、耐久時にベタ黒追従性不良の発生が見られた。一方、本実施例では、新品時および耐久時ともにベタ黒追従性の発生は確認されなかった。比較例1においてベタ黒追従性不良が発生した理由は次のように考えられる。比較例1における現像ローラ22は、誘電部22dを有しないように構成されているため、トナーに上記のグラディエント力が働かない。したがって、新品時は現像に必要なトナー帯電量が十分であるため、鏡像
力によって現像ローラ22上にトナーが担持され、ベタ黒追従性不良は発生しない。一方、耐久時のようにトナー劣化が進み、かつ高湿度環境のような、トナーの帯電量が不十分となる状況では、トナーにグラディエント力が働かないと、低帯電のトナーおよび無帯電のトナーは現像ローラ22に担持されない結果、ベタ黒追従性不良が発生する。
【0068】
(かぶりに関する本実施例の効果)
比較例2、3では、耐久時にかぶりの発生が見られた。一方、本実施例では、新品時および耐久時ともにかぶりの発生は確認されなかった。比較例2においてかぶりが発生した理由は次のように考えられる。比較例2における現像ローラ22は、誘電部22dの極性がトナーとは逆極性となるように構成されているため、トナーがグラディエント力によって現像ローラ22に担持される際に、主に誘電部22dの表面に吸着される。このとき、トナーに働く力は、現像ローラ22側に向かって働く、グラディエント力と誘電部22dとトナーの極性差で生じる静電気力である。このため、規制部にてトナーが摺擦される際に、現像ブレード23との摺擦による現像ローラ22の回転方向とは逆の方向に働く力よりも、グラディエント力と静電気力による現像ローラ22への吸着力が大きくなる。この結果、トナーの転動による電荷付与作用が十分に得られず、かぶりがより顕著に現れる。
【0069】
また、比較例3においてかぶりが発生した理由は次のように考えられる。比較例3における現像ローラ22は、導電部22eの表層が樹脂粒子を含有しない構成である。したがって、グラディエント力によって搬送された現像ローラ22上のトナーが、規制部にて摺擦される際に、表面粗し処理が施された導電部22eの表面によって現像ローラ22の回転方向に搬送される力を受けられない。この結果、トナーの転動による電荷付与作用が十分に得られず、かぶりがより顕著に現れる。
【0070】
一方、比較例1における現像ローラ22では、規制部まで搬送されて規制部を通過したトナーは、導電部22eで十分に帯電されるため、かぶりの発生は確認されなかった。
【0071】
(ハーフトーン領域の濃度ムラに関する本実施例の効果)
比較例2、比較例3、比較例4における現像ローラ22を用いる場合、耐久時にハーフトーン領域の濃度ムラの発生が確認された。一方、本実施例では、新品時および耐久時ともにハーフトーン濃度ムラの発生は確認されなかった。本実施例では、平均誘電部幅Syは60μmであり、規制ニップ部Nの幅130μmの1/2よりも小さい。
【0072】
本実施例の規制ニップ部Nを通過するトナーの様子と、ハーフトーン領域の濃度ムラの要因と考えられる誘電部22dに対する電荷付与作用について、図8を用いて説明する。図8Aは、平均誘電部幅Syが規制ニップ部Nの幅よりも小さい場合に規制ニップ部Nを通過する現像ローラ22の時間経過の様子(図中i)~iii))を示す。
【0073】
トナーは、現像ローラ22によって搬送され、規制ニップ部Nを通過する。このとき、トナーは、現像ブレード23の規制力を受けるため、現像ローラ22の回転方向R4において、転動しながら、現像ローラ22の回転速度に対して相対的に遅い速度でRt方向に並進する。
【0074】
規制部におけるトナーの搬送は、図10に示すような簡易的なコロのモデル(2枚の板に挟まれる球のモデル)を用いて考察することができる。現像ブレード23(上側板)に対して現像ローラ22(下側移動板)のトナー(球)のコート厚が一様に1粒子分であると想定した場合に、現像ローラ22の移動距離に対してトナーの移動距離は短くなる。
【0075】
たとえば、現像ブレード23または現像ローラ22とトナーが確実に当接すると想定した場合は、現像ローラ22の回転方向における現像ブレード23に対するトナーの移動距
離は、現像ローラ22の移動距離Lの半分であるL/2になる。
【0076】
本実施例では、現像ローラ22上のトナーのコート量は、1層(1粒子分)~2層(2粒子分)程度である。したがって、導電部22eで帯電されたトナー(図中、横線でハッチング)は、現像ローラ22の回転方向下流側の誘電部22dに送られる。誘電部22dでは、上記の通りトナーへの電荷付与作用が不十分であるが、トナーが誘電部22dと摺擦することで誘電部22d自体を帯電させることが可能となる。
【0077】
誘電部22dに対する電荷付与作用は、現像剤供給手段による摺擦とトナーによる摺擦とで行われる、耐久時におけるトナーが劣化した状態では、現像剤供給手段のトナーを介した電荷付与作用の寄与が小さくなる。このため、規制部において導電部22eで帯電されたトナーによる誘電部22dでの帯電が重要となる。
【0078】
本実施例では、現像ローラ22の回転方向における誘電部22dの平均誘電部幅Syが、規制ニップ部Nの幅よりも小さい。このため、帯電したトナーは、規制ニップ部Nを通過する間に、誘電部22dの平均誘電部幅の全域における摺擦・帯電が可能となる。これにより、誘電部22dの長手方向にわたる摺擦・帯電によって誘電部22dの帯電電荷量が保たれる。この結果、高湿環境下においても上記の微小閉電界が形成されてグラディエント力が維持された状態で、現像室内においてトナーが担持および搬送されることによって、規制部で安定したコート形成が可能になる。
【0079】
このように、本実施例では、規制部で帯電されたトナーによって誘電部22dが現像に必要な帯電量に関し十分に帯電されることで誘電部の電位が保たれ、高濃度の印字を継続して行う場合でもハーフトーン領域の濃度が均一に保たれることが期待できる。
【0080】
一方、比較例4では、平均誘電部幅Syが140μmであり、規制ニップ部Nの幅は130μmであった。ここで、平均誘電部幅Syが規制ニップ部Nの幅の1/2よりも長い場合に誘電部22dが帯電する様子を図8Bを用いて説明する。
【0081】
比較例4では、本実施例と同様に、トナーは、現像ローラ22によって搬送され、規制ニップ部Nを通過する。このとき、トナーは、現像ブレード23の規制力を受けるため、現像ローラ22の回転方向R4において、転動しながら、現像ローラ22の回転速度に対して相対的に遅い速度でRt方向に並進する。このため、導電部22eで帯電されたトナーは、現像ローラ22の回転方向下流側の誘電部22dに送られ、誘電部22dと摺擦することで誘電部22d自体を帯電させることが可能となる。
【0082】
しかしながら、現像ローラ22の回転方向において、規制ニップ部Nの幅よりも誘電部22dの幅が大きいため、導電部22eで帯電されたトナーは、誘電部22dの平均誘電部幅の全域にわたっては摺擦されることなく規制ニップ部Nを通過する。そして、トナーは、現像ブレード23からの規制力を受けずに現像ローラ22の回転速度と同等の速度で搬送される。このため、現像ローラ22の回転方向下流側の誘電部22dではトナーとの摺擦が生じず、現像ローラ22の回転方向の上流側と下流側とで誘電部22dの帯電電荷量が異なる。また、誘電部22dによってトナーを保持・搬送するグラディエント力も、現像ローラ22の回転方向の上流側と下流側とで異なる。この結果、現像ローラ22上のトナーのコート量が不均一となり、特に濃度が変化しやすい中間階調の領域において濃度ムラが発生したと考えられる。
【0083】
比較例1における現像ローラ22は、誘電部22dを有しない。このため、誘電部22dの帯電量の変化に起因するハーフトーン領域の濃度ムラは発生しなかった。また、比較例2における現像ローラ22は、トナーと逆極性の誘電部22d’を有する。このため、
誘電部22d’への電荷付与作用について、規制部における誘電部22dとトナーとの摺擦による寄与は、静電的な引力が働くために小さく、現像剤の供給部材26による寄与が支配的となる。したがって、耐久時にトナーが劣化した状況では、誘電部22d’に対する電荷付与が現像剤の供給部材26の摺擦による電荷付与作用に左右されやすくなる結果、誘電部22d’の帯電電荷量が低下してハーフトーン領域に濃度ムラが発生したと考えられる。さらに、比較例3における現像ローラ22では、かぶりの発生と同様の理由で、規制部でのトナーへの電荷付与作用が不十分となる。この結果、帯電したトナーから誘電部22dへの電荷付与による帯電電荷量が低下してハーフトーン領域に濃度ムラが発生したと考えられる。
【0084】
上述の通り、平均誘電部幅Syは、トナーのコート厚が1層(1粒子分)であると想定した場合におけるトナーの移動量である規制ニップ部Nの幅の1/2以下であることが好ましい。
【0085】
以上説明した通り、本実施例によれば、現像剤の劣化や吸湿が生じた場合においても、ベタ黒追従性不良の発生を抑制しつつ、かぶり、ハーフトーン領域の濃度ムラなどの画像の問題を抑制することができる。
【0086】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、本実施例の特徴についてのみ説明する。実施例2において、実施例1と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0087】
実施例1では、現像ローラ22における誘電部22dの表面粗さと導電部22eの表面粗さとの関係に基づいて、規制部におけるトナーの転動を促進し、ベタ黒追従性不良やかぶりを抑制する構成について説明した。実施例2では、図9に示すように、現像ブレード23の現像ローラ22と相対する表面の表面粗さ(第3の表面粗さ)を、導電部22eの表面粗さよりも小さく、かつ誘電部22dの表面粗さよりも大きくなるように構成する。なお、現像ブレード23の表面粗さは、上記の誘電部22dと導電部22eの表面粗さの測定方法に準じて測定する。
【0088】
実施例2では、現像ブレード23の表面粗さが、誘電部22dの表面粗さよりも大きい。このため、現像ローラ22が現像ブレード23によってトナーを介して摺擦される際、誘電部22dに付着したトナーが、現像ブレード23の表面によって掻き取られることで、現像ローラ22の回転方向下流側の導電部22eに移動させられる。また、導電部22eの表面粗さが、現像ブレード23の表面粗さよりも大きい。このため、導電部22eに付着したトナーは、導電部22eの表面によって現像ローラ22の回転方向に搬送され、また、現像ブレード23との摺擦によって現像ローラ22の回転方向は逆の方向に力を受ける。この結果、トナーが転動することによる摺擦に起因する摩擦帯電が活発になり、実施例1の現像装置に比べてよりトナーの帯電を促進させることができる。
【符号の説明】
【0089】
100・・・画像形成装置、4a、4b、4c、4d・・・現像装置、22・・・現像ローラ、23・・・現像ブレード、22d・・・誘電部、22e・・・導電部、T・・・トナー
図1
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図10