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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】無人移動体及び無人移動体の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/93 20200101AFI20221219BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01S17/93
G08G1/16 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018210752
(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2020076663
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺内 強
(72)【発明者】
【氏名】矢代 裕之
(72)【発明者】
【氏名】中島 忠弘
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247872(JP,A)
【文献】特開2017-161377(JP,A)
【文献】特開2003-302468(JP,A)
【文献】特開2005-180994(JP,A)
【文献】特開2012-159954(JP,A)
【文献】特開2005-249743(JP,A)
【文献】特開2015-108539(JP,A)
【文献】特開2004-325202(JP,A)
【文献】特開2017-009558(JP,A)
【文献】特開2017-215642(JP,A)
【文献】特開2017-032552(JP,A)
【文献】国際公開第2016/060282(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/030923(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律又は半自律して走行する無人移動体であって、
自律又は半自律して走行させるための走行機構と、
半導体レーザ光を走査して進行方向の情報を取得するレーザセンサと、
自己位置情報である自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時を取得する自己位置日時計測部と、
前記進行方向の情報及び前記自己位置情報に基づいて前記走行機構を動作させる制御部を備えた無人移動体において、
前記制御部には、前記自己位置日時計測部で計測した自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時に基づいて太陽の位置である太陽高度及び太陽方位を算出する太陽位置算出手段と、
前記太陽位置算出手段で算出した太陽高度及び太陽方位の太陽からの直接光を受光し得る前記レーザセンサの視野範囲を前記自己位置日時計測部で計測した自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時に基づいて算出するセンサ視野範囲算出手段と、
前記レーザセンサで取得した計測点が前記センサ視野範囲算出手段で算出した前記レーザセンサの視野範囲にあるか否かを判定して、前記レーザセンサで取得した計測点が前記レーザセンサの視野範囲になくて前記太陽位置算出手段で算出した太陽の位置と一致しないと判定した場合には前記計測点のデータを有効化する太陽光判定手段と、が具備されていると共に、
前記レーザセンサによって取得した計測点が前記レーザセンサの視野範囲にあって前記太陽位置算出手段で算出した太陽の位置と一致すると前記太陽光判定手段で判定した場合に前記計測点のデータの受光強度値が予め定めた強度閾値未満であるか否かを判定して、前記計測点のデータの受光強度値が前記強度閾値未満でないと判定した場合には前記計測点のデータを有効化する強度値判定手段、及び、
前記レーザセンサによって取得した計測点が前記レーザセンサの視野範囲にあって前記太陽位置算出手段で算出した太陽の位置と一致すると前記太陽光判定手段で判定した場合に前記計測点のデータの測距値が予め定めた測距閾値未満であるか否かを判定して、前記測距値が前記測距閾値未満でないと判定した場合には前記計測点のデータを有効化し、前記測距値が前記測距閾値未満であると判定した場合には前記計測点のデータを無効化する測距値判定手段のうちの少なくともいずれか一方の判定手段が具備されている無人移動体。
【請求項2】
自律又は半自律走行する無人移動体の制御方法であって、
前記無人移動体に搭載したレーザセンサからの半導体レーザ光を走査して前記無人移動体の進行方向の情報を取得すると共に、該無人移動体の自己位置情報である自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時を取得して自律又は半自律走行する無人移動体の制御方法において、
前記無人移動体の自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時に基づいて太陽の位置である太陽高度及び太陽方位を算出し、
算出した太陽高度及び太陽方位の太陽からの直接光を受光し得る前記レーザセンサの視野範囲を自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時に基づいて算出し、
前記レーザセンサで取得した計測点が算出した前記レーザセンサの視野範囲にあるか否かを判定して、前記レーザセンサで取得した計測点が前記レーザセンサの視野範囲になくて前記算出した太陽の位置と一致しないと判定した場合には前記計測点のデータを有効化し、
前記レーザセンサによって取得した計測点が前記レーザセンサの視野範囲にあって前記算出した太陽の位置と一致すると判定した場合に、前記計測点のデータの受光強度値が予め定めた強度閾値未満であるか否かの判定、及び、前記計測点のデータの測距値が予め定めた測距閾値未満であるか否かの判定の少なくともいずれか一方の判定を行って、
前記計測点のデータの受光強度値が前記強度閾値未満でないと判定した場合及び前記計測点のデータの測距値が前記測距閾値未満でないと判定した場合の少なくともいずれか一方の場合は前記計測点のデータを有効化し、
前記計測点のデータの受光強度値が前記強度閾値未満であると判定した場合及び前記計測点のデータの測距値が前記測距閾値未満であると判定した場合に前記計測点のデータを無効化する無人移動体の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律又は半自律移動可能な無人移動体に関わり、特に、進行方向の情報を取得するレーザセンサとして、半導体レーザ光を照射するレーザセンサを搭載した無人移動体及び無人移動体の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したような進行方向の情報を取得するレーザセンサを搭載した自律又は半自律移動可能な無人移動体としては、例えば、特許文献1に記載された自律走行車がある。
【0003】
この自律走行車は、自律して走行させるための走行機構と、レーザ光を走査して進行方向の情報を取得するレーザレンジファインダ(レーザセンサ)と、自己位置情報である自己位置,自己姿勢角及び自己方位を取得するGPS,IMU(慣性計測装置)等の自己位置計測部と、レーザレンジファインダで得た進行方向の情報及び自己位置計測部で得た自己位置情報が入力される制御部を備えている。
【0004】
レーザレンジファインダには、コスト面の事情により半導体レーザ光を照射するレーザレンジファインダが用いられ、制御部は、このレーザレンジファインダで取得した進行方向の情報及び自己位置計測部で得た自己位置情報の解析を行って走行経路を生成すると共に、この走行経路に基づいて走行速度を設定し、これらの走行経路及び走行速度に従って走行機構であるモータドライバを介して操舵用アクチュエータ及びブレーキ/アクセル用アクチュエータを作動させるようになっている。
【0005】
ここで、この自律走行車が、朝方や夕方に高度が低い太陽の方向に向かって走行したり、斜面を太陽の方向に向かって登ったりする際には、太陽からの直接光がレーザレンジファインダの視野範囲に入ることが頻繁に起こり得る。
【0006】
レーザレンジファインダで用いる半導体レーザ光の波長は太陽光の周波数帯に含まれているので、上記のように太陽からの直接光がレーザレンジファインダの視野範囲に入った場合には、図4のレーザ光走査結果に示すように、太陽からの直接光がノイズNとなって誤計測が生じ、太陽からの直接光を障害物として誤検出してしまい、自律走行車100の自律走行に支障を来す可能性がある。
【0007】
従来において、太陽からの直接光を障害物として誤検出しないための対策が施された進行方向の情報取得手段としては、例えば、特許文献2に記載された車両用前方障害物検出装置がある。
この車両用前方障害物検出装置もレーザセンサを備えたものであり、自己の位置及び日時に基づいて太陽の位置を算出し、レーザセンサと太陽を結ぶ直線がレーザセンサの視野範囲にあるか否かを自己姿勢に基づいて算出する。
【0008】
そして、この車両用前方障害物検出装置では、レーザセンサと太陽を結ぶ直線がレーザセンサの視野範囲にある場合には、太陽からの直接光を障害物として誤検出する可能性ありと判定して計測データを無効化し、一方、レーザセンサと太陽を結ぶ直線がレーザセンサの視野範囲にない場合には、太陽の直接光による障害を受けないと判定して計測データを有効化するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-159954号
【文献】特開2005-180994号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記した車両用前方障害物検出装置を搭載した自律走行車では、太陽からの直接光を障害物として誤検出することを防ぐことはできるものの、レーザセンサと太陽を結ぶ直線がレーザセンサの視野範囲にある場合において、制御部で生成した走行経路上に覆いかぶさるようにせり出す樹木の枝や大きな岩等のオーバーハングの障害物がレーザセンサの視野範囲に存在するときには、レーザセンサで計測して取得したこの障害物のデータも無効化されてしまうので、このオーバーハングの障害物を検出することができない虞があるという問題を有している。
【0011】
この際、このデメリットを補うべく、太陽光の周波数帯に含まれない波長の、例えば、ファイバーレーザを使用する場合には、装備コストが嵩んでしまい好ましくないという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
【0012】
本発明は、上記した従来の課題に着目してなされたもので、高度が低い太陽の方向に向かって走行したり、斜面を太陽の方向に向かって登ったりする場合であったとしても、高価なレーザセンサを用いることなく、支障なく自律走行することができるのは勿論のこと、走行経路上に覆いかぶさるようにせり出す樹木の枝や大きな岩等のオーバーハングの障害物がレーザセンサの視野範囲にあるときには、このオーバーハングの障害物を確実に検出して危険を回避することが可能である無人移動体及び無人移動体の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、自律又は半自律して走行する無人移動体であって、自律又は半自律して走行させるための走行機構と、半導体レーザ光を走査して進行方向の情報を取得するレーザセンサと、自己位置情報である自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時を取得する自己位置日時計測部と、前記進行方向の情報及び前記自己位置情報に基づいて前記走行機構を動作させる制御部を備えた無人移動体において、前記制御部には、前記自己位置日時計測部で計測した自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時に基づいて太陽の位置である太陽高度及び太陽方位を算出する太陽位置算出手段と、前記太陽位置算出手段で算出した太陽高度及び太陽方位の太陽からの直接光を受光し得る前記レーザセンサの視野範囲を前記自己位置日時計測部で計測した自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時に基づいて算出するセンサ視野範囲算出手段と、前記レーザセンサで取得した計測点が前記センサ視野範囲算出手段で算出した前記レーザセンサの視野範囲にあるか否かを判定して、前記レーザセンサで取得した計測点が前記レーザセンサの視野範囲になくて前記太陽位置算出手段で算出した太陽の位置と一致しないと判定した場合には前記計測点のデータを有効化する太陽光判定手段と、が具備されていると共に、前記レーザセンサによって取得した計測点が前記レーザセンサの視野範囲にあって前記太陽位置算出手段で算出した太陽の位置と一致すると前記太陽光判定手段で判定した場合に前記計測点のデータの受光強度値が予め定めた強度閾値未満であるか否かを判定して、前記計測点のデータの受光強度値が前記強度閾値未満でないと判定した場合には前記計測点のデータを有効化する強度値判定手段、及び、前記レーザセンサによって取得した計測点が前記レーザセンサの視野範囲にあって前記太陽位置算出手段で算出した太陽の位置と一致すると前記太陽光判定手段で判定した場合に前記計測点のデータの測距値が予め定めた測距閾値未満であるか否かを判定して、前記測距値が前記測距閾値未満でないと判定した場合には前記計測点のデータを有効化し、前記測距値が前記測距閾値未満であると判定した場合には前記計測点のデータを無効化する測距値判定手段のうちの少なくともいずれか一方の判定手段が具備されている構成としている。
【0014】
一方、本発明の第2の態様は、自律又は半自律走行する無人移動体の制御方法であって、前記無人移動体に搭載したレーザセンサからの半導体レーザ光を走査して前記無人移動体の進行方向の情報を取得すると共に、該無人移動体の自己位置情報である自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時を取得して自律又は半自律走行する無人移動体の制御方法において、前記無人移動体の自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時に基づいて太陽の位置である太陽高度及び太陽方位を算出し、算出した太陽高度及び太陽方位の太陽からの直接光を受光し得る前記レーザセンサの視野範囲を自己位置,自己姿勢角及び自己方位並びに日時に基づいて算出し、前記レーザセンサで取得した計測点が算出した前記レーザセンサの視野範囲にあるか否かを判定して、前記レーザセンサで取得した計測点が前記レーザセンサの視野範囲になくて前記算出した太陽の位置と一致しないと判定した場合には前記計測点のデータを有効化し、前記レーザセンサによって取得した計測点が前記レーザセンサの視野範囲にあって前記算出した太陽の位置と一致すると判定した場合に、前記計測点のデータの受光強度値が予め定めた強度閾値未満であるか否かの判定、及び、前記計測点のデータの測距値が予め定めた測距閾値未満であるか否かの判定の少なくともいずれか一方の判定を行って、前記計測点のデータの受光強度値が前記強度閾値未満でないと判定した場合及び前記計測点のデータの測距値が前記測距閾値未満でないと判定した場合の少なくともいずれか一方の場合は前記計測点のデータを有効化し、前記計測点のデータの受光強度値が前記強度閾値未満であると判定した場合及び前記計測点のデータの測距値が前記測距閾値未満であると判定した場合に前記計測点のデータを無効化する構成としている。
【0015】
本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法において、レーザセンサからの半導体レーザ光を走査しつつ自律又は半自律走行する際に、レーザセンサの視野範囲に太陽からの直接光が入った場合に計測されるデータはノイズであり、このデータには測距値が小さく且つ強度値が小さい(レーザセンサには、通常、太陽光成分を除去するハイパスフィルタが内蔵されているので、太陽の直接光の影響を受けると、受光強度値が小さくなる。)といった特徴がある。
【0016】
一方、走行経路上に覆いかぶさるようにせり出す樹木の枝や大きな岩等のオーバーハングの障害物が存在する場合には、レーザセンサの視野範囲にこの障害物が入ったときに計測されるデータには測距値が大きく且つ強度値が大きいといった特徴がある。
【0017】
本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法では、レーザセンサの視野範囲に太陽からの直接光が入った場合と、レーザセンサの視野範囲にオーバーハングの障害物が入った場合との各データの特徴の違いを用いることで、太陽の直接光とオーバーハングの障害物との各データを分離するようにしている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様に係る無人移動体及び第2の態様に係る無人移動体の制御方法において、高度が低い太陽の方向に向かって走行したり、斜面を太陽の方向に向かって登ったりする場合であったとしても、高価なレーザセンサを用いることなく、支障なく自律又は半自律走行することができ、加えて、走行経路上に覆いかぶさるようにせり出す樹木の枝や大きな岩等のオーバーハングの障害物があるときには、このオーバーハングの障害物を太陽の直接光によるノイズと誤判定することなく確実に検出して危険を回避することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例による無人移動体としての自律走行車の概略構成説明図(a)及び平面説明図(b)である。
図2図1における自律走行車の制御機器の接続ブロック図である。
図3図1に示した自律走行車の制御方法における環境認識モジュールの動作フローチャートである。
図4】レーザセンサの視野範囲に太陽からの直接光が入った場合に計測されるノイズを含むレーザ光走査結果説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1図3は、本発明の一実施例による無人移動体及び無人移動体の制御方法を示している。
【0021】
この実施例において、無人移動体は、自律して走行可能な自律走行車Aであり、図1及び図2に示すように、車両制御用コンピュータ(制御部)10及びこの車両制御用コンピュータ10とLAN11を介して接続される自律走行用コンピュータ(制御部)30によって制御されるようになっている。
【0022】
車両制御用コンピュータ10の入力側には、アンテナ12と接続する無線LAN13が入出力回路15を介して接続されていると共に、自己位置情報(自己位置の他に姿勢角及び方位並びに日時を含む)を求める自己位置日時計測部としてのGPS16や姿勢制御用バーチカルジャイロ17や移動速度測定用車速パルス18や図示しないIMU(慣性計測装置)がシリアル回線を介して接続されている。
【0023】
また、車両制御用コンピュータ10の出力側には、モータドライバ21を介して操舵用アクチュエータ22及びブレーキ/アクセル用アクチュエータ23が接続されており、モータドライバ21とアクチュエータ22,23と車輪24とで走行機構20を構成している。
【0024】
車両制御用コンピュータ10は、GPS16やバーチカルジャイロ17で取得した各種情報をLAN11,無線LAN13及びアンテナ12を介して図示しない指令所に送信する機能を有していると共に、この指令所から緊急時等に送信される指令に基づいて、モータドライバ21を介して操舵用アクチュエータ22及びブレーキ/アクセル用アクチュエータ23を作動、停止させる機能を有している。
【0025】
一方、自律走行用コンピュータ30の入力側には、進行方向における地形の凹凸の近距離情報取得に適したレーザレンジファインダ(レーザセンサ)31と、遠距離で且つ広角情報取得に適した自律走行用のステレオカメラ32と、車高以上の起立した障害物を検出する障害物用レーザレンジファインダ(レーザセンサ)33が接続されており、レーザレンジファインダ31,33には、半導体レーザ光を照射するレーザレンジファインダが用いられている。この自律走行用コンピュータ30は、LAN11を介して、レーザレンジファインダ31やステレオカメラ32や障害物用のレーザレンジファインダ33で取得した測距データを車両制御用コンピュータ10に送信する機能を有している。
【0026】
そして、上記車両制御用コンピュータ10は、レーザレンジファインダ31で取得した進行方向の測距情報及び自己位置日時計測部のGPS16やバーチカルジャイロ17で得た自己位置情報の解析を行って走行経路を生成すると共に、この走行経路に基づいて走行速度を設定する環境認識モジュール10Aを有しており、この環境認識モジュール10Aで作成設定した走行経路及び走行速度に従って、走行機構20であるモータドライバ21を介して操舵用アクチュエータ22及びブレーキ/アクセル用アクチュエータ23を作動させるようになっている。
【0027】
この場合、太陽Suからの直接光を障害物として誤検出してしまうのを防ぐために、上記車両制御用コンピュータ10の環境認識モジュール10Aには、太陽位置算出手段10aと、センサ視野範囲算出手段10bと、太陽光判定手段10cが具備されている。
【0028】
太陽位置算出手段10aは、自己を基準にした太陽Suの位置である太陽高度及び太陽方位を算出する手段であり、自己位置日時計測部のGPS16やバーチカルジャイロ17で計測した自己位置(緯度・経度),自己姿勢角(ピッチ角・ロール角),自己方位(ヨー角)及び日時に基づいて、太陽高度及び太陽方位を算出する。
【0029】
センサ視野範囲算出手段10bは、太陽位置算出手段10aで算出した太陽高度及び太陽方位の太陽Suからの直接光を受光し得る近距離情報取得に適したレーザレンジファインダ31の視野範囲(視野角θ,φ)を自己位置日時計測部のGPS16やバーチカルジャイロ17で計測した自己位置,自己姿勢角,自己方位及び日時に基づいて算出する。ここで、レーザレンジファインダ31の視野範囲とは、レーザレンジファインダ31のレーザ光走査範囲内において、太陽Suからの直接光を受光する範囲のことである。
なお、車高以上の起立した障害物を検出する障害物用のレーザレンジファインダ33は、レーザ光をほぼ水平方向に照射させるので、太陽Suからの直接光を受光し得る視野範囲の算出はとくに行わない。
【0030】
太陽光判定手段10cは、レーザレンジファインダ31で取得した計測点がセンサ視野範囲算出手段10bで算出したレーザレンジファインダ31の視野範囲にあるか否かを判定する、すなわち、計測点が太陽位置算出手段10aで算出した太陽Suの位置と一致したか否かを判定する。
【0031】
上記車両制御用コンピュータ10の環境認識モジュール10Aにおける太陽光判定手段10cでは、レーザレンジファインダ31で取得した計測点がレーザレンジファインダ31の視野範囲にない、すなわち、計測点が太陽位置算出手段10aで算出した太陽Suの位置と一致しないと判定した場合には計測点のデータを有効化する。
【0032】
一方、レーザレンジファインダ31で取得した計測点がレーザレンジファインダ31の視野範囲にある、すなわち、計測点が太陽位置算出手段10aで算出した太陽Suの位置と一致すると判定した場合には、この時点で計測点のデータを無効化する、すなわち、計測点のデータが障害物として表されたとしても太陽Suからの直接光によるものとする。
【0033】
ここで、レーザレンジファインダ31で取得した計測点が太陽Suの位置と一致すると判定した際に、レーザレンジファインダ31の視野範囲にオーバーハングの障害物(例えば、走行経路上に覆いかぶさるようにせり出す樹木の枝)Tが実際に存在する場合において、この障害物Tのデータが無効化されるのを回避するために、上記車両制御用コンピュータ10の環境認識モジュール10Aには、強度値判定手段10dと、測距値判定手段10eが具備されている。
【0034】
レーザレンジファインダ31の視野範囲に太陽Suからの直接光が入った場合に計測されるノイズのデータには、測距値が小さく且つ受光強度値が小さい(レーザレンジファインダ31には、通常、太陽光成分を除去するハイパスフィルタが内蔵されているので、太陽Suの直接光の影響を受けると、受光強度値が小さくなる。)といった特徴があり、一方、レーザレンジファインダ31の視野範囲に障害物Tが入ったときに計測されるデータには、測距値が大きく且つ受光強度値が大きいといった特徴がある。
【0035】
強度値判定手段10d及び測距値判定手段10eでは、上記の双方の特徴に基づいて、レーザレンジファインダ31の視野範囲にオーバーハングの障害物Tが入った場合のデータをレーザレンジファインダ31の視野範囲に太陽Suからの直接光が入った場合のデータから分離するようにしている。
【0036】
具体的には、強度値判定手段10dにおいて、レーザレンジファインダ31により取得した計測点が太陽光判定手段10cでレーザレンジファインダ31の視野範囲にある、すなわち、計測点が太陽Suの位置と一致すると判定した場合には、計測点のデータの受光強度値が予め定めた強度閾値未満であるか否かを判定して、計測点のデータの受光強度値が強度閾値未満でない(受光強度値が大きい)と判定した場合には計測点のデータを有効化し、受光強度値が強度閾値未満であると判定した場合には計測点のデータを無効化する。
【0037】
一方、測距値判定手段10eは、強度値判定手段10dで計測点のデータの受光強度値が強度閾値未満であると判定した場合において、測距値が予め定めた測距閾値未満であるか否かを判定して、測距値が測距閾値未満でない(測距値が大きい)と判定した場合には計測点のデータを有効化し、測距値が測距閾値未満であると判定した場合には計測点のデータを無効化する。
【0038】
なお、強度値判定手段10d及び測距値判定手段10eは、少なくともいずれか一方の判定手段が備わっていれば、実際に存在する障害物Tのデータが無効化されるのを回避することが可能であるが、オーバーハングの障害物Tを太陽Suの直接光によるノイズと誤判定することなく確実に検出するために、強度値判定手段10d及び測距値判定手段10eをいずれも具備することが望ましい。
【0039】
そこで、上記車両制御用コンピュータ10による制御要領を具体的に説明する。まず、図3に示すように、ステップS1において、自律走行車Aに搭載したレーザレンジファインダ31からの半導体レーザ光を走査して、自律走行車Aの進行方向における路面の凹凸や障害物の有無等の情報を取得するのに続いて、自己位置日時計測部のGPS16やバーチカルジャイロ17によって自律走行車Aの自己位置の緯度及び経度を取得すると共に、自律走行車Aの自己方位及び自己姿勢角並びに現在の日時を取得する。
【0040】
次いで、ステップS2において、ステップS1で取得した自律走行車Aの自己位置,自己方位及び自己姿勢角並びに日時に基づいて太陽Suの位置である太陽高度及び太陽方位を算出する。
なお、自律走行車Aの自己位置(緯度・経度),自己方位及び自己姿勢角、並びに、日時に基づく太陽高度及び太陽方位は、既知の計算手順で算出することができる。
【0041】
次に、ステップS3において、ステップS2で算出した太陽高度及び太陽方位の太陽Suからの直接光を受光し得るレーザレンジファインダ31の視野範囲をステップS1で取得した自律走行車Aの自己位置,自己姿勢角,自己方位及び日時に基づいて算出し、ステップS4において、太陽Suからの直接光を受光し得るレーザレンジファインダ31により取得した計測点がレーザレンジファインダ31の視野範囲にある、すなわち、計測点が算出した太陽Suの位置と一致するか否かを判定する。
【0042】
そして、ステップS4において、レーザレンジファインダ31で取得した計測点が算出した太陽Suの位置と一致しない(No)と判定した場合には、ステップS5において計測点のデータを有効化し、レーザレンジファインダ31で取得した計測点が算出した太陽Suの位置と一致する(Yes)と判定した場合には、ステップS6において、計測点のデータの受光強度値が予め定めた強度閾値未満であるか否かを判定する。
【0043】
続いて、ステップS6において、計測点のデータの受光強度値が強度閾値未満でない(No)と判定した場合には、ステップS5において計測点のデータを有効化し、計測点のデータの受光強度値が強度閾値未満である(Yes)と判定した場合には、ステップS7において、計測点のデータの測距値が予め定めた測距閾値未満であるか否かを判定する。
【0044】
次いで、ステップS7において、測距値が測距閾値未満でない(No)と判定した場合には、ステップS5において計測点のデータを有効化し、測距値が測距閾値未満である(Yes)と判定した場合には、ステップS8において計測点のデータを無効化する。
【0045】
上記したように、この実施例による自律走行車Aでは、太陽位置算出手段10a,センサ視野範囲算出手段10b及び太陽光判定手段10cが具備された車両制御用コンピュータ10の環境認識モジュール10Aに、強度値判定手段10d及び測距値判定手段10eを具備させることで、レーザレンジファインダ31の視野範囲にオーバーハングの障害物Tが入った場合のデータと、レーザレンジファインダ31の視野範囲に太陽Suからの直接光が入った場合のデータとを分離するようにしている。
【0046】
したがって、この実施例による自律走行車Aでは、高度が低い太陽Suの方向に向かって走行したり、斜面を太陽Suの方向に向かって登ったりする場合であったとしても、高価なレーザレンジファインダを用いることなく、支障なく自律走行し得ることとなる。
【0047】
そのうえ、走行経路上に覆いかぶさるようにせり出す樹木の枝や大きな岩等のオーバーハングの障害物Tが存在するときであったとしても、このオーバーハングの障害物Tを太陽Suの直接光によるノイズと誤判定することなく確実に検出して、危険を回避しながら自律走行し得ることとなる。
【0048】
上記した実施例では、無人移動体が自律走行車Aである場合を示したが、これに限定されるものではなく、無人移動体が半自律で走行する半自律走行車であったり、無人移動体が自律歩行するロボットであったりしてもよい。
【0049】
本発明に係る無人移動体及び無人移動体の制御方法の構成は、上記した実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
10 車両制御用コンピュータ(制御部)
10a 太陽位置算出手段(車両制御用コンピュータ)
10b センサ視野範囲算出手段(車両制御用コンピュータ)
10c 太陽光判定手段(車両制御用コンピュータ)
10d 強度値判定手段(車両制御用コンピュータ)
10e 測距値判定手段(車両制御用コンピュータ)
16 GPS(自己位置日時計測部)
17 バーチカルジャイロ(自己位置日時計測部)
18 車速パルス(自己位置日時計測部)
21 モータドライバ(走行機構)
22 操舵用アクチュエータ(走行機構)
23 ブレーキ/アクセル用アクチュエータ(走行機構)
24 車輪(走行機構)
31 レーザレンジファインダ(レーザセンサ)
A 自律走行車(無人移動体)
Su 太陽
T オーバーハングの障害物
図1
図2
図3
図4