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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ロック機能付き移動装置
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/30 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
B63H25/30 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019013068
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020121593
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植 和哉
(72)【発明者】
【氏名】竹下 潔
(72)【発明者】
【氏名】川口 孟
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-136726(JP,A)
【文献】特開2002-139003(JP,A)
【文献】特開2003-53587(JP,A)
【文献】特開2013-64416(JP,A)
【文献】特開平8-113197(JP,A)
【文献】特表2012-516262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0112445(US,A1)
【文献】特開2004-161052(JP,A)
【文献】特開昭61-191498(JP,A)
【文献】特開昭61-143296(JP,A)
【文献】特開2000-7292(JP,A)
【文献】特開2004-332850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/08- 25/34
H02K 41/00- 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドを有する少なくとも1つの電動アクチュエータと、
前記ロッドが軸方向の一方に移動したときに作動液が流出し、前記ロッドが軸方向の他方に移動したときに作動液が流入する第1圧力室と、
前記ロッドが軸方向の一方に移動したときに作動液が流入し、前記ロッドが軸方向の他方に移動したときに作動液が流出する第2圧力室と、
前記第1圧力室と前記第2圧力室とを接続する液圧流路と、
前記液圧流路を通じた作動液の流れを許可する許可状態と前記液圧流路を通じた作動液の流れを禁止する禁止状態との間で切り換えられる切換弁と
アキュムレータおよびリリーフ弁を含み、前記液圧流路の圧力を前記アキュムレータの設定圧と前記リリーフ弁の設定圧との間に保持する圧力保持装置と、を備え
前記切換弁により前記作動液の流れを前記禁止状態にして前記ロッドの位置をロックする、ロック機能付き移動装置。
【請求項2】
前記電動アクチュエータはリニアモータである、請求項に記載のロック機能付き移動装置。
【請求項3】
前記電動アクチュエータは舵軸に連結された舵柄を揺動させるものである、請求項1又は2に記載のロック機能付き移動装置。
【請求項4】
前記電動アクチュエータは対象物を昇降させるものである、請求項1又は2に記載のロック機能付き移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機能付き移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物を揺動、昇降又は往復などさせる移動装置が知られている。このような移動装置の一例としては、舵軸に連結された舵柄を揺動させる舶用舵取装置がある。このような舶用舵取装置においては、電動ポンプにより発生させた油圧により油圧シリンダを作動させ、当該油圧シリンダの直線運動を回転運動に変換する機構を介して舵軸を回転させるものもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-161052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧シリンダの代わりに、ロッドを有する電動アクチュエータを用いることが考えられる。しかし、この場合、舵板に対する流体力に抗してある舵角を維持する際に、電動アクチュエータにより舵柄を揺動させる構成では、当該電動アクチュエータに対して通電し続ける必要がある。そのためコストがかかる。また、電動アクチュエータに対する継続的な通電を回避するためにクラッチやブレーキなどの機構を設けることが考えられるが、構成が複雑になる。また、昇降装置により対象物をある高さで保持する場合にも、舶用舵取装置と同じような課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、コストを抑えつつ簡易な構成で電動アクチュエータのロッドの位置をロックすることができるロック機能付き移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロック機能付き移動装置は、ロッドを有する少なくとも1つの電動アクチュエータと、前記ロッドが軸方向の一方に移動したときに作動液が流出し、前記ロッドが軸方向の他方に移動したときに作動液が流入する第1圧力室と、前記ロッドが軸方向の一方に移動したときに作動液が流入し、前記ロッドが軸方向の他方に移動したときに作動液が流出する第2圧力室と、前記第1圧力室と前記第2圧力室とを接続する液圧流路と、前記液圧流路を通じた作動液の流れを許可する許可状態と前記液圧流路を通じた作動液の流れを禁止する禁止状態との間で切り換えられる切換弁と、を備えるものである。
【0007】
本発明に従えば、第1圧力室と第2圧力室とを接続する液圧流路の作動液の流れを切換弁によって禁止状態にしてロッドの位置をロックすることができる。これにより、電動アクチュエータに対する継続的な通電を回避することができるため、コストを抑えることができる。また、クラッチやブレーキなどの機構を設けることなくロッドの位置をロックすることができるので、構造が複雑化しない。以上により、コストを抑えつつ簡易な構成で電動アクチュエータのロッドの位置をロックすることができる。
【0008】
上記発明において、ロック機能付き移動装置は、アキュムレータおよびリリーフ弁を含み、前記液圧流路の圧力を前記アキュムレータの設定圧と前記リリーフ弁の設定圧との間に保持する圧力保持装置を備えることが好ましい。
【0009】
上記構成に従えば、圧力保持装置によって液圧流路の圧力がアキュムレータの設定圧とリリーフ弁の設定圧との間(所定範囲)に保持されるので、液圧流路の作動液の温度変化に伴う体積変化を吸収することができる。詳しくは、温度上昇により作動液が膨張して液圧流路内の圧力がリリーフ弁の設定圧を超える場合には、当該リリーフ弁を介して作動液をアキュムレータに逃がすことで当該液圧流路内の圧力を低下させることができる。一方、温度低下により作動液が収縮して液圧流路内の圧力がアキュムレータの設定圧未満になる場合には、当該アキュムレータから液圧流路に作動液を供給することで当該液圧流路内の圧力を上昇させることができる。このようにして、液圧流路内の圧力が所定範囲内に保持される。
【0010】
上記発明において、前記電動アクチュエータはリニアモータであることが好ましい。
【0011】
上記構成に従えば、電力でリニアモータを直接駆動できるようになり、アクチュエータを駆動するためのエネルギーの高効率化を図ることができる。
【0012】
上記発明において、前記電動アクチュエータは舵軸に連結された舵柄を揺動させるものであってもよい。
【0013】
上記構成に従えば、コストを抑えつつ簡易な構成で電動アクチュエータのロッドの位置をロックすることができ、これにより舵角を保持することができる。
【0014】
上記発明において、前記電動アクチュエータは対象物を昇降させるものであってもよい。
【0015】
上記構成に従えば、コストを抑えつつ簡易な構成で電動アクチュエータのロッドの位置をロックすることができ、これにより対象物を所望の位置で保持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コストを抑えつつ簡易な構成で電動アクチュエータのロッドの位置をロックすることができるロック機能付き移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るロック機能付き移動装置の図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るロック機能付き移動装置の図である。
図3】本発明の第3実施形態に係るロック機能付き移動装置の図である。
図4】本発明の第4実施形態に係るロック機能付き移動装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るロック機能付き移動装置について図面を参照して説明する。以下に説明するロック機能付き移動装置は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0019】
(第1実施形態)
図1に本発明の第1実施形態に係るロック機能付き移動装置1を示す。図1に示すように、本実施形態のロック機能付き移動装置1は、電動アクチュエータである第1リニアモータ5および第2リニアモータ6を作動させることで、舵柄2を介して舵軸4を回動させるものである。舵柄2は揺動可能に構成され、舵軸4から両側に延在している。この舵柄2には、第1および第2リニアモータ5,6の軸線方向と直交する方向の両端に溝2a,2bが形成されている。溝2a内には第1ピン3aが挿入されており、溝2b内には第2ピン3bが挿入されている。
【0020】
第2リニアモータ6は第1リニアモータ5と平行に配置されている。第1及び第2リニアモータ5,6は、その軸線方向に往復動可能に構成されたロッド7を有している。各ロッド7は電力によりその軸線方向に往復動するように構成されている。第1ピン3aは第1リニアモータ5のロッド7の一端(図1では右端)に設けられ、第2ピン3bは第2リニアモータ6のロッド7の一端に設けられている。
【0021】
このような構成において、第1リニアモータ5のロッド7が舵柄2を押す方に移動し、第2リニアモータ6のロッド7が舵柄2を引く方に移動されると、舵柄2は図1において時計回りに揺動する。逆に、第1リニアモータ5のロッド7が舵柄2を引く方に移動し、第2リニアモータ6のロッド7が舵柄2を押す方に移動されると、舵柄2は図1において反時計回りに揺動する。このようにして、舵柄2が揺動されることにより舵軸4を回動させることができるようになっている。
【0022】
第1リニアモータ5の基端側部分には第1シリンダ8が連結されている。第1リニアモータ5のロッド7の基端側部分は第1シリンダ8内に配置されている。第1シリンダ8内において当該第1シリンダ8の内周壁とロッド7とで囲まれた領域に第1圧力室8aが形成されている。ロッド7が軸線方向の一方(図1において左方)に移動したときには第1圧力室8aから作動液が流出し、ロッド7が軸線方向の他方(図1において右方)に移動したときには第1圧力室8a内に作動液が流入するようになっている。なお、ロック機能付き移動装置1で用いられる作動液は、典型的には油であるが、水などの他の液体であってもよい。
【0023】
同様に、第2リニアモータ6の基端側部分には第2シリンダ9が連結されている。第2リニアモータ6のロッド7の基端側部分は第2シリンダ9内に配置されている。第2シリンダ9内において当該第2シリンダ9の内周壁とロッド7とで囲まれた領域に第2圧力室9aが形成されている。ロッド7が軸線方向の一方(図1において左方)に移動したときには第2圧力室9aから作動液が流出し、ロッド7が軸線方向の他方(図1において右方)に移動したときには第2圧力室9a内に作動液が流入するようになっている。
【0024】
ロック機能付き移動装置1には液圧流路10が設けられている。この液圧流路10は、上述した第1圧力室8aと第2圧力室9aとを接続する。液圧流路10には、当該液圧流路10を通じた作動液の流れを許可する許可状態と液圧流路10を通じた作動液の流れを禁止する禁止状態との間で切り換えられる切換弁11が介挿されている。切換弁11の動作は図略の制御装置により制御される。
【0025】
このような構成において、第1および第2リニアモータ5,6の動作時には、切換弁11は開放されて上記許可状態に切り換えられる。それにより、第1圧力室8aに対する作動液の流入および当該第1圧力室8aからの作動液の流出と、これに伴う第2圧力室9aからの作動液の流出および第2圧力室9aに対する作動液の流入とが許可される。
【0026】
これに対して、舵板をある舵角で保持するとき、つまり舵軸4の回動を停止させるときには、第1および第2リニアモータ5,6の動作が停止されると共に切換弁11が閉じられて上記禁止状態に切り換えられる。それにより、液圧流路10を通じた作動液の流れが止められるので、第1および第2リニアモータ5,6の各ロッド7の移動が止められる。これによって、舵柄2の揺動が止められ、舵軸4の回動を止めることができる。
【0027】
続いて、液圧流路10には、当該液圧流路10の圧力を所定範囲内に保持する圧力保持装置12が設けられている。以下、圧力保持装置12について説明する。
【0028】
図1に示すように、圧力保持装置12は、給排ライン13と、第1~第4接続ライン14,15,16,17と、リリーフ弁18と、チェック弁19,20と、チェック弁21,22と、アキュムレータ(圧力補償器)23とを備えている。
【0029】
給排ライン13の一端にはアキュムレータ23が接続されている。このアキュムレータ23は、シリンダ23aとピストン23bとバネ部材23cとを含む。シリンダ23aの内周壁とピストン23bとで囲まれた領域には作動液室が形成されており、バネ部材23cによりピストン23bが一定圧力で押されている。このような構成において、シリンダ23aの作動液室から作動液が給排ライン13に供給できると共に、当該シリンダ23aの作動液室に対して作動液を逃がすことができるようになっている。
【0030】
給排ライン13の他端には第1接続ライン14の一端が接続されている。第1接続ライン14の他端は液圧流路10のうちの切換弁11の一方側の部分に接続されている。また、給排ライン13の他端には第2接続ライン15の一端が接続されている。第2接続ライン15の他端は液圧流路10のうちの切換弁11の他方側の部分に接続されている。チェック弁19は第1接続ライン14に介挿されており、当該チェック弁19から第1圧力室8aに向かう方向の作動液の流れを防ぎ、チェック弁19からリリーフ弁18に向かう方向の作動液の流れを許可する。また、チェック弁20は第2接続ライン15に介挿されており、当該チェック弁20から第2圧力室9aに向かう方向の作動液の流れを防ぎ、チェック弁20からリリーフ弁18に向かう方向の作動液の流れを許可する。
【0031】
第3接続ライン16の一端は第1接続ライン14に接続され、当該第3接続ライン16の他端は給排ライン13に接続されている。また、第4接続ライン17の一端は第2接続ライン15に接続され、当該第4接続ライン17の他端は給排ライン13に接続されている。
【0032】
チェック弁21は第3接続ライン16に介挿されており、当該チェック弁21からアキュムレータ23に向かう方向の作動液の流れを防ぎ、チェック弁21から第1圧力室8aに向かう方向の作動液の流れを許可する。また、チェック弁22は第4接続ライン17に介挿されており、当該チェック弁22からアキュムレータ23に向かう方向の作動液の流れを防ぎ、チェック弁22から第2圧力室9aに向かう方向の作動液の流れを許可する。チェック弁21,22は、作動液の温度低下に起因して当該作動液が収縮することで液圧流路10内の圧力がアキュムレータ23の設定圧未満となる場合に、アキュムレータ23から作動液を吸引して液圧流路10に供給するよう作動する。一方、リリーフ弁18は、給排ライン13のうち第3および第4接続ライン16,17の接続点よりもアキュムレータ23から離れた部分に介挿されている。リリーフ弁18は、作動液の温度上昇に起因して当該作動液が膨張することで液圧流路10内の圧力がリリーフ弁18の設定圧(リリーフ圧)を超える場合に、液圧流路10内の作動液をアキュムレータ23に逃がすよう作動する。以上のような構成によって、液圧流路10内の圧力をアキュムレータ23の設定圧とリリーフ弁18の設定圧との間(所定範囲)に保持することができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のロック機能付き移動装置1によれば、第1圧力室8aと第2圧力室9aとを接続する液圧流路10の作動液の流れを切換弁11によって禁止状態にして各ロッド7の位置をロックすることができる。これにより、リニアモータ5,6に対する継続的な通電を回避することができるため、コストを抑えることができる。また、クラッチやブレーキなどの機構を設けることなくロッド7の位置をロックすることができるので、構造が複雑化しない。これにより、コストを抑えつつ簡易な構成で、リニアモータ5,6の各ロッド7の位置をロックすることができ、これにより舵角を保持することができる。
【0034】
また、本実施形態では、ロック機能付き移動装置1が圧力保持装置12を備えるので、液圧流路10の圧力をアキュムレータ23の設定圧とリリーフ弁18の設定圧との間(所定範囲)に保持することができる。
【0035】
さらに、本実施形態では、電動アクチュエータとしてリニアモータ5,6を採用することで、油圧アクチュエータを電動ポンプにより駆動する場合と比べ、電力でリニアモータ5,6を直接駆動できるようになり、アクチュエータ(本実施形態ではリニアモータ5,6)を駆動するためのエネルギーの高効率化を図ることができる。
【0036】
(第2実施形態)
続いて、第2実施形態に係るロック機能付き移動装置1Aについて説明する。図2のロック機能付き移動装置1Aにおいて、上述した第1実施形態のロック機能付き移動装置1における構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付与し、特記した場合を除いてその説明を省略する。
【0037】
図2に示すように、第2実施形態のロック機能付き移動装置1Aにおいては、1つのリニアモータ5のみ設けられている。ロック機能付き移動装置1Aにおいて、舵柄30は揺動可能に構成され、舵軸4から一方側に延在している。この舵柄30には、リニアモータ5の軸線方向と直交する方向に溝30aが形成されている。この溝30a内にはピン3aが挿入されている。ピン3aは、リニアモータ5のロッド7の中途部に設けられている。
【0038】
リニアモータ5のロッド7の先端側部分はシリンダ31に往復動可能に挿入されている。これにより、シリンダ31の内周壁とロッド7の先端とで囲まれた領域に第2圧力室31aが形成されている。このような構成において、ロッド7が軸線方向の一方(図2において左方)に移動したときには、第1圧力室8aから作動液が流出すると共に第2圧力室31aに作動液が流入する。また、ロッド7が軸線方向の他方(図2において右方)に移動したときには、第1圧力室8aに作動液が流入すると共に第2圧力室31aから作動液が流出するようになっている。
【0039】
ロック機能付き移動装置1Aには液圧流路10が設けられている。この液圧流路10は、第1圧力室8aと第2圧力室31aとを接続する。液圧流路10には、上述の第1実施形態と同様の切換弁11が設けられている。
【0040】
このような構成において、リニアモータ5の動作時には、切換弁11は開放されて上述の許可状態に切り換えられる。それにより、第1圧力室8aに対する作動液の流入および当該第1圧力室8aからの作動液の流出と、これに伴う第2圧力室31aからの作動液の流出および第2圧力室31aに対する作動液の流入とが許可される。
【0041】
これに対して、舵板をある舵角で保持するとき、つまり舵軸4の回動を停止させるときには、リニアモータ5の動作が停止されると共に切換弁11が閉じられて上述の禁止状態に切り換えられる。それにより、液圧流路10を通じた作動液の流れが止められるため、リニアモータ5のロッド7の移動が止められる。これによって、舵柄30の揺動が止められ、舵軸4の回動を止めることができる。なお、圧力保持装置12の構成およびその機能は第1実施形態と同じである。
【0042】
以上のように、本実施形態のロック機能付き移動装置1Aによれば、第1圧力室8aと第2圧力室31aとを接続する液圧流路10の作動液の流れを切換弁11によって禁止状態にしてリニアモータ5のロッド7の位置をロックすることができる。これにより、リニアモータ5に対する継続的な通電を回避することができるため、コストを抑えることができる。また、クラッチやブレーキなどの機構を設けることなくロッド7の位置をロックすることができるので、構造が複雑化しない。これにより、コストを抑えつつ簡易な構成で、リニアモータ5のロッド7の位置をロックすることができ、これにより舵角を保持することができる。
【0043】
(第3実施形態)
続いて、第3実施形態に係るロック機能付き移動装置1Bについて説明する。図3のロック機能付き移動装置1Bにおいて、上述した第1実施形態のロック機能付き移動装置1および第2実施形態のロック機能付き移動装置1Aにおける構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付与し、特記した場合を除いてその説明を省略する。
【0044】
図3に示すように、第3実施形態のロック機能付き移動装置1Bにおいては、1つのリニアモータ5のみ設けられている。ロック機能付き移動装置1Bにおいて、ピン3aは、リニアモータ5のロッド7の先端(図3では右端)に設けられている。また、ロッド7の基端側部分はシリンダ32内に往復動可能に挿入されている。ロッド7の基端側部分には隔壁部7aが設けられており、この隔壁部7aによりシリンダ32内の領域が第1圧力室32aと第2圧力室32bとに区画されている。このような構成において、ロッド7が軸線方向の一方(図3において左方)に移動したときには、第1圧力室32aから作動液が流出すると共に第2圧力室32bに作動液が流入する。また、ロッド7が軸線方向の他方(図3において右方)に移動したときには、第1圧力室32aに作動液が流入すると共に第2圧力室32bから作動液が流出するようになっている。
【0045】
ロック機能付き移動装置1Bには液圧流路10が設けられている。この液圧流路10は、第1圧力室32aと第2圧力室32bとを接続する。液圧流路10には、上述の第1および第2実施形態と同様の切換弁11が設けられている。
【0046】
このような構成において、リニアモータ5の動作時には、切換弁11は開放されて上述の許可状態に切り換えられる。それにより、第1圧力室32aに対する作動液の流入および当該第1圧力室32aからの作動液の流出と、これに伴う第2圧力室32bからの作動液の流出および第2圧力室32bに対する作動液の流入とが許可される。
【0047】
これに対して、舵板をある舵角で保持するとき、つまり舵軸4の回動を停止させるときには、リニアモータ5の動作が停止されると共に切換弁11が閉じられて上述の禁止状態に切り換えられる。それにより、液圧流路10を通じた作動液の流れが止められるため、リニアモータ5のロッド7の移動が止められる。これによって、舵柄30の揺動が止められ、舵軸4の回動を止めることができる。なお、圧力保持装置12の構成およびその機能は第1および第2実施形態と同じである。
【0048】
以上のように、本実施形態のロック機能付き移動装置1Bによれば、第1圧力室32aと第2圧力室32bとを接続する液圧流路10の作動液の流れを切換弁11によって禁止状態にしてリニアモータ5のロッド7の位置をロックすることができる。これにより、リニアモータ5に対する継続的な通電を回避することができるため、コストを抑えることができる。また、クラッチやブレーキなどの機構を設けることなくロッド7の位置をロックすることができるので、構造が複雑化しない。これにより、コストを抑えつつ簡易な構成で、リニアモータ5のロッド7の位置をロックすることができ、これにより舵角を保持することができる。
【0049】
(第4実施形態)
続いて、第4実施形態に係るロック機能付き移動装置1Cについて説明する。図4のロック機能付き移動装置1Cにおいて、上述した第1乃至第3実施形態のロック機能付き移動装置1,1A,1Bにおける構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付与し、特記した場合を除いてその説明を省略する。
【0050】
図4に示すように、本実施形態のロック機能付き移動装置1Cは、電動アクチュエータであるリニアモータ5を作動させることで、対象物Wを昇降させるものである。ロック機能付き移動装置1Cにおいては、1つのリニアモータ5のみ設けられている。
【0051】
リニアモータ5のロッド7の上端には、対象物Wを保持する例えば板状の保持部40が設けられている。また、ロッド7の上端側の部分には水平方向の一方(図4では右方)に延在する接続部材41が設けられており、当該ロッド7の下端側の部分には水平方向の一方(図4では右方)に延在する接続部材42が設けられている。
【0052】
このようなリニアモータ5と平行にシリンダ33が設けられている。このシリンダ33内には、両端がシリンダ33の外に突出したロッド35と、当該ロッド35の中途部に設けられシリンダ33内の領域を第1圧力室33aと第2圧力室33bとに区画する隔壁部34とが配置されている。ロッド35の上端は上述した接続部材41に連結されており、当該ロッド35の下端は上述した接続部材42に連結されている。
【0053】
このような構成において、ロッド7が上方に移動したときには、第1圧力室33aに作動液が流入すると共に第2圧力室33bから作動液が流出する。また、ロッド7が下方に移動したときには、第1圧力室33aから作動液が流出すると共に第2圧力室33bに作動液が流入するようになっている。
【0054】
ロック機能付き移動装置1Cには液圧流路10が設けられている。この液圧流路10は、第1圧力室33aと第2圧力室33bとを接続する。液圧流路10には、上述の第1乃至第3実施形態と同様の切換弁11が設けられている。
【0055】
このような構成において、リニアモータ5の動作時には、切換弁11は開放されて上述の許可状態に切り換えられる。それにより、第1圧力室33aに対する作動液の流入および当該第1圧力室33aからの作動液の流出と、これに伴う第2圧力室33bからの作動液の流出および第2圧力室33bに対する作動液の流入とが許可される。
【0056】
これに対して、対象物Wの保持高さをロック(維持)させるときには、リニアモータ5の動作が停止されると共に切換弁11が閉じられて上述の禁止状態に切り換えられる。それにより、液圧流路10を通じた作動液の流れが止められるため、リニアモータ5のロッド7の上下動が止められる。これによって、対象物Wの保持高さを維持することができる。なお、圧力保持装置12の構成およびその機能は第1乃至第3実施形態と同じである。
【0057】
以上のように、本実施形態のロック機能付き移動装置1Cによれば、第1圧力室33aと第2圧力室33bとを接続する液圧流路10の作動液の流れを切換弁11によって禁止状態にしてリニアモータ5のロッド7の位置をロックすることができる。これにより、リニアモータ5に対する継続的な通電を回避することができるため、コストを抑えることができる。また、クラッチやブレーキなどの機構を設けることなくロッド7の位置をロックすることができるので、構造が複雑化しない。これにより、コストを抑えつつ簡易な構成で、リニアモータ5のロッド7の位置をロックすることができ、これにより対象物Wの保持高さを維持することができる。
【0058】
(他の実施形態)
上述の各実施形態の他にも、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で次のような種々の変形も可能である。
【0059】
上記第1乃至第3実施形態では、舵柄の溝内に挿入されたピンをロッドに設けることでリニアモータの直線運動を舵柄の揺動運動に変換するように構成したが、変換機構がこれに限らず、例えばラック・ピニオンギア方式などの他の変換機構を採用してもよい。
【0060】
また、上記各実施形態では、電動アクチュエータとしてリニアモータを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば電磁プランジャーなどの他の電動アクチュエータを用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,1A,1B,1C ロック機能付き移動装置
2 舵柄
4 舵軸
5,6 リニアモータ(電動アクチュエータ)
7 ロッド
8a,32a,33a 第1圧力室
9a,31a,32b,33b 第2圧力室
10 液圧流路
11 切換弁
12 圧力保持装置
18 リリーフ弁
23 アキュムレータ
W 対象物
図1
図2
図3
図4