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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】空間安定化装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/232 20060101AFI20221219BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20221219BHJP
【FI】
H04N5/232 480
G03B17/56 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018208800
(22)【出願日】2018-11-06
(65)【公開番号】P2020077930
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】太田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】竹内 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃祐
(72)【発明者】
【氏名】大田 有純
【審査官】高野 美帆子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-004208(JP,A)
【文献】特開2008-244893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/232
G03B 17/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラを安定化させる空間安定化装置であって、
あらかじめ定めた軸をアジマス軸、アジマス軸に垂直な状態を維持しながらアジマス軸回りに回転可能な軸をエレベーション軸、アジマス軸とエレベーション軸に垂直な軸をクロスエレベーション軸、エレベーション軸に垂直な状態を維持しながらエレベーション軸回りに回転可能であって前記カメラの撮影方向と一致する軸をロール軸、ロール軸とクロスエレベーション軸とがなす角をエレベーション角とし、
アジマス軸とエレベーション軸の角度または角速度を制御する制御部と、
前記制御部からの指示に従って、当該空間安定化装置を動作させる駆動部と、
エレベーション角を取得するエレベーション角取得部と、
クロスエレベーション軸の角速度を含む情報であるクロスエレベーション角速度情報を取得するクロスエレベーション角速度取得部と、
前記カメラのズーム情報を取得するズーム情報取得部と
を備え、
前記制御部は、カメラの揺れの角速度のクロスエレベーション軸成分によって生じる映像の横揺れを、エレベーション角とクロスエレベーション角速度情報に基づいてアジマス軸に角速度を与える制御をすることで低減する横揺れ低減手段を有し、
前記のアジマス軸に与える角速度は、前記ズーム情報が、ズーム倍率が低い状態であることを示しているほど低い
ことを特徴とする空間安定化装置。
【請求項2】
請求項1記載の空間安定化装置であって、
前記横揺れ低減手段は、所定のズーム倍率以下では、前記ズーム倍率に依存して前記の与える角速度を決める
ことを特徴とする空間安定化装置。
【請求項3】
請求項1記載の空間安定化装置であって、
前記横揺れ低減手段は、所定の画角以上では、前記画角に依存して与える角速度を決める
ことを特徴とする空間安定化装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の空間安定化装置であって、
ωxELをカメラの揺れの角速度のクロスエレベーション軸成分、θELをエレベーション角、zを前記ズーム情報に基づいて定める0以上1以下の係数とし、
前記横揺れ低減手段の制御は、前記のアジマス軸に与える角速度ΩAZが、
ΩAZ=ωxEL×f(θEL
ただし、f(θEL)=tanθEL×z
となるように制御する処理を含む
ことを特徴とする空間安定化装置。
【請求項5】
請求項4記載の空間安定化装置であって、
前記横揺れ低減手段は、エレベーション角θELの変化によってtanθELの符号が変わる角度を含むあらかじめ定めた範囲では、
ΩAZ=ωxEL×g(θEL
ただし、g(θEL)は連続的な関数であって、前記あらかじめ定めた範囲の境界ではg(θEL)=f(θEL)が成り立つ
ように制御する
ことを特徴とする空間安定化装置。
【請求項6】
請求項4または5記載の空間安定化装置であって、
前記のf(θEL)の絶対値に上限を設けている
ことを特徴とする空間安定化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラを空間的に安定化する空間安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間安定装置の振動抑制制御をおこなう角速度制御装置として、特許文献1に記載された技術が知られている。図8は特許文献1の代表図(図8)である。特許文献1の要約の課題には『たわみ振動の影響を排除して高い空間安定性を確保することができる角速度制御装置を提供すること。』と記載され、解決手段には『視軸角速度検出部210が検出した角速度信号から、減算器130によりAZ軸回転成分を除去した後、フィルタ演算器140によりたわみ振動成分を除去する。こうしてロール方向回転成分のみとなった角速度信号と、AZ軸角速度検出部が検出されたAZ軸回転成分を含む角速度信号を加算し、この信号を用いて振動補正のフィードバック制御をおこなう。このように、たわみ振動成分を排除して制御をおこなうことにより、制御の安定度を高め、高い空間安定性を実現させる。』と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-99663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、あらかじめ定めた軸をアジマス軸(AZ軸)、アジマス軸に垂直な状態を維持しながらアジマス軸回りに回転可能な軸をエレベーション軸(EL軸)、アジマス軸とエレベーション軸に垂直な軸をクロスエレベーション軸(x-EL軸)、エレベーション軸に垂直な状態を維持しながらエレベーション軸回りに回転可能であって前記カメラの撮影方向と一致する軸をロール軸(RL軸)とする。従来技術は、角速度のクロスエレベーション軸成分によって生じる横揺れが気にならないときでもアジマス軸の角速度を制御するため、回転揺れが目立ってしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、空間安定化装置における横揺れと回転揺れのバランスを図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空間安定化装置は、カメラを安定化させる。あらかじめ定めた軸をアジマス軸、アジマス軸に垂直な状態を維持しながらアジマス軸回りに回転可能な軸をエレベーション軸、アジマス軸とエレベーション軸に垂直な軸をクロスエレベーション軸、エレベーション軸に垂直な状態を維持しながらエレベーション軸回りに回転可能であって前記カメラの撮影方向と一致する軸をロール軸、ロール軸とクロスエレベーション軸とがなす角をエレベーション角とする。本発明の空間安定化装置は、制御部、駆動部、エレベーション角取得部、クロスエレベーション角速度取得部、ズーム情報取得部を備える。制御部は、アジマス軸とエレベーション軸の角度または角速度を制御する。駆動部は、制御部からの指示に従って、当該空間安定化装置を動作させる。エレベーション角取得部は、エレベーション角を取得する。クロスエレベーション角速度取得部は、クロスエレベーション軸の角速度を含む情報であるクロスエレベーション角速度情報を取得する。ズーム情報取得部は、カメラのズーム情報を取得する。前記制御部は、カメラの揺れの角速度のクロスエレベーション軸成分によって生じる映像の横揺れを、エレベーション角とクロスエレベーション角速度情報に基づいてアジマス軸に角速度を与える制御をすることで低減する横揺れ低減手段を有し、アジマス軸に与える角速度は、前記ズーム情報が、ズーム倍率が低い状態であることを示しているほど低い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空間安定化装置によれば、横揺れが気になりにくいズーム倍率が低い状態のときには、角速度のクロスエレベーション軸成分を低減するためにアジマス軸に与える角速度を低くする。よって、アジマス軸に角速度を与えることによって与えてしまう回転揺れを抑えることができる。一方、横揺れが気になりやすいズーム倍率が高い状態のときには、角速度のクロスエレベーション軸成分を低減するためにアジマス軸に与える角速度を大きくする。よって、横揺れを優先して低減できる。したがって、空間安定化装置における横揺れと回転揺れのバランスを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】軸とカメラの関係を示す図。
図2】本発明の空間安定化装置の構成例を示す図。
図3】横揺れについて説明するための図。
図4】角速度のクロスエレベーション軸成分によって生じる横揺れを示す図。
図5】角速度のクロスエレベーション軸成分によって生じる横揺れをアジマス軸に角速度を加えて除去したときの様子を示す図。
図6】横揺れによって生じる振れ幅と画角の関係を説明するための図。
図7】本発明の横揺れ低減手段の制御を説明するための図。
図8】特許文献1の技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
図1は軸とカメラの関係を示す図である。図2は本発明の空間安定化装置の構成例を示す図である。図3は横揺れについて説明するための図、図4は角速度のクロスエレベーション軸成分によって生じる横揺れを示す図、図5は角速度のクロスエレベーション軸成分によって生じる横揺れをアジマス軸に角速度を加えて除去したときの様子を示す図である。図6は横揺れによって生じる振れ幅と画角の関係を説明するための図である。図7は本発明の横揺れ低減手段の制御を説明するための図である。
【0011】
図1に示すように、カメラ90は空間安定化装置10を介して取り付け面80に取り付けられる。また、取り付け面80はヘリコプタなどの底面部分などである。空間安定化装置10は取り付け面80が揺れることによって生じる角速度を低減し、カメラ90を安定化させる。本明細書内では、あらかじめ定めた軸をアジマス軸(AZ軸)、アジマス軸に垂直な状態を維持しながらアジマス軸回りに回転可能な軸をエレベーション軸(EL軸)、アジマス軸とエレベーション軸に垂直な状態を維持しながらアジマス軸回りに回転可能な軸をクロスエレベーション軸(x-EL軸)、エレベーション軸に垂直な状態を維持しながらエレベーション軸回りに回転可能であってカメラの撮影方向と一致する軸をロール軸(RL軸)、ロール軸とクロスエレベーション軸とがなす角をエレベーション角θELとする。本発明が対象としている空間安定化装置は、アジマス軸とエレベーション軸の角度または角速度を制御できるが、クロスエレベーション軸の角度または角速度は制御できないことを前提とする。また、カメラの向きであるロール軸自体の角度または角速度も制御できないことを前提とする。なお、アジマス軸回りの回転とは、アジマス軸を中心とする回転を意味する。アジマス軸の角度または角速度とは、アジマス軸を中心とする回転(アジマス軸回りの回転)の角度または角速度を意味する。図1ではアジマス軸は取り付け面80に垂直で上方向を正としているが、必ずしも取り付け面80に垂直でなくてもよいし、下方向を正としてもよい。
【0012】
空間安定化装置10は、制御部300、駆動部400、エレベーション角取得部540、クロスエレベーション角速度取得部510、エレベーション角速度取得部520、アジマス角速度取得部530、ズーム情報取得部550を備える。エレベーション角取得部540は、エレベーション角θELを取得する。クロスエレベーション角速度取得部510は、クロスエレベーション軸の角速度を含む情報であるクロスエレベーション角速度情報を取得する。エレベーション角速度取得部520は、エレベーション軸の角速度を含む情報であるエレベーション角速度情報を取得する。アジマス角速度取得部530は、アジマス軸の角速度を含む情報であるアジマス角速度情報を取得する。ズーム情報取得部550は、カメラのズーム情報を取得する。クロスエレベーション角速度情報、エレベーション角速度情報、アジマス角速度情報は、角速度自体でもよいし、角速度に一対一に対応した値でもよいし、それらをデジタル化(量子化)した値でもよい。また、空間安定化装置10は、これらの角速度を直接求めるセンサを備えていてもよいし、異なる軸の加速度を変換することでクロスエレベーション角速度情報、エレベーション角速度情報、アジマス角速度情報を求めても構わない。ズーム情報は、ズーム倍率が分かる情報でもよいし、画角が分かる情報でもよい。なお、画角とは、レンズ60が写す画像のうち撮像素子50に写る範囲を角度で表したものである。水平画角、垂直画角、対角画角のどれを用いてもよいが、横揺れ低減に関する技術なので、水平画角を用いればよい。
【0013】
制御部300は、前提として示したように、アジマス軸とエレベーション軸の角度または角速度を制御する。駆動部400は、制御部300からの指示に従って、空間安定化装置10を動作させる。カメラの揺れの角速度は、アジマス軸成分(アジマス軸を中心とする回転成分)、エレベーション軸成分(エレベーション軸を中心とする回転成分)、クロスエレベーション軸成分(クロスエレベーション軸を中心とする回転成分)に分けることができる。制御部100は、揺れの角速度のアジマス軸成分とエレベーション軸成分を、逆方向に角速度を加えることで直接的に除去できる。実際にアジマス軸に加える角速度は、揺れの角速度のアジマス軸成分を除去するために加える角速度と、揺れの角速度のクロスエレベーション軸成分を低減するために加える角速度を加算したものになる。しかし、揺れの角速度のアジマス軸成分とエレベーション軸成分の除去は本発明の対象ではないので、これらの成分は従来技術で除去することを前提とし、以下では角速度の加算などの従来技術に関する説明は省略する。
【0014】
次に、図3~6を参照しながら横揺れと回転揺れについて説明する。ロール軸(RL軸)がクロスエレベーション軸(x-EL軸)と一致する場合(エレベーション角θEL=0°の場合)、角速度のクロスエレベーション軸成分ωEL によってロール軸に生じるのはロール軸を中心とする回転揺れだけである。よって、本発明が低減する対象の横揺れは生じない。エレベーション角θEL≠0°になると、ロール軸には回転揺れだけでなく角速度ωEL ×sinθELの横揺れも生じる。図4の点線で示した矢印51は角速度のクロスエレベーション軸成分ωEL =0の場合であり、実線で示した矢印52は角速度のクロスエレベーション軸成分ωEL ≠0の場合であって、アジマス軸には角速度を与えていない場合を示している。
【0015】
エレベーション角θEL≠0°の場合、アジマス軸(AZ軸)に角速度ΩAZを与えると、ロール軸に角速度ΩAZ×cosθELの横揺れを与えることができる。つまり、ロール軸の横揺れの方向が逆向きになるように、
ΩAZ=ωEL ×sinθEL/cosθEL=ωEL ×tanθEL
となる角速度ΩAZをアジマス軸に与えると、横揺れを除去できる。ただし、sinθELに比例した回転揺れを与えてしまうことになる。図5の点線で示した矢印51は角速度のクロスエレベーション軸成分ωEL =0の場合であり、実線で示した矢印53は角速度のクロスエレベーション軸成分ωEL ≠0の場合であって、アジマス軸に横揺れを除去する角速度ΩAZを与えた場合を示している。図5の矢印53の方が、図4の矢印52よりも横揺れは小さくなっているが、回転揺れは大きくなっている。
【0016】
図6は撮像素子50とレンズ60をカメラ90の上側から見た図であり、θは画角を示している。この場合の画角は、水平画角である。角度θxELは角速度のクロスエレベーション軸成分ωEL によって生じる横揺れの幅(角度)を示している。画角θはズーム倍率が低くなると広くなり、高くなると狭くなる。一方、角度θxELはズーム倍率には依存しない。つまり、ズーム倍率が低いとき(画角θが広いとき)、相対的に角度θxELは小さくなるので、撮像素子50に映る像の横揺れは小さくなる。一方、回転揺れはズーム倍率(および画角)には依存しないので、ズーム倍率によらず撮像素子50に映る像は同じように回転揺れする。そうすると、回転揺れの角度は同じでも、広い視野の画像が映っている方が撮像素子50の外周に近い像ほど大きく揺れているように見える。つまり、ズーム倍率が低いときは、横揺れは気になりにくく、回転揺れは気になりやすいという特徴がある。一方、ズーム倍率が高くなると、撮像素子50に映る像の横揺れが大きくなるので、横揺れは気になりやすく、回転揺れは相対的に気になりにくいという特徴がある。
【0017】
そこで、制御部300は、カメラの揺れの角速度のクロスエレベーション軸成分によって生じる映像の横揺れを、エレベーション角θELとクロスエレベーション角速度情報に基づいてアジマス軸に角速度を与える制御をすることで低減する横揺れ低減手段350を有する。そして、横揺れ低減手段350がアジマス軸に与える角速度は、ズーム情報が、ズーム倍率が低い状態であることを示しているほど低い。例えば、横揺れ低減手段350は、所定のズーム倍率以下では、ズーム倍率に依存して与える角速度を決めればよい。または、横揺れ低減手段350は、所定の画角以上では、画角に依存して与える角速度を決めればよい。より具体的には、zをズーム情報に基づいて定める0以上1以下の係数とし、横揺れ低減手段350の制御は、アジマス軸に与える角速度ΩAZが、
ΩAZ=ωxEL×f(θEL
【0018】
ただし、f(θEL)=tanθEL×z
となるように制御すればよい。つまり、横揺れ低減手段350は、所定のズーム倍率以上ではz=1とし、所定のズーム倍率以下ではズーム倍率が低いほど係数zを小さい値にすればよい。または、横揺れ低減手段350は、所定の画角以上ではz=1とし、所定の画角以上では画角が広いほど係数zを小さい値にすればよい。なお、ズーム情報に基づいて決める係数zは、連続的に変化させた方が望ましい。撮影中にズーム倍率を変更したときに、係数zが急激に変化すると安定した制御が難しくなるからである。なお、「連続的に」とは、変化が駆動部400にとって連続的な変化と等価であることを意味しており、デジタル信号の処理に伴う軽微な階段状の変化は、「連続的に変化」に含まれる。
【0019】
なお、tanθELは無限大の値を取る可能性も有るが、実際の制御では無限大の角速度を与えることは不可能なので、f(θEL)の絶対値に上限を設ければよい。また、tanθELは符号が変わる角度がある。この角度を含むあらかじめ定めた範囲では、
ΩAZ=ωxEL×g(θEL
ただし、g(θEL)は連続的な関数であって、あらかじめ定めた範囲の境界ではg(θEL)=f(θEL)が成り立つ
ように制御すればよい。図7はこのような制御を行う場合のエレベーション角θELと関数f(θEL)との関係を示す図である。横軸はエレベーション角θELであり、図1の上向きが90°、下向きが-90°である。縦軸は関数f(θEL)である。なお、取り付け面80の形状などによってはカメラ90で撮影できない角度もあり得るが、図7では±180°の範囲での関数f(θEL)の変化を示している。
【0020】
この図では、fmaxをf(θEL)の絶対値の上限としている。z=1と設定されている場合(ズーム倍率が高い場合)は、エレベーション角θELが角度θα(=tan-1(fmax))よりも大きくなるとf(θEL)の絶対値は上限値fmaxとなり、角度-θα(=tan-1(-fmax))よりも小さくなるとf(θEL)の絶対値は上限値fmaxとなる。また、z<1と設定されている場合(ズーム倍率が低い場合)は、図7中の点線で示されているような関数f(θEL)となる。エレベーション角θELがさらに大きくなり、あらかじめ定めた範囲である(90°-θβ)~(90°+θβ)では、関数g(θEL)のようになる。同様に、あらかじめ定めた範囲である(-90°+θβ)~(-90°-θβ)でも、関数g(θEL)のようになる。θβは例えば10°としてもよいし、15°としてもよい。なお、境界である(90°-θβ),(90°+θβ),(-90°+θβ),(-90°-θβ)では、g(θEL)=f(θEL)が成り立つ。関数g(θEL)は連続な関数であれば、二次関数、指数関数などの一次関数以外でも構わない。
【0021】
本発明の空間安定化装置10によれば、横揺れが気になりにくいズーム倍率が低い状態のときには角速度のクロスエレベーション軸成分を低減するためにアジマス軸に与える角速度を低くする。よって、アジマス軸に角速度を与えることによって与えてしまう回転揺れを抑えることができる。一方、横揺れが気になりやすいズーム倍率が高い状態のときには、角速度のクロスエレベーション軸成分を低減するためにアジマス軸に与える角速度を大きくする。よって、横揺れを優先して低減できる。したがって、空間安定化装置における横揺れと回転揺れのバランスを図ることができ、横揺れも回転揺れも気になりにくいように設定できる。
【符号の説明】
【0022】
10 空間安定化装置 50 撮像素子
51,52,53 矢印 60 レンズ
80 取り付け面 90 カメラ
300 制御部 350 横揺れ低減手段
400 駆動部 510 クロスエレベーション角速度取得部
520 エレベーション角速度取得部 530 アジマス角速度取得部
540 エレベーション角取得部 550 ズーム情報取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8