(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】水素製造システム、水素製造装置制御プログラム、及び、水素製造装置の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
C01B 3/38 20060101AFI20221219BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20221219BHJP
B01D 53/047 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C01B3/38
C01B3/56 Z
B01D53/047
(21)【出願番号】P 2019004449
(22)【出願日】2019-01-15
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯沼 広基
(72)【発明者】
【氏名】櫛 拓人
(72)【発明者】
【氏名】江口 晃平
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135244(JP,A)
【文献】特開2005-272598(JP,A)
【文献】特開2017-088490(JP,A)
【文献】特開2009-179487(JP,A)
【文献】特開2017-088488(JP,A)
【文献】特開2007-261909(JP,A)
【文献】特許第6125140(JP,B1)
【文献】特表2016-511526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-6/34
H01M 8/00-8/0297
H01M 8/08-8/2495
B01D 53/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を改質し水素を主成分とした改質ガスを生成する改質器からの前記改質ガスを、水素リッチガスと不純物を含むオフガスとに分離し、前記オフガスを送出するオフガス送出路及び前記水素リッチガスを送出する水素ガス送出路を有する水素精製器、を有する複数の水素製造装置と、
前記水素ガス送出路から分岐され、前記水素リッチガスを他の水素製造装置の前記水素精製器へ供給する他機洗浄ガス供給路と、
を備えた水素製造システム。
【請求項2】
前記複数の水素製造装置の各々の前記水素精製器は、前記不純物を吸着する吸着部を有し、
前記複数の水素製造装置の内、洗浄対象となる被洗浄水素製造装置の前記吸着部への前記改質ガスの流入を止めると共に、前記複数の水素製造装置の内、前記被洗浄水素製造装置と異なる他の水素製造装置から前記他機洗浄ガス供給路を介して前記被洗浄水素製造装置の前記吸着部へ前記水素リッチガスを他機洗浄ガスとして供給して前記吸着部の洗浄処理を行う洗浄実行部、
を備えた、請求項1に記載の水素製造システム。
【請求項3】
前記洗浄実行部は、前記洗浄処理に使用された後の前記水素リッチガスを、前記被洗浄水素製造装置の前記水素精製器から前記オフガス送出路へ送出する、請求項2に記載の水素製造システム。
【請求項4】
前記洗浄実行部は、前記他の水素製造装置の前記水素ガス送出路における水素リッチガスの水素純度が、
製品水素純度の閾値よりも低い洗浄純度以上の場合に、前記水素リッチガスを、前記被洗浄水素製造装置を洗浄する他機洗浄ガスとして前記被洗浄水素製造装置の前記水素精製器へ供給する、請求項2または請求項3に記載の水素製造システム。
【請求項5】
複数の水素製造装置の内の一部の水素製造装置において、改質器から供給される水素を主成分とした改質ガスを、水素精製器で水素リッチガスと不純物を含むオフガスとに分離し、前記オフガスをオフガス送出路へ送出すると共に、前記水素リッチガスを水素ガス送出路へ送出し、
前記一部の水素製造装置の前記水素ガス送出路から送出された前記水素リッチガスを、前記複数の水素製造装置の内の洗浄対象となる被洗浄水素製造装置の他機洗浄ガスとして、前記被洗浄水素製造装置の水素精製器へ供給して洗浄処理を行う、水素製造装置の洗浄方法。
【請求項6】
前記複数の水素製造装置の各々の前記水素精製器は、前記不純物を吸着する吸着部を有し、
前記洗浄処理は、前記被洗浄水素製造装置の前記吸着部への前記改質ガスの流入を止めると共に、前記被洗浄水素製造装置と異なる他の水素製造装置から前記被洗浄水素製造装置の前記吸着部へ前記水素リッチガスを他機洗浄ガスとして供給する、請求項5に記載の水素製造装置の洗浄方法。
【請求項7】
前記洗浄処理に使用された後の前記水素リッチガスを、前記被洗浄水素製造装置の前記水素精製器から前記オフガス送出路へ送出する、請求項5または請求項6に記載の水素製造装置の洗浄方法。
【請求項8】
前記被洗浄水素製造装置と異なる他の水素製造装置の前記水素ガス送出路における水素リッチガスの水素純度が、
製品水素純度の閾値よりも低い洗浄純度以上の場合に、前記水素リッチガスを、前記被洗浄水素製造装置を洗浄する他機洗浄ガスとして前記被洗浄水素製造装置の前記水素精製器へ供給する、請求項5~請求項7のいずれか1項に記載の水素製造装置の洗浄方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の水素製造装置の各部として機能させるための水素製造装置制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の水素製造装置を有する水素製造システム、水素製造装置制御プログラム、及び、水素製造装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素を得るための水素製造装置としては、原料炭化水素を改質装置で改質ガスに改質した後、PSA(Pressure Swing Adsorption)器へ供給して改質ガスを精製することにより高純度の水素を得るものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このように、水素精製器を用いる場合、水素以外の物質が水素精製器内に残留することがあるため、起動時等に水素精製器を洗浄して水素精製器内の不純物を除去することが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の洗浄には水素ガスが用いられるが、洗浄用の水素ガスを供給するために水素ガスタンク等を設置すると、装置構成が複雑になる。当該水素精製器の洗浄を簡易な構成で行うことが求められる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、水素精製器の洗浄を簡易な構成で行うことができる水素製造システム、水素製造装置制御プログラム、及び、水素製造装置の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る水素製造システムは、原料を改質し水素を主成分とした改質ガスを生成する改質器からの前記改質ガスを、水素リッチガスと不純物を含むオフガスとに分離し、前記オフガスを送出するオフガス送出路及び前記水素リッチガスを送出する水素ガス送出路を有する水素精製器、を有する複数の水素製造装置と、前記水素ガス送出路から分岐され、前記水素リッチガスを他の水素製造装置の前記水素精製器へ供給する他機洗浄ガス供給路と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る水素製造システムは、複数の水素製造装置を備えている。各々の水素製造装置では、改質器において原料が改質されて改質ガスが生成され、水素精製器において、改質ガスが水素リッチガスと不純物を含むオフガスとに分離される。水素精製器には、分離されたオフガスを送出するオフガス送出路、水素リッチガスを送出する水素ガス送出路を有している。そして、複数の水素製造装置の間には、水素ガス送出路から送出された水素リッチガスを、他の水素製造装置の水素精製器へ供給する他機洗浄ガス供給路が設けられている。
【0008】
請求項1に係る水素製造システムによれば、他機洗浄ガス供給路を介して複数の水素製造装置の内の一部の水素製造装置から他の水素製造装置の水素精製器へ水素リッチガスを供給することができる。したがって、水素精製器の洗浄用の水素ガスを他機から得ることができ、簡易な構成で水素精製器の洗浄を行うことができる。
【0009】
請求項2に係る水素製造システムは、前記複数の水素製造装置の各々の前記水素精製器は、前記不純物を吸着する吸着部を有し、前記複数の水素製造装置の内、洗浄対象となる被洗浄水素製造装置の前記吸着部への前記改質ガスの流入を止めると共に、前記複数の水素製造装置の内、前記被洗浄水素製造装置と異なる他の水素製造装置から前記他機洗浄ガス供給路を介して前記被洗浄水素製造装置の前記吸着部へ前記水素リッチガスを他機洗浄ガスとして供給して前記吸着部の洗浄処理を行う洗浄実行部、を備えている。
【0010】
請求項2に係る水素製造システムでは、洗浄実行部により洗浄処理が行われる。洗浄処理は、被洗浄水素製造装置の吸着部への改質ガスの流入が止められると共に、他機洗浄ガス供給路を介して、他の水素製造装置から被洗浄水素製造装置の吸着部へ水素リッチガスが他機洗浄ガスとして供給されることにより行われる。このように、他の水素製造装置で精製された水素リッチガスを、被洗浄水素製造装置の水素精製器の洗浄に用いることにより、簡易な構成で水素精製器の洗浄を行うことができる。
【0011】
請求項3に係る水素製造システムは、前記洗浄実行部は、前記洗浄処理に使用された後の前記水素リッチガスを、前記被洗浄水素製造装置の前記水素精製器から前記オフガス送出路へ送出する。
【0012】
請求項3に係る水素製造システムによれば、洗浄処理において使用された後の水素リッチガスがオフガス路へ送出されるので、不純物と共に送出される水素リッチガスを、通常の水素精製処理において分離されたオフガスと同様に処理することができる。
【0013】
請求項4に係る水素製造システムは、前記洗浄実行部は、前記他の水素製造装置の前記水素ガス送出路における水素リッチガスの水素純度が、製品水素純度の閾値よりも低い洗浄純度以上の場合に、前記水素リッチガスを、前記被洗浄水素製造装置を洗浄する他機洗浄ガスとして前記被洗浄水素製造装置の前記水素精製器へ供給する。
【0014】
請求項4に係る水素製造システムによれば、洗浄純度以上の水素リッチガスが被洗水素製造装置を洗浄する他機洗浄ガスとして供給されるので、洗浄処理を効果的に行うことができる。
【0015】
請求項5に係る水素製造装置の洗浄方法は、複数の水素製造装置の内の一部の水素製造装置において、改質器から供給される水素を主成分とした改質ガスを、水素精製器で水素リッチガスと不純物を含むオフガスとに分離し、前記オフガスをオフガス送出路へ送出すると共に、前記水素リッチガスを水素ガス送出路へ送出し、前記1の水素製造装置の前記水素ガス送出路から送出された前記水素リッチガスを、前記複数の水素製造装置の内の洗浄対象となる被洗浄水素製造装置の他機洗浄ガスとして、前記被洗浄水素製造装置の水素精製器へ供給して洗浄処理を行う。
【0016】
請求項5に係る水素製造装置の洗浄方法では、複数の水素製造装置の内の一部の水素製造装置の水素精製器で精製された水素リッチガスを、洗浄対象となる被洗浄水素製造装置の他機洗浄ガスとして用いる。したがって、水素精製器の洗浄用の水素ガスを他機から得ることができ、簡易な構成で水素精製器の洗浄を行うことができる。なお、一部の水素製造装置とは、複数の水素製造装置の内の1機であってもよいし、2機以上であってもよいが、全機ではないことを意味している。
【0017】
請求項6に係る水素製造装置の洗浄方法は、前記複数の水素製造装置の各々の前記水素精製器は、前記不純物を吸着する吸着部を有し、前記洗浄処理は、前記被洗浄水素製造装置の前記吸着部への前記改質ガスの流入を止めると共に、前記被洗浄水素製造装置と異なる他の水素製造装置から前記被洗浄水素製造装置の前記吸着部へ前記水素リッチガスを他機洗浄ガスとして供給する。
【0018】
請求項6に係る水素製造装置の洗浄方法によれば、被洗浄水素製造装置の吸着部への改質ガスの流入を止めると共に、被洗浄水素製造装置と異なる他の水素製造装置から被洗浄水素製造装置の吸着部へ前記水素リッチガスを他機洗浄ガスとして供給することにより、洗浄処理を実行することができる。
【0019】
請求項7に係る水素製造装置の洗浄方法は、前記洗浄処理に使用された後の前記水素リッチガスを、前記被洗浄水素製造装置の前記水素精製器から前記オフガス送出路へ送出する。
【0020】
請求項7に係る水素製造装置の洗浄方法によれば、洗浄処理において使用された後の水素リッチガスがオフガス路へ送出されるので、不純物をと共に送出される水素リッチガスを、通常の水素精製処理において分離されたオフガスと同様に処理することができる。
【0021】
請求項8に係る水素製造装置の洗浄方法は、前記被洗浄水素製造装置と異なる他の水素製造装置の前記水素ガス送出路における水素リッチガスの水素純度が、製品水素純度の閾値よりも低い洗浄純度以上の場合に、前記水素リッチガスを、前記被洗浄水素製造装置を洗浄する他機洗浄ガスとして前記被洗浄水素製造装置の前記水素精製器へ供給する。
【0022】
請求項8に係る水素製造装置の洗浄方法によれば、洗浄純度以上の水素リッチガスが被洗浄水素製造装置を洗浄する他機洗浄ガスとして供給されるので、洗浄処理を効果的に行うことができる。
【0023】
請求項9に係る水素製造装置制御プログラムは、コンピュータを、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の水素製造装置の各部として機能させるためのプログラムである。
【0024】
請求項9に係る水素製造装置制御プログラムによれば、他機洗浄ガス供給路を介して複数の水素製造装置の内の一部の水素製造装置から他の水素製造装置の水素精製器へ水素リッチガスを供給するように、各水素製造装置を制御することができる
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、簡易な構成で水素精製器の洗浄を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係る水素製造装置を示した概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る水素製造装置の多重筒型改質器を示した断面図である。
【
図3】本実施形態に係る水素製造装置の制御部とその接続部材とのブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る水素精製器の概略構成図である。
【
図5】本実施形態の他機洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態の変形例に係る他機洗浄処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態の変形例に係る水素製造システムの一部を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る水素製造装置システムの一例を図面に従って説明する。
【0028】
本実施形態の水素製造システム70は、複数の水素製造装置10を備えている。
図1には、2機の水素製造装置10を備えた例が示されており、各々の水素製造装置10は同一構成である。本実施形態では、各水素製造装置10を区別するために、水素製造装置10A、10Bと称する。
【0029】
本実施形態に係る水素製造装置10(10A、10B)は、多重筒型改質器12、圧縮機14、水素精製器16、オフガスタンク18を備えている。また、昇圧前水分離部30、昇圧後水分離部32、及び、燃焼排ガス水分離部34を備えている。この水素製造装置10は、炭化水素原料から水素を製造するものであり、本実施形態では、炭化水素原料の一例としてメタンを主成分とする都市ガスが用いられる場合について説明する。なお、
図1では、水素製造装置10の構成を概略的に示しており、水素製造装置10は、他の構成を含んでいてもよい。
【0030】
また、水素製造システム70は、各々の水素製造装置10を制御する制御部60を備えている(
図3参照)。制御部60は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)60A、ROM(Read Only Memory)60B、RAM(Random Access Memory)60C、ストレージ60D、入出力インターフェース(I/F)60E、を有する。各構成は、バス62を介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU60Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU60Aは、ROM60Bまたはストレージ60Dからプログラムを読み出し、RAM60Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU60Aは、ROM60Bまたはストレージ60Dに記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0032】
ROM60Bは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM60Cは、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。ストレージ60Dは、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、および各種データを格納する。本実施形態では、ROM60Bまたはストレージ60Dには、後述する各水素製造装置10A、10Bの水素精製器16を洗浄する他機洗浄処理についてのプログラム等が格納されている。入出力I/F60Eは、信号線を介して、各水素製造装置10の、後述する開閉弁V1~V5、水素純度センサ46、第1切換部15、第2切換部17と接続されている。
【0033】
(改質器)
多重筒型改質器12は、
図2に示されるように、多重に配置された複数の筒状壁20A、20B、20C、20Dを有している。複数の筒状壁20A、20B、20C、20Dは、例えば円筒状や楕円筒状に形成される。複数の筒状壁20A、20B、20C、20Dのうち内側から一番目の筒状壁20Aの内部には、燃焼空間である燃焼部21が形成されている。一番目の筒状壁20Aと二番目の筒状壁20Bとの間には、燃焼排ガス流路23が形成されている。また、二番目の筒状壁20Bと三番目の筒状壁20Cとの間には、第一流路24が形成されている。さらに、三番目の筒状壁20Cと四番目の筒状壁20Dとの間には、第二流路25が形成されている。なお、多重筒型改質器12は、改質器の一例であり、他の形態の改質器が用いられてもよい。
【0034】
第一流路24の上部は、予熱流路24Aとして形成されており、予熱流路24Aには螺旋部材24Bが設けられている。この螺旋部材24Bにより、予熱流路24Aは、螺旋状に形成されている。予熱流路24Aの上端部には、原料として都市ガスを供給するための原料供給管P1、及び、改質水を供給するための改質水供給管P9が接続されている。予熱流路24Aには、原料供給管P1から都市ガスが供給され、改質水供給管P9から改質水が供給される。都市ガス及び改質水は、予熱流路24Aを上側から下側に流れ、二番目の筒状壁20Bを介して燃焼排ガスと熱交換され水が気化される。この予熱流路24Aでは、都市ガス及び気相の改質用水(水蒸気)が混合されることにより、混合ガスが生成される。
【0035】
なお、本実施形態では、原料として都市ガスを用いるが、水蒸気改質が可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。
【0036】
第一流路24における予熱流路24Aの下側には、改質触媒層24Cが設けられている。改質触媒層24Cには、都市ガスを水蒸気改質して水素を主成分とする改質ガスを生成するための触媒が設けられている。予熱流路24Aにて生成された混合ガスは、改質触媒層24Cへ供給される。改質触媒層24Cでは、混合ガスが燃焼排ガス流路23を流れる燃焼排ガスにより加熱され、水蒸気改質反応によって、水素を主成分とする改質ガスが生成される。
【0037】
第二流路25は、第一流路24の径方向外側に配置されており、第二流路25の下端部は、第一流路24の下端部と連通されている。第二流路25には、予熱流路24Aに対応する位置にCO変成触媒層26及びCO選択酸化触媒層27が形成されている。CO変成触媒層26では、改質ガスに含まれる一酸化炭素と水蒸気が反応して、水素と二酸化炭素に変換され、一酸化炭素が低減される。
【0038】
CO選択酸化触媒層27は、CO変成触媒層26よりも下流側に配置されている。CO変成触媒層26とCO選択酸化触媒層27の間には、酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給管P2Bが接続されている。CO選択酸化触媒層27では、一酸化炭素が酸素と反応して二酸化炭素に変換され、一酸化炭素が除去される。CO選択酸化触媒層27の下流側で第二流路25の上端部には、改質ガス排出管P3が接続されている。改質ガスは、CO選択酸化触媒層27で一酸化炭素が除去された後、改質ガス排出管P3から送出される。
【0039】
なお、本実施形態では、CO選択酸化触媒層27を設けたが、CO選択酸化触媒層27は必須ではなく、CO選択酸化触媒層27を設けない構成とすることもできる。この場合には、酸化剤ガス供給管P2Bも不要となる。
【0040】
燃焼部21の上部には、バーナ22が下向きに配置されている。バーナ22には、オフガス管P7が接続されており、後述するオフガスがオフガス管P7から燃料として供給される。さらに、この燃焼部21の上端部には、燃焼用空気を供給するための空気供給管P2が接続されている。バーナ22には、さらに原料供給管P1から分岐された原料分岐管P1Aが接続されている。原料分岐管P1Aには、空気供給管P2から分岐された空気分岐管P2Aが接続されている。バーナ22には、都市ガスに空気が混合された気体が、オフガスとは別に供給される。燃焼用のオフガスと都市ガスは、いずれか一方、または両方が、必要に応じて供給される。
【0041】
燃焼排ガス流路23は、燃焼部21の径方向外側に形成され、燃焼排ガス流路23の下端部は、燃焼部21と連通されている。燃焼排ガス流路23の上端部には、ガスを排出するためのガス排出管P10が接続されている。ガス排出管P10は、多重筒型改質器12の上端面に接続されている。燃焼部21から排出された燃焼排ガスは、燃焼排ガス流路23を下側から上側に流れ、ガス排出管P10を通じて多重筒型改質器12の外に排出される。
【0042】
多重筒型改質器12から改質ガス排出管P3へ送出された改質ガスは、
図1に示したように、昇圧前水分離部30、圧縮機14、昇圧後水分離部32、及び水素精製器16をこの順番で流れる。つまり、ガスの流れ方向において、上流側から下流側に、多重筒型改質器12、昇圧前水分離部30、圧縮機14、昇圧後水分離部32、及び水素精製器16がこの順番で配置されている。
【0043】
(昇圧前分離部)
昇圧前水分離部30は、上部が気体室30Aとされ、下部が液体室30Bとされている。気体室30Aには、改質ガス排出管P3の下流端が接続されている。また、気体室30Aには、連絡流路管P4の上流端が接続されている。液体室30Bの底部には水送出口30Cが形成されており、水送出口30Cには改質ガス水配管P8Aが接続されている。改質ガス中の水蒸気は、昇圧前水分離部30の上流に配置された熱交換器HE1において冷却されることによって凝縮される。凝縮により改質ガスから分離された水は、液体室30Bに貯留され、改質ガス水配管P8Aへ送出される。
【0044】
(圧縮機)
圧縮機14には、昇圧前水分離部30からの改質ガスが流れる連絡流路管P4と、昇圧後水分離部32へ供給される改質ガスが流れる連絡流路管P5とが接続されている。圧縮機14は、昇圧前水分離部30から供給された改質ガスを圧縮して昇圧し、昇圧後水分離部32へ供給する。
【0045】
(昇圧後分離部)
昇圧後水分離部32は、上部が気体室32Aとされ、下部が液体室32Bとされている。気体室32Aには、連絡流路管P5の下流端が接続されている。また、気体室32Aには、連絡流路管P6の上流端が接続されている。液体室32Bの底部には水送出口32Cが形成されており、水送出口32Cには改質ガス水配管P8Bが接続されている。改質ガス中の水蒸気は、昇圧後水分離部32の上流に配置された熱交換器HE2において冷却されることによって凝縮される。凝縮により改質ガスから分離された水は、液体室32Bに貯留され、改質ガス水配管P8Bへ送出される。連絡流路管P6の下流端は、水素精製器16と接続されている。
【0046】
昇圧後水分離部32よりも下流側、水素精製器16よりも上流側には、バッファタンク36が設けられている。バッファタンク36は、昇圧後水分離部32から供給される改質ガスを蓄積する。バッファタンク36で一旦蓄積された改質ガスは、水素精製器16へ送出される。連絡流路管P6のバッファタンク36よりも下流側には、開閉弁V5が設けられている。
【0047】
(水素精製器)
水素精製器16には、昇圧後水分離部32からの改質ガスが流れる連絡流路管P6の下流端が接続されている。水素精製器16には、一例として、PSA装置が使用される。水素精製器16は、
図4に示すように、2機の吸着部16A、16Bを備えている。2機の吸着部16A、16Bの各々には、第1切換部15を介して連絡流路管P6の下流端、及びオフガス管P7の上流端が接続されている。また、2機の吸着部16A、16Bの各々には、第2切換部17を介して水素ガス送出管P11の上流端、及び洗浄ガス管P12の下流端が接続されている。洗浄ガス管P12には、開閉弁V4(
図1参照)が設けられている。
【0048】
第1切換部15と吸着部16Aとは、配管P15Aを介して接続されており、第1切換部15と吸着部16Bとは、配管P15Bを介して接続されている。また、第2切換部17と吸着部16Aとは、配管P17Aを介して接続されており、第2切換部17と吸着部16Bとは、配管P17Bを介して接続されている。
【0049】
第1切換部15、第2切換部17は、接続路、複数の電磁弁を含んで構成されており、信号線により制御部60と接続されている。第1切換部15、第2切換部17内の各電磁弁が制御部60により制御され、吸着部16A、16Bへのガスの流入/送出、及び停止が切換えられる。
【0050】
吸着部16A、16Bには、吸着剤が収容されており、吸着部16A、16Bで不純物が吸着されることにより、改質ガスが水素リッチガスと不純物を含むオフガスとに分離される。改質ガスが、配管P15A、15Bの接続側から流入し、配管P17A、17Bの接続側へ至るまでに、不純物が吸着されて精製される。吸着部16A、16Bを透過した水素リッチガスは、水素精製器16の水素リッチガス出口側に配設される水素ガス送出管P11へ送出される。吸着部16A、16Bで吸着された不純物は、吸着部16A、16Bが所定のタイミングで減圧されることにより吸着剤から脱着され、オフガス出口側に配設された、後述するオフガス管P7へ送出される。
【0051】
図1に示されるように、水素ガス送出管P11は、水素供給管P11A、オフガス合流管P11B、及び、他機洗浄ガス供給管P11Cに3分岐されている。
【0052】
水素ガス送出管P11の当該3分岐部分よりも上流側には、水素純度センサ46が設けられている。水素純度センサ46では、水素ガス送出管P11へ送出された水素リッチガスの水素純度が検出される。検出された純度が高いほど水素濃度は高くなる。水素純度センサ46は、信号線により制御部60と接続されており、検出した水素純度に関するデータ(水素純度データ)が制御部60へ送られる。水素の純度を検出する水素純度センサ46としては、例えば、薄膜円筒の共振周波数が周囲のガス密度により変化することを原理として用いた水素純度計や、光学的に水素の純度を検出するセンサ等、水素の純度が検出可能であれば何れのセンサを用いてもよい。
【0053】
水素供給管P11Aには、開閉弁V1が設けられている。開閉弁V1は、水素純度センサ46で検出される水素純度データD1の値が閾値α以上の場合に開放され、製品水素が水素供給管P11Aへ送出される。閾値αは、要求される水素純度に応じて設定することができ、例えば、99.99%に設定することができる。製品水素は、不図示のタンクへ貯留されたり、水素供給ラインへ送られたりする。
【0054】
他機洗浄ガス供給管P11Cは、他の水素製造装置10(水素製造装置10Aであれば他の水素製造装置は水素製造装置10B、水素製造装置10Bであれば他の水素製造装置は水素製造装置10A)へ延出され、他の水素製造装置10の洗浄ガス管P12と接続されている。
【0055】
他機洗浄ガス供給管P11Cには、開閉弁V3が設けられている。開閉弁V3は、後述する他機洗浄処理のときに、他機洗浄ガスを供給する水素製造装置10において開放される。
【0056】
なお、本実施形態では、水素純度センサ46で水素ガス送出管P11へ送出された水素リッチガスの水素純度を検出したが、閾値βに関して、改質触媒の温度を検出して、当該温度に対応させた水素純度を推定してもよい。例えば、定格運転で水素が製造されている作動時と比較して、改質触媒の温度が低温のL1の場合には、閾値βよりも水素純度が低いと判断することができる。
【0057】
さらに、閾値βに関して、水素精製器16の作動における圧力差を検出して、当該圧力差に対応させた水素純度を推定してもよい。例えば、定格運転で水素が製造されている作動時と比較して、圧力差が小さいL2の場合には、閾値βよりも水素純度が低いと判断することができる。また、前述の改質触媒の温度と、当該圧力差とを合わせて水素純度を推定してもよい。
【0058】
オフガス合流管P11Bは、後述するオフガス管P7と合流されている。オフガス合流管P11Bには、開閉弁V2が設けられている。開閉弁V2は、水素純度センサ46で検出される水素純度データD1の値が閾値α未満の場合に開放される。また、後述する他機洗浄処理のときには、水素純度センサ46で検出される水素純度データD1の値が閾値β未満の場合に開放される。
【0059】
開閉弁V1~5は、制御部60と信号線により接続されており、制御部60により開閉が制御される。
【0060】
水素精製器16のオフガス出口側には、オフガス管P7の上流端が接続されている。また、オフガス管P7には、オフガス合流管P11Bが接続されている。オフガス管P7の下流端は、多重筒型改質器12のバーナ22と接続されている。水素精製器16からは、分離されたオフガスが、オフガス管P7へ送出される。オフガス管P7には、オフガスタンク18が設けられている。オフガスは、オフガスタンク18に一時貯留され、オフガス管P7を流れて燃料として多重筒型改質器12のバーナ22(
図2参照)へ供給される。
【0061】
(燃焼排ガス水分離部)
燃焼排ガス水分離部34は、上部が気体室34Aとされ、下部が液体室34Bとされている。気体室34Aには、ガス排出管P10の下流端が接続されている。また、気体室34Aには、外部排出管P13が接続されている。液体室34B底部には、水送出口34Cが形成されており、水送出口34Cに燃焼排ガス水配管P8Cが接続されている。燃焼排ガス水分離部34は、昇圧前水分離部30及び昇圧後水分離部32よりも大容量とされている。なお、燃焼排ガス水分離部34は、昇圧前水分離部30及び昇圧後水分離部32よりも底面積を大きくすることにより容量を大きくすることが好ましい。
【0062】
燃焼排ガスは、燃焼部21から燃焼排ガス流路23を経てガス排出管P10へ送出される。燃焼排ガス中の水蒸気は、燃焼排ガス水分離部34の上流に配置された熱交換器HE3において冷却されることによって凝縮される。凝縮により燃焼排ガスから分離された水は、液体室34Bに貯留され、燃焼排ガス水配管P8Cへ送出される。水が分離された後の燃焼排ガスは、外部排出管P13から外部へ排出される。
【0063】
水素製造装置10の底部には、水タンク40が配置されている。水タンク40の天面には、水流入口40Aが形成されており、改質ガス水配管P8A、P8B、及び燃焼排ガス水配管P8Cは、合流後に水流入口40Aと接続されている。合流後の配管を水流入管P8と称する。水タンク40には、昇圧前水分離部30、昇圧後水分離部32、燃焼排ガス水分離部34で分離された水が流入し、貯留される。
【0064】
水タンク40には、改質水供給管P9の上流端が接続されている。改質水供給管P9には、溶存イオン成分を除去するための水処理器(イオン交換樹脂)42が設けられている。また、改質水供給管P9には、ポンプ44が設けられており、ポンプ44の駆動により、水タンク40に貯留された水が水処理器42を経て多重筒型改質器12へ供給される。
【0065】
なお、水タンク40に外部からの水を供給して改質水が不足した場合に補うようにしてもよい。
【0066】
(作用)
次に、水素製造システム70の作用について説明する。
【0067】
まず、各々の水素製造装置10(10A、10B)による水素製造工程の概略の流れを説明する。原料供給管P1から多重筒型改質器12へ供給された都市ガスは、予熱流路24Aで改質水と混合されつつ加熱され、混合ガスとなって改質触媒層24Cへ供給される。改質触媒層24Cでは、燃焼排ガス流路23を流れる燃焼排ガスからの熱を受けて混合ガスが水蒸気改質され、水素を主成分とする改質ガスが生成される。改質ガスは、改質ガス流路25を通ってCO変成触媒層26へ供給される。CO変成触媒層26では、改質ガスに含まれる一酸化炭素と水蒸気が反応して、水素と二酸化炭素に変換され、一酸化炭素が低減される。CO変成触媒層26を通過した改質ガスは、酸化剤ガス供給管P2Bから供給される酸化ガス(空気)と共にCO選択酸化触媒層27へ供給され、触媒上で一酸化炭素が酸素と反応して二酸化炭素に変換され、一酸化炭素が除去される。CO選択酸化触媒層27で一酸化炭素が低減された改質ガスは、改質ガス排出管P3へ送出される。
【0068】
改質ガスは、改質ガス排出管P3に設けられた熱交換器HE1を経て、昇圧前水分離部30の気体室30Aへ供給される。気体室30Aへ供給された改質ガスに含まれる水は、熱交換器HE1での冷却により凝縮されて液体室30Bへ貯留され、改質ガス水配管P8Aを経て水タンク40へ送出される。気体室30Aから、水が分離された改質ガスが、連絡流路管P4を流れて圧縮機14へ供給され、圧縮機14によって圧縮される。
【0069】
圧縮された改質ガスは、連絡流路管P6を流れて昇圧後水分離部32の気体室32Aへ供給される。気体室32Aへ供給された改質ガスに含まれる水蒸気は、熱交換器HE2での冷却により凝縮されて液体室32Bへ貯留され、改質ガス水配管P8Bを経て水タンク40へ送出される。気体室32Aから、水が分離された改質ガスが、連絡流路管P6を流れて水素精製器16へ供給される。
【0070】
水素精製器16では、吸着部16A、16Bで不純物が吸着されることにより、改質ガスがオフガスと水素リッチガスとに分離され、オフガスは、オフガス管P7を流れて燃料として多重筒型改質器12のバーナ22へ供給される。 多重筒型改質器12の燃焼部21では、オフガスが燃焼され、燃焼排ガスがガス排出管P10を介して燃焼排ガス水分離部34の気体室34Aへ供給される。気体室34Aへ供給された燃焼排ガスに含まれる水蒸気は、熱交換器HE3での冷却により凝縮されて液体室34Bへ貯留され、燃焼排ガス水配管P8Cを経て水タンク40へ送出される。水が分離された燃焼排ガスは、外部排出管P13を経て外部へ排出される。水素リッチガスは、水素ガス送出管P11へ送出される。
【0071】
次に、他機洗浄処理について説明する。この他機洗浄処理は、水素精製器16から送出される製品水素の純度が低下した場合や、予め定めた一定時間の経過後に、吸着部16Aに残存する不純物を除去するために行われる。また、水素製造装置10の運転開始前や運転停止前などにも行われる。本実施形態では、水素製造装置10A、10B共に水素製造運転中で、水素製造装置10Aの洗浄を行う場合(水素製造装置10Aが被洗浄水素製造装置となる場合)について説明する。
【0072】
水素製造装置10Aについて、ユーザーから他機洗浄処理実行の指示が開始されると、制御部60において、
図5に示す他機洗浄処理が実行される。まず、ステップS10で、水素製造装置10Bの開閉弁V1が閉鎖されると共に、開閉弁V3が開放される。ステップS12で、水素製造装置10Aの開閉弁V4が開放される。そして、ステップS14で、水素製造装置10Aの第1切換部15及び第2切換部17が制御されて第1洗浄処理が行われる。第1洗浄処理は、吸着部16Aを洗浄する処理であり、吸着部16Aへ他機洗浄ガスが供給されると共に吸着部16Aからオフガス管P7へ使用済みの他機洗浄ガスが送出され、吸着部16Bへ改質ガスが供給されると共に吸着部16Bから水素ガス送出管P11へ吸着部16Bで非吸着の水素リッチガスが送出されるように、第1切換部15及び第2切換部17が制御される。
【0073】
これにより、水素製造装置10Bから吸着部16Aへ水素リッチガスが他機洗浄ガスとして供給され、他機洗浄ガスは吸着部16Aを透過してオフガス管P7へ送出される。なお、吸着部16Aへの改質ガスの供給は停止され、吸着部16Aはオフガス排気時と同様の減圧状態とされている。また、吸着部16Bでは、通常の水素精製モードで水素リッチガスが精製される。
【0074】
次に、ステップS16で、所定時間T1が経過したかどうかを判断する。ここでの時間T1は、吸着部16Aに残留している不純物をオフガス管P7へ送出するために必要とされる時間が設定される。所定時間T1が経過していない場合には、所定時間T1が経過するまで待機する。
【0075】
所定時間T1が経過したら、ステップS18へ進んで、水素製造装置10Aの第1切換部15及び第2切換部17が制御されて第2洗浄処理が行われる。第2洗浄処理は、吸着部16Bを洗浄する処理であり、吸着部16Bへ他機洗浄ガスが供給されると共に吸着部16Bからオフガス管P7へ使用済みの他機洗浄ガスが送出され、吸着部16Aへ改質ガスが供給されると共に吸着部16Aから水素ガス送出管P11へ吸着部16Aで非吸着の水素リッチガスが送出されるように、第1切換部15及び第2切換部17が制御される。
【0076】
これにより、水素製造装置10Bから吸着部16Bへ水素リッチガスが他機洗浄ガスとして供給され、他機洗浄ガスは吸着部16Bを透過してオフガス管P7へ送出される。なお、吸着部16Bへの改質ガスの供給は停止され、オフガス排気時と同様の減圧状態とされている。また、吸着部16Aでは、通常の水素精製モードで水素リッチガスが精製される。
【0077】
次に、ステップS20で、所定時間T2が経過したかどうかを判断する。ここでの時間T2は、吸着部16Bに残留している不純物をオフガス管P7へ送出するために必要とされる時間が設定される。所定時間T2が経過していない場合には、所定時間T2が経過するまで待機する。
【0078】
所定時間T2が経過したら、ステップS22へ進んで、水素製造装置10Aの開閉弁V4を閉鎖し、ステップS24で、水素製造装置10Bの開閉弁V3を閉鎖すると共に、開閉弁V1を開放し、本処理を終了する。なお、ステップS22とステップS24は、処理の順序が逆でもよい。水素製造装置10Aの開閉弁V4の閉鎖、水素製造装置10Bの開閉弁V3の閉鎖、開閉弁V1の開放は、ほぼ同時に行われる。
【0079】
この他機洗浄処理により、吸着部16A、16Bに滞留していた不純物が除去され、水素ガス送出管P11へ送出される水素リッチガスに含まれる不純物の量を少なくすることができる。
【0080】
また、自機(水素製造装置10A)の水素精製器16の洗浄を、他機(水素製造装置10B)で精製された水素リッチガスを用いて行うので、洗浄用の水素タンクを備える必要がなく、簡易な構成で水素精製器16の洗浄を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態では、洗浄に用いた他機洗浄ガスをオフガス管P7へ送出するので、使用後の他機洗浄ガスをオフガスと同様に処理することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、水素製造装置10A、10B共に運転途中で他機洗浄処理を行う例について説明したが、水素製造装置10Bの起動時に、水素製造装置10Aを洗浄してもよい。
【0083】
この場合の他機洗浄処理は、水素製造装置10Bの運転開始と共に他機洗浄処理を実行する旨の指示が入力されると、制御部60により実行される。
図6に示されるように、まず、ステップS30で、水素製造装置10Bを起動させて水素の製造を開始する。次に、ステップS32で、水素製造装置10Bの開閉弁V2、V5を開放する。これにより、水素製造装置10Bで水素製造が開始される。
【0084】
ステップS34で、水素純度センサ46から水素純度データD1を取得し、ステップS36で水素純度データD1が閾値β以上かどうかを判断する。水素純度データD1が閾値β未満の場合には、水素純度データD1が閾値β以上になるまで待機し、水素純度データD1が閾値β以上になった場合には、ステップS38へ進んで、水素製造装置10Bの開閉弁V2を閉鎖し、開閉弁V3を開放する。
【0085】
次に、ステップS40で、洗浄処理を実行する。この洗浄処理は、
図5に示すステップS12からステップS22の処理と同じである。
【0086】
これにより、水素製造装置10Bの水素精製器16で分離された水素リッチガスが、水素ガス送出管P11から他機洗浄ガス供給管P11C、洗浄ガス管P12を経て、水素製造装置10Aの水素精製器16へ供給される。この水素リッチガスは、水素製造装置10Bが起動直後であることから、通常、低純度水素ガスである。
【0087】
水素製造装置10Aの水素精製器16では、供給された低純度水素ガスで、吸着部16A、16Bの洗浄が順次行われる。当該処理中、オフガスとして分離されたガスは、水素純度に応じて、水素製造装置10A内のオフガスタンク18、または水素製造装置10Aの低純度水素タンク50へ送出される。これにより、水素製造装置10Aの吸着部16A、16Bに滞留していた不純物が除去される。
【0088】
次に、ステップS42で、水素製造装置10Bの開閉弁V3を閉鎖し、開閉弁V1を開放して、本処理を終了する。
【0089】
この他機洗浄処理でも、水素精製器16の吸着部16A、16Bに残留していた不純物が除去され、水素製造装置10Aにおいて、水素ガス送出管P11へ送出される水素リッチガスに含まれる不純物の量を少なくすることができる。
【0090】
なお、洗浄に使用する水素リッチガスの水素純度に関する閾値βは、水素精製器16の洗浄に使用できる水素純度として設定されており、77%~99.99%の範囲で設定することができる。なお、閾値βは、より効果的に洗浄を行って洗浄間隔を長くするために、99.5%以上であることが好ましい。なお、外気温が高い夏場などには、水素精製器16内の温度が上昇して吸着部16A、16Bにおける吸着性能が低下する傾向にある。そこで、外気温に応じて閾値βを変化させてもよい。すなわち、外気温が高い場合には、閾値βを比較的高く設定し、外気温が低い場合には、閾値βを比較的低く設定してもよい。
【0091】
また、本実施形態では、同一構成の水素製造装置を複数機有する場合について説明したが、各々の水素製造装置は、改質器及び水素精製器を有するものであれば、異なる構成のものであってもよい。
【0092】
また、本実施形態では、他機洗浄ガス供給管P11Cが、他の水素製造装置10へ延出され、他の水素製造装置10の洗浄ガス管P12と接続される構成としたが、他の水素製造装置10との接続は、他の構成としてもよい。例えば、
図7に示される水素製造システム70Aのように、水素製造装置10が3機(水素製造装置10A、10B、10C)以上の場合には、他機同士の接続を共通の共用配管P18で行ってもよい。この場合には、各々の水素製造装置10における他機洗浄ガス供給管P11C及び洗浄ガス管P12が、共用配管P18と接続される。
【符号の説明】
【0093】
10、10A、10B 水素製造装置
12 多重筒型改質器(改質器)
15 第1切換部(洗浄実行部)
17 第2切換部(洗浄実行部)
16 水素精製器
16A、16B 吸着部
60 制御部(洗浄実行部)
70 水素製造システム
P7 オフガス管(オフガス送出路)
P11 水素ガス送出管(水素ガス送出路)
P11C 他機洗浄ガス供給管(他機洗浄ガス供給路)