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特許7195978圧着用金型、圧着装置、及び端子付き導線の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】圧着用金型、圧着装置、及び端子付き導線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
H01R43/048 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019037897
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020140943
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年10月19日三重県鈴鹿市南玉垣町5520番地の納入場所において、製品及びその取扱説明書を納入
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】小出 清人
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-206716(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129227(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/048
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具が備える筒型の圧着部と、前記圧着部内の導線とを圧着するための圧着用金型であって、
凹部を有する第一金型片と、前記凹部内に入り込む凸部を有する第二金型片と、を備え、
前記凹部の内壁面は、底壁面と、前記底壁面の両脇に位置する凹部側端面と、を有し、
前記凸部の外表面は、先端面と、前記先端面の両脇に位置する凸部側端面と、を有し、
前記導線が内部に配置された前記圧着部を、前記内壁面と前記外表面とが押圧することで前記導線と前記圧着部とを圧着し、
前記底壁面は、前記凹部の開口に向けて突出した凹部側突出部と、前記凹部側突出部と隣接している凹部側窪み部と、前記凹部側窪み部と前記凹部側端面との間に位置する凹部側曲率転換部と、を有し、
前記先端面は、前記凸部が突出する向きと同じ向きに突出した凸部側突出部と、前記凸部側突出部と隣接している凸部側窪み部と、前記凸部側窪み部と前記凸部側端面との間に位置する凸部側曲率転換部と、を有し、
前記凹部側曲率転換部における前記凹部側窪み部との境界部分を境にして前記底壁面の曲率の符号が切り替わり、
前記凸部側曲率転換部における前記凸部側窪み部との境界部分を境にして前記先端面の曲率の符号が切り替わることを特徴とする圧着用金型。
【請求項2】
前記底壁面の横幅及び前記先端面の横幅の各々は、前記圧着部の外径よりも狭い、請求項1に記載の圧着用金型。
【請求項3】
前記内壁面において一対設けられた前記凹部側端面の各々は、前記凹部側端面同士の間隔が前記開口に向かうほど広くなるように傾いており、
前記外表面において一対設けられた前記凸部側端面の各々は、前記凸部側端面同士の間隔が前記凸部の先端に向かうほど狭くなるように傾いている、請求項に記載の圧着用金型。
【請求項4】
前記凹部側突出部は、前記第一金型片の奥行き方向に沿って延びており、
前記凸部側突出部は、前記第二金型片の奥行き方向に沿って延びている、請求項1からのいずれか一項に記載の圧着用金型。
【請求項5】
前記底壁面の形状は、前記凹部の横幅方向における前記底壁面の中央位置を境にして対称であり、
前記先端面の形状は、前記凸部の横幅方向における前記先端面の中央位置を境にして対称である、請求項1からのいずれか一項に記載の圧着用金型。
【請求項6】
前記凹部側突出部及び前記凸部側突出部の各々は、頂部が丸みを有する山状に湾曲しており、
前記凹部側窪み部及び前記凸部側窪み部の各々は、凹状に湾曲しており、
前記凹部側曲率転換部は、前記凹部側窪み部と隣り合う位置で湾曲している凹部側湾曲部と、前記凹部側湾曲部と前記凹部側端面とを連結している凹部側連結部とを有し、
前記凸部側曲率転換部は、前記凸部側窪み部と隣り合う位置で湾曲している凸部側湾曲部と、前記凸部側湾曲部と前記凸部側端面とを連結している凸部側連結部とを有する、請求項1に記載の圧着用金型。
【請求項7】
前記底壁面と前記先端面とが対向した状態において、前記凹部側突出部、前記凹部側窪み部及び前記凹部側湾曲部が、前記凸部側突出部、前記凸部側窪み部及び前記凸部側湾曲部と鏡像関係にある、請求項に記載の圧着用金型。
【請求項8】
前記凹部側突出部の頂部が、前記凹部側突出部の突出方向において前記凹部側湾曲部の頂部と同じ位置にあり、
前記凸部側突出部の頂部が、前記凸部側突出部の突出方向において前記凸部側湾曲部の頂部と同じ位置にある、請求項又はに記載の圧着用金型。
【請求項9】
前記凹部側突出部は、前記凹部側突出部の突出方向において前記凹部側湾曲部の頂部を越える位置まで突出しており、
前記凸部側突出部は、前記凹部側突出部の突出方向において前記凸部側湾曲部の頂部を越える位置まで突出している、請求項又はに記載の圧着用金型。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の圧着用金型を用いて、前記導線と前記圧着部とを圧着する圧着装置。
【請求項11】
請求項1からのいずれか一項に記載の圧着用金型、若しくは請求項10に記載の圧着装置を用いて、前記導線と前記圧着部とを圧着して端子付き導線を製造する端子付き導線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着用金型に係り、特に、端子金具が備える筒型の圧着部と圧着部内の導線とを圧着するための圧着用金型に関する。
また、本発明は、圧着用金型を備えた圧着装置にも関する。
さらに、本発明は、圧着用金型又は圧着装置を用いて端子付き導線を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
端子金具が備える筒型の圧着部内に導線を差し込み、圧着用金型を用いて圧着部と導線とを圧着させる(すなわち、かしめる)ことにより、端子付き導線を製造することは、既によく知られている。また、圧着部としては、クローズドバレルと呼ばれる筒型の圧着部が用いられることがある。この圧着部は、圧着用金型によって加圧変形される(押し潰れる)ことで圧着部内の導線と接合される。
【0003】
また、圧着された後の圧着部の外形形状(圧着形状)に関して言うと、図33に示した断面亜鈴型の圧着形状(以下、「括れ楕円形状」ともいう)とすることにより、良好な圧着強度及び電気的特性(例えば、圧着抵抗残差)を実現することができる。圧着形状を上記の括れ楕円形状とする圧着用金型としては、これまでにも開発されてきており、その一例としては、特許文献1に記載の圧着用金型が挙げられる。
【0004】
特許文献1に記載の圧着用金型(以下、従来金型100)は、図32及び33に示すように、端子金具が備える円筒形状の圧着部101を拘束する凹型面102が形成された第一金型片103と、凹型面102と対をなす凸型面104が形成された第二金型片105と、を備える。この従来金型100は、圧着部101を凹型面102と凸型面104との間で挟み込んで圧縮変形させて、圧着部101内の導線106と圧着部101とを圧着固定する。
なお、図32及び33は、いずれも従来金型100の断面(厳密には、奥行き方向を法線方向とする断面)を示しており、図32が圧着直前の状態を、図33が圧着完了直後の状態を、それぞれ示している。
【0005】
上記の従来金型100では、図32に示すように、凹型面102中の底面に第一突起部107が立ち上がって設けられている。この第一突起部107は、第一金型片103の奥行き方向に沿って延びている。また、凸型面104中の上端面には第二突起部108が立ち上がって設けられている。この第二突起部108は、第二金型片105の奥行き方向に沿って延びている。さらに、従来金型100では、凹型面102の底面の横幅と、凸型面104の上端面の横幅とが、圧着部101の外径と同一長さとなっている。
【0006】
以上のように構成された従来金型100であれば、圧着部101を括れ楕円状に圧縮変形させることができる。また、圧着時には、圧着部101の横幅を一定に保ったまま縦方向(図33におけるZ方向)に圧着部101を押し潰すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5686064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来金型100では、図32及び33に示すように、凹型面102の底面の形状と凸型面104の上端面の形状とが互いに異なっており、圧着後の圧着部101の断面形状が、これらの面の形状の違いに影響されてしまう。具体的に説明すると、凹型面102の底面では、第一突起部107の脇位置から曲面109が延びている。曲面109は、凹状に湾曲しており、凹型面102の側端面にそのまま繋がっている。他方、凸型面104の上端面では、第二突起部108の脇位置から曲面110が凸型面104の側端に向かって延びている。曲面110は、凹状に湾曲しており、凸型面104の側端よりもやや手前まで延びている。凸型面104の上端面は、中途位置(具体的には、曲面110の端位置)で急峻に折れ曲がり、そこから凸型面104の側端まで平坦面111となっている。
【0009】
以上のような形状の違いにより、圧着時に圧着部101が図33に示すように縦方向において歪に変形する。より詳しく説明すると、凹型面102の底面において第一突起部107の脇位置に設けられた曲面109が、凹型面102の側端面まで延びているため、圧着時に圧着部101が第一突起部107に押されると、その部分から圧着部101の材料部分が曲面109に沿って側方(図33のX方向)に逃げるように圧着部101が変形する。この結果、圧着部101が縦方向において歪に変形し、特に、第一突起部107に押圧された部分の肉厚が薄くなり、それが原因となって亀裂又は割れ等が発生し易くなる。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、圧着部を括れ楕円形状に適切に変形させて良好な圧着を実現するための圧着用金型を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記の目的を達成する圧着用金型を備えた圧着装置を提供することも目的とする。
さらに、本発明は、上記の圧着用金型及び圧着装置を用いて端子付き導線を製造する方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の圧着用金型は、端子金具が備える筒型の圧着部と、圧着部内の導線とを圧着するための圧着用金型であって、凹部を有する第一金型片と、凹部内に入り込む凸部を有する第二金型片と、を備え、凹部の内壁面は、底壁面と、底壁面の両脇に位置する凹部側端面と、を有し、凸部の外表面は、先端面と、先端面の両脇に位置する凸部側端面と、を有し、導線が内部に配置された圧着部を、内壁面と外表面とが押圧することで導線と圧着部とを圧着し、底壁面は、凹部の開口に向けて突出した凹部側突出部と、凹部側突出部と隣接している凹部側窪み部と、凹部側窪み部と凹部側端面との間に位置する凹部側曲率転換部と、を有し、先端面は、凸部が突出する向きと同じ向きに突出した凸部側突出部と、凸部側突出部と隣接している凸部側窪み部と、凸部側窪み部と凸部側端面との間に位置する凸部側曲率転換部と、を有し、凹部側曲率転換部における凹部側窪み部との境界部分を境にして底壁面の曲率の符号が切り替わり、凸部側曲率転換部における凸部側窪み部との境界部分を境にして先端面の曲率の符号が切り替わることを特徴とする。
また、本発明の他の圧着用金型は、端子金具が備える筒型の圧着部と、圧着部内の導線とを圧着するための圧着用金型であって、凹部を有する第一金型片と、凹部内に入り込む凸部を有する第二金型片と、を備え、凹部の内壁面は、底壁面と、底壁面の両脇に位置する凹部側端面と、を有し、凸部の外表面は、先端面と、先端面の両脇に位置する凸部側端面と、を有し、導線が内部に配置された圧着部を、内壁面と外表面とが押圧することで導線と圧着部とを圧着し、底壁面は、凹部の開口に向けて突出した凹部側突出部と、凹部側突出部と隣接している凹部側窪み部と、凹部側窪み部と凹部側端面との間に位置する凹部側曲率転換部と、を有し、先端面は、凸部が突出する向きと同じ向きに突出した凸部側突出部と、凸部側突出部と隣接している凸部側窪み部と、凸部側窪み部と凸部側端面との間に位置する凸部側曲率転換部と、を有し、凹部側曲率転換部が凹部側端面と交差する平面をなしており、凸部側曲率転換部が凸部側端面と交差する平面をなしていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の圧着用金型において、底壁面の横幅及び先端面の横幅の各々は、圧着部の外径よりも狭いことが好ましい。
また、本発明の圧着用金型において、内壁面において一対設けられた凹部側端面の各々は、凹部側端面同士の間隔が開口に向かうほど広くなるように傾いており、外表面において一対設けられた凸部側端面の各々は、凸部側端面同士の間隔が凸部の先端に向かうほど狭くなるように傾いていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の圧着用金型において、凹部側突出部は、第一金型片の奥行き方向に沿って延びており、凸部側突出部は、第二金型片の奥行き方向に沿って延びていることが好ましい。
また、本発明の圧着用金型において、底壁面の形状は、凹部の横幅方向における底壁面の中央位置を境にして対称であり、先端面の形状は、凸部の横幅方向における先端面の中央位置を境にして対称であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の圧着用金型において、凹部側突出部及び凸部側突出部の各々は、頂部が丸みを有する山状に湾曲しており、凹部側窪み部及び凸部側窪み部の各々は、凹状に湾曲しており、凹部側曲率転換部は、凹部側窪み部と隣り合う位置で湾曲している凹部側湾曲部と、凹部側湾曲部と凹部側端面とを連結している凹部側連結部とを有し、凸部側曲率転換部は、凸部側窪み部と隣り合う位置で湾曲している凸部側湾曲部と、凸部側湾曲部と凸部側端面とを連結している凸部側連結部とを有すると好ましい。
【0015】
また、本発明の圧着用金型において、底壁面と先端面とが対向した状態において、凹部側突出部、凹部側窪み部及び凹部側湾曲部が、凸部側突出部、凸部側窪み部及び凸部側湾曲部と鏡像関係にあることが好ましい。
また、本発明の圧着用金型において、凹部側突出部の頂部が、凹部側突出部の突出方向において凹部側湾曲部の頂部と同じ位置にあり、凸部側突出部の頂部が、凸部側突出部の突出方向において凸部側湾曲部の頂部と同じ位置にあってもよい。あるいは、凹部側突出部は、凹部側突出部の突出方向において凹部側湾曲部の頂部を越える位置まで突出しており、凸部側突出部は、凹部側突出部の突出方向において凸部側湾曲部の頂部を越える位置まで突出してもよい。
【0016】
また、本発明の圧着装置は、以上までに説明した圧着用金型のいずれかを用いて、導線と圧着部とを圧着するものである。
また、本発明の端子付き導線の製造方法は、本発明の圧着用金型又は本発明の圧着装置を用いて導線と圧着部とを圧着することで端子付き導線を製造するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第一金型片が備える凹部の底壁面の側端部には、凹部側曲率転換部が設けられている。この凹部側曲率転換部は、圧着時に、圧着部が凹部側突出部によって押圧された際に、その部分から圧着部の材料部分が側方に逃げるように圧着部が変形するのを規制する。同様に、第二金型片が備える凸部の先端面の側端部には、凸部側曲率転換部が設けられている。この凸部側曲率転換部は、圧着時に、圧着部が凸部側突出部によって押圧された際に、その部分から圧着部の材料部分が側方に逃げるように圧着部が変形するのを規制する。以上により、筒型の圧着部が圧着時に歪に変形すること(具体的には、圧着部の材料部分の逃げ)を抑え、圧着部内の導線と圧着部とを良好に圧着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】端子付き導線の斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図2と対応する断面であり、圧着前のクランプ部の切断面を示している。
図4】本発明の一実施形態に係る圧着装置の全体を示す斜視図である。
図5】圧着用金型及び端子付き導線を示す斜視図であり、圧着前の状態を示している。
図6】圧着用金型及び端子付き導線を示す斜視図であり、圧着時の状態を示している。
図7図5のB-B線断面図である。
図8図6のB-B線断面図である。
図9】圧着装置における圧着用金型及びその周辺の拡大平面図であり、圧着前の状態を示している。
図10】圧着装置における圧着用金型及びその周辺の拡大平面図であり、圧着時の状態を示している。
図11】圧着装置における圧着用金型及びその周辺の拡大斜視図であり、圧着前の状態を示している。
図12】圧着装置における圧着用金型及びその周辺の拡大斜視図であり、圧着時の状態を示している。
図13】圧着装置の一部を図9の矢視G-G方向から見た側面図であり、圧着前の状態を示している。
図14】圧着装置の一部を図10の矢視G-G方向から見た側面図であり、圧着時の状態を示している。
図15】第一実施形態に係る第一金型片が有する凹部の平面図である。
図16図15中、記号Xが付された範囲の拡大図である。
図17】第一実施形態に係る第二金型片が有する凸部の平面図である。
図18図17中、記号Xが付された範囲の拡大図である。
図19】圧着後の圧着部を側方から見た図である。
図20図19のC-C線断面図である。
図21図19に示した圧着部及びその周辺を、図20のD-D線にて示す切断面にて切断した際の断面図である。
図22】圧着後の圧着部及び圧着部内の導線を示す画像である。
図23】第二実施形態に係る第二金型片が有する凸部の平面図である。
図24図23中、記号Xが付された範囲の拡大図である。
図25】第三実施形態に係る凹部側曲率転換部の拡大平面図である。
図26】第三実施形態に係る凸部側曲率転換部の拡大平面図である。
図27】第四実施形態の第一例に係る圧縮用金型の平面図である。
図28】第四実施形態の第二例に係る圧縮用金型の平面図である。
図29】第五実施形態の第一例に係る圧縮用金型の平面図である。
図30】第五実施形態の第二例に係る圧縮用金型の平面図である。
図31】第五実施形態の第三例に係る圧縮用金型の平面図である。
図32】従来の圧着用金型の断面図であり、圧着直前の状態を示している。
図33】従来の圧着用金型の断面図であり、圧着完了直後の状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る圧着用金型及び圧着装置を、添付の図面を参照しながら説明する。また、以下の説明において参照される各図には、各部材の位置関係及び動作方向を明確化するために、互いに直交する3つの座標軸(XYZの3軸)が適宜付されている。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、以下に説明する実施形態から変更又は改良され得る。特に、本発明に用いられる各部材の材質及び設計寸法等については、本発明の構成を満たして本発明の効果を奏するものである限り、自由に設定することができる。また、当然ながら、本発明には、その等価物が含まれる。
【0020】
また、以下の説明中、「同一(同じ)」及び「一致」という表記は、完全に同一(同じ)及び一致する場合のみならず、本発明が属する技術分野において一般的に許容される誤差範囲内で相違する場合も含まれるものとする。また、以下の説明中の「対称」及び「鏡像関係」という表記についても、同様に解釈することとする。
【0021】
<端子付き導線について>
本発明の圧着用金型及び圧着装置を説明するにあたり、本発明の圧着用金型及び圧着装置を用いて製造される端子付き導線について、図1から3を参照しながら説明する。図1は、端子付き導線1を示す斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図であり、後述するクリンプ部7の切断面を示している。図3は、図2と対応する断面図であり、圧着前のクリンプ部7の切断面を示している。
【0022】
なお、図1では、端子付き導線1の導線ケーブル2が延びる方向をY方向とし、Y方向において端子金具4の端子部5が位置する側を+Y側とし、その反対側を-Y側とする。また、図2では、括れ楕円形状をなすクリンプ部7の断面において、その括れ楕円の長辺に相当する方向をX方向とし、短辺に相当する方向(換言すると、括れ方向)をZ方向とする。
【0023】
端子付き導線1は、図1に示すように、導線ケーブル2と、導線ケーブル2の先端部で剥き出し状態となった導線3に圧着された端子金具4と、によって構成されている。導線ケーブル2内には、複数本の導線3が撚り線状に配置されている。
【0024】
端子金具4は、図1に示すように、ピン状の端子部5と、円筒型の圧着部6(クローズドバレル)とを有する。圧着部6は、端子部5の後方(-Y側)に配置されており、その内部には剥き出し状態の導線3が配置されている。
【0025】
そして、圧着部6の後端(-Y側の端)よりも若干手前(+Y側)に位置した部分(以下、クリンプ部7)が本発明の圧着用金型によって押圧されて圧縮変形する。これにより、圧着前には図3に示した円筒形状であったクリンプ部7が、図2に示した括れ楕円形状に押し潰され、この結果、圧着部6(厳密にはクリンプ部7)と圧着部6内の導線3とが圧着して接合する。
【0026】
ここで、本発明の圧着用金型を用いた場合、圧着後のクリンプ部7は、図2に示すようにX方向及びZ方向において略対称な構造となる。つまり、端子付き導線1を+Z側から見たときの外観と、-Z側から見たときの外観とが略同一となる。このようにクリンプ部7が対称構造となるように圧着されることで、良好な圧着強度及び圧着抵抗残差が実現された端子付き導線1を作成することができる。
【0027】
<本発明の第一実施形態に係る圧着装置及び圧着用金型の構成>
次に、本発明の第一実施形態に係る圧着装置(以下、圧着装置10)及び圧着用金型(以下、圧着用金型11)の構成について、図4から14を参照しながら説明する。図4は、圧着装置10の全体を示す斜視図である。図5及び6は、圧着用金型11及び端子付き導線1を示す斜視図であり、図5は、圧着前の状態を示しており、図6は、圧着時の状態を示している。図7は、図5のB-B線断面図である。図8は、図6のB-B線断面図である。なお、図7及び図8において、第一金型片12及び第二金型片13の各々の断面は、図示の都合上、ハッチングを省略して図示している。図9及び10は、圧着装置10における圧着用金型11及びその周辺の拡大平面図であり、図9は、圧着前の状態を示しており、図10は、圧着時の状態を示している。図11及び12は、圧着装置10における圧着用金型11及びその周辺の拡大斜視図であり、図11は、圧着前の状態を示しており、図12は、圧着時の状態を示している。図13及び14は、圧着装置10の一部を図9及び10の矢視G-G方向から見た側面図であり、図13は、圧着前の状態を示しており、図14は、圧着時の状態を示している。
【0028】
圧着装置10は、図4に示すように圧着用金型11を有し、この圧着用金型11を用いて、端子金具4の圧着部6と圧着部6内の導線3とを圧着する。より詳しく説明すると、圧着用金型11は、図5から8に示すように、第一金型片12(所謂クリンパ)、及び第二金型片13(所謂アンビル)によって構成されている。図5及び7に示すように、第一金型片12は、幾分深く形成された凹部14を有する。他方、第二金型片13は、第一金型片12に向かって突出した平面視で略矩形状の凸部15を有する。凹部14の内壁面16の形状は、凸部15の外表面17の形状と対応している。より詳しくは、図7に示すように、凹部14の内壁面16の最奥部に位置する底壁面18の形状と、凸部15の外表面17の上端部に位置する先端面20の形状と、が略一致している。
【0029】
そして、圧着装置10が作動すると、導線3が内部に配置された圧着部6を凹部14と凸部15との間に配置した状態で、第一金型片12が第二金型片13に向かって直線的に移動する。これにより、図6及び8に示すように凸部15が凹部14内に入り込み、凹部14の内壁面16と凸部15の外表面17との間に、導線3が内部に配置された圧着部6(厳密には、クリンプ部7)が挟み込まれる。これにより、底壁面18と先端面20とがクリンプ部7の外周面を押圧し、その押圧力によってクリンプ部7が円形状から括れ楕円形状に圧縮変形する。この結果、圧着部6と圧着部6内の導線3とが圧着して接合するようになる。
なお、凹部14及び凸部15については、後に詳しく説明することとする。
【0030】
また、以降の説明では、第一金型片12及び第二金型片13の各々の奥行き方向をY方向とし、第一金型片12の移動方向をZ方向とする。ここで、圧着装置10及び圧着用金型11に対して規定されるXYZ各方向は、図1に示した端子付き導線1のXYZ各方向と対応している。すなわち、圧着時、圧着部6内に挿入された導線3の延出方向(Y方向)と、第一金型片12及び第二金型片13の各々の奥行き方向(Y方向)とは、互いに一致している。
また、以降の説明では、Z方向において第一金型片12から見て第二金型片13が位置する側を+Z側とし、第二金型片13から見て第一金型片12が位置する側を-Z側とする。
【0031】
次に、圧着装置10の全体構成を説明すると、圧着装置10は、図4並びに図9から12に示すように圧着用金型11の周囲に、ベースユニット40、動力供給ユニット50、ピストンユニット60、押圧量調整ユニット70及び端子金具セットユニット80を有する。
【0032】
ベースユニット40は、圧着用金型11、動力供給ユニット50、ピストンユニット60、及び押圧量調整ユニット70を支持する機器である。ベースユニット40は、図4並びに図9から12に示すように、互いに平行に並ぶ一対の長尺ブロック41と、一対の長尺ブロック41を連結する連結ブロック42とを有する。一対の長尺ブロック41は、それぞれZ方向に長く延出するブロック体である。連結ブロック42は、一対の長尺ブロック41の各々の長手方向端部(+Z側の端部)に接合して、長手方向端部同士を連結している。
【0033】
そして、図4及び9に示すように、圧着用金型11がX方向において一対の長尺ブロック41の間に挟み込まれた状態で配置されている。また、動力供給ユニット50及びピストンユニット60が、Z方向において一対の長尺ブロック41の各々の、連結ブロック42とは反対側の端部(-Z側の端部)に取り付けられている。さらに、押圧量調整ユニット70が連結ブロック42の+Z側で連結ブロック42に組み付けられている。
【0034】
動力供給ユニット50は、ピストンユニット60に動力を供給する機器である。動力供給ユニット50は、図4に示すように、動力源である商業用電源(不図示)に接続される電源コード51と、商業用電源の電力によって駆動するモータ52と、銃型のケーシング53とを有する。ケーシング53内には、図4等には不図示ではあるが、電源コード51に接続された電力供給回路、モータ制御用の基板、及びモータ52の回転力をピストンユニット60に伝達するための伝達機構が収容されている。
【0035】
また、ケーシング53には、ユーザによって操作されるトリガー53Bが取り付けられており、このトリガー53Bが操作されると、モータ52が回転し、その回転力を動力としてピストンユニット60が作動する。この結果、第一金型片12が第二金型片13に向けて+Z側へ移動する。
なお、本実施形態の動力源は、商業用電源であることとしたが、これに限定されるものではなく、可搬式のバッテリを動力源として利用してもよい。
【0036】
また、図4に示すように、ケーシング53においてZ方向に延出しているシリンダー錠部分53Aの前端部(+Z側の端部)には、カバー54が取り付けられている。そのカバー54には、図4、13及び14に示すように、X方向に並ぶ一対の固定用ブロック55が突出している。一対の固定用ブロック55の各々は、図13及び14に示すように側面視で略C字形状をなしており、ベースユニット40が有する一対の長尺ブロック41のうち、対応する長尺ブロック41の長手方向端部(-Z側の端部)を把持した状態で当該長手方向端部にピン止めされる。これにより、動力供給ユニット50がベースユニット40に組み付けられる。
【0037】
ピストンユニット60は、動力供給ユニット50から供給される動力を利用して第一金型片12を第二金型片13に向けて+Z側に移動させる機器である。ピストンユニット60は、図10に示すように、Z方向に進退可能なピストン61を備えている。このピストン61は、動力供給ユニット50(厳密には、動力供給ユニット50が有する動力伝達機構)に組み付けられている。そして、前述のトリガー53Bが操作されると、動力供給ユニット50から供給される動力によってピストン61が+Z側に移動して押し込み位置に向かう。この動作(押し込み動作)により、第一金型片12が第二金型片13に向かって+Z側に移動するようになる。
なお、ピストン61のストローク量(換言すると、第一金型片12の移動量)は、一定である。このため、ピストン61が押し込み位置に到達すると、第一金型片12は、Z方向において同一の位置に配置される。
【0038】
また、動力供給ユニット50のケーシング53には、図4に示すように、ユーザによって操作される引き戻しレバー53Cが取り付けられている。この引き戻しレバー53Cが操作されると、ケーシング53内に設けられた不図示の引き戻し機構が作動して、押し込み位置にあるピストン61が-Z側に移動して初期位置まで引き戻される。この動作(引き戻し動作)により、第一金型片12が第二金型片13から離間する向きに移動する。
【0039】
また、ピストン61の先端部(+Z側の端部)には、図9及び10に示すように、段差付き円柱型のピストン側調芯アダプタ62が設けられている。このピストン側調芯アダプタ62は、図9及び10に示すように、第一金型片12の後端部(-Z側の端部)に設けられたスロット穴(以下、第一スロット穴22)に嵌り込む。このピストン側調芯アダプタ62が第一スロット穴22に嵌り込むことで、ピストン61と第一金型片12とが連結する。また、ピストン側調芯アダプタ62が第一スロット穴22に嵌り込むことにより、X方向において、ピストン61の中心軸の位置と第一金型片12の横幅方向の中央とが一致する(調芯される)ようになる。
【0040】
押圧量調整ユニット70は、圧着時における圧着部6の押圧量、より詳しくはZ方向における圧着部6の変形量(つまり、圧着後のクリンプ部7の厚み)を調整する機器である。押圧量調整ユニット70は、図4並びに図9から12に示すように、Z方向に進退自在な可動ロッド71と、可動ロッド71の後端部(+Z側の端部)に取り付けられたノブ型のハンドル72と、押圧量調整用のスペーサ73と、を有する。可動ロッド71は、ベースユニット40の連結ブロック42に設けられた挿入孔に挿入されている。また、可動ロッド71は、その外周面に雄ネジが形成されたスクリューロッドによって構成されており、上記の挿入孔の内周面に形成された雌ねじと噛み合っている。
【0041】
また、可動ロッド71の中心軸の位置がX方向においてピストン61の中心軸の位置と一致している。さらに、可動ロッド71の先端部(-Z側の端部)には、図9及び10に示すように、段差付き円柱型の可動ロッド側調芯アダプタ74が設けられている。この可動ロッド側調芯アダプタ74は、図9及び10に示すように、第二金型片13の後端部(+Z側の端部)に設けられたスロット穴(以下、第二スロット穴23)に嵌り込む。可動ロッド側調芯アダプタ74が第二スロット穴23に嵌り込むことで、可動ロッド71と第二金型片13とが連結する。また、可動ロッド側調芯アダプタ74が第二スロット穴23に嵌り込むことにより、X方向において、可動ロッド71の中心軸の位置と第二金型片13の横幅方向の中央とが一致する(調芯される)ようになる。
【0042】
そして、ハンドル72を操作すると(具体的には、正方向に回転させると)、可動ロッド71が-Z側に向かって移動し、最終的に限界位置に到達する。ここで、限界位置とは、ハンドル72の前端(-Z側の端面)が連結ブロック42の外側面(Z方向においてハンドル72と対向する面)又はスペーサ73に突き当たる位置である。可動ロッド71が限界位置に到達することにより、第二金型片13は、Z方向において圧着実施位置にセットされる。
【0043】
また、第二金型片13の圧着実施位置は、スペーサ73によって調整可能である。具体的に説明すると、均一な厚みを有する平板材料からなるスペーサ73が、連結ブロック42の外側面(Z方向においてハンドル72と対向する面)に対して着脱自在に取り付けられる。このスペーサ73を適宜交換する(厳密には、厚みが異なるスペーサ73に入れ替える)ことで、可動ロッド71の限界位置が変わり、結果として、第二金型片13の圧着実施位置がZ方向において調整されるようになる。そして、第二金型片13の圧着実施位置が変わることにより、圧着時における圧着部6の押圧量、すなわち、圧着後のクリンプ部7の厚みが変わるようになる。
【0044】
端子金具セットユニット80は、圧着時に、導線3が圧着部6内に配置された状態の端子金具4をZ方向において第一金型片12と第二金型片13との間に保持しておく機器である。端子金具セットユニット80は、図13及び14に示した保持ブロック81を有する。この保持ブロック81は、圧着用金型11の下方(+Y側)に配置されており、例えば、第二金型片13の裏面(+Y側の端面)にねじ等によって固定されている。
【0045】
また、保持ブロック81は、図9に示すように、第二金型片13の裏面に固定された状態では第二金型片13の前端(-Z側の端)よりも幾分突出しており、この突出した部分に長穴82が形成されている。この長穴82は、図9に示すように、圧着前(すなわち、第一金型片12が第二金型片13から離間しているとき)には、Z方向において第一金型片12の凹部14と第二金型片13の凸部15との間で露出している。かかる状態において、導線3が圧着部6内に配置された状態の端子金具4中、端子部5を-Y側から長穴82内に挿入する。これにより、Z方向において端子金具4が第一金型片12と第二金型片13との間にセットされるようになる。そして、端子金具4が第一金型片12と第二金型片13との間にセットされると、圧着部6(厳密には、クリンプ部7)の外周面の一部分が第一金型片12の凹部14の底壁面18と対向し、その反対側に位置する部分が第二金型片13の凸部15の先端面20と対向するようになる。
【0046】
次に、以上までに説明してきた構成を有する圧着装置10の動作例として、圧着用金型11を用いた圧着動作について説明する。圧着動作に際して、圧着用金型11、動力供給ユニット50、ピストンユニット60及び押圧量調整ユニット70がベースユニット40の所定部位に組み付けられる。このとき、圧着用金型11を構成する第一金型片12及び第二金型片13は、圧着対象となる端子金具4のサイズ(厳密には、圧着部6の外径サイズ)に応じて選定され、選定された第一金型片12及び第二金型片13が一対の長尺ブロック41の間に配置される。また、第二金型片13の裏面(+Y側の端面)に、端子金具セットユニット80の保持ブロック81が固定される。また、連結ブロック42の外側面(+Z側の端面)には、所望の押圧量に応じた厚みのスペーサ73が取り付けられる。
【0047】
その後、押圧量調整ユニット70のハンドル72を操作して可動ロッド71を-Z側に押し込んで限界位置(すなわち、ハンドル72の前端がスペーサ73に突き当たる位置)まで移動させる。これにより、第二金型片13がZ方向において圧着実施位置に配置される。この段階では、第一金型片12の凹部14と第二金型片13の凸部15とがZ方向において互いに離間しており、両者の間にて保持ブロック81の長穴82が露出している。この状態において、導線3が圧着部6内に配置された状態の端子金具4を把持し、端子金具4の端子部5を長穴82に挿入する。これにより、端子金具4が圧着位置にセットされる。
【0048】
端子金具4のセットが完了した後、トリガー53Bを操作すると、ピストン61が+Z側に押し込まれて、第一金型片12が第二金型片13に向かって移動する。これにより、第一金型片12の凹部14内に第二金型片13の凸部15が入り込み、凹部14の底壁面18と凸部15の先端面20との間に端子金具4の圧着部6が挟み込まれ、圧着部6が底壁面18及び先端面20の双方によって押圧される。その後、引き戻しレバー53Cを操作してピストン61を-Z側に引き戻して第一金型片12を第二金型片13から離間させて押圧を解除してから、再度トリガー53Bを操作して第一金型片12を第二金型片13に向けて移動させ、凹部14の底壁面18と凸部15の先端面20の間に圧着部6を再び挟み込む。
【0049】
このような押圧の実施及び解除を繰り返す結果、断面が円形状であった圧着部6(図3に示す圧着部6)が、断面が括れ楕円状となるように圧縮変形する。これにより、圧着部6内の導線3と圧着部6とが圧着する(かしめられる)。圧着完了後、保持ブロック81の長穴82に端子部5が挿入された端子金具4を-Y側に引き抜くことで、端子金具4が圧着用金型11から外される。この時点で圧着装置10の圧着動作が終了し、端子付き導線1が完成する。
【0050】
次に、第一金型片12の凹部14及び第二金型片13の凸部15の各々について、既出の図5及び6、並びに図15から18を参照しながら改めて説明する。図15は、凹部14の平面図である。図16は、図15中、記号Xが付された範囲の拡大図である。図17は、凸部15の平面図である。図18は、図17中、記号Xが付された範囲の拡大図である。
【0051】
本実施形態において、凹部14及び凸部15は、図5及び6に示すように、互いに対応した配置位置にあり、且つ互いに対応した形状を有する。具体的に説明すると、凹部14の横幅方向(X方向)の中央位置と、凸部15の横幅方向(X方向)の中央位置とが一致している。また、凹部14の内壁面16と、凸部15の外表面17とは、互いに類似した形状であり、若干の相違はあるものの、Z方向において反転させたような形状となっている。
【0052】
以下、凹部14の内壁面16、及び凸部15の外表面17の各々の形状について詳細に説明する。なお、以下では、特に断る場合を除き、凹部14及び凸部15を、それぞれY方向(より厳密には、-Y側)から見たときの形状、すなわち平面視での形状を説明することとする。また、説明の便宜上、基準位置(例えば、ある部分の形成位置)から見て+X側を「右側」とも呼ぶこととし、-X側を「左側」とも呼ぶこととする。
【0053】
(凹部の内壁面について)
先ず、凹部14の内壁面16の形状について説明する。凹部14の内壁面16は、図15に示すように、底壁面18と、底壁面18の両脇(+X側及び-X側)に位置する一対の凹部側端面19と、を有する。内壁面16において一対設けられた凹部側端面19の各々は、図15に示すように、凹部側端面19同士の間隔が凹部14の開口24に向かうほど広くなるように傾いている。つまり、本実施形態の凹部14は、奥側(-Z側)に向かうほど幅狭となるテーパー形状の凹部である。
【0054】
また、底壁面18の横幅(図15のW11)は、圧着部6の外径(図3のW10)よりも狭くなっている。ここで、圧着部6の外径W10は、圧着前(すなわち、圧縮変形前)の圧着部6の外径、より厳密にはクリンプ部7の外径である。また、底壁面18の横幅W11とは、底壁面18の右端(+X側の端)から左端(-X側の端)までの距離であり、より詳しくは、後述する左右一対の凹部側曲率転換部27のうち、右側の凹部側曲率転換部27が備える凹部側連結部29の右端から、左側の凹部側曲率転換部27が備える凹部側連結部29の左端までの距離である。
【0055】
本実施形態では、圧着前の圧着部6が凹部14内に入り込むと、Z方向において、圧着部6の外周面が一対の凹部側端面19の双方に接する位置が存在し、その位置よりも奥側(-Z側)では、凹部14の横幅が圧着部6の外径W10よりも狭くなっている。
【0056】
底壁面18の形状について説明すると、底壁面18は、図15に示すように、凹部14の横幅方向(X方向)における底壁面18の中央位置を境にして対称(左右対称)な形状をなしている。より具体的に説明すると、X方向における底壁面18の中央部分には一つの凹部側突出部25が設けられている。また、凹部側突出部25の両脇には、凹部側突出部25と隣接する左右一対の凹部側窪み部26が設けられている。また、X方向における底壁面18の両端部には、左右一対の凹部側曲率転換部27が設けられている。
【0057】
凹部側突出部25は、凹部14の開口24に向けて+Z側に突出した部分である。この凹部側突出部25が、圧着時に圧着部6の外周面に当接して外周面の一部(厳密には、凹部側突出部25と対向する部分)を+Z側に押し潰し、その部分に括れを形成する。また、本実施形態において、凹部側突出部25は、図15に示すように、頂部が丸みを有する山状に湾曲している。ただし、これに限定されるものではなく、凹部側突出部25の頂部は、XY面に平行な平坦面であってもよく、あるいは鈍角状又は鋭角状に屈曲した屈曲面であってもよい。
【0058】
また、凹部側突出部25は、図5から明らかなように、第一金型片12の奥行き方向(Y方向)に沿って延びている。つまり、本実施形態において、凹部側突出部25は、圧着時には、Y方向において凹部側突出部25が延びる範囲に亘って圧着部6の外周面と当接することになる。
【0059】
左右一対の凹部側窪み部26の各々は、凹部側突出部25と隣接しており、円弧をなすように凹状に湾曲している。なお、左右一対の凹部側窪み部26の各々の曲率半径は、X方向における凹部側窪み部26の全域に亘って略均一である。また、左右一対の凹部側窪み部26の各々は、凹部側突出部25と同様、第一金型片12の奥行き方向(Y方向)に沿って延びている。
【0060】
左右一対の凹部側曲率転換部27の各々は、図15に示すように、X方向において凹部側窪み部26と凹部側端面19との間に位置し、凹部側窪み部26及び凹部側端面19の双方と隣接している。また、左右一対の凹部側曲率転換部27の各々は、凹部側突出部25と同様、第一金型片12の奥行き方向(Y方向)に沿って延びている。さらに、本実施形態では、それぞれの凹部側曲率転換部27における凹部側窪み部26との境界部分を境にして、底壁面18の曲率の符号が切り替わっている。
【0061】
ここで、底壁面18の曲率とは、底壁面18を平面視する(つまり、Y方向から見る)ことで底壁面18を曲線として捉え、その曲線の各部分での曲率(曲がり度合い)を意味する。また、底壁面18の曲率の符号は、底壁面18を曲線として捉えたとき、当該曲線の各部をなす円弧の湾曲方向から特定される。なお、本明細書では、+X側に向かって上記の円弧を辿った際に、時計回りに進むときの符号を「+(プラス)」とし、反時計周りに進むときの符号を「-(マイナス)」とする。
【0062】
凹部側曲率転換部27について詳しく説明すると、凹部側曲率転換部27は、図16に示すように略S字状に湾曲しており、凹部側湾曲部28と凹部側連結部29とを有する。凹部側湾曲部28は、X方向において凹部側窪み部26と隣り合う位置で凸状に湾曲している。
【0063】
凹部側連結部29は、X方向において凹部側湾曲部28と凹部側端面19とを連結している。また、凹部側連結部29のうち、X方向において凹部側端面19により近い側の端部は、凹状に湾曲している。
【0064】
そして、左右一対の凹部側曲率転換部27の各々では、図16に示すように、凹部側湾曲部28における凹部側窪み部26と接する側の端位置(図16中、破線にて示す位置であり、以下では「凹部側転換位置30」と言う)を境にして、底壁面18の曲率の符号が切り替わる。図16に示す構成では、凹部側転換位置30よりも左側(底壁面18の中央により近い側)に配置された凹部側窪み部26での曲率の符号F1が+であり、凹部側転換位置30よりも右側(底壁面18の中央からより離れている側)に配置された凹部側湾曲部28での曲率の符号F2が-である。
【0065】
なお、本実施形態では、底壁面18を平面視して底壁面18を曲線として捉えたときに、凹部側転換位置30が当該曲線上の変曲点に相当し、凹部側転換位置30での曲率が0(零)となる。
【0066】
また、凹部側曲率転換部27について付言しておくと、本実施形態では、図15に示すように、凹部側曲率転換部27が有する凹部側湾曲部28における頂部が、Z方向において、凹部側突出部25の頂部と同一位置にある。つまり、本実施形態では、凹部側突出部25の頂部が、凹部側突出部25の突出方向(Z方向)において凹部側湾曲部28の頂部と同じ位置にある。
【0067】
(凸部の外表面について)
次に、凸部15の外表面17の形状について説明する。凸部15の外表面17は、図17に示すように、先端面20と、先端面20の両脇(+X側及び-X側)に位置する一対の凸部側端面21と、を有する。外表面17において一対設けられた凸部側端面21の各々は、図17に示すように、凸部側端面21同士の間隔が凸部15の先端に向かうほど狭くなるように傾いている。つまり、本実施形態の凸部15は、先端(-Z側)に向かうほど幅狭となるテーパー形状の凸部である。
【0068】
また、先端面20の横幅(図17のW12)は、圧着部6の外径W10よりも狭くなっている。圧着部6の外径W10は、前述したように、圧着前の圧着部6(より厳密には、クリンプ部7)の外径である。また、先端面20の横幅W12とは、先端面20の右端(+X側の端)から左端(-X側の端)までの距離であり、より詳しくは、後述する左右一対の凸部側曲率転換部33のうち、右側の凸部側曲率転換部33が備える凸部側連結部35の右端から、左側の凸部側曲率転換部33が備える凸部側連結部35の左端までの距離である。
【0069】
先端面20の形状について説明すると、先端面20は、図17に示すように、凸部15の横幅方向(X方向)における先端面20の中央位置を境にして対称(左右対称)な形状をなしている。より具体的に説明すると、X方向における先端面20の中央部分には一つの凸部側突出部31が設けられている。また、凸部側突出部31の両脇には、凸部側突出部31と隣接する左右一対の凸部側窪み部32が設けられている。また、X方向における先端面20の両端部には、左右一対の凸部側曲率転換部33が設けられている。
【0070】
凸部側突出部31は、凸部15が突出する向きと同じ向き(-Z側)に突出した部分である。この凸部側突出部31が、圧着時に圧着部6の外周面に当接して外周面の一部(厳密には、凸部側突出部31と対向する部分)を-Z側に押し潰し、その部分に括れを形成する。また、本実施形態において、凸部側突出部31は、図17に示すように、頂部が丸みを有する山状に湾曲している。ただし、これに限定されるものではなく、凸部側突出部31の頂部は、XY面に平行な平坦面であってもよく、あるいは鈍角状又は鋭角状に屈曲した屈曲面であってもよい。なお、本実施形態において、凸部側突出部31の突出量(Z方向への突出量)は、凹部側突出部25の突出量と同一であるが、これに限定されるものではなく、互いに異なっていてもよい。
【0071】
また、凸部側突出部31は、図5に示すように、第二金型片13の奥行き方向(Y方向)に沿って延びている。つまり、本実施形態において、凸部側突出部31は、圧着時には、Y方向において凸部側突出部31が延びる範囲に亘って圧着部6の外周面と当接することになる。
【0072】
左右一対の凸部側窪み部32の各々は、凸部側突出部31と隣接しており、円弧をなすように凹状に湾曲している。なお、左右一対の凸部側窪み部32の各々の曲率半径は、X方向における凸部側窪み部32の全域に亘って略均一である。また、左右一対の凸部側窪み部32の各々は、凸部側突出部31と同様、第二金型片13の奥行き方向(Y方向)に沿って延びている。
【0073】
左右一対の凸部側曲率転換部33の各々は、図17に示すように、X方向において凸部側窪み部32と凸部側端面21との間に位置し、凸部側窪み部32及び凸部側端面21の双方と隣接している。また、左右一対の凸部側曲率転換部33の各々は、凸部側突出部31と同様、第二金型片13の奥行き方向(Y方向)に沿って延びている。さらに、本実施形態では、それぞれの凸部側曲率転換部33における凸部側窪み部32との境界部分を境にして、先端面20の曲率の符号が切り替わっている。
【0074】
ここで、先端面20の曲率とは、先端面20を平面視して(つまり、Y方向から見て)先端面20を曲線と捉えたときに、当該曲線の各部分での曲率を意味する。また、先端面20の曲率の符号については、前述した底壁面18の曲率の符号と同様の手順により特定することができるため、説明を省略することとする。
【0075】
凸部側曲率転換部33について詳しく説明すると、凸部側曲率転換部33は、図18に示すように、略V字状に湾曲しており、凸部側湾曲部34と凸部側連結部35とを有する。凸部側湾曲部34は、X方向において凸部側窪み部32と隣り合う位置で凸状に湾曲している。
【0076】
凸部側連結部35は、X方向において凸部側湾曲部34と凸部側端面21とを連結しており、XY平面に平行であり、又はXY平面に対して僅かに傾斜した平坦面をなしている。
【0077】
そして、左右一対の凸部側曲率転換部33の各々では、図18に示すように、凸部側湾曲部34における凸部側窪み部32と接する側の端位置(図18中、破線にて示す位置であり、以下では「凸部側転換位置36」と言う)を境にして、先端面20の曲率の符号が切り替わる。図18に示す構成では、凸部側転換位置36よりも左側(先端面20の中央により近い側)に配置された凸部側窪み部32での曲率の符号F3が-であり、凸部側転換位置36よりも右側(先端面20の中央からより離れている側)に配置された凸部側湾曲部34での曲率の符号F4が+である。
【0078】
なお、本実施形態では、先端面20を平面視して先端面20を曲線として捉えたときに、凹部側転換位置30が当該曲線上の変曲点に相当し、凹部側転換位置30での曲率が0(零)となる。
【0079】
また、凸部側曲率転換部33について付言しておくと、本実施形態では、図17に示すように、凸部側曲率転換部33が有する凸部側湾曲部34における頂部が、Z方向において、凸部側突出部31の頂部と同一位置にある。つまり、本実施形態では、凸部側突出部31の頂部が、凸部側突出部31の突出方向(Z方向)において凸部側湾曲部34の頂部と同じ位置にある。
【0080】
さらにまた、本実施形態では、凹部14の底壁面18と凸部15の先端面20とが対向した状態(例えば、図9に示す状態)において、底壁面18における凹部側突出部25、左右一対の凹部側窪み部26及び左右一対の凹部側湾曲部28が、凸部側突出部31、左右一対の凸部側窪み部32及び左右一対の凸部側湾曲部34と鏡像関係にある。ここで、鏡像関係とは、Z方向において底壁面18と先端面20の中間位置、厳密には凹部側突出部25の頂部と凸部側突出部31の頂部との間の中間位置にある仮想的なXY平面(図7の仮想平面VS)を境にして互いに対称な関係であることを意味する。
【0081】
以上までに、本実施形態に係る圧着装置10及び圧着用金型11における特徴として、第一金型片12が有する凹部14の底壁面18の形状、及び、第二金型片13が有する凸部15の先端面20の形状について説明してきた。そして、本実施形態に係る圧着装置10及び圧着用金型11は、上記の特徴により、端子金具4の圧着部6を適切に括れ楕円形状に圧縮変形させることができ、結果として圧着部6と圧着部6内の導線3とを良好に圧着することができる。
【0082】
具体的に説明すると、「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、特許文献1に図示した圧縮用金型(すなわち、従来金型100)では、図32及び33に示すように、凹型面102の底面と凸型面104の上端面とが異なる形状となっている。そのために、圧着後の圧着部101の断面形状がZ方向に歪な形状となる。より詳しく説明すると、従来金型100での凹型面102の底面では、第一突起部107の脇位置から凹状に湾曲した曲面109が凹型面102の側端面まで連続的に延びている。ここで、曲面109が連続的に延びているとは、曲面109の各部分における曲率の符号が変化しないことを意味している。
【0083】
他方、従来金型100での凸型面104の上端面では、第二突起部108の脇位置から凹状に湾曲した曲面110が凸型面104の上端面の側端に向かって延びているが、その中途位置で凸型面104の上端面が屈曲し、その屈曲箇所から凸型面104の上端面の側端まで平坦面111となっている。
【0084】
以上のように、従来金型100では、凹型面102の底面と凸型面104の上端面との間で形状が相違している。そのために、従来金型100を用いて圧着すると、図33に示すように圧着部101が縦方向において歪に変形してしまう。より詳しく説明すると、圧着部101において凸型面104と対向する側では、上述した凸型面104の形状の作用により、圧縮後の肉厚が均一となるように圧着部101が圧縮変形する。一方、圧着部101において凹型面102と対向する側では、第一突起部107に押される部分から、圧着部101の材料部分が前述の曲面109に沿って側方(X方向)に逃げるように圧着部101が圧縮変形する。この結果、圧着部101がZ方向において歪に変形し、特に、第一突起部107に押圧された部分の肉厚が薄くなり、その部分で亀裂又は割れ等が発生し易くなる。
【0085】
これに対して、本実施形態では、凹部14の底壁面18の両端部に凹部側曲率転換部27が設けられており、凹部側曲率転換部27と凹部側窪み部26との境界部分にて曲率の符号が変わっている。換言すると、凹部14の底壁面18が湾曲している向きは、凹部側曲率転換部27と凹部側窪み部26との境界部分を境にして切り替わる。同様に、凸部15の先端面20の両端部には凸部側曲率転換部33が設けられており、凸部側曲率転換部33と凸部側窪み部32との境界部分にて曲率の符号が変わっている。換言すると、凸部15の先端面20が湾曲している向きは、凸部側曲率転換部33と凸部側窪み部32との境界部分を境にして切り替わる。
【0086】
以上により、本実施形態では、圧着時、圧着部6において凹部側突出部25に押される部分から圧着部6の材料部分が凹部側窪み部26に沿って側方(X方向)に逃げるのを凹部側曲率転換部27にて抑えることができる。同様に、圧着部6において凸部側突出部31に押される部分から圧着部6の材料部分が凸部側窪み部32に沿って側方(X方向)に逃げるのを抑えることができる。この結果、圧着部6の歪な変形を抑えられるようになる。また、圧着部6において凹部側突出部25及び凸部側突出部31に押される部分で肉厚が局所的に薄くなるのを抑え、当該部分での亀裂又は割れ等の発生を抑制することが可能となる。
【0087】
また、本実施形態では、凹部14が奥側(-Z側)に向かうほど幅狭となるテーパー形状の凹部であり、凹部14の底壁面18の横幅が圧着部6の外径よりも狭くなっていることとした。また、本実施形態では、凸部15が先端(-Z側)に向かうほど幅狭となるテーパー形状の凸部であり、凸部15の先端面20の横幅が圧着部6の外径よりも狭くなっていることとした。このような構成であれば、圧着時に圧着部6がより好適に圧縮変形するようになる。
【0088】
より詳しく説明すると、仮に凹部14の底壁面18及び凸部15の先端面20の各々の横幅が圧着部6の外径と等しい場合、圧着部6内の導線3と圧着部6とを十分に圧着させようとすると、圧着部6を縦方向(Z方向)に大きく圧縮変形させる形になる。この場合には、圧着後の圧着部6の縦横比(圧着部6のZ方向の長さに対するX方向の長さの比)が著しく大きくなってしまい、また、圧縮変形する部分と変形しない部分との間での肉厚の差が大きくなる。そして、より薄肉となった圧縮変形部分では、割れ等が生じ易くなる。
【0089】
これに対して、本実施形態では、凹部14の底壁面18及び凸部15の先端面20の各々の横幅が圧着部6の外径よりも狭いため、圧着部6内の導線3と圧着部6とを圧着させる上で、圧着部6の横方向の変形量に対する縦方向の変形量をより少なくすることができる。これにより、本実施形態では、圧着後の縦横比をより小さくすることができ、結果として、圧縮変形する部分と変形しない部分との間での肉厚の差を改善することができ、圧縮変形部分での割れ等の発生が抑えられるようになる。
【0090】
ちなみに、本実施形態に係る圧着用金型11により導線3と圧着された圧着部6を見ると、図19から22に示すように、圧着部6(厳密にはクリンプ部7)が適切に括れ楕円形状へと圧縮変形し、縦方向(Z方向)に略対称な形状をなしていることが分かる。また、圧着部6内に配置された導線3のうち、括れ部分の間(すなわち、圧着時に凹部側突出部25及び凸部側突出部31に挟み込まれる箇所)にある導線3は、図20から22に示すように、圧着部6と良好に接合する程度に押し潰されている。
【0091】
図19は、圧着後の圧着部6を側方から見た図である。図20は、図19のC-C線断面図である。図21は、図19に示した圧着部6及びその周辺を、図20のD-D線にて示す切断面にて切断した際の断面図である。図22は、圧着後の圧着部6及び圧着部6内の導線3を撮影した画像である。
【0092】
なお、本実施形態では、凹部14の底壁面18の形状が、X方向における底壁面18の中央を境にして対称(左右対称)であることとしたが、これに限定されるものではなく、底壁面18の左半分の形状と右半分の形状とが多少相違してもよい。同様に、本実施形態では、凸部15の先端面20の形状が、X方向における先端面20の中央を境にして対称(左右対称)であることとしたが、これに限定されるものではなく、先端面20の左半分の形状と右半分の形状とが多少相違してもよい。ただし、端子付き導線1の品質として、圧着後の圧着部6がより良好な外観を呈する観点からは、底壁面18及び先端面20の各々の形状が左右対称である方が望ましい。
【0093】
また、本実施形態では、凹部14の底壁面18と凸部15の先端面20とが対向した状態において、凹部側突出部25、凹部側窪み部26及び凹部側湾曲部28が、凸部側突出部31、凸部側窪み部32及び凸部側湾曲部34と鏡像関係にあることとした。ただし、これに限定されるものではなく、凹部側突出部25と凸部側突出部31とが多少相違してもよく、また、凹部側窪み部26が凸部側窪み部32と多少相違してもよく、また、凹部側湾曲部28が凸部側湾曲部34と多少相違してもよい。しかし、凹部側突出部25、凹部側窪み部26及び凹部側湾曲部28が、凸部側突出部31、凸部側窪み部32及び凸部側湾曲部34と鏡像関係にあれば、圧着部6を縦方向において対称的に圧縮変形することができ、より良好な圧着が実現される。かかる観点からは、本実施形態の方が望ましい。
【0094】
<第二実施形態に係る圧着用金型の構成について>
第一実施形態では、凸部側曲率転換部33における凸部側窪み部32との境界部分を境にして、先端面20の曲率の符号が切り替わることとした。また、第一実施形態では、先端面20の曲率の符号が変わる境界部分が、凸部側湾曲部34における凸部側窪み部32と接する側の端位置(すなわち、凸部側転換位置36)であるとした。ここで、凹部側転換位置30は、先端面20を平面視して先端面20を曲線として捉えると、当該曲線上の変曲点に相当する。
【0095】
ただし、上記の構成に関して、第一実施形態とは異なる実施形態(以下、第二実施形態)も考えられる。以下、第二実施形態に係る構成について、図23及び24を参照しながら説明する。図23は、第二実施形態に係る第二金型片13が有する凸部15の平面図であり、図17と対応する図である。図24は、図23中、記号Xが付された範囲の拡大図であり、図18と対応する図である。なお、図23及び24中、第一実施形態と共通する部分については、第一実施形態における符号と同じ符号が付されている。
【0096】
第二実施形態では、図23に示すように、凸部15の先端面20が、凸部側窪み部32と隣接する位置に凸部側曲率転換部33Pを有する。また、第二実施形態では、第一実施形態と同様、凸部側曲率転換部33Pにおける凸部側窪み部32との境界部分を境にして、先端面20の曲率の符号が切り替わる。また、第二実施形態では、図24に示すように、先端面20の曲率の符号が変わる境界部分が、平面部(図24中、記号Sが付された部分)をなしている。この平面部Sは、先端面20を平面視して曲線として捉えたときに、図24に示すように直線部分として表現される。このように、先端面20を平面視して曲線として捉えたときに、先端面20の曲率の符号が切り替わる部分が一点(変曲点)に限らず、幾分の幅を有する範囲(直線部分)であってもよい。
なお、第二実施形態は、上記の点で第一実施形態とは異なるが、その余の構成については、第一実施形態と共通するので、説明を省略することとする。
【0097】
また、第一実施形態では、凹部側曲率転換部27における凹部側窪み部26との境界部分を境にして、底壁面18の曲率の符号が切り替わり、底壁面18の曲率の符号が切り替わる境界部分が、凹部側湾曲部28における凹部側窪み部26と接する側の端位置(凹部側転換位置30)であることとした。ここで、凹部側転換位置30は、底壁面18を平面視して曲線として捉えたときに、当該曲線上の一点(変曲点)に相当するが、上述した観点と同様に考えて、底壁面18の曲率が切り替わる部分が幾分の幅を有する範囲(平面視で直線部分)であってもよい。
【0098】
<第三実施形態に係る圧着用金型の構成について>
第一実施形態では、凹部側曲率転換部27における凹部側窪み部26との境界部分を境にして、底壁面18の曲率の符号が切り替わることとした。また、第一実施形態では、凸部側曲率転換部33における凸部側窪み部32との境界部分を境にして、先端面20の曲率の符号が切り替わることとした。ただし、上記の構成に関して、第一実施形態とは異なる実施形態(以下、第三実施形態)も考えられる。
【0099】
以下、第三実施形態に係る構成について、図25及び26を参照しながら説明する。図25は、第三実施形態に係る凹部側曲率転換部27Qの拡大平面図であり、図16と対応する図である。図26は、第三実施形態に係る凸部側曲率転換部33Qの拡大平面図であり、図18と対応する図である。なお、図25及び26中、第一実施形態と共通する部分については、第一実施形態における符号と同じ符号が付されている。
【0100】
第三実施形態に係る凹部側曲率転換部27Qは、湾曲しておらず(すなわち、曲率の符号が規定できず)、凹部側端面19と交差する平面をなしており、図25に示した構成では、XY平面に沿って延びている。同様に、凸部側曲率転換部33Qは、湾曲しておらず(すなわち、曲率の符号が規定できず)、凸部側端面21と交差する平面をなしており、図26に示した構成では、XY平面に沿って延びている。
なお、第三実施形態は、上記の点では第一実施形態と異なるが、その余の構成については、第一実施形態と共通するので、説明を省略することとする。
【0101】
以上に説明した第三実施形態に係る凹部側曲率転換部27Q及び凸部側曲率転換部33Qであっても、圧着時に、圧着部6において凹部側突出部25又は凸部側突出部31に押される部分から圧着部6の材料部分が側方(X方向)に逃げるのを抑え、圧着部6の歪な変形を抑制することが可能となる。
【0102】
<第四実施形態に係る圧着用金型の構成について>
第一実施形態では、凹部側曲率転換部27が有する凹部側湾曲部28における頂部が、Z方向において凹部側突出部25の頂部と同一位置にあることとした(図15参照)。また、第一実施形態では、凸部側曲率転換部33が有する凸部側湾曲部34における頂部が、Z方向において凸部側突出部31の頂部と同一位置にあることとした(図17参照)。ただし、上記の構成に関して、第一実施形態とは異なる実施形態(以下、第四実施形態)も考えられる。
【0103】
以下、第四実施形態に係る構成について、図27及び28を参照しながら説明する。図27は、第四実施形態の第一例に係る圧縮用金型11Rの平面図である。図28は、第四実施形態の第二例に係る圧縮用金型11Sの平面図である。なお、図27及び28中、第一実施形態と共通する部分については、第一実施形態における符号と同じ符号が付されている。
【0104】
第四実施形態では、図27及び28に示すように、Z方向において、凹部側湾曲部28の頂部と、凹部側突出部25の頂部とが互いに異なる位置にある。同様に、第四実施形態では、Z方向において、凸部側湾曲部34の頂部と、凸部側突出部31の頂部とが互いに異なる位置にある。
【0105】
具体的に説明すると、図27に示すように、凹部側突出部25RがZ方向において凹部側湾曲部28より高くてもよい。つまり、凹部側突出部25Rは、その突出方向において凹部側湾曲部28の頂部を越える位置まで突出しており、換言すると、凹部側突出部25Rの頂部が凹部側湾曲部28の頂部よりも+Z側に位置してもよい。また、同図に示すように、凸部側突出部31RがZ方向において凸部側湾曲部34より高くてもよい。つまり、凸部側突出部31Rは、その突出方向において凸部側湾曲部34の頂部を越える位置まで突出しており、換言すると、凸部側突出部31Rの頂部が凸部側湾曲部34の頂部よりも-Z側に位置してもよい。なお、図27に示した凹部側突出部25R及び凸部側突出部31Rは、その立ち上がり部分に平面部(平面視で直線部分)を備えている。
【0106】
また、上記の構成とは逆に、図28に示すように、凹部側突出部25SがZ方向において凹部側湾曲部28より低くてもよい。つまり、凹部側突出部25Sの頂部が凹部側湾曲部28の頂部より-Z側に位置してもよい。また、同図に示すように、凸部側突出部31SがZ方向において凸部側湾曲部34より低くてもよい。つまり、凸部側突出部31Sの頂部が凸部側湾曲部34の頂部よりも+Z側に位置してもよい。
【0107】
以上のように凹部側突出部25R、25S及び凸部側突出部31R、31Sの頂部の位置を調整することにより、圧着後の圧着部6の形状、より具体的には括れ部分の深さを調整することができる。
なお、第四実施形態は、上記の点では第一実施形態と異なるが、その余の構成については、第一実施形態と共通するので、説明を省略することとする。
【0108】
<第五実施形態に係る圧着用金型の構成について>
第一実施形態では、凹部14の底壁面18の中央部分に凹部側突出部25が一つ設けられており、且つ、凸部15の先端面20の中央部分に凸部側突出部31が一つ設けられていることとした。ただし、上記の構成に関して、第一実施形態とは異なる実施形態(以下、第五実施形態)も考えられる。
【0109】
以下、第五実施形態に係る構成について、図29から31を参照しながら説明する。図29は、第五実施形態の第一例に係る圧縮用金型11Tの平面図である。図30は、第五実施形態の第二例に係る圧縮用金型11Uの平面図である。図31は、第五実施形態の第三例に係る圧縮用金型11Vの平面図である。なお、図29から31の各図中、第一実施形態と共通する部分については、第一実施形態における符号と同じ符号が付されている。また、図29から31の各図には、説明を分かり易くする目的で、圧着直前の圧着部6を破線にて示している。
【0110】
第五実施形態では、図29から31に示すように、凹部14の底壁面18の中央部分に凹部側突出部25T、25U、25Vが複数設けられている。同様に、凸部15の先端面20の中央部分には、凸部側突出部31T、31U、31Vが複数設けられている。このような構成であれば、圧着部6における圧着箇所(かしめ箇所)を増やして、圧着部6内の導線3と圧着部6をより強固に圧着することができる。一方で、金型形状が第一実施形態よりも複雑になる分、金型製造の手間が増えることになる。
なお、凹部側突出部25T、25U、25V及び凸部側突出部31T、31U、31Vの各々の個数は、任意の数であってもよいが、圧着部6を対称的に圧縮変形させる観点では両者の数が同一であることが望ましい。
【0111】
また、図29に示した構成のように、複数の凹部側突出部25Tの各々の頂部がZ方向において揃っており、且つ、複数の凸部側突出部31Tの各々の頂部がZ方向において揃っていてもよい。ただし、これに限定されるものではなく、それぞれの頂部のZ方向における位置が変動してもよい。例えば、図30に示した構成のように、複数の凹部側突出部25Uの各々の頂部が底壁面18の中央に近付くにつれて+Z側に位置してもよい(つまり、より中央に近い凹部側突出部25Uの頂部ほど高くなってもよい)。同様に、複数の凸部側突出部31Uの各々の頂部が先端面20の中央に近付くにつれて-Z側に位置してもよい(つまり、より中央に近い凸部側突出部31Uの頂部ほど高くなってもよい)。
【0112】
また、上記の構成とは反対に、図31に示した構成のように、複数の凹部側突出部25Vの各々の頂部が底壁面18の中央から離れるにつれて+Z側に位置してもよい(つまり、より中央から離れた凹部側突出部25Vの頂部ほど高くなってもよい)。同様に、複数の凸部側突出部31Vの各々の頂部が先端面20の中央から離れるにつれて-Z側に位置してもよい(つまり、より中央から離れた凸部側突出部31Vの頂部ほど高くなってもよい)。
【0113】
なお、第五実施形態は、上記の点では第一実施形態と異なるが、その余の構成については、第一実施形態と共通するので、説明を省略することとする。
【符号の説明】
【0114】
1 端子付き導線
2 導線ケーブル
3 導線
4 端子金具
5 端子部
6 圧着部
7 クリンプ部
10 圧着装置
11,11R,11S,11T,11U,11V 圧着用金型
12 第一金型片
13 第二金型片
14 凹部
15 凸部
16 内壁面
17 外表面
18 底壁面
19 凹部側端面
20 先端面
21 凸部側端面
22 第一スロット穴
23 第二スロット穴
24 開口
25,25R,25S,25T,25U,25V 凹部側突出部
26 凹部側窪み部
27,27Q 凹部側曲率転換部
28 凹部側湾曲部
29 凹部側連結部
30 凹部側転換位置
31,31R,31S,31T,31U,31V 凸部側突出部
32 凸部側窪み部
33,33P,33Q 凸部側曲率転換部
34 凸部側湾曲部
35 凸部側連結部
36 凸部側転換位置
40 ベースユニット
41 長尺ブロック
42 連結ブロック
50 動力供給ユニット
51 電源コード
52 モータ
53 ケーシング
53A シリンダー状部分
53B トリガー
53C 引き戻しレバー
54 カバー
55 固定用ブロック
60 ピストンユニット
61 ピストン
62 ピストン側調芯アダプタ
70 押圧量調整ユニット
71 可動ロッド
72 ハンドル
73 スペーサ
74 可動ロッド側調芯アダプタ
80 端子金具セットユニット
81 保持ブロック
82 長穴
100 従来金型
101 圧着部
102 凹型面
103 第一金型片
104 凸型面
105 第二金型片
106 導線
107 第一突起部
108 第二突起部
109,110 曲面
111 平坦面
S 平面部
VS 仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33