(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】トンネル覆工コンクリートの施工方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/08 20060101AFI20221219BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20221219BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20221219BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C04B28/08
E21D11/10 Z
C04B22/06 Z
C04B22/08 B
(21)【出願番号】P 2019021962
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】竹下 永造
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】土師 康一
(72)【発明者】
【氏名】澤村 淳美
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-076190(JP,A)
【文献】特開2016-124760(JP,A)
【文献】特開2018-076203(JP,A)
【文献】特開2005-306633(JP,A)
【文献】特開2018-172236(JP,A)
【文献】特開2018-123025(JP,A)
【文献】特開2009-150130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/08
E21D 11/10
C04B 22/06
C04B 22/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーン比表面積が4000~7000cm
2/gの膨張材と、アルカリ金属の亜硝酸塩およびアルカリ土類金属の亜硝酸塩から選ばれる1種以上の亜硝酸塩と、高炉セメントとを含有
し、
前記膨張材の添加量が10~50kg/m
3
であり、前記亜硝酸塩の添加率が前記高炉セメントに対して1.0~8.0質量%であるトンネル覆工コンクリートを、15℃以下の環境下で施工する、トンネル覆工コンクリートの施工方法。
【請求項2】
前記亜硝酸塩の添加率と前記膨張材の添加量を、
(A)環境温度が5℃以下の場合は、下記(1)式が描く曲線とy=50およびx=3.2で囲まれる領域から選択
し、
(B)環境温度が5℃を超え10℃以下の場合は、下記(1)式が描く曲線(ただし、曲線上は除く。)と下記(2)式が描く曲線とy=50およびx=3.2で囲まれる領域から選択し、
(C)環境温度が10℃を超え15℃以下の場合は、下記(2)式が描く曲線(ただし、曲線上は除く。)と下記(3)式が描く曲線とy=50およびx=3.2で囲まれる領域から選択する、
請求項1に記載のトンネル覆工コンクリートの施工方法。
y=
104.58×x
-1.079
・・・(1)
y=60.147×x
-0.952
・・・
(2)
y=24.59×x
-0.77
・・・
(3)
ただし、
前記yは膨張材の添加量(kg/m
3)、
前記xは亜硝酸塩(固形分)
の添加率(C×質量%)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトンネル覆工コンクリートの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル覆工コンクリートは、多くの場合、下記の(i)および(ii)の工程を繰り返してコンクリートを打継いで施工される。
(i)セントル型枠を、セントル台車を用いてトンネルに設置した後、セントル型枠内にコンクリートを打込む。
(ii)コンクリートが硬化した後、セントル台車が前進し、次区間へ移動する。
そして、トンネル覆工コンクリートの施工では、「セントル型枠は、打込んだコンクリートが必要な強度に達するまで取り外してはならないとされており、コンクリート打込み完了後、12~20時間程度で行われることが多く、脱型時におけるコンクリートの圧縮強度は2~3N/mm2を目安とされている」とされている(非特許文献1)。
【0003】
ところで、近年、副産物の有効活用や、地球温暖化の主な原因物質である二酸化炭素の生成抑制等の観点から、ポルトランドセメントの代替として、高炉セメントやフライアッシュセメント等の混合セメントが注目されている。これらのうち、高炉セメントは、製鉄所の副産物である高炉スラグ微粉末と普通ポルトランドセメントを混合したセメントであり、高炉スラグ微粉末を混合した分、セメントクリンカーの使用量、ひいては製造量(焼成量)を削減できるため、セメントの製造において二酸化炭素の生成抑制効果が大きい。
また、高炉セメントを用いたコンクリートは、普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートと、材齢28日における強度がほぼ同じで長期強度発現性に優れ、また、近年、塩害やアルカリ骨材反応の抑制効果が高いことも実証されている。
したがって、高炉セメントをトンネル覆工コンクリートに用いることができれば、高炉セメントの用途が拡大して、副産物の有効活用や、二酸化炭素の発生抑制等に資することになるが、高炉セメントを用いたコンクリートは、初期強度発現性、特に、低温環境下における初期強度発現性が低いため、高炉セメントを実構築物に用いる上で課題が多い。
【0004】
従来、コンクリートの強度を高める方法は、種々提案されている。例えば、材料面において、
特許文献1では、セメント質、フロロアウイン、無機硫酸塩、および凝結調整剤を主成分とするセメント組成物と水を混合し、現場打ちライニングするトンネルの施工方法が提案されている。そして、該方法は、急硬材(フロロアウインと無機硫酸塩)と凝結調整剤の作用で、コンクリートの流動性を一定時間確保しつつ、コンクリートを充填した後は、早期に強度が発現するとされている。
特許文献2では、無水セッコウ、硫酸アルミニウム、アルミン酸アルカリ金属塩、および硝酸塩類を含むセメント組成物が提案されている。そして、該混和材を用いれば、強度発現性が良好なセメント硬化体が得られるため、蒸気養生は不要とされている。
特許文献3では、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、およびカルシウムイオンを溶出する速度が異なる2種類以上の刺激剤からなる水硬性組成物が提案されている。そして、該水硬性組成物は、高炉スラグを含むにもかかわらず、通常のセメントと同等の凝結時間と強度発現性を有するとされている。
【0005】
一方、製造面において、
特許文献4では、次工程でオーバーラップされるセントルの端部を加熱して、所要の圧縮強度を発現させる方法が提案されている。
特許文献5では、2基の移動式セントルをトンネル掘進方向で同方向に前進させ、覆工コンクリートを施工するトンネル覆工コンクリートの打設方法が提案されている。該方法は、2基のセントルを用いてトンネル覆工コンクリートを製造する際に、それぞれのセントルにおいて打設時期に時間差を設けることにより、脱型強度を確保しつつ、覆工コンクリートの工期を短縮できるとされている。
【0006】
しかし、特許文献1~5の発明は、それぞれ下記の課題が懸念される。すなわち、
特許文献1の発明は、環境温度の変化に合わせて、凝結調整剤の添加量を決定することや流動性を調整することが難しい。
特許文献2の発明は、アルミン酸アルカリ塩の一部が劇物指定になっているため、材料の保管や管理に注意を要し、また、用いる材料の種類が多いため、各種温度において、コンクリートのフレッシュ性状の調整や硬化時間の調整が難しい。
特許文献3の発明は、低温では硬化が遅延し、特に、初期強度発現性が低い。また、取り扱う粉体が多いため、生コン工場での作業が煩雑になる。さらに、アルカリ性の刺激剤を多量に用いると、コンクリートの乾燥収縮が大きくなるため、ひび割れが生じ易い。
特許文献4の発明は、セントルが移動する際に反力がかかる部位では、必要な強度を確保できるが、その他の部位では強度発現性が低く、また、特殊な機材が必要なため汎用性が低い。
特許文献5の発明は、2基のセントルを用いるため、トンネルはある程度の規模が必要で、また、施工現場は生コンの出荷能力が高い地域や場所に限られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】「覆工セントル2基を使用した覆工コンクリートの高品質化」:土木学会第67回年次学術講演会、pp.9-10、VI-005、2012
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平2-293360号公報
【文献】特開平8-165154号公報
【文献】特開2014-148434号公報
【文献】特開2001-123794号公報
【文献】特開2013-129991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、前記課題に鑑みて、高炉セメントを用いたトンネル覆工コンクリートでも、低温での初期強度発現性が高く、また、乾燥収縮によるひび割れを抑制できるトンネル覆工コンクリートの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的にかなうトンネル覆工コンクリートの施工方法を検討したところ、特定の膨張材と亜硝酸塩を用いれば、前記目的を達成できることを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記の構成を有するトンネル覆工コンクリートの施工方法である。
【0011】
[1]ブレーン比表面積が4000~7000cm2/gの膨張材と、アルカリ金属の亜硝酸塩およびアルカリ土類金属の亜硝酸塩から選ばれる1種以上の亜硝酸塩と、高炉セメントとを含有し、
前記膨張材の添加量が10~50kg/m
3
であり、前記亜硝酸塩の添加率が前記高炉セメントに対して1.0~8.0質量%であるトンネル覆工コンクリートを、15℃以下の環境下で施工する、トンネル覆工コンクリートの施工方法。
[2]前記亜硝酸塩の添加率と前記膨張材の添加量を、
(A)環境温度が5℃以下の場合は、下記(1)式が描く曲線とy=50およびx=3.2で囲まれる領域から選択し、
(B)環境温度が5℃を超え10℃以下の場合は、下記(1)式が描く曲線(ただし、曲線上は除く。)と下記(2)式が描く曲線とy=50およびx=3.2で囲まれる領域から選択し、
(C)環境温度が10℃を超え15℃以下の場合は、下記(2)式が描く曲線(ただし、曲線上は除く。)と下記(3)式が描く曲線とy=50およびx=3.2で囲まれる領域から選択する、
前記[1]に記載のトンネル覆工コンクリートの施工方法。
y=104.58×x-1.079
・・・(1)
y=60.147×x
-0.952
・・・(2)
y=24.59×x
-0.77
・・・(3)
ただし、前記yは膨張材の添加量(kg/m3)、前記xは亜硝酸塩(固形分)の添加率(C×質量%)である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に用いるトンネル覆工コンクリートは、15℃以下の環境下でも、スランプを60分以上保持でき、また、材齢18時間の圧縮強度が、脱型可能な強度である2N/mm2以上であるため、本発明のトンネル覆工コンクリートの施工方法によれば、移動式型枠を用いて覆工コンクリートを施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】亜硝酸塩(固形分)添加率と石灰系膨張材添加量の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のトンネル覆工コンクリートの施工方法は、前記のとおり、ブレーン比表面積が4000~7000cm2/gの膨張材、およびアルカリ金属の亜硝酸塩およびアルカリ土類金属の亜硝酸塩から選ばれる1種以上の亜硝酸塩を含む硬化促進剤と、高炉セメントを含有するトンネル覆工コンクリートを、15℃以下の環境下で施工する方法である。
以下、膨張材、亜硝酸塩、および高炉セメント等に分けて詳細に説明する。
【0015】
1.膨張材
本発明で用いる膨張材は、ブレーン比表面積が4000~7000cm2/gである。ちなみに、通常用いられる膨張材は、ブレーン比表面積が2500~3500cm2/g程度と低い。ブレーン比表面積が高いと膨張発現性が低くなるため、今まで、ブレーン比表面積が4000cm2/g以上の膨張材は、ほとんど用いられなかった。しかし、本発明者らは、高炉セメントと亜硝酸塩と共に、ブレーン比表面積が4000~7000cm2/gの膨張材を用いれば、材齢18時間で脱型可能な強度である2N/mm2が得られることを見出した。なお、前記膨張材のブレーン比表面積は、好ましくは4500~6000cm2/gである。
ブレーン比表面積は、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に規定するブレーン空気透過装置を用い、セメントを詰めたセルの中を通過する空気の流速を溶液ヘッドの変化時間で求め、標準試料と比較して計算する。
前記膨張材の単位量は、10~50kg/m3である。膨張材の単位量が該範囲内にあれば、拘束膨張率が150~250×10-6である収縮補償コンクリートが得られる。
前記膨張材は、石灰系膨張材およびカルシウムサルフォアルミネート系膨張材から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、膨張発現性が高いため、好ましくは石灰系膨張材である。
石灰系膨張材は、遊離生石灰(CaO)を含む膨張性焼成物とセッコウを含有する。そして、前記膨張性焼成物は、炭酸カルシウム、消石灰、生石灰等のカルシウム質原料、シリカ質原料、アルミナ質原料、酸化鉄原料、およびセッコウ原料等の混合物を、電気炉やロータリーキルン等で焼成した後、ボールミル等で粉砕した後、分級して粒度を調整する。
石灰系膨張材の製造方法は、粉末状のセッコウと膨張性焼成物の粉砕物をミキサ等で混合するか、セッコウと膨張焼成物を混合した後に粉砕する。前記セッコウは、特に制限されないが、膨張発現性が高いため、好ましくは無水セッコウおよびII型無水セッコウ、より好ましくはII型無水セッコウである。
【0016】
2.亜硝酸塩
本発明で用いる亜硝酸塩は、アルカリ金属の亜硝酸塩、およびアルカリ土類金属の亜硝酸塩から選ばれる1種以上が挙げられ、具体的には、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、亜硝酸カルシウム、および亜硝酸マグネシウム等から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの亜硝酸塩と、特定のブレーン比表面積を有する膨張材とを組合せることによって、コンクリートの流動性を損なうことなく、高炉セメントを用いた場合であっても低温環境下(15℃以下)での初期強度発現性を高めることが可能となる。これらの亜硝酸塩の中では、初期強度発現性の点から、特に亜硝酸カルシウムが好ましい。
亜硝酸塩(固形分)の添加率は、初期強度発現性および流動性の確保の点から、高炉セメントに対し0.4~3.2質量%であることが好ましい。
亜硝酸塩は、好ましくは水溶液の形態で用いる。粉体系膨張材と液体系硬化促進剤の組み合わせは、取り扱いが容易なため、生コン工場、アジテータ車、および施工現場等でも使用できる。亜硝酸塩水溶液の亜硝酸塩の濃度は、取り扱いが容易なため、好ましくは10~50質量%であり、また、亜硝酸塩水溶液は単位水量の一部として換算して用いる。
本発明では、前記亜硝酸塩の添加率と前記膨張材の添加量は、下記(1)式が描く曲線とy=50およびx=3.2で囲まれる領域から選択するとよい。ただし、該領域は線上も含む。
y=a×x-b ・・・(1)
ただし、(1)式中、yは膨張材の添加量(kg/m3)、xは亜硝酸塩(固形分)添加率(C×質量%)、aは環境温度が5℃で104.58、10℃で60.147、15℃で24.59であり、bは5℃で1.079、10℃で0.952、15℃で0.77である。
該領域から選択された添加率(量)の亜硝酸塩と膨張材を含むコンクリートは、低温環境でも強度発現性が高い。
【0017】
3.高炉セメント
本発明で用いる高炉セメントは、ポルトランドセメントと、急冷した高炉スラグ微粉末を混合してなるセメントである。JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」は、高炉セメントを、高炉スラグ微粉末の混合率により、A種、B種、およびC種に分類している。特に、本発明で用いるトンネル覆工コンクリートに使用する高炉セメントは、特に制限されないが、強度発現性が高いことから、高炉スラグ微粉末の混合率が30%を超え60%以下であるB種が好ましい。
【0018】
4.本発明のトンネル覆工コンクリートに用いるその他の材料
本発明で用いる骨材は、特に制限されず、通常のコンクリートに用いる細骨材および粗骨材であり、例えば、川砂、海砂、山砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生細骨材、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、スラグ粗骨材、および再生粗骨材等が挙げられる。骨材の配合量(単位量)は、好ましくは1300~2000kg/m3である。骨材の配合量が該範囲にあれば、コンクリートの発熱および乾燥収縮の抑制と、コンクリートのワーカビリティーとの間でバランスがとり易い。なお、前記骨材の配合量は、より好ましくは1500~1800kg/m3である。また、細骨材率(s/a:細骨材の容積/全骨材の容積の比)は、好ましくは35~60%である。細骨材率が該範囲にあれば、ワーカビリティーを確保できる。
本発明で用いる水は、特に制限されず、水道水や生コンスラッジの上澄水等が挙げられる。水の配合量(単位量)は、材料分離抵抗性の確保のため、好ましくは150~250kg/m3である。また、コンクリートの混練機は、好ましくはコンクリートミキサである。水セメント比(W/C)は、水和発熱の低減と圧縮強度の確保のため、好ましくは40~65%、より好ましくは45~60%である。
さらに、前記トンネル覆工コンクリートは、通常のモルタルやコンクリートに用いる混和剤(材)を、本発明の効果を実質的に失わない範囲で含んでもよい。該混和剤(材)は、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、流動化剤、収縮低減剤、保水剤、防錆剤、空気連行剤、消泡剤、起泡剤、防水剤、撥水剤、白華防止剤、凝結調整剤、顔料、繊維、およびシリカフューム等が挙げられる。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用した材料
使用した材料を表1に示す。
【0020】
【0021】
2.拘束膨張率の測定
表2に示す配合に従い、コンクリートミキサに表1に記載の材料を一括して投入して、2分間混練した後、混練したコンクリートを型枠に打設して脱型し、20℃で7日水中養生した。養生後のコンクリートは、JIS A 6202「コンクリート用膨張材」に準拠して、拘束膨張率を測定した。なお、拘束膨張率が150~250×10-6であるコンクリートを、収縮補償コンクリートと判定した。なお、表2中の混和剤(AD)の添加率は、セメント(C)に対する亜硝酸カルシウム水溶液としての添加率(質量%)である。
結果を表3に示す。表3に示すように、配合1-2~1-6のコンクリートの拘束膨張率は前記基準を満たすから、収縮補償コンクリートである。
【0022】
【0023】
【0024】
3.スランプの測定
表4に示す配合に従い、前記拘束膨張試験と同様にして、コンクリートを混練した後、JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準拠して、混練直後(0分)と60分経過後のコンクリートのスランプを測定した。なお、60分経過後のスランプが10cm以上のコンクリートは、トンネル覆工コンクリートとして施工できると判定した。なお、表4中の混和剤の添加率は表2と同様である。
結果を表5に示す。表5に示すように、配合2-1~2-5のコンクリートのスランプの経時変化は、前記基準を満たすから、配合2-1~2-5のコンクリートは、トンネル覆工コンクリートとして施工できる。
【0025】
【0026】
【0027】
3.圧縮強度の測定
表6に示す配合に従い、5℃、10℃、および15℃の各温度において、前記拘束膨張試験と同様にして、コンクリートを混練した後、混練したコンクリートを型枠に打設して脱型し、材齢18時間におけるコンクリートの圧縮強度を、JIS A 1108「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準拠して測定した。そして、脱型可能な強度を2N/mm
2に設定し、5℃、10℃、および15℃の各温度において、材齢18時間におけるコンクリートの圧縮強度が2N/mm
2になる亜硝酸塩(固形分)の添加率(質量%)と膨張材の添加量の関係式を求めた。該関係式と該関係式が描く曲線を
図1に示す。
図1に示すように、5℃では三角形の点が示す曲線よりも上の領域、10℃では四角形の点が示す曲線よりも上の領域、および15℃では菱形の点が示す曲線よりも上の領域で、コンクリートの圧縮強度は前記基準を満たす。したがって、亜硝酸塩と膨張材の添加率(量)を
図1に示す各温度における曲線よりも上の領域から選択すれば、脱型可能な強度を発現するトンネル覆工コンクリートを製造できる。
【0028】