(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】燃料タンク用圧力センサ故障判定装置
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
(21)【出願番号】P 2018215163
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】市川 竜也
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅広
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-042414(JP,A)
【文献】特開2004-308484(JP,A)
【文献】特開2015-045264(JP,A)
【文献】特開平10-169516(JP,A)
【文献】特開2004-156494(JP,A)
【文献】特開2000-018104(JP,A)
【文献】特開2004-156493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンク内の燃料蒸発ガスを吸着すると共にドレンポートが大気開放されるキャニスタと、前記キャニスタ及び燃料タンクを連通するエバポ通路と、エンジン吸気系及び前記キャニスタを連通するパージガス通路と、前記パージガス通路を開閉するパージ制御電磁弁と、前記燃料タンク内の圧力を検出する燃料タンク圧力センサとを備え、前記燃料タンク圧力センサの故障を判定する燃料タンク用圧力センサ故障判定装置において、
前記エバポ通路を開閉するタンク接断電磁弁と、
前記タンク接断電磁弁の開閉状態を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記燃料タンク圧力センサで検出された前記燃料タンク内の圧力が所定の正圧状態及び所定の負圧状態の少なくとも一方である場合に前記タンク接断電磁弁を開弁制御して、予め設定された大気圧条件で検出された前記燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外の場合に該燃料タンク圧力センサが故障していると判定する圧力センサ故障判定手段を備え、
前記圧力センサ故障判定手段は、前記燃料タンク内の圧力が所定の正圧状態である場合に前記パージ制御電磁弁の開弁制御と共に前記タンク接断電磁弁を開弁制御し、該タンク接断電磁弁の開弁状態で前記燃料タンクから前記エバポ通路及びパージガス通路を経て前記エンジン吸気系に供給された燃料蒸発ガスの流量が予め設定されたエバポ流量所定値以上となった場合を前記大気圧条件として前記燃料タンク圧力センサの故障判定を行う正圧時圧力センサ故障判定手段を有しており、
前記正圧時圧力センサ故障判定手段は、前記タンク接断電磁弁の開弁制御が所定時間毎に所定時間ずつ該タンク接断電磁弁を開弁する場合に、前記燃料タンク圧力センサの出力値に応じた開弁回数所定値以上、該タンク接断電磁弁が開弁された場合を前記燃料蒸発ガスの流量が前記エバポ流量所定値以上になった場合とすることを特徴とする燃料タンク用圧力センサ故障判定装置。
【請求項2】
前記圧力センサ故障判定手段は、
前記燃料タンク内の圧力が所定の負圧状態である場合に前記タンク接断電磁弁を開弁制御し、該タンク接断電磁弁の開弁時間が予め設定された所定時間経過した場合を前記大気圧条件として前記燃料タンク圧力センサの故障判定を行う負圧時圧力センサ故障判定手段を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置。
【請求項3】
燃料給油時に乗員によって操作される給油スイッチを備え、
前記圧力センサ故障判定手段は、前記給油スイッチが乗員によって操作された場合に前記タンク接断電磁弁を開弁制御し、該タンク接断電磁弁の開弁時間が予め設定された所定時間経過した場合を大気圧条件として該大気圧条件で検出された前記燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外の場合に該燃料タンク圧力センサが故障していると判定する給油時圧力センサ故障判定手段を有することを特徴とする請求項
1又は2に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク用圧力センサ故障判定装置、特に、エンジンの燃料を貯留するための密閉可能な燃料タンクの圧力センサの故障判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンを搭載する車両では、主にガソリンやアルコールなどの揮発性燃料が用いられる。これら揮発性燃料は、大気中は勿論、燃料タンク内でも気化(蒸発)する。こうした燃料蒸発ガス(以下、エバポとも称する)の大気流出抑制のために、エバポを吸着するキャニスタ(チャコールキャニスタ)が車両に搭載されている。このキャニスタは、エバポを一時的に吸着するものであり、キャニスタに吸着した燃料蒸発ガスは、例えばエンジンの負圧を利用してエンジン吸気系にパージガスとして供給され、更にエンジンの燃焼室に供給されて燃焼に供される。このパージガスのエンジン吸気系への供給に伴ってキャニスタに外気を導入するため、キャニスタのドレンポートは大気開放されている。
【0003】
一方、例えば車両の停車中に、燃料タンク内の燃料の気化が進むと、例えば、キャニスタの吸着容量を超え、その超過分がキャニスタのドレンポートから大気流出してしまうおそれがある。そこで、例えば、燃料タンクとキャニスタを連通するエバポ通路を開閉するタンク接断電磁弁を設け、原則的には常時、タンク接断電磁弁でエバポ通路を閉じてしまう、密閉型の燃料タンクが従来開発されている。
【0004】
こうした密閉型燃料タンクでは、密閉状態の燃料タンク内で燃料の気化が進むと、燃料タンク内の圧力(以下、タンク内圧ともいう)が大きく(高く)なることが考えられる。そこで、燃料の給油時には、上記タンク接断電磁弁を開弁して燃料タンク内のエバポをキャニスタ側に流し、そのエバポをキャニスタで吸着して燃料タンク内の圧力を低減してから、例えば給油リッドを開く制御が考えられている。この燃料給油時制御では、燃料タンク内が大気圧又はその近傍であることが重要であるから、燃料タンクに圧力センサを設け、この圧力センサの出力値が大気圧相当になってから、例えば給油を許可するようにしている。
【0005】
しかしながら、燃料タンクの圧力センサが故障すると、圧力センサの出力値が大気圧相当とならず、いつまでも給油が許可されないおそれが生じる。そこで、下記特許文献1では、燃料タンク内の他に、燃料タンクとは別の箇所、例えば上記エバポ通路にも圧力センサを設け、例えば給油時における両者の出力値が圧力相当で所定値以上異なる場合に、2つの圧力センサの何れかが故障していると判定する燃料タンク用圧力センサ故障判定装置が記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載される燃料タンク用圧力センサ故障判定装置では、燃料タンク内の他に、もう1つ、圧力センサが必要であり、しかも、追加の圧力センサは、何れかの圧力センサの故障を検出することを主眼とするものであることから、部品点数の点でも、コストの点でも、不利である。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、追加の圧力センサを用いることなく、燃料タンクの圧力センサの故障を検出することが可能な燃料タンク用圧力センサ故障判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため請求項1に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置は、
エンジンの燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンク内の燃料蒸発ガスを吸着すると共にドレンポートが大気開放されるキャニスタと、前記キャニスタ及び燃料タンクを連通するエバポ通路と、エンジン吸気系及び前記キャニスタを連通するパージガス通路と、前記パージガス通路を開閉するパージ制御電磁弁と、前記燃料タンク内の圧力を検出する燃料タンク圧力センサとを備え、前記燃料タンク圧力センサの故障を判定する燃料タンク用圧力センサ故障判定装置において、
前記エバポ通路を開閉するタンク接断電磁弁と、前記タンク接断電磁弁の開閉状態を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記燃料タンク圧力センサで検出された前記燃料タンク内の圧力が所定の正圧状態及び所定の負圧状態の少なくとも一方である場合に前記タンク接断電磁弁を開弁制御して、予め設定された大気圧条件で検出された前記燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外の場合に該燃料タンク圧力センサが故障していると判定する圧力センサ故障判定手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、燃料タンク圧力センサで検出された密閉状態の燃料タンク(以下、燃料タンクは密閉状態にあるものとする)内の圧力が所定の正圧状態にある場合には、例えばエンジン運転中にパージ制御電磁弁を開弁制御しながら、タンク接断電磁弁を開弁制御することで、燃料タンク内の燃料蒸発ガス(エバポ)がエバポ通路及びパージガス通路を経てエンジン吸気系に供給され、燃料タンク内の圧力が低下する。一方、燃料タンク圧力センサで検出された燃料タンク内の圧力が所定の負圧状態にある場合には、タンク接断電磁弁を開弁制御することで、大気開放されているキャニスタのドレンポートから外気が燃料タンク内に流入し、燃料タンク内の圧力が増大する。
【0011】
したがって、燃料タンク内が正圧状態である場合には燃料タンク内のエバポがエンジン吸気系に十分に供給されるか、燃料タンク内が負圧状態である場合には燃料タンク内に外気が十分に流入した時点で、燃料タンク内が大気圧状態になっている、すなわち予め設定された大気圧条件となるので、その大気圧条件で検出された燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外であれば、燃料タンク圧力センサが故障していると正確に判定することができる。したがって、追加の圧力センサを用いることなく、燃料タンクの圧力センサの故障を検出することができる。また、車両停車時だけでなく、車両走行時にも燃料タンクの圧力センサの故障を判定することができる。
【0012】
請求項2に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置は、請求項1に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置において、前記圧力センサ故障判定手段は、前記燃料タンク内の圧力が所定の正圧状態である場合に前記パージ制御電磁弁の開弁制御と共に前記タンク接断電磁弁を開弁制御し、該タンク接断電磁弁の開弁状態で前記燃料タンクから前記エバポ通路及びパージガス通路を経て前記エンジン吸気系に供給された燃料蒸発ガスの流量が予め設定されたエバポ流量所定値以上となった場合を前記大気圧条件として前記燃料タンク圧力センサの故障判定を行う正圧時圧力センサ故障判定手段を有することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、燃料タンク圧力センサの出力値は燃料タンク内の圧力状態であって、その圧力状態は燃料タンク内のエバポ発生量に依存するので、このエバポ発生量をエンジン吸気系に供給して燃料タンク内の圧力状態を大気圧状態に復帰するためのエバポ流量は燃料タンク圧力センサの出力値に応じて設定することができる。したがって、このエバポ発生量、すなわち燃料タンク圧力センサの出力値に応じたエバポ流量所定値を設定し、燃料タンクからエンジン吸気系に供給されたエバポ流量がこのエバポ流量所定値以上となった場合に、燃料タンク内の圧力状態は大気圧相当であるとみなすことができる。したがって、燃料タンクからエンジン吸気系に供給されたエバポ流量がエバポ流量所定値以上となった場合を大気圧条件とし、この大気圧条件で検出された燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外であれば、燃料タンク圧力センサは故障しているものと正確に判定できる。
【0014】
請求項3に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置は、請求項2に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置において、前記正圧時圧力センサ故障判定手段は、前記タンク接断電磁弁の開弁制御が所定時間毎に所定時間ずつ該タンク接断電磁弁を開弁する場合に、前記燃料タンク圧力センサの出力値に応じた開弁回数所定値以上、該タンク接断電磁弁が開弁された場合を前記燃料蒸発ガスの流量が前記エバポ流量所定値以上になった場合とすることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、タンク接断電磁弁が所定時間毎に所定時間ずつ開弁される場合、1回の開弁でタンク接断電磁弁を流れるエバポ流量は、凡そ、燃料タンク内のエバポ発生量、即ち燃料タンク内の圧力状態とエンジン吸気系との差圧及びタンク接断電磁弁の開弁特性に依存する。したがって、このタンク接断電磁弁の開弁1回当たりのエバポ流量特性と燃料タンク内の圧力状態(エバポ発生量)から上記エバポ流量所定値に相当する開弁回数所定値を凡そ設定することができ、この開弁回数所定値以上タンク接断電磁弁が開弁されれば、燃料タンク内の圧力状態は大気圧相当であるとみなすことができる。したがって、燃料タンク圧力センサの出力値に応じた開弁回数所定値以上、タンク接断電磁弁が開弁された場合を大気圧条件、すなわち燃料タンクからエンジン吸気系へのエバポ流量が上記エバポ流量所定値以上になった場合とし、この大気圧条件で検出された燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外であれば、燃料タンク圧力センサは故障しているものと正確に判定できる。
【0016】
請求項4に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置は、請求項1に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置において、前記圧力センサ故障判定手段は、前記燃料タンク内の圧力が所定の負圧状態である場合に前記タンク接断電磁弁を開弁制御し、該タンク接断電磁弁の開弁時間が予め設定された所定時間経過した場合を前記大気圧条件として前記燃料タンク圧力センサの故障判定を行う負圧時圧力センサ故障判定手段を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、燃料タンク内の圧力が所定の負圧状態である場合に、タンク接断電磁弁を開弁したときの外気の燃料タンク内への流量は、該タンク接断電磁弁の開弁特性に依存する。したがって、このタンク接断電磁弁の開弁特性に応じた外気の燃料タンク内流量で燃料タンクが大気圧に復帰するまでの所要時間を所定時間に設定することで、タンク接断電磁弁の開弁時間が所定時間経過した場合に燃料タンク内の圧力状態は大気圧相当であるとみなすことができる。したがって、この大気圧条件で検出された燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外であれば、燃料タンク圧力センサは故障しているものと正確に判定できる。
【0018】
請求項5に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置において、燃料給油時に乗員によって操作される給油スイッチを備え、前記圧力センサ故障判定手段は、前記給油スイッチが乗員によって操作された場合に前記タンク接断電磁弁を開弁制御し、該タンク接断電磁弁の開弁時間が予め設定された所定時間経過した場合を大気圧条件として該大気圧条件で検出された前記燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外の場合に該燃料タンク圧力センサが故障していると判定する給油時圧力センサ故障判定手段を有することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、乗員が給油スイッチを操作する燃料給油時には、タンク接断電磁弁を開弁制御して燃料タンク内を大気圧状態にする。この場合、タンク接断電磁弁を開弁したときの外気の燃料タンク内への流量又は燃料タンク内エボパのキャニスタへの流量は、該タンク接断電磁弁の開弁特性に依存する。したがって、このタンク接断電磁弁の開弁特性に応じた外気の燃料タンク内流量又はタンク内エボパのキャニスタ内流量で燃料タンクが大気圧に復帰するまでの所要時間を所定時間に設定することで、タンク接断電磁弁の開弁時間が所定時間経過した場合に燃料タンク内の圧力状態は大気圧相当であるとみなすことができる。したがって、この大気圧条件で検出された燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外であれば、燃料タンク圧力センサは故障しているものと正確に判定できる。
【0020】
請求項6に記載の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置は、エンジンの燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンク内の燃料蒸発ガスを吸着すると共にドレンポートが大気開放されるキャニスタと、前記キャニスタ及び燃料タンクを連通するエバポ通路と、エンジン吸気系及び前記キャニスタを連通するパージガス通路と、前記パージガス通路を開閉するパージ制御電磁弁と、前記燃料タンク内の圧力を検出する燃料タンク圧力センサとを備え、前記燃料タンク圧力センサの故障を判定する燃料タンク用圧力センサ故障判定装置において、
前記エバポ通路を開閉するタンク接断電磁弁と、燃料給油時に乗員によって操作される給油スイッチと、前記タンク接断電磁弁の開閉状態を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記給油スイッチが乗員によって操作された場合に前記タンク接断電磁弁を開弁制御し、該タンク接断電磁弁の開弁時間が予め設定された所定時間経過した場合を大気圧条件として該大気圧条件で検出された前記燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外の場合に該燃料タンク圧力センサが故障していると判定する給油時圧力センサ故障判定手段を有することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、乗員が給油スイッチを操作する燃料給油時には、タンク接断電磁弁を開弁制御して燃料タンク内を大気圧状態にする。この場合、タンク接断電磁弁を開弁したときの外気の燃料タンク内への流量又は燃料タンク内エボパのキャニスタへの流量は、該タンク接断電磁弁の開弁特性に依存する。したがって、このタンク接断電磁弁の開弁特性に応じた外気の燃料タンク内流量又はタンク内エボパのキャニスタ内流量で燃料タンクが大気圧に復帰するまでの所要時間を所定時間に設定することで、タンク接断電磁弁の開弁時間が所定時間経過した場合に燃料タンク内の圧力状態は大気圧相当であるとみなすことができる。したがって、この大気圧条件で検出された燃料タンク圧力センサの出力値が大気圧相当以外であれば、燃料タンク圧力センサは故障しているものと正確に判定できる。従って、追加の圧力センサを用いることなく、燃料タンクの圧力センサの故障を検出することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、追加の圧力センサを用いることなく、燃料タンクの圧力センサの故障を検出することができ、しかも燃料給油時、即ち車両停車時のみならず、車両の走行中であっても燃料タンクの圧力センサの故障を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置が適用された車両の一実施の形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の車両における燃料タンク-エンジン間の燃料蒸発ガス通路の概略構成図である。
【
図3】
図1のエンジンコントロールユニットで実行される演算処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図1のエンジンコントロールユニットで実行される演算処理の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この実施の形態の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置が適用された車両の概略構成図である。この車両は、プラグインハイブリッド車両であり、
図1は、このプラグインハイブリッド車両のパワートレーンの概略を示している。このプラグインハイブリッド車両は、車両駆動用にエンジン10とモータジェネレータ12を併載している。エンジン10とモータジェネレータ12は接続装置14によって接続され、それらの合成された駆動力、あるいはそれらの単体の駆動力が差動装置16を介して駆動輪18に伝達される。接続装置14には、例えばクラッチ機構などが用いられる。また、接続装置14に遊星歯車機構を用いることも可能であり、その場合、遊星歯車機構を構成する1つの要素にエンジン10が、もう1つの要素にモータジェネレータ12が、残りの1つの要素に図示しない個別のモータジェネレータが接続される。なお、駆動輪18は四輪であってもよい。また、
図1に示す符号34は、後述する燃料タンク36に燃料を給油する際、乗員によって操作される給油スイッチである。
【0025】
モータジェネレータ12の駆動系統は、モータジェネレータ12に電力を供給すると共にモータジェネレータ12で回収された電力を蓄電する駆動用バッテリ20と、駆動用バッテリ20からの電力を変換してモータジェネレータ12に供給したり、モータジェネレータ12で回収された電力を変換して駆動用バッテリ20に蓄電したりするためのインバータなどの駆動回路22を備える。更に、この実施の形態の電動車両はプラグインハイブリッド車両であるから、接続された外部電源24からの電力を駆動用バッテリ20に充電するための外部接続型充電器26と、この外部接続型充電器26と駆動用バッテリ20を電気的に接断したり、駆動用バッテリ20とモータジェネレータ12を電気的に接断したりするためのリレー類が内装されたジャンクションボックス28を備える。
【0026】
この実施の形態では、モータジェネレータ12に三相交流モータが用いられ、一方、駆動用バッテリ20の電力は直流電力であるから、駆動回路22は、この直流電力を三相交流電力に変換してモータジェネレータ12に供給する。モータジェネレータ12を回生運転する場合には逆に作用する。また、この実施の形態の外部接続型充電器26は、商用電源などの外部電源24の交流電力を直流電力に変換して駆動用バッテリ20を充電する。従って、外部接続型充電器26は、例えばAC-DCコンバータやDC-DCコンバータを備えて構成される。なお、例えば高電圧直流電源で構成される急速充電電源を駆動用バッテリ20に接続するための回路を付加してもよい。
【0027】
この実施の形態のプラグインハイブリッド車両では、エンジン10の運転状態はエンジンコントロールユニット30で制御され、モータジェネレータ12の運転状態、例えば力行運転や回生運転はパワーコントロールユニット32で制御される。また、これらを統括して車両の駆動力全体を制御するコントロールユニットを備える場合もある。更に、駆動用バッテリ20を制御するためのバッテリコントロールユニットを備える場合もある。なお、これらのコントロールユニットは、後述のようにコンピュータシステムを備えて構成され、高い演算処理能力を有する。また、一般に、プラグインハイブリッド車両を含むハイブリッド車両では、エンジン10はモータジェネレータ12と協調制御される。また、パワーコントロールユニット32と駆動回路22が一体化されたものもある。
【0028】
パワーコントロールユニット32やエンジンコントロールユニット30などのコントロールユニットは、マイクロコンピュータのようなコンピュータシステムを搭載して構成される。このコンピュータシステムは、周知のコンピュータシステムと同様に、高度な演算処理機能を有する演算処理装置に加え、例えばプログラムを記憶する記憶装置や、センサ信号を読込んだり、他のコントロールユニットと相互通信を行ったりするための入出力装置を備えて構成される。
【0029】
図2は、
図1のプラグインハイブリッド車両における燃料タンク36とエンジン10との間の燃料蒸発ガス通路の概略構成図である。エンジン10の燃料には、ガソリンなどの揮発性燃料が用いられ、燃料タンク36内に給油されて貯留される。エンジン10に供給される燃料の大部分は、例えば、図示しない燃料ポンプによって燃料タンク36から汲み出され、更に燃料噴射装置64からエンジン吸気系11又は燃焼室に噴射される。一方、前述のように、揮発性燃料からなるエンジン10用の燃料は、燃料タンク36内でも気化(蒸発)しており、その燃料蒸発ガス(エバポ)をキャニスタ38で一時的に吸着し、更にキャニスタ38に吸着した燃料蒸発ガスをエンジン吸気系11にパージガスとして供給してエンジン10での燃焼に供する。ここでは、燃料タンク36とキャニスタ38を連通する通路をエバポ通路40と規定し、キャニスタ38とエンジン吸気系11を連通する通路をパージガス通路42と規定する。なお、キャニスタ38は、チャージポート38cがエバポ通路40に接続され、パージポート38pがパージガス通路42に接続され、ドレンポート38dは、フィルタ52を介して大気開放されている。ちなみに、このドレンポート38dには、この燃料蒸発ガス通路内の漏れ(リーク)を検出するための装置を配設してもよい。
【0030】
このパージガス通路42には、パージガス通路42を開閉するパージ制御電磁弁44が設けられている。このパージ制御電磁弁44は、後述するように、デューティ制御によって開弁制御され、パージガスを所定の濃度(割合)でエンジン吸気系11に供給する。また、上記エバポ通路40は、図の中間部で分岐され、一方のエバポ分岐路にはリリーフ弁50が介装され、他方のエバポ分岐路にはタンク接断電磁弁46が介装されている。このうち、リリーフ弁50は、例えば燃料タンク36内の圧力状態が過剰に大きくなった時に、燃料タンク36の内圧を開放してエバポをキャニスタ38側に供給するためのものである。また、タンク接断電磁弁46は、後述するように、例えば所定時間毎に所定時間ずつ開弁制御されて、燃料タンク36内のエバポをキャニスタ38に供給したり、所定時間連続して開弁されて、キャニスタ38のドレンポート38dから外気を燃料タンク36内に吸入したりするためのものである。これらパージ制御電磁弁44及びタンク接断電磁弁46は、エンジンコントロールユニット30によって開弁制御される。
【0031】
従って、この実施の形態のプラグインハイブリッド車両では、上記タンク接断電磁弁46を閉じることにより、燃料タンク36を密閉状態とすることができる(リリーフ弁50は、原則的に、常時閉)。エバポ通路40が燃料タンク36とキャニスタ38を連通したままの状態であると、例えば、燃料タンク36内のエバポがキャニスタ38のドレンポート38dから大気流出するおそれがある。そこで、通常は、タンク接断電磁弁46を閉弁してエバポ通路40を閉じ、燃料タンク36内のエバポがキャニスタ38側に流れないようにする。なお、燃料タンク36には、燃料タンク36内の圧力状態を検出するための燃料タンク圧力センサ48が設けられている。この実施の形態の燃料タンク圧力センサ48には、例えば大気圧を0、大気圧よりも高圧(正圧)状態を正、低圧(負圧)状態を負の出力値として出力する相対圧(ゲージ圧)センサが用いられている。
【0032】
以下、この実施の形態のプラグインハイブリッド車両におけるエバポ及びパージガスのパージ制御の概要について説明する。なお、「パージ」は、一掃、消去、浄化、追放といった意味の英語である。キャニスタ38に吸着されたエバポはスロットルバルブ60の下流側、具体的にはインテークマニホールド62内にパージガスとしてエンジン吸気系11の負圧で吸引され、更にエンジン10の燃焼室内で燃焼される。このパージガス供給量を制御するのがキャニスタパージ制御であり、パージ制御電磁弁44の開弁状態をディーティ制御して行う。キャニスタパージ制御はエンジン運転中に行われる。
【0033】
一方、このプラグインハイブリッド車両では、燃料タンク圧力センサ(以下、単に圧力センサと記す)48で検出された燃料タンク36内の圧力値が、大気圧よりも大きな値に設定された正圧所定値以上になったら、キャニスタパージ制御に合わせて、タンク接断電磁弁46を開いて、燃料タンク36内のエバポをパージガスと一緒にエンジンに供給して燃焼する制御を行う。この燃料タンク36内のエバポのパージをダイレクトパージと規定し、その制御をダイレクトパージ制御と規定する。ダイレクトパージ制御では、タンク接断電磁弁46を、所定時間毎に、例えば50msec.とか100msec.といった短い開弁時間で開弁して燃料タンク36内のエバポをエバポ通路40からパージガス通路42を経てエンジン吸気系11に供給する。このようにタンク接断電磁弁46を短時間開弁するのは、燃料タンク36内のエボパのパージガス通路42への流入量を制限して、パージガス通路42内の燃料蒸発ガス成分が多くなりすぎないようにするためである。
【0034】
このダイレクトパージ制御では、ダイレクトパージ開始からの燃料タンク36内エバポの総パージ流量を随時算出し、記憶する。インテークマニホールド内の圧力(負圧)状態は、例えばインテークマニホールドに設けられた圧力センサによって検出される。これに対し、エバポ通路40の圧力状態は圧力センサ48の出力値であり、温度に依存するエバポ発生量と相関する。従って、例えば、エバポ通路40の圧力状態及びインテークマニホールド内の圧力状態の差圧と、タンク接断電磁弁46の開弁特性(開弁時間)から燃料タンク36内エバポのタンク接断電磁弁通過流量を求めることができる。
【0035】
なお、前述のように、燃料タンク36とキャニスタ38は通常時はタンク連通電磁弁で遮断されており、燃料給油時及び燃料タンク昇圧時のみ、タンク連通電磁弁が開制御されるので、キャニスタ38は、それらタンク連通電磁弁が開状態のときのエバポのみを吸着する。また、エンジン吸気系11又は燃焼室への燃料噴射量は、キャニスタパージ制御中及びダイレクトパージ制御中、所定の割合で減少制御される。また、前述した給油スイッチ34は、給油リクエストスイッチとも呼ばれ、乗員がこれから給油を行おうとする場合にオン操作される。給油スイッチ34がオン操作されると、後述の演算処理のようにタンク接断電磁弁46を開弁することにより、燃料タンク36内のエバポをキャニスタ38に供給するか、又は、キャニスタ38のドレンポート38dから外気を燃料タンク36内に流入して、燃料タンク36内を大気圧状態にし、その状態で、例えば給油リッドを開く。
【0036】
図3は、燃料タンク36の圧力センサ48の故障を判定するために、エンジンコントロールユニット30で実行される演算処理の一例を示すフローチャートである。この演算処理は、例えば所定サンプリング周期で実行されるタイマ割込み処理であり、まずステップS1で、圧力センサチェックフラグF
Fが0のリセット状態であるか否かを判定し、圧力センサチェックフラグF
Fがリセット状態である場合にはステップS2に移行し、そうでない場合には復帰する。なお、この圧力センサチェックフラグF
Fは、例えば車両システム始動時(イグニッションスイッチオンに相当)にリセットされる。
【0037】
ステップS2では、給油フラグFRが0のリセット状態であるか否かを判定し、給油フラグFRがリセット状態である場合にはステップS3に移行し、そうでない場合にはステップS16に移行する。
【0038】
ステップS3では、給油スイッチ34がオン操作されているか否かを判定し、給油スイッチ34がオン操作されている場合にはステップS14に移行し、そうでない場合にはステップS4に移行する。
【0039】
ステップS4では、個別の演算処理に従って、前述のダイレクトパージ制御中であるか否か、即ちエンジン運転中且つタンク接断電磁弁46が開弁制御中であるか否かを判定し、ダイレクトパージ制御中である場合にはステップS5に移行し、そうでない場合にはステップS8に移行する。
【0040】
ステップS5では、図示しない外気温センサで検出された外気温が予め設定された外気温所定値以下であるか否かを判定し、外気温が外気温所定値以下である場合にはステップS6に移行し、そうでない場合には復帰する。この外気温所定値は、例えば、外気温上昇に伴って燃料タンク36内のエバポ発生量が非常に多くなり、通常のダイレクトパージ制御では、燃料タンク36内のエバポ発生量低減制御が達成できない程度の温度値に設定される。
【0041】
ステップS6では、前述したダイレクトパージ制御中の総パージ流量がエバポ流量所定値以上であるか否かを判定し、総パージ流量がエバポ流量所定値以上である場合にはステップS7に移行し、そうでない場合には復帰する。このエバポ流量所定値は、ダイレクトパージ制御中の総パージ流量、即ち燃料タンク36から流出されたエバポ流量によって燃料タンク36内が略大気圧になるエバポ流量値であり、凡そ燃料タンク36内におけるエバポ発生量に相当する。燃料タンク36内のエバポ発生量は燃料タンク36内の圧力状態、即ち圧力センサ48の出力値であるから、ダイレクトパージ制御開始時の圧力センサ48の出力値からエバポ流量所定値を設定することができる。なお、ダイレクトパージ制御が、例えば燃料タンク36内の予め設定された所定正圧状態、即ち圧力センサ48の出力所定値で開始される場合には、エバポ流量所定値をその圧力センサ48の出力所定値に応じた固定値とすることもできる。
【0042】
このダイレクトパージ制御中の総パージ流量がエバポ流量所定値以上である判定は、例えば圧力センサ48で検出された燃料タンク内圧力に応じた開弁回数所定値以上、タンク接断電磁弁46が開弁された場合としてもよい。前述のように、ダイレクトパージにおけるタンク接断電磁弁46は、所定時間毎に、予め設定された所定短時間だけ開弁される、即ち1回のダイレクトパージにおけるエバポ流量は燃料タンク36内の圧力状態に応じてほぼ決まっているので、ダイレクトパージによって、燃料タンク36内の圧力が大気圧に復帰するためのエバポ流量所定値は、凡そ燃料タンク内圧力に応じた開弁回数で決定することが可能である。従って、このステップにおけるエバポ総パージ流量がエバポ流量所定値以上である判定は、燃料タンク36内の圧力状態に応じた開弁回数所定値以上、タンク接断電磁弁46が開弁された場合とすることもできる。なお、ダイレクトパージ制御が燃料タンク36内の予め設定された所定の正圧状態で開始される場合には、燃料タンク36内の圧力状態、即ち燃料タンク36内のエバポ発生量も凡そ決まっているので、上記タンク接断電磁弁46の開弁回数所定値を固定値とすることもできる。
【0043】
ステップS7では、圧力センサチェックフラグFFを1のセット状態としてからステップS18に移行する。
【0044】
一方、上記ステップS8では、負圧フラグFLが0のリセット状態であるか否かを判定し、負圧フラグFLがリセット状態である場合にはステップS9に移行し、そうでない場合にはステップS12に移行する。
【0045】
ステップS9では、圧力センサ48の出力値が予め設定された負圧所定値以下であるか否かを判定し、圧力センサ48の出力値が負圧所定値以下である場合にはステップS10に移行し、そうでない場合には復帰する。
【0046】
ステップS10では、タンク接断電磁弁46を開制御してからステップS11に移行する。
【0047】
ステップS11では、負圧フラグFLを1のセット状態としてからステップS12に移行する。
【0048】
ステップS12では、タンク接断電磁弁46の開制御から予め設定された第1所定時間が経過したか否かを判定し、タンク接断電磁弁46の開制御から第1所定時間が経過した場合にはステップS13に移行し、そうでない場合には復帰する。この第1所定時間は、タンク接断電磁弁46の開弁状態で、キャニスタ38のドレンポート38dからの外気で燃料タンク36内が大気圧状態に復帰するための所要時間であり、例えば3秒に設定される。
【0049】
ステップS13では、負圧フラグFLを0のリセット状態とすると共に、圧力センサチェックフラグFFを1のセット状態としてからステップS18に移行する。
【0050】
また、上記ステップS14では、タンク接断電磁弁46を開制御してからステップS15に移行する。
【0051】
ステップS15では、給油フラグFRを1のセット状態としてからステップS16に移行する。
【0052】
ステップS16では、タンク接断電磁弁46の開制御から予め設定された第2所定時間が経過したか否かを判定し、タンク接断電磁弁46の開制御から第2所定時間が経過した場合にはステップS17に移行し、そうでない場合には復帰する。この第2所定時間は、タンク接断電磁弁46の開弁状態で、キャニスタ38のドレンポート38dからの外気で燃料タンク36内が大気圧状態に復帰するか、又は燃料タンク36内のエバポがキャニスタ38側に流れて燃料タンク36内が大気圧状態に復帰するための所要時間であり、例えば3秒に設定される。
【0053】
ステップS17では、給油フラグFRを0のリセット状態とすると共に、圧力センサチェックフラグFFを1のセット状態としてからステップS18に移行する。
【0054】
そして、上記ステップS18では、圧力センサ48の出力値が大気圧相当であるか否かを判定し、圧力センサ48の出力値が大気圧相当である場合には復帰し、そうでない場合、即ち大気圧相当以外の場合にはステップS19に移行する。
【0055】
ステップS19では、圧力センサ48の故障(図ではフェール)信号を出力してから処理を終了する。なお、この圧力センサ48の故障信号には、例えばインストゥルメントパネルのエンジントラブルランプ点灯指令を含めるなどしてもよい。
【0056】
この演算処理によれば、燃料タンク36内が所定の正圧状態となってダイレクトパージ制御が開始され、そのダイレクトパージ制御、即ちパージ制御電磁弁44の開弁制御に伴うタンク接断電磁弁46の開弁制御によって燃料タンク36からキャニスタ38側に流れたエバポの総パージ流量がエバポ流量所定値以上になり、燃料タンク36内が大気圧状態になったとみなされる場合に、圧力センサ48の故障判定が行われる。また、燃料タンク36内が所定の負圧状態となるとタンク接断電磁弁46が開制御され、その開制御から第1所定時間が経過して燃料タンク36内が大気圧状態になったとみなされる場合に、圧力センサ48の故障判定が行われる。また、給油スイッチがオン操作されるとタンク接断電磁弁46が開制御され、その開制御から第2所定時間が経過して燃料タンク36内が大気圧状態になったとみなされる場合に、圧力センサ48の故障判定が行われる。これらの燃料タンク内大気圧状態、即ち大気圧条件で圧力センサ48の出力値が大気圧相当でなければ、圧力センサ48は故障しているものとみなされる。
【0057】
図4は、圧力センサ48の故障を判定するために、エンジンコントロールユニット30で実行される演算処理の他の例を示すフローチャートである。この演算処理は、上記給油スイッチのオン操作で開始され、まずステップS21で、タンク接断電磁弁46を開制御する。
【0058】
次にステップS22に移行して、タンク接断電磁弁46の開制御から上記第2所定時間が経過するまで待機する。
【0059】
次にステップS23に移行して、圧力センサ48の出力値が大気圧相当であるか否かを判定し、圧力センサ48の出力値が大気圧相当である場合にはステップS25に移行し、そうでない場合にはステップS24に移行する。
【0060】
ステップS24では、圧力センサ48の故障(図ではフェール)信号を出力してからステップS25に移行する。なお、この圧力センサ48の故障信号には、例えばインストゥルメントパネルのエンジントラブルランプ点灯指令を含めるなどしてもよい。
【0061】
上記ステップS25では、圧力センサチェックフラグFFを1のセット状態としてから処理を終了する。
【0062】
この演算処理によれば、給油スイッチがオン操作されるとタンク接断電磁弁46が開制御され、その開制御から第2所定時間が経過して燃料タンク36内が大気圧状態になったとみなされる場合に、圧力センサ48の故障判定が行われる。この燃料タンク内大気圧状態、即ち大気圧条件で圧力センサ48の出力値が大気圧相当でなければ、圧力センサ48は故障しているものとみなされる。なお、この演算処理は、例えば車両システム停止(イグニッションスイッチオフに相当)であっても、エンジンコントロールユニット30を作動して実行される。
【0063】
このように、この実施の形態の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置では、圧力センサ48で検出された燃料タンク36内の圧力が所定の正圧状態にある場合には、例えばエンジン運転中にパージ制御電磁弁44を開弁制御しながら、タンク接断電磁弁46を開弁制御することで、燃料タンク36内のエバポがエバポ通路40及びパージガス通路42を経てエンジン吸気系11に供給され、燃料タンク36内の圧力が低下する。また、圧力センサ48で検出された燃料タンク36内の圧力が所定の負圧状態にある場合には、タンク接断電磁弁46を開弁制御することで、大気開放されているキャニスタ38のドレンポート38dから外気が燃料タンク36内に流入し、燃料タンク36内の圧力が増大する。従って、燃料タンク36内が正圧状態である場合には燃料タンク36内のエバポがエンジン吸気系11に十分に供給されるか、燃料タンク36内が負圧状態である場合には燃料タンク36内に外気が十分に流入した時点で、燃料タンク36内が大気圧状態になっている、即ち予め設定された大気圧条件となるので、その大気圧条件で検出された圧力センサ48の出力値が大気圧相当以外であれば、圧力センサ48が故障していると正確に判定することができる。従って、追加の圧力センサを用いることなく、燃料タンク36の圧力センサ48の故障を検出することができる。また、車両停車時だけでなく、車両走行時にも燃料タンク36の圧力センサ48の故障を判定することができる。
【0064】
また、圧力センサ48の出力値は燃料タンク36内の圧力状態であって、その圧力状態は燃料タンク36内のエバポ発生量に依存するので、このエバポ発生量、即ち圧力センサ48の出力値に応じたエバポ流量所定値を設定し、燃料タンク36からエンジン吸気系11に供給されたエバポ流量がこのエバポ流量所定値以上となった場合に、燃料タンク36内の圧力状態は大気圧相当であるとみなすことができる。従って、燃料タンク36からエンジン吸気系11に供給されたエバポ流量がエバポ流量所定値以上となった場合を大気圧条件とし、この大気圧条件で検出された圧力センサ48の出力値が大気圧相当以外であれば、圧力センサ48は故障しているものと正確に判定できる。
【0065】
また、タンク接断電磁弁46が所定時間毎に所定時間ずつ開弁される場合、1回の開弁でタンク接断電磁弁46を流れるエバポ流量は、燃料タンク36内の圧力状態とエンジン吸気系11との差圧及びタンク接断電磁弁46の開弁特性に依存する。従って、このタンク接断電磁弁46の開弁1回当たりのエバポ流量特性と燃料タンク36内の圧力状態(エバポ発生量)から上記エバポ流量所定値に相当する開弁回数所定値を凡そ設定することができ、この開弁回数所定値以上、タンク接断電磁弁46が開弁されれば、燃料タンク36内の圧力状態は大気圧相当であるとみなすことができる。従って、圧力センサ48の出力値に応じた開弁回数所定値以上、タンク接断電磁弁46が開弁された場合を大気圧条件とし、この大気圧条件で検出された圧力センサ48の出力値が大気圧相当以外であれば、圧力センサ48は故障しているものと正確に判定できる。
【0066】
また、燃料タンク36内の圧力が所定の負圧状態である場合に、タンク接断電磁弁46を開弁したときの外気の燃料タンク36内への流量は、該タンク接断電磁弁46の開弁特性に依存する。従って、このタンク接断電磁弁46の開弁特性に応じた外気の燃料タンク内流量で燃料タンク36が大気圧に復帰するまでの所要時間を所定時間に設定することで、タンク接断電磁弁46の開弁時間が所定時間経過した場合に燃料タンク36内の圧力状態は大気圧相当であるとみなすことができる。従って、この大気圧条件で検出された圧力センサ48の出力値が大気圧相当以外であれば、圧力センサ48は故障しているものと正確に判定できる。
【0067】
また、乗員が給油スイッチを操作する燃料給油時には、タンク接断電磁弁46を開弁制御して燃料タンク36内を大気圧状態にする。この場合、タンク接断電磁弁46を開弁したときの外気の燃料タンク36内への流量又は燃料タンク内エボパのキャニスタ38への流量は、タンク接断電磁弁46の開弁特性に依存する。従って、このタンク接断電磁弁46の開弁特性に応じた外気の燃料タンク内流量又は燃料タンク内エボパのキャニスタ内流量で燃料タンク36が大気圧に復帰するまでの所要時間を所定時間に設定することで、タンク接断電磁弁46の開弁時間が所定時間経過した場合に燃料タンク36内の圧力状態は大気圧相当であるとみなすことができる。従って、この大気圧条件で検出された圧力センサ48の出力値が大気圧相当以外であれば、圧力センサ48は故障しているものと正確に判定できる。
【0068】
以上、実施の形態に係る燃料タンク用圧力センサ故障判定装置について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、エンジンコントロールユニット30で
図3の演算処理も
図4の演算処理も行うものとしたが、例えば
図4の演算処理は行わないものとすることができる。また、
図4の演算処理を行う代わりに、
図3の演算処理のステップS14~ステップS17を削除することもできる。
【0069】
また、上記ダイレクトパージ制御の詳細は、上記に限定されるものではなく、例えばタンク接断電磁弁46をデューティ制御してもよい。
【0070】
また、上記実施の形態では、本発明の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置をプラグインハイブリッド車両に適用した例についてのみ詳述したが、本発明の燃料タンク用圧力センサ故障判定装置は、一般的なハイブリッド車両は勿論、駆動源にエンジンのみを搭載するコンベンショナルな車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 エンジン
11 エンジン吸気系
12 モータジェネレータ
20 駆動用バッテリ
24 外部電源
26 外部接続型充電器
30 エンジンコントロールユニット(制御手段)
32 コントロールユニット
34 給油スイッチ
36 燃料タンク
38 キャニスタ
38a ドレンポート
40 エバポ通路
42 パージガス通路
44 パージ制御電磁弁
46 タンク接断電磁弁
48 燃料タンク圧力センサ(圧力センサ)