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特許7196009短繊維強化プラスチック部品の射出成形プロセスを最適化するためにX線コンピュータ断層撮影データから情報を取得する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】短繊維強化プラスチック部品の射出成形プロセスを最適化するためにX線コンピュータ断層撮影データから情報を取得する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20221219BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20221219BHJP
【FI】
G01N23/046
G01N23/18
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019082835
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2019215328
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】10 2018 109 819.7
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512028965
【氏名又は名称】エクスロン インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】YXLON INTERNATIONAL GMBH
【住所又は居所原語表記】Essener Bogen 15,22419 Hamburg(DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェル,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】サイモン,ジェレミー
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-211344(JP,A)
【文献】特開2012-002547(JP,A)
【文献】特開2011-089920(JP,A)
【文献】特開平08-082607(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011080985(DE,A1)
【文献】特開2009-183958(JP,A)
【文献】特開2006-275742(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110389176(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01B 15/00 - G01B 15/08
A61B 6/00 - A61B 6/14
G06T 7/00 - G06T 7/90
G06N 20/00 - G06N 20/20
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習フェーズ及び続く適用フェーズを備えている、X線コンピュータ断層撮影法を用いて連続して製造された短繊維強化プラスチック構成部品から情報を取得するための方法であって、前記学習フェーズが、
a)製造プロセスを用いて製造された複数のプラスチック構成部品の条件付けられた無作為標本のためのCTデータセットを生成するステップと、
b)前記複数のプラスチック構成部品の少なくとも1つの欠陥のない領域を抽出するステップと、
c)抽出された領域における少なくとも1つの特徴の特性と、プラスチック構成部品のタイプ及び該プラスチック構成部品の製造プロセスに特有の個別の特徴及び領域であって、前記複数のプラスチック構成部品の製造における時間経過にわたっての、それらの特性において良品と不良品との間に有意な差を示す個別の特徴及び領域の関連性とを決定するステップと、
d)前記少なくとも1つの特徴をその特性と共に訓練された分類子として規定するステップと
を含んでおり、前記適用フェーズが、
e)検査対象となるプラスチック構成部品のCTデータセットを生成するステップと、
f)前記訓練された分類子に基づいて検査部品を分類するステップと、
g)前記少なくとも1つの特徴の特性を、該特徴に関してネガティブな傾向があるかどうかについて、以前に審査された欠陥のない領域内における前記複数のプラスチック構成要素と比較することにより審査するステップと、
h)前記ネガティブな傾向を打ち消すような方法でプロセスパラメータを自動的に変更する、又は、該ネガティブな傾向が存在することを警告するステップと
を含んでいる、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの特徴の特性が、前記学習フェーズ中に学習された良品と不良品との分布に対応するかどうかが審査される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの特徴が、繊維配向の分布;局所エントロピー;繊維の局所的強度分布;局所壁厚;繊維の幾何学的特徴;からなる群に由来する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記局所エントロピーが、シャノンのエントロピーである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記繊維の局所的強度分布が、該局所的強度分布の平均、分散又は標準偏差である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記繊維の幾何学的特徴が、繊維の長さ、直径又は距離である、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記繊維配向の分布の特徴が、渦を形成する結果となる方向の変化を示すかどうかについてこの際に審査される、請求項3~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記方向の変化が、前記プラスチック構成要素中の任意の所望の点について、予め定めておくことが可能なそれぞれの点の周囲の空間内において、複数の前記繊維配向を決定すると共に各方向の頻度を計算することによって決定される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
ステップgが、前記CTデータセット内の選択された点においてのみ、かつ、予め定めておくことが可能な空間内においてのみ、行われる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップgが、前記CTデータセット内の選択された点においてのみ、かつ、中心点としてのそれぞれの点の周囲の立方体内においてのみ、行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記予め定めておくことが可能な空間のサイズ、前記CTデータの解像度に依存する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記予め定めておくことが可能な空間のサイズは、関連する前記特徴が良好に撮像され得るように前記CTデータの解像度に依存する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記予め定めておくことが可能な空間の形状が立方体であり、前記立方体の辺の長さが前記CTデータの解像度に依存する、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
ステップc及びdに加えて、欠陥のない領域だけでなく少なくとも1つの欠陥の発生しやすい領域もまた学習フェーズにて抽出され、前記少なくとも1つの特徴の特性の審査であって、該少なくとも1つの特徴の特性に関してネガティブな傾向があるかどうかについての審査が、以前に審査された前記欠陥の発生しやすい領域における前記プラスチック構成要素と比較して行われる、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記適用フェーズにおける複数の前記ステップが、全てのプラスチック構成部品に対して行われるか、これらのプラスチック構成部品の無作為標本に対してのみ行われるかのいずれかである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習フェーズ及び続く適用フェーズを備えている、X線コンピュータ断層撮影法を用いて連続して製造された短繊維強化プラスチック構成部品から情報を取得するための方法であって、製造プロセスを最適化するため、かつ、該情報を使用して不良品を減らすための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影データを使用して様々なプロセスパラメータにより製造プロセスを評価及び制御するために現在まで使用されてきた方法は、構成部品のCTデータセット中より検出可能な欠陥又は不連続部から得られる情報に専ら頼っている。これらは、それぞれが個別の評価から編纂された観測であって、そのため一連の製造されたプラスチック構成部品(母集団)間における関係性を生じさせるものではない。加えて、得られるデータの最大の部分は、特にコンピュータ断層撮影(CT)の場合においては、評価に全く組み込まれないことに留意する必要がある。この部分は、不連続部及び欠陥のない構成部品内の全ての領域である。CTの分野では、これは検査中に生じるデータの、典型的には90~95%である。欠陥のないプラスチック構成部品の場合には、これらの既知の方法では、構成部品が問題ないという情報以外のさらなる情報は生じない。
【0003】
X線CTは、この方法を用いて審査されたプラスチック構成部品の三次元表示、特に内部構造の三次元表示を可能にする。構成部品の内部構造は、プロセスに対する多くの影響の結果としてばらつきが生じ、この結果は構造的変化に反映され得る。これらの変化は、製造プロセスに応じて、また使用されている材料又は材料の組み合わせに応じて、性質が異なる。変化の特性に応じて、これらは広い範囲で許容可能であるが、X線CTで可視化され得る。本発明に係るプラスチック構成部品は、短繊維により補強されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、そのようなプラスチック構成部品を検査することを可能にする方法であって、その検査の際に製造された構成部品の不良に繋がる不連続部を回避し、製造プロセスにおけるばらつきそして何より傾向を早期段階で検出することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、本発明に従い、請求項1の特徴を備えた方法によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項に指定されている。
【0006】
これらによれば、本目的は、学習フェーズ及び続く適用フェーズを備えている、X線コンピュータ断層撮影法を用いて連続して製造された短繊維強化プラスチック構成部品から情報を取得するための方法であって、学習フェーズが、
・製造プロセスを用いて製造された複数のプラスチック構成部品の条件付けられた無作為標本のためのCTデータセットを生成するステップと、
・複数のプラスチック構成部品の少なくとも1つの欠陥のない領域を抽出するステップと、
・抽出された領域における少なくとも1つの特徴の特性と、プラスチック構成部品のタイプ及び該プラスチック構成部品の製造プロセスに特有の個別の特徴及び領域であって、複数のプラスチック構成部品の製造における時間経過にわたっての、それらの特性において良品と不良品との間に有意な差を示す個別の特徴及び領域の関連性とを決定するステップと、
・少なくとも1つの特徴をその特性と共に訓練された分類子として規定するステップと
を含んでおり、適用フェーズが、
・検査対象となるプラスチック構成部品のCTデータセットを生成するステップと、
・訓練された分類子に基づいて検査部品を分類するステップと、
・少なくとも1つの特徴の特性を、該特徴に関してネガティブな傾向があるかどうかについて、以前に審査された欠陥のない領域内における複数のプラスチック構成要素と比較することにより審査するステップと、
・ネガティブな傾向を打ち消すような方法でプロセスパラメータを自動的に変更する、又は、該ネガティブな傾向が存在することを警告するステップと
を含んでいる、方法によって達成される。
【0007】
学習フェーズでは、条件付けられた無作為標本、すなわち製造された順序が既知である一連のプラスチック構成要素のCTデータセットが生成される。次に、プラスチック構成部品の製造プロセスについての特徴プロファイルが決定され、このとき該製造プロセスは、欠陥が少ない又は欠陥がない。これは無作為標本を用いて行われ、このとき繊維配向の分布が、特徴として使用される。その後、プラスチック構成部品の欠陥のない領域が抽出される。これに続いて、繊維配向(=特性)の分布が、訓練された分類子としてのその傾向と共に計算/決定される。
【0008】
次の適用フェーズは、検査されるプラスチック構成部品のCTデータセットを生成することから始まり、続いて訓練された分類子に基づいて検査部品を分類する。その後、特徴又はそれらの特性がネガティブな傾向の存在を証明するかどうかについて、評価が行われる。ネガティブな傾向が存在する場合、プロセスパラメータは、ネガティブな傾向を打ち消すような方法により自動的に変更される。これに代えて又はこれに加えて、検出されたネガティブな傾向の警告が行われ、それによってオペレータはこのネガティブな傾向を、1つ以上のプロセスパラメータを変更することによって打ち消し得る。
【0009】
したがって、本発明によれば、プロセスに介入する可能性があり、それによって不良品の製造を防ぐことができる。これにより、対応する率先的な反応を伴うプロセス挙動の予測が可能になる。
【0010】
本発明の有利な発展形態では、少なくとも1つの特徴が、繊維配向の分布;局所エントロピー、特にシャノンのエントロピー;繊維の局所的強度分布、特に平均、分散又は標準偏差;局所壁厚;繊維の幾何学的特徴、特に繊維の長さ、直径又は距離;からなる群に由来することが提供される。上記の特徴のうち複数を使用することも可能である。それにより冗長性が達成され、ネガティブな傾向が非常に早期の段階でより確実に検出され、結果的により早期に打ち消され得る。上記以外の特徴が使用される場合も、同様である。
【0011】
本発明のさらなる有利な発展形態では、ネガティブな傾向の特徴の特性が、CTデータセット内の選択された点においてのみ、かつ、予め定めておくことが可能な空間内においてのみ、特に、中心点としてのそれぞれの点の周りの立方体内においてのみ、存在するかどうかについて、評価が行われることが提供される。辺の長さは、CTデータの解像度に依存することが好ましい。辺の長さは、関連する前記特徴が良好に撮像され得るように、例えば、繊維長の2倍となるように選択され得る。これは、例えば32ボクセルであり得る。これにより、後のステップのために検討される容積データの規模が減少され、それによってプロセスが高速化する。予め定められる値は、学習フェーズにて決定される。
【0012】
本発明のさらなる有利な発展形態では、特徴の特性が学習フェーズ中に学習された良品と不良品との分布に対応するかどうかについて審査されることが提供される。繊維配向の特徴について、基準は、渦を形成する結果となる方向の変化を示すかどうかであり得る。好ましくは、この方向の変化は、ここでは、プラスチック構成要素中の任意の所望の点について、予め定めておくことが可能なそれぞれの点の周囲の空間内において、複数の前記繊維配向を決定すると共に各方向の頻度を計算することによって決定される。これは、簡易な手段を使用した数学的決定が可能であるため、非常に良好に定量化され得る。
【0013】
本発明のさらなる有利な発展形態では、欠陥のない領域だけでなく少なくとも1つの欠陥の発生しやすい領域もまた学習フェーズにて抽出され、特徴の特性の審査であって、これらの特徴の特性に関してネガティブな傾向が存在することについての審査が、以前に審査された欠陥の発生しやすい領域におけるプラスチック構成要素と比較して行われることが提供される。特徴の特性の重要性が、欠陥の発生しやすい領域を含めることによって高められ得る。
【0014】
本発明のさらなる有利な発展形態では、適用フェーズにおける複数のステップが、全てのプラスチック構成部品に対して行われるか、これらのプラスチック構成部品の無作為標本に対してのみ行われるかのいずれかであることが提供される。1つ目の場合には、中断のない審査が保証されており、差し迫ったネガティブな傾向が非常に早期の段階で検出される。2つ目の場合には、個々の構成部品の審査により多くの時間が利用可能であり、この時間をより詳細な審査に利用することができる。したがって、傾向の検出についての信頼性が高められ得る。
【0015】
本発明のさらなる詳細及び利点は、図面に表される実施形態の例を参照して、以下にてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る学習フェーズのフロー図である。
図2】学習フェーズを実行した後の、本発明に係る適用フェーズのフロー図である。
図3】不連続部を備えた第1の繊維強化プラスチック構成部品の断面画像領域である。
図4】不連続部を備えていない第2の繊維強化プラスチック構成部品の断面画像領域である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、本発明に係る学習フェーズにおける方法の原則的なフローが表されている。この学習フェーズにつき、以下でより詳細に説明する。
【0018】
特徴を分離するため、まずは分類された無作為標本が必要である(ステップ番号1)。すなわち、単純な2分類問題の場合には、例えば「良」クラスと「悪」クラスとに分割する。しかしながら、2つを超える分類を用いて機能する問題を解決することも可能である。無作為標本には、十分な数の要素が必要である。要素の数は分類作業の複雑さに依存し、数百の要素があれば良好な結果を生み出すことができる。しかしながら、個々の場合には、百万単位の(部分的な)データセットが必要となる可能性もある。各要素は、分類システムが訓練可能となるよう、分類に対して一義的に割り当てられる必要がある。
【0019】
ステップ番号2では、欠陥の無い構成部品領域が抽出される。それぞれの場合において審査対象となる構成部品について規定された品質基準に基づいて、構成部品内の領域が除外され得る。例えば、細孔性が構成部品の品質にとって決定的である場合、細孔性を含む構成部品領域は、特徴を取得するためには使用されない。孔径の他のさらなる品質基準は、例えば、公称サイズ又は図面仕様(CAD)からの幾何学的なずれ、構成部品の亀裂、構成材料の分離、収縮穴、異物混入であり得る。
【0020】
欠陥のない構成部品領域の抽出は人力で行うことができ、その際、オペレータは抽出された領域が欠陥の無いものであるか否かを視覚的に決定する。前述の全ての品質基準について欠陥を検出可能な自動画像処理方法が存在するため、自動抽出及び評価も同様に可能である。したがって、欠陥のない構成部品領域を抽出する方法は、領域の構成部品のボリュームデータセットから段階的に領域を抽出し、該領域を画像処理方法を使用して評価するように設計され得る。欠陥が検出された場合、その領域は破棄され、訓練には使用されない。画像処理を通じて不良とされなかった領域は、訓練又は適用に組み込まれる。
【0021】
ステップ番号3では、予め定められた特徴の選択を行うかどうかが問い合わせられる。
【0022】
これに対する答えが否定である場合には、ステップ番号4に従い、ニューラルネットワーク又は機械学習アプローチは、分類されたランダム標本に基づいて、構成部品に対して行われた検査決定と以前に抽出された欠陥のない構成部品領域における構成部品内部の構造特性との間の相関を示す特徴を自動的に決定する可能性を提供する。そのようなアプローチの場合には、学習の成果を最大化するために、とりわけ、複数インスタンス学習等のモデルが使用される。
【0023】
対照的に、ステップ3の問い合わせに対する答が肯定である場合には、ステップ番号5に従い、予め定められた特徴が提供される。この目的のため、データ分析の分野からの従来の統計的方法が、上述の相関を生成する特徴を識別するために使用され得る。前提条件として、これらの特徴が事前に選択されていることが必要となる。これは、熟達した画像処理の専門家による人力で行われるか、画像処理に使用される自動プロセスを通じて(遺伝的プログラミングを用いて)行われ得る。繊維強化プラスチック構成部品の場合、これらの方法には、例えば、繊維配向、局所密度、局所エントロピー、又は、直径、壁厚若しくは距離等の幾何学的特徴の特性の決定が含まれる。
【0024】
次に、(ステップ番号4又は5に続く)ステップ番号6に従い、重要な特徴及び/又は構成部品領域の選択が行われる。これは、例えばニューラルネットワーク又はデータ分析を介して行われ得る。特徴のタイプに加えて、局所的な密度分布、繊維の配向又は局所的な壁厚の変動、特徴の特性が決定される構成部品内の位置もまた、上述の相関を示すために重要であり得る。構成部品の特定の区域/領域に対する1つ以上の特徴の制限は、特徴の重要性に寄与し得る。
【0025】
ステップ番号7では、プロセスパラメータの形式における追加の環境データを分類システムの訓練に送り込むべきかどうかが問い合わせられる。
【0026】
これに対する答が肯定であれば、ステップ番号8において、プロセスパラメータと特徴の特性との間の相関が決定される。これは、同様にニューラルネットワーク又はデータ分析を用いて行われる。プロセス品質の評価を最終的に可能にする特徴が識別された場合、このステップで設定されるタスクは、特定のプロセスパラメータと特徴の特性との間の一致を見つけることである。例えば、圧力が高い場合には、特定の特徴が特定の値をとるか又はパターンを形成することが、分析によって確定され得る。それによって、特徴の特性と1つ又は複数のプロセスパラメータとの間の相関が生成される。この特徴が操作中に検出されることとなった場合には、例えば、対策として圧力の調整が導入され得る。
【0027】
ステップ番号8に続いて、又は、ステップ番号7の問い合わせに対する答が否定である場合には、ステップ番号9にて訓練された分類子が確立される。学習プロセスが完了すると、例えばニューラルネットワークが使用された際には、訓練されたネットワークが存在することになる(ネットワーク内の各ニューロンについてのフィルタ設定及び重み付け)。該ネットワーク及びそのパラメータは、分類子を表す。予め定められた特徴の場合には、訓練された分類子の知識を表すのは、各分類にとって重要である特徴の特性(任意には、この特徴が評価される構成部品内の位置にも関連する)である。
【0028】
図2には、適用フェーズにおける方法の原則的なフローが表されている。この適用フェーズにつき、以下でより詳細に説明する。
【0029】
重要な特徴、その特定の特性、及び、任意にはその局所的な関連性が、上述した学習フェーズの方法(ステップ番号9)を通じて選択される場合には、これらは通常の操作(一連の検査)にて使用される。ここでは、全ての構成部品(インライン操作)又は関連する無作為標本(例えば、構成部品10個毎)のいずれかが、ステップ番号10に従い、X線CTを用いて審査される。
【0030】
欠陥のない構成部品領域は、ステップ番号11に従い、訓練と同様にして抽出される。
【0031】
任意には、ステップ番号12に従い、関連する構成部品領域の選択もまた学習フェーズの結果に基づいて行われる。
【0032】
ステップ9に従う学習フェーズにおいて事前に確立されていた訓練された分類子を用いて、ステップ番号13では、次に特徴及び分類の計算が行われる。この目的のため、事前に識別されていた特徴が、関連性のあり得る構成部品領域において評価される。そして、個々の結果(種々の評価された構成部品領域内における各特徴)の合計は、分類方法を使用して(例えば、ニューラルネットワークを用いて)評価され、ステップ番号14に従い、ネガティブな傾向が検出されたかどうかに関する決定がなされる。
【0033】
ステップ番号14においてネガティブな傾向が検出されなかった場合には、この決定は、ステップ番号15に従い、オペレータに対して是正の必要がないことを示す。
【0034】
ステップ番号14においてネガティブな傾向が検出された場合には、ステップ番号16に従い、プロセスパラメータが学習されていたかどうかに関する問い合わせが行われる。
【0035】
最も単純な場合、すなわち、この問い合わせに対する答が否定である場合には、ステップ番号17に従い、プロセス変更について警告がなされる。これは、プロセスが不良品を生成する可能性がより高くなる傾向を示していることを意味する。
【0036】
学習されたプロセスパラメータが存在する場合には、ステップ番号16の問い合わせに対する答は肯定であり、不連続部が生じることを予測し得る特徴と潜在的な原因との間の相関がさらに示され得る。このような環境データは、製造機械のパラメータ(圧力、温度、応力、フロー)のような主な影響因子であり得るが、例えば、周囲温度、空気の湿度及びオペレータのような二次的な影響因子でもあり得る。学習フェーズにて特徴の発見に決定的なのは、構成部品の製造における時間経過にわたっての重要性が検出されることである。時間的要素を通じてのみ、プロセスの挙動及び傾向の検出について結論を下すことが可能であり、このことは最終的には不良を回避するよう率先的に取り組むための前提条件となる。
【0037】
追加の環境パラメータが関与する場合には、ステップ番号18に従い、この方法はプロセスを自動的に実行するために使用され、識別されたプロセスパラメータ(例えば、圧力)が分類システムを介して変更される。これにより、製造プロセスのネガティブな傾向が打ち消され、不良品の形成が事前に防止される。
【0038】
短繊維強化プラスチック構成部品の製造に用いられる材料は、コンピュータ断層撮影を用いることによって内部構造を可視化する、及び、それによってそれらのプラスチック構成部品からプラスチック構成部品への変化をも可視化することを助長する。これは、使用される材料のX線吸収係数が異なるためである。図3は、一例として、CTデータセットによる、ガラス繊維強化プラスチック構成部品製の断面を示す。この断面は、細孔すなわち不連続部が非常に大きく広がった領域を示している。加えて、より広い周囲における細孔の繊維配向(繊維は明るい構造として認識可能である)が、渦を形成する傾向を有する方向への強い変化を示すことは、明確に視認可能である。図4では、不連続部のない領域が見られる。実際に、ここでも繊維配向の変化が見られるが、図3ほど顕著ではない。これらの構造は、数学的に理解及び説明され得る。このような対象物における任意の所望の点について、予め定められた環境に対して空間内の繊維配向を決定して各方向の頻度を計算することができる。
【0039】
この繊維方向の分布は、本明細書に記載の方法を使用するために必要な、本質的な特徴の1つを表している。この特徴の特性(配向、分布のヒストグラム)は、傾向を検出することを可能にするものであり、本発明に係る学習フェーズによって決定され得る。本発明に係る方法に送り込まれる無作為標本から、欠陥のない又は少なくとも欠陥の少ない傾向があるプロセス経過のプロファイル(理論プロファイル)が、これらの特徴を用いて決定され得る。加えて、欠陥の発生しやすいプロファイルを導き出すことが可能である。全てのプラスチック構成部品の評価(インライン検査)による製造監視中に、又は、無作為標本(例えば、10個毎の部品)による製造監視中にも、理論プロファイルからの偏差が検出可能であり、対策が講じられ得る。
【0040】
空間内での繊維配向の分布の他にも、製造プロセス及びその監視にはさらなる特徴もまた関連している。それらの特徴は以下に記載され、特定用途向けの方法の一部を形成する。これらの特徴の個々の特性は、プラスチック構成部品の幾何学的形状、及び、プラスチック構成部品内の該特徴が決定される位置の両方に依存する。したがって、例えば、材料が蓄積された領域では、該特徴における全く異なる特性が、壁の薄い領域よりも傾向検出に関連している可能性がある。
【0041】
全ての特徴に対して、データ容積における選択された点についてのみ決定される必要があると共に、予め定められた環境(例えば、辺の長さが32ボクセルである中心点の周りの立方体)においてのみ評価される必要があるということが適用される。これらの特徴の特性に加えて、評価対象となる点の数及び位置もまた、本発明に係る学習フェーズによって決定される。既に上述したように、この目的を達成するために、同一の1つの特徴が、プラスチック構成部品における位置に応じて異なる特性を有し得る。
【0042】
短繊維強化プラスチック射出成形の傾向分析に必要な特徴の(決定的でない)リストは以下の通りである。
・上記のような繊維配向の分布(ヒストグラム)
・局所エントロピー(例えば、シャノンのエントロピー)
・局所強度分布(例えば、平均、分散、標準偏差)
・局所壁厚
・幾何学的特徴(例えば、長さ、直径、距離)
【0043】
したがって、本発明は以下のように要約され得る:
【0044】
本発明に係る方法の目的は、許容不可能な不連続部に関する限界の超過を検出することではなく、プロセスを制御するために許容可能な範囲内にあるプラスチック構成部品間の変動を利用することにある。この方法は、コンピュータ断層撮影法を使用した一連の検査が必要である。このようにして、検査された各プラスチック構成部品について、射出成形された構成部品の内部構造を再現する3Dデータセットが生成される。この一連の検査を通して、原理的に射出成形プロセスの変化が検出可能である。これにより、予測的な性質を有する傾向が可視化される。したがって、プロセスの変化を予測し、それにより介入を通じてプロセスの悪化を打ち消すことが可能になる。
【0045】
この方法の本質的な部分は、情報が専ら不連続部又は欠陥のない構成部品領域から得られることである。構成部品の特性及びプロセスの変異に応じて、構成部品の品質及びプロセスの品質との相関を示し得る様々な特徴が存在する。
【0046】
本発明と従来技術の方法との間の決定的な相違点は、本発明の方法が主として構成部品の欠陥のない領域から得られる情報のみに依存することである。しかしながら、特徴の特性の重要性を増すために、追加的に欠陥の発生しやすい領域からの情報を使用することも可能である。構成部品の欠陥から情報を引き出す方法では、プロセス評価及びプロセス影響の意味においては、欠陥のない構成部品から意味のある情報を得ることができない。しかしながら、欠陥のないプラスチック構成部品の場合においても傾向が見えるようになる可能性があるため、従来技術に係る方法の場合では、監視ギャップが存在する。したがって、情報を取得するには欠陥が常に必要であるため、欠陥がゼロの製造は不可能である。したがって、そのような方法は専ら後手に回ることになる。これとは対照的に、本明細書に記載される本発明に係る方法は、適用フェーズにて動作を起こすために欠陥の発生しやすい構成部品を必要としないため、先手を取って対処することができる。
図1
図2
図3
図4