IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼロックス コーポレイションの特許一覧

特許7195997改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法
<>
  • 特許-改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法 図1
  • 特許-改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法 図2
  • 特許-改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法 図3A
  • 特許-改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法 図3B
  • 特許-改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法 図4
  • 特許-改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法 図5A
  • 特許-改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法 図5B
  • 特許-改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法 図6
  • 特許-改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法 図7
  • 特許-改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】改良された構造的一体性を提供するジグザグパターンを使用したマルチノズル押出機を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20221219BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20221219BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20221219BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20221219BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221219BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20221219BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20221219BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/106
B29C64/209
B29C64/336
B33Y10/00
B33Y40/00
B33Y50/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019067205
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2019188801
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】15/961,256
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィッド・エイ・マンテル
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ジェイ・ニストロム
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ジー・リン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・オニール
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00,40/00,50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元(3D)物体製造システムを操作する方法であって、
コントローラを用いて、前記コントローラに動作可能に接続されたメモリ内に記憶された複数のジグザグパターンから第1のジグザグパターンを選択することと、
第1の物体層内の内部領域において押出機を移動させるように、前記コントローラを用いてアクチュエータを動作させることであって、前記押出機の前記移動は、プラットフォームに対するものであり、前記プラットフォームは、前記押出機内の複数のノズルを通じて熱可塑性材料を押し出しながら、前記押出機を移動させるために前記第1のジグザグパターンを使用して、前記第1の物体層内の前記内部領域内にスワスを形成するように製造されている物体を支持するものであり、前記第1の物体層の前記内部領域内に形成された前記熱可塑性材料のスワスは、前記第1の物体層内の前記内部領域内に直線部分および角度付き部分を有し、前記直線部分は前記押出機が一対の直交軸に沿って移動させられるときに形成され、1つの直交軸は0°~180°で配向され、他の直交軸は90°~270°で配向され、前記角度付き部分は前記押出機が前記直交軸の1つ以外の経路に沿って移動させられるときに形成されるものである、動作させることと、
前記メモリ内に記憶された前記複数のジグザグパターンから第2のジグザグパターンを選択することと、
前記第1の物体層に隣接する第2の物体層内の前記内部領域において前記押出機を移動させるように、前記コントローラを用いて前記アクチュエータを動作させることであって、前記押出機の前記移動は、前記プラットフォームに対するものであって、前記押出機内の前記複数のノズルを通じて熱可塑性材料を押し出しながら、前記押出機を移動させるために前記第2のジグザグパターンを使用して、前記第2の物体層内の前記内部領域内にスワスを形成するためのものであり、前記第2の物体層の前記内部領域内の前記熱可塑性材料のスワスは、前記第2の物体層内の前記内部領域内に直線部分および角度付き部分を有し、前記第1の物体層内の前記角度付き部分のすべては、前記直交軸の1つから正または負のいずれかの角度偏差で配向され、前記第2の物体層内の前記角度付き部分のすべては、前記直交軸の同じ1つから前記正または負のいずれかの角度偏差で配向される、動作させることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記スワスの前記角度付き部分を形成する間の前記押出機の移動速度を、前記直線部分を形成する間の前記押出機の移動速度よりも遅くなるように調節することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記押出機を移動させるために前記第1のジグザグパターンを使用して前記第1の物体層内に形成された前記スワスの前記角度付き部分が、前記直交軸の前記1つから+45°の角度で延在し、前記押出機を移動させるために前記第2のジグザグパターンを使用して前記第2の物体層内に形成された前記スワスの前記角度付き部分が、前記直交軸の前記同じ1つから-45°の角度で延在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のジグザグパターンを使用して形成された前記スワス内の前記他の直線部分の長さよりも長い長さを有する前記スワス内の前記直線部分の少なくとも1つを形成するために、前記押出機を移動させて、前記第1のジグザグパターンを使用して、前記コントローラを用いて前記アクチュエータを動作させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記直交軸の1つに沿って形成された前記直線部分のすべてが前記より長い長さを有し、かつ直交軸の他の1つに沿って形成された前記他の前記直線部分が前記より長い長さを有しないように、前記少なくとも1つの直線部分を形成するように、前記押出機を移動させるために前記第1のジグザグパターンを使用して前記アクチュエータを動作させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のジグザグパターン、および前記内部領域に対する充填率を使用して、前記押出機を移動させて、前記より長い長さを有する前記スワスの前記直線部分を形成するように、前記コントローラを用いて前記アクチュエータを動作させることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のジグザグパターンを使用して、かつ前記第2のジグザグパターンを使用して、前記押出機を移動させながら、前記押出機内の前記複数のノズルの各ノズルを開放するように、前記コントローラを用いて前記押出機を動作させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のジグザグパターンを使用して前記押出機を移動させることによって形成された前記スワスの前記角度付き部分に隣接して、前記第2のジグザグパターンを使用して形成された前記スワスの前記角度付き部分を位置決めするために、前記第2のジグザグパターンを使用して前記押出機を移動させるように、前記コントローラを用いて前記アクチュエータを動作させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記熱可塑性材料で形成される前記スワスが、稠密充填表面が形成された位置から所定の距離に達するまで、前記第1のジグザグパターンを使用した前記押出機の奇数層内の移動と、前記第2のジグザグパターンを使用した前記押出機の偶数層内の移動とを交互に行うことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
複数の移行パターンから第1の移行パターンを前記コントローラを用いて選択することと、
前記第1のジグザグパターンおよび前記第2のジグザグパターンのうちの一方が使用された最後に形成された奇数または偶数の物体層に隣接する押出機のために前記第1の移行パターンが使用される第1の物体層内の内部領域内において、前記コントローラを用いて前記押出機を移動させることであって、前記第1の移行パターンを使用した前記押出機の前記移動が、前記押出機の前記複数のノズルを通じて熱可塑性材料を押し出しながら発生して、前記押出機を移動させるために前記第1のジグザグパターンおよび前記第2のジグザグパターンのうちの一方が使用された前記最後に形成された奇数または偶数の物体層において以前に形成された前記スワス上に熱可塑性材料のスワスを形成する、移動させることと、をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の移行パターンが使用された前記第1の物体層に隣接する、押出機の移動のために前記第1の移行パターンが使用された第2の物体層内の内部領域において、前記コントローラを用いて前記押出機を移動させることであって、前記第1の移行パターンが使用された前記第2の物体層内の前記押出機の前記移動が、前記押出機の前記複数のノズルを通じて熱可塑性材料を押し出しながら、前記第1の移行パターンを使用して成されて、押出機の移動のために前記第1の移行パターンが使用された前記第1の物体層において以前に形成された前記スワス上に熱可塑性材料のスワスを形成する、移動させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数のノズル中の第1の数のノズルが開いた状態で、押出機の移動のために前記第1の移行パターンが使用された前記第1の物体層内で前記第1の移行パターンを使用して前記コントローラを用いて前記押出機を動作させることであって、前記第1の数のノズルが、前記複数のノズル中の全ての前記ノズルより少ない、動作させることと、
押出機の移動のために前記第1の移行パターンが使用された前記第1の物体層内に形成された前記スワス上に、熱可塑性材料のより広いスワスを配置するために、前記複数のノズル中の第2の数のノズルが開いた状態で、押出機の移動のために前記第1の移行パターンが使用された前記第2の物体層内で前記第1の移行パターンを使用して、前記コントローラを用いて前記押出機を動作させることであって、前記第2の数のノズルが、前記第1の数のノズルよりも多い、動作させることと、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の移行パターンから第2の移行パターンを前記コントローラを用いて選択することと、
押出機の移動のために前記第1の移行パターンを使用して形成された前記スワス上に熱可塑性材料のスワスを形成するために、前記押出機の前記複数のノズルを通じて熱可塑性材料を押し出しながら、押出機の移動のために前記第1の移行パターンが使用された前記第1の物体層の後に形成された次の物体層内の内部領域において、前記コントローラを用いて前記押出機を移動させるために前記第2の移行パターンを使用することと、をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
押出機の移動のために前記第1の移行パターンを使用して形成されたスワスの数が、押出機の移動のために前記第2の移行パターンを使用して形成されたスワスの数とは異なる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
押出機の移動のために前記第1の移行パターンを使用して形成されたスワスの前記数が、偶数であり、押出機の移動のために前記第2の移行パターンを使用して形成されたスワスの前記数が、奇数である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
押出機の移動のために前記第1の移行パターンを使用しながら形成された前記スワスが、前記押出機が前記直交軸の1つ以外の経路に沿って移動させられたときに形成された直線部分、および前記押出機が前記直交軸の1つ以外の経路に沿って移動させられたときに形成された角度付き部分を有し、前記第2の移行パターンが、前記直交軸だけに沿って前記押出機を移動させるために使用された直線状パターンであり、前記方法が、
前記直交軸に沿って形成された直線部分のみを有する熱可塑性材料のスワスを形成するように、前記押出機の前記複数のノズルを通じて熱可塑性材料を押し出すために、前記直線状パターンを使用して、前記コントローラを用いて前記押出機を動作させること、をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記押出機が前記第1の移行パターンを使用して移動させられている間に形成された前記スワスの少なくとも一部上に前記スワスを形成するために、前記複数のノズル中の第1の数のノズルが開いた状態で、前記直線状パターンを使用して、前記コントローラを用いて前記押出機を動作させることと、
前記押出機が前記直線パターンを使用して移動させられ、前記第1の数のノズルが開いている間に以前に形成された前記スワスの少なくとも1つの幅を広げるために、前記第1の数のノズルより多い前記複数のノズル中の第2の数のノズルが開いた状態で、前記直線状パターンを使用して、前記コントローラを用いて前記押出機を動作させることと、をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
以前に形成されたスワスの間の開口部を横切る間、前記押出機の移動速度を落とすように調節することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
押出機の移動のために前記第1のジグザグパターンを使用して形成された前記スワスが、隣接するスワスの前記角度付き部分に隣接する少なくとも1つのスワスの前記角度付き部分を位置決めする、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元物体プリンタにおいて使用されるマルチノズル押出機に関し、より具体的には、表面を支持するための充填エリアにおける構造的特徴の形成に関する。
【0002】
3次元印刷は、付加製造としても知られており、事実上どの形状のデジタルモデルからも3次元立体物体を作製する工程である。多くの3次元印刷技術は、付加製造デバイスが、既に堆積された層の上に部品の連続層を形成する付加工程を使用する。これらの技術のいくつかは、ABSプラスチック等の押出材料を軟化または溶融させて熱可塑性材料にし、次いで熱可塑性材料を所定のパターンで放出する押出機を使用する。プリンタは、典型的には、押出機を動作させて、様々な形状および構造を有する3次元印刷された物体を形成する熱可塑性材料の連続層を形成する。3次元印刷された物体の各層が形成された後、熱可塑性材料は冷却されて硬化し、その層を3次元印刷された物体の下層に結合する。この付加製造方法は、切削または穿孔等の減法工程によってワークピースから材料を除去することに主に依存する従来の物体形成技術と区別できる。
【0003】
既存の3次元プリンタの多くは、単一のノズルを通して材料を押し出す単一の押出機を使用している。押出機は、所定の経路内を移動して、3次元印刷された物体のためのモデルデータに基づいて、支持部材の選択された場所、または3次元印刷された物体の既に堆積された押出材料のスワス上に構築材料を押し出す。モデルデータは、製造される物体のための断面層に処理され、各層が、押し出し材料の単一のスワスの厚さにほぼ対応する。構築材料を押し出すために単一のノズルしか有していない押出機を使用すると、多くの場合、3次元印刷された物体の形成にかなりの時間が必要とされる。加えて、ノズルの直径がより大きい押出機は、より迅速に3次元印刷された物体を形成することができるが、より高度に詳細な特徴に対するより微細な形状においては構築材料を放出する能力を失い、一方、より狭い直径を有するノズルは、より詳細な構造を形成し得るが、3次元物体の構築により多くの時間を必要とする。
【0004】
単一ノズル押出機の限界に対処するために、マルチノズル押出機が開発されている。これらのマルチノズル押出機では、ノズルは共通の面板に形成され、ノズルを通って押し出される材料は1つ以上のマニホールドからもたらされ得る。単一のマニホールドを有する押出機では、ノズルの全てが同じ材料を押し出すが、マニホールドから各ノズルへの流体経路は、ノズルを選択的に開放および閉鎖するように動作するバルブを含み得る。この能力により、ノズルからの熱可塑性材料押出機のスワスの形状を、材料を押し出すノズルの数およびどのノズルが材料を押し出すかを変更することによって変化させることが可能になる。異なるマニホールドを有する押出機では、各ノズルは、異なる材料を押し出し、マニホールドのうちの1つからその対応するノズルへの流体経路は、ノズルを選択的に開放および閉鎖するように動作可能なバルブを含む。この能力により、ノズルからの熱可塑性材料押出機のスワスの形状を変化させるだけでなく、スワスの材料の組成も変化させることが可能になる。この場合も、これらの変化は、材料を押し出すノズルの数およびどのノズルが材料を押し出すかを変更することによって達成される。これらのマルチノズル押出機によって、異なる材料を異なるノズルから押し出し、異なる押出機本体の移動を調整することなく物体を形成するために使用することが可能になる。これらの異なる材料によって、異なる色、物理的特性、および構成を有する物体を生成するための付加製造システムの能力を高めることができる。さらに、材料を押し出すノズルの数を変更することによって、生成されるスワスのサイズを変えて、物体の縁等の正確な特徴形成が必要な範囲に狭いスワスを提供し、その内部領域等の物体の範囲を迅速に形成するようにより幅広いスワスを提供することができる。
【0005】
共通の面板内にノズルを有するこれらのマルチノズル押出機において、構築プラットフォームを基準にする面板の移動、ならびにプラットフォームの軸に対する面板の配向は、スワスの形成にとって重要になる。本明細書で使用する「スワス」は、少なくとも1つのノズルが開放したままであり、かつ材料が任意の開放ノズルから押し出される間に、マルチノズル押出機の任意の開放ノズルからの材料の押出物を指す。すなわち、多数のノズルが開放しているが、放出された押出物の全てが互いに接触していなくても、個別の押出物がスワスを構成する。連続スワスは、多数のノズルからの押出物の全てが、スワスを交差して交差工程方向に連続して接触しているものである。
【0006】
形成されている物体の層内には、表面領域、移行領域、および内部領域がある。物体の内部領域は、目に見えないため、疎に充填することができる。これらの領域は、それらが、内部領域の上に形成される必要がある移行構造および表面構造を支持することができる、十分な構造および剛性を持たなければならない。加えて、物体の全体的な剛性に寄与するこれらの内部領域を有することは、有利である。これらの異なる種類の領域内で必要とされる押出材料の量の間に適切なバランスを見出すことは、物体製造において重要である。マルチノズル押出機を用いて物体を形成する製造システムでは、押出機は、図8に示されるように、0°~180°(X)軸または90°~270°(Y)軸に沿って移動させることができる。これらの軸に沿って押し出すことで、図示された押出機の9つのノズル全てが、連続したスワスの形成に寄与することを可能にし、スワスがその最大幅を有するようになる。本明細書で使用する「0°~180°軸」という用語は、ノズルの全てが開放される場合に、押出機が生成し得る最も効率的に生成された連続スワスが形成されるように、押出機の面板が配向された状態で、0°方向または180°方向のいずれかに移動することを意味し、「90°~270°軸」という用語は、ノズルの全てが開放される場合に、押出機が生成し得る最も効率的に生成された連続スワスが形成されるように、押出機の面板が配向された状態で、90°または270°のいずれかの方向に移動することを意味する。ノズルの全てが移動方向に対して垂直に等間隔に離間しているため、連続したスワスが効率的に生成される。内部領域をしっかり充填するために、押出機は、1つの層に対して0°方向において双方向に移動させることができ、次の層において90°方向において双方向に移動させることができる。しかしながら、層に対するこの直交の交互印刷パターンは、互いに垂直に交差するために異なる層におけるスワスを必要とするので、これらの内部領域を疎なパターンで印刷することは問題を提起する。交差するスワスの下に立体の支持体がないと、現在の押出成形は、垂直スワス上を通過した後に不連続になる傾向がある。この連続性の欠如は、その領域の構造的一体性を損ない、その領域の上に形成された表面を支持するその能力に悪影響を及ぼす。物体の構造的一体性を損なうことなく、物体の内部領域を充填するために、共通の面板を伴うマルチノズル押出機を有する3次元物体プリンタを動作させることが、有益であろう。
【0007】
マルチノズル押出機を動作させる新しい方法は、これまで知られていなかった構造的一体性を提供する様式で内部領域を疎に形成することを可能にする。本方法は、コントローラに動作可能に接続されたメモリ内に記憶された複数のジグザグパターンからコントローラを用いて第1のジグザグパターンを選択することと、第1の物体層内の内部領域において押出機を移動させるように、コントローラを用いてアクチュエータを動作させることと、を含み、押出機の移動が、押出機内の複数のノズルを通じて熱可塑性材料のスワスを押し出しながら、第1のジグザグパターンを基準にして、第1の物体層内の内部領域内にスワスを形成するための、製造されている物体を支持するプラットフォームに対するものであり、第1の物体層の内部領域内の熱可塑性材料のスワスが、第1の配向で第1の物体層内の内部領域内に直線部分および角度付き部分を有する。本方法は、メモリ内に記憶された複数のジグザグパターンから第2のジグザグパターンを選択すること、および第1の物体層に隣接する第2の物体層内の内部領域において押出機を移動させるように、コントローラを用いてアクチュエータを動作させることによって続き、押出機の移動が、押出機内の複数のノズルを通じて熱可塑性材料のスワスを押し出しながら、第2のジグザグパターンを基準にして、第2の物体層内の内部領域内にスワスを形成するためのプラットフォームに対するものであり、第2の物体層の内部領域内の熱可塑性材料のスワスが、第2の配向で第2の物体層内の内部領域内に直線部分および角度付き部分を有し、第1の配向および第2の配向がスワス形成中に押出機の直線移動を基準とする異なる角度である。
【0008】
3D物体において構造的一体性が改善された、疎に充填された内部領域において支持構造を形成するために、ジグザグパターンを使用してマルチノズル押出機を動作させる前述の態様および他の特徴が、添付の図面に関連して、以下の記述において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】疎なパターンで充填されたエリアの構造的一体性を改善する方法で、マルチノズル押出機を動作させる付加製造システムを図示する。
図2】疎なパターンで充填されたエリアの構造的一体性を改善する方法で、マルチノズル押出機を動作させる付加製造システムの代替的な実施形態を図示する。
図3A】3D物体の内部領域を、領域の構造的一体性を損なうことなく、疎に充填するために使用することができる2つのジグザグパターンを例解する。
図3B】3D物体の内部領域を、領域の構造的一体性を損なうことなく、疎に充填するために使用することができる2つのジグザグパターンを例解する。
図4】稠密充填表面が適切に支持されるように、3D物体の疎に充填された内部領域と、稠密充填面が形成される位置との間の体積を充填するために、連続的に使用することができる移行パターンの組み合わせを例解する。
図5A図3Aおよび図3Bのジグザグパターンで形成された内部領域の底面図である。
図5B図4に図示されたパターンの組み合わせで形成された内部領域の底面図である。
図6】形成されている3D物体の構造的一体性を改善する所定の疎パターンに沿ってそれらのシステムの押出機を移動させるために、図1および図2の付加製造システムのコントローラによって使用される工程のフロー図である。
図7】押出機108を動作させて、3次元印刷された物体140を形成するように構成される、先行技術の3次元物体付加製造システムまたはプリンタ100を図示する。
図8】0°および90°で配向されるときの先行技術の9つのノズルの面板によって形成することができるスワスを図示する。
【0010】
本明細書において開示されたデバイスの環境ならびにデバイスの詳細の一般的な理解のために、図面が参照される。図面において、同様の参照数字は同様の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用する用語「押出材料」は、付加製造システムにおいて押出機によって放出された熱可塑性材料を形成するために、典型的に軟化または溶融される材料を指す。押出材料には、3次元印刷された物体の永久部分を形成する「構築材料」と、印刷工程中に構築材料の部分を支持する一時的な構造を形成してから任意選択で印刷工程の完了後に除去される「支持材料」との両方が含まれるが、これらに厳しく限定されない。構築材料の例として、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)プラスチック、ポリ乳酸(PLA)、脂肪族または半芳香族ポリアミド(ナイロン)、懸濁炭素繊維または他の骨材を含むプラスチック、導電性ポリマー、および熱的に処理されて押出機を通って放出されるのに適切な熱可塑性材料を生成し得る任意の他の形態の材料が挙げられるが、これらに限定されない。支持材料の例として、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、ポリビニルアルコール(PVA)、および熱処理後に押し出し可能な他の材料が挙げられるが、これらに限定されない。押出材料はまた、チョコレートのような熱可塑性ポリマー以外の材料も含む。いくつかの押出プリンタにおいて、押出材料は、「フィラメント」として一般的に既知の、連続する細長い長さの材料として供給される。このフィラメントは、押出材料フィラメントをスプールまたは他の供給部から引っ張り、そのフィラメントを押出機内のマニホールドに流体接続されたヒータ内に付与する1つ以上のローラによって固体形態で提供される。例示された例は、ヒータにフィラメントとして供給される押出材料を使用するが、粒状または球状の押出材料等の他の押出材料供給部を使用してもよい。ヒータは、押出材料フィラメントを軟化または溶融させて、マニホールドに流入する熱可塑性材料を形成する。ノズルとマニホールドとの間に位置付けられたバルブが開放すると、熱可塑性材料の一部分がマニホールドからノズルを通って流れ、熱可塑性材料の流れとして放出される。本明細書で使用する、押出材料に適用される用語「溶解」は、押出材料の相を軟化または変化させて3次元物体プリンタの動作中に押出機の1つ以上のノズルを通して熱可塑性材料の押し出しを可能にする、押出材料の温度の任意の上昇を指す。溶融した押出材料も、本明細書において「熱可塑性材料」として示される。当業者が認識するように、ある特定の非晶質押出材料は、プリンタの動作中に純粋な液体状態に移行しない。
【0012】
本明細書で使用する用語「押出機」は、単一の流体チャンバ内で押出材料を溶融し、その溶融した押出材料を1つ以上のノズルに接続されたマニホールドに提供するプリンタの構成要素を指す。いくつかの押出機は、熱可塑性材料がノズルを通って選択的に流れることを可能にするように電子的に動作され得るバルブアセンブリを含む。バルブアセンブリによって、1つ以上のノズルをマニホールドに接続して、独立して熱可塑性材料を押し出すことが可能になる。本明細書で使用する用語「ノズル」は、押出機のマニホールドに流体接続され、そこを通って熱可塑性材料が材料受け面に向けて放出される押出機のオリフィスを指す。動作中、ノズルは、押出機の工程経路に沿って、熱可塑性材料の実質的に連続した線形スワスを押し出すことができる。コントローラは、バルブアセンブリに接続されたどのノズルが熱可塑性材料を押し出すかを制御するように、バルブアセンブリ内のバルブを動作させる。ノズルの直径は、押し出された熱可塑性材料のラインの幅に影響を及ぼす。異なる押出機の実施形態は、より狭いオリフィスによって生成されたラインの幅よりも大きい幅を有するラインを生成する、より幅広いオリフィスを有するオリフィスのサイズの範囲を有するノズルを含む。
【0013】
本明細書で使用する用語「マニホールド」は、3次元物体の印刷動作中に押出機の1つ以上のノズルに送出するための熱可塑性材料の供給を保持する押出機のハウジング内に形成された空洞を指す。本明細書で使用する用語「スワス」は、3次元物体の印刷動作中に押出機が材料受け面上に形成する押出材料の任意のパターンを指す。一般的なスワスは、押出材料の直線的な線形配置および湾曲したスワスを含む。いくつかの構成では、押出機は、熱可塑性材料を連続的に押し出して、工程および交差工程の両方向で押出材料の連続した塊を有するスワスを形成するが、他の構成では、押出機は、断続的に動作して、線形または湾曲した経路に沿って配置される熱可塑性材料のより小さい集まりを形成する。3次元物体プリンタは、押出材料の異なるスワスの組み合わせを使用して様々な構造を形成する。さらに、3次元物体プリンタ内のコントローラは、押出機を動作させて押出材料の各スワスを形成する前に、押出材料の異なるスワスに対応する物体画像データおよび押出機経路データを使用する。後述するように、コントローラは、バルブアセンブリの動作および押出機が移動する速度を任意選択で調整して、3次元印刷動作中に1つ以上のノズルを通る熱可塑性材料の多数のスワスを形成する。
【0014】
本明細書で使用する用語「工程方向」は、押出機と、押出機の1つ以上のノズルから押し出された熱可塑性材料を受ける材料受け面との間の相対的な移動の方向を指す。材料受け面は、付加製造工程中に3次元印刷された物体を保持する支持部材または部分的に形成された3次元物体の表面のいずれかである。本明細書で説明する例示的実施形態では、1つ以上のアクチュエータは、押出機を支持部材の周囲で移動させるが、代替システムの実施形態は、押出機が静止している間に支持部材を移動させて、工程方向に相対的な運動を生成する。システムによっては、異なる運動軸について両システムの組み合わせを使用することもある。
【0015】
本明細書で使用する用語「交差工程方向」は、工程方向に垂直であり、かつ押出機の面板および材料受け面に平行である軸を指す。工程方向および交差工程方向は、押出機と熱可塑性材料を受ける表面との移動の相対的な経路を指す。いくつかの構成では、押出機は、工程方向、交差工程方向、またはその両方に延在し得るノズルのアレイを含む。押出機内の隣接ノズルは、交差工程方向に所定の距離だけ分離している。いくつかの構成では、システムは、押出機の異なるノズルを分離する交差工程方向距離を調整するように押出機を回転させて、ラインがスワスを形成するときに、押出機のノズルから押し出される熱可塑性材料のラインを分離する対応する交差工程距離を調整する。
【0016】
付加製造システムの動作中、押出機は、3次元物体印刷工程中に熱可塑性材料を受ける表面に対して直進経路および湾曲経路の両方に沿って工程方向に移動する。さらに、システム内のアクチュエータは、任意選択で、Z軸を中心に押出機を回転させて、押出機のノズルを分離する有効交差工程距離を調整し、押出機が、熱可塑性材料の各ラインの間に所定の距離を有する熱可塑性材料の2つ以上のラインを形成することを可能にする。押出機は、外周に沿って移動して、2次元領域の全部または一部を熱可塑性材料で充填するように、印刷された物体の層内および周囲内の2次元領域の外壁を形成する。
【0017】
図7は、押出機108を動作させて、3次元印刷された物体140を形成するように構成される、先行技術の3次元物体付加製造システムまたはプリンタ100を図示する。プリンタ100は、支持部材102と、マルチノズル押出機108と、押出機支持アーム112と、コントローラ128と、メモリ132と、X/Yアクチュエータ150と、任意選択のZθアクチュエータ154と、Zアクチュエータ158とを含む。プリンタ100では、X/Yアクチュエータ150が、X軸およびY軸に沿って2次元平面(「XY平面」)内の異なる場所に押出機108を移動させて、図7に図示される物体140等の、3次元印刷された物体内で1つの層を形成する熱可塑性材料のスワスを押し出す。例えば、図7では、X/Yアクチュエータ150は、支持アーム112および押出機108をガイドレール113に沿って平行移動させて、アームおよび押出機をY軸に沿って移動させ、一方でX/Yアクチュエータ150は、押出機108を支持アーム112の長さに沿って平行移動させて、押出機をX軸に沿って移動させる。押し出されたパターンは、層内の1つ以上の領域の輪郭と、熱可塑性材料パターンの輪郭内の領域を充填する熱可塑性材料のスワスとの両方を含む。Zアクチュエータ158は、Z軸に沿った押出機108と支持部材102との間の距離を制御して、印刷工程中に物体が形成されるときに押出機108のノズルが熱可塑性材料を物体140上に押し出すのに適切な高さで維持することを確実にする。Zθアクチュエータ154は、Z軸を中心に回転する押出機108のいくつかの実施形態について、Z軸を中心とする押出機108の回転の角度を制御する。この移動は、押出機108内のノズル間の工程および交差工程分離を制御するが、押出機によっては、製造工程中に回転を必要としないものもある。システム100では、X/Yアクチュエータ150、Zθアクチュエータ154、およびZアクチュエータ158は、電気モータ、ステッピングモータ、または任意の他の適切な電気機械デバイス等の電気機械アクチュエータとして具現化される。図6のプリンタでは、3次元物体プリンタ100は、熱可塑性材料の複数の層から形成される3次元印刷された物体140の形成中に示される。
【0018】
支持部材102は、製造工程中に3次元印刷された物体140を支持するガラス板、ポリマー板、または発泡体表面等の平面部材である。図2の実施形態では、Zアクチュエータ158はまた、熱可塑性材料の各層を塗布した後に支持部材102を押出機108から離れてZ方向に移動させて、押出機108が物体140の上面から所定の距離を維持することを確実にする。押出機108は、複数のノズルを含み、各ノズルは、熱可塑性材料を支持部材102の表面上または物体140等の部分的に形成された物体の表面上に押し出す。図6の例では、押出材料は、押出材料供給部110からのフィラメントとして提供され、押出材料供給部110は、ABSプラスチックまたはスプールから巻き戻されて押出機108に押出材料を供給する別の適切な押出材料フィラメントのスプールである。
【0019】
支持アーム112は、支持部材と、印刷動作中に押出機108を移動させる1つ以上のアクチュエータとを含む。システム100では、1つ以上のアクチュエータ150が、印刷動作中に支持アーム112および押出機108をX軸およびY軸に沿って移動させる。例えば、アクチュエータ150のうちの1つが、支持アーム112および押出機108をY軸に沿って移動させ、一方、別のアクチュエータが、X軸に沿って移動させるように支持アーム112の長さに沿って押出機108を移動させる。システム100では、X/Yアクチュエータ150は、任意選択で、直進経路または湾曲経路のいずれかに沿って、同時にX軸およびY軸の両方に沿って、押出機108を移動させる。コントローラ128は、押出機108のノズルが熱可塑性材料を支持部材102上に、または予め形成された物体140の層上に押し出すことを可能にする、線形経路および湾曲経路の両方における押出機108の動きを制御する。コントローラ128は、X軸またはY軸に沿ってラスタライズされた運動で押出機108を任意選択で移動させるが、X/Yアクチュエータ150は、XY平面内の任意の線形経路または湾曲経路に沿って押出機108を移動させることもできる。
【0020】
コントローラ128は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはプリンタ100を動作させるように構成される任意の他のデジタルロジック等のデジタルロジックデバイスである。本明細書で使用する用語「コントローラ」は、機能を達成するために複数のタスクを形成するようにプログラムされた命令を伴って構成された、1つ以上のコントローラ、プロセッサ、またはコンピュータを意味する。このため、プリンタ用のコントローラは、押出機を動作させ、押出機を移動させ、物体データを処理し、製造中の物体内の領域の充填、ならびに他のタスクおよび機能を最適化する複数のコントローラであり得る。プリンタ100では、コントローラ128は、支持部材102および支持アーム112の移動を制御する1つ以上のアクチュエータに動作可能に接続される。コントローラ128は、メモリ132にも動作可能に接続される。プリンタ100の実施形態では、メモリ132には、ランダムアクセスメモリ(RAM)デバイス等の揮発性データストレージデバイス、および固体データストレージデバイス、磁気ディスク、光ディスク等の不揮発性データストレージデバイス、または任意の他の適切なデータストレージデバイスが含まれる。メモリ132は、プログラムされた指示データ134および3次元(3D)物体画像データ136を格納する。コントローラ128は、格納されたプログラム命令134を実行して、プリンタ100内の構成要素を動作させて3次元印刷された物体140を形成し、物体140の1つ以上の表面上に2次元画像を印刷する。3D物体画像データ136は、例えば、物体の断面図を層毎に画定するデータを含む。各データ層は、3次元物体印刷工程中にプリンタ100が形成する熱可塑性材料の層を表す。押出機経路制御データ138は、コントローラ128が、X/Yアクチュエータ150を使用して押出機108の移動の経路を制御し、Zθアクチュエータ154を使用して押出機108の配向を制御するように処理する、一連の幾何学的データまたはアクチュエータ制御コマンドを含む。コントローラ128は、押出機が熱可塑性材料を押し出して物体を形成する間に、上述のように押出機108を支持部材102の上に移動させるようにアクチュエータを動作させる。
【0021】
図1は、複数の熱可塑性材料を面板内の開口部を通して押し出す押出機108を有する付加製造システム100’を図示する。プリンタ100’は、平面運動を使用して物体を形成するプリンタとして示されるが、本明細書で説明するように、他のプリンタアーキテクチャを、押出機と、押出機の角度配向を基準にして押出機の速度を調節するように構成されたコントローラとともに使用してもよい。これらのアーキテクチャには、デルタボット、選択的コンプライアンスアセンブリロボットアーム(SCARA)、多軸プリンタ、非デカルト式プリンタ等が含まれる。これらの代替実施形態の運動は、依然として上で定義されたような工程方向および交差工程の方向を有し、これらの実施形態の押出機のノズル間隔は、依然として交差工程方向に対してノズル間隔を画定する。図を簡略化するために、図1には1つのマニホールド216しか示されていないが、押出機108は複数のマニホールド216を有することができる。一実施形態では、押出機108の各マニホールド216は、異なる押出材料供給部110によって1対1の対応で付与される異なるヒータ208に動作可能に接続される。代替として、各マニホールド216は、図2の実施形態100”に示すように、複数の押出材料供給部110によって付与される複数のチャネル232’を収容する単一のヒータ208’に連結され得る。図2の各チャネル232’は、熱可塑性材料を押出機108のマニホールド216に供給し、各マニホールドが他のマニホールドが受けている材料とは異なる材料を受けることを可能にする。押出機108では、各ノズル218は、押出機108内のマニホールドのうちの1つのみに流体接続されるため、各ノズルは、他のマニホールドに接続されたノズルから押し出された材料とは異なる熱可塑性材料を押し出すことができる。各ノズルからの押し出しは、バルブアセンブリ204内のバルブを動作させるコントローラ128によって、選択的かつ独立して作動および停止される。各ノズル218はまた、物体内の材料のスワスをより柔軟に形成するためにノズルを構成するように面板260内の開口部と整合する。
【0022】
図1および図2の実施形態では、バルブアセンブリ204が、押出機108のマニホールドと押出機108のマニホールドに接続されたノズルの各々との間にバルブを位置付ける。バルブアセンブリ204は、コントローラ128に動作可能に接続されるため、コントローラは、押出機108の複数のノズルから熱可塑性材料を押し出すためにバルブを開放および閉鎖することができる。具体的には、コントローラ128は、押出機108のバルブに接続されたアセンブリ204内の異なるアクチュエータを作動および停止させて、ノズルから熱可塑性材料を押し出し、図6の物体140等の3次元印刷された物体の各層に異なる熱可塑性材料のスワスを形成する。
【0023】
図1のシステム100’は、押出機108のマニホールドに接続される各ヒータ208のための押出材料分配システム212も含む。各別々の供給部110からの押出材料は、システム100’の動作中に所定の領域内でヒータに接続されたマニホールド内の熱可塑性材料の圧力を維持するレートで、対応するヒータ208に付与される。分配システム212は、押出機108の各マニホールド内の熱可塑性材料の圧力を調節するのに適切な一実施形態である。図2の実施形態100”では、複数の押出材料分配システム212が、1対1の対応で、複数の押出材料供給部110とヒータ208’のチャネル232’との間に動作可能に接続される。さらに、両実施形態では、コントローラ128が、アクチュエータ各分配システム212に動作可能に接続され、分配システム212が供給部110から供給部により付与されるヒータに押出材料を送出するレートを制御する。図2の分配システム212は、図1の分配システム212として構成され得る。ヒータ208および208’は、駆動ローラ224(図1)を介してヒータ208に付与された押出材料220を軟化または溶融させる。アクチュエータ240は、ローラ224を駆動し、コントローラ128に動作可能に接続されるため、コントローラは、アクチュエータがローラ224を駆動する速度を調節することができる。ローラ224に対向する別のローラは、フリーホイールであるため、ローラ224が駆動される回転のレートに追従する。図1は、フィラメント220をヒータ208または208’内に移動させるために電気機械アクチュエータおよび駆動ローラ224を機械的可動子として使用する付与システムを示すが、分配システム212の代替実施形態は、1つ以上のアクチュエータを使用して、回転オージェまたはスクリューの形態の機械的可動子を動作させる。オージェまたはスクリューは、固相押出材料を、押出材料粉末またはペレットの形態で供給部110からヒータ208または208’に移動させる。
【0024】
図1および図2の実施形態では、各ヒータは、コントローラ128に動作可能に接続される電気抵抗加熱要素等の1つ以上の加熱要素228を含むステンレス鋼から形成された本体を有する。コントローラ128は、加熱要素228を電流に選択的に接続して、ヒータ208または208’内の1つまたは複数のチャネル内の押出材料220のフィラメントを軟化または溶融するように構成される。図1および図2は、固体フィラメント220として固相の押出材料を受けるヒータ208およびヒータ208’を示すが、代替実施形態では、ヒータは、粉末状またはペレット状の押出材料として固相の押出材料を受ける。冷却フィン236は、ヒータの上流のチャネルの熱を弱める。冷却フィン236またはその近くのチャネルに固体のまま残っている押出材料の一部分は、熱可塑性材料がマニホールド216への接続ではなく任意の開口部よりヒータから出ることを防止するシールをチャネル内に形成し、シールは、押出材料がマニホールドに入るときに熱可塑性状態に保つ温度を維持する。押出機108は、押出機内の各マニホールド内の熱可塑性材料のために高温を維持するための追加の加熱要素も含んでもよい。いくつかの実施形態では、断熱材は、押出機内のマニホールド内の温度を維持するように、押出機108の外部の部分を覆う。この場合も、図2のノズルの周りの領域は、材料を熱可塑性状態に保つ温度に維持されるため、面板の開口部に進むときに凝固し始めない。
【0025】
マニホールド216内の熱可塑性材料の流体圧力を所定の範囲内に維持し、押出材料への損傷を回避し、ノズルを通じた押出レートを制御するために、スリップクラッチ244が、フィラメントを供給部110からヒータに付与する各アクチュエータ240の駆動軸に動作可能に接続される。本明細書で使用する用語「スリップクラッチ」は、物体に摩擦力を印加して、物体を所定の設定点まで移動させるデバイスを指す。摩擦力の所定の設定点近くの範囲を超えると、デバイスはスリップするため、摩擦力を物体に印加しなくなる。スリップクラッチによって、ローラ224がフィラメント220に及ぼす力が、アクチュエータ240がいかに頻繁に、いかに速く、またはいかに長く駆動しても、フィラメントの強度の制約内にとどまることが可能になる。この一定の力は、フィラメント駆動ローラ224の最速の予想回転速度よりも高速でアクチュエータ240を駆動することによって、またはエンコーダホイール248をローラ224に置いて、センサ252で回転のレートを感知することによってのいずれかで維持することができる。センサ252が発生した信号は、ローラ224の角度回転を表示し、コントローラ128は、この信号を受信して、ローラ224の速度を特定する。コントローラ128は、アクチュエータ240に提供された信号を調整して、アクチュエータの速度を制御するようにさらに構成される。コントローラがアクチュエータ240の速度を制御するように構成されている場合、コントローラ128がアクチュエータ240を動作させるため、その平均速度がローラ224の回転よりもわずかに速くなる。この動作によって、駆動ローラ224上のトルクが常にスリップクラッチのトルクの関数であることが確実になる。
【0026】
コントローラ128は、ローラ224の回転速度にわたってアクチュエータ出力軸のわずかに早い速度を特定するコントローラに接続されたメモリに格納された設定点を有する。本明細書で使用する用語「設定点」は、設定点に対応するパラメータを設定点付近の所定の範囲内に保つように構成要素を動作させるためにコントローラが使用するパラメータ値を意味する。例えば、コントローラ128は、アクチュエータ240を動作させる信号を変更して、設定点付近の所定の範囲の出力信号によって特定される速度で出力軸を回転させる。アクチュエータの指令速度に加えて、バルブアセンブリ204内で開放または閉鎖されるバルブの数およびクラッチのトルク設定点も、フィラメント駆動システム212の動作に影響を与える。得られたローラ224の回転速度は、センサ252が発生した信号によって特定される。コントローラ128内の比例-積分-微分(PID)コントローラは、メモリに格納された差分設定点を基準としてこの信号からエラーを特定し、コントローラによって出力された信号を調整してアクチュエータ240を動作させる。代替として、コントローラ128は、スリップクラッチのトルクレベルを変えてもよく、またはコントローラ128は、トルクレベルを変えて、コントローラがアクチュエータを動作させる信号を調整してもよい。
【0027】
スリップクラッチ244は、固定または調整可能なトルク摩擦ディスククラッチ、磁性粒子クラッチ、磁気ヒステリシスクラッチ、強磁性流体クラッチ、空気圧クラッチ、または永久磁石クラッチであり得る。磁気的に動作するクラッチの種類は、クラッチに電圧を印加することによって調整されるトルク設定点を有し得る。この特徴により、印刷条件を基準にしてクラッチのトルク設定点を変更することが可能になる。「印刷条件」という用語は、物体の適切な形成のためにマニホールド内で必要とされる熱可塑性材料の量に影響を与える、現在進行中の製造動作のパラメータを指す。これらの印刷条件には、押出機に供給されている押出材料の種類、押出機から放出されている熱可塑性材料の温度、押出機がXY平面内で移動している速度、物体上に形成されている特徴の位置、押出機がプラットフォームに対して移動している角度等が含まれる。
【0028】
図1および図2に示される実施形態では、コントローラ128は、上記のように、プログラム命令134、物体画像データ136、および押出機ヘッド経路制御データ138を用いて構成され、層の異なる領域における押出機の移動経路を識別し、押出機108を移動させ、押出機108がプラットフォーム102の上を移動する速度を調整するために、1つ以上の信号をX/Yアクチュエータ150に送信する。図1および図2内のコントローラ128は、以下でより詳細に考察されるように、プログラム命令と、物体層データと共に使用される疎充填パターンおよび移行パターンを含むヘッド制御データと、を伴って構成される。コントローラ128は、押出機108が移動する経路の角度および押出機の面板がその経路に沿って移動するときの配向を基準にして、押出機108の速度を調節するように構成される。コントローラ128はまた、下記でより詳細に記載されるように、コントローラに動作可能に接続されたメモリ内に記憶されたプログラム命令を伴って構成され、コントローラによって実行されたとき、コントローラが、疎充填パターンおよび移行パターンに対応する経路に沿って押出機108を移動させる、XYアクチュエータ150のための信号を生成することを可能にする。
【0029】
コントローラ128が物体データの層を検索するとき、層内の領域を、稠密充填領域、移行領域、および内部領域として識別する。稠密充填領域は、外面領域に典型的に対応するが、それらはまた特に剛性である必要のある構造にも対応することができる。内部領域は目に見えないため、典型的に疎に充填された領域であり、その領域における構築材料の押し出しが回避され得る程度まで、コストおよび資源の節約が達成される。しかしながら、稠密充填領域は、稠密充填領域の多くが支持されず、疎に充填された領域に落ちるため、疎に充填された内部領域の上に直接形成することはできない。この問題に対処するために、移行領域は、疎に充填された領域よりも大きいが、押し出された材料が下にある疎に充填されたエリアに落ちて無駄になるほど大きくはない密度で、押出材料が配置された領域である。移行領域は、稠密充填領域に近づくにつれてZ軸方向に密度が増加する。このため、コントローラ128は、その意図された位置で稠密充填領域の形成を十分に支持できる上層を提供する必要のある移行領域の数に対応して、疎に充填された領域の上層と、稠密充填領域が形成される位置との間の距離を識別する。移行領域が支持のために下層の疎に充填された領域に依存するため、疎に充填された領域は、疎に充填された内部領域に対して識別された充填割合を超える量の押出材料を必要とすることなく、適切な支持構造を提供する必要がある。
【0030】
コントローラ128が、物体の層を形成するために、物体層データを検索するとき、コントローラは、層データ内の稠密充填領域、移行領域、および疎に充填された領域を識別する。疎に充填された領域に対して、ジグザグパターンが押出機を案内し、かつこれらの領域内に支持構造を形成するために使用される。図3Aおよび図3Bは、物体層の内部エリアを疎に充填するために共に使用され、共に疎に充填されたエリア内に改善された支持構造を形成する、2つのジグザグパターンを例解する。本明細書で使用する用語「疎に充填する」は、押出材料で、物体の3次元(3D)内部領域を、その内部領域の体積の100%未満、典型的には約50%未満またはそれ以下で充填することを意味する。図3Aのパターン304は、図8に示すように0°~180°の軸に沿う押出機の水平配向に対して平均して45°~225°の軸に沿って配向される線を形成するように配向され、一方で、図3Bのパターン308は、図8に示すように0°~180°の軸に沿う押出機の水平配向に対して-45°~135°の軸で平均して配向されている線を形成するように配向される。図3Aのパターンを使用するために、押出機は、水平から45°オフの平均配向で左下から右上に延在するジグザグ経路に沿って案内される。それが内部領域の境界に達するとき、押出機は、別のジグザグ経路の始点に移動され、内部領域の境界がその経路に沿って達するまで、225°の平均配向で右上から左下に移動するように案内される。図3Bのパターンは、経路が左上から右下に案内されるとき水平から平均して-45°オフで配向され、右下から左上に案内されるとき水平から平均135°オフに配向されること以外は、類似の様式で使用される。ジグザグパターン内の各経路は、直線部分312および角度付き部分316から成る。直線部分312は、0°~180°軸または90°~270°軸に沿って押出機の移動のために配向される。ジグザグパターン内の直線部分312を基準にして実行される押出機の移動の長さは、形成されている領域の充填率に対応するように変更することができる。角度付き部316は、45°~225°の軸または-45°~135°の軸で配向される。コントローラ128は、これらのパターンのうちの一方を選択して、識別された疎に充填された内部領域に支持構造の層を形成し、選択されたパターンに対応する経路に沿って押出機を移動させて、スワスを形成する。読者は、パターン304内の左下位置から右上位置に進む線をたどる押出機によって形成されたスワスは、角度付き部分316において隣接するスワスと接触するのに十分な幅であり、隣接するスワスは、右上から左下に進む線をたどる押出機を用いて典型的に印刷されることを理解されたい。角度付き位置でパターン304および308に示される分離は、単に押出機がたどっている経路を表しているだけであり、押出機によって実際に製造されたスワスの幅ではない。典型的に、図3Aおよび図3Bのいずれかのパターンを使用している間、ノズルの全てが開いているが、内部エリアのサイズおよび2つのパターンを用いて達成される充填率に応じて、ノズルの全てが開かない場合もある。
【0031】
図3Aまたは図3Bのパターンであり得る第1の選択されたパターンは、識別された内部領域内の層の一部を、そのパターンによって識別されたスワスで疎に埋めるために使用される。スワスを形成する前に、内部領域の寸法が識別されて、物体層において識別された内部領域の境界に対応する。物体層の内部領域においてスワスが形成されることに続いて、コントローラ128は、現在の層の他の識別された稠密充填領域、疎に充填された領域、および移行領域内で押出機を動作させて、物体層の形成を終了する。次いで、コントローラ128は、物体の次の層および次の組のヘッド制御データを検索して、その層内のさまざまなタイプの領域を識別する。第1の選択されたパターンが使用された前の層の内部領域に対して、コントローラ128は、他のジグザグパターンを選択し、同じ様式で押出機を動作させて、第1の選択されたパターンの使用中に形成されたスワス上に相補方向でスワスを形成する。
【0032】
第2のパターンが現在の層の識別された内部領域においてスワスの形成に使用された後、コントローラ128は、現在の層の他の識別された稠密充填領域、疎に充填された領域、および移行領域内で押出機を動作させて、物体層の形成を終了する。次いで、コントローラ128は、物体の次の層および次の組のヘッド制御データを検索して、その層内のさまざまなタイプの領域を識別する。図3Bのパターンが使用された前の層内の内部領域に対して、コントローラは、それに関連付けられたスワスを形成するために第1に選択されたパターンを使用し、次いでそれに関連付けられたスワスを形成するために第2のパターンを使用する。隣接する層内の内部領域を疎に充填するための2つのパターンを交互にすることは、2つのジグザグパターンを基準にして生成されたスワスによって形成される支持構造の上層が、稠密充填構造が形成される位置から所定の距離に達するまで続く。一度この位置に達すると、コントローラ128は、内部領域を移行領域として識別し、一組の移行パターンが使用されて、稠密充填位置に達するとき、稠密充填構造または表面に対する支持表面を提供するために、各層に対する充填率を増やして、後続の層内の内部領域エリアの残りの体積内に充填する。
【0033】
移行領域押し出しを考察する前に、図3Aおよび図3Bの2つのパターンによって形成された構造の利点について記載される。図3Aまたは図3Bにおける相補パターンを基準にして形成されたスワスの交互の構築は、同じ割合で押し出された材料で形成されたとあらかじめ既知のものよりも大きな剛性および一体性を有する、疎充填率で押し出された構築材料で構造を形成する。図3Aのパターン304および図3Bの相補パターン308を使用して形成された内部領域の実施例が、図5Aにおいて下部から示される。第1の選択されたパターンで印刷されたスワスおよび第2の選択されたパターンで形成されたスワスは、パターンの角度付き部分で固体の角を形成する。これらの相補ジグザグパターンは、スワスを不連続とし、押し出しが印刷中に連続的なままであるようにする様式で、互いに交差することを回避する。本明細書で使用する用語「相補」は、2つの異なる角度で配向されたスワスを意味し、そのうちの一方は、スワス形成中の押出機の直線運動に対する2つの直交軸のうちの一方からの正の角度偏差であり、そのうちの他方は、同じ直交軸からの負の角度偏差である。
【0034】
図3Aおよび図3Bに示される2つのパターンは、内部領域を疎に充填するために上記の交互に行う様式で使用される。パターンの使用を交互に行うことは、2つのパターンにおけるスワスの角度付き部分が互いに交差して、直線部分の間に強い接合部を形成することを確実とする。これらの交差角度付き部分は、直線部分のみとの接合部を形成するためにいずれかのパターンを単独で使用することによるよりも、より強い接合部が形成されることを確実とさせる。交差する角度付き部分で形成された接合部は、ジグザグスワスの直線部分が、疎充填率で部品の内部領域を横切って、著しい線形構造支持体を提供することを可能にする。各線形構造支持体の強度は、スワスの幅によって判定され、それは押出機内の連続した開放弁の数によって決定される。部品の領域におけるスワスの数および幅は、その領域における構造支持体の強度を決定する。スワスの幅が広いほど、特定のレベルの強度を提供するのに必要なスワスの数が少なくなる。直線部分の長さは、パターンの全ての直線区分において同じである必要はない。さらに、スワスの直線部分の長さは、水平および垂直の2つの方向において、同じである必要はない。すなわち、水平方向の直線のスワスは、垂直方向の直線のスワスよりも長くなり得、またはその逆も可能である。スワスの直線部分が水平方向または垂直方向のいずれか一方に長くなればなるほど、より少ない支持構造が他方の垂直および水平方向に必要となる。このため、より短い垂直または水平直線部分が、水平方向または垂直方向のいずれかにおいてより高い強度が必要とされる部品の内部領域にわたって、選択され得る。
【0035】
他の実施形態では、ジグザグパターン内の任意の正方形は、いくつかの押出パターンで充填することができる。この押し出しパターンは、部品の重要部分内にある程度の付加的な強度を提供するように構成された、より小さいジグザグパターンであってもよい。代替的に、正方形内の押出パターンは、必ずしも付加的な構造強度を提供するわけではないが、内部領域において移行層の数または部品の稠密表面に対する移行層の品質を低減させることに有用であり得る、いくつかの支持パターンであってもよい。
【0036】
コントローラ128はまた、アクチュエータを動作させて、直線部分312における場合とは異なって、角度付き部分316で押出機を移動させるように構成される。1つには、コントローラは、アクチュエータを動作させて、押出機を回転させることなく角部に対する角度で押出機を移動させる。0°または90°以外の角度での押出機の移動中の稠密充填を確実とするために、コントローラ128は、アクチュエータ150を動作させて、開いたノズルが材料を押し出す際に押出機を遅くする。代替的な実施形態では、コントローラ128およびアクチュエータ150は、角部での押出機の移動方向に対して最適な角度まで押出機を回転させるように構成される。この実施形態では、押出機の移動を、角部で遅くする必要はない。
【0037】
上記のように、コントローラ128は、2つのパターンを使用して形成された支持構造の上層と、稠密充填構造が疎に充填された支持構造上に形成された場所の下層との間に所定の距離が検出されるまで、図3Aおよび図3Bに示される2つのパターンの使用を交互に行う。その位置で、コントローラ128は、内部領域を移行領域として識別し、稠密充填構造の下層が達する位置まで、後続の層内に形成されたスワスの密度を増加させ始める。様々な技術を用いて、これらの移行領域は、稠密充填層に達するまで後続の層において形成される。
【0038】
移行領域層形成の一実施例を、考察する。他の技術または技術の組み合わせが、疎に充填された内部領域において形成された構造上に据えることが可能で、かつ稠密充填層を完全に支持することが可能な支持構造を達成するために使用され得る。本明細書に記載の実施例では、複数の異なるパターンが、移行領域を異なる層内に形成するために使用される。これらのパターンは、様々なパターンで形成されたスワスのタイプおよび数において、互いに異なる。さらに、1つのパターンが、複数回使用されて、スワスを形成するために使用された開口ノズルの数を増やし、層内のある使用から層内の別の使用に押出機をオフセットすることによって、層内のスワス幅を広げることができる。また、スワスが互いに近づく際、押出機は、スワス間に架橋を形成するために使用することができる。
【0039】
疎に充填された内部領域において形成された構造上に移行構造を形成するために使用することができる一群の移行パターンが、図4に示される。本明細書で使用する用語「移行パターン」は、押出機を移動させて、疎に充填された内部領域と稠密充填構造または表面との間の物体の内部領域の体積において、スワスを形成するように、コントローラによって使用されるデータを指す。
【0040】
図4に示される一群のパターンにおいて、パターン408、412、416、420は、移行パターンであり、パターン424は、稠密充填表面を形成するためのパターンである。このため、パターン424は、移行パターンではないが、第1の稠密充填層についての押出機の移動を示す完全性ために含まれる。移行パターンは、408、412、416、および420の順序でコントローラ128によって選択される。その後、パターン424が、選択されて、移行パターンで形成されたスワス状部上に稠密層または表面を形成する。パターン412および420は、パターンの水平部分および垂直部分に対して、層の移行領域内に奇数のスワスを形成するように押出機108を移動させるために使用される。パターン408および416は、パターンの水平部分および垂直部分に対して、層の移行領域内に偶数のスワスを形成するように押出機108を移動させるために使用される。パターン412および420は、角度の付いた経路を含有するためジグザグパターンである。示されていないが、各ジグザグパターン412および420は、上記の図3Aおよび図3Bのように、相補ジグザグパターンを有し、これらの相補パターンは、複数の層内の内部領域を充填するために3Aおよび3Bの疎充填ジグザグパターンと同じ方法で、交互に行うことができる。パターン408、416、および424は、水平および垂直の直線経路のみを含有するので、直線状パターンである。これらのパターン内の正方形の経路は、別の正方形に移動する前に連続したスワス内に印刷される。本明細書で使用する用語「ジグザグパターン」は、1つ以上のアクチュエータを動作させるコントローラに動作可能に接続されたメモリ内に記憶されたデータを意味し、押出機を動作させて、コントローラがデータに対応する経路に沿って押出機を案内することを可能にし、経路が、0°または90°の経路に沿った移動以外の角度での移動を含む。本明細書で使用する用語「直線状パターン」は、1つ以上のアクチュエータを動作させるコントローラに動作可能に接続されたメモリ内に記憶されたデータを意味し、押出機を動作させて、コントローラがデータに対応する経路に沿って押出機を案内することを可能にし、経路が、0°または90°の経路に沿った移動のみを含む。疎充填率が大きい場合、図4に図示されたものより少ないパターンが、稠密表面に移行構造を構築するために必要とされ得、疎充填率が小さい場合、より多くのパターンが必要とされ得る。
【0041】
図4に示される移行パターンのうちの1つが、層の移行領域内での押出機の移動を制御するために最初に使用される場合、押出機面板内のノズルの全てより少ない第1の組のノズルが開いて、開いたノズルから材料を放出することを可能にする。押出機が選択されたパターンの全体に対応する層を生成したとき、同じパターンが、2度目の押出機の移動を案内するために使用され、第2の組のノズルを開いて同じ層内に別の群のスワスを形成する。第2の組のノズルは、第1の組のノズル、ならびに押出機内の追加のノズルを含む。この第2の通過の間、第1の組のノズルは、以前に層内に堆積された材料上に材料を配置し、第2の組のノズル内の追加のノズルが、第1の組のノズルから放出された材料に隣接して、材料を堆積させる。この追加の材料は、層内で以前に放出された材料によって支持されていないので、わずかに垂れ下がる可能性があるが、第2のパターン使用中に形成されるスワスが、第1パターン使用中に形成されるスワスよりわずかに広くするのに十分な粘着性を有する。このようにして、層の移行領域におけるスワスの幅を増加させることができる。この同じ層における後続のパターンの使用は、直前の使用の同じノズルを開くか、または追加のノズルが開かれるかのどちらかである。層におけるパターンの使用は、パターンの最後の使用中にノズルの全てが開くか、またはパターンの使用中に所定のスワス幅に達するかのいずれかまで続く。選択されたパターンの後続の使用のために追加のノズルを開くことに加えて、押出機経路は、選択されたパターンの直前の使用中にたどられた経路から所定量だけオフセットすることができる。パターンの使用中に追加され得る、開かれた追加のノズルから放出された材料と結合したこのオフセットは、接合部形成に役立つ。パターンが層内の移行領域において1回または複数回使用された後、コントローラは、押出機を層内の他の領域に移動させて、材料を固形充填、疎充填、または移行充填率で押し出す。
【0042】
コントローラ128は、製造されている物体の移行領域内で、押出機108を移動させるためのパターン408を選択するようにプログラムされた命令を伴って構成される。上記のように、このパターンは、パターン内の正方形間のエリア内に偶数、すなわち2つのスワスを形成するために使用されて、前述のようにパターン408に一致する拡幅移行スワスが形成されることを可能にする。一度両方のスワスが所定の数の層に対して形成されると、コントローラ128は、以前に生成された移行スワス上での押出機の移動のためにパターン412を選択する。このパターンは、奇数、すなわち3つのスワスを形成するために使用されて、パターン412に一致する拡幅移行スワスが層において形成されることを可能にする。一度3つのスワスが形成されると、コントローラ128は、以前に生成された移行スワス上での押出機の移動のためにパターン416を選択する。このパターンは、偶数、すなわち4つのスワスを形成するために使用されて、パターン416に一致する拡幅移行スワスが形成されることを可能にする。一度3つのスワスが形成されると、コントローラ128は、以前に生成された移行スワス上での押出機の移動のためにパターン420を選択する。このパターンは、奇数、すなわち5つのスワスを形成するために使用されて、パターン420に一致する拡幅移行スワスが互いに形成されることを可能にする。一度5つのスワスが形成されると、コントローラ128は、以前に生成された移行スワス上での押出機の移動のためにパターン424を選択する。このパターンは、移行領域における移行スワス、および内部領域における疎に充填されたスワスを覆う稠密充填表面を形成するために使用される。パターン424はまた、スワスの間の開放エリアを橋渡しするためにも使用することができる。各スワスが形成されるために全てのノズルを開放して押出機を移動させるためのパターン424を使用すること、および下のスワスの間の開放領域上で押出機の移動を遅くすることが、スワス間の架橋を形成する。この架橋工程は、既知の3D押出製造において典型的であり、架橋材料が開口部に落ちる得るほど開口部が大きくない限り、物体内のいずれの層の間の開口部を架橋するために使用することができる。上記のように、移行パターン408から420に対応する材料によって覆われた疎に充填された内部領域の実施例が、図5Bにおいて下部から示されている。
【0043】
図6は、3D物体の内部領域を充填し、それらの領域において支持構造を形成するために、疎充填ジグザグパターンおよび移行パターンを基準にして押出機を移動および動作させるための工程600のブロック図を図示する。下記の考察では、機能またはアクションを実行する工程600への参照は、記憶されたプログラム命令を実行して、プリンタ内の他の構成要素と関連する機能またはアクションを実施するための、コントローラ128等の、コントローラの動作を指す。工程600は、例解目的で、図1のプリンタ100’および図2のプリンタ100”と連動して説明される。
【0044】
工程600は、コントローラがコントローラに動作可能に接続されたメモリから物体層データおよび押出機制御データを検索することから始まる(ブロック604)。コントローラは、物体層内の領域を、稠密充填領域、疎に充填された領域、または移行領域として識別する(ブロック608)。識別された稠密充填領域に対して、適切な稠密充填パターンが選択され、押出機バルブが動作しながら、押出機を案内するために使用される(ブロック612)。識別された疎に充填された内部領域に対して、適切なジグザグパターンが選択され、押出機バルブが動作しながら、押出機を案内するために使用される(ブロック616)。識別された移行領域に対して、適切な移行パターンが選択され、押出機バルブが動作しながら、押出機を案内するために使用される(ブロック620)。一度その領域に対する適切なパターンを使用して、その領域内にスワスが形成されると、工程は、その層において、別の領域が形成されるべきかどうかを決定する(ブロック624)。別の領域が層において形成されるべきである場合、領域タイプが識別され(ブロック608)、適切なパターンが選択かつ使用されて、識別された領域内においてスワスを形成する(ブロック612、616、または620)。層において他の領域が形成されない場合、工程は別の層が形成されるべきかどうかを決定する(ブロック628)。その場合、物体層データおよび押出機制御データが検索され(ブロック604)、層内の領域が処理される(ブロック608から624)。全ての物体層データが処理されるとき(ブロック628)、工程は停止する。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8