(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20221219BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20221219BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20221219BHJP
H01L 29/41 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 653A
H01L29/78 652M
H01L29/78 652P
H01L29/78 652F
H01L29/78 658A
H01L29/06 301D
H01L29/06 301V
H01L29/06 301F
H01L29/44 Y
(21)【出願番号】P 2019070450
(22)【出願日】2019-04-02
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 仙一郎
(72)【発明者】
【氏名】可知 剛
(72)【発明者】
【氏名】星野 義典
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-505270(JP,A)
【文献】特表2011-512677(JP,A)
【文献】特開2012-059943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および第2主面を有する第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板における前記第1主面の側に形成された第1電極と、
前記半導体基板における前記第2主面の側に形成された第2電極と、
前記第1電極と電気的に接続され、前記半導体基板における前記第1主面の側から第1深さにわたりそれぞれ形成された複数の柱状導電体と、
複数の前記柱状導電体のそれぞれに対して、前記柱状導電体を取り囲む態様で、前記半導体基板における前記第1主面の側から前記第1深さよりも浅い第2深さにわたり形成され、前記第1電極と電気的に接続された第2導電型の第1不純物領域と、
前記半導体基板における前記第1主面の側から
前記第2深さよりも浅い第3深さにわたり形成され、前記第1電極と電気的に接続された第2導電型の第2不純物領域と、
前記第2不純物領域における前記第1主面の側から、前記第3深さよりも浅い第4深さにわたり形成され、前記第1電極と電気的に接続された第1導電型の第3不純物領域と、
前記第3不純物領域および前記第2不純物領域を貫く態様で前記第1主面から第1導電型の前記半導体基板の部分に達するゲートトレンチ内に、ゲート絶縁膜を介在させて形成されたゲート電極と
を備え、
前記第1不純物領域は、第1導電型の前記半導体基板の部分と前記第2不純物領域とにそれぞれ接し、
複数の前記柱状導電体のそれぞれは、第1導電型の前記半導体基板の部分とは絶縁膜を介在させて、前記半導体基板における前記第1主面の側から前記第2深さよりも浅い第5深さから前記第1深さにわたり形成されたフィールドプレートを含み、
前記第5深さと前記第2深さとの間では、前記フィールドプレートと前記第1不純物領域とが、前記絶縁膜を介在させて対向し、
前記第2深さと前記第1深さとの間では、前記フィールドプレートと第1導電型の前記半導体基板とが、前記絶縁膜を介在させて対向し
、
前記第1不純物領域における前記第5深さから前記第2深さまでの長さは、前記フィールドプレートの前記第5深さから前記第1深さまでの半分の長さに相当する長さに設定された、半導体装置。
【請求項2】
複数の前記柱状導電体のそれぞれは、前記第3不純物領域および前記第2不純物領域を貫く態様で、前記第1主面から第1導電型の前記半導体基板の部分に達するディープトレンチ内に形成されており、
前記フィールドプレートは、前記ディープトレンチ内に前記絶縁膜を介在させて配置されており、
前記第1不純物領域は、前記ディープトレンチの側壁面に沿って形成されるとともに、前記側壁面から、第1導電型の前記半導体基板の前記部分および前記第2不純物領域に向かって形成された、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
複数の前記柱状導電体のそれぞれは、前記半導体基板における前記第1主面の側から前記第5深さにわたり前記ディープトレンチ内に形成され、前記フィールドプレートに接触するとともに、前記第1不純物領域に接するプラグを含む、請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
複数の前記柱状導電体のうち、隣り合う第1柱状導電体と第2柱状導電体とを含む、前記第1柱状導電体と前記第2柱状導電体とが配置されている方向に沿った断面において、
前記第5深さよりも深く前記第2深さよりも浅い位置を第6深さとし、
前記第1柱状導電体の側の前記第1不純物領域における前記第6深さに位置する部分の第2導電型の不純物量と、前記第2柱状導電体の側の前記第1不純物領域における前記第6深さに位置する部分の第2導電型の不純物量とを合わせた不純物量をQpとし、
前記第1柱状導電体の側の前記第1不純物領域と、前記第2柱状導電体の側の前記第1不純物領域との間に位置する第1導電型の前記半導体基板の領域における前記第6深さに位置する部分の第1導電型の不純物量をQnとすると、
Qp=Qn、
である、請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1不純物領域は、
第1不純物濃度を有する第1部と、
前記第1部に対して前記第1主面の側に形成され、前記第1不純物濃度よりも高い第2不純物濃度を有する第2部と
を含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
第1導電型の前記半導体基板は、
第3不純物濃度を有する第1層と、
前記第1層に対して前記第1主面の側に形成され、前記第3不純物濃度よりも低い第4不純物濃度を有する第2層と
を含み、
前記柱状導電体は、前記第1層に達するように形成され、
前記ゲート電極は、前記第2層に達するように形成された、請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ゲートトレンチ内に形成された前記ゲート電極は、第1方向に延在する部分と、前記第1方向と交差する第2方向に延在する部分とを含む、請求項1記載の半導体装置。
【請求項8】
前記柱状導電体は、矩形、円形および八角形のいずれかの平面形状を有する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項9】
第1主面および第2主面を有する第1導電型の半導体基板を用意する工程と、
前記半導体基板における前記第1主面に、所定の深さのゲートトレンチを形成し、前記ゲートトレンチ内にゲート絶縁膜を介在させてゲート電極を形成する工程と、
前記半導体基板における前記第1主面に、前記ゲート電極とは距離を隔てて、前記ゲートトレンチよりも深い第1深さを有するディープトレンチを形成する工程と、
前記ディープトレンチの側壁面に、第2導電型の不純物を注入することによって、前記半導体基板の前記第1主面から、前記第1深さよりも浅い第2深さにわたり第2導電型の第1不純物領域を形成する工程と、
前記ディープトレンチ内を充填する態様で、前記側壁面を覆う絶縁膜を介在させて導電性膜を形成する工程と、
前記第1不純物領域に接する態様で、前記半導体基板における前記第1主面の側から前記ゲートトレンチの底よりも浅い第3深さにわたり、第2導電型の第2不純物領域を形成する工程と、
前記ディープトレンチの前記側壁面に達する態様で、前記第2不純物領域における前記第1主面の側から前記第3深さよりも浅い第4深さにわたり、第1導電型の第3不純物領域を形成する工程と、
前記第3不純物領域および前記第1不純物領域を露出する態様で、前記ディープトレンチ内の前記第1主面の側から前記第2深さよりも浅く前記第3深さよりも深い第5深さにわたり位置する前記絶縁膜の部分および前記導電性膜の部分を除去し、残された前記導電性膜の部分をフィールドプレートとして形成する工程と、
前記ディープトレンチ内に、前記第5深さに達し前記フィールドプレートに接するとともに、前記第3不純物領域および前記第1不純物領域に接するプラグを形成する工程と、
前記半導体基板の前記第1主面の側に、前記プラグに電気的に接続される第1電極を形成する工程と、
前記半導体基板の前記第2主面の側に、第2電極を形成する工程と
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1不純物領域を形成する工程は、
第1不純物濃度を有する第2導電型の第1不純物を、第1入射角度をもって前記ディープトレンチの前記側壁面に注入する工程と、
前記第1不純物濃度よりも高い第2不純物濃度を
有する第2導電型の第2不純物を、前記第1入射角度よりも小さい第2入射角度をもって前記ディープトレンチの前記側壁面に注入する工程と
を含む、請求項
9記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
第1導電型の前記半導体基板を用意する工程は、
第1導電型の基板本体に、第1導電型の第1不純物濃度を有する第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層を覆うように、第1導電型の前記第1不純物濃度よりも低い第2不純物濃度を有する第2半導体層を形成する工程と
を含み、
前記ゲートトレンチを形成する工程では、前記ゲートトレンチは前記第2半導体層に形成され、
前記ディープトレンチを形成する工程では、前記ディープトレンチは前記第2半導体層を貫通して、前記第1半導体層に達するように形成される、請求項
9記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、たとえば、フィールドプレート構造とスーパージャンクション構造とを備えた半導体装置に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
パワー系の半導体装置では、低い導通抵抗(オン抵抗)と高い耐圧とを得る構造として、フィールドプレート構造がある。フィールドプレート構造を備えた半導体装置を開示した特許文献として、たとえば、特許文献1および特許文献2がある。
【0003】
パワー系の半導体装置において、オン抵抗を下げるには、ドリフト層の不純物濃度(たとえば、n型)を高くする必要がある。ところが、ドリフト層の不純物濃度を高くすると、耐圧が低下するという課題がある。フィールドプレート構造の半導体装置では、電界強度が上げられて、ドリフト層の不純物濃度を高くすることなく、耐圧を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-059943号公報
【文献】特表2011-512677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パワー系の半導体装置では、さらなる高耐圧化と低オン抵抗化が求められている。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付の図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態に係る半導体装置は、第1導電型の半導体基板と第1電極と第2電極と複数の柱状導電体と第2導電型の第1不純物領域と第2導電型の第2不純物領域と第1導電型の第3不純物領域とゲート電極とを備えている。半導体基板は、第1主面および第2主面を有し、第1主面の側に第1電極が形成され、第2主面の側に第2電極が形成されている。複数の柱状導電体は、第1電極と電気的に接続され、半導体基板における第1主面の側から第1深さにわたりそれぞれ形成されている。第2導電型の第1不純物領域は、複数の柱状導電体のそれぞれに対して、柱状導電体を取り囲む態様で、半導体基板における第1主面の側から第1深さよりも浅い第2深さにわたり形成され、第1電極と電気的に接続されている。第2導電型の第2不純物領域は、半導体基板における第1主面の側から第2深さよりも浅い第3深さにわたり形成され、第1電極と電気的に接続されている。第1導電型の第3不純物領域は、第2不純物領域における第1主面の側から、第3深さよりも浅い第4深さにわたり形成され、第1電極と電気的に接続されている。ゲート電極は、第3不純物領域および第2不純物領域を貫く態様で第1主面から第1導電型の半導体基板の部分に達するゲートトレンチ内に、ゲート絶縁膜を介在させて形成されている。第1不純物領域は、第1導電型の半導体基板の部分と第2不純物領域とにそれぞれ接している。複数の柱状導電体のそれぞれは、第1導電型の半導体基板の部分とは絶縁膜を介在させて、半導体基板における第1主面の側から第2深さよりも浅い第5深さから第1深さにわたり形成されたフィールドプレートを含む。第5深さと第2深さとの間では、フィールドプレートと第1不純物領域とが、絶縁膜を介在させて対向している。第2深さと第1深さとの間では、フィールドプレートと第1導電型の半導体基板とが、絶縁膜を介在させて対向して
いる。第1不純物領域における第5深さから第2深さまでの長さは、フィールドプレートの第5深さから第1深さまでの半分の長さに相当する長さに設定されている。
【0007】
他の実施の形態に係る半導体装置の製造方法は、以下の工程を備えている。第1主面および第2主面を有する第1導電型の半導体基板を用意する。半導体基板における第1主面に、所定の深さのゲートトレンチを形成し、ゲートトレンチ内にゲート絶縁膜を介在させてゲート電極を形成する。半導体基板における第1主面に、ゲート電極とは距離を隔てて、ゲートトレンチよりも深い第1深さを有するディープトレンチを形成する。ディープトレンチの側壁面に、第2導電型の不純物を注入することによって、半導体基板の第1主面から、第1深さよりも浅い第2深さにわたり第2導電型の第1不純物領域を形成する。ディープトレンチ内を充填する態様で、側壁面を覆う絶縁膜を介在させて導電性膜を形成する。第1不純物領域に接する態様で、半導体基板における第1主面の側からゲートトレンチの底よりも浅い第3深さにわたり、第2導電型の第2不純物領域を形成する。ディープトレンチの側壁面に達する態様で、第2不純物領域における第1主面の側から第3深さよりも浅い第4深さにわたり、第1導電型の第3不純物領域を形成する。第3不純物領域および第1不純物領域を露出する態様で、ディープトレンチ内の第1主面の側から第2深さよりも浅く第3深さよりも深い第5深さにわたり位置する絶縁膜の部分および導電性膜の部分を除去し、残された導電性膜の部分をフィールドプレートとして形成する。ディープトレンチ内に、第5深さに達しフィールドプレートに接するとともに、第3不純物領域および第1不純物領域に接するプラグを形成する。半導体基板の第1主面の側に、プラグに電気的に接続される第1電極を形成する。半導体基板の第2主面の側に、第2電極を形成する。
【発明の効果】
【0008】
一実施の形態に係る半導体装置によれば、高耐圧化と低オン抵抗化との双方を図ることができる。
【0009】
他の実施の形態に係る半導体装置によれば、高耐圧化と低オン抵抗化との双方を図ることができる半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】各実施の形態に係る半導体装置の平面パターンの一例を示す平面図である。
【
図2】実施の形態1に係る半導体装置の、
図1に示す断面線II-IIにおける断面図である。
【
図3】同実施の形態において、
図1に示す断面線II-IIに対応する断面線における半導体装置の断面斜視図である。
【
図4】同実施の形態において、半導体装置の平面パターンの一例を示す部分拡大平面図である。
【
図5】同実施の形態において、
図4に示す断面線V-Vにおける部分断面図である。
【
図6】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図7】同実施の形態において、
図6に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図8】同実施の形態において、
図7に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図9】同実施の形態において、
図8に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図10】同実施の形態において、
図9に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図11】同実施の形態において、
図10に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図12】同実施の形態において、
図11に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図13】同実施の形態において、
図12に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図14】同実施の形態において、
図13に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図15】同実施の形態において、
図14に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図16】同実施の形態において、実施の形態1に係る半導体装置のシミュレーションによる評価を説明するための初期状態を示す部分断面図である。
【
図17】比較例に係る半導体装置のシミュレーションによる評価を説明するための初期状態を示す部分断面図である。
【
図18】同実施の形態において、実施の形態1に係る半導体装置のシミュレーションによる評価を説明するための電界強度の分布を示す部分断面図である。
【
図19】比較例に係る半導体装置のシミュレーションによる評価を説明するための電界強度の分布を示す部分断面図である。
【
図20】同実施の形態において、ゲート電極直下におけるn型ドリフト層の深さ方向と電界強度との関係を示すグラフである。
【
図21】同実施の形態において、p型不純物層の深さと耐圧との関係を示すグラフである。
【
図22】同実施の形態において、p型不純物層のピーク濃度と耐圧との関係を示すグラフである。
【
図23】同実施の形態において、p型不純物層とn型ドリフト層とのチャージバランスを説明するための断面図である。
【
図24】同実施の形態において、
図23に示す断面線XXIV-XXIVにおけるp型不純物層およびn型ドリフト層のそれぞれの不純物濃度のプロファイルの一例を示す図である。
【
図25】同実施の形態において、
図23に示す断面線XXV-XXVにおけるp型不純物層およびn型ドリフト層のそれぞれの不純物濃度のプロファイルの一例を示す図である。
【
図26】各実施の形態において、ゲート電極の配置の平面配置パターンの変形例を示す部分平面図である。
【
図27】各実施の形態において、フィールドプレートを含む柱状導電体の平面形状の第1変形例を示す部分平面図である。
【
図28】各実施の形態において、フィールドプレートを含む柱状導電体の平面形状の第2変形例を示す部分平面図である。
【
図29】各実施の形態において、フィールドプレートを含む柱状導電体の平面形状の第3変形例を示す部分平面図である。
【
図30】実施の形態2に係る半導体装置の、
図1に示す断面線II-IIに対応する断面線における断面図である。
【
図31】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図32】同実施の形態において、
図31に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図33】同実施の形態において、
図32に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【
図34】同実施の形態において、ゲート電極直下におけるn型ドリフト層の深さ方向と電界強度との関係を示すグラフである。
【
図35】実施の形態3に係る半導体装置の、
図1に示す断面線II-IIに対応する断面線における断面図である。
【
図36】同実施の形態において、半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図37】同実施の形態において、変形例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【
図38】同実施の形態において、ゲート電極直下におけるn型ドリフト層の深さ方向と電界強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1
実施の形態1に係る半導体装置の一例について説明する。半導体装置PSDの平面構造について説明する。
図1に示すように、半導体装置PSDでは、半導体基板SUBの一方の主面(第1主面)の側に、ゲート電極パッドGEPとソース電極パッドSEPが形成されている。半導体基板SUBの他方の主面(第2主面)の側に、ドレイン電極パッドDEPが形成されている(
図2参照)。
【0012】
半導体装置PSDの平面構造と断面構造とについて、より詳しく説明する。
図2および
図3に示すように、半導体基板SUBは、n+型基板NPSBとn型エピタキシャル層NELとを含む。n型エピタキシャル層NELは、n型ドリフト層NDLになる。半導体基板SUBの第1主面の側から、n型エピタキシャル層NELにおける所定の深さ(第1深さ)にわたり、複数の柱状導電体CCBが形成されている。
【0013】
複数の柱状導電体CCBのそれぞれは、ディープトレンチDTC内に形成されている。複数の柱状導電体CCBのそれぞれは、タングステンのプラグPUGとフィールドプレートFPとを備えている。フィールドプレートFPと半導体基板SUBとの間には、絶縁膜FIFが介在する。
【0014】
複数の柱状導電体CCBのそれぞれに対して、平面視的に柱状導電体CCBを取り囲む態様で、p型不純物層PIL(第1不純物領域)が、半導体基板SUBの第1主面の側から所定の深さ(第2深さ)にわたり形成されている。p型不純物層PILは、ディープトレンチDTCの側壁面から、n型エピタキシャル層NEL等の側に向かって形成されている。p型不純物層PILは、プラグPUGを介してソース電極パッドSEPと電気的に接続されている。
【0015】
半導体基板SUBの第1主面の側から所定の深さ(第3深さ)にわたり、p型ベース拡散層BDL(第2不純物領域)が形成されている。p型ベース拡散層BDLの表面からp型ベース拡散層BDLの底よりも浅い所定の深さ(第4深さ)にわたり、n+型ソース拡散層SDL(第3不純物領域)が形成されている。
【0016】
n+型ソース拡散層SDLとp型ベース拡散層BDLを貫く態様で、半導体基板SUBの第1主面の側からn型エピタキシャル層NELの部分に達するゲートトレンチGTCが形成されている。そのゲートトレンチGTC内に、ゲート絶縁膜GIFを介在させてゲート電極TGELが形成されている。ゲート電極TGEL、n+型ソース拡散層SDLおよびn型ドリフト層NDLによって、MOS(Metal Oxide Semiconductor)型の電界効果トランジスタが構成される。
【0017】
半導体基板SUBの第1主面を覆うように、層間絶縁膜ILFが形成されている。その層間絶縁膜ILFに接するように、ソース電極パッドSEPが形成されている。複数の柱状導電体CCBのそれぞれは、プラグPUGを介してソース電極パッドSEPに電気的に接続されている。n+型ソース拡散層SDLおよびp型不純物層PILのそれぞれは、プラグPUGに接するように形成されている。p型不純物層PILを含む柱状導電体CCBの平面視的な形状(パターン)として、たとえば、正方形状が設定されている。
【0018】
上述した半導体装置PSDでは、p型不純物層PILは、半導体基板SUBの第1主面の側から所定の深さ(第2深さ)にわたり形成されている。プラグPUGの底(第5深さ)とp型不純物層PILの底(第2深さ)との間では、フィールドプレートFPとp型不純物層PILとが絶縁膜FIFを介在させて位置する。この構造を、セミスーパージャンクション構造と称する。
【0019】
フィールドプレートFPは、p型不純物層PILの底(第2深さ)よりも浅いプラグPUGの底(第5深さ)からディープトレンチDTCの底(第1深さ)にわたり形成されている。p型不純物層PILの底(第2深さ)とフィールドプレートFPの底(第1深さ)との間では、フィールドプレートFPと半導体基板SUBのn型ドリフト層NDLとが、絶縁膜FIFを介在させて位置する。この構造を、フィールドプレート構造と称する。
【0020】
フィールドプレートFPは、プラグPUG介してソース電極パッドSEPに電気的に接続されている。また、n+型ソース拡散層SDLとp型不純物層PILとが、プラグPUG介してソース電極パッドSEPに電気的に接続されている。
【0021】
ゲート電極TGELは、ゲート配線GIC(
図4参照)を経てゲート電極パッドGEP(
図1参照)と電気的に接続されている。
図4および
図5に示すように、ゲート電極TGELが形成されるゲートトレンチGTCは、一方向に延在する部分と、一方向と交差する他の方向に延在する部分とを含む。半導体基板SUBの第1主面の側における所定の領域において、ゲート電極TGELはゲートコンタクトGCNを介してゲート配線GICと電気的に接続されている。ゲート配線GICは、ゲート電極パッドGEP(
図1参照)に繋がっている。
【0022】
次に、上述した半導体装置の製造方法の一例について説明する。まず、
図6に示すように、n+型基板NPSBの表面に、エピタキシャル成長法によってn型エピタキシャル層NELが形成される。n+型基板NPSBとn型エピタキシャル層NELとによって、半導体基板SUBが形成される。
【0023】
次に、半導体基板SUBに所定の写真製版処理およびエッチング処理を行うことによってゲートトレンチ(図示せず)が形成される。次に、熱酸処理を行うことによって、ゲート絶縁膜となる熱酸化膜(図示せず)が形成される。次に、ゲートトレンチを埋め込むように、たとえば、ポリシリコン膜(図示せず)が形成される。
【0024】
次に、エッチバック処理が行われる。これにより、
図7に示すように、半導体基板SUBの上面上に位置するポリシリコン膜の部分および熱酸化膜の部分が除去されて、ゲートトレンチGTC内に、ゲート絶縁膜GIFを介在させてゲート電極TGELが形成される。なお、エッチバック処理に替えて、化学的機械研磨処理を行ってもよい。
【0025】
次に、半導体基板SUBを覆うように、ディープトレンチを形成するための保護膜IPF(
図8参照)が形成される。保護膜として、たとえば、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜との積層膜が形成される。このとき、シリコン窒化膜は下層膜とされる。次に、写真製版処理を行うことによって、ディープトレンチのパターンに対応したフォトレジストパターン(図示せず)が形成される。
【0026】
次に、そのフォトレジストパターンをエッチングマスクとして、半導体基板SUB(n型エピタキシャル層NEL)にエッチング処理が行われる。その後、フォトレジストパターンが除去される。これにより、
図8に示すように、ディープトレンチDTCが形成される。
【0027】
次に、保護膜IPFを注入マスクとして、斜めイオン注入によって、ディープトレンチDTCの側壁面にp型の不純物が注入される。これにより、
図9に示すように、ディープトレンチDTCの側壁面にp型不純物層PILが形成される。p型不純物層PILは、半導体基板SUB(n型エピタキシャル層NEL)の第1主面から所定の深さ(第2深さ)にわたって形成される。
【0028】
次に、熱酸処理を行うことにより、ディープトレンチDTCの側壁面等に熱酸化膜(図示せず)が形成される。次に、その熱酸化膜等を覆うように、たとえば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって絶縁膜が形成される。こうして、
図10に示すように、ディープトレンチDTCの側壁面を含む、半導体基板SUBの第1主面を覆うように、絶縁膜TIFが形成される。
【0029】
次に、
図11に示すように、ディープトレンチDTC内を埋め込む態様で、半導体基板SUBの第1主面を覆うようにポリシリコン膜PSFが形成される。次に、化学的機械研磨処理を行うことによって、半導体基板SUBの上面上に位置する、ポリシリコン膜PSFの部分、絶縁膜TIFの部分および保護膜IPFが除去される。
【0030】
このとき、保護膜IPFのシリコン窒化膜が、化学的機械研磨処理のストッパになる。次に、そのシリコン窒化膜が、ウェットエッチング処理によって除去される。こうして、
図12に示すように、ディープトレンチDTC内に、絶縁膜TIFとポリシリコン膜PSFとを残して、半導体基板SUB(n型エピタキシャル層NEL)の表面が露出する。次に、露出した半導体基板SUBの表面に、保護膜(図示せず)が形成される。
【0031】
次に、半導体基板SUBの第1主面の側からp型の不純物が注入される。次に、n型の不純物が注入される。これにより、
図13に示すように、半導体基板SUBの第1主面から所定の深さ(第3深さ)にわたり、p型ベース拡散層BDLが形成される。p型ベース拡散層BDLのp型の不純物濃度(オーダー)は、たとえば、~10
17/cm
3程度である。p型ベース拡散層BDLの表面から所定の深さ(第4深さ)にわたり、n+型ソース拡散層SDLが形成される。
【0032】
n+型ソース拡散層SDLのn型の不純物濃度(オーダー)は、たとえば、~1020/cm3程度である。このとき、半導体基板SUBの第1主面側に位置するp型不純物層PILの部分は、n型の不純物濃度の高い不純物が注入されることで、n+型ソース拡散層SDLの一部に置き換えられることになる。
【0033】
次に、半導体基板SUBの第1主面を覆うように、たとえば、シリコン酸化膜等の層間絶縁膜ILF(
図14参照)が形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理を行うことによって、ディープトレンチDTCの第1主面側から所定の深さにわたって位置するポリシリコン膜PSFの部分と絶縁膜FIFの部分とが除去される。
【0034】
これにより、
図14に示すように、ディープトレンチDTCの一部を露出する開口部SOPが形成される。開口部SOPは、第1主面の側から、p型不純物層PILの底(第2深さ)よりも浅く、p型ベース拡散層BDLの底(第3深さ)よりも深い位置(第5深さ)にまで形成される。
【0035】
次に、たとえば、CVD法によって、開口部SOPを埋め込む態様で、層間絶縁膜ILFを覆うように、たとえば、タングステン膜(図示せず)が形成される。次に、タングステン膜に、たとえば、化学的機械研磨処理を行うことによって、開口部SOP内に位置するタングステン膜の部分を残して、層間絶縁膜ILFの上面上に位置するタングステン膜の部分が除去される。
【0036】
これにより、
図15に示すように、ディープトレンチDTC内に、タングステンのプラグPUGが形成される。プラグPUGの下方に残されたポリシリコン膜の部分は、フィールドプレートFPとなる。プラグPUGは、n+型ソース拡散層SDL、p型不純物層PILおよびフィールドプレートFPのそれぞれと接触することになる。
【0037】
次に、たとえば、スパッタ法によって、層間絶縁膜ILF等を覆うようにアルミニウム膜(図示せず)が形成される。次に、所定の写真製版処理およびエッチング処理が行われれる。これにより、
図15に示すように、ソース電極パッドSEPが形成される。ソース電極パッドSEPと同時に、ゲート配線GICおよびゲート電極パッドGEP(
図1、図および
図5参照)が形成される。その後、半導体基板SUBの第2主面を覆うように、ドレイン電極パッドDEPが形成される。こうして、半導体装置PSDの主要部分が完成する。
【0038】
上述した半導体装置PSDでは、まず、フィールドプレート構造を備えている。これにより、半導体装置PSDの高耐圧化と低オン抵抗化とを図ることができる。上述した半導体装置PSDでは、そのフィールドプレート構造に加えて、セミスーパージャンクション構造を備えている。これにより、耐圧をさらに向上させることができる。これについて、発明者らが行ったシミュレーションによる評価とその結果について説明する。
【0039】
はじめに、シミュレーションの初期条件(初期状態)について説明する。シミュレーションでは、隣り合うディープトレンチのうちの一方のディープトレンチ内の絶縁膜と他方のディープトレンチ内の絶縁膜との間のMOS型の電界効果トランジスタを含む領域を設定した。
【0040】
上述した半導体装置の初期状態を実施例として
図16に示す。
図16に示すように、実施例に係る半導体装置では、p型不純物層を含むセミスーパージャンクション構造と、フィールドプレート構造とが設定されている。
図16では、n型の不純物濃度の高低関係と、p型の不純物濃度の高低関係とが、ハッチングの向きとハッチングの密度とによって模式的に示されている。
【0041】
次に、比較例に係る半導体装置の初期状態を
図17に示す。
図17に示すように、比較例に係る半導体装置では、p型不純物層に対応する不純物層を設定せず、一般的なフィールドプレート構造だけを設定した。
図17では、n型の不純物濃度の高低関係と、p型の不純物濃度の高低関係とが、ハッチングの向きとハッチングの密度とによって模式的に示されている。
【0042】
次に、n+型ソース拡散層に耐圧を評価するための所定の電圧を印加した場合の電界強度分布について説明する。実施例に係る半導体装置における電界強度分布を
図18に示す、比較例に係る半導体装置における電界強度分布を
図19に示す。
図18および
図19のそれぞれでは、図面の煩雑さを避けるために、電界強度の等高線だけを示す。算出された電界強度分布から、Y=0の座標におけるゲート電極(ゲート絶縁膜)の直下の位置から深さ方向(下向き矢印参照)の電界強度を抽出した。その電界強度のグラフを
図20に示す。
【0043】
図20では、実施例に係る半導体装置の電界強度のグラフが、実施例1として実線で示されている。比較例に係る半導体装置の電界強度のグラフは、比較例として点線で示されている。
図20に示されているように、実施例に係る半導体装置では、p型不純物層が形成されていることで、Xの値がおよそ2~6μmの範囲で電界強度が、比較例に係る半導体装置の電界強度よりも高くなっていることがわかる。耐圧は、電界強度の深さ方向の積分値として算出される。発明者らは、この電界強度のグラフから、比較例に係る半導体装置よりも、半導体装置としての耐圧を向上させることができると結論付けた。
【0044】
次に、発明者らは、p型不純物層の深さと耐圧との関係について、シミュレーションによる評価を行った。そのグラフを
図21に示す。横軸は、
図16に示すディープトレンチ内の絶縁膜の上端、すなわち、フィールドプレートの上端からp型不純物層の下端までの長さdである。縦軸は耐圧である。
図21に示すように、フィールドプレートの上端からp型不純物層の下端までの長さdを、フィールドプレートの長さ(深さ)の半分の長さに設定することで、耐圧が向上することがわかった。なお、フィールドプレートの長さの半分とは、厳密に半分を意図するものではなく、製造上のばらつきとして±10%の誤差を含む。
【0045】
フィールドプレートの上端からp型不純物層の下端までの長さdがフィールドプレートの長さに比べて短くなると、耐圧が急激に下がることがわかる。これは、長さdが短くなると、半導体装置の構造としては、p型不純物層を有していない比較例に係る半導体装置の構造と似てくるために、耐圧の改善効果が少なくなるためであると考えられる。
【0046】
一方、フィールドプレートの上端からp型不純物層の下端までの長さdが長くなると、耐圧が徐々に下がることがわかる。
図20に示されるように、比較例に係る半導体装置におけるフィールドプレートの下端部の近傍の電界強度(電界強度A)は、フィールドプレートの深さ方向の中央付近の電界強度よりも高くなっている。このため、長さdを比較的長く設定した場合におけるフィールドプレートFPの下端部の近傍の電界強度は、比較例に係る半導体装置の電界強度Aとの差が小さく、耐圧の改善効果は少ないことがいえる。
【0047】
すなわち、耐圧の改善には、比較例に係る半導体装置の電界強度の分布において、電界強度が相対的に低いところの電界強度が引き上げられるように、p型不純物層を所定の深さにまで形成することが望ましいことがわかった。ここでは、長さdを、フィールドプレートの長さ(深さ)の半分の長さに設定することが、耐圧の改善に効果があることがわかった。なお、上記のように、この長さdには、製造上のばらつきとして±10%の誤差を含む。
【0048】
次に、発明者らは、p型不純物層の不純物濃度と耐圧との関係について、シミュレーションによる評価を行った。そのグラフを
図22に示す。横軸は、p型不純物層のピーク濃度である。縦軸は耐圧である。p型不純物層の長さd(深さ)は、2μmに設定した。
図22に示すように、p型不純物層の不純物濃度(ピーク濃度)が、約2.6×10
17/cm
3の場合に、耐圧が最も高くなることがわかった。
【0049】
次に、p型不純物層PILの不純物量とn型ドリフト層NDLの不純物量とのチャージバランスについて説明する。ここでは、
図23に示すように、隣り合う柱状導電体CCBが配置されている方向に沿った断面において、一の深さ位置(断面線XXIV-XXIV)と他の深さ位置(断面線XXV-XXV)とにおけるp型不純物層PILの不純物量とn型ドリフト層NDLの不純物量とについて説明する。
【0050】
まず、断面線XXIV-XXIVに沿った不純物濃度のプロファイルを
図24に示す。横軸は、
図23に示すゲート電極の中心をY=0とした位置(座標)である。縦軸は不純物濃度である。
図24では、一方の柱状導電体CCB側のp型不純物層PILA、他方の柱状導電体CCB側のp型不純物層PILB、および、p型不純物層PILAとp型不純物層PILBとの間に位置するn型ドリフト層NDLのそれぞれの一の深さ位置における不純物濃度のプロファイルが示されている。
【0051】
ここで、一の深さ位置におけるp型不純物層PILAの不純物濃度に基づく不純物量を(Qp1)/2とする。一の深さ位置におけるp型不純物層PILBの不純物濃度に基づく不純物量を(Qp1)/2とする。一の深さ位置におけるn型ドリフト層NDLの不純物濃度に基づく不純物量をQn1とする。それぞれの不純物量は、対応する不純物濃度のプロファイルの面積に相当する。
【0052】
そうすると、p型の不純物量の総和は、(Qp1)/2+(Qp1)/2=Qp1となる。半導体装置PSDでは、p型の不純物量の総和Qp1は、n型の不純物量Qn1と等しくなるように、p型不純物層PILおよびn型ドリフト層NDLのそれぞれの不純物濃度が設定されている。
【0053】
次に、断面線XXV-XXVに沿った不純物濃度のプロファイルを
図25に示す。横軸は、
図23に示すゲート電極の中心をY=0とした位置である。縦軸は不純物濃度である。
図25では、一方の柱状導電体CCB側のp型不純物層PILA、他方の柱状導電体CCB側のp型不純物層PILB、および、p型不純物層PILAとp型不純物層PILBとの間に位置するn型ドリフト層NDLのそれぞれの他の深さ位置における不純物濃度のプロファイルが示されている。
【0054】
ここで、他の深さ位置におけるp型不純物層PILAの不純物濃度に基づく不純物量を(Qp2)/2とする。他の深さ位置におけるp型不純物層PILBの不純物濃度に基づく不純物量を(Qp2)/2とする。他の深さ位置におけるn型ドリフト層NDLの不純物濃度に基づく不純物量をQn2とする。それぞれの不純物量は、対応する不純物濃度のプロファイルの面積に相当する。
【0055】
そうすると、p型の不純物量の総和は、(Qp2)/2+(Qp2)/2=Qp2となる。半導体装置PSDでは、p型の不純物量の総和Qp2は、n型の不純物量Qn2と等しくなるように、p型不純物層PILおよびn型ドリフト層NDLのそれぞれの不純物濃度が設定されている。なお、Qp2=Qn2は、Qp2とQn2が厳密に等しいことを意図するものではなく、製造上のばらつきとして±10%の誤差を含む。
【0056】
図24および
図25に示されているように、一の深さ位置におけるp型不純物層PILおよびn型ドリフト層NDLのそれぞれの不純物濃度と、他の深さ位置におけるp型不純物層PILおよびn型ドリフト層NDLのそれぞれの不純物濃度とは、同じ不純物濃度ではなく、異なっている。
【0057】
しかしながら、一の深さ位置においては、p型の不純物量の総和Qp1は、n型の不純物量Qn1と等しくなっている。また、他の深さ位置においては、p型の不純物量の総和Qp2は、n型の不純物量Qn2と等しくなっている。こうして、半導体装置PSDでは、チャージバランスが図られていることで、最も高い耐圧を確保することができる。
【0058】
なお、上述した半導体装置では、ゲート電極TGELが形成されるゲートトレンチGTCの平面パターンとしては、
図3または
図4に示されているピッチをずらしたメッシュパターンを例に挙げて説明した。ゲートトレンチGTCの平面パターンとしては、
図26に示すように、ピッチを揃えたメッシュパターンでもよい。また、柱状導電体CCBの平面形状として、正方形状を例に挙げて説明した。柱状導電体CCBの平面形状としては、たとえば、
図27に示すように、長方形であってもよい。また、
図28に示すように、八角形でもよいし、
図29に示すように、円形であってもよい。
【0059】
実施の形態2
実施の形態2に係る半導体装置の一例について説明する。
図30に示すように、複数の柱状導電体CCBのそれぞれに対して、p型不純物層PILが、半導体基板SUBの第1主面の側から所定の深さ(第2深さ)にわたり形成されている。p型不純物層PILは、p型不純物層PILHとp型不純物層PILMとp型不純物層PILLとを含む。
【0060】
p型不純物層PILLの不純物濃度は、たとえば、~10
17/cm
3程度である。p型不純物層PILMの不純物濃度は、p型不純物層PILLの不純物濃度よりも高く、たとえば、~10
18/cm
3程度である。p型不純物層PILHの不純物濃度は、p型不純物層PILMの不純物濃度よりも高く、たとえば、~10
19/cm
3程度である。なお、これ以外の構成については、
図2等に示す半導体装置の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0061】
次に、上述した半導体装置の製造方法の一例について説明する。まず、
図6から
図8に示す工程と実質的に同様の工程を経た後、
図31に示すように、第1の注入角度と第1のドーズ量をもって、ディープトレンチDTCの側壁面にp型の不純物が注入される。これにより、p型不純物層PILLとなる部分が形成される。
【0062】
次に、
図32に示すように、第2の注入角度と第2のドーズ量をもって、ディープトレンチDTCの側壁面にp型の不純物が注入される。第2の注入角度は、第1の注入角度よりも大きい。第2のドーズ量は第1のドーズ量よりも高い。これにより、p型不純物層PILLの一部を残して、p型不純物層PILMとなる部分が形成される。
【0063】
次に、
図33に示すように、第3の注入角度と第3のドーズ量をもって、ディープトレンチDTCの側壁面にp型の不純物が注入される。第3の注入角度は、第2の注入角度よりも大きい。第3のドーズ量は第2のドーズ量よりも高い。これにより、p型不純物層PILLの一部とp型不純物層PILMの一部とを残して、p型不純物層PILHが形成される。その後、
図10~
図15に示す工程と同様の工程を経て、
図30に示す半導体装置の主要部分が完成する。
【0064】
上述した半導体装置PSDでは、p型不純物層PILは、p型不純物層PILH、p型不純物層PILMおよびp型不純物層PILLを含む。p型不純物層PILLの不純物濃度よりも、p型不純物層PILMの不純物濃度が高い。p型不純物層PILMの不純物濃度よりも、p型不純物層PILHの不純物濃度が高い。
【0065】
発明者らは、実施の形態1に係る半導体装置PSDについて行ったシミュレーションによる評価結果を踏まえて、上述した、3つの異なる不純物濃度を有するp型不純物層PILを備えた半導体装置PSDでは、
図20において説明した電界強度として、3つのピークが出現すると考えた。すなわち、
図34に示すように、p型不純物層PILLに対応する電界強度のピークに加えて、p型不純物層PILMに対応する電界強度のピークと、p型不純物層PILHに対応する電界強度のピークとが出現すると考えた(実施例2の実線参照)。
【0066】
発明者らは、このような電界強度のピークが加わることで、電界強度の深さ方向の積分値が、実施の形態1において説明した半導体装置の場合(実施例1参照)の積分値に比べて大きくなり、その結果、耐圧がより向上すると考えた。
【0067】
さらに、上述した半導体装置では、アバランシェ破壊に対する耐性(アバランシェ耐性)が向上することがわかった。このことについて説明する。アバランシェ破壊とは、たとえば、誘導負荷でのスイッチングオフ動作時に発生するフライバック電圧等によって、スパイク電圧がMOSトランジスタのドレイン定格耐圧を超えてブレークダウン領域に入って破壊するモードである。
【0068】
ゲート電極TGELの周辺の電界が強くなっているところでブレークダウンが起こると、キャリアが発生し、ホールは、ソース電極パッドSEP側へ抜け、電子はドレイン電極パッドDEP側へ抜ける。このとき、ホールがn型ドリフト層NDLからp型ベース拡散層BDLを流れる際に、抵抗により電位差が生じ、n+型ソース拡散層SDLからp型ベース拡散層BDLへ電子が注入されると、寄生バイポーラトランジスタが動作する。すなわち、n+型ソース拡散層SDLとp型ベース拡散層BDLとn型ドリフト層NDLとからなる寄生のnpnバイポーラトランジスタが動作し、ドレイン電極パッドDEPからソース電極パッドSEPへ向かって電流が流れることになる。
【0069】
上述した半導体装置PSDでは、p型不純物層PILは、ディープトレンチDTCの側面に沿って形成されている。p型不純物層PILは、ディープトレンチDTCの側壁面においてプラグPUGに接触するとともに、n型ドリフト層NDLおよびp型ベース拡散層BDLと、深さ方向において接触している。この配置構造により、ソース電極パッドSEPに電気的に接続されたプラグPUGとp型不純物層PILとの接触面積が十分に確保される。n型ドリフト層NDLおよびp型ベース拡散層BDLとp型不純物層PILとの接触面積が十分に確保される。しかも、p型不純物層PILでは、不純物濃度が比較的高いp型不純物層PILHが、p型ベース拡散層BDLとプラグPUGとに接触している。
【0070】
このため、ブレークダウンが起こった際に、n型ドリフト層NDLからp型ベース拡散層BDLに流れ込んだホールのうち、p型ベース拡散層BDLからp型不純物層PILHを流れてプラグPUGへ流れ込むホールの成分が多くなる。また、n型ドリフト層NDLからp型不純物層PILを流れてプラグPUGに流れ込むホールの成分が多くなる。これにより、ゲート電極TGELの近傍を流れるホールの成分が少なくなる。その結果、n+型ソース拡散層SDLからp型ベース拡散層BDLへ注入される電子が少なくなり、寄生のnpnバイポーラトランジスタが動作するのを抑制することができる。こうして、アバランシェ耐性を向上させることができる。
【0071】
実施の形態3
実施の形態3に係る半導体装置の一例について説明する。
図35に示すように、半導体基板SUBは、n+型基板NPSB、n型エピタキシャル層NELおよびn-型エピタキシャル層NELLを含む。n型エピタキシャル層NELの不純物濃度は、たとえば、~10
16/cm
3程度である。n-型エピタキシャル層NELLの不純物濃度は、たとえば、~10
15/cm
3程度である。
【0072】
n型エピタキシャル層NELは、n型ドリフト層NDLになる。n-型エピタキシャル層NELLは、n-型ドリフト層NDLLになる。半導体基板SUBの第1主面の側から、n-型エピタキシャル層NELLを貫通してn型エピタキシャル層NELにおける所定の深さ(第1深さ)にわたり、複数の柱状導電体CCBが形成されている。なお、これ以外の構成については、
図2等に示す半導体装置の構成と同様なので、同一部材には同一符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0073】
次に、上述した半導体装置の製造方法の一例について説明する。まず、
図36に示すように、n+型基板NPSBの表面に、エピタキシャル成長法によってn型エピタキシャル層NELが形成される。そのn型エピタキシャル層NELの表面に、エピタキシャル成長法によってn-型エピタキシャル層NELLが形成される。n-型エピタキシャル層NELLの不純物濃度は、n型エピタキシャル層NELの不純物濃度よりも低い。n+型基板NPSB、n型エピタキシャル層NELおよびn-型エピタキシャル層NELLによって、半導体基板SUBが形成される。その後、
図7~
図15に示す工程と同様の工程を経て、
図35に示す半導体装置の主要部分が完成する。
【0074】
また、上述した半導体装置の製造方法の他の例として、以下のように製造してもよい。
図6~
図8に示す工程と同様の工程を経た後、
図37に示すように、ディープトレンチDTCの側壁等からp型の不純物が注入される。その後、熱処理が行われる。これにより、n型エピタキシャル層NELの表面から所定の深さにわたって位置する、n型エピタキシャル層NELのn型の不純物が、p型の不純物によって相殺されて、n型エピタキシャル層NELの不純物濃度よりも低い不純物濃度を有するn-型エピタキシャル層NELLが形成される。その後、
図9~
図15に示す工程と同様の工程を経て、
図35に示す半導体装置の主要部分が完成する。
【0075】
上述した半導体装置PSDでは、n型ドリフト層NDLの不純物濃度よりも低い不純物濃度を有するn-型ドリフト層NDLLが形成されている。半導体基板SUBの第1主面の側から、n-型エピタキシャル層NELLを貫通してn型エピタキシャル層NELに達するディープトレンチDTC内に、それぞれフィールドプレートFPを含む複数の柱状導電体CCBが形成されている。そのディープトレンチDTCの側壁面に沿って、p型ベース拡散層BDLとn-型ドリフト層NDLL(n-型エピタキシャル層NELL)とに接するp型不純物層PILが形成されている。
【0076】
発明者らは、実施の形態1に係る半導体装置PSDについて行ったシミュレーションによる評価結果を踏まえて、上述した、p型不純物層PILに接するn-型ドリフト層NDLLを備えた半導体装置PSDでは、n-型ドリフト層NDLLが位置する深さ方向において、電界強度が上昇すると考えた。すなわち、
図38に示すように、n-型ドリフト層NDLLが位置する領域の電界強度のベースが、実施の形態1において説明した半導体装置PSDの電界強度のベースよりも高くなると考えた(実施例3の実線参照)。
【0077】
発明者らは、電界強度のベースが上昇することで、電界強度の深さ方向の積分値が、実施の形態1において説明した半導体装置PSDの場合(実施例1参照)の積分値に比べて大きくなり、その結果、耐圧がさらに向上すると考えた。
【0078】
なお、各実施の形態において説明した半導体装置については、必要に応じて種々組み合わせることが可能である。また、その実施態様に応じた請求項の従属関係も予定される。
【0079】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0080】
PSD 半導体装置、GEP ゲート電極パッド、SEP ソース電極パッド、DEP ドレイン電極パッド、GIC ゲート配線、CCB 柱状導電体、NPSB n+型基板、NDL n型ドリフト層、NDLL n-型ドリフト層、BDL p型ベース拡散層、SDL n+型ソース拡散層、NEL n型エピタキシャル層、NELL n-型エピタキシャル層、GTC ゲートトレンチ、GIF ゲート絶縁膜、TGEL ゲート電極、GCN ゲートコンタクト、DTC ディープトレンチ、FIF フィールドプレート絶縁膜、FP フィールドプレート、PIL、PILA、PILB、PILH、PILM、PILL p型不純物層、ILF 層間絶縁膜、PUG プラグ、IPF 保護絶縁膜、TIF 絶縁膜、PSF ポリシリコン膜、SOP 開口部。