(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】導電性部材、プロセスカートリッジ並びに電子写真画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20221219BHJP
G03G 21/18 20060101ALI20221219BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20221219BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G03G15/00 550
G03G21/18 103
G03G15/02 101
F16C13/00 B
(21)【出願番号】P 2019069096
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】西岡 悟
(72)【発明者】
【氏名】倉地 雅大
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 健二
(72)【発明者】
【氏名】菊池 裕一
(72)【発明者】
【氏名】山内 一浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 加奈
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072833(JP,A)
【文献】特開2011-022410(JP,A)
【文献】特開2013-020175(JP,A)
【文献】特開2012-163954(JP,A)
【文献】特開2007-163849(JP,A)
【文献】特開平09ー279015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0195517(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/18
G03G 15/02
F16C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体、導電層をこの順に有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電層は、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、第2のゴムの架橋物および導電性粒子を含むドメインと、を有し、
該導電性部材の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の該外表面と該白金電極との間に振幅が1V、周波数1.0Hzの交流電圧を印加したときのインピーダンスが、1.0×10
3~1.0×10
8Ωであり、かつ、
該導電層の長手方向の長さをL、該導電層の厚さをTとしたとき、該導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、該導電層の厚さ方向の断面の各々について、該導電層の外表面から深さ0.1T~0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置いたときに、全9個の該観察領域の各々で観察されるドメインのうちの80個数%以上が、下記要件(1)及び要件(2)を満たすことを特徴とする電子写真用の導電性部材:
(1)ドメインの断面積に対する該ドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合が、20%以上であること;
(2)ドメインの周囲長をA、該ドメインの包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00以上、1.10以下であること。
【請求項2】
前記導電層が、導電性粒子と第2のゴムを含む第2のゴム混合物と、第1のゴムと、を含むゴム組成物の層を硬化することによって形成されたものである、請求項1に記載の導電性部材。
【請求項3】
前記マトリックスの体積抵抗率ρmが、1.0×10
8Ωcm以上、1.0×10
17Ωcm以下である請求項1または2に記載の導電性部材。
【請求項4】
前記要件(1)および要件(2)を満たしている前記ドメインの各々に含まれる前記ドメインの最大フェレ径Dfの平均が、0.1~5.0μmの範囲内である請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項5】
前記15μm四方の領域に存在する前記ドメインの平均個数が20~300個である請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項6】
前記ドメインの断面積に対する導電性粒子の断面積の割合が30%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項7】
前記導電性粒子が導電性カーボンブラックである請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項8】
前記導電性カーボンブラックのDBP吸収量は、40cm
3/100g以上80cm
3/100g以下であることを特徴とする請求項7に記載の導電性部材。
【請求項9】
前記要件(1)および要件(2)を満たしている前記ドメインの各々に含まれる前記導電性カーボンブラック壁面間距離の算術平均Cが、110nm以上130nm以下であり、かつ該導電性カーボンブラック壁面間距離の分布の標準偏差をσmとしたときに、該導電性カーボンブラック壁面間距離のσm/Cが0.0以上0.3以下であることを特徴とする請求項7または8に記載の導電性部材。
【請求項10】
前記第1のゴムと前記第2のゴムの溶解度パラメーターの絶対値の差が0.4(J/cm
3)
0.5以上4.0(J/cm
3)
0.5以下である請求項1~9のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項11】
該マトリックスの体積抵抗率ρmが、1.0×10
10Ωcm以上1.0×10
17Ωcm以下である請求項1~10のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項12】
該マトリックスの体積抵抗率ρmが、1.0×10
12Ωcm以上1.0×10
17Ωcm以下である請求項1~11のいずれか1項に記載の導電性部材。
【請求項13】
電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、請求項1~12のいずれか1項に記載の導電性部材を具備することを特徴とする電子写真用のプロセスカートリッジ。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の導電性部材を具備することを特徴とする電子写真画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用の導電性部材、プロセスカートリッジ並びに電子写真画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用した画像形成装置(以下、電子写真画像形成装置)においては、帯電部材、転写部材などの導電性部材が使用されている。導電性部材は、導電性支持体の外周面に被覆された導電層から構成されている。そして、該導電性部材は、例えば帯電部材、転写部材として使用する場合には、導電性支持体から導電性部材表面まで電荷を輸送して被帯電部材に対して、放電することにより、該被帯電部材の表面を帯電させる役割を担う。
近年の電子写真画像に対する高画質化の要求に対し、導電性部材への印加電圧を増加させることが考えられている。例えば、帯電部材と、被帯電部材である電子写真感光体との間の帯電バイアスを高めることによって、電子写真画像のコントラストを高めることが可能である。
【0003】
特許文献1には、体積固有抵抗率1×1012Ω・cm以下の原料ゴムAより主になるイオン導電性ゴム材料からなるポリマー連続相と、原料ゴムBに導電粒子を配合して導電化した電子導電性ゴム材料からなるポリマー粒子相とを含んでなる海島構造のゴム組成物、及び該ゴム組成物から形成された弾性体層を有する帯電部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に係る帯電部材を用いて電子写真画像を形成するにあたり、当該帯電部材と電子写真感光体との間に印加する帯電バイアスを、一般的な帯電バイアス(例えば、-1000V)よりも高い電圧(例えば、-1500V以上)とすることを試みた。その結果、例えば、本来、トナーが転写されない白ベタ部分にもトナーが転写され、所謂「かぶり」が生じた画像が形成されることがあった。
【0006】
発明の一態様は、帯電バイアスを高めた場合にも電子写真画像へのかぶりの発生を抑えることができる帯電部材として用い得る電子写真用の導電性部材の提供に向けたものである。
また、本発明の他の態様は、高品位な電子写真画像の形成に資するプロセスカートリッジの提供に向けたものである。さらに本発明の他の態様は、高品位な電子写真画像を形成することのできる電子写真画像形成装置の提供に向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、導電性支持体、導電層をこの順に有する電子写真用の導電性部材であって、
該導電層は、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、第2のゴムの架橋物および導電性粒子を含むドメインと、を有し、
該導電性部材の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該支持体の該外表面と該白金電極との間に振幅が1V、周波数1.0Hzの交流電圧を印加したときのインピーダンスが、1.0×103~1.0×108Ωであり、かつ、
該導電層の長手方向の長さをL、該導電層の厚さをTとしたとき、該導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、該導電層の厚さ方向の断面の各々について、該弾性層の外表面から深さ0.1T~0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置いたときに、全9個の該観察領域の各々で観察されるドメインのうちの80個数%以上が、下記要件(1)および要件(2)を満たす導電性部材が提供される。
(1)ドメインの断面積に対する該ドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合が、20%以上であること;
(2)ドメインの周囲長をA、該ドメインの包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00以上、1.10以下であること。
【0008】
また本発明の他の態様によれば、電子写真画像形成装置の本体に着脱可能に構成されているプロセスカートリッジであって、上記の導電性部材を具備しているプロセスカートリッジが提供される。更に本発明の他の態様によれば、上記の導電性部材を具備している電子写真画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、帯電バイアスを高めた場合にも、電子写真画像へのかぶりの発生を抑えることができる帯電部材として用い得る電子写真用の導電性部材を得ることができる。また、本発明の他の態様によれば、高品位な電子写真画像の形成に資するプロセスカートリッジを得ることができる。更に、本発明の他の態様によれば、高品位な電子写真画像を形成することができる電子写真画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る導電性部材の長手方向に対して垂直な方向の断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る導電性部材の導電層の長手方向に対して垂直な方向の断面図である。
【
図3】本態様に係る導電層のインピーダンス測定系の概要図である。
【
図4】本態様に係るドメインの最大フェレ径を説明する概念図である。
【
図5】本態様に係るドメインの包絡周囲長を説明する概念図である。
【
図6】本態様に係るドメイン形状を測定する切片の概念図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るプロセスカートリッジの断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る電子写真画像形成装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、特許文献1に係る帯電部材が、帯電バイアスを高めたときに、電子写真画像にかぶりを生じさせる理由について検討した。その過程で、特許文献1に係る帯電部材における電子導電ゴム材料からなるポリマー粒子相の役割に着目した。特許文献1に係る帯電部材の弾性体層は、ポリマー粒子相間での電子の授受によって電子導電性が発現していると考えられる。そして、帯電バイアスを高めたときのかぶりの発生は、ポリマー粒子相間での電界の集中に起因しているものと推測した。電界集中とは、特定の箇所に通電時の電流が集中する現象である。
【0012】
すなわち、本発明者らの観察によれば、該ポリマー粒子相は、形状が異形であり、かつ、外表面に凹凸が存在していた。このようなポリマー粒子相間では、電子の授受がポリマー粒子相の凸部に集中し、弾性層体層の導電性支持体側から弾性体層の外表面側に至るまでの電子の授受が不均一となる。そのため、帯電部材の外表面から被帯電体である電子写真感光体への放電が不均一となり、電子写真感光体の表面電位も不均一化する。その結果、電子写真画像にかぶりが生じるものと推測した。
そこで、本発明者らは、帯電バイアスを高めた場合におけるポリマー粒子相間の電子の授受の集中点をなくすことが、電子写真画像のかぶりの改善に有効であると認識した。そして、かかる認識に基づき、更なる検討を重ねた結果、導電性支持体、導電層をこの順に有し、該導電層が、第1のゴムの架橋物を含むマトリックスと、第2のゴムの架橋物および導電性粒子を含むドメインと、を有する電子写真用の導電性部材であって、下記の要件(A)及び要件(B)を満たす導電性部材によれば、高い帯電バイアスを印加した場合にも、電子写真画像へのかぶりを有効に抑制し得ることを見出した。
【0013】
要件(A):
導電層が、第1のゴムの架橋物を含むマトリックス、及び第2のゴムの架橋物および導電性粒子を含むドメインを有し、導電性部材の外表面に直接白金電極を設け、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、該導電性支持体の外表面と白金電極との間に振幅が1V、周波数1.0Hzの交流電圧を印加したときのインピーダンスが、1.0×103~1.0×108Ωであること。
【0014】
要件(B):
導電層の長手方向の長さをL、導電層の厚さをT、としたとき、該導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所における、該導電層の厚さ方向の断面の各々について、該弾性層の外表面から深さ0.1T~0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所に15μm四方の観察領域を置いたときに、全9個の該観察領域の各々で観察されるドメインのうちの80個数%以上が、下記要件(B1)および要件(B2)を満たすこと:
要件(B1)ドメインの断面積に対する該ドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合が、20%以上である;
要件(B2)ドメインの周囲長をA、該ドメインの包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00以上、1.10以下である。
【0015】
<要件(A)>
要件(A)は、導電層の導電性を程度を表すものである。このようなインピーダンスの値を示す導電層を備えた帯電部材は、過度に放電電流量が増加することを抑制し、その結果、異常放電に起因する電位ムラの発生を防ぐことができる。また、放電電荷量の総量の不足による帯電不足の発生を抑制し得る。
【0016】
要件(A)に係るインピーダンスは次のような方法によって測定することができる。
まず、インピーダンスの測定に際し、帯電部材と測定電極との間の接触抵抗の影響を排除するために、白金の薄膜を帯電部材の外表面に形成し、当該薄膜を電極として使用し、導電性の支持体を接地電極として2端子でインピーダンスを測定する。
当該薄膜の形成方法としては、金属蒸着、スパッタリング、金属ペーストの塗布、金属テープで貼付するなどの方法が挙げられる。中でも、帯電部材との接触抵抗を低減し得る観点から、蒸着で形成する方法が好ましい。
帯電部材の表面に白金薄膜を形成する場合、その簡便さおよび薄膜の均一性を考慮すると、真空蒸着装置に対して帯電部材を把持できる機構を付与し、断面が円柱状の帯電部材に対しては、さらに回転機構を付与した、真空蒸着装置を使用することが好ましい。
断面が円柱状の帯電部材に対しては、円柱状形状の軸方向としての長手方向で10mm程度の幅の金属薄膜電極を形成し、当該金属薄膜電極に対して隙間なく巻き付けた金属シートを測定装置から出ている測定電極と接続して測定を行うことが好ましい。これにより、帯電部材の外径の振れや、表面形状に影響されずに、インピーダンス測定を実施することができる。金属シートとしては、アルミホイルや金属テープ等を用いることができる。
インピーダンスの測定装置の例としては例えば、インピーダンスアナライザ、ネットワークアナライザ、スペクトルアナライザが挙げられる。中でも帯電部材の電気抵抗域から、インピーダンスアナライザを好適に用い得る。
図3に導電性部材に測定電極を形成した状態の概要図を示す。
図3において、31が導電性支持体、32が導電層、33が測定電極である白金蒸着層、34がアルミシートである。
図3(a)は斜視図、
図3(b)は断面図を示す。同図のように、導電性支持体31と、測定電極の導体層33によって導電層32を挟む状態にすることが重要である。
【0017】
そしてインピーダンス測定装置(例えば、商品名「ソーラトロン1260」、96W型誘電体インピーダンス測定システム ソーラトロン社製、不図示)に、当該アルミシート34から測定電極33と、導電性支持体31に接続して、インピーダンス測定を行う。
インピーダンスの測定は、温度23℃、相対湿度50%環境において、振動電圧1Vpp、周波数1.0Hzで測定し、インピーダンスの絶対値を得る。
導電性部材を長手方向に5個の領域に5等分し、それぞれの領域内から任意に1回ずつ、計5回の、上記測定を行う。その平均値を、導電性部材のインピーダンスとする。
【0018】
<要件(B)>
要件(B)中、要件(B1)は、該導電層が含むドメインの各々が含む導電性粒子の量を規定している。また、要件(B2)は、ドメインの外周面に凹凸が少ない、又は凹凸がないことを規定している。
要件(B1)に関して、本発明者らは、1個のドメインに着目したときに、該ドメインに含まれる導電性粒子の量が、ドメインの外形形状に影響を与えているとの知見を得た。すなわち、1個のドメインの導電性粒子の充填量が増えるにつれて、該ドメインの外形形状がより球体に近くなるとの知見を得た。球体に近いドメインの数が多いほど、ドメイン間での電子の授受の集中点を少なくすることができる。その結果、特許文献1に係る帯電部材において観察された電子写真画像へのかぶりを軽減することができる。
そして、本発明者らの検討によれば、その理由は明らかでないが、1つのドメインの断面の面積を基準として、当該断面において観察される導電性粒子の断面積の総和の割合が20%以上であるドメインは、ドメイン間での電子の授受の集中を有意に緩和し得る外形形状を取り得る。具体的には、より、球体に近い形状を取り得る。
【0019】
要件(B2)は、ドメインの外周面における、電子の授受の集中点となり得るような凹凸の存在の程度を規定している。すなわち、ドメインの周囲長をA、該ドメインの包絡周囲長をBとしたとき、A/Bが、1.00のドメインは、その外周に凹凸が存在しない。そして、本発明者らの検討によれば、A/Bが、1.00以上、1.10以下であるドメインは、ドメイン間で電子の授受の集中点となり得るような凹凸を実質的に有しないものであるとの認識を得た。なお、包絡周囲長とは、
図5に示したように、観察領域内で観察されるドメイン51の凸部同士を結び、凹部の周長を無視したときの周囲長(破線52)である。
【0020】
そして、要件(B)においては、導電層中のドメイン群のうち、上記要件(B1)、及び要件(B2)を満たすドメインが大多数を占めることを規定している。
要件(B)において、ドメインの観察対象を、導電層の厚み方向の断面における、導電層の外表面から深さ0.1T~0.9Tの範囲内としたことの意味としては、導電層中を導電性支持体側から該導電層の外表面側に向かう電子の移動は、主に当該範囲内に存在するドメインによって主に支配されていると考えられるためである。
要件(A)及び要件(B)を満たす導電層を備えた帯電部材の製造方法については後述する。
【0021】
本開示に係る電子写真用の導電性部材の一態様として、特にローラ形状を有する導電性部材(以降、「導電性ローラ」ともいう)について図を用いて説明する。
図1は、導電性ローラ1の長手方向に対して垂直な断面図である。導電性ローラ1は、円柱状または中空円筒状の導電性支持体2、該支持体の外周面上に形成された導電層3を有している。
図2は、導電性ローラの長手方向に対して垂直な方向の導電層の断面図を示す。導電層3は、マトリックス3aと、ドメイン3bとを有する構造(以降、「マトリックス-ドメイン構造」ともいう)を有する。そして、ドメイン3bは、導電性粒子3cを含む。
【0022】
<導電性支持体>
導電性支持体としては、電子写真用の導電性部材の分野で公知なものから適宜選択して用いることができる。一例として、アルミニウム、ステンレス、導電性を有する合成樹脂、鉄、銅合金などの金属または合金が挙げられる。更に、これらを酸化処理やクロム、ニッケルなどで鍍金処理を施しても良い。鍍金の方法としては電気鍍金、無電解鍍金のいずれも使用することができるが、寸法安定性の観点から無電解鍍金が好ましい。ここで使用される無電解鍍金の種類としては、ニッケル鍍金、銅鍍金、金鍍金、その他各種合金鍍金を挙げることができる。鍍金厚さは、0.05μm以上が好ましく、作業効率と防錆能力のバランスを考慮すると、鍍金厚さは0.1~30μmであることが好ましい。導電性支持体の形状としては、円柱状または中空円筒状を挙げることができる。この導電性支持体の外径は、φ3mm~φ10mmの範囲が好ましい。
【0023】
<導電層>
<マトリックス>
マトリックスは、第1のゴムを含む。マトリックスの体積抵抗率ρmは1.0×108Ωcm以上1.0×1017Ωcm以下が好ましい。マトリックスの体積抵抗率を1.0×108Ωcm以上とすることで、マトリックスが、導電性のドメインの間での電荷の授受を乱すことを抑制できる。また、体積抵抗率ρmを1.0×1017Ωcm以下とすることで、導電性支持体と被帯電部材との間に帯電バイアスを印加したときの導電性部材からの被帯電部材への放電を円滑に行い得る。マトリックス体積抵抗率ρmは、特には、1.0×1010Ωcm以上1.0×1017Ωcm以下、さらには、1.0×1012Ωcm以上1.0×1017Ωcm以下が好ましい。
【0024】
マトリックスの体積抵抗率ρmは、当該導電性部材の弾性層を切片化し、微小探針によって計測することができる。切片化する手段としては、例えば、カミソリや、ミクロトーム、FIBが挙げられる。切片の作製に関しては、ドメインの影響を排除し、マトリックスのみの体積抵抗率を計測する必要があるため、SEMやTEMなどであらかじめ計測したドメイン間距離よりも小さい膜厚の切片を作成する。したがって、切片化の手段としては、ミクロトームのような極薄サンプルを作成できる手段が好ましい。
体積抵抗率ρmの測定は、まず、当該切片の片面を接地した後に、SPM、AFM、などで、マトリックスとドメインの体積抵抗率あるいは硬度の分布を計測できる手段によって、薄片中のマトリックスとドメインの場所を特定する。次いで、当該マトリックスに探針を接触させ、50VのDC電圧を印加したときの接地電流を測定し、電気抵抗として算出すればよい。このとき、切片のSPMやAFMのような形状測定も可能な手段であれば、当該切片の膜厚が計測でき、体積抵抗率が測定可能であるため、好適である。
【0025】
切片のサンプリング位置としては、導電性部材の該導電層の長手方向の長さをLとしたとき、導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の2か所の計3か所から切片を切り出す。次に測定位置としては、導電層の厚さをTとしたとき、各切片のそれぞれ外表面から深さ0.1T~0.9Tまでの厚み領域のマトリックス部分の任意の3か所、合計9か所で体積抵抗率の測定を行い、その算術平均値を、マトリックスの体積抵抗率とする。
【0026】
<第1のゴム>
第1のゴムは、導電層形成用のゴム混合物中、最も配合割合が多い成分であり、第1のゴムの架橋物は導電層の機械的強度を支配する。従って、第1のゴムは、架橋後において、導電層に、電子写真用の導電性部材に要求される強度を発現するものが用いられる。
第1のゴムの好ましい例を以下に挙げる。
天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン3元共重合ゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、NBRの水素添加物(H-NBR)、エピクロルヒドリンホモポリマーやエピクロルヒドリン-エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル3元共重合体及びシリコーンゴム。
【0027】
<補強剤>
マトリックスには、補強剤として、マトリックスの導電性に影響がない程度に、補強剤を含有させることができる。補強剤の例としては、例えば、導電性の低い補強性カーボンブラックが挙げられる。補強性カーボンブラックの具体例としては、例えば、FEF、GPF、SRF、MTカーボンが挙げられる。
さらに、マトリックスを形成する第1のゴムには、必要に応じて、ゴムの配合剤として一般に用いられている充填剤、加工助剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、軟化剤、分散剤、着色剤等を添加してもよい。
【0028】
<ドメイン>
ドメインは第2のゴム、および、導電性粒子を含む。ここで導電性とは体積抵抗率が1.0×108Ωcm未満であると定義する。
【0029】
<第2のゴム>
第2のゴムとして用い得るゴムの具体例を以下に挙げる。
NR、IR、BR、SBR、IIR、EPM、EPDM、CR、NBR、H-NBR、シリコーンゴム、ウレタンゴム(U)。
【0030】
<導電性粒子>
導電性粒子としては、導電性カーボンブラック、グラファイト等の炭素材料;酸化チタン、酸化錫等の酸化物;Cu、Ag等の金属;酸化物または金属が表面に被覆され導電化された粒子等の電子導電剤が例として挙げられる。これらの導電性粒子の2種類以上を適宜量配合して使用してもよい。
そして、導電性粒子は、要件(B1)で規定したように、ドメインの断面積に対する導電性粒子の断面積の割合が少なくとも20%となるように含有されることが好ましい。このようにドメイン中に導電性粒子を高密度に充填することで、ドメインの外形形状を球体に近づけることができると共に、前記要件(B2)に規定したように凹凸が小さいものとすることができる。ドメインの断面積に対する導電性粒子の断面積の割合の上限については特に限定されないが、30%以下であることが好ましい。
【0031】
要件(B1)で規定したような、導電性粒子が高密度に充填されたドメインを得るために、導電性粒子として、導電性カーボンブラックを用いることが好ましい。導電性カーボンブラックの具体例を以下に挙げる。ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック。
中でも、DBP吸収量が40cm3/100g以上80cm3/100g以下であるカーボンブラックを特に好適に用い得る。DBP吸収量(cm3/100g)とは、100gのカーボンブラックが吸着し得るジブチルフタレート(DBP)の体積であり、日本工業規格(JIS) K 6217-4:2017(ゴム用カーボンブラック-基本特性-第4部:オイル吸収量の求め方(圧縮試料を含む))に従って測定される。一般に、カーボンブラックは、平均粒径10nm以上50nm以下の一次粒子がアグリゲートした房状の高次構造を有している。この房状の高次構造はストラクチャーと呼ばれ、その程度はDBP吸収量(cm3/100g)で定量化される。
一般的に、ストラクチャーが発達したカーボンブラックは、ゴムに対し補強性が高く、ゴムへのカーボンブラックの取り込みが悪くなり、また、混練時のシェアトルクが非常に高くなる。そのため、ドメイン中に充填量を多くすることが困難である。
一方、DBP吸収量が上記範囲内にある導電性カーボンブラックは、ストラクチャー構造が未発達のため、カーボンブラックの凝集が少なく、ゴムへの分散性が良好である。そのため、ドメイン中への充填量を多くでき、その結果として、ドメインの外形形状を、より球体に近いものを得られやすい。
さらに、ストラクチャーが発達したカーボンブラックは、カーボンブラック同士が凝集し易く、また、凝集体は、大きな凸凹構造を有する塊となりやすい。このような凝集体がドメインに含まれると、要件(B2)に係るドメインが得られにくい。形状にまで影響を与え凹凸構造を形成する場合がある。一方、DBP吸収量が、上記した範囲内にある導電性カーボンブラックは、凝集体を形成し難いため、要件(B2)に係るドメインを作成するうえで有効である。
【0032】
ドメインの体積抵抗率は1.0以上1.0×104Ωcm以下にすることが好ましい。1.0以上1.0×104Ωcm以下であれば、安定してマトリックス-ドメイン構造を形成するドメインの体積分率で導電化することができるためである。なおドメインの体積抵抗率の測定は、上記のマトリックスの体積抵抗率の測定方法に対して、測定箇所をドメインに相当する場所に変更し、電流値の測定の際の印加電圧を1Vに変更した以外は同様の方法で実施すればよい。
【0033】
要件(A)で規定したような導電層を得るために、本態様に係るドメインは、導電層の厚みをTとしたとき、該導電性の厚み方向の断面における該導電層の外表面から深さ0.1T~0.9Tまでの厚み領域の任意の位置に15μm四方の観察領域をおいたときに、該観察領域内にドメインが20~300個存在することがより好ましい。20個以上であれば、導電性部材として、十分な導電性が得られ、高速プロセスにおいても十分な電荷供給を達成することができる。また、300個以下であれば十分なドメイン間距離を保つことができ、画像出力の繰り返しによるドメインの凝集を抑えることができるため、均一放電を達成することが容易となる。
【0034】
本態様に係るドメインは、要件(1)および要件(2)を満たしているドメインの各々に含まれるドメインの最大フェレ径Df(以降、単に「ドメイン径」ともいう)の平均が、0.1~5.0μmの範囲内であることが好ましい。この範囲であれば、最表面のドメインが現像剤と同様以下のサイズとなるため、細かい放電が可能となり、均一放電を達成することが容易となる。
【0035】
<導電性部材の製造方法>
本態様に係る導電層を備えた導電性部材は、例えば、下記工程(i)~(iv)を含む方法を経て形成することができる。
【0036】
工程(i):カーボンブラックおよび第2のゴムを含む、ドメイン形成用ゴム混合物(以降、「CMB」とも称する)を調製する工程;
工程(ii):第1のゴムを含むマトリックス形成用ゴム混合物(以降、「MRC」とも称する)を調製する工程;
工程(iii):CMBとMRCとを混練して、マトリックス-ドメイン構造を有するゴム組成物を調製する工程。
工程(iv):工程(C)で調製したゴム組成物の層を、導電性支持体上に直接または他の層を介して形成し、該ゴム組成物の層を硬化させて、本態様に係る導電層を形成する工程。
【0037】
そして、要件Aを満たすドメインを得るためには、CMBの調製に用いる導電性粒子として、前記した、DBP吸収量が40cm3/100g以上80cm3/100g以下であるカーボンブラックを、第2のゴムに対して多量に添加して混練してCMBを調製することが有効である。この場合、CMB中における第2のゴムに対するカーボンブラックの配合量としては、例えば、第2のゴムの100質量部に対して、40質量部以上200質量部以下の配合量が好ましい。特には、50質量部以上100質量部以下である。
【0038】
また、ドメイン中の導電性粒子の含有量としては、ドメイン中の導電性粒子の壁面間距離の算術平均であるCが、110nm以上130nm以下となる量が含まれていることが好ましい。
ドメイン中の算術平均壁面間距離Cが110nm以上130nm以下であれば、トンネル効果による導電性粒子間の電子の受け渡しが、ドメイン内のほぼすべての導電性粒子間で可能となる。すなわち、ドメイン内の導電パスの偏在を抑制できるため、ドメイン内での電界集中を抑制できる。その結果、ドメイン形状に加え、ドメイン内での電界集中を抑制できるため、より均一放電を達成しやすくなる。
さらにはカーボンブラックを分散させたゴム中に架橋ゴム的な性質を示すカーボンゲルが増え、形状を維持しやすくなり、成形時ドメインを球形状に維持しやすくなる。その結果、電界集中が抑制され、均一放電を達成しやすくなる。
さらに、導電性粒子の算術平均壁面間距離Cが110nm以上130nm以下であり、かつ、導電性粒子の壁面間距離の分布の標準偏差をσmとしたときに、導電性粒子の壁面間距離の変動係数σm/Cが0.0以上0.3以下であることがさらに好ましい。変動係数は、導電性粒子壁面間距離のばらつきを示す値であり、導電性粒子の壁面間距離がすべて同じである場合、0.0となる。
この変動係数σm/Cが、0.0以上0.3以下を満たす場合、カーボンブラック間の壁面間距離のばらつきが少ないため、カーボンブラック粒子が均一に分散されていることを意味する。その結果、カーボンブラック凝集体に起因するドメインの凸凹形状を抑制することができるためである。その結果、電界集中を抑制できるため、より均一放電を達成しやすくなる。
【0039】
ドメイン内の導電性粒子壁面間距離の算術平均C及びドメイン断面積に対するカーボンブラック断面の割合は次のようにして測定すればよい。まず、導電層の薄片を作製する。マトリックス-ドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電性の相と絶縁性の相とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。
破断面の形成、前処理を行った薄片に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察することができる。これらの中でも、導電相であるドメインの面積の定量化の正確性から、SEMで1,000倍~100,000倍で観察を行うことが好ましい。得られた観察画像に対し画像解析装置等を用いて、2値化し解析することで上記算術平均壁面間距離及び上記割合が得られる。
【0040】
また、ドメイン間での電界集中のより一層の軽減を図る上では、ドメインの外形形状をより球体に近づけることが好ましい。そのためには、ドメイン径を、前記した範囲内でより小さくすることが好ましい。その方法としては、例えば、工程(iv)において、MRCとCMBとを混練して、MRCとCMBとを相分離させて、MRCのマトリックス中にCMBのドメインを形成されたゴム混合物を調製する工程において、CMBのドメイン径を小さくするように制御する方法が挙げられる。CMBのドメイン径を小さくすることでCMBの比表面積が増大し、マトリックスとの界面が増加するため、CMBのドメインの界面には張力を小さくしようとする張力が作用する。その結果、CMBのドメインは、その外形形状が、より球体に近づく。
ここで、非相溶のポリマー2種を溶融混練させたときに形成されるマトリックス-ドメイン構造におけるドメイン径Dを決定する要素に関して、Taylorの式(式(4))、Wuの経験式(式(5)、(6))、及びTokitaの式(式(7))が知られている。
(住友化学 技術誌 2003-II、42)
【0041】
・Taylorの式
D=[C・σ/ηm・γ]・f(ηm/ηd) (4)
【0042】
・Wuの経験式
γ・D・ηm/σ=4(ηd/ηm)0.84・ηd/ηm>1 (5)
γ・D・ηm/σ=4(ηd/ηm)-0.84・ηd/ηm<1 (6)
【0043】
・Tokitaの式
D=12・P・σ・φ/(π・η・γ)・(1+4・P・φ・EDK/(π・η・γ))(7)
【0044】
式(4)~(7)において、DはCMBのドメイン径の(最大フェレ径Df)、Cは定数、σは界面張力、ηmはマトリックスの粘度、ηdはドメインの粘度、γはせん断速度、ηは混合系の粘度、Pは衝突合体確率、φはドメイン相体積、EDKはドメイン相切断エネルギーを表す。
【0045】
そして、上記式(4)~(7)から、CMBのドメイン径Dを小さくするためには、たとえば、CMB及びMRCとの物性、並びに工程(iii)における混練条件を制御することが有効である。具体的には、下記の(a)~(d)の4つを制御することが有効である。
(a)CMB、及びMRCの各々の界面張力σの差;
(b)CMBの粘度(ηd)、及びMRCの粘度(ηm)の比(ηm/ηd);
(c)工程(iii)における、CMBとMRCとの混練時のせん断速度(γ)、及びせん断時のエネルギー量(EDK);
(d)工程(iii)における、CMBのMRCに対する体積分率。
【0046】
(a)CMBとMRCとの界面張力差
一般的に二種の非相溶のゴムを混合した場合、相分離する。これは、異種高分子間の相互作用よりも、同一高分子間の相互作用が強いため、同一高分子同士で凝集し、自由エネルギーを低下させ安定化しようとするためである。相分離構造の界面は異種高分子と接触するため、同一分子同士の相互作用で安定化されている内部より、自由エネルギーが高くなる。その結果、界面の自由エネルギーを低減させるために、異種高分子と接触する面積を小さくしようとする界面張力が発生する。この界面張力が小さい場合、エントロピーを増大させるために異種高分子でもより均一に混合しようとする方向に向かう。均一に混合した状態とは溶解であり、溶解度の目安となるSP値と界面張力は相関する傾向にある。
つまり、CMBとMRCとの界面張力差は、CMBとMRCとのSP値差と相関すると考えられる。そのため、MRCとCMBとの組み合わせで制御することが可能である。
MRC中の第1のゴムと、CMB中の第2のゴムとしては、溶解度パラメーターの絶対値の差が、0.4(J/cm3)0.5以上4.0(J/cm3)0.5以下、特には、0.4(J/cm3)0.5以上2.2(J/cm3)0.5以下となるようなゴムを選択することが好ましい。この範囲であれば安定した相分離構造を形成でき、また、CMBのドメイン径Dを小さくすることができる。
【0047】
<SP値の測定方法>
MRC、及びCMBのSP値は、SP値が既知の材料を用いて、検量線を作成することで、精度良く算出することが可能である。この既知のSP値は、材料メーカーのカタログ値を用いることもできる。例えば、NBR及びSBRは、分子量に依存せず、アクリロニトリルおよびスチレンの含有比率でSP値がほぼ決定される。従って、マトリックスおよびドメインを構成するゴムを、熱分解ガスクロマトグラフィー(Py-GC)及び固体NMR等の分析手法を用いて、アクリロニトリルまたはスチレンの含有比率を解析することで、SP値が既知の材料から得た検量線から、SP値を算出することができる。また、イソプレンゴムは、1,2-ポリイソプレン、1,3-ポリイソプレン、3,4-ポリイソプレン、およびcis-1,4-ポリイソプレン、trans-1,4-ポリイソプレンなどの、異性体構造でSP値が決定される。従って、SBRおよびNBRと同様にPy-GC及び固体NMR等で異性体含有比率を解析し、SP値が既知の材料から、SP値を算出することができる。
【0048】
(b)CMBとMRCとの粘度比
CMBとMRCとの粘度比(ηd/ηm)は、1に近い程、ドメインの最大フェレ径を小さくできる。CMBとMRCの粘度比は、CMB及びMRCのムーニー粘度の選択や、充填剤の種類や量の配合によって調整が可能である。また、相分離構造の形成を妨げない程度に、パラフィンオイルなどの可塑剤を添加することでも可能である。また混練時の温度を調整することで、粘度比の調整を行うことができる。なおドメイン形成用ゴム混合物やマトリックス形成用ゴム混合物の粘度は、JIS K6300-1:2013に基づきムーニー粘度ML(1+4)を混練時のゴム温度で測定することで得られる。
【0049】
(c)MRCとCMBとの混練時のせん断速度、及びせん断時のエネルギー量
MRCとCMBとの混練時のせん断速度は速いほど、また、せん断時のエネルギー量は大きいほど、ドメインの最大フェレ径Dfを小さくすることができる。
せん断速度は、混練機のブレードやスクリュウといった撹拌部材の内径を大きくし、撹拌部材の端面から混練機内壁までの間隙を小さくすることや、回転数を大きくすることで上げることができる。またせん断時のエネルギーを上げるには、撹拌部材の回転数を上げることや、CMB中の第一のゴムとMRC中の第二のゴムの粘度を上げることで達成できる。
【0050】
(d)MRCに対するCMBの体積分率
MRCに対するCMBの体積分率は、マトリックス形成用ゴム混合物に対するドメイン形成用ゴム混合物の衝突合体確率と相関する。具体的には、マトリックス形成用ゴム混合物に対するドメイン形成用ゴム混合物の体積分率を低減させると、ドメイン形成用ゴム混合物とマトリックス形成用ゴム混合物の衝突合体確率が低下する。つまり必要な導電性を得られる範囲において、マトリックス中におけるドメインの体積分率を減らすことでドメインのサイズを小さくできる。
【0051】
<マトリックス-ドメイン構造の確認方法>
本態様に係るマトリックス-ドメイン構造は、例えば、以下の如き方法によって確認することができる。すなわち、導電層から、導電層の薄片を切り出して観察試料を作製する。薄片の切り出し手段としては、例えば、カミソリや、ミクロトーム、FIBが挙げられる。
該観察試料について、必要に応じて、マトリックスとドメインとの区別を容易とすることができる処理(例えば、染色処理、蒸着処理)を施す。そして、該観察試料を、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察する。
【0052】
<ドメインの周囲長、包絡周囲長、最大フェレ径及びその平均、及びドメイン個数および平均個数の測定方法>
本態様に係るドメインの周囲長、包絡周囲長、最大フェレ径及びドメイン個数の測定方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。
まず、前述のマトリックスの体積抵抗率の測定における方法と同様の方法で切片を作製する。次いで、下凍結破断法、クロスポリッシャー法、収束イオンビーム法(FIB)手段で破断面を有する薄片を形成することができる。破断面の平滑性と、観察のための前処理を考慮すると、FIB法が好ましい。また、マトリックスドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電性の相と絶縁性の相とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。
破断面の形成、前処理を行った薄片に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察することができる。これらの中でも、ドメインの周囲長、包絡周囲長、最大フェレ径の定量化の正確性から、SEMで1,000倍~100,000倍で観察を行うことが好ましい。
ドメインの周囲長、包絡周囲長、最大フェレ径、及びドメイン個数の測定は、上記で撮影画像を定量化することによって得ることができる。SEMでの観察により得られた破断面画像に対し、「ImageProPlus」の如き画像処理ソフトを使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得る。次いで、破断面内のドメインが白くなるように、画像の白黒を反転処理し、2値化を実施する。次いで、画像内のドメイン群のそれぞれから、周囲長、包絡周囲長、最大フェレ径、及びドメイン個数を算出すればよい。
上記の測定のためにサンプルは、導電性部材の該導電層の長手方向の長さをLとしたとき、導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の2か所の計3か所から切片を切り出す。切片を切り出す方向としては、導電層の長手方向に対して垂直な断面となる方向である。
【0053】
上記のように導電層の長手方向に対して垂直な断面におけるドメインの形状を評価する理由は下記である。
図6では、導電性部材61を、3軸、具体的にはX、Y、Z軸の3次元としてその形状を示した図を示す。
図6においてX軸は導電性部材の長手方向(軸方向)と平行な方向、Y軸、Z軸は導電性部材の軸方向と垂直な方向を示す。
【0054】
図6(a)は、導電性部材に対して、XZ平面62と平行な断面62aで導電性部材を切り出すイメージ図を示す。XZ平面は導電性部材の軸を中心として、360°回転することができる。導電性部材が感光体ドラムに対して当接されて回転し、感光ドラムとの隙間を通過する際に放電することを考慮すると、当該XZ平面62と平行な断面62aは、あるタイミングに同時に放電が起きる面を示していることになる。したがって、一定量の断面62aに相当する面が通過することによって、感光ドラムの表面電位が形成される。
導電性部材内の電界集中による局所的に大きな放電によって、感光ドラム表面上が局所的に増大し、かぶりとなるため、一定量の断面62aが1枚ではなく、断面62aの集合が通過して形成する、感光ドラム表面電位と相関する評価が必要である。したがって、断面62aのようなある一瞬において同時に放電が発生する断面の解析ではなく、一定量の断面62aを含むドメイン形状の評価ができる導電性部材の軸方向と垂直なYZ平面63と平行な断面(63a~63c)での評価が必要である。断面63a~63cは、該導電層の長手方向の長さをLとしたとき、導電層の長手方向の中央での断面63bと、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の2か所の断面(63a及び63c)の計3か所を選択する。
また、当該断面63a~63cのそれぞれの切片断面の観察位置に関しては、導電層の厚さをTとしたとき、各切片のそれぞれ外表面から深さ0.1T以上0.9T以下までの厚み領域の任意の3か所で15μm四方の観察領域を置いたときの、合計9か所で測定を行えばよい。各値の平均値は該9か所の観察領域の平均値を示す。
【0055】
<プロセスカートリッジ>
図7は本発明の一実施形態に係る導電性部材を帯電ローラとして具備している電子写真用のプロセスカートリッジ100の概略断面図である。このプロセスカートリッジは、現像装置と帯電装置とを一体化し、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されたものである。現像装置は、少なくとも現像ローラ103とトナー容器106、トナー109、とを一体化したものであり、必要に応じてトナー供給ローラ104、現像ブレード108、攪拌羽110を備えていてもよい。帯電装置は、感光ドラム1-1、および帯電ローラ102を少なくとも一体化したものであり、クリーニングブレード105、廃トナー容器107を備えていてもよい。帯電ローラ102、現像ローラ103、トナー供給ローラ104、および現像ブレード108は、それぞれ電圧が印加されるようになっている。
【0056】
<電子写真画像形成装置>
図8は、本発明の一実施形態に係る導電性部材を帯電ローラとして用いた電子写真画像形成装置200の概略構成図である。この装置は、四つの前記プロセスカートリッジ100が着脱可能に装着されたカラー電子写真装置である。各プロセスカートリッジには、ブラック、マゼンダ、イエロー、シアンの各色のトナーが使用されている。感光ドラム201は矢印方向に回転し、帯電バイアス電源から電圧が印加された帯電ローラ202によって一様に帯電され、露光光211により、その表面に静電潜像が形成される。一方トナー容器206に収納されているトナー209は、攪拌羽210によりトナー供給ローラ204へと供給され、現像ローラ203上に搬送される。そして現像ローラ203と接触配置されている現像ブレード208により、現像ローラ203の表面上にトナー209が均一にコーティングされると共に、摩擦帯電によりトナー209へと電荷が与えられる。上記静電潜像は、感光ドラム101に対して接触配置される現像ローラ203によって搬送されるトナー209が付与されて現像され、トナー像として可視化される。
【0057】
可視化された感光ドラム上のトナー像は、一次転写バイアス電源により電圧が印加された一次転写ローラ212によって、テンションローラ213と中間転写ベルト駆動ローラ214に支持、駆動される中間転写ベルト215に転写される。各色のトナー像が順次重畳されて、中間転写ベルト上にカラー像が形成される。
転写材219は、給紙ローラにより装置内に給紙され、中間転写ベルト215と二次転写ローラ216の間に搬送される。二次転写ローラ216は、二次転写バイアス電源から電圧が印加され、中間転写ベルト215上のカラー像を、転写材219に転写する。カラー像が転写された転写材219は、定着器218により定着処理され、装置外に廃紙されプリント動作が終了する。
一方、転写されずに感光ドラム上に残存したトナーは、クリーニングブレード205により掻き取られて廃トナー収容容器207に収納され、クリーニングされた感光ドラム201は、上述の工程を繰り返し行う。また転写されずに一次転写ベルト上に残存したトナーもクリーニング装置217により掻き取られる。
【実施例】
【0058】
続いて、以下に本発明の実施例および比較例における、導電性部材を、下記に示す材料を用いて作製した。
【0059】
<NBR>
・NBR(1)(商品名:JSR NBR N230SV、アクリロニトリル含有量:35%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:32、SP値:20.0(J/cm3)0.5、JSR社製、略称:N230SV)
・NBR(2)(商品名:JSR NBR N215SL、アクリロニトリル含有量:48%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:45、SP値:21.7(J/cm3)0.5、JSR社製、略称:N215SL)
・NBR(3)(商品名:Nipol DN401LL、アクリロニトリル含有量:18.0%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:32、SP値:17.4(J/cm3)0.5、日本ゼオン社製、略称:DN401LL)
【0060】
<イソプレンゴムIR>
・イソプレンゴム(商品名:Nipol 2200L、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:70、SP値:16.5(J/cm3)0.5、日本ゼオン社製、略称:IR2200L)
【0061】
<ブタジエンゴムBR>
・ブタジエンゴム(1)(商品名:UBEPOL BR130B、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:29、SP値:16.8(J/cm3)0.5、宇部興産社製、略称:BR130B)
・ブタジエンゴム(2)(商品名:UBEPOL BR150B、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:40、SP値:16.8(J/cm3)0.5、宇部興産社製、略称:BR150B)
【0062】
<SBR>
・SBR(1)(商品名:アサプレン303、スチレン含有量:46%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:45、SP値:17.4(J/cm3)0.5、旭化成社製、略称:A303)
・SBR(2)(商品名:タフデン2003、スチレン含有量:25%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:33、SP値:17.0(J/cm3)0.5、旭化成社製、略称:T2003)
・SBR(3)(商品名:タフデン2100R、スチレン含有量:25%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:78、SP値:17.0(J/cm3)0.5、旭化成社製、略称:T2100R)
・SBR(4)(商品名:タフデン2000R、スチレン含有量:25%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:45SP値:17.0(J/cm3)0.5、旭化成社製、略称:T2000R)
・SBR(5)(商品名:タフデン1000、スチレン含有量:18%、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:45、SP値:16.8(J/cm3)0.5、旭化成社製、略称:T1000)
【0063】
<クロロプレンゴム(CR)>
・クロロプレンゴム(商品名:SKYPRENE B31、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:40、SP値:17.4(J/cm3)0.5、東ソー社製、略称:B31)
【0064】
<EPDM>
・EPDM(1)(商品名: Esprene505A、ムーニー粘度ML(1+4)100℃:47、SP値:16.0(J/cm3)0.5、住友化学社製、略称:E505A)
【0065】
<導電性粒子>
・カーボンブラック(1)(商品名:トーカブラック♯5500、DBP吸収量:155cm3/100g、東海カーボン社製、略称:♯5500)
・カーボンブラック(2)(商品名:トーカブラック♯7360SB、DBP吸収量:87cm3/100g、東海カーボン社製、略称:♯7360)
・カーボンブラック(3)(商品名:トーカブラック♯7270SB、DBP吸収量:62cm3/100g、東海カーボン社製、略称:♯7270)
・カーボンブラック(4)(商品名:#44、DBP吸収量:78cm3/100g、三菱ケミカル社製、略称:#44)
・カーボンブラック(5)(商品名:旭#35、DBP吸収量:50cm3/100g、旭カーボン株式会社製、略称:#35)
・カーボンブラック(6)(商品名:#45L、DBP吸収量:45cm3/100g、三菱ケミカル株式会社製、略称:#45L)
【0066】
<加硫剤>
・加硫剤(1)(商品名:SULFAX PMC、硫黄分97.5%、鶴見化学工業社製、略称:硫黄)
【0067】
<加硫促進剤>
・加硫促進剤(1)(商品名:サンセラーTBZTD、テトラベンジルチウラムジスルフィド、三新化学工業社製、略称:TBZTD)
・加硫促進剤(2)(商品名:ノクセラーTBT、テトラブチルチウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製、略称:TBT)
・加硫促進剤(3)(商品名:ノクセラーEP-60、加硫促進剤混合物、大内新興化学工業社製、略称:EP-60)
・加硫促進剤(4)(商品名:SANTOCURE-TBSI、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾルスルフェンイミド、FLEXSYS社製、略称:TBSI)
【0068】
<充填剤>
・充填剤(1)(商品名:ナノックス#30、炭酸カルシウム、丸尾カルシウム社製、略称:#30)
・充填剤(2)(商品名:Nipsil AQ、シリカ、東ソー社製、略称:AQ)
【0069】
以下に、本発明の導電性部材、プロセスカートリッジ、電子写真画像形成装置を具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。まず、本発明の実施例および比較例における導電性部材の作製方法を具体的に例示して説明する。
【0070】
<実施例1>
[1-1.ドメイン形成用ゴム混合物(CMB)の調製]
表1に示す種類と量の各材料を加圧式ニーダーで混合しドメイン形成用ゴム混合物CMBを得た。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
【0071】
【0072】
[1-2.マトリックス形成用ゴム混合物(MRC)の調製]
表2に示す種類と量の各材料を加圧式ニーダーで混合してマトリックス形成用ゴム混合物(MRC)を得た。混合条件は、充填率70vol%、ブレード回転数30rpm、16分間とした。
【0073】
【0074】
表3に示す種類と量の各材料とをオープンロールにて混合し導電性部材成形用ゴム組成物を調製した。混合機は、ロール径12インチ(0.30m)のオープンロールを用いた。混合条件は、前ロール回転数10rpm、後ロール回転数8rpmで、ロール間隙2mmとして合計20回左右の切り返しを行った後、ロール間隙を0.5mmとして10回薄通しを行った。
【0075】
【0076】
<2.導電性部材の成形>
快削鋼の表面に無電解ニッケルメッキ処理を施した全長252mm、外径6mmの丸棒を用意した。次にロールコーターを用いて、前記丸棒の両端部11mmずつを除く230mmの範囲の全周にわたって、接着剤として「メタロックU-20」(商品名、東洋化学研究所製)を塗布した。本実施例において、前記接着剤を塗布した丸棒を導電性支持体として使用した。
次に、導電性支持体の供給機構、及び未加硫ゴムローラの排出機構を有するクロスヘッド押出機の先端に内径12.5mmのダイスを取付け、押出機とクロスヘッドの温度を100℃に、導電性の支持体の搬送速度を60mm/secに調整した。この条件で、押出機より導電性部材成形用ゴム組成物を供給して、クロスヘッド内にて導電性支持体の外周部を導電性部材成形用ゴム組成物で被覆し、未加硫ゴムローラを得た。
次に、170℃の熱風加硫炉中に前記未加硫ゴムローラを投入し、60分間加熱することで未加硫ゴム組成物の層を加硫し、導電性支持体の外周部に導電性樹脂層が形成されたローラを得た。その後、導電性樹脂層の両端部を各10mm切除して、導電性樹脂層部の長手方向の長さを231mmとした。
最後に、導電性樹脂層の表面を回転砥石で研磨した。これによって、中央部から両端部側へ各90mmの位置における各直径が8.44mm、中央部直径が8.5mmである導電性部材1を得た。
【0077】
導電性部材2~41は、表4に示す出発原料を用いた以外は、導電性部材1と同様の方法で作製した。各々の導電性部材の作製に用いた出発原料の質量部と物性を表4に示す。
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
<3.特性評価>
続いて、以下に本発明の実施例、比較例中における下記項目に対する特性評価に関して説明する。
【0082】
<ドメインの最大フェレ径、周囲長、包絡周囲長、及びドメイン個数の測定方法>
本態様に係るドメインの最大フェレ径、周囲長、包絡周囲長、及びドメイン数の測定方法は、次のように実施すればよい。まず、導電性ローラの導電性弾性層から、ミクロトーム(商品名:Leica EM FCS、ライカマイクロシステムズ社製)を用いて、切削温度-100℃にて、2μm程度の厚みの切片として切り出した。なお、切片は、導電性部材A1の該導電層の長手方向の長さをLとしたとき、導電層の長手方向の中央、及び該導電層の両端から中央に向かってL/4の3か所から切り出した。
【0083】
マトリックスドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電相と絶縁相とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。
【0084】
破断面の形成、前処理を行った切片に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察することができる。これらの中でも、導電相の面積の定量化の正確性から、SEMで観察を行うことが好ましい。
【0085】
上記手法で得られた切片に対し、白金を蒸着させ蒸着切片を得た。次いで当該蒸着切片の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(商品名:S-4800、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて1000倍~100000倍で撮影し、表面画像を得た。
この画像より、該導電性部材A1がドメインマトリックス構造を形成していることと、ドメイン内にカーボンブラックが存在していることを確認した。以降の実施例に関しても同様の構成を確認したため、以降の表記は省略する。
【0086】
本態様に係るドメインの最大フェレ径、周囲長、包絡周囲長、及びドメイン個数は、上記で撮影した画像を定量化することによって得られることができる。得られた破断面画像に対し、ImageProPlus(製品名、Media Cybernetics社製)のような画像解析ソフトを使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得る。次いで、破断面内のドメインが白くなるように、画像の白黒を反転処理し、2値化を実施する。次いで、画像内のドメインのそれぞれから、最大フェレ径、周囲長、包絡周囲長、及びドメイン個数を算出することで求まる。
【0087】
上記の測定は、導電層の厚さをTとしたとき、3つの切片のそれぞれ外表面から深さ0.1T~0.9Tまでの厚み領域の任意の3か所、合計9か所における15μm四方の観察領域について行った。
【0088】
各観察領域で観察されるドメインの各々について測定された、周囲長、包絡周囲長を用いて、A/Bの値を算出する。そして、全観察ドメインのうち、要件(2)を満たしているドメインの数を求めた。
また、要件(1)及び要件(2)を満たすドメインについて、最大フェレ径の算術平均値ドメイン個数の算術平均を算出した。評価結果を表5-2に示す。
【0089】
<マトリックスの体積抵抗率の測定方法>
マトリックスの体積抵抗率は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)(商品名:Q-Scope250、Quesant Instrument Corporation社製)を用いてコンタクトモードで測定した。
まず、ドメインの最大フェレ径、周囲長、包絡周囲長、及びドメイン個数の測定方法と同様の位置及び手法で、切片を切り出した。次に、当該切片を金属プレート上に設置し、金属プレートに直接接触している箇所の中を選び、マトリックスに該当する箇所をSPMのカンチレバーを接触させ、次いで、カンチレバーに50Vの電圧を印加し、電流値を測定した。
当該SPMで当該測定切片の表面形状を観察して、得られる高さプロファイルから測定箇所の厚さを算出した。当該厚さと電流値から体積抵抗率を算出し、マトリックスの体積抵抗率とした。
【0090】
なお、測定位置は、導電層の厚さをTとしたとき、各切片のそれぞれ外表面から深さ0.1T~0.9Tまでの厚み領域のマトリックス部分の任意の3か所、合計9か所で測定を行った。その平均値を、マトリックスの体積抵抗率とした。評価結果を表5に示す。
【0091】
<カーボンブラックのDBP吸収量の測定方法>
カーボンブラックのDBP吸収量は、JIS K 6217に準じて測定した。またメーカーカタログ値を用いてもよい。
【0092】
<ドメインの断面積に対するドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合、ドメイン内の導電性カーボンブラックの壁面間距離の算術平均C、標準偏差σm、及び変動係数σm/Cの測定方法>
ドメイン内の、ドメインの断面積に対するドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合、導電性カーボンブラック壁面間距離の算術平均C、標準偏差σm、及び変動係数σm/Cは下記のようにし、測定すればよい。まず、前述のドメインの最大フェレ径、周囲長、包絡周囲長、及びドメイン個数の測定方法における方法と同様の方法で切片を作製する。マトリックスドメイン構造の観察を好適に実施するために、染色処理、蒸着処理など、導電相と絶縁相とのコントラストが好適に得られる前処理を施してもよい。
【0093】
切片の形成、前処理を行った切片に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察することができる。これらの中でも、導電相の面積の定量化の正確性から、SEMで観察を行うことが好ましい。
【0094】
前記手法で得られた切片に対し、白金を蒸着させ蒸着切片を得た。次いで当該蒸着切片の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)(製品名:S-4800、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて1000倍~100000倍で撮影し、表面画像を得た。
【0095】
本態様に係るは、ドメインの断面積に対するドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合、ドメイン内のカーボンブラックの算術平均壁面間距離は、上記で撮影画像を定量化することによって得られることができる。SEMでの観察により得られた破断面画像に対し、画像解析装置(製品名:LUZEX-AP、ニレコ社製)を使用して、8ビットのグレースケール化を行い、256諧調のモノクロ画像を得る。次いで、破断面内のドメインが白くなるように、画像の白黒を反転処理し、2値化を実施する。
【0096】
次いで、上記のSEM像からドメイン1個が少なくとも収まる大きさの観察領域を抽出し、ドメインの断面積Sd、ドメインが含む導電性粒子(カーボンブラック)の断面積Sc、カーボンブラックの壁面間距離を算出する。
得られた、導電性粒子(カーボンブラック)の断面積Sc、ドメインの断面積Sdより、Sc/Sdを求めることで、ドメインの断面積に対するドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合が得られる。
また得られたドメイン内の導電性カーボンブラック壁面間距離とその算術平均Cよりに標準偏差をσmを求める。そして標準偏差σmを算術平均Cで除すことで変動係数σm/Cが得られる。
【0097】
上記ドメイン内のカーボンブラックの算術平均壁面間距離及び面積は、導電層の厚さをTとしたとき、3つの切片のそれぞれ外表面から深さ0.1T~0.9Tまでの厚み領域の任意のドメイン部の3か所、合計9か所を測定し、その測定値の算術平均から算出すればよい。
【0098】
要件(1)及び要件(2)を満たすドメインについて、ドメインが含む該導電性粒子の断面積の割合の平均、導電性カーボンブラック壁面間距離の算術平均C、導電性カーボンブラック壁面間距離の分布の標準偏差をσmとしたときに、該導電性カーボンブラック壁面間距離のσm/Cの平均を表5-2に示す。
【0099】
<マトリックスおよびドメインを構成するゴムのSP値>
SP値は従来の膨潤法を用いて、測定することができる。マトリックスおよびドメインを構成するゴムを各々、マニュピレーター等を用いて分取し、SP値の異なる溶媒に浸漬し、ゴムの重量変化から膨潤度を測定する。各溶媒に対する膨潤度の値を用いて解析することで、Hansenの溶解度パラメータ(HSP)を算出することができる。また、SP値が既知の材料を用いて、検量線を作成することで、精度良く算出することが可能である。この既知のSP値の値は、材料メーカーのカタログ値を用いることもできる。上記手法で得られた、マトリックスおよびドメインを構成するゴムのSP値より、SP差を計算し絶対値にした。評価結果を表5-1に示す。
【0100】
<第1のゴムおよび第2のゴムの化学組成の解析>
の材料の特定、第1のゴムおよび第2のゴム、SBR中のスチレン含有量およびNBR中のアクリロニトリル含有量は、従来のFT-IRおよび1H-NMRなどの分析装置を用いて、行うことができる。評価結果を表5に示す。
【0101】
<導電性部材のインピーダンスの測定方法}
本態様に係る導電性部材のインピーダンスは、下記の測定方法で行った。
まず、前処理として、導電性部材に対し、回転しながら真空白金蒸着をすることよって、測定電極を作成した。この時、マスキングテープを使用して、幅1.5cm、周方向に均一な電極を作成した。当該電極を形成することによって、導電性部材の表面粗さによって、測定電極と導電性部材の接触面積の寄与を極力低減することができる。次に、当該電極に、アルミシートを隙間なく巻きつけ、
図3に示す測定サンプルを形成した。
そして、当該アルミシートから測定電極に、また導電性支持体にインピーダンス測定装置(ソーラトロン126096W 東陽テクニカ社製)を接続した。
インピーダンスの測定は、温度23℃、相対湿度50%環境において、振動電圧1Vpp、周波数1.0Hzで測定し、インピーダンスの絶対値を得た。
導電性部材(長手方向の長さ:230mm)を長手方向に5個の領域に5等分し、それぞれの領域内から任意に1点ずつ、合計5点に測定電極を形成し、上記測定を行った。その平均値を、導電性部材のインピーダンスとした。評価結果を表5-2に示す。
【0102】
<4.画像評価>
[4-1]かぶり評価
得られた導電性部材を用いて、以下のように画像形成を行い、導電部材の放電ムラを確認するためにかぶり評価を行った。電子写真画像形成装置としては、外部電源(商品名:Model615;トレックジャパン社製)から帯電部材及び現像部材にそれぞれ高電圧を印加できるよう改造したレーザプリンタ(商品名:Laserjet M608dn、HP社製の)を用意した。
次に、導電性部材および改造した電子写真画像形成装置、プロセスカートリッジを、30℃80%RHの環境に48時間放置した。そして、当該プロセスカートリッジの帯電部材として、導電性部材1を組み込んだ。そして導電性部材の導電性支持体に、-1700Vの直流電圧を印加し、Vback(感光体の表面電位から現像部材への印加電圧を除した電圧)が-300Vになるよう、現像部材へ電圧を印加して、全面白画像を出力した。
この電子写真画像形成装置の現像剤は、ネガ帯電性なので、通常、全面白画像を出力した場合、本来ならば感光体および紙上に現像剤は移行しない。しかし現像剤中にポジ帯電した現像剤が存在する場合、帯電部材からの局所的に強い放電に起因する、感光体表面の過帯電部に、ポジ帯電した現像剤が移行する所謂反転かぶりが発生する。その結果、紙上カブリとして顕在化する。この現象は、-300VのようにVbackが大きい場合、顕著に起こりやすくなる。
このように設定した電子写真画像形成装置により、30℃/80%RHの環境下で、全面白画像を出力し、紙上のかぶり量を測定した。かぶり量は以下の方法により測定した。
【0103】
(紙上かぶり量の測定)
全面白画像を印字し、画像形成後の紙の任意の9点を光学顕微鏡で500倍にて観察し、400μm四方の観察領域に存在する現像剤を数え、その個数を紙上かぶり量とした。なお紙上かぶり量が60個以下であれば、かぶりが少なく良好な画像が得られる。評価結果を表5に示す。
【0104】
<実施例2~41>
実施例1の導電性部材1と同様に、導電性部材2~42を帯電ローラとして用いて、実施例1と同様の評価を行った。実施例2~42における、各評価の結果を表5に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
<比較例1>
導電性支持体として、実施例1と同様の丸棒を用いて、ドメイン形成用ゴム混合物(CMB)、マトリックス形成用ゴム混合物(MRC)、導電層形成用ゴム組成物を表6に示すものに変更し、導電層上に下記の通り表面層を形成して導電性部材C1を製造した。
【0108】
【0109】
【0110】
CG103:エピクロルヒドリンゴム(EO-EP-AGE三元共化合物)(商品名:エピクロマーCG、SP値:18.5(J/cm3)0.5、大阪ソーダ社製)
LV:四級アンモニウム塩(商品名:アデカサイザーLV70、ADEKA社製)
P202:脂肪族ポリエステル系可塑剤(商品名:ポリサイザーP-202、DIC社製)
MB:2-メルカプトベンズイミダゾール(商品名:ノクラックMB、大内新興化学工業社製)
TS:テトラメチルチウラムモノスルフィド(商品名:ノクセラーTS、大内新興化学工業社製)
DM:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)(商品名:ノクセラーDM-P(DM)、大内新興化学工業社製)
EC600JD:ケッチェンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC600JD ケッチェンブラックインターナショナル社製)
PW380:パラフィンオイル(商品名:PW-380 出光興産社製)
25-B-40:2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン(商品名:パーヘキサ25B-40、日本油脂社製)
TAIC-M60:トリアリルイソシアヌレート(商品名:TAIC-M60 日本化成社製)
【0111】
次いで、以下の方法に従って、さらに導電層上に表面層を設け二層系導電性部材C1を製造し、実施例1と同様に評価した。評価結果を表8に示す。なお要件(1)及び(2)を満たすドメインの個数%が80個数%以下の場合、ドメイン凸凹度、平均最大フェレ径、ドメイン断面積中のカーボンブラック断面積の割合、カーボンブラック平均壁面間距離、変動係数σm/Cを算出しなかった。
【0112】
先ず、カプロラクトン変性アクリルポリオール溶液にメチルイソブチルケトンを加え、固形分が10質量%となるように調整した。このアクリルポリオール溶液1000質量部(固形分100質量部)に対して、下記の表7に示す材料を用いて混合溶液を調製した。このとき、ブロックHDIとブロックIPDIとの混合物は、「NCO/OH=1.0」であった。
【0113】
【0114】
次いで、450mLのガラス瓶に上記混合溶液210gと、メディアとして平均粒径0.8mmのガラスビーズ200gとを混合し、ペイントシェーカー分散機を用いて24時間前分散を行い、表面層形成用の塗料を得た。
【0115】
前記導電層を形成した導電性支持体を、その長手方向を鉛直方向にして、前記表面層形成用の塗料中に浸漬してディッピング法で塗工した。ディッピング塗布の浸漬時間は9秒間、引き上げ速度は、初期速度が20mm/sec、最終速度が2mm/sec、その間は時間に対して直線的に速度を変化させた。得られた塗工物を常温で30分間風乾し、次いで90℃に設定した熱風循環乾燥機中において1時間乾燥し、更に160℃に設定した熱風循環乾燥機中において1時間乾燥した。
【0116】
【0117】
本比較例においては、イオン伝導性の導電層と電子伝導性の表面層の2層構成であるが、表面層では、マトリックス-ドメイン構造を有さず、導電性粒子の分散均一性が低下して電界集中が発生し、導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。したがって紙上カブリが80個となった。
【0118】
<比較例2>
ドメイン形成用CMBを表6に示すものに変更し、マトリックス形成用ゴムMRCを使用しなかった以外は実施例1と同様に導電性部材C2を製造し、評価した。評価結果を表8に示す。
【0119】
本比較例においては、導電層がマトリックス-ドメイン構造を有さず、ドメイン材料のみの構成のため、導電層中で、電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。したがって、紙上カブリが110となり、顕著なカブリ画像が確認された。
【0120】
<比較例3>
ドメイン形成用CMB、マトリックス形成用MRCを表6に示すものに変更した以外は実施例1と同様に導電性部材C3を製造し、評価した。評価結果を表8に示す。
【0121】
本比較例においては、マトリックス-ドメイン構造ではあるが、要件(1)及び(2)を満たすドメインが80個数%以下であった。この理由としてドメインに添加されているカーボンブラックが少なく、カーボンゲル量が十分に形成できなかったため、ドメイン形状が凸凹になったと考えられる。その結果、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。
、ドメイン形状由来の電界集中による電荷の過剰移動が発生する。したがって、紙上カブリが93個となった。
【0122】
<比較例4>
ドメイン形成用CMB、マトリックス形成用MRCを表6に示すものに変更した以外は実施例1と同様に導電性部材C4を製造し、評価した。評価結果を表8に示す。
【0123】
本比較例においては、マトリックスに導電性粒子が添加されているため体積抵抗率が低く、導電性部材として単一の導電パスを持つ構成となっており、導電層中で、電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。したがって、紙上カブリが104個となった。
【0124】
<比較例5>
ドメイン形成用CMB、マトリックス形成用MRCを表6に示すものに変更した以外は実施例1と同様に導電性部材C5を製造し、評価した。評価結果を表8に示す。
【0125】
本比較例においては、マトリックス-ドメイン構造ではあるが、ドメインに導電剤が添加されていないため絶縁であり、マトリックスは導電性粒子が添加されているため、導電性でありかつ連続層である。すなわち、導電性部材として単一の導電パスを持つ構成となっているため、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。したがって、紙上カブリが98個となった。
【0126】
<比較例6>
ドメイン形成用CMB、マトリックス形成用MRCを表6に示すものに変更した以外は実施例1と同様に導電性部材C6を製造し、評価した。評価結果を表8に示す。
【0127】
本比較例においては、マトリックス-ドメイン構造ではなく、導電相と絶縁相が共連続構造である。すなわち、導電性部材として単一の導電パスを持つ構成となっているため、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。したがって、紙面カブリが99個となった。
【0128】
<比較例7>
ドメイン形成用CMB、マトリックス形成用MRCを表6に示すものに変更した以外は実施例1と同様に導電性部材C7を製造し、評価した。評価結果を表8に示す。
【0129】
本比較例においては、マトリックス-ドメイン構造ではあるが、要件(1)及び(2)を満たすドメインが80個数%以下であった。この理由としてドメインに添加されているカーボンブラックが少なく、カーボンゲル量が十分に形成できなかったため、ドメイン形状が円形状にならず、凸凹やアスペクト比が大きくなったと考えられる。その結果、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。したがって、紙上カブリが92個となった。
【0130】
<比較例8>
ドメイン形成用CMBを、比較例2の導電性部材形成用ゴムを単独で加熱加硫した後に凍結粉砕したゴム粒子に変更し、マトリックス形成用MRCを表6に示すものに変更した以外は実施例1と同様に導電性部材C9を製造し、評価した。評価結果を表8に示す。
【0131】
本比較例においては、マトリックス-ドメイン構造ではあるが、要件(1)及び(2)を満たすドメインが0個数%であった。この理由は、凍結粉砕によって形成した、サイズが大きく、異方性のある導電ゴム粒子を分散しているためである。その結果、導電層中で電界集中が発生し導電パスに過剰な電荷が流れやすい構成となっている。したがって紙上カブリが116個となり、顕著なカブリが確認された。
【符号の説明】
【0132】
1 導電性部材
2 導電性支持体
3 導電層
3a マトリックス
3b ドメイン
3c 導電性粒子