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特許7195889黄色系化合物、該化合物を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】黄色系化合物、該化合物を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
   C09B 25/00 20060101AFI20221219BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20221219BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C09B25/00 B CSP
C09B25/00 D
C09B67/20 F
G02B5/20 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018218829
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2019123856
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018004201
(32)【優先日】2018-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】神田 大三
(72)【発明者】
【氏名】キム ハッキュ
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-018460(JP,A)
【文献】特開平05-333599(JP,A)
【文献】特開2012-185241(JP,A)
【文献】特開2017-197640(JP,A)
【文献】特開2008-094986(JP,A)
【文献】特開2013-095870(JP,A)
【文献】特開2013-186149(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0112549(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00 - 69/10
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】

[式中、R 、R ~Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、―SOH、―SOM、
置換基を有していてもよい炭素原子数9~25のインダンジオン基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25のスルホ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~25の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~25の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25の複素環基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25のアリールオキシ基を表し、
~Rは、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。
Mはアルカリ金属原子を表す。
は-NR で表され、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~25の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~25の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25の複素環基を表し
およびRは、互いに結合して環を形成していてもよい。
nは1を表す。
Zは下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される1価基を表す。]
【化2】

[式中、R ~R 12 は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、―SO H、―SO M、
置換基を有していてもよい炭素原子数9~25のインダンジオン基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25のスルホ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~25の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~25の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25の複素環基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25のアリールオキシ基を表す。
Mはアルカリ金属原子を表す。]
【化3】

[式中、R 13 ~R 18 は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、―SO H、―SO M、
置換基を有していてもよい炭素原子数9~25のインダンジオン基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25のスルホ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~25の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~25の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25の複素環基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25のアリールオキシ基を表し、
~R 12 は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。
Mはアルカリ金属原子を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、R およびR が置換基を有していてもよい炭素原子数2~25の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物の25℃±2℃におけるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)への溶解度が0.1重量%以上である、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物の溶液中の350~700nmの範囲の最大吸収波長が370~430nmの範囲にある、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の化合物を含有する着色組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【請求項7】
請求項6に記載のカラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄色系化合物、該化合物を含有する着色組成物、該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤および該着色組成物を用いたカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで多くの顔料が開発されており、例えばキノフタロン顔料、アゾ顔料、ジケトピロロピロール顔料などがある(例えば、特許文献1~4参照)。これらの顔料は、例えば液晶や電界発光(EL)表示装置に使用されるカラーフィルターを作る際の着色に用いられる。カラーフィルターは、ガラスなどの透光性基板上に、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法などにより着色層を積層することによって製造される。前述のキノフタロン系顔料は、キナルジンと無水フタル酸との縮合により合成される黄色系化合物であり、その鮮明性からカラーフィルターの着色剤として用いられる(特許文献1、非特許文献1)。しかし、ディスプレーの高画質化に伴い、カラーフィルターに要求される性能は高まり、より着色力、明度およびコントラストを向上させることが必要である。
【0003】
顔料は一般的に溶剤に不溶なため、樹脂などを含むカラーフィルター中では微粒子状で存在している。そのため、顔料を用いたカラーフィルターは、フィルター中の顔料粒子表面で透過光が反射・散乱することにより、透明性や色純度に影響し、また、反射による消偏作用があるためにカラー液晶表示装置のコントラスト比が低下することが知られている。
【0004】
コントラスト比の低下の問題を改善するため、着色剤として染料のみを用いる方法または染料と顔料を併用する方法などが提案されている。染料は溶剤に可溶であるため、染料を使用したカラーフィルターは、顔料のみを着色剤として使用した場合に比べ消偏作用が抑えられ、分光特性に優れており、コントラストや輝度などの向上が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭47-3476号公報
【文献】特開2012-193318号公報
【文献】特開2012-12498号公報
【文献】特開2001-220520号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】市村國宏 監修、「最先端カラーフィルターのプロセス技術とケミカルス」、株式会社シーエムシー出版、2006年、p.80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、黄色系化合物の有機溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)など)への溶解性を向上させ、該化合物を含有し、着色力、鮮明性、色相などの色彩特性に優れた着色組成物、該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤および該着色剤を用いたカラーフィルターを提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために鋭意研究した結果得られたものであり、以下を要旨とするものである。
【0009】
1.下記一般式(1)で表される化合物。
【0010】
【化1】
【0011】
[式中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、―SOH、―SOM、
置換基を有していてもよい炭素原子数9~25、好ましくは9~20のインダンジオン基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のスルホ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~25、好ましくは2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~25、好ましくは6~20の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20の複素環基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20のアリールオキシ基を表し、
~Rは、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。
Mはアルカリ金属原子を表す。
~Rのうち任意のn個は-NRによって置き換えられており、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~25、好ましくは2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~25、好ましくは6~20の芳香族炭化水素基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20複素環基を表し、
およびRは、互いに結合して環を形成していてもよい。
nは1~3の整数を表す。
Zは1価基を表す。]
【0012】
2.前記一般式(1)において、Zが下記一般式(2)で表される1価基である化合物。
【0013】
【化2】
【0014】
[式中、R~R12は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、―SOH、―SOM、
置換基を有していてもよい炭素原子数9~25、好ましくは9~20のインダンジオン基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のスルホ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~25、好ましくは2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~25、好ましくは6~20の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20の複素環基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20のアリールオキシ基を表し、
~R12は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。
Mはアルカリ金属原子を表す。]
【0015】
3.前記一般式(1)において、Zが下記一般式(3)で表される1価基である化合物。
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、R13~R18は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、―SOH、―SOM、
置換基を有していてもよい炭素原子数9~25、好ましくは9~20のインダンジオン基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のスルホ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~25、好ましくは2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のアシル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~25、好ましくは6~20の芳香族炭化水素基、
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20の複素環基、または
置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20のアリールオキシ基を表し、
~R12は、隣り合う基同士で互いに結合して環を形成していてもよい。
Mはアルカリ金属原子を表す。]
【0018】
4.前記一般式(1)において、nが1または2であり、R、RまたはRが―NRである化合物。
【0019】
5.前記一般式(1)において、RおよびRが置換基を有していてもよい炭素原子数2~25、好ましくは2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である化合物。
【0020】
6.前記化合物の25℃±2℃におけるプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)への溶解度が0.1重量%以上である化合物。
【0021】
7.前記化合物の溶液中の350~700nmの範囲の最大吸収波長が370~430nmの範囲にある化合物。
【0022】
8.前記化合物を含有する着色組成物。
【0023】
9.前記着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【0024】
10.前記カラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルター。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る化合物は、従来の黄色系化合物と比較して、PGMEなどの有機溶媒への溶解性に優れており、かつ、製膜時の耐熱性に優れているため、本発明に係る化合物を含有する着色組成物は、カラーフィルター用着色剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。まず、前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0027】
一般式(1)において、下記一般式(1-a)で表される部分は、「(―NR」と表すことができる。また、一般式(1)において、「―NR」は、R~Rのうちいずれの位置に結合していてもよいことを表しており、「―NR」の数はnであり、nは1~3の整数であることを表す。nが2以上の場合、複数存在するRおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0028】
【化4】
【0029】
一般式(1)におけるR~R、一般式(2)におけるR~R12、または、一般式(3)におけるR13~R18で表される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などがあげられる。「ハロゲン原子」としては、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0030】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数9~25、好ましくは9~20のインダンジオン基」における「炭素原子数9~25、好ましくは9~20のインダンジオン基」は、前記一般式(2)で表される基と同じ構造の基を意味する。ただし、一般式(1)中のR~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数9~25、好ましくは9~20のインダンジオン基」における「置換基」と、一般式(2)中のR~R12で表される基は、それぞれ互いに同一であっても異なっていてもよい。なお、「置換基」が炭素原子を含む場合、その炭素原子は上記の「炭素原子数9~25、好ましくは9~20」に算入されない。
【0031】
一般式(1)において、R~Rで表される「置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のスルホ基」における「炭素原子数1~25、好ましくは1~20のスルホ基」は、「―SO―R」と表される基を意味し、Rは、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のスルホ基」における「置換基」を意味する。
【0032】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基があげられる。
【0033】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルキル基」における「炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基があげられる。
【0034】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数2~25、好ましくは2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数2~25、好ましくは2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基などのアルケニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基があげられる。
【0035】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」における「炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」としては、具体的に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの直鎖状のアルコキシ基;イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの分岐状のアルコキシ基があげられる。
【0036】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルコキシ基」における「炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルコキシ基」としては、具体的に、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基などのシクロアルコキシ基;1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基、などがあげられる。
【0037】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のアシル基」における「炭素原子数1~25、好ましくは1~20のアシル基」としては、具体的に、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などの炭素原子数1~19のアシル基、などがあげられる。
【0038】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい炭素数6~25、好ましくは6~20の芳香族炭化水素基」における「炭素数6~25、好ましくは6~20の芳香族炭化水素基」としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基(アントリル基)、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの芳香族炭化水素基(本発明における「芳香族炭化水素基」とは、アリール基または縮合多環芳香族基も含む)があげられる。
【0039】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20の複素環基」における「環形成原子数5~25、好ましくは5~20の複素環基」としては、具体的に、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、チエニル基、フリル基(フラニル基)、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、カルバゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの複素環基(もしくは複素芳香族炭化水素基)があげられる。
【0040】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20のアリールオキシ基」における「環形成原子数5~25、好ましくは5~20のアリールオキシ基」としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基などのアリールオキシ基があげられる。
【0041】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有する炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」または「置換基を有する炭素原子数2~25、好ましくは2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、水酸基、―SO 、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;炭素原子数3~19のシクロアルキル基;炭素原子数1~19の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;炭素原子数3~19のシクロアルコキシ基または1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基;炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;炭素原子数2~19の複素環基;炭素原子数6~19のアリールオキシ基;無置換アミノ基;炭素原子数1~19の一置換もしくは二置換アミノ基;炭素原子数1~19のアシル基、などがあげられる。なお、「置換基」が炭素原子を含む場合、その炭素原子は上記の「炭素原子数9~25、好ましくは9~20」、「炭素原子数1~25、好ましくは1~20」、「炭素原子数5~25、好ましくは5~20」、「炭素原子数2~25、好ましくは2~20」、「炭素原子数6~25、好ましくは6~20」に算入されない。これらの「置換基」は1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0042】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有する炭素原子数9~25、好ましくは9~20のインダンジオン基」、「置換基を有する炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、「置換基を有する炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルコキシ基」、「置換基を有する炭素原子数1~25、好ましくは1~20のアシル基」、「置換基を有する炭素原子数6~25、好ましくは6~20の芳香族炭化水素基」、「置換基を有する環形成原子数5~25、好ましくは5~20の複素環基」、「置換基を有する環形成原子数5~25、好ましくは5~20のアリールオキシ基」または「置換基を有する炭素原子数0~25、好ましくは0~20のアミノ基」における「置換基」としては、具体的に、重水素原子、水酸基、―SO 、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;炭素原子数1~19の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;炭素原子数3~19のシクロアルキル基;炭素原子数2~19の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;炭素原子数1~19の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;炭素原子数3~19のシクロアルコキシ基または1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基;炭素原子数1~19のアシル基;炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;炭素原子数2~19の複素環基;炭素原子数6~19のアリールオキシ基;無置換アミノ基;炭素原子数1~19の一置換もしくは二置換アミノ基;などがあげられる。なお、「置換基」が炭素原子を含む場合、その炭素原子は上記の「炭素原子数9~25、好ましくは9~20」、「炭素原子数5~25、好ましくは5~20」、「炭素原子数1~25、好ましくは1~20」、「炭素原子数6~25、好ましくは6~20」、「炭素原子数0~25、好ましくは0~20」に算入されない。これらの「置換基」は1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。また、これらの置換基同士が単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0043】
なお、一般式(1)においてR~Rで表される「置換基」を有する上記の各種の「基」において、「置換基」としてあげられている、
「炭素原子数1~19の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、
「炭素原子数3~19のシクロアルキル基」、
「炭素原子数2~19の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、
「炭素原子数1~19の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、
「炭素原子数3~19のシクロアルコキシ基」、
「炭素原子数1~19のアシル基」、
「炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基」、
「炭素原子数2~19の複素環基」、
「炭素原子数6~19のアリールオキシ基」、
「炭素原子数1~19の一置換もしくは二置換アミノ基」、または
「炭素原子数1~19のアシル基」としては、具体的に、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~19の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などの炭素原子数3~19のシクロアルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した炭素原子数2~19の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの炭素原子数1~19の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基などの炭素原子数3~19のシクロアルコキシ基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、アクリリル基、ベンゾイル基などの炭素原子数1~19のアシル基;
フェニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基(アントリル基)、フェナントリル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基などの炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
ピリジル基、ピリミジリニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基(フラニル基)、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、オキサゾリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などの炭素原子数2~19の複素環基;
フェニルオキシ基、トリルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基などの炭素原子数6~19のアリールオキシ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルプロピルアミノ基、ジ-t-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの、炭素原子数1~19の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または、炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基を有する一置換もしくは二置換アミノ基、などがあげられる。
【0044】
一般式(1)において、R~Rは、隣り合う基同士で、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0045】
一般式(1)において、R~Rとしては、
水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数9~20のインダンジオン基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、
または―NRが好ましく、水素原子または―NRがより好ましい。
【0046】
一般式(1)において、nは1~3の整数を表し、1または2であるのが好ましい。また、一般式(1)において、R、RまたはRが―NRであるのが好ましい。
【0047】
一般式(1)において、RまたはRで表される、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルキル基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数2~25、好ましくは2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルコキシ基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数6~25、好ましくは6~20の芳香族炭化水素基」、または
「置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20の複素環基」の各種の「基」としては、
一般式(1)においてR~Rで同様に表される「基」と同じものがあげられる。また、
またはRで表されるこれらの「基」が有してもよい「置換基」についても、R~Rにおける「置換基」と同じものがあげられる。
【0048】
一般式(1)におけるRおよびRとしては、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基が好ましい。
【0049】
一般式(1)において、Zは1価基を表し、前記一般式(2)または(3)で表される1価基であるのが好ましい。
【0050】
一般式(1)において、「―NR」は、R~Rのうちいずれの位置に結合していてもよいことを表すが、一般式(1)中のZが前記一般式(2)または(3)で表される1価基である場合、「―NR」は、R~R、R~R12またはR13~R18のうちいずれの位置に結合していてもよく、この場合であっても「―NR」の数はnであり、nは1~3の整数であることを表す。nが2以上の場合、複数存在するRおよびRは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0051】
一般式(2)におけるR~R12、または、一般式(3)におけるR13~R18で表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数9~20のインダンジオン基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のスルホ基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルキル基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数2~25、好ましくは2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数5~25、好ましくは5~20のシクロアルコキシ基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数1~25、好ましくは1~20のアシル基」、
「置換基を有していてもよい炭素原子数6~25、好ましくは6~20の芳香族炭化水素基」、
「置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20の複素環基」、または
「置換基を有していてもよい環形成原子数5~25、好ましくは5~20のアリールオキシ基」における各種の「基」としては、一般式(1)においてR~Rで同様に表される「基」と同じものがあげられる。また、一般式(2)または(3)におけるこれらの「基」が有してもよい「置換基」についても、一般式(1)における「置換基」と同じものがあげられる。
【0052】
一般式(2)および(3)において、R~R12およびR13~R18は、隣り合う基同士で、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0053】
一般式(2)および(3)において、R~R12およびR13~R18としては、水素原子、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数9~20のインダンジオン基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、
または―NRが好ましい。
【0054】
一般式(1)、(2)または(3)において、「M」は、アルカリ金属原子を表し、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子が好ましく、リチウム原子またはナトリウム原子がより好ましく、ナトリウム原子が特に好ましい。
【0055】
本発明において、一般式(1)で表される化合物として好ましい具体例を以下に示すが、これらの化合物に限定されない。なお、下記構造式では、水素原子を一部省略している。また、立体異性体が存在する場合であっても、その平面構造式を記載している。
【0056】
【化5】
【0057】
【化6】
【0058】
【化7】
【0059】
【化8】
【0060】
【化9】
【0061】
【化10】
【0062】
【化11】
【0063】
【化12】
【0064】
【化13】
【0065】
【化14】
【0066】
【化15】
【0067】
【化16】
【0068】
【化17】
【0069】
【化18】
【0070】
【化19】
【0071】
【化20】
【0072】
一般式(1)で表される本発明の化合物は、公知の方法(例えば、特許文献1)によって合成することができる。以下に、一般式(1)において、n=1、R=―NR、Zが一般式(2)で表されるインダンジオン基の場合の合成例を示す。
相当する置換基を有する4-クロロ-2-メチルキノリン誘導体と、相当する置換基を有するH―NRなどのアミンとを、適した溶媒、温度によってクロスカップリング反応を用いることにより、置換基として―NRを有する2-メチルキノリン誘導体が得られる。
さらに、得られた2-メチルキノリン誘導体と、相当する置換基を有するフタル酸無水物とを、適した溶媒、温度によって脱水縮合反応させることにより、一般式(1)で表される本発明の化合物を得ることができる。
【0073】
本発明の化合物の合成途中において、生成物を精製する方法としては、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による再結晶や晶析法などの公知の方法があげられる。また必要に応じて、これらの化合物の同定、分析には、核磁気共鳴分析(NMR)、分光光度計による吸光度測定や紫外可視吸収スペクトル(UV-Vis)測定、熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)などを行うことができる。また、これらの方法は、得られた化合物の溶解性、色彩評価や耐熱性評価にも用いることができる。
【0074】
本発明における化合物の溶解性は溶解度で表され、溶解度は、物質が特定の溶媒中に溶解することのできる最大量の割合を表すものであり、例えば「重量%(溶媒名,温度)」などの単位で表される。溶解度は、例えば、試料を特定の溶媒に混合し、一定温度で一定時間、溶媒を撹拌し、調製した飽和溶液の濃度を測定することによって得られ、溶解部の液体クロマトグラフィー(LC)や吸光度測定などによる濃度測定によっても得られる。
【0075】
本発明の化合物の熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)を行うことによって、熱分解温度を分析することができ、耐熱性の指標とすることができる。着色組成物において、色素部分の化合物の熱分解温度は、250℃以上であることが好ましい。カラーフィルターに応用する場合、熱分解温度は高いほど好ましい。
【0076】
本発明の化合物を各種樹脂溶液と混合し、ガラス基板上に塗布することにより塗膜を作製できる。得られた塗膜について、分光測色計を用いて測色し、塗膜の色彩値を得ることで色彩評価を行うことができる。色彩値はCIE L***表色系などが一般的に用いられる。具体的には、膜試料の色彩値L*、a*、b*を測定し、適当な温度での加熱前後の色彩値の色差(ΔE ab)より、耐熱性を判断することができる。カラーフィルターに応用する場合、230℃前後の温度での色差を耐熱性の指標として用いることができる。ΔE abは、その値が小さいほど、熱分解による色の変色が少ないことを意味しているため、3以下が好ましい。
【0077】
カラーフィルター用着色剤に含有される着色組成物は、色素化合物が樹脂および有機溶媒中に良好に溶解または分散している必要があるため、これらの着色組成物に含有される化合物は有機溶媒に対する溶解度が高いことが好ましい。有機溶媒としては具体的に、酢酸エチル、酢酸-n-ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエーテルエステル類;アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジアセトンアルコール(DAA)など;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などがあげられる。これらの溶剤は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。これらの中でも、本発明に係る化合物は、PGMEやPGMEAへの溶解性に優れ、例えば、25±2℃におけるPGMEに対する溶解度(重量%)(溶媒PGME,25±2℃)は、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、2重量%以上が特に好ましい。言い換えると、23℃から27℃までの間のいずれかの温度において、本発明に係る化合物のPGMEに対する溶解度(重量%)(溶媒PGME,25±2℃)は、0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上であることが特に好ましい。
【0078】
一般式(1)で表される化合物は、溶液中における可視光領域、例えば350~700nmの範囲の最大吸収波長が、370~430nmの範囲にあることが好ましい。
【0079】
本発明の着色組成物は、一般式(1)で表される本発明の化合物を含有しており、1種類の構造の化合物を含有していてもよく、2種類以上の構造の化合物を含有していてもよい。本発明においては、化合物の構造は1種類であるのが好ましい。
【0080】
本発明の着色組成物は、カラーフィルター用着色剤としての性能を高めるために、着色組成物の他の成分として、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、その他のカラーフィルター用着色剤の製造時に混合する添加剤、などの有機化合物などを添加することができる。ただし、着色組成物におけるこれらの添加剤の含有率は適量であることが好ましく、本発明の着色組成物の溶媒中の溶解性を低下させたり、もしくは必要以上に向上させたり、また、カラーフィルター製造時に用いる他の同種の添加剤の効果に影響しない範囲の含有率であることが好ましい。これらの添加物は、着色組成物の調製の任意のタイミングで投入することができる。
【0081】
本発明のカラーフィルター用着色剤は、一般式(1)で表される化合物を含有する着色組成物と、カラーフィルターの製造に一般的に使用される成分とを含む。一般的なカラーフィルターは、例えば、フォトリソグラフィー工程を利用した方法の場合、染料や顔料などの色素を樹脂成分(モノマー、オリゴマー、バインダー成分、レジスト成分を含む)や溶媒と混合して調製した液体を、ガラスや樹脂などの基板の上に塗布し、フォトマスクを用いて光重合させ、溶媒に可溶/不溶な色素-樹脂複合膜の着色パターンを作製し、洗浄後、加熱することにより得られる。本発明の化合物は、溶解性に優れるため、これらのカラーフィルターの製造用に用いられる材料との分散性に優れるため、必要に応じて他の材料と混合し、製膜し、耐熱性や吸光特性の評価をすることができる。また電着法や印刷法においても、色素を樹脂やその他の成分と混合したものを用いて着色パターンを作製することができる。従って、本発明のカラーフィルター用着色剤における具体的な成分としては、一般式(1)で表される化合物、その他の染料や顔料などの色素、樹脂成分、有機溶媒、および光重合開始剤などその他の添加剤があげられる。また、これらの成分から取捨選択したり、必要に応じて他の成分を追加してもよい。
【0082】
本発明の着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いる場合、黄色系カラーフィルターとして用いることができるが、赤色や緑色などの他色用のカラーフィルターに混合して用いることもできる。また、本発明の着色組成物を単独で使用してもよく、色調の調整のために、他の染料または顔料などの公知の色素を混合してもよい。例えば、塩基性染料;酸性染料;分散染料;スピロン染料;アゾ系、ジスアゾ系、キノリン系、スチルベン系、(ポリ)メチン系、シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、アクリジン系、トリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、ナフトールAS系、ベンズイミダゾロン系、ピラゾロン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、キサンテン系、ジケトピロロピロール系、などの染料または顔料などがあげられる。
【0083】
本発明の着色組成物およびカラーフィルター用着色剤における他の色素の混合比は、一般式(1)で表される化合物に対して5~2000重量%であるのが好ましく、10~1000重量%がより好ましい。液状のカラーフィルター用着色剤中における染料などの色素成分の混合比は、着色剤全体に対して0.5~70重量%であるのが好ましく、1~50重量%がより好ましい。
【0084】
本発明の着色組成物およびカラーフィルター用着色剤における樹脂成分としては、これらを使用して形成されるカラーフィルター樹脂膜の製造方式や使用時に必要な性質を有するものであれば、公知のものを使用することができる。例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、フェノール(ノボラック)樹脂、その他の透明樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、バインダー樹脂、フォトレジスト樹脂があげられ、これらを適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂の共重合体を組み合わせて使用することもできる。これらのカラーフィルター用着色剤における樹脂の含有量は、液状の着色剤の場合、5~95重量%が好ましく、10~50重量%がより好ましい。
【0085】
本発明の着色組成物およびカラーフィルター用着色剤におけるその他の添加剤としては、光重合開始剤や架橋剤などの樹脂の重合や硬化に必要な成分があげられ、また、液状のカラーフィルター用着色剤中の成分の性質を安定させるために必要な界面活性剤や分散剤などがあげられる。これらはいずれも、カラーフィルター製造用の公知のものを使用することができ、特に限定されない。カラーフィルター用着色剤の固形分全体におけるこれらの添加剤の総量の混合比は、5~60重量%が好ましく、10~40重量%がより好ましい。
【実施例
【0086】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、合成実施例において得られた化合物の同定は、H-NMR分析(日本電子株式会社製核磁気共鳴装置、JNM-ECA-600)により行った。
【0087】
[合成実施例1] 化合物(A-1)の合成
反応容器に、4-クロロ-2-メチルキノリン3.0g、ジブチルアミン4.4g、p-トルエンスルホン酸一水和物0.96gを入れ、130℃で5時間撹拌した。反応液にトルエンおよび水を入れ、トルエン抽出した。抽出液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製(担体:シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン)し、4-ジブチルアミノ-2-メチルキノリンを得た(3.1g、収率68%)。
続いて、反応容器に上記で得られた4-ジブチルアミノ-2-メチルキノリン3.1g、フタル酸無水物2.6g、安息香酸2.1g、1,2,4-トリクロロベンゼン16mLを入れ、170℃で6時間撹拌した。25℃まで冷却後、カラムクロマトグラフィーで精製(担体:シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン)し、黄色粉末を得た(3.1g、収率68%)。
【0088】
得られた黄色粉末のNMR測定を行い、以下の27個の水素のシグナルを検出し、下記式(A-1)で表される化合物の構造と同定した。
【0089】
H-NMR(600MHz、CDCl):δ(ppm)=8.07(1H)、7.86(1H)、7.60-7.66(3H)、7.50-7.55(3H)、7.34(1H)、3.50(4H)、1.70(4H)、1.35(4H)、0.95(6H)。
【0090】
【化21】
【0091】
[合成実施例2] 化合物(A-8)の合成
反応容器に、上記合成実施例1と同様の方法で得られた4-ジブチルアミノ-2-メチルキノリン3.0g、1,8-ナフタル酸無水物3.3g、安息香酸2.1g、1,2,4-トリクロロベンゼン15mLを入れ、170℃で8時間撹拌した。25℃まで冷却後、カラムクロマトグラフィーで精製し(担体:シリカゲル、溶媒:ジクロロメタン)、黄色粉末を得た(2.2g、収率50%)。
【0092】
得られた黄色粉末のNMR測定を行い、以下の29個の水素のシグナルを検出し、下記式(A-8)で表される化合物の構造と同定した。
【0093】
H-NMR(600MHz、CDCl):δ(ppm)=9.31(1H)、8.67(2H)、8.10(2H)、7.98(1H)、7.80(1H)、7.65-7.78(3H)、7.43(1H)、3.60(4H)、1.80(4H)、1.39(4H)、0.95(6H)。
【0094】
【化22】
【0095】
[合成実施例3] 化合物(A-16)の合成
反応容器に、上記合成実施例1と同様の方法で得られた4-ジブチルアミノ-2-メチルキノリン13.4g、トリメリット酸無水物9.0g、安息香酸6.0g、1,2,4-トリクロロベンゼン67mLを入れ、200℃で48時間撹拌した。25℃まで冷却後、トルエンおよびエタノールを加えろ過し、黄色粉末(A-16)を得た(14.6g、収率66%)。
【0096】
得られた黄色色素のNMR測定を行い、以下の27個の水素のシグナルを検出し、下記式(A-16)で表される化合物の構造と同定した。
【0097】
H-NMR(600MHz、DMSO-d):δ(ppm)=13.20(1H)、8.15(1H)、8.00-7.84(4H)、7.75(1H)、7.62(1H)、7.47(1H)、3.54(4H)、1.72(4H)、1.35(4H)、0.92(6H)。
【0098】
【化23】
【0099】
[実施例1]
合成実施例1で得られた化合物(A-1)について、室温におけるPGME溶媒への溶解度(重量%)(溶媒PGME,25±2℃)を測定した。なお、溶解性は、測定した溶解度の値をもとに、下記の4段階で評価した。結果を表1に示す。
「◎」:溶解度2重量%以上
「○」: 1~2重量%
「△」: 0.1~1重量%
「×」: 0.1重量%未満
【0100】
メタアクリル酸およびアクリル酸エステルの共重合体の2重量%DMF溶液5.0gと合成実施例1で得られた化合物(A-1)20mgをサンプル瓶に入れ、30分撹拌混合した。得られた着色樹脂溶液をガラス基板上に塗布し、100℃で2分間加熱して製膜した。得られた膜について、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、CM-5)を用いて色彩値を測定した。その後、230℃で20分間加熱し、同様に色彩値を測定した。230℃での加熱前後の色彩値の色差(ΔE ab)を耐熱性の指標とし、下記の3段階で評価した結果を表1に合わせて示す。
「○」:ΔE ab<3.0
「△」:ΔE ab=3.0~10.0
「×」:ΔE ab>10.0
【0101】
[実施例2および実施例3]
化合物として、(A-1)の代わりに合成実施例2および合成実施例3で得られた化合物(A-8)および化合物(A-16)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で室温におけるPGME溶媒への溶解度(重量%)(溶媒PGME,25±2℃)を測定し、また、製膜した膜について230℃での加熱前後の色彩値の色差(ΔE ab)を測定し、評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0102】
[比較例1]
化合物として、(A-1)の代わりに、本発明に属さない下記式(B-1)で表される、従来の色素化合物であるC.I.ソルベントイエロー33を用いた以外は、実施例1と同様に、室温におけるPGME溶媒への溶解度(重量%)(溶媒PGME,25±2℃)を測定し、また、製膜した膜について230℃での加熱前後の色彩値の色差(ΔE ab)を測定し、評価した。結果を表1にまとめて示す。
【0103】
【化24】
【0104】
【表1】
【0105】
表1に示すように、本発明の実施例の化合物はPGMEへの高い溶解性および製膜時における高い耐熱性を示しており、本発明の化合物を含有する着色組成物は、カラーフィルター用着色剤として実用上問題ない。また、実施例1の化合物のPGMEへの溶解度は、比較例1の化合物の2倍以上の溶解度を示しており、また製膜時において比較例1よりも高い耐熱性を有しており、カラーフィルター用着色剤として有用であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明に係る化合物(黄色系化合物)を含有する着色組成物は、有機溶媒(PGMEなど)への溶解性に優れており、かつ、製膜時の耐熱性に優れているため、カラーフィルター用着色剤として有用である。