(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】板状部材の搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 47/30 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
B65G47/30 D
(21)【出願番号】P 2019056141
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】519104178
【氏名又は名称】大和エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】谷 英幸
(72)【発明者】
【氏名】笠原 敏央
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 秀一
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-040275(JP,A)
【文献】特開2012-046330(JP,A)
【文献】特開平5-286522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0292223(US,A1)
【文献】特開平8-195368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/30
H01M 50/00-50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス工程から送り出された板状部材を、前記板状部材の厚さ方向に一定の間隔を空けかつ姿勢を揃えた状態に配列してトレーに収容し、多数の前記板状部材を前記トレーごと搬送する板状部材の搬送システムにおいて、
所定の平面上で互いに接触させた状態に配列された複数の前記板状部材の一群から前記板状部材を1枚ずつ所定の間隔を空けて送り出すとともに送り出された前記板状部材を一定ピッチに揃えて搬送する導入機構と、
前記導入機構によって連続的に搬送される前記板状部材を前記導入機構から滑り込ませて受け取る複数の載置部を有し、1枚の前記板状部材を受け取るごとに前記導入機構による搬送方向に交差する方向に前記載置部を所定の1ピッチ移動させて空の前記載置部を前記導入機構で搬送される前記板状部材に臨ませるストック機構と、
所定数の前記板状部材を前記載置部に載せた前記ストック機構と、前記載置部上の複数の前記板状部材と同ピッチでかつ前記板状部材の端部を入り込ませる複数の保持片を有する前記トレーとを対向させ、前記ストック機構に保持されている複数の前記板状部材を一括して前記トレー側に移動させて前記保持片上に前記板状部材を載せ替える移載機構と、
複数の前記板状部材を前記保持片に載せた前記トレーを前記ストック機構に対向する位置から他の所定の位置に移動させる搬出機構と
を備えていることを特徴とする板状部材の搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の板状部材の搬送システムにおいて、
空の前記トレーを積層して収容した供給ホッパーと、前記供給ホッパーから一つの前記トレーを取り出して前記ストック機構に向けて移動させるベルトコンベアと、移動した前記トレーが前記ストック機構に対向するように前記トレーを起立させる起立部とにより構成されたトレー搬送機構を更に備えている
ことを特徴とする板状部材の搬送システム。
【請求項3】
請求項2に記載の板状部材の搬送システムにおいて、
前記移載機構は、前記トレーと前記ストック機構とが対向した状態で、前記トレーとは反対側から前記ストック機構の前記載置部に載せられた前記板状部材を前記トレー側に一括して押圧する押圧機構を備えている
ことを特徴とする板状部材の搬送システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の板状部材の搬送システムにおいて、
前記ストック機構は、前記載置部を鉛直方向の上側に1ピッチ移動することにより、前記導入機構により搬送された前記板状部材の両端部を保持して、前記導入機構から前記板状部材を載せ替えるように構成されている
ことを特徴とする板状部材の搬送システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の板状部材の搬送システムにおいて、
前記トレーは、前記板状部材を収容する収容部を複数有し、
前記収容部と同一の数の前記導入機構および前記ストック機構を備え、
前記プレス工程により成形された所定枚数の前記板状部材を、複数の前記導入機構に交互に移送する移送機構を更に備え、
複数の前記ストック機構のうちの一つのストック機構により、前記収容部のうちの一つの収容部に前記板状部材が載せ替えられた前記トレーを、複数の前記ストック機構のうちの他のストック機構に対向した位置に移動させるスライド機構を更に備えている
ことを特徴とする板状部材の搬送システム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の板状部材の搬送システムにおいて、
前記トレーの前記保持片は、前記板状部材の両端部を入り込ませる溝部を有する棒材を含み、
前記トレーは、前記ストック機構に対向する面とは反対側の面のうち、前記溝部に前記板状部材の両端部を入り込ませた状態での前記板状部材の長手方向における中央部分に対応した部分に窓部を備え、
前記溝部は、前記ストック機構側の端部が開口し、かつ前記ストック機構とは反対側の端部が閉じられている
ことを特徴とする板状部材の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部材をトレーに向けて搬送しつつ、所定の間隔を空けてトレーに搭載し、さらにそのトレーに搭載した板状部材を所定箇所に向けて搬送するシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有底筒状に形成された電池本体部と、その開口部を閉じる板状の封口板とをレーザー溶接などによって一体化させて構成された電池が知られている。これらの電池本体部や封口板は、アルミニウムなどの金属製の板状のブランクを用意し、そのブランクにプレスによる所定の加工を施し、あるいは更に絞り加工やしごき加工などを施して所定の形状に成形している。そのプレス加工を円滑に行うために、潤滑油あるいはワックスなどの潤滑剤が用いられる。また、加工に伴って不可避的に金属粉が発生し、これが潤滑剤と共に製品に付着したままとなることがある。このような付着物を除去するために、例えば、超音波洗浄などが行われる。この超音波洗浄は、炭化水素系の洗浄液に製品を漬けた状態で、その洗浄液に超音波を流すことにより、製品を脱脂するとともに洗浄するものである。そして、上記の洗浄液を除去するためのすすぎ工程、および製品を乾燥させる乾燥工程を経て洗浄が完了する。
【0003】
上記のすすぎ工程における洗浄液中に含有されているCaやFeのイオンなどの不純物が、乾燥工程で電池本体部や封口板に付着して残留すると、レーザー溶接時におけるレーザー吸収率が高くなって、溶接欠陥が生じる可能性がある。そのため、特許文献1に記載された洗浄方法では、導電率が所定値以下の洗浄液を用いている。
【0004】
上述した洗浄を効率良く行うためには、多数の製品を一括して洗浄および乾燥することが好ましい。特許文献2には、多数の製品を一括して取り扱うために、不規則(ランダム)に搬送されてくる当該製品を整列させる装置が記載されている。その装置は、金属缶を対象とするものであり、金属缶をランダムに載せたコンベヤの所定箇所に、金属缶の前進を止めるストッパを配置しておき、そのストッパによって前進が止められた金属缶に後続の金属缶が当接し、こうして互いに接触した金属缶が、コンベヤの幅方向に次第に拡がって、金属缶が互いに接触した状態で、その外形に応じた形状に配列されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-67664号公報
【文献】特許第3333634号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているように、製造過程で生じた付着物を洗浄および乾燥の工程を経て除去するとしても、その洗浄に使用した洗浄液が製品に残留していると、後工程で悪影響が生じたり、あるいは製品としての品質を悪化させたりする。そのために特許文献1に記載された装置では、使用する洗浄液を、後工程で悪影響が生じない特性のものに限定している。すなわち、特許文献1に記載された装置は、洗浄液もしくは残渣が、後工程に影響しないようにしている。このような洗浄後に残留物が生じることは特許文献2に記載されている装置においても同様である。すなわち、特許文献2に記載された装置は、対象物である多数の金属缶を、互いに密着した状態で一括して処理するように構成されているから、プレス加工などの加工工程で生じた付着物が金属缶の間に挟まれて残留したり、洗浄に使用された薬液あるいは洗浄水の残留物が金属缶の間に残留したりする可能性が多分にある。そのような残留物が導電性を有していれば、例えば特許文献1に記載されている電池用の部品の場合、内部放電の原因となってしまい、不良品を発生させてしまう。
【0007】
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、プレス加工により成形された板状部材を、例えば洗浄に供するにあって、所定の間隔を空けてトレーに収容することができる板状部材の搬送システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するために、プレス工程から送り出された板状部材を、前記板状部材の厚さ方向に一定の間隔を空けかつ姿勢を揃えた状態に配列してトレーに収容し、多数の前記板状部材を前記トレーごと搬送する板状部材の搬送システムにおいて、所定の平面上で互いに接触させた状態に配列された複数の前記板状部材の一群から前記板状部材を1枚ずつ所定の間隔を空けて送り出すとともに送り出された前記板状部材を一定ピッチに揃えて搬送する導入機構と、前記導入機構によって連続的に搬送される前記板状部材を前記導入機構から滑り込ませて受け取る複数の載置部を有し、1枚の前記板状部材を受け取るごとに前記導入機構による搬送方向に交差する方向に前記載置部を所定の1ピッチ移動させて空の前記載置部を前記導入機構で搬送される前記板状部材に臨ませるストック機構と、所定数の前記板状部材を前記載置部に載せた前記ストック機構と、前記載置部上の複数の前記板状部材と同ピッチでかつ前記板状部材の端部を入り込ませる複数の保持片を有する前記トレーとを対向させ、前記ストック機構に保持されている複数の前記板状部材を一括して前記トレー側に移動させて前記保持片上に前記板状部材を載せ替える移載機構と、複数の前記板状部材を前記保持片に載せた前記トレーを前記ストック機構に対向する位置から他の所定の位置に移動させる搬出機構とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、空の前記トレーを積層して収容した供給ホッパーと、前記供給ホッパーから一つの前記トレーを取り出して前記ストック機構に向けて移動させるベルトコンベアと、移動した前記トレーが前記ストック機構に対向するように前記トレーを起立させる起立部とにより構成されたトレー搬送機構を更に備えていてよい。
【0010】
本発明において、前記移載機構は、前記トレーと前記ストック機構とが対向した状態で、前記トレーとは反対側から前記ストック機構の前記載置部に載せられた前記板状部材を前記トレー側に一括して押圧する押圧機構を備えていてよい。
【0011】
本発明において、前記ストック機構は、前記載置部を鉛直方向の上側に1ピッチ移動することにより、前記導入機構により搬送された前記板状部材の両端部を保持して、前記導入機構から前記板状部材を載せ替えるように構成されていてよい。
【0012】
本発明において、前記トレーは、前記板状部材を収容する収容部を複数有し、前記収容部と同一の数の前記導入機構および前記ストック機構を備え、前記プレス工程により成形された所定枚数の前記板状部材を、複数の前記導入機構に交互に移送する移送機構を更に備え、複数の前記ストック機構のうちの一つのストック機構により、前記収容部のうちの一つの収容部に前記板状部材が載せ替えられた前記トレーを、複数の前記ストック機構のうちの他のストック機構に対向した位置に移動させるスライド機構を更に備えていてよい。
【0013】
本発明において、前記トレーの前記保持片は、前記板状部材の両端部を入り込ませる溝部を有する棒材を含み、前記トレーは、前記ストック機構に対向する面とは反対側の面のうち、前記溝部に前記板状部材の両端部を入り込ませた状態での前記板状部材の長手方向における中央部分に対応した部分に窓部を備え、前記溝部は、前記ストック機構側の端部が開口し、かつ前記ストック機構とは反対側の端部が閉じられていてよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プレス加工により成形された板状部材が一枚ずつ送り出され、その板状部材が、ストック機構に設けられた載置部に受け渡され、その載置部に板状部材が受け渡されるごとに、載置部を1ピッチ移動させるように構成されている。そのように載置部に受け渡された板状部材は、ストック機構とトレーとを対向させた状態で一括してトレーに移載される。その結果、互いに隣接する板状部材が所定の間隔を空けた状態でトレーに収容される。このように複数の板状部材を所定の間隔を空けてトレーに収容することにより、トレーに板状部材を収容した状態で洗浄槽に浸漬して洗浄するなどした場合に、隣り合う板状部材の間に洗浄液を流動させることができるため、板状部材の間に、プレス加工により生じた金属粉などの付着物が残存することを抑制できる。また、洗浄槽からトレーを取り出して乾燥させる際に、板状部材同士の間に介在する洗浄液が、表面張力などによって板状部材同士の間に残留することを抑制できる。その結果、安定的な品質の維持が可能になる。さらに、一つのトレーに複数の板状部材を収容することができるため、一度に複数の板状部材を洗浄できる。そのため、板状部材の製造コストや製造工数を低減することができるとともに、量産化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明で対象とすることができる板状部材の一例を説明するための斜視図である。
【
図2】本発明の実施例におけるトレーの一例を説明するための斜視図である。
【
図3】本発明の搬送システムの構成例を説明するための概略図である。
【
図4】導入機構の一例を説明するための模式図である。
【
図5】ストック機構の一例を説明するための模式図である。
【
図6】トレー搬送機構の一例を説明するための模式図である。
【
図7】移載機構の一例を説明するための模式図である。
【
図8】スライド機構の一例を説明するための模式図である。
【
図9】搬出機構の一例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で対象とすることができる板状部材の一例を説明するための斜視図を
図1に示してある。
図1に示す板状部材は、例えば、リチウムイオン電池の容器本体部にレーザー溶接などにより一体化されることにより、容器本体部に形成された開口部を液密状に封止する封口板1であって、アルミニウム合金などの金属材料によって構成されている。
【0017】
この封口板1は、比較的板厚が薄いため、アルミニウム合金の板状のブランクにプレス加工を施して形成される。その場合に、電極などを取り付けるための貫通孔2などが、同時に形成される。そのようなプレス加工では、パンチやダイの摺動抵抗を低減するためなど、プレス加工を円滑に行うために、ブランクに鉱物油などの潤滑油が塗布されている。したがって、上記のように形成された封口板1は、プレス工程についで、プレス工程で不可避的に付着する金属粉や、潤滑油を除去するための洗浄工程に移行させられる。なお、上記封口板1は、例えば、150×25mm、厚みが2mmに形成されている。
【0018】
その洗浄方法としては、例えば、炭化水素系の洗浄液が溜められた洗浄槽に封口板1を漬けて超音波を流すことにより封口板1を洗浄する方法や、封口板1に洗浄液を吹き付ける方法などが挙げられる。
【0019】
上記の洗浄方法においては、複数の封口板1を一括して洗浄することが好ましく、そのために本発明では、複数の封口板1をトレーに収容するように構成されている。そのトレーの一例を説明するための斜視図を、
図2に示してある。
【0020】
図2に示す例では、ステンレスによって形成された四つの長尺材4をそれぞれ直交するように組み合わせて矩形状のフレーム5が形成されている。なお、上記の各長尺材4は、例えば、断面形状がL字型に形成されたアングル材であり、水平面がフレーム5の内側に向くように配置されている。そのフレーム5の背面、より具体的には、それぞれの長尺材4の水平部分の背面には、窓穴6が形成された背面板7が溶接して一体化されている。
【0021】
そのように形成されたフレーム5の内側には、厚さ方向に一定の間隔を空けかつ姿勢を揃えた状態に複数の封口板1を配列するための収容部8が設けられている。この収容部8は、封口板1の長さよりも若干短い間隔を空けて平行に配置された二つのラック型のバー9を背面板7に取り付けることにより構成されている。
【0022】
上記のラック型のバー9の互いに対向する面側には、長手方向に所定の間隔を空けて複数のU字溝10が形成されている。このU字溝10は、封口板1の長手方向における両端部1aを入り込ませるためのものであり、U字溝10の溝幅は、封口板1の板厚よりも若干大きく形成され、かつU字溝10の長さは、封口板1の幅よりも大きく形成されている。したがって、封口板1をそれぞれのU字溝10に差し込むことにより、封口板1が厚さ方向に一定の間隔を空けかつ姿勢を揃えた状態で保持される。この複数のU字溝10が形成されたバー9が、本発明の実施形態における「保持片」に相当する。
【0023】
また、
図2に示すトレー3は、背面板7が水平面となるとともに鉛直方向の下側となる平面姿勢で洗浄槽に投入されるなど、平面姿勢で搬送などされる。そのため、U字溝10における背面板7側の端部から封口板1を保持するように、U字溝10の背面板7側の端部が閉じられている。さらに、U字溝10における背面板7とは反対側の端部は開口しており、後述するストッカーからトレー3に封口板1を受け渡す場合には、その開口部から封口板1が挿入される。なお、
図2に示すトレー3は、その幅方向が、封口板1の長さよりも十分に長いため、トレー3の幅方向に二つの収容部8を平行に設けてある。
【0024】
また、
図2に示す例では、トレー3と後述するストッカーとを対向させる場合に、それらトレー3とストッカーとの位置決めをするための位置決め穴11がトレー3の四隅に形成されている。さらに、フレーム5の外壁には、洗浄液の流動抵抗を低減するための複数の窓穴12が形成されている。
【0025】
本発明は、上述したようにプレス加工された複数の封口板1を自動搬送してトレー3に順次挿入するように構成されている。その搬送システムの構成例を説明するための概略図を
図3に示してある。
図3に示す例では、プレス工程から送り出された封口板1を平面上に配列し、その配列された封口板1の一群から1枚ずつ所定の間隔を空けて送り出す導入機構13と、導入機構13によって連続的に送り出された封口板1を所定の間隔を空けて保持するストック機構14と、そのストック機構14に保持されている複数の封口板1をトレー3に載せ替える移載機構15と、封口板1を載せたトレー3を所定の位置に移動させる搬出機構16とを備えている。なお、
図3に示す例では、移載機構15により封口板1をトレー3に載せ替える場所に向けて、未だ封口板1が挿入されていない空のトレー3を搬送するトレー搬送機構17を更に備えており、そのトレー搬送機構17は、導入機構13による封口板1の送り出しや、ストック機構14による封口板1の保持と並行して行われるように構成されている。
【0026】
上記の導入機構13の構成例を説明するための模式図を
図4に示している。
図4に示す導入機構13は、まず、プレス加工によって形成された複数の封口板1を平面上で互いに接触させた状態に配列するように構成されている。具体的には、プレス工程に接続されたベルトコンベア18が設けられており、封口板1は、その長手方向がベルトコンベア18の幅方向を向くように載置されている。一方、先行する封口板1とそれに後続する封口板1との姿勢やそれらの間隔は必ずしも整っていない。
【0027】
そのため、プレス工程から排出された封口板1の姿勢を整えるとともに、封口板1同士を接触させて配列するために、ベルトコンベア18の搬送方向における先端には、先行する封口板1の移動を制限するストッパー19が設けられている。具体的には、ベルトコンベア18の搬送方向に直交するようにストッパー19が設けられており、先行する封口板1は、ストッパー19に接触することによりベルトコンベア18の搬送方向に対して封口板1の長手方向が直交するように、封口板1の姿勢が変化する。そして、後続する封口板1も同様に、先行する封口板1に接触することにより、先行する封口板1に倣って姿勢が変化し、かつ封口板1の厚さ方向に前後の封口板1が接触して配列される。
【0028】
図4に示す例では、上記のように配列される封口板1を所定の枚数にまとめるために、所定の枚数以上の封口板1が配列されたら、その一群の封口板1の最後部に接触する封口板1の前進を停止するための他のストッパー20が設けられている。このストッパー20は、ベルトコンベア18を挟んで配置された二つの制止バー21を備えている。これらの制止バー21は、図示しないアクチュエータによって互いの間隔を狭めることができるように構成されており、制止バー21の間隔を広げて封口板1の通過を許可する待機位置と、制止バー21の間隔を狭めて封口板1の通過を禁止するストッパー位置とに移動できる。したがって、所定枚数の封口板1が配列された後に、制止バー21をストッパー位置に移動させることにより、一群の封口板1の最後部に接触する封口板1の両端部を挟み付けて、その進行が停止する。なお、所定の位置を通過する封口板1の枚数は、光学式または接触式のセンサ22によって検出してカウントすることができ、そのセンサ22によって検出された信号に基づいて、制止バー21の開閉が制御される。
【0029】
図4に示す例では、上記のように互いに接触させた状態で配列された複数の封口板1の一群を、ベルトコンベア18の左右両側に設けられた搬送レーン23に移動させる。これらの搬送レーン23の数は、トレー3の収容部8の数と同一に設けられており、一方の搬送レーン23から一方の収容部8に封口板1を移載し、他方の搬送レーン23から他方の収容部8に封口板1を移載するように構成されている。
【0030】
図4に示す例では、まず、所定の枚数に配列された一群の封口板1の両端部を纏めて、クレーン24に設けられたクランプ部25でクランプする。その状態で、ストッパー19をベルトコンベア18の搬送方向に移動させるなどした後に、一群の封口板1を僅かに前進させる。そして、クレーン24を上昇させ、一方の搬送レーン23に移動し、その搬送レーン23に設けられた固定台26に一群の封口板1を載置する。ついで、再度、ベルトコンベア18上に配列された一群の封口板1を上記と同様の工程を経て他方の搬送レーン23に設けられた固定台26に載置する。このような工程を繰り返し実行することにより、左右の搬送レーン23に交互に一群の封口板1が載置される。このクレーン24が、本発明の実施形態における「移送機構」に相当する。
【0031】
ついで、搬送レーン23に移動した一群の封口板1を1枚ずつ所定の間隔を空けて送り出すとともに送り出された封口板1を一定のピッチに揃えて搬送する。
図4に示す例では、固定台26の下方に桟付きベルトコンベア27が設けられている。この桟付きベルトコンベア27の送り方向が、封口板1の長手方向に直交するように設けられている。そして、固定台26に載置された一群の封口板1のうちの最後方の封口板1を、桟付きベルトコンベア27に向けて押圧するプッシャー28が設けられている。このプッシャー28は、電動式あるいは油圧式のピストンによって作動する。
【0032】
このプッシャー28は、桟付きベルトコンベア27の桟27aの移動速度に同調して、一定のピッチで封口板1を押し出すように構成されている。すなわち、ベルトコンベア27に一定のピッチで設けられた桟27aの間に、封口板1を順次、送り出すように構成されている。また、
図4に示す例では、桟27aの間に封口板1が載置されているか否かを検出するための光学式のセンサ29が設けられている。
【0033】
なお、桟付きベルトコンベア27に送り出された封口板1に、例えば、フロート式の接触部材を接触させることが好ましい。すなわち、桟付きベルトコンベア27で移動させられる封口板1に抵抗力を与えて封口板1を桟27aに接触させて、こうして封口板1の姿勢を整えることが好ましい。
【0034】
上述した導入機構13によって連続的に搬送される封口板1を導入機構13から受け取るとともに、その封口板1を所定の間隔を空けて保持するストック機構14が設けられている。
図5は、ストック機構14の構成の一例を説明するための模式図であり、封口板1を保持するためのストッカー30が設けられている。このストッカー30は、上記トレー3の収容部8と同様に構成された、封口板1の厚さ方向に所定の間隔を空けて封口板1を保持するための載置部31を有している。具体的には、上記収容部8のラック型のバー9と同様に構成された二つのラック型のバー32を有し、そのラック型のバー32の間を桟付きベルトコンベア27が移動するように構成されている。なお、ラック型のバー32に形成された溝33は、桟付きベルトコンベア27の搬送方向に貫通している。
【0035】
また、このストッカー30は、桟付きベルトコンベア27の搬送方向に対して交差するように移動可能に構成されており、
図5に示す例では、鉛直方向に上下動可能に構成されている。そして、ストッカー30に未だ封口板1が挿入されていない場合には、ストッカー30が最も下側に移動した初期位置にあり、ラック型のバー32に形成された最上段の溝33と、桟付きベルトコンベア27に載置された封口板1との鉛直方向での高さが同一となるように構成されている。
【0036】
したがって、初期位置では、桟付きベルトコンベア27により封口板1がラック型のバー32に挟まれた位置まで搬送されると、封口板1の左右の端部がラック型のバー32に形成された溝33に滑り込む。つまり、桟付きベルトコンベア27の幅は、封口板1の幅よりも狭く形成されており、封口板1が桟付きベルトコンベア27の幅方向に突出するように載置されている。
【0037】
そして、溝33に封口板1の端部が滑り込むと、桟付きベルトコンベア27が一時停止され、かつストッカー30が1ピッチ上昇する。このようにストッカー30が上昇することにより、桟付きベルトコンベア27に載置された封口板1が、ストッカー30の載置部31に受け渡される。併せて、ラック型のバー32に形成された溝33のうち、封口板1が差し込まれていない最上段の溝33を、桟付きベルトコンベア27によって搬送される後続の封口板1に臨ませる。つまり、溝33と封口板1との鉛直方向での位置を一致させる。
【0038】
このように桟付きベルトコンベア27とストッカー30とを同調させることにより、ストッカー30に順次、封口板1が受け渡される。つまり、ストッカー30の溝33の全てに封口板1を挿入することができる。言い換えると、上記のようにセンサ29によって封口板1が載置されていない場所を検出し、封口板1が載置されていない場所がある場合に、その場所がストッカー30の位置を通過するタイミングで、ストッカー30の上昇を一時、禁止することにより、ストッカー30におけるラック型のバー32に空白箇所ができることを抑制できる。なお、ストッカー30に挿入可能な枚数の封口板1が挿入されると、桟付きベルトコンベア27が停止させられ、後述する封口板1をトレー3に受け渡し、その後、空となったストッカー30を、再度、初期位置に移動させた後に、桟付きベルトコンベア27が作動する。なおまた、ストッカー30は、動作開始、または停止時の慣性力によって挿入された封口板1の落下を抑制するために、サーボモータなどのスムーズな動作を実行可能なアクチュエータにより駆動されることが好ましい。
【0039】
上記のように導入機構13およびストック機構14によってストッカー30に封口板1を挿入すると同時に、ストッカー30に対向する位置に、未だ封口板1が収容されていない空の状態のトレー3を搬送する。そのトレー搬送機構17の構成を説明するための模式図を
図6に示している。
図6に示す例では、空のトレー3が積層して収容された供給ホッパー34を備えている。この供給ホッパー34の下側の側壁面には、トレー3の厚みよりも幅が若干広く形成された図示しない排出ポートが形成されており、積層された最下段のトレー3を排出ポートから押し出すことができるように構成されている。
【0040】
その排出ポートは、トレー3の両端をそれぞれ支持するように構成された二つのベルトコンベア35に接続されており、排出ポートから押し出されたトレー3の両端がそれぞれベルトコンベア35に保持されて搬送される。すなわち、二つのベルトコンベア35は、トレー3の幅よりも若干狭い間隔で平行に配置されている。
【0041】
それらのベルトコンベア35の先端側には、トレー3の搬送を停止させる図示しないストッパーが設けられており、そのストッパーまでトレー3が搬送されると、ベルトコンベア35が停止し、更にベルトコンベア35の間からトレー3を押し上げて直立させるための可動アーム36によって、トレー3が直立させられる。この可動アーム36は、エアシリンダによって駆動されるように構成されており、可動アーム36の先端が背面板7を押圧して、トレー3を直立させるように構成されている。その場合、直立されたトレー3が、転倒することを抑制するために、トレー3を可動アーム36に固定するための図示しないクランプ機構を、可動アーム36の先端に設けることが好ましい。
【0042】
上記したストッカー30に挿入された封口板1をトレー3に移載するための移載機構15の構成例を
図7に示してある。
図7に示す例では、ストッカー30をトレー3に対向させるように構成されている。その状態で、ストッカー30がトレー3側に移動する。したがって、トレー3に形成された位置決め穴11に嵌合する突起をストッカー30に形成することにより、トレー3の収容部8とストッカー30の載置部31との位置がズレることを抑制できる。
【0043】
上記のようにトレー3とストッカー30とを対向して配置した後に、ストッカー30に挿入された封口板1をトレー3に受け渡す。具体的には、ストッカー30の輪郭をなすフレーム37の左右両側に、その左右のフレーム37を中心として回動する回動機構38が設けられている。この回動機構38は、図示しないモータなどによって回動するように構成されており、その先端には、載置部31の長さとほぼ同一の長さを有する押圧部39が設けられている。そして、回動機構38を作動することにより、押圧部39がストッカー30の後方からトレー3側に向けて、全ての封口板1を一括して押圧するように構成されている。なお、この回動機構38が、本発明の実施形態における「押圧機構」に相当するものであって、その封口板1を押圧する機構は、
図7に示す回動機構38に限らず、ストッカー30の後方からトレー3側に向けて前後動する押圧機構などであってもよい。
【0044】
また、
図2に示すようにトレー3に複数の収容部8が設けられているため、
図4に示すように搬送レーン23を収容部8の数に合わせて設けておき、一方の固定台26に載置された封口板1をトレー3の一方の収容部8に挿入し、他方の固定台26に載置された封口板1をトレー3の他方の収容部8に挿入する。したがって、上記のようにストッカー30から一方の収容部8に封口板1が受け渡されたトレー3を、他方の固定台26から他方の収容部8に封口板1を受け渡す搬送レーン23に移動させる。
【0045】
具体的には、一方の搬送レーン23に対応したトレー3を、そのトレー3に挿入された封口板1が落下することを抑制するために、可動アーム36によって
図8に破線で示すようにトレー3を背面板7側に約10度、傾斜させる。つまり、ストッカー30からトレー3に封口板1が挿入される側の面が鉛直方向における上側を向く方向に、可動アーム36を傾斜させる。
さらに、
図8に示すように上記のように傾斜したトレー3の側面を、他方の搬送レーン23側に押圧するスライド機構40が設けられている。このスライド機構40は、電磁アクチュエータなどにより駆動するように構成されており、図示しないガイドレーンに沿って移動する。したがって、上記のようにトレー3を傾斜させた後に、クランプ機構によるトレー3と可動アーム36との固定を解除して、スライド機構40によってトレー3の側面を他方の搬送レーン23側に向けて押圧してスライドさせる。その際には、トレー3をスライドさせている過程で、隣り合う搬送レーン23側に設けられた可動アーム36のエッジにトレー3が接触することなどを抑制するために、トレー3がスライドする箇所に、トレー3の背面を保持するガイド板を設けることが好ましい。
【0046】
そして、他方の搬送レーン23側における可動アーム36までトレー3が移動すると、上記と同様にトレー3をクランプ機構によって可動アーム36に固定し、その状態で、直立させる。すなわち、他方の搬送レーン23側におけるストッカー30にトレー3を対向させる。その後、ストッカー30からトレー3における他方の収容部8に封口板1を受け渡す。
【0047】
上記のようにしてトレー3に設けられた収容部8の全てに封口板1が受け渡された後に、
図9に示す搬出機構16によってトレー3が排出ホッパー41に収容される。具体的には、ストッカー30から封口板1が挿入されると、トレー3が水平となるように可動アーム36が回動する。なお、可動アーム36が回動している間に、またはトレー3が水平となった時点で、クランプ機構によるトレー3の固定を解除する。そのようにトレー3が水平となると、上記トレー搬送機構17と同様に構成されたベルトコンベア35によってトレー3が、ストッカー30から離れる方向に移動させられる。そのベルトコンベア35の終端には、封口板1が挿入されたトレー3を格納する排出ホッパー41が設けられている。
【0048】
この排出ホッパー41は、下端部が開口しており、ベルトコンベア35により搬送されたトレー3を図示しないリフターによって上昇させて排出ホッパー41内に収容するように構成されている。したがって、ベルトコンベア35によってトレー3が排出ホッパー41の下端部に搬送された時点で、ベルトコンベア35を一時停止させ、その状態で、リフターによってトレー3が排出ホッパー41内に上昇して収容される。なお、排出ホッパー41にトレー3を収容した後に、爪などのトレー落下防止用の機構を設けてある。
【0049】
上述したようにプレス加工により成形された封口板1が、桟付きベルトコンベア27に設けられた桟27aの間に一枚ずつ送り出され、桟付きベルトコンベア27からストッカー30に封口板1が受け渡されるごとに、ストッカー30が1ピッチ移動するように構成されている。そのストッカー30に設けられた載置部31は、トレー3に形成された収容部8(より具体的には、U字溝10)と同様に所定の間隔を空けて封口板1を保持するように構成されている。そのため、ストッカー30とトレー3とを対向させた状態で、ストッカー30からトレー3に封口板1を受け渡すことができる。つまり、互いに隣接する封口板1が所定の間隔を空けた状態でトレー3に収容される。このように複数の封口板1を所定の間隔を空けてトレー3に収容することにより、封口板1を収容した状態でトレー3を洗浄槽に浸漬して洗浄するなどした場合に、隣り合う封口板1の間に洗浄液を流動させることができるため、封口板1の間に金属粉などの付着物が残存することを抑制できる。また、洗浄槽からトレー3を取り出して乾燥させる際に、封口板1同士の間に介在する洗浄液が、表面張力などによって封口板1同士の間に残留することを抑制できる。その結果、安定的な品質の維持が可能になる。さらに、一つのトレー3に複数の封口板1を収容することができるため、一度に複数の封口板1を洗浄できる。そのため、封口板1の製造コストや工数を低減することができるとともに、量産化が可能になる。
【0050】
また、一つのトレー3に複数の収容部8を設けることにより、洗浄槽などにより定められた外形寸法のトレー3に、より多くの封口板1を収容することができ、一度に洗浄可能な封口板1の数量を増加できる。さらに、トレー3に複数の収容部8が設けられている場合に、その収容部8のうちの一つの収容部8に封口板1を挿入する搬送レーン23と、他の一つの収容部8に封口板1を挿入する搬送レーン23とを区分けすることにより、一方のストッカー30に封口板1を挿入している間に、他方のストッカー30からトレー3に封口板1を受け渡すなど、異なる工程を同期間に実行することができる。そのため、トレー3に封口板1を収容する時間を短縮することができる。言い換えると、封口板1の量産化に寄与できる。
【0051】
またさらに、トレー3の背面板7に窓穴6を形成すること、より具体的には、トレー3に封口板1を収容した状態での封口板1の長手方向における中央部分に対応した部分に窓穴6を形成することにより、積層されたトレー3群の上部から下部に亘って洗浄液が流動する際の流動抵抗を低減できる。したがって、例えば、洗浄液が流動する部分にトレー3をさらして洗浄する場合などに、封口板1やトレー3を通過する洗浄液の流動抵抗を低減することができる。または、洗浄後における乾燥工程で、封口板1を効率的に乾燥させることができる。すなわち、封口板1が収容された複数のトレー3を纏めた状態で洗浄を行うことができるため、封口板1の洗浄工程の処理能力を向上させることができる。
【0052】
なお、本発明の実施形態におけるトレーは、
図2に示すように収容部を二つ設けたものに限らず、例えば、三つ以上の収容部を平行に設けたものであってもよい。また、ストッカーからトレーに封口板を載せ替える方法は、例えば、ストッカーとトレーとを対向させて配置し、その状態で鉛直方向における上側にストッカーが位置するように、ストッカーとトレーとを纏めて水平に倒すなどにより、ストッカーからトレーに封口板を載せ替えてもよい。またさらに、桟付きベルトコンベアからストッカーに封口板を受け渡す手段として、桟付きベルトコンベアの先端側に、桟付きベルトコンベアから落下する封口板を受け取るようにストッカーを傾斜して設けるなど他の手段によって、桟付きベルトコンベアからストッカーに封口板を受け渡してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…封口板、 3…トレー、 6,12…窓穴、 7…背面板、 8…収容部、 13…導入機構、 14…ストック機構、 15…移載機構、 16…搬出機構、 17…トレー搬送機構、 27…桟付きベルトコンベア、 30…ストッカー、 31…載置部、 33…溝、 34…供給ホッパー、 36…可動アーム、 40…スライド機構、 41…排出ホッパー。