(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】コークス炉構築工法及びコークス炉構築用仮設構台
(51)【国際特許分類】
C10B 29/02 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
C10B29/02
(21)【出願番号】P 2019006998
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000178011
【氏名又は名称】山九株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】土井 一秀
(72)【発明者】
【氏名】一色 信太朗
(72)【発明者】
【氏名】枝澤 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 智成
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晋吾
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-010128(JP,A)
【文献】特開2018-062599(JP,A)
【文献】登録実用新案第3218069(JP,U)
【文献】特開平06-041538(JP,A)
【文献】特開2016-041782(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107934487(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側にPS及びCSを持つコークス炉を構築する際、煉瓦積み作業を行うために使用する仮設構台であって、
前記仮設構台は前記PSの押出機軌条面に隣接して、前記押出機軌条面と略同一高さ位置で炉団長方向に沿って設置され、
前記仮設構台は地上面から一段高く、実質的に水平に設置され
、
前記仮設構台は、複数の炉団のうち、一部の炉団に対応する炉団長方向の長さを有することを特徴とするコークス炉構築用仮設構台。
【請求項2】
前記仮設構台は、少なくとも1炉団又は2炉団以上に対応する炉団長方向の長さを有することを特徴とする請求項1に記載のコークス炉構築用仮設構台。
【請求項3】
前記仮設構台はその炉団長方向の一端又は両端に前記地上面に接続するスロープを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコークス炉構築用仮設構台。
【請求項4】
両側にPS及びCSを持つコークス炉を構築するコークス炉構築工法であって、
前記PSの押出機軌条面に隣接して、仮設構台を前記押出機軌条面と略同一高さ位置で炉団長方向に沿って
、かつ、複数の炉団のうち、一部の炉団に対応する炉団長方向の長さを有するように設置し、
作業車両が炉団長方向の所望位置にある炉まで走行して、前記押出機軌条面を通ってその炉にアクセスすることで、煉瓦積み作業を行うことを特徴とするコークス炉構築工法。
【請求項5】
前記仮設構台はその炉団長方向の一端又は両端に地上面に接続するスロープを有し、
前記作業車両は地上面から前記スロープを使って、前記仮設構台に進入するようにしたことを特徴とする請求項4に記載のコークス炉構築工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両側にPS(Pusher Side;押出機のある側)及びCS(Coke Side;ガイド車のある側)があるコークス炉を構築する際、煉瓦積み作業を行うためのコークス炉構築工法及びこれに使用する仮設構台に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉を改修・建設するためのコークス炉本体煉瓦積み作業において、コンクリート基礎が出来上がると、次にその上で煉瓦積みが行われる。この煉瓦積みは、コークス炉本体構築であり、メイン作業となる。
【0003】
例えば
図5は、従来のコークス炉構築工法の例を示している。構築すべきコークス炉100に対する煉瓦積み作業の際、上屋200の他にPS(Pusher Side)に下屋201を設置し、煉瓦倉庫とする。下屋には様々な形状の煉瓦1を多量にストックしておき、施工箇所に応じた形状の煉瓦1を選択し、築炉工が手積みで煉瓦積み作業を行う。
【0004】
また、コークス炉において窯口煉瓦積替を行う場合、炉の稼動を止めずに行なう熱間補修(それぞれ燃焼室及び炭化室を含む連続した複数窯の稼動を停止しその窯口煉瓦を取り替える作業)では、コークス炉の稼働中に煉瓦を取り込む際、炉上の装入車や、PSにあっては押出機、CSにあってはガイド車の移動を妨げないようにする必要がある。
この場合、煉瓦積み作業を行う炉の押出機軌条のある押出機プラットホーム(押出機軌条面)を使って煉瓦の搬送用のフォークリフト等を走行させて、煉瓦の投入等の作業が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコークス炉構築工法において、例えば
図2のように押出機が移動する押出機軌条113とグランドレベル(GL)との間に段差がある、即ちGLから一段高い位置に押出機軌条面114を有するコークス炉100では、押出機軌条面114におけるフォークリフト等の作業車両の走行可能範囲が制限される。つまり、稼働中の炉を跨いでその先の炉にアクセスできないため、多量の煉瓦を定まった期間中に下屋に搬入することが困難になる等、複数の炉に対して同時に煉瓦積替を行うことが実質的に困難となる。このために煉瓦積み作業には極めて長期間の期日を要するばかりか、築炉工が多人数必要にならざるを得なかった。また炉の解体や新設時の金物撤去、設置工事においても工期が長引く要因となっていた。
【0006】
一方、
図5の例のように押出機軌条面114に対して側方から例えばスロープ115を掛けて、所望の炉に作業車両がアクセスできるようにすることが考えられる。しかしながら、押出機軌条面114の側近には集塵ダクト116等の設備が近接配置されており、そのままではスロープ115を設置することができない。集塵ダクト116等を撤去してからスロープ115を設置することは可能ではあるが、集塵ダクト116等の撤去には大掛かりな作業が必要になり、それらを元の状態に戻すための作業も膨大になる。
【0007】
本発明はかかる実情に鑑み、効率よく且つ適正な煉瓦積上げ作業を行い、工期短縮等を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のコークス炉構築用仮設構台は、両側にPS及びCSを持つコークス炉を構築する際、煉瓦積み作業を行うために使用する仮設構台であって、前記仮設構台は前記PSの押出機軌条面に隣接して、前記押出機軌条面と略同一高さ位置で炉団長方向に沿って設置され、前記仮設構台は地上面から一段高く、実質的に水平に設置され、前記仮設構台は、複数の炉団のうち、一部の炉団に対応する炉団長方向の長さを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のコークス炉構築工法は、両側にPS及びCSを持つコークス炉を構築するコークス炉構築工法であって、前記PSの押出機軌条面に隣接して、仮設構台を前記押出機軌条面と略同一高さ位置で炉団長方向に沿って、かつ、複数の炉団のうち、一部の炉団に対応する炉団長方向の長さを有するように設置し、作業車両が炉団長方向の所望位置にある炉まで走行して、前記押出機軌条面を通ってその炉にアクセスすることで、煉瓦積み作業を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業車両は仮設構台を走行し、炉団長方向の所望位置にある炉まで走行して押出機軌条面を通ってその炉にアクセスし、煉瓦積み作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態におけるコークス炉設備の平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るコークス炉まわりの構成例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるコークス炉構築に使用する仮設上屋まわりの全体構成を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるコークス炉構築用仮設構台まわりの斜視図である。
【
図5】従来のコークス炉構築工法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明によるコークス炉構築工法及びコークス炉構築用仮設構台における好適な実施の形態を説明する。
ここで先ず、コークス炉について説明する。
図1はコークス炉設備の平面図、
図2はコークス炉100まわりの例を示す断面図である。
図1のコークス炉設備では3炉団編成を有している。
【0013】
図2に示すようにコークス炉100は蓄熱室101の上部に炭化室102と燃焼室103が交互に並べられ(
図1の矢印Y方向;炉団長方向)、炉団をなしている。炭化室102は、石炭を蒸し焼きにしてコークスを作る部屋である。燃焼室103は、燃料ガスを燃焼させる部屋であり、煉瓦から構築される。コークス炉100は基本的に煉瓦製であり、多数の煉瓦を積み重ねて構成される。各炭化室102は十数メートル程度の奥行き(
図2、矢印X方向)を持ち、コークス原料である配合、粉砕された石炭が投入される。
【0014】
燃焼室103の奥行き方向Xの両端部には、構造体(支柱)であるバックステー104が燃焼室103と略同一高さで立設される。炉団のPS(Pusher Side)には押出機105が配備され、CS(Coke Side)にはガイド車106が配備される。また、炉団のPS及びCSにはそれぞれ、炉団長方向Yに沿ってプラットホーム107を有する。なお、コークス炉100はコンクリート基礎100A上に構築される。
【0015】
コークス炉100のCSには更に、炉団長方向に消火車及び電車108の軌条109、ガイド車軌条110が設置されている。
コークス炉100のPSにおいて
図2に示すようにプラットホーム107に隣接して、炉団長方向に沿って押出機軌条113が敷設され、この押出機軌条113が敷設される面を押出機軌条面114とする。押出機105は押出機軌条113上で炉団長方向に沿って適宜移動し、炭化室内のコークスをCSに押し出し、電車108に、ガイド車106を経て投入する。なお、このコークス炉100では、押出機軌条面114とGLとの間に段差がある、即ちGLから一段高い位置に押出機軌条面114を有する。
【0016】
また、
図3は、コークス炉構築に使用する仮設上屋10まわりの全体構成を示す正面図である。コークス炉100は経時変化あるいは耐用年数の関係で改修し、又はその解体後に再構築され、本発明のコークス炉構築工法ではコークス炉100の改修・建設のためのコークス炉本体煉瓦積み作業において、仮設上屋10が使用される。
【0017】
仮設上屋10はコークス炉100を覆う門型を呈して構成され、炉団長方向Yに長く延びる上屋本体11と、上屋本体11の外部から内部へ延設され、積み上げる煉瓦1を上屋本体11内に搬入するコンベア12を備える。
【0018】
また、PSに設置された下屋201を併用し、下屋201には様々な形状の煉瓦1がストックされる。下屋201にストックされた煉瓦1はコンベア12上に載せて、上屋本体11内に搬入することができる。上屋本体11の内部では複数の足場18を使って煉瓦積み作業が行われる。各足場18は煉瓦1の積上げ高さに応じてその高さが調整される。コンベア12は例えば必要に応じ足場18上に敷設され、コンベア12に載せた煉瓦1が奥行き方向Xに搬送される。なお下屋201は通常押出機プラットホーム上(軌条面114上)に設置される。
【0019】
本発明では特に、コークス炉構築用の仮設構台30を有する。仮設構台30は鋼板でなり、
図3に示すようにPSにおいて押出機軌条面114に隣接して、押出機軌条面114と略同一高さ位置(押出機軌条面114より若干高くても構わない)で炉団長方向に沿って設置される。また、仮設構台30は、GLに立設された複数の支柱31を介してGLから一段高く(1mもしくはそれ以上程度の位置)、実質的に水平に設置される。
1例として例えば
図1のコークス炉設備において、3炉団編成側に対してPSの押出機軌条面114に隣接して仮設構台30が炉団長方向に長く設置される。
【0020】
ここで、既に説明したように(
図5)押出機軌条面114の側近には集塵ダクト116等の設備が近接配置されている。
図3のように仮設構台30は、既存設備である集塵ダクト116等を実質的にそのままにして避けるようにあるいは上部から覆うように設置され、仮設構台30を設置することにより、押出機軌条面114の隣に該押出機軌条面114と略面一となって連続する広いスペースが確保される。これにより仮設構台30上ではフォークリフトや工事用重機、煉瓦搬送用トラック等の複数の車両(作業車両Sとする)が自在に走行可能である。
【0021】
また、仮設構台30は、炉団長方向に沿って設置され、少なくとも1炉団又は2炉団以上に対応する炉団長方向の長さを有する。例えば
図1の例では1炉団、即ち1A炉、1炭槽及び1B炉に対応する長さを最低有し、あるいは2炉団、即ち1A炉~2B炉に対応する長さ以上としてもよく、コークス炉設備の状況に応じて適宜設定可能である。
【0022】
また、仮設構台30はその炉団長方向の一端又は両端に前記地上面(グランド)に接続するスロープを有する。例えば
図4に示すように仮設構台30の炉団長方向の一端にスロープ32がGLとの間に架け渡される。スロープ32は作業車両Sが走行するために十分な幅を有し、仮設構台30とGLを繋いでいる。なお、スロープ32は鋼製の仮設スロープとすることができる。
【0023】
本発明のコークス炉構築工法において、構築すべきコークス炉100を覆うように仮設された仮設上屋10の上屋本体11内に煉瓦1を搬入し、コークス炉100を構築する。この場合、炉の構築に必要な煉瓦1を、先ず仮設構台30を利用し下屋201に搬入する。こうして下屋201にストックされた煉瓦1をPSから供給することができる。仮設構台30は煉瓦1の搬送用の作業車両Sが走行可能であり、仮設構台30が十分広いスペースを使って効率よく煉瓦1を投入できる。
【0024】
例えば特に、
図1を参照して1A炉の煉瓦積み作業を行う場合、作業車両Sは仮設構台30を1A炉まで走行して押出機軌条面114を通って1A炉にアクセスすることができる。なお、作業車両SはGLからスロープ32を使って、仮設構台30に円滑に進入することができ、押出機軌条面114とGLの間に段差がある場合でも作業車両Sは何ら支障なく、押出機軌条面114まで走行することができる。
【0025】
この場合特に、1B炉が稼働中であっても、作業車両Sは同様に仮設構台30を2A炉まで走行して押出機軌条面114を通って2A炉にアクセスし、即ち1A炉及び2A炉の2炉同時に煉瓦積み作業を行うことができる。このように稼働中の炉、この例では1B炉がある場合でもその両側の複数の炉にアクセスして同時に煉瓦積替を行うことができるため、効率よく且つ適正な煉瓦積上げ作業を行い、工期を大幅に短縮することができる。同様に1AB炉が稼働中であっても、2AB炉の煉瓦積替を支障なく行うことができる。1AB炉と3AB炉が稼働中の場合でも、その中間の炉(2AB)にアクセスして煉瓦積替を行うことができるため、効率よく且つ適正な煉瓦積上げ作業が行え、工期の大幅な短縮が可能となる。このように例え操業中の炉に隣接する炉の改修・建設であっても、操業に影響を与えることなく工事を実施することができる。
【0026】
また、仮設構台30は、既存設備である集塵ダクト116等を撤去することなく、そのままにして上部から覆うように設置されるため、煉瓦積み作業の終了後に既存設備を元の状態に戻す必要がない。この点でも既存設備を元の状態に戻す大掛かりな作業を省略できるため、そのための工数を省くと共に工期短縮に寄与する。
【0027】
所定の煉瓦積み作業が終了し、築炉が完了後には仮設構台30やスロープ32等を撤収して、コークス炉100が構築される。
【0028】
煉瓦積み作業の1例を示したが、この例に限らず作業車両Sは仮設構台30を走行し、炉団長方向の所望位置にある炉まで走行して押出機軌条面114を通ってその炉にアクセスすることができる。従い、煉瓦積替だけでなく、既設炉の解体、上屋および下屋の築造および撤去、金物工事にも使用可能であり、これら全ての工事が円滑に行えるようになる。
また、工事を推進する際の地組場、資機材の仮置き場としても使用できる。
【0029】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。
コークス炉にコークス炉構築用の仮設上屋を使用する例について説明したが、PSにおいて押出機軌条面が地上面(グランド)から一段高いコークス炉に対して有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 煉瓦、10 仮設上屋、11 上屋本体、12 コンベア、30 仮設構台、31 支柱、32 スロープ、100 コークス炉。