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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6581 20110101AFI20221219BHJP
【FI】
H01R13/6581
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018236485
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020098719
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】本田 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山本 芳伸
(72)【発明者】
【氏名】小山 優太
【審査官】藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-018898(JP,A)
【文献】特開2017-126499(JP,A)
【文献】特開2011-023245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ導体部の外周部が絶縁体部で覆われた少なくとも1本の電線を有し且つ前記電線の外周部を囲むシールド編組の外周に配置された絶縁被覆を有するケーブルの前端部に取り付けられる電気コネクタであって、
前記ケーブルの前端部における前記絶縁被覆と前記シールド編組が除去されて露出した前記電線の露出部分の前端に接続される導電性の端子と、
前記端子を保持する絶縁性の内部ハウジングと、
前記電線の前記露出部分を覆う導電性のワイヤシールド部材と、
前記内部ハウジングおよび前記ワイヤシールド部材を覆う導電性のシェル部材と
を備え、
前記ワイヤシールド部材は、前記電線の前記露出部分が延びる方向に互いに離れた2つ以上のシェル部材接点部により前記シェル部材に電気的に接続され、前記2つ以上のシェル部材接点部として、前記端子に近接して配置された少なくとも1つの前側接点部と、前記前側接点部よりも前記ケーブルの前記絶縁被覆に近接して配置された少なくとも1つの後側接点部とを有し、
前記ワイヤシールド部材は、
前記電線の前記露出部分の外周部を囲む筒状部と、
前記筒状部の前端部に連結され且つ前記内部ハウジングの後端部に引っ掛かることにより前記内部ハウジングに対する位置決めを行うための位置決め部と
を有することを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記前側接点部は、前記位置決め部の外側面に配置され、
前記後側接点部は、前記筒状部の外側面に配置されている請求項に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記内部ハウジングを抱えるように前記内部ハウジングの後端部に引っ掛かるU字形状の腕部を有し、
前記腕部の外側面に前記前側接点部が配置されている請求項に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記シェル部材は、
上部が開放された樋形状のシールドシェルと、
前記シールドシェルの上部を覆って閉じ且つ前記シールドシェルに電気的に接続されるカバーシェルと
を有し、前記前側接点部は前記シールドシェルに電気的に接続され、前記後側接点部は前記カバーシェルに電気的に接続されている請求項のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記前側接点部および前記後側接点部は、それぞれ、前記シェル部材との間でバネ接触することにより前記シェル部材に電気的に接続されている請求項のいずれか一項に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気コネクタに係り、特に、絶縁被覆により覆われているケーブルの前端部に取り付けられる電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、図32に示されるように、ツイストペア電線1の端部に接続される電気コネクタ2が開示されている。ツイストペア電線1は、2本の電線3および4を撚り合わせたもので、ツイストにより形成されたループで発生する磁界の向きが、2本の電線において互いに逆方向になるため、電磁誘導の影響を少なくすることができ、電磁誘導ノイズに対して強いことが知られている。
【0003】
ツイストペア電線1を電気コネクタ2に接続する際には、2本の電線3および4の前端部が撚り戻されて、これらの前端部にそれぞれ端子5および6が接続された後、端子5および6が電気コネクタ2のハウジング7に挿入されて保持される。このとき、ツイストペア電線1に形成される撚り戻し部分に起因して、特性インピーダンスが高くなることを防止するために、図33に示されるように、ツイストペア電線1の撚り戻し部分が、導電性を有する電線保持部材8により覆われている。
この電線保持部材8の存在により、ツイストペア電線1の撚り戻し部分における特性インピーダンスが下げられ、インピーダンスの整合を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-71404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電線保持部材8は、ツイストペア電線1の撚り戻し部分における2本の電線3および4の外周部を覆うだけであり、他のいずれの導電部材にも電気的に接続されていないので、ツイストペア電線1に対するシールド効果が不十分であるという問題がある。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、ケーブルの前端部に取り付けられて十分なシールド効果を奏することができる電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る電気コネクタは、それぞれ導体部の外周部が絶縁体部で覆われた少なくとも1本の電線を有し且つ電線の外周部を囲むシールド編組の外周に配置された絶縁被覆を有するケーブルの前端部に取り付けられる電気コネクタであって、ケーブルの前端部における絶縁被覆とシールド編組が除去されて露出した電線の露出部分の前端に接続される導電性の端子と、端子を保持する絶縁性の内部ハウジングと、電線の露出部分を覆う導電性のワイヤシールド部材と、内部ハウジングおよびワイヤシールド部材を覆う導電性のシェル部材とを備え、ワイヤシールド部材は、電線の露出部分が延びる方向に互いに離れた2つ以上のシェル部材接点部によりシェル部材に電気的に接続され、2つ以上のシェル部材接点部として、端子に近接して配置された少なくとも1つの前側接点部と、前側接点部よりもケーブルの絶縁被覆に近接して配置された少なくとも1つの後側接点部とを有し、ワイヤシールド部材は、電線の露出部分の外周部を囲む筒状部と、筒状部の前端部に連結され且つ内部ハウジングの後端部に引っ掛かることにより内部ハウジングに対する位置決めを行うための位置決め部とを有するものである。
【0008】
側接点部は、位置決め部の外側面に配置され、後側接点部は、筒状部の外側面に配置されるように構成することができる。
さらに、位置決め部は、内部ハウジングを抱えるように内部ハウジングの後端部に引っ掛かるU字形状の腕部を有し、腕部の外側面に前側接点部が配置されていてもよい。
【0009】
好ましくは、シェル部材は、上部が開放された樋形状のシールドシェルと、シールドシェルの上部を覆って閉じ且つシールドシェルに電気的に接続されるカバーシェルとを有し、前側接点部はシールドシェルに電気的に接続され、後側接点部はカバーシェルに電気的に接続されている。
前側接点部および後側接点部は、それぞれ、シェル部材との間でバネ接触することによりシェル部材に電気的に接続されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、ケーブルの前端部における絶縁被覆とシールド編組が除去されて露出した電線の露出部分の前端に接続される導電性の端子と、端子を保持する絶縁性の内部ハウジングと、電線の露出部分を覆う導電性のワイヤシールド部材と、内部ハウジングおよびワイヤシールド部材を覆う導電性のシェル部材とを備え、ワイヤシールド部材は、電線の露出部分が延びる方向に互いに離れた2つ以上のシェル部材接点部によりシェル部材に電気的に接続されているので、ケーブルの前端部に取り付けられて十分なシールド効果を奏することができる電気コネクタが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る電気コネクタを斜め後方から見た斜視図である。
図2】実施の形態1に係る電気コネクタを斜め前方から見た斜視図である。
図3】実施の形態1に係る電気コネクタを示す側面図である。
図4】ケーブルの横断面図である。
図5】ケーブルのシールド編組をスリーブの上に折り返した状態を示す斜視図である。
図6】ケーブルの複数の電線の前端部における導体部を露出させた状態を示す斜視図である。
図7】ケーブルの複数の電線に端子を接続した状態を示す斜視図である。
図8】ケーブルの複数の電線に内部ハウジングを組み付けた状態を示す斜視図である。
図9】ケーブルの複数の電線の露出部分にワイヤシールド部材を組み付けた状態を示す斜視図である。
図10】実施の形態1の電気コネクタに用いられるワイヤシールド部材を斜め後方から見た斜視図である。
図11】実施の形態1の電気コネクタに用いられるワイヤシールド部材を斜め前方から見た斜視図である。
図12】実施の形態1の電気コネクタに用いられるシールドシェルを斜め後方から見た斜視図である。
図13】実施の形態1の電気コネクタに用いられるシールドシェルを斜め前方から見た斜視図である。
図14】実施の形態1の電気コネクタに用いられるシールドシェルを示す側面図である。
図15図14のC-C線断面図である。
図16】実施の形態1の電気コネクタに用いられるカバーシェルを斜め後方で且つ上方から見た斜視図である。
図17】実施の形態1の電気コネクタに用いられるカバーシェルを斜め後方で且つ下方から見た斜視図である。
図18】実施の形態1の電気コネクタに用いられるカバーシェルを示す正面図である。
図19図18のD-D線断面図である。
図20】内部ハウジングが取り付けられたケーブルをシールドシェルに位置合わせした状態を示す一部破断斜視図である。
図21図3のA-A線断面図である。
図22】シールドシェルにカバーシェルが取り付けられたときの内部ハウジングが取り付けられたケーブルとカバーシェルとを示す一部破断斜視図である。
図23図3のB-B線断面図である。
図24】実施の形態1におけるワイヤシールド部材のシェル部材接点部の配置位置を示す側面図である。
図25】実施の形態1におけるワイヤシールド部材のシェル部材接点部の配置位置を示す平面図である。
図26】実施の形態2に係る電気コネクタを示す側面図である。
図27】内部ハウジングが取り付けられたケーブルを実施の形態2に係る電気コネクタのシールドシェルに位置合わせした状態を示す一部破断斜視図である。
図28図26のE-E線断面図である。
図29図26のF-F線断面図である。
図30】実施の形態2におけるワイヤシールド部材のシェル部材接点部の配置位置を示す側面図である。
図31】実施の形態2におけるワイヤシールド部材のシェル部材接点部の配置位置を示す平面図である。
図32】従来の電気コネクタにツイストペア電線を接続する状態を示す斜視図である。
図33】従来の電気コネクタに接続されたツイストペア電線に電線保持部材が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1および図2に示されるように、この発明の実施の形態1に係る電気コネクタ11は、ケーブル21の前端部に取り付けられるもので、導電性のシェル部材31を有している。シェル部材31は、上部が開放された樋形状のシールドシェル32と、シールドシェル32の上部を覆って閉じるカバーシェル33とから形成されており、ケーブル21とは反対側を向いたシェル部材31の前端部が開放されている。
【0013】
図2に示されるように、シェル部材31の開放された前端部を通して、ケーブル21の前端部に組み付けられている内部ハウジング41と、内部ハウジング41に保持されている複数の端子51が露出している。
また、シェル部材31は、シェル部材31の後端部に配置されたバレル34を有している。バレル34は、ケーブル21の外周部上にスリーブ61を介して巻き付けられるもので、図3に示されるように、シェル部材31のシールドシェル32の後端部に一体に形成されている。
【0014】
ここで、便宜上、シェル部材31の前端部から後端部に向かう方向を+Y方向、シェル部材31の幅方向をX方向、XY面に垂直で且つシールドシェル32からシールドシェル32の上部を覆うカバーシェル33へ向かう方向を+Z方向と呼ぶこととする。
図1図3において、ケーブル21は、シェル部材31の後端部から+Y方向に伸張している。
【0015】
図4に、XZ面で切断したケーブル21の横断面を示す。ケーブル21は、例えば、4本の電線22と、4本の電線22を束ねるための押さえテープ23と、4本の電線22の外周部を囲むように押さえテープ23の外周部を覆う金属製のシールド編組24と、シールド編組24の外周部を覆う樹脂製の絶縁被覆25とを有している。なお、4本の電線22は、それぞれ、導体部22Aの外周部が絶縁体部22Bにより覆われた構造を有している。
【0016】
このようなケーブル21の前端部に端子接続処理が施されることにより、4本の電線22の導体部22Aに、それぞれ端子51が接続されている。
この端子接続処理においては、まず、図5に示されるように、ケーブル21の-Y方向端部から所定長さの絶縁被覆25が切除され、ケーブル21に残っている絶縁被覆25の-Y方向端部の上に金属製の円筒形状のスリーブ61が配置されると共に、絶縁被覆25の切除により露出したシールド編組24がスリーブ61の外周上に折り返され、さらに、図6に示されるように、押さえテープ23の除去により露出した4本の電線22の-Y方向端部からそれぞれ所定長さの絶縁体部22Bが切除されて導体部22Aが露出され、図7に示されるように、4本の電線22の導体部22Aにそれぞれ端子51が接続される。
【0017】
また、図8に示されるように、4本の電線22にそれぞれ接続された端子51を、内部ハウジング41に収容して保持させることにより、ケーブル21の-Y方向端部に内部ハウジング41が組み付けられている。
さらに、図9に示されるように、内部ハウジング41と、ケーブル21の絶縁被覆25の-Y方向端部の上に配置されたスリーブ61との間における、4本の電線22の露出部分に導電性のワイヤシールド部材71が組み付けられている。ワイヤシールド部材71の存在により、4本の電線22の露出部分における特性インピーダンスが下げられ、インピーダンスの整合を図ることが可能となる。
このようにして、ケーブル21の-Y方向端部に組み付けられた内部ハウジング41およびワイヤシールド部材71が、図1図3に示されるシェル部材31の内部に収容されている。
【0018】
電気コネクタ11に具備されたワイヤシールド部材71は、1枚の金属板から成形されたもので、図10および図11に示されるように、筒状部72と、筒状部72の-Y方向端部に連結された位置決め部73とを有している。
筒状部72は、Y方向に沿って延びる中心軸を有するように金属板を丸めることにより形成され、図8に示される、内部ハウジング41と、ケーブル21の絶縁被覆25の-Y方向端部の上に配置されたスリーブ61との間における、4本の電線22の露出部分を覆うものである。
【0019】
位置決め部73は、XZ面内にU字形状に延びる腕部74を有し、U字形状の腕部74の底部において筒状部72の-Y方向端部に連結されている。U字形状の腕部74が内部ハウジング41を抱えるように、内部ハウジング41の+Y方向の後端部に引っ掛かることにより、内部ハウジング41に対するワイヤシールド部材71の位置決めがなされる。
【0020】
シェル部材31のシールドシェル32の構成を図12図14に示す。シールドシェル32は、XY面に沿って延びる平板状の底壁部32Aと、底壁部32Aの+X方向端部および-X方向端部からそれぞれYZ面に沿って+Z方向に立ち上がる一対の平板状の側壁部32Bとを有する樋形状の部材であり、底壁部32Aの+Y方向端部にバレル34が連結されている。なお、図12図14は、バレル34が、かしめられる前の状態を示している。
【0021】
一対の側壁部32Bには、それぞれ、側壁部32BをU字状に切り込むことにより形成された板バネ部32Cが配置されており、板バネ部32Cの先端に、シールドシェル32の内部に向かって突出する接点32Dが形成されている。これらの接点32Dは、ワイヤシールド部材71のU字形状の腕部74にバネ接触するためのものである。
また、一対の側壁部32Bの外面には、シールドシェル32に被せられるカバーシェル33を保持するための複数の突起32Fが形成されている。
【0022】
バレル34は、円筒形状の一部を形成するように湾曲された湾曲部34Aと、湾曲部34Aの湾曲方向における両端部からそれぞれXZ面内で立ち上がる一対の平板部34Bとを有している。
図15は、シールドシェル32をXZ面により切断した断面図である。一対の側壁部32Bの板バネ部32Cの接点32Dが、シールドシェル32の内部に突出する状態が示されている。
【0023】
シェル部材31のカバーシェル33の構成を図16図19に示す。カバーシェル33は、XY面に沿って延びる平板状の上壁部33Aと、上壁部33Aの+X方向端部および-X方向端部からそれぞれYZ面に沿って-Z方向に延びる一対の平板状の側壁部33Bとを有している。
カバーシェル33の内部には、カバーシェル33の+Y方向端部近傍において、-Z方向に垂下された一対の板バネ部33Cが形成されており、これら板バネ部33Cの-Z方向端部に、それぞれ、接点33Dが形成されている。図18に示されるように、一対の板バネ部33Cの接点33Dは、互いにX方向に対向している。
【0024】
また、一対の側壁部33Bには、シールドシェル32の複数の突起32Fが挿入される複数の嵌合孔33Fが形成されている。
さらに、上壁部33Aの+Y方向端部から+Y方向に舌状部33Gが延びている。舌状部33Gは、シールドシェル32のバレル34がスリーブ61の外周部上に巻き付けられる際に、スリーブ61とバレル34との間に配置されるものである。
【0025】
図9に示されるようにケーブル21の-Y方向端部に組み付けられた内部ハウジング41を、シールドシェル32の内部に収容し、シールドシェル32の上部をカバーシェル33により覆って、シールドシェル32の複数の突起32Fをカバーシェル33の複数の嵌合孔33Fに嵌合することにより、シェル部材31が組み立てられる。
【0026】
このとき、ケーブル21は、折り返されたシールド編組24により覆われているスリーブ61がバレル34の湾曲部34Aの上に重なるように位置合わせされ、カバーシェル33の舌状部33Gが、折り返されたシールド編組24を介してスリーブ61の上に重なる状態となる。
ここで、図示しないアプリケータを用いることにより、バレル34の一対の平板部34Bが湾曲部34Aに連続する円筒形状の一部を形成するように湾曲されて、シールド編組24により覆われているスリーブ61の外周部およびカバーシェル33の舌状部33Gの上に重なるように巻き付け、さらに、バレル34が、スリーブ61と共に、かしめられる。これにより、シェル部材31にケーブル21のシールド編組24が電気的に接続され、ケーブル21の-Y方向の前端部に、図1図3に示される電気コネクタ11が取り付けられる。
【0027】
電気コネクタ11の内部では、図20および図21に示されるように、シールドシェル32の一対の板バネ部32Cの接点32Dが、ワイヤシールド部材71のU字形状の腕部74の外側面に所定の接触圧で接触し、シールドシェル32とワイヤシールド部材71とが互いに電気的に接続されている。
また、図22および図23に示されるように、カバーシェル33の一対の板バネ部33Cの接点33Dが、ワイヤシールド部材71の筒状部72の+Y方向端部近傍の外側面に所定の接触圧で接触し、カバーシェル33とワイヤシールド部材71とが互いに電気的に接続されている。
【0028】
図24および図25に示されるように、ワイヤシールド部材71のU字形状の腕部74の外側面には、シールドシェル32の一対の板バネ部32Cの接点32Dに接触する一対の前側接点部75Aが規定され、ワイヤシールド部材71の筒状部72の+Y方向端部近傍の外側面には、カバーシェル33の一対の板バネ部33Cの接点33Dに接触する一対の後側接点部75Bが規定されている。すなわち、ワイヤシールド部材71は、一対の前側接点部75Aと一対の後側接点部75Bとを含む、計4点のシェル部材接点部においてシェル部材31に接触することで、シェル部材31に電気的に接続されている。
【0029】
ここで、一対の前側接点部75Aと一対の後側接点部75Bは、筒状部72により覆われているケーブル21の4本の電線22の伸張方向であるY方向に互いに離れた位置に配置されている。
このため、ケーブル21の4本の電線22に電流が流れる際に、4本の電線22の露出部分を覆うワイヤシールド部材71に一対の前側接点部75Aと一対の後側接点部75Bとの間を帰還電流が流れることとなる。
【0030】
仮に、1つの接点部のみでワイヤシールド部材71とシェル部材31とが電気的に接続されるものとすると、ワイヤシールド部材71により帰還電流が回り込むスタブが形成されてしまい、帰還電流の経路が乱れるために、十分なシールド効果を得ることができなくなる。
これに対して、実施の形態1に係る電気コネクタ11においては、ワイヤシールド部材71に一対の前側接点部75Aと一対の後側接点部75Bとの間を帰還電流が流れるため、帰還電流の経路が、ケーブル21の4本の電線22を流れる電流の経路に近接し且つ整うこととなり、十分なシールド効果を得ることが可能となる。
【0031】
上記の実施の形態1では、シェル部材31に接触するワイヤシールド部材71のシェル部材接点部が、一対の前側接点部75Aと一対の後側接点部75Bとを含んでいるが、これに限るものではなく、Y方向に互いに離れた少なくとも1つの前側接点部75Aと少なくとも1つの後側接点部75Bとを含むシェル部材接点部において、ワイヤシールド部材71がシェル部材31に電気的に接続されていれば、同様の効果を得ることができる。
また、Y方向に互いに離れた3箇所以上の接点部を含むシェル部材接点部において、ワイヤシールド部材71がシェル部材31に電気的に接続されていてもよい。
【0032】
実施の形態2
図26に実施の形態2に係る電気コネクタ11Aを示す。
この電気コネクタ11Aは、実施の形態1の電気コネクタ11において、シールドシェル32の代わりにシールドシェル82を用いたものであり、その他の部材は、実施の形態1の電気コネクタ11に用いられた部材と同一である。実施の形態2においては、シールドシェル82と、実施の形態1の電気コネクタ11におけるカバーシェル33とにより、シェル部材81が形成されている。
【0033】
実施の形態2におけるシェル部材81のシールドシェル82は、図27に示されるように、実施の形態1におけるシールドシェル32と同様に、XY面に沿って延びる平板状の底壁部82Aと、底壁部82Aの+X方向端部および-X方向端部からそれぞれYZ面に沿って+Z方向に立ち上がる一対の平板状の側壁部82Bとを有し、底壁部82Aの+Y方向端部にバレル34が連結されている。
一対の側壁部82Bには、それぞれ、側壁部82BをU字状に切り込むことにより形成された板バネ部82Cが配置され、板バネ部82Cの先端に、シールドシェル82の内部に向かって突出する接点82Dが形成されている。板バネ部82Cは、ワイヤシールド部材71の筒状部72の-Y方向端部近傍に相当するY方向位置に配置されている。
【0034】
図28に示されるように、シールドシェル82の一対の板バネ部82Cは、シールドシェル82の内部に向かって屈曲することにより、板バネ部82Cの先端の接点82Dが筒状部72の外周面に所定の接触圧で接触している。これにより、シールドシェル82とワイヤシールド部材71とが互いに電気的に接続されている。
【0035】
なお、カバーシェル33は、実施の形態1において用いられたカバーシェル33と同一のもので、図16~19に示されるように、カバーシェル33の内部で且つカバーシェル33の+Y方向端部近傍に配置された一対の板バネ部33Cを有し、それぞれの板バネ部33Cの-Z方向端部に接点33Dが形成されている。そして、図29に示されるように、カバーシェル33の一対の板バネ部33Cの接点33Dが、ワイヤシールド部材71の筒状部72の+Y方向端部近傍の外側面に所定の接触圧で接触することにより、カバーシェル33とワイヤシールド部材71とが互いに電気的に接続されている。
【0036】
すなわち、図30および図31に示されるように、ワイヤシールド部材71の筒状部72の-Y方向端部近傍の外側面に、シールドシェル82の一対の板バネ部82Cの接点82Dに接触する一対の前側接点部75Aが規定されると共に、ワイヤシールド部材71の筒状部72の+Y方向端部近傍の外側面に、カバーシェル33の一対の板バネ部33Cの接点33Dに接触する一対の後側接点部75Bが規定される。
このように、ワイヤシールド部材71が、筒状部72の-Y方向端部近傍と+Y方向端部近傍に配置されたシェル部材接点部おいてシェル部材81に電気的に接続されていても、筒状部72により覆われているケーブル21の4本の電線22の伸張方向であるY方向に互いに離れた位置に配置された前側接点部75Aと後側接点部75Bとの間を帰還電流が流れることとなり、帰還電流の経路が、ケーブル21の4本の電線22を流れる電流の経路に近接し且つ整うので、十分なシールド効果を得ることが可能となる。
【0037】
なお、上記の実施の形態1および2においては、シェル部材接点部を構成するワイヤシールド部材71の前側接点部75Aおよび後側接点部75Bが、それぞれ、シェル部材31または81との間でバネ接触することにより、シェル部材31または81に電気的に接続されているが、これに限るものではなく、かしめによりワイヤシールド部材71とシェル部材31または81とが電気的に接続されていてもよい。
【0038】
また、上記の実施の形態1および2において、ケーブル21は、4本の電線22を有しているが、少なくとも1本の電線22を有していればよい。
【符号の説明】
【0039】
1 ツイストペア電線、2 電気コネクタ、3,4 電線、5,6 端子、7 ハウジング、8 電線保持部材、11,11A 電気コネクタ、21 ケーブル、22 電線、22A 導体部、22B 絶縁体部、23 押さえテープ、24 シールド編組、25 絶縁被覆、31,81 シェル部材、32,82 シールドシェル、32A,82A 底壁部、32B,33B,82B 側壁部、32C,33C,82C 板バネ部、32D,33D,82D 接点、32F 突起、33 カバーシェル、33A 上壁部、33F 嵌合孔、33G 舌状部、34 バレル、34A 湾曲部、34B 平板部、41 内部ハウジング、51 端子、61 スリーブ、71 ワイヤシールド部材、72 筒状部、73 位置決め部、74 腕部、75A 前側接点部(シェル部材接点部)、75B 後側接点部(シェル部材接点部)。
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