(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】パターンフリーアニロックスインク付けシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
B41F 31/06 20060101AFI20221219BHJP
B41F 7/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B41F31/06
B41F7/00
(21)【出願番号】P 2019016904
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-02-01
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】ジャック・ティー・ルストレンジ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ビー・アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジェイ・クナウスドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアンヌ・エル・リー
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/122204(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0016354(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0375497(US,A1)
【文献】特開平11-091078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0178944(US,A1)
【文献】特開平02-270555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/00-13/70
B41F 31/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット印刷用のインク付けシステムであって、
アニロックス部材であって、前記アニロックス部材が、内部に画定されたウェルを含む表面を有し、前記表面が、デジタルイメージング部材への転写のために、インクを受容および搬送するように構成されている、アニロックス部材と、
前記アニロックス部材と液体連通して、前記アニロックス部材の前記表面に前記インクの最初の部分を転写する、インク供給ステーションと、
前記アニロックス部材と接触する計量部材であって、前記アニロックス部材の前記表面のランドから前記アニロックス部材に供給されたインクの前記最初の部分の過剰なインクを除去するように構成されて、前記アニロックス部材上にインクの計量層をもたらし、前記ランドは前記アニロックス部材の上部外面を含むものである、計量部材と、
前記アニロックス部材と転がり接触しているオーバーフィルローラーアセンブリであって、前記ウェルの間の前記ランド上方のインクの前記計量層とインクのオーバーコート層との両方の前記デジタルイメージング部材への転写のために前記アニロックス部材の表面を被覆するため、前記計量部材の下流で前記ランド及びインクの前記計量層上に、前記計量部材によってインクの前記最初の部分が取られた前記アニロックス部材の前記表面の前記ランドの上方に追加されたインクを含む、インクの前記オーバーコート層を追加するように構成されているオーバーフィル形成ローラーを含む、オーバーフィルローラーアセンブリと、を備える、インク付けシステム。
【請求項2】
前記オーバーフィルローラーアセンブリが、前記オーバーフィル形成ローラーと、前記オーバーフィル形成ローラーに前記インクの前記オーバーコート層を転写するための第2の層インク供給源との間に、アニロックスローラーを含む、請求項1に記載のインク付けシステム。
【請求項3】
前記アニロックス部材への転写の前に、前記インクの前記オーバーコート層を平滑化するために、前記オーバーフィル形成ローラー上に載っている平滑化ローラーをさらに備える、請求項1に記載のインク付けシステム。
【請求項4】
前記平滑化ローラーが、長手方向シャフト軸を有し、前記オーバーフィル形成ローラーに対して前記長手方向シャフト軸の周りで回転可能であり、前記平滑化ローラーが、前記インクの前記オーバーコート層の改善された平滑化のために、前記長手方向シャフト軸に沿って移動可能である、請求項3に記載のインク付けシステム。
【請求項5】
前記アニロックス部材上のインクの前記オーバーコート層およびインクの前記計量層を平滑化するために、前記オーバーフィルローラーアセンブリの下流で、前記アニロックス部材と転がり接触している第2の平滑化ローラーをさらに備える、請求項1に記載のインク付けシステム。
【請求項6】
前記インク供給ステーションが、前記インクを貯蔵するインク供給源を含み、前記アニロックス部材が、前記インクの前記最初の部分をピックアップするように、前記貯蔵されたインクに浸漬され、かつそこを通って回転可能である、請求項1に記載のインク
付けシステム。
【請求項7】
前記オーバーフィル形成ローラーが前記インクに適合する外面を有している、請求項1に記載のインク
付けシステム。
【請求項8】
前記インク供給ステーションが、前記インクの前記最初の部分を、前記アニロックス部材の前記表面に転写するように構成された第1のインク供給源と、前記インクの前記オーバーコート層を、前記オーバーフィル形成ローラーに転写するように構成された第2のインク供給源と、を含む、請求項1に記載のインク付けシステム。
【請求項9】
前記第1のインク供給源および前記第2のインク供給源が、同じインクを共有し、前記インク供給ステーションが、前記第1のインク供給源と前記第2のインク供給源との間の前記インクを貯蔵するインク貯蔵部と、前記第1のインク供給源と前記第2のインク供給源との間で前記インクを移動させるように構成されたインク管理システムと、をさらに含む、請求項8に記載のインク
付けシステム。
【請求項10】
前記インク管理システムが、前記インクを前記第1のインク供給源から前記第2のインク供給源に移動させるために、前記第1のインク供給源と前記第2のインク供給源との間にポンプを含む、請求項9に記載のインク
付けシステム。
【請求項11】
オフセット印刷のためのインク付け方法であって、
インク供給ステーションから、デジタルイメージング部材への転写のために、インクを受容および搬送するように内部に画定されたウェルを含む、アニロックス部材の表面上に前記インクを転写することと、
前記アニロックス部材の前記表面のランドであって前記アニロックス部材の上部外面を含む前記ランドから前記アニロックス部材に転写された過剰なインクを除去して前記アニロックス部材上に前記インクの計量層をもたらすように構成されている、前記アニロックス部材と接触する計量部材を用いて、前記転写されたインクから前記アニロックス部材の前記表面上に前記インクの計量層を計量することと、
前記アニロックス部材と転がり接触するオーバーフィル形成ローラーを含むオーバーフィルローラーアセンブリを用いて、前記計量部材の下流で前記ランド及びインクの前記計量層上に、前記計量部材によってインクの最初の部分が取られた前記アニロックス部材の前記表面の前記ランドの上方に追加されたインクを含む、前記インクのオーバーコート層を追加して、前記アニロックス部材の表面を被覆してインクの組み合わされた計量およびオーバーコート層を形成することと、
前記ウェルの間の前記ランド上方のインクの前記組み合わされた計量およびオーバーコート層を、前記デジタルイメージング部材に転写することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記追加するステップが、アニロックスローラーを介して、前記オーバーフィル形成ローラーに前記インクの前記オーバーコート層を転写することを含み、前記オーバーフィル形成ローラーの表面回転速度に対する前記アニロックスローラーの表面回転速度を変えることによって、前記インクの前記オーバーコート層内のインク厚さの不一致を除去することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記追加するステップが、前記オーバーフィル形成ローラーに載っている平滑化ローラーを用いて、前記アニロックス部材への転写の前に、前記インクの前記オーバーコート層を平滑化することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記インクの前記オーバーコート層の改善された平滑化のために、前記平滑化ローラーをその長手方向シャフト軸に沿って振動させることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記インク供給ステーションが、前記インクの前記最初の部分を前記アニロックス部材の前記表面に転写するように構成された第1のインク供給源と、前記インクの前記オーバーコート層を前記オーバーフィル形成ローラーに転写するように構成された第2のインク供給源と、を含み、前記方法が、インク管理システムを介して、前記第1のインク供給源および前記第2のインク供給源に前記インクを移動させることと、前記第1のインク供給源から前記第2のインク供給源にそれらの間のポンプを介して前記インクをポンピングすることと、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記オーバーフィルローラーアセンブリの下流で、前記アニロックス部材と転がり接触している第2の平滑化ローラーを介して、インクの前記組み合わされた層を前記デジタルイメージング部材に転写する前に、インクの前記組み合わされたオーバーコートおよび計量層におけるいかなるパターニングおよびインク不安定性を除去することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記インクの前記オーバーコート層および前記インクの前記計量層の粘性を制御することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
インカーであって、
アニロックス部材であって、前記アニロックス部材が、内部に画定されたウェルを含む表面を有し、前記表面が、デジタルイメージング部材への転写のために、インクを受容および搬送するように構成されている、アニロックス部材と、
前記アニロックス部材の前記表面に前記インクの最初の部分を転写するために、前記アニロックス部材と液体連通している、インクチャンバと、
前記アニロックス部材と接触するドクターブレードであって、前記アニロックス部材の前記表面のランドから前記アニロックス部材に供給された前記インクの前記最初の部分の過剰なインクを掻き取り、前記アニロックス部材上に前記インクの計量層をもたらし、前記ランドは前記アニロックス部材の上部外面を含むものである、ように構成されている、ドクターブレードと、
前記アニロックス部材と転がり接触しているオーバーフィルローラーアセンブリであって、インクの前記計量層とインクのオーバーコート層との両方の前記デジタルイメージング部材への転写のために前記アニロックス部材の表面を被覆するため、前記ドクターブレードの下流で前記ランド及びインクの前記計量層上に、前記ドクターブレードによってインクの前記最初の部分が取られた前記アニロックス部材の前記表面の前記ランドの上方に追加されたインクを含む、前記インクのオーバーコート層を追加するように構成されている、オーバーフィル形成ローラーを含む、オーバーフィルローラーアセンブリと、を備え、
前記インクチャンバが、前記インクの前記最初の部分を、前記アニロックス部材の前記表面に転写するように構成されている第1のインク供給源と、前記インクの前記オーバーコート層を前記オーバーフィル形成ローラーに転写するように構成されている第2のインク供給源と、前記インクを前記第1のインク供給源および前記第2のインク供給源に移動させるように構成されているインク管理システムと、を含み、前記オーバーフィルローラーアセンブリが、前記オーバーフィル形成ローラーと、前記オーバーフィル形成ローラーに前記インクの前記オーバーコート層を転写するための前記第2のインク供給源との間に、アニロックスローラーをさらに含む、インカー。
【請求項19】
前記アニロックス部材への転写の前に、前記インクの前記オーバーコート層を平滑化するための前記オーバーフィル形成ローラー上に載っている平滑化ローラーをさらに備え、前記平滑化ローラーが、長手方向シャフト軸を有し、前記長手方向シャフト軸の周りで前記オーバーフィル形成ローラーに対して回転可能であり、前記平滑化ローラーが、前記インクの前記オーバーコート層の改善された平滑化のために前記長手方向シャフト軸に沿って移動可能である、請求項18に記載のインカー。
【請求項20】
前記インク管理システムが、前記オーバーフィル形成ローラーへのインク転写のために、前記第1のインク供給源から前記第2のインク供給源へ前記インクをポンピングする、前記第1のインク供給源から前記第2のインク供給源の間のポンプを含む、請求項18に記載のインカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してインクベースのデジタル印刷システムに関し、より詳細には、平版オフセット印刷システムで使用するためのインク付けシステムおよび方法に関する。
【0002】
関連技術のデジタルオフセット平版印刷システムでは、湿しシステムは、デジタルオフセットイメージングプレートの表面上に湿し水の薄層を適用する。次いで、イメージングシステムが、高出力レーザを使用して画像領域内の湿し水フィルムを蒸発させる。デジタルオフセットイメージングプレートの表面上に潜像が形成される。潜像は、蒸発後に残った適用された湿し水のパターンに対応する。
【0003】
インク付けシステムを使用して、イメージングプレートの表面層上にインクの均一な層を適用することができる。典型的には、インク付けシステムのインカー形成ロール上に供給されたインクは、インクが形成ロールからイメージングプレート上に転写されるにつれて形成ロールから枯渇する。潜像を含むイメージングプレート表面の一部がインク付けシステムを通過すると、インクはレーザが湿し水を蒸発させたプレート領域上に堆積する。逆に、インクは、湿し水が残っているプレート領域によって拒絶される。次に、得られたインク画像は、圧力を介して紙または他の印刷媒体に転写される。
【0004】
インカー形成ロールからのインクは、インク転写中にイメージング部材上に裂けて、その上に不均一なインクをもたらすことがあるいくらかのインクを成形ロール上に残すことがある。形成ロール上へのインクの供給中、形成ロール上の全ての領域が同じ厚さのインクで被覆されるわけではない。形成ロール上のインク層が不均一であり、画像印刷において対応するより明るい領域を引き起こすぎりぎりの層状のインクの領域を有する場合、印刷の不規則性が生じる可能性がある。
【0005】
この問題を相殺するために、インカー形成ロールは、アニロックスロールのようなアニロックス部材とすることができる。しかしながら、アニロックスロールの1つの欠点は、マイクロスケールでの不均一なインク堆積である。インクは、アニロックスロールのセルから転写されるので、堆積後にインクが広がらないと、堆積したインクにアニロックスセルのパターンが視認可能になる。これは、大部分のインクがセルの中心から転写し、アニロックスセルのランド(セル壁の上部表面)からはほとんどインクが転写しないという事実によるところが大きい。
【0006】
現在のアニロックスインク付けシステムは、インクがブレードの下に均一にハイドロプレーンを形成するように計量ブレードを設定することができる。すなわち、計量ブレードは、アニロックスロールから空間的に分離されて、インクがそのランドを含むローラー表面をコーティングすることを可能にする。このようにインカーを操作すると、より良好な固体領域の均一性が改善するが、ブレードの下にあるハイドロプレーンを形成するインクの量は多くの要因(例えば、インク温度、インク粘度、インカー中のインク量、ブレード圧力、ブレード角度)に敏感であるため、一時的に制御するのはやや困難である。
【0007】
したがって、可変データを印刷するための従来の印刷技術の欠点を克服する必要がある。印刷媒体(例えば、プリント基板)のパターンフリーインク付けを用いて高画像品質のデジタル印刷物を製造することは有益であろう。インクベースのデジタル印刷は、ある画像から次の画像へと変化可能な画像を媒体上に生成するための可変画像データのインクベースの印刷を画像形成化プロセスにおける媒体上の各々の後続印刷と共に指すと理解される。
【0008】
以下は、本教示の1つ以上の実施形態または実施例のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために簡略化された概要を提示する。この概要は広範囲の概要ではなく、また本教示の主要なまたは重要な要素を特定することも、開示の範囲を描写することも意図されていない。むしろ、その主な目的は、後で提示される詳細な説明への導入として、単純に1つまたは複数の概念を提示することである。さらなる目的および利点は、図面の説明、本開示の詳細な説明、および特許請求の範囲においてより明らかになるであろう。
【0009】
本開示において具現化される前述および/または他の態様および有用性は、インク付け装置を有するデジタルオフセットインク付けシステムを提供することによって達成され得る。インク付け装置は、アニロックス部材、インク供給ステーション、計量部材およびオーバーフィルローラーアセンブリを含み得る。アニロックス部材は、内部に画定されたウェルを含む表面を有することができ、その表面は、デジタルイメージング部材への転写のためにインクを受容および搬送するように構成される。インク供給ステーションは、アニロックス部材と液体連通して、インクの最初の部分をアニロックス部材の表面に転写することができる。計量部材は、アニロックス部材と接触し、アニロックス部材に供給されたインクの最初の部分の過剰なインクをアニロックス部材の表面から除去して表面上にインクの計量層をもたらすように構成されてもよい。オーバーフィルローラーアセンブリは、アニロックス部材と転がり接触していてもよく、計量部材の下流でインクの計量層上にインクのオーバーコート層を追加して、インクの計量層とインクのオーバーコート層の両方をデジタルイメージング部材に転写するように構成されたオーバーフィル形成ローラーを含んでもよい。
【0010】
本明細書に示す態様によれば、インク付け方法は、インク供給ステーションからアニロックス部材の表面上にインクを転写することを含みことができ、表面は、デジタルイメージング部材への転写のためにインクを受容および搬送するために内部に画定されたウェルを含む。インク付け方法は、アニロックス部材と接触する計量部材を用いて、アニロックス部材の表面上に転写されたインクからインクの計量層を計量することを含み、計量部材は、アニロックス部材の表面からアニロックス部材に転写された過剰なインクを除去して表面のインクの計量層をもたらすように構成されている。インク付け部材は、アニロックス部材と転がり接触するオーバーフィル形成ローラーを含むオーバーフィルローラーアセンブリを用いて、計量部材の下流でインクの計量層上にインクのオーバーコート層を追加することと、インクの計量層とインクのオーバーコート層の両方をデジタルイメージング部材に転写することとをさらに含むことができる。
【0011】
本明細書に記載の態様によれば、印刷に有用なインカーは、アニロックス部材、インクチャンバ、ドクターブレード、およびオーバーフィルローラーアセンブリを含むことができる。アニロックス部材は、内部に画定されたウェルを含む表面を有することができ、その表面は、デジタルイメージング部材への転写のためにそのインクを受容および搬送するように構成される。インクチャンバは、アニロックス部材と液体連通してアニロックス部材の表面へインクの最初の部分を転写することができる。ドクターブレードは、アニロックス部材と接触し、アニロックス部材に供給されたインクの最初の部分の過剰なインクをアニロックス部材の表面から除去して表面上にインクの計量層をもたらすように構成されてもよい。オーバーフィルローラーアセンブリは、アニロックス部材と転がり接触し、ドクターブレードの下流でインクの計量層上にインクのオーバーコート層を追加して、インクの計量層とインクのオーバーコート層の両方をデジタルイメージング部材に転写するように構成されたオーバーフィル形成ローラーを含んでもよい。インクチャンバは、インクの最初の部分をアニロックス部材の表面に転写するように構成された第1のインク供給源と、インクのオーバーコート層をオーバーフィル形成ローラーに転写するように構成された第2のインク供給源と、インクを第1のインク供給源および第2のインク供給源に移動させるように構成されたインク管理システムとを含むことができる。
【0012】
例示的な実施形態が、本明細書に記載されている。しかしながら、本明細書に記載の装置およびシステムの特徴を組み込んだシステムは全て、例示的な実施形態の範囲および精神に包含されることが想定されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の一例に係るインク付け装置の側面図であり、
【
図2】
図1に例示されたインク付け装置を使用した可変データデジタルオフセットインク付けシステムのブロック図であり、
【
図3】可変データデジタルオフセットインク付けシステムで使用するように構成された例示的なインク付け装置の動作を示すフローチャートである。
【0014】
本明細書に開示されているデバイス、システム、および方法の例示的な例を、以下に提供する。デバイスおよび方法の実施形態は、以下に記載される例のうちの任意の1つまたは複数、および任意のそれらの組み合わせを含み得る。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、以下に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの例示的な実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、そして本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。したがって、例示的実施形態は、本明細書に記載の装置、機構、および方法の精神および範囲内に含まれ得る全ての代替物、修正物、および等価物を網羅することを意図している。
【0015】
本開示の詳細を不必要に曖昧にしないように、周知の出発材料、処理技術、構成要素、機器および他の周知の詳細の説明は単に要約されるか省略されることを最初に指摘する。したがって、詳細が他の点ではよく知られている場合、我々はそれらの詳細に関連する選択を示唆または指示するために本開示の適用に任せる。図面は、インク付け部材からデジタルイメージング部材の再イメージング可能表面にインク付けするための例示的な方法、装置、およびシステムの実施形態に関連する様々な例を示す。
【0016】
本明細書中の任意の数値範囲を指す場合、そのような範囲は、記載された範囲の最小値と最大値との間の各々のおよび全ての数および/または端数を含むと理解される。例えば、0.5~6%の範囲は、5.95%、5.97%、および5.99%までの全ての中間値0.6%、0.7%、および0.9%を明白に含むであろう。文脈上明らかにそうでないことを指示しない限り、同じことが本明細書中に記載された互いの数値特性および/または要素範囲にも適用される。
【0017】
量に関連して使用される「約」という修飾語は、記載された値を含み、文脈によって指示される意味を有する(例えば、少なくとも特定の量の測定に関連する誤差の程度を含む)。特定の値を使用するとき、その値を開示することも考慮されるはずである。例えば、用語「約2」はまた、値「2」を開示し、範囲「約2~約4」もまた、範囲「2~4」を開示する。
【0018】
用語「コントローラ(controller)」は、本明細書では一般に、プロセスまたは機械を指示または調整する1つ以上のデバイスの動作に関連するコンピューティングデバイスなどの様々な装置を説明するために使用される。本明細書で論じる様々な機能を実行するために、コントローラを(例えば専用ハードウェアなどを用いて)多数の方法で実装することができる。「プロセッサ」は、本明細書で論じられる様々な機能を実行するためにソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされ得る1つまたは複数のマイクロプロセッサを使用するコントローラの一例である。コントローラは、プロセッサを用いて、または用いずに実装することができ、いくつかの機能を実行するための専用ハードウェアと、他の機能を実行するためのプロセッサ(例えば、1つまたは複数のプログラムされたマイクロプロセッサおよび関連回路)の組み合わせとして実装されてもよい。本開示の様々な実施形態で用いられ得るコントローラの構成要素例には、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、およびフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含むが、これらに限定されない。
【0019】
「媒体」、「印刷媒体」、「印刷基材」および「印刷用紙」という用語は、画像の場合、プレカットかウェブフィードかにかかわらず、一般に、通常柔軟な物理的な紙、ポリマー、マイラー材料、プラスチック、または他の好適な物理的印刷媒体基材、用紙、ウェブなどの物理的用紙を指す。列挙された用語「媒体」、「印刷媒体」、「印刷基材」および「印刷用紙」はまた、当業者によって容易に理解されるように、織布、不織布、金属フィルム、および箔を含み得る。
【0020】
本明細書で使用される「印刷デバイス」または「印刷システム」という用語は、デジタルコピー機またはプリンタ、スキャナー、画像印刷機、ゼログラフィーデバイス、静電写真デバイス、デジタルプロダクションプレス、文書処理システム、画像再生機、製本機、ファクシミリ機、多機能機、または一般に、印刷プロセスなどを実行するのに有用な装置を指す場合があり、いくつかのマーキングエンジン、送り機構、スキャニングアセンブリ、ならびに給紙装置、フィニッシャなどの他の印刷媒体処理ユニットを含み得る。「印刷システム」は、用紙、ウェブ、基材などを取り扱うことができる。印刷システムは、任意の表面上などに印を付けることができ、入力用紙上の印を読み取るいずれの機械であり得、またはそのような機械の任意の組み合わせである。
【0021】
実施形態によるインク付けシステムまたはインカーサブシステムは、インク付けシステムが「イメージング部材」とも呼ばれる中央イメージングプレートの周りに配置されるようにデジタルオフセットアーキテクチャに組み込まれてもよい。イメージング部材は円筒状またはドラムであり得る。イメージング部材の表面は、イメージング部材をデジタルイメージング部材にするように再イメージング可能である。表面も順応性がある。順応性のある表面は、例えば、シリコーンを含み得る。媒体転写ニップを形成するために、イメージング部材の周囲に紙経路構造を載置することができる。
【0022】
湿し水の均一な適用は、湿し装置によって中央イメージングプレートの表面に適用することができる。デジタル蒸発ステップでは、中央イメージングプレートの表面に適用された湿し水層の特定の部分をデジタル蒸発システムによって蒸発させることができる。例えば、湿し水層の一部を、レーザパターニングによって蒸発させて潜像を形成することができる。蒸気除去ステップでは、蒸発した湿し水が凝縮してイメージングプレート上に戻るのを防ぐために、蒸発した湿し水を蒸気除去デバイスによって集めることができる。
【0023】
インク付けステップでは、インク付けシステムから中央イメージングプレートの表面にインクを転写することができる。転写されたインクは、湿し水が蒸発したイメージング部材の表面の一部に付着する。画像転写ステップでは、転写されたインクを媒体転写ニップで紙などの媒体に転写することができる。
【0024】
可変平版印刷プロセスでは、ゴーストを防止するために以前にイメージングされたインクをイメージング部材から除去しなければならない。画像転写ステップの後、イメージング部材の表面を洗浄システムによって洗浄することができる。例えば、粘着性の洗浄ローラーを使用して、イメージング部材の表面から残留インクおよび湿し水を除去することができる。
【0025】
上記のように、アニロックスインク付けシステムの欠点は、マイクロスケールでの不均一なインク堆積の可能性である。アニロックス部材上のインクの大部分は、アニロックスセルの中心から転写し、ほとんどのインクは、ランドからは転写しない。デジタルリソグラフィプロセスは、典型的には、イメージング部材上への堆積後にあまり広がらない高粘度インク(例えば、100cP超)を使用する。これにより、アニロックスセルパターンの空間周波数に対応するインクプリントのベタ領域に空間的に周期的なボイドが生じる可能性がある。フレキソインクは粘性が低く(例えば5~10cP)、自然に広がってボイドを埋めることができるため、フレキソ印刷はこの問題を覆い隠すことがある。さらに、フレキソプレートは静止しているので、プレートがインク付けシステムを何度も通過するにつれて、いかなる構造化アニロックスパターンも経時的に平均化される。しかしながら、デジタルインク印刷の可変画像データ要件のために、イメージング部材表面は一回転毎に清掃され、それによってデジタル印刷プロセスを、高粘度インクを計量する単一パススルーアニロックスインク付け部材で示される構造化インク堆積に曝す。
【0026】
例では、オーバーフィルローラーアセンブリを含み得るオーバーフィルインカーは、イメージング部材へのインク転写の前に、アニロックス部材(一次アニロックスローラーとも称される)にインクの均一な層を追加する。このインクの二次層は、ハイドロプレーン計量が達成するものと同様に、セル壁のランドを含む一次アニロックスローラーの全領域を均一に被覆する。これにより、アニロックスローラー表面のランド上に有益なインク被覆を保持しながら、アニロックスローラー上にドクターブレードハイドロプレーニングインクを有するアニロックスローラーの設定が簡単になる。アニロックスローラーは、現在アナログ印刷でよく知られているアニロックスロールのデザインであることが理解される。
【0027】
図1は、実施形態によるデジタルオフセットインク付けのための例示的なインク付け装置10を示す。インク付け装置10は、インク付け部材(例えば、一次アニロックスローラー12)、インク供給ステーション14、計量部材16、およびオーバーフィルローラーアセンブリ18を含む。
図1は、再イメージング可能な順応性のある表面22を有するデジタルイメージング部材20を備えて配置されたインク付け装置10を示す。
【0028】
一次アニロックスローラー12は、当業者にはよく理解されるように、イメージング部材にインクを搬送するためのウェルまたはセルを有する硬質表面(例えば、クロム、セラミック)を有するアニロックスロールを含む。ウェルは、機械的またはレーザエッチングもしくは彫刻することができ、ある量のインクを含むように構成することができる。アニロックスローラー12は、インクハウジング40またはインク供給ステーション14のインク溜めなど、ローラー表面がインク付け装置10のインク供給源に半浸漬するように位置することができる。代替的に、アニロックスローラー12は、1つ以上のドナーロールと接触し、ドナーロールの1つがインクハウジング内に半浸漬されてもよい。
【0029】
一次アニロックスローラー12の硬質表面は、ローラーから過剰なインクを除去するための計量部材16(例えばドクターブレード)の使用を可能にする。例えば、一次アニロックスローラーが処理方向56に回転して過剰なインクを除去するときに、一次アニロックスローラー12の表面にドクターブレードを適用して、インクハウジング40からローラーに供給されるインクをレベリングすることができる。
【0030】
オーバーフィルローラーアセンブリ18は、イメージング部材20へのインク転写の前に、一次アニロックスローラー12に均一なインクのオーバーコート層のインクを加えることができる。このインクのオーバーコート層は、セル壁のランドを含む一次アニロックスローラー表面を均一に被覆し、一次アニロックスローラー12のセルパターンに対応し得る空間的に周期的なボイドなしにミクロスケールで均一なインク堆積を可能にする。特定の厚さに限定されないが、インクのオーバーコート層は、0.25μmから10μmの間、約5μm未満、または約1μm未満の厚さを有し得る。オーバーフィルローラーアセンブリ18は、一次アニロックスローラー12をインクのオーバーコート層で均一にコーティングするための1つ以上のローラーを含み得る。具体的には、オーバーフィルローラーアセンブリは、インク転写ニップ26で一次アニロックスローラー12と接触する非剛性形成ローラー24を含み得る。非剛性形成ローラー24は、例えば、インクの化学的性質に適合するEPDMまたはニトリルゴムのようなゴムでできている非剛性で順応性のある表面を有することができる。非剛性形成ローラー24の表面は、発泡体を含んでもよい。非剛性形成ローラーは、一次アニロックスローラー12の回転方向56とは反対の方向58に回転可能である。
【0031】
非剛性形成ローラー24は、一次アニロックスローラー12と共に転動し、アニロックスセル壁のランドを含むアニロックスローラー面上にインクのオーバーコート層を転写することができる。非剛性形成ローラーは、一次アニロックスロール12に押し付けられ、オーバーフィルインクが一次アニロックスローラー上に転写されるときにインク転写ニップ26でインクを絞り、インクを広げて平滑化する。一次アニロックスローラー12のセルは、計量部材16によってレベリングされたインクハウジングからのインクで既に充填されていてもよい。したがって、非剛性形成ローラーからのインクのオーバーフィル層は、アニロックス部材12のセル内の計量されたインクと組み合わせ、計量部材によって以前にインクがかき取られていないアニロックス部材表面のランドを被覆してもよい。次に、一次アニロックスローラー12は、インクのオーバーコート層およびアニロックスセル内のインクを含むその表面から、ニップ28でイメージング部材表面22にインクを転写し、インクボイドのないイメージング部材表面上にインクの薄層(例えば、約0.25μm~10μm)をもたらす。インク層の厚さにおけるこの範囲は、インクの色または種類、および一次アニロックスセルの深さを含むいくつかの要因に依存し得る。
【0032】
オーバーフィルローラーアセンブリ18は、オーバーフィルドナーローラー、例えば、非剛性形成ローラー24を介して第1のまたは一次アニロックスローラー12にインクのオーバーコート層を追加し得るオーバーフィルアニロックスローラー30を含み得る。言い換えれば、オーバーフィルドナーローラーは、ニップ32で非剛性形成ローラー24と接触するアニロックスローラー30であり得る。オーバーフィルアニロックスローラー30のロールは、非剛性形成ローラー24と共に転動し、その後のオーバーコート層の一次アニロックスローラー12上への転写のために、インクのオーバーコート層を非剛性形成ローラー表面に堆積させる。オーバーフィルアニロックスローラー30は、アニロックスローラー12と同様でよく、当業者にはよく理解されるように、インクを非剛性形成ローラー24に搬送するように構成されたウェルまたはセルをその中に有する硬質表面(例えばクロム、セラミック)を有する。オーバーフィルアニロックスローラー30は、ローラーの表面がインク供給ステーション14のインクハウジング42またはインク溜めなどのインク供給源に半浸漬されるように、インク付け装置10内に位置することができる。代替的に、アニロックスローラー30は、1つ以上のドナーロールと接触し、ドナーロールの1つがインクハウジング内に半浸漬されてもよい。実施例では、インク供給源からの過剰なインクは、例えばドクターブレード34を用いてアニロックスローラー30の表面から掻き取ることができる。
【0033】
特定の理論に限定されないが、2つのアニロックスローラー12、30は、異なるセル容積を有するサイズのセルを有することができる。すなわち、アニロックスローラー12は、アニロックスローラー30のセルとは異なるセル容積を有するセルを有することができる。一例では、一次アニロックスローラー12は、イメージング部材表面22へのインクの薄層の転写のためにより少量のインクを搬送するように意図的に設計された、より小さい体積を有するセルを含み得る。一例では、オーバーフィルアニロックスローラー30は、一次アニロックスローラー12のセルよりも大きい容積を有し、非剛性形成ローラー24を介して過剰インクドナーとして設計されたセルを有し、一次アニロックスローラーのランドパターンを被覆することができるオーバーコートインクを提供する。一例では、一次アニロックスローラー12とオーバーフィルアニロックスローラー30のアニロックスセルパターンは、アニロックスローラー間の表面ランドパターンの一致を避けるために異なっていてもよい。
【0034】
オーバーフィルローラーアセンブリ18は、非剛性形成ローラー24上に載る平滑化部材をさらに含み、非剛性形成ローラー上のインクのオーバーコート層を平滑化するのを助けることができる。平滑化部材は、オーバーフィルアニロックスローラーセルパターンからインクを平滑化するのを助けるために非剛性形成ローラー24の上に載ることができる撹乱ローラー36とすることができる。攪乱ローラー36は、軟質コートされていても硬質であってもよく、インクと接触することによって非剛性形成ローラー24の表面にインクを広げるように構成されていてもよい。攪乱ローラーは、長手方向軸を中心に回転するように構成されてもよく、軸方向に移動可能に構成されてもよい。例えば、攪乱ローラー36は、その長手方向軸に沿って振動してさらなる平滑化を提供し、インクの隆起の不安定性を防止し得る。具体的には、攪乱ローラー36は、アニロックス部材12へのインクの転写前に、非剛性形成ローラー24上のオーバーフィルインクの改善された広がりおよび平滑化のために回転しながら軸方向に前後に移動することができる。平滑化は、例えば、オーバーフィルアニロックスローラー30から非剛性形成ローラー24の表面上に計量されたオーバーコートインク層からアニロックスロールパターンを除去するように構成されてもよい。一例では、平滑化部材は、ドクターブレードなどの計量部材でもあり得る。
【0035】
アニロックスローラー12、30と非剛性形成ローラー24の両方が駆動される可能性が高いが、撹乱ローラー36は、非剛性形成ローラーによって駆動されてもよい。インク付け装置10の付加的な利点は、ローラーの回転速度を変えることができることである。例えば、オーバーフィルアニロックスローラー30の表面回転速度を非剛性形成ローラー24の表面回転速度に対して変化させることによって、オーバーフィルインクの量を微調整して、オーバーコートインクの薄い均一層(例えば、0.25μm~10μm)を得ることができる。
【0036】
インク付け装置10は、インクのオーバーコート層が一次アニロックスローラーに追加されて、インクの組み合わされた層がイメージング部材表面22に転写される前に、インクの組み合わされたオーバーコートおよび計量層におけるいかなるパターン形成およびインクの不安定性も除去した後に、オーバーフィルローラーアセンブリ18の下流の一次アニロックスローラー12に載る第2の平滑化部材66をさらに含むことができる。第2の平滑化部材66は、攪乱ローラー36と実質的に同様であり得る。言い換えれば、第2の平滑化部材66は、軟質コートされていても、硬質でもよく、意図的にインクと接触することによって一次アニロックスローラー12の表面上にインクの組み合わされた層を広げるように設計される。擾乱ロール36と同様に、第2の平滑化部材は、その長手方向軸を中心に回転してもよく、軸方向に移動可能であってもよい。例えば、第2の平滑化部材66は、その長手方向軸に沿って振動してさらなる平滑化をもたらし、インクの隆起の不安定性を防止することができる。具体的には、第2の平滑化部材66は、ニップ28でイメージング部材表面22にインクを転写する前に、一次アニロックスローラー12上の組み合わされたオーバーコート層および計量されたインク層の改善された広がりおよび平滑化のために回転しながら軸方向に前後に移動することができる。
【0037】
特定の理論に限定されないが、アニロックスローラー12、30のそれぞれは、別々のそれぞれのインクハウジング40、42からインクを引き込むことができる。インクハウジングは、アニロックスローラーにインクを供給するように構成されたインク供給ステーション14の一部とすることができる。インク供給ステーション14は、アニロックスローラー12、30に転写されるインクを維持する。したがって、アニロックスローラーへの転写のために、同じインクまたは同じ種類のインクをインクハウジング40、42に貯蔵することができる。一例では、インク供給ステーション14は、ハウジング40、42間にインクを貯蔵し、必要に応じてハウジングにインクを移動させることができる。例えば、インク供給ステーション14は、中央インク貯蔵ユニットとしてのインク貯蔵部46と、インク貯蔵部と各々のインクハウジング40、42との間にあり、インク貯蔵部とインクハウジングとの間でインクを移送することができる導管48、50とを含むことができる。インク供給ステーション14はまた、ここでは例としてポンプ52、54として識別される、インク貯蔵部46とインクハウジング40、42との間でインクを移動させ、インクの計量層をアニロックスローラー12に、インクのオーバーコート層をアニロックスローラー30に転写するのに十分な各々のインクハウジング内のインクの量を維持するように構成される1つまたは複数のポンプを含み得る。
【0038】
オーバーフィルアニロックスローラー30が一次アニロックスローラー12にインクを供給する例、またはオーバーフィルアニロックス部材30のセルがより大きい容積を有する例では、インクハウジング42からのインクは、インクハウジング40からのインクよりも早く使用され得る。他の例では、インクハウジング40からのインクを、インクハウジング42からのインクよりも早く使用することができる。インクが異なる速度でインクハウジング40、42から引き込まれる例では、ポンプ52、54は、必要に応じて1つのインクハウジングから別のインクハウジングに方向38にインクを移動させてインク付け装置10によって使用される各々のハウジング内のインクの十分なレベルを維持するように構成することができる。例えば、
図2は、インクハウジング40からインクハウジング42へインクを移動させるように構成されたポンプ52、54を有するインク管理システムとしてのインク供給ステーション14を示す。
【0039】
さらに
図1および
図2を参照すると、イメージング部材表面22は、耐摩耗性および可撓性であり得る。表面22は、再イメージング可能かつ順応性があり、弾性およびデュロメータ、ならびに異なるレベルの粗さを有する様々な異なる媒体の種類上にインクをコーティングするのに十分な可撓性を有することができる。再イメージング可能表面層の厚さは、例えば、約0.5ミリメートル~約4ミリメートルであり得る。表面22は、界面においてインクに対して弱い接着力を有するが、再イメージング可能表面への均一なインク付けおよびそれに続く印刷基材へのインクの転写リフトを促進するために、インクとのさらに良好な親油性湿潤特性を有するべきである。
【0040】
イメージング部材の軟質の順応性のある表面22は、シリコーンを含むことができる。ポリウレタン、フルオロカーボンなどの混合物を含む他の材料を使用することができる。表面は、インク画像が印刷される印刷基材に適合するように構成することができる。水ベース湿し水のような湿し液を効果的に濡らすために、シリコーン表面は親水性である必要はないが、疎水性であってもよい。シリコーングリコールコポリマーのような湿潤界面活性剤を湿し液に添加して、湿し液がシリコーン表面を湿らせることを可能にしてもよい。イメージング部材は、ロールまたはドラムであり得、または平坦なプレート、ベルトの表面、もしくは他の構造であり得る。湿し液および湿し水という用語は、互換的であると考えられることが理解される。
【0041】
図2は、インク付け装置10を含むデジタルオフセットインク付けシステム44を示す。このシステムは、湿し液アプリケータ60、光学パターニングサブシステム62、インク画像転写ステーション64、レオロジー調整サブシステム68、70、および洗浄デバイス72をさらに含むことができる。
図1および
図2は、ローラーとして形成された構成要素を示しているが、他の好適な形態および形状が実施されてもよい。
【0042】
湿し液アプリケータ60は、イメージング部材表面22上に湿し水の層を堆積させるように構成することができる。特定の構成に限定されないが、湿し液アプリケータ60は、制御され得る層の厚さを有する湿し水(例えば湿し液)の均一な層で再イメージング可能表面22を均一に濡らすための一連のローラーまたはスプレー74を含み得る。湿し水は、以下により詳細に記載されるように、表面張力を低下させるために、ならびにその後のレーザパターニングを支持するために必要な蒸発エネルギーを低下させるために、任意選択で少量のイソプロピルアルコールまたはエタノールを添加した水を含み得る。低表面エネルギー溶媒、例えば揮発性シリコーン油もまた、湿し水として役立ち得る。
【0043】
光学パターニングサブシステム62は、印刷処理方向において湿し液アプリケータ60の下流に位置して、例えばレーザエネルギーを使用した画像通りのパターニングによって湿し水の層内に潜像を選択的にパターニングする。光学パターニングサブシステム62は、レーザエミッタとして示されているが、湿し水層をパターニングするために光エネルギーを供給するために様々な異なるシステムを使用することができることを理解されたい。
【0044】
光学パターニングサブシステム62による湿し水層のパターニングに続いて、再イメージング可能表面22上のパターニングされた層がインク付け装置10に提示される。インク付け装置10は、光学パターニングサブシステムの下流に位置付けされて、湿し水の層とイメージング部材20の再イメージング可能表面層との上に均一なインク層を適用する。インク付け装置10は、再イメージング可能表面22のイメージング部分を表す蒸発パターンにインクを堆積させることができるが、一方、湿し水のフォーマットされていない部分に堆積したインクは、それらの部分の疎水性および/または疎油性の性質に基づいて付着しない。インク付け装置は、再イメージング可能表面のイメージングされた部分のポケット内により良好に広がるようにインクの粘度を低下させるために表面22に適用される前にインクを加熱することができる。例えば、当業者にはよく理解されているように、インク付け装置の1つまたは複数のローラーを加熱することができる。加熱ローラーは、アニロックスローラー12、30のうちの少なくとも1つであり得る。インクの温度を制御して所望のインク粘度に到達させることによって、オーバーフィルインクの量を微調整して、オーバーコートインクの薄い均一層(例えば、0.25μm~10μm)をもたらすことができる。
【0045】
本明細書では、インクをUV硬化性インクとして説明することができるが、開示された実施形態は、そのような構成に限定されることを意図していない。インクは、UV硬化性インクまたはUV放射に曝されると硬化する別のインクであり得る。インクは、例えばその粘度を増大させることによって増大する凝集結合を有する別のインクであり得る。例えば、インクは、冷却されると濃くなり、加熱されると薄くなる溶媒インクまたは水性インクであり得る。
【0046】
インク付け装置10の印刷処理方向下流には、イメージング部材表面22から印刷基材76にインク画像を転写するインク画像転写ステーション64がある。再イメージング可能表面22のイメージングされた部分ポケット内のインクが基材76と物理的に接触するように、基板76がイメージング部材20と刻印ローラー80との間の転写ニップ78を通過するときに転写が行われる。
【0047】
レオロジー調整サブシステム68、70を使用して、必要に応じてデジタルオフセットインク付けシステム44の特定の位置でインクの粘度を高めることができる。特定の理論に限定されないが、レオロジー調整サブシステム68、70は、UV硬化ランプ(例えば、標準レーザ、UVレーザ、高出力UV LED光源)、波長可変光開始剤、または波長可変光開始剤、または、インク/コーティングを粘着性状態に部分的に硬化させるために、ある量のUV光(例えば、多数の光子放射)にインクを曝す他のUV源などの硬化機構を含み得る。硬化機構は、様々な形態の光学的または光硬化、熱硬化、電子ビーム硬化、乾燥、または化学硬化を含み得る。
図2に示す例示的なデジタルオフセットインク付けシステム44では、第1のレオロジー調整サブシステム68を、インク画像転写ステーション64の下流で基材76に隣接して位置付けして、基板に転写されたインク画像を硬化させることができる。第2のレオロジー調整サブシステム70は、デジタル画像形成化動作を反復するために表面を調製するイメージング部材表面22からの除去を容易にするために残留インクを硬化させるための前提条件として、インク画像転写ステーション64と洗浄デバイス72との間でイメージング部材表面22に隣接して位置付けすることができる。
【0048】
この残留インクの除去は、最も好ましくは、イメージング部材のイメージング可能表面を掻き取るまたは磨耗させることなく行われる。そのような残留流体残留物の除去は、インク画像転写ステーション64と湿し液アプリケータ60との間の表面22に隣接する何らかの形態の洗浄デバイス72を使用することによって達成することができる。そのような洗浄デバイスは、イメージング部材表面22と物理的に接触する接着性または粘着性のローラーのような少なくとも第1の洗浄部材を含み、接着性または粘着性洗浄デバイス部材は表面から残留流体材料(例えば、インク、湿し液)を除去する。次いで、接着性または粘着性部材を、残留流体が接着性または粘着性部材から転写され得る平滑ローラー(図示せず)と接触させるようにすることができ、その後、流体は、例えばドクターブレードまたは他の同様のデバイスによって平滑ローラーから剥ぎ取られて廃棄物として収集される。洗浄デバイス72は多くの種類の洗浄デバイスのうちの1つであり、再イメージング可能な印刷システムのイメージング部材の表面から残留インク/湿し液を除去するように設計された他の洗浄デバイスも実施形態の範囲内にあると考えられる。例えば、当業者にはよく理解されているように、洗浄デバイスは、少なくとも1つのローラー、ブラシ、ウェブ、ベルト、粘着性ローラー、バフ研磨ホイールなどを含むことができる。
【0049】
開示された実施形態は、フラッドコート層用途およびインクジェット画像形成化堆積を実装する例示的なインクジェット印刷方法を含み得る。
図3は、そのような例示的方法のフローチャートを示す。
図3に示すように、本方法の動作は、ステップS300で始まり、ステップS310に進む。
【0050】
ステップS310において、インク供給ステーションからのインクが、一次アニロックス部材の表面に転写される。一次アニロックス部材表面は、デジタルイメージング部材への転写のためにインクを受容および搬送するために内部に画定されたウェルを含むことができる。本方法の動作は、ステップS320に進み、そこで、計量部材が一次アニロックス部材と接触している状態で、一次アニロックス部材の表面上に転写されたインクからインクの層が計量される。計量部材は、一次アニロックス部材に転写された余剰のインクをインク供給源から除去するように構成されたドクターブレードであってもよく、その結果、一次アニロックス部材表面上にインクの計量層をもたらす。一次アニロックス部材は、所望に応じてインクの厚さを微調整するためにインクの計量層を加熱することもできる。方法の動作は、ステップS330に進む。
【0051】
ステップS330において、インクのオーバーコート層が、第2のインク供給源からオーバーフィルローラーアセンブリに転写される。このステップは、第2のインク供給部からオーバーフィルアニロックスローラーの表面にインクを転写することと、そのインクをオーバーフィルアニロックスローラーからオーバーフィル形成ローラーに転写することとを含み得る。オーバーフィルアニロックスローラーはまた、必要に応じてインクの厚さを微調整するためにインクのオーバーコート層を加熱することもできる。オーバーフィル形成ローラー上のインクのオーバーコート層は、オーバーフィル形成ローラー上に載っている平滑化ローラーを介して平滑化され得る。平滑化ローラーは、その長手方向軸に沿って振動して、オーバーフィル形成ローラー上のインクのオーバーコート層の平滑化を改善させることができる。この平滑化は、オーバーフィル形成ローラーの表面回転速度に対してオーバーフィルアニロックスローラーの表面回転速度を変えることによって微調整することができる。
【0052】
本方法の動作はステップS340に進み、そこでインクのオーバーコート層が、インクの計量層の上にコーティングされる。このステップは、オーバーフィルローラーアセンブリのオーバーフィル形成ローラーを介して、計量部材の下流の計量層上にオーバーコート層を追加することによって達成することができる。第2の平滑化ローラーは、オーバーフィルローラーアセンブリの下流で一次アニロックス部材上に載って、インクの組み合わされたオーバーコート層および計量層におけるいかなるパターン形成およびインクの不安定性も除去することができる。この平滑化は、一次アニロックス部材の表面回転速度に対して第2の平滑化ローラーの表面回転速度を変えることによって改善させることができる。方法の動作は、ステップS350に進むことができる。
【0053】
ステップS350において、インクの計量層およびインクのオーバーコート層の両方がデジタルイメージング部材に転写されて、デジタルイメージング部材表面上にインクボイドのないインクの薄層(例えば、0.25μm~10μm)をもたらす。ステップS360では、第1および第2のインク供給源のインクを必要に応じて移動またはポンピングして、インク供給源を十分に充填して一次アニロックス部材およびオーバーフィル形成ローラーにインクを転写し続けることができる。動作はステップS370で停止してもよく、またはステップS310に戻って繰り返すことによって継続してもよく、そこでより多くのインクが第1のインク供給部から一次アニロックス部材に転写されてもよい。
【0054】
実行可能方法ステップの例示的に描かれた一連は、ステップに記載された機能を実装するための対応する一連の動作の一例を表す。示された例示的なステップは、開示された実施形態の目的を実行するために任意の合理的な順序で実行され得る。方法の開示されたステップに対する特定の順序は、
図3および添付の説明における描写によって必ずしも示唆されないが、ただし、任意の特定の方法ステップが、任意の他の方法ステップの実行に必要な前提条件であると合理的に考えられる場合を除く。個々の方法ステップは、同時またはほぼ同時のタイミングで順番に、または並行して実行することができる。付加的に、示され、記載された方法ステップの全てが、開示によって特定のスキームに含まれる必要があるわけではない。