(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】直描式露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20221219BHJP
G03F 9/02 20060101ALI20221219BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F9/02 Z
H05K3/00 H
(21)【出願番号】P 2019085440
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】300091670
【氏名又は名称】株式会社アドテックエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100097548
【氏名又は名称】保立 浩一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健二
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-098720(JP,A)
【文献】特開2008-191303(JP,A)
【文献】特開2012-199553(JP,A)
【文献】特開昭59-188652(JP,A)
【文献】特開2001-237521(JP,A)
【文献】特開2008-277551(JP,A)
【文献】特開2013-166601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0332347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24、9/00-9/02
H05K 3/00
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状又はシート状のワークに対してマスクなしに所定のパターンの光を照射して露光する直描式露光装置であって、
設定された露光エリアに所定のパターンの光を照射する露光ヘッドと、
露光エリアを通してワークを搬送する搬送系と
を備えており、
ワーク搬送系は、
露光エリアを通過する際に露光ヘッドの光軸に対して垂直で平坦な姿勢であるワーク載置部を無終端状の周回路に沿って周回させる周回機構と、
ワーク載置部に未露光のワークを載置するローダと、
露光済みのワークをワーク載置部から回収するアンローダと
を備えていることを特徴とする直描式露光装置。
【請求項2】
前記ローダが未露光のワークを載置する載置作業位置と前記露光エリアとの間の前記周回路上においてワークの状態を検出する位置にアライメント用センサが設けられており、
前記露光ヘッドによる前記所定のパターンの光の照射位置をアライメント用センサからの信号により補正するアライメント手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の直描式露光装置。
【請求項3】
前記アライメント手段は、前記周回路上を移動中の前記ワークの状態を検出した前記アライメント用センサからの信号により前記照射位置を補正する手段であることを特徴とする請求項2記載の直描式露光装置。
【請求項4】
前記露光ヘッドは、前記所定のパターンの光を形成する投影光学系を含んでおり、
前記
ローダが未露光のワークを載置する載置作業位置と前記露光エリアとの間の前記周回路上には、ワーク載置部に載置された前記ワークまでの距離を計測するオートフォーカス用センサが設けられており、
オートフォース用センサによる計測結果に従って投影光学系を制御するオートフォーカス手段が設けられていることを特徴とする請求項1、2又は3記載の直描式露光装置。
【請求項5】
前記オートフォーカス手段は、前記周回路上を移動中の前記ワークまでの距離を計測した前記オートフォーカス用センサからの信号に従って前記投影光学系を制御する手段であることを特徴とする請求項4記載の直描式露光装置。
【請求項6】
前記ワーク載置部に載置された前記ワークを少なくとも前記露光エリアを通過する際に当該ワーク載置部に吸着する吸着機構を備えていることを特徴とする請求項1記載の直描式露光装置。
【請求項7】
前記アライメント用センサで状態が検出された前記ワークを少なくとも当該検出の時点から前記露光エリアを通過するまで前記ワーク載置部に吸着する吸着機構を備えていることを特徴とする請求項2又は3記載の直描式露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願の発明は、ワークに対してマスクを介さずに所定のパターンの光を照射して露光する直描式露光装置に関するものである。以下、露光における光の所定のパターンを露光パターンという。
【背景技術】
【0002】
表面に感光層が形成されている対象物を露光して感光層を感光させる露光技術は、フォトリソグラフィの主要技術として各種微細回路や微細構造の形成等に盛んに利用されている。代表的な露光技術は、露光パターンと同様のパターンが形成されたマスクに光を照射し、マスクの像を対象物の表面に投影することで露光パターンの光が対象物に照射されるようにする技術である。
【0003】
このようなマスクを使用した露光技術とは別に、空間光変調器を使用して対象物の表面に直接的に像を形成して露光する技術が知られている。以下、この技術を、本明細書において、直描式露光と呼ぶ。
直描式露光において、典型的な空間光変調器はDMD(Digital Mirror Device)である。DMDは、微小な方形のミラーが直角格子状に配設された構造を有する。各ミラーは、光軸に対する角度が独立に制御されるようになっており、光源からの光を反射して対象物に到達させる姿勢と、光源からの光を対象物に到達させない姿勢とを取り得るようになっている。DMDは、各ミラーを制御するコントローラを備えており、コントローラは、露光パターンに従って各ミラーを制御し、対象物の表面に露光パターンの光が照射されるようにする。
【0004】
直描式露光の場合、マスクを使用しないので、多品種少量生産において優位性が発揮される。マスクを使用した露光の場合、品種毎にマスクを用意する必要があり、マスクの保管等のコストも含めて大きなコストがかかる。また、異品種の生産のためにマスクを交換する際には、装置の稼働を停止する必要があり、再開までに手間と時間を要する。このため、生産性が低下する要因となる。一方、直描式露光の場合、品種毎に各ミラーの制御プログラムを用意しておくだけで良く、異品種の製造の際には制御プログラムの変更のみで対応できるので、コスト上、生産性上の優位性は著しい。また、必要に応じてワーク(露光対象物)毎に露光パターンを微調整することも可能であり、プロセスの柔軟性においても優れている。
【0005】
このような直描式露光装置では、空間光変調器を内蔵した露光ユニットの光軸に対してワークを垂直な姿勢とするため、ワークが載置されるステージが使用される。露光ユニットは、設定されたエリア(以下、露光エリアという。)に露光パターンの光を照射するようになっており、ワークが載置されたステージは、搬送系により露光エリアを通して移動し、露光エリアを通過する際にワークが露光される。
【0006】
このような直描式露光装置では、生産性を高めるため、二つのステージを搭載したツインステージの構成が採用されることが多い。特許文献1に開示された構成も、その一例である。ツインステージの構成では、露光エリアの両側にステージが配置され、ワークが載置された各ステージが交互に露光エリアを通過することで露光が行われる。この場合、露光エリアの一方の側にロード(載置)/アンロード(回収)の機構が設置され、他方の側にもロード/アンロードの機構が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した直描式露光装置において、ワークの両面を露光することがしばしば要求される。両面を露光する場合、直描式露光装置を二台縦設し、一台目で一方の面を露光した後、二台目で他方も面を露光する。一台目の装置と二台目の装置との間に、ワークを裏返す反転機構が設置される。
このように二台の直描式露光装置を縦設した場合、ツインステージの構成も変更される。露光エリアの一方の側はロード専用となり、他方の側はアンロード専用となる。他方の側のアンロードの機構は、露光済みのワークを反転機構に渡し、反転機構は、表裏を反転させてから二台目の直描式露光装置のロード機構に渡す。
【0009】
二台のステージは、一方の側のみでワークの載置が行われるため、交互にロード位置に移動する。ロード位置でワークが載置されたステージは、露光のために露光エリアを通過して他方の側まで移動し、ワークが取り去られた後、一方の側まで戻ってきて再びワークの載置が行われる。二台のステージは、互いに干渉しないようにするため、向かい合う片持ちの構造とされる。即ち、一方のステージは、搬送方向に対して例えば左側から延びるアームで保持され、他方のステージは右側から延びるアームで保持される。アームにはそれぞれ昇降機構が連結され、一方のステージが搬送ラインに沿って移動している際には、上方又は下方に待避して干渉しないように構成される。
【0010】
上記のように二台のステージを搭載したツインステージの直描式露光装置は、一台のみのステージを搭載した装置に比べて生産性は大きく向上する。しかしながら、構造的に複雑で大がかりになり易く、高コストになり易い。この問題は、一方の側をロード専用、他方の側をアンロード専用とした構成の場合に顕著である。
また、一方のステージの退避動作が完了するまでは他方のステージは搬送ライン上を進むことができないため、この部分でタクトタイムが律速されてしまうこともあり得る。こうなると、ツインステージとした優位性が阻害されてしまい、生産性が大きくは向上しないことにもなる。
【0011】
この出願の発明は、このような直描式露光装置の生産性における課題を解決するために為されたものであり、シンプルな構造であって低コスト化でき且つ高い生産性で露光プロセスを実行できる直描式露光装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、この出願の直描式露光装置は、板状又はシート状のワークに対してマスクなしに所定のパターンの光を照射して露光する直描式露光装置であって、設定された露光エリアに所定のパターンの光を照射する露光ヘッドと、露光エリアを通してワークを搬送する搬送系とを備えている。ワーク搬送系は、露光エリアを通過する際に露光ヘッドの光軸に対して垂直で平坦な姿勢であるワーク載置部を無終端状の周回路に沿って周回させる周回機構と、ワーク載置部に未露光のワークを載置するローダと、露光済みのワークをワーク載置部から回収するアンローダとを備えている。
また、上記課題を解決するため、この直描式露光装置は、ローダが未露光のワークを載置する載置作業位置と露光エリアとの間の周回路上においてワークの状態を検出する位置にアライメント用センサが設けられており、露光ヘッドによる所定のパターンの光の照射位置をアライメント用センサからの信号により補正するアライメント手段が設けられているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、アライメント手段は、周回路上を移動中のワークの状態を検出したアライメント用センサからの信号により照射位置を補正する手段であり得る。
また、上記課題を解決するため、この直描式露光装置は、露光ヘッドが露光パターンを形成する投影光学系を含んでおり、ローダが未露光のワークを載置する載置作業位置と露光エリアとの間の周回路上には、ワーク載置部に載置されたワークまでの距離を計測するオートフォーカス用センサが設けられており、オートフォース用センサによる計測結果に従って投影光学系を制御するオートフォーカス手段が設けられているという構成を持ち得る。
また、上記課題を解決するため、オートフォーカス手段は、周回路上を移動中のワークまでの距離を計測したオートフォーカス用センサからの信号に従って投影光学系を制御する手段であり得る。
また、上記課題を解決するため、この直描式露光装置は、ワーク載置部に載置されたワークを少なくとも露光エリアを通過する際に当該ワーク載置部に吸着する吸着機構を備え得る。
また、上記課題を解決するため、この直描式露光装置は、アライメント用センサで状態が検出されたワークを少なくとも当該検出の時点から露光エリアを通過するまでワーク載置部に吸着する吸着機構を備え得る。
【発明の効果】
【0013】
以下に説明する通り、この出願の直描式露光装置によれば、無終端状の周回路に沿って周回するステージが載置作業位置に位置した際にステージへのワークの載置動作が行われて当該ステージが露光エリアを通過する際に露光が行われ、その後回収作業位置に達した際に当該ステージからワークが回収されるというシンプルな動作を行うシンプルな構成であるので、装置コストの低減が可能となる。また、タクトタイムを律速するのは露光ユニットにおける露光となり、ワークの搬送動作によって律速されることはない。このため、高い生産性で露光プロセスを実行できる実用的な装置が提供される。
また、載置作業位置と露光エリアとの間の周回路上においてワークの状態を検出してそれに応じて露光パターンの照射位置を補正するようにすると、ワーク載置部にワークがずれて配置されても正しい位置に露光パターンの光が照射される。このため、より位置精度の高い露光が行える。
また、アライメント手段が、周回路上を移動中のワークの状態を検出したアライメント用センサからの信号により露光パターンの照射位置を補正する手段であると、ワークの状態の検出のために周回機構の動作を停止する必要がなく、露光ユニットの制御が煩雑にならない。
また、載置作業位置と露光エリアとの間の周回路上でワークまでの距離をオートフォーカス用センサが計測してその結果で投影光学系をオートフォーカス制御する構成では、ワークに対してより鮮明な露光パターンが照射されるので、より精度の高い露光が行えるようになる。この際、周回路上を移動中のワークまでの距離をオートフォーカス用センサが計測する構成では、距離の計測のために周回機構の動作を停止する必要がなく、露光ユニットの制御が煩雑にならない。
また、ワーク載置部に載置されたワークを少なくとも露光エリアを通過する際に当該ワーク載置部に吸着する構成では、ワークに反り等の変形があった場合でも変形が解消された状態で露光がされる。このため、より精度の高い露光処理が行えるようになる。
また、アライメント用センサによる状態検出の時点から露光エリアを通過するまでワークがワーク載置部に吸着される構成では、搬送の途中で位置がずれてしまうことで露光パターンの照射位置の精度が低下してしまうことがなくなる。このため、この点でより精度の高い露光処理が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態の直描式露光装置の正面概略図である。
【
図2】実施形態の直描式露光装置の平面概略図である。
【
図3】実施形態の直描式露光装置における露光ユニットの概略図である。
【
図4】露光エリアについて示した斜視概略図である。
【
図5】搬送系が備える周回機構の斜視概略図である。
【
図6】各ステージの連結構造について示した斜視概略図である。
【
図7】吸着機構によるワークの吸着について示した側断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この出願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1及び
図2は、実施形態の直描式露光装置の概略図であり、
図1は正面概略図、
図2は平面概略図である。
図1及び
図2に示す直描式露光装置は、露光エリアに露光パターンの光を照射する露光ユニット1と、露光エリアを通してワークWを搬送する搬送系2とを備えている。
ワークWは、この実施形態では板状となっている。より具体的には、この実施形態では、直描式露光装置はプリント基板製造用の装置となっており、したがってワークWはプリント基板用の基板である。プリント基板についてはシート状の柔らかい基板も知られているが、この実施形態ではポリイミド等の樹脂で形成されたリジッドな基板となっている。
【0016】
図3は、実施形態の直描式露光装置における露光ユニット1の概略図である。
図3に示すように、露光ユニット1は、光源11と、光源11からの光を空間的に変調する空間光変調器12と、空間光変調器12により変調された光による像を露光エリアに投影する光学系(以下、投影光学系)13とを備えている。
【0017】
光源11は、ワークWにおける感光層の感光波長に応じて最適な波長の光を出力するものが使用される。レジストフィルムの感光波長は可視短波長域から紫外域である場合が多く、光源11としては、405nmや365nmのような可視短波長域から紫外域の光を出力するものが使用される。また、空間光変調器12の性能を活かすには、コヒーレントな光を出力するものであることが好ましく、このためレーザー光源が好適に使用される。例えば、窒化ガリウム(GaN)系の半導体レーザーが使用される。
【0018】
空間光変調器12としては、この実施形態ではDMDが使用されている。前述したように、DMDでは、各画素は微小なミラー(
図2中不図示)である。ミラー(以下、画素ミラーという。)は、例えば13.68μm角程度の正方形のミラーであり、多数の画素ミラーが直角格子状に配列された構造とされる。配列数は、例えば1024×768個である。
【0019】
空間光変調器12は、各画素ミラーを制御する変調器コントローラ121を備えている。実施形態の直描式露光装置は、全体を制御する主制御部9を備えている。変調器コントローラ121は、主制御部9からの信号に従い各画素ミラーを制御する。尚、各画素ミラーは、各画素ミラーが配列された平面を基準面とし、この基準面に沿った第一の姿勢と、この基準面に対して例えば11~13°程度に傾いた第二の姿勢とを取り得るようになっている。この実施形態では、第一の姿勢がオフ状態であり、第二の姿勢がオン状態である。
空間光変調器12は、各画素ミラーを駆動する駆動機構を含んでおり、変調器コントローラ121は、各画素ミラーについて、第一の姿勢を取るのか第二の姿勢を取るのかを独立して制御できるようになっている。このような空間光変調器12は、テキサス・インスツルメンツ社から入手できる。
【0020】
図3に示すように、露光ユニット1は、このような空間光変調器12に光源11からの光を照射する照射光学系14を備えている。この実施形態では、照射光学系14は光ファイバ141を含んでいる。より高い照度で像形成を行うため、一つの露光ユニット1は複数の光源11を備えており、各光源11について光ファイバ141が設けられている。光ファイバ141としては、例えば石英系のマルチモードファイバが使用される。
【0021】
DMDである空間光変調器12を使用して精度の良い像形成を行うためには、平行光を入射させて各画素ミラーに反射させるのが望ましく、また各画素ミラーに対して斜めに光を入射させることが望ましい。このため、照射光学系14は、
図3に示すように、各光ファイバ61から出射して広がる光を平行光にするコリメータレンズ142と、空間光変調器12に光を斜めに入射させるための反射ミラー143とを備えている。「斜めに」とは、空間光変調器12の基準面に対して斜めにということである。基準面に対する入射角でいうと、例えば22~26°程度の角度とされる。
【0022】
投影光学系13は、二つの投影レンズ群131,132と、投影レンズ群131,132の間に配置されたマイクロレンズアレイ(以下、MLAと略す。)133等から構成されている。MLA133は、より形状精度の高い露光を行うため、補助的に配置されている。MLA133は、微小なレンズを直角格子状に多数配列した光学部品である。各レンズ素子は、空間光変調器12の各画素ミラーに1対1で対応している。
【0023】
上述した露光ユニット1において、光源11からの光は、光ファイバ141で導かれた後、照射光学系14により空間光変調器12に入射する。この際、空間光変調器12の各画素ミラーは、変調器コントローラ121により制御され、形成すべき露光パターンに応じて選択的に傾斜した姿勢とされる。即ち、形成すべき露光パターンに従い、光を露光エリアに到達させるべき位置に位置している画素ミラーは第二の姿勢(オン状態)とされ、それ以外の画素ミラーは、第一の姿勢(オフ状態)とされる。オフ状態の画素ミラーに反射した光は露光エリアに到達せず、オン状態の画素ミラーに反射した光のみが到達する。このため、所定の露光パターンの光が露光エリアに照射される。
【0024】
主制御部9からは、所定の露光パターンが達成されるよう各変調器コントローラ121に制御信号が送られる。制御信号は、各画素ミラーを駆動するシーケンスである。主制御部9には、所定の露光パターンを達成するため、各変調器コントローラ121に送る各シーケンスを含むプログラム91が主制御部9の記憶部900に記憶されている。以下、このプログラムを露光パターンプログラム91という。露光パターンプログラム91は、どのような回路をワークWに形成するかという設計情報を元に予め作成され、主制御部9の記憶部900に記憶されている。
【0025】
このような露光ヘッド1は、複数設けられている。
図2に示すように、この実施形態では8個の露光ヘッド1が設けられている。8個の露光ヘッド1により、全体として一つの露光パターンが形成される。尚、各露光ヘッド1は、同じ構成である。
露光エリアについて、
図4を参照して補足する。
図4は、露光エリアについて示した斜視概略図である。
図4において、1個の露光ヘッド1で光が照射され得る領域(以下、個別エリアという。)Eが四角い枠で示されている。個別エリアEの集まりが、露光エリアである。
【0026】
ワークWは
図4中矢印で示す方向(搬送方向)に移動しながら、各個別エリアEで光照射を受ける。この際、二列の露光ヘッド1は互いにずれて配置されているので、搬送方向に垂直な水平方向においても、隙間無く露光が行われる。
実際には、各個別エリアE内は、微小な照射パターン(以下、微小パターンという。)の集まりとなっている。1個の微小パターンは、1個の画素ミラー31によるパターンである。ステージ3に載置されたワークWがステージ3の移動に伴って露光エリアを移動するが、その移動のタイミングに合わせて所定のシーケンスで微小パターンのオンオフがされる。これにより、所望の露光パターンがワークWに形成される。
【0027】
次に、搬送系2について説明する。
この実施形態の直描式露光装置の大きな特徴点は、ワークWが載置される部材(ワーク載置部)を無終端状の周回路に沿って周回させる周回機構21を採用している点である。具体的に説明すると、この実施形態では、ワーク載置部はステージ3となっている。ステージ3は、高さの低い台状の部材である。周回機構21は、
図1に示すように、鉛直な面内でステージ3を周回させる機構である。
【0028】
図5は、搬送系2が備える周回機構21の斜視概略図である。
図6は、各ステージの連結構造について示した斜視概略図である。以下の説明において、周回路のうち、各ステージ3の進行方向を前後方向とし、これに垂直な水平方向を左右方向とする。
図1及び
図5に示すように、多数のステージ3が無終端状の周回路に沿って並べられている。
図5では図示が省略されているが、
図6に示すように各ステージ3は連結具31によって互いに連結されている。各ステージ3は、前後に連結部32を有している。各連結部32は、ステージ3から前方、後方に延びる部位である。連結部32は左右に設けられており、計四つ設けられている。連結具31は、この実施形態では連結ピンとなっている。各連結部32はピン挿通孔が形成されており、ピン挿通孔に連結ピンを挿通することで各ステージ3は連結されている。
各ステージ3において、後ろ側の連結部32は一対のものであり、前側の連結部32は1個のものである。各ステージ3は、前側の連結部32が前方のステージ3の後ろ側の連結部32の間に挿入されており、その状態で連結具31により連結されている。
【0029】
図5に示すように、周回機構21は、一対の駆動輪22と一対の従動輪23とを備えている。一対の駆動輪22は、周回路において前側に配置されている。一対の駆動輪22は、左右に延びる駆動軸221に固定されており、駆動軸221には、不図示の駆動源が接続されている。一対の従動輪23は、周回路において後ろ側に配置されている。一対の従動輪23は、左右に延びる従動軸231に固定又は連結されている。
【0030】
各ステージ3は、左右方向の側部に複数の噛み合い孔34が形成されている。
図5に示すように、各駆動輪22及び各従動輪23は、ギヤ状となっており、噛み合い歯を有する。各噛み合い孔34は各噛み合い歯に適合する寸法形状となっている。一対の駆動輪22が不図示の駆動源によって駆動されて回転すると、各噛み合い歯が各噛み合い孔34に順次噛み合い、連結されている各ステージ3を周回路に沿って移動させる。この際、従動輪23の各噛み合い歯も各噛み合い孔34に順次噛み合いながら従動する。このようにして、各ステージ3は周回路に沿って周回する。
【0031】
一方、
図1及び
図2に示すように、周回機構21の後方にはローダ4が設けられており、周回機構21の前方にはアンローダ5が設けられている。ローダ4は、ワークWをステージ3に載置する機構であり、アンローダ5は、露光されたワークWをステージ3から回収する機構である。
【0032】
ローダ4が設置された場所には、搬入コンベア40が位置している。ローダ4は、吸着パッド41を有する搬入ハンド42と、搬入ハンド42を上下及び前後左右に移動させる搬入側ハンド駆動機構43とを備えている。吸着パッド41は、下方に向いた姿勢で複数設けられており、真空吸引によりワークWを吸着して保持することが可能となっている。
アンローダ5が設置された場所には、次の工程にワークWを送るための搬出コンベア50が位置している。アンローダ5も、ローダ4と同様、吸着パッド51を有する搬出ハンド52と、搬出ハンド52を上下及び前後左右に移動させる搬出側ハンド駆動機構53とを備えている。
【0033】
上記説明から解るように、各ステージ3は周回機構21によって周回するが、ワークWがステージ3に載置されているのは、
図1に示す周囲路のうちの上側部分を移動している間である。この間にワークWは露光エリアを通過し、露光が行われる。以下、この周回路の上側部分を主搬送路と呼ぶ。また、ローダ4がワークWの載置動作を行う位置を載置作業位置と呼び、アンローダ5がワークWの回収動作を行う位置を回収作業位置と呼ぶ。
【0034】
尚、周回機構21による各ステージ3の周回移動の速度は、各露光ユニット1が行う露光によって律速される速度である。即ち、上述したように、各露光ユニット1のために各露光パターンプログラム91が実装されているが、ここでの各画素ミラーのオンオフのシーケンスは、ワークWが一定の速度で移動することを前提としている。そして、その速度は、必要な露光量との関係で予め定められており、それを前提に各露光パターンプログラム91がプログラミングされている。そして、周回機構21に対しては、この一定の速度で周回を行うよう制御信号が送られる。
【0035】
このような実施形態の直描式露光装置は、露光処理のパターン精度を高めるための手段が設けられている。具体的には、露光エリアに搬送される際のワークWの状態に応じて露光パターンを補正するアライメント手段と、投影光学系13を制御して露光パターンを鮮明にするオートフォーカス手段とが設けられている。
まず、アライメント手段について説明すると、アライメント手段として、プリアライメント手段と、本アライメント手段とを含んでいる。プリアライメント手段は、本アライメントのためにワークWの載置位置を調整する手段である。本アライメント手段は、ワークWの状態に応じて露光パターンを補正する手段である。
【0036】
図1に示すように、主搬送路上には、アライメント用センサが設けられている。この実施形態では、アライメント用センサは、撮像素子61となっている。ワークWにはアライメントマークが複数設けられており、各アライメントマークを撮像する位置にそれぞれ撮像素子61が設けられている。
【0037】
プリアライメント手段は、この実施形態では機構的にアライメントを行う手段となっている。プリアライメントの目的は、ワークWが主搬送路上に沿って搬送された際、各アライメントマークが撮像素子61の視野(撮像可能範囲)に入るようにすることである。図示は省略されているが、プリアライメント手段は、所定の位置に所定の姿勢で固定された当て板を含んでいる。当て板は、例えば90度を成す帯板状の部材であり、幅方向を鉛直方向にして配置される。プリアライメントは、搬入ハンド42を使用して行われる。即ち、搬入ハンド42は、ワークWを保持した際、当て板に当接させ、その状態でワークWを所定の位置関係で保持し直す。これによりプリアライメントが行われる。
【0038】
尚、
図1に示すように、撮像素子61は、主搬送路の上方に位置している。この位置は、主搬送路上を移動してきたワークWのアライメントマークが視野に入る位置である。言い換えれば、主搬送路上を移動した際にアライメントマークが撮像素子61の視野の範囲内に入るようにワークWがプリアライメント手段によりプリアライメントされるということである。
【0039】
本アライメントは、撮像素子61からワークWの状態を判断し、それに応じて露光パターンを変更する動作である。「ワークWの状態」には、各露光ユニット1に対するワークWの位置が含まれる。即ち、ワークWが露光エリアを通過する際、その位置に応じて露光パターンの形成位置(露光パターンの光の照射位置)を変更する。つまり、露光エリアを通過する際のワークWの位置が基準位置からどの程度どの方向にずれているかを撮像素子61からのデータで判断し、それに合わせて露光パターンの形成位置を変更する。露光パターンの形成位置の変更は、露光パターンプログラム91の変更(書き換え)という形で行われる。本アライメント手段は、主制御部9に実装された露光パターン書き換えプログラム62を含んでいる。露光パターン書き換えプログラム62は、各撮像素子61からのデータを処理し、露光パターンの形成位置を算出してその結果で露光パターンプログラム91を書き換えるようプログラミングされている。尚、撮像素子61は、主搬送路上を移動中のワークWのアライメントマークを撮像するので、実際には、動画データの中から適宜の静止画のデータを抽出し、それを処理することでワークWの位置の基準位置からのずれが求められる。
【0040】
主制御部9には、装置の各部を所定のシーケンスで動作させるための露光シーケンスプログラム90が実装されている。露光パターン書き換えプログラム62は、各撮像素子61から信号が出力されるたびに露光シーケンスプログラム90から呼び出されて実行される。
【0041】
次に、オートフォーカス手段について説明する。
オートフォーカス手段は、オートフォーカス用センサ63と、オートフォーカス用センサから63の信号に応じて投影光学系3の制御信号を生成するオートフォーカスプログラム64とを備えている。オートフォーカス手段は、露光エリアを通過する際の投影光学系13からワークWまでの距離(光軸方向の距離)に応じて投影光学系13を制御する手段である。この実施形態では、オートフォーカス用センサ63は、露光エリアの手前の主搬送路上に配置された距離計である。レーザー干渉を利用するレーザー距離計等が、オートフォーカス用センサ63として使用される。オートフォーカス用センサ63は、主搬送路の上方に配置されており、露光エリアに達する少し手前の位置でワークWとの距離を計測する。
【0042】
主制御部9には、投影光学系13に含まれる各投影レンズ群131,132の焦点距離とオートフォーカス用センサ63からの信号に応じて各投影レンズ群131,132の配置位置を決定するオートフォーカスプログラム64が実装されている。オートフォーカスプログラム64は、オートフォーカス用センサ63からの信号が主制御部9に入力されるたびに露光シーケンスプログラム90によって呼び出されて実行される。オートフォーカスプログラム64の実行結果は、各投影レンズ群131、132の配置位置のデータであり、露光シーケンスプログラム90はこれを制御信号として投影光学系13に送る。投影光学系13は、各投影レンズ群131,132の配置位置を変更する不図示の駆動機構を含んでおり、送られた制御信号に従って各投影レンズ群131,132の配置位置が変更される。
【0043】
このような実施形態の直描式露光装置は、少なくともワークWが露光エリアを通過する際にワークWをワーク載置部に吸着する吸着機構7を備えている。吸着機構7は、吸着ボックス71と、吸着ボックス71内を排気する排気系72とを備えている。
図7は、吸着機構7によるワークWの吸着について示した側断面概略図である。
図1に示すように、吸着ボックス71は、周回路内に配置されており、主搬送路の下側に位置している。吸着ボックス71の長さは、載置作業位置と露光エリアを少し過ぎた位置との間に亘る長さとなっている。
【0044】
各吸着ステージ3は、多数の真空吸着孔30を有している。
図7に示すように、吸着ボックス71は、上側が開口となっており、主搬送路に位置した吸着ステージ3の下側でほぼ閉じた空間を形成するものとなっている。吸着ボックス71は、排気ブロア又は排気ポンプ等の排気源に排気管を介して接続されており、排気源が動作すると、吸着ボックス71内は負圧(真空)となる。このため、上側に位置するステージ3上のワークWは、当該ステージ3に吸着される。
各ステージ3は、主搬送路上を移動するため、吸着ボックス71の上端と各ステージ3の下面との間には、隙間Cが形成されている。この隙間Cは、1~5mm程度とすることが好ましい。5mmより大きいと、十分な負圧が得られず、ワークWの吸着が不十分となる。1mmより小さいと、周回機構21の構成として非常に高い精度が要求されてしまい、不必要に高価な機構となってしまう。
【0045】
尚、この実施形態の直描式露光装置は、ワークWの両面に露光を行うプロセスに使用されており、次の工程は、反対側の面の露光となっている。したがって、
図1に示すように、搬出コンベア50に隣接して反転機81が設置されている。反転機81は、ワークWを上下に挟持し、上下を逆転させる機構である。そして、反転機構81の先には、同様の構成を有する別の直描式露光装置が設置されている。
【0046】
このような直描式露光装置は、クリーンルーム内に設置されることが想定されているが、この実施形態では特にクリーンベンチ機構82とともに設置されている。クリーンベンチ機構82は、装置の上方に配置され、清浄なエアをダウンフローさせる機構となっている。この点は、搬送系2が駆動輪22や従動輪23のような機構的な駆動部分や連結部分を含んでおり、発塵がし易いことを考慮したものである。発塵がし易い箇所は、搬送されるワークWよりも下方に位置しているため、上方からのフローによって塵がワークWに付着しないようにしている。
【0047】
次に、実施形態の直描式露光装置の動作について説明する。
実施形態の直描式露光装置において、装置の稼働中、周回機構21は、各ステージ3を定速で周回させている。ここでの定速は、上述したように各露光ユニット1による各露光との関係で律速される速度である。
ワークWが搬入コンベア40で載置作業位置に運ばれると、ローダ4がワークWをステージ3に載置する。この際、プリアライメント手段が動作し、ワークWのプリアライメントを行う。このため、プリアライメントされた状態でステージ3に載置される。尚、
図1に示すように、この実施形態では、搬送方向におけるワークWの長さは、同方向におけるステージ3の長さよりも短くなっている。このため、ワークWは、前後の複数のステージ3にまたがって載置される。
【0048】
ステージ3に載置されたワークWは、周回機構21によるステージ3の移動によって主搬送路に沿って搬送される。そして、撮像素子61の下方を通過した際、撮像素子61によってアライメントマークが撮像される。また、オートフォーカス用センサ63の下方を通過した際、オートフォーカス用センサ63がワークWとの距離を計測する。
そして、撮像素子61の出力は主制御部9に入力され、露光パターン書き換えプログラム62が実行されて各露光パターンプログラム91が書き換えられる。また、オートフォーカス用センサ63の出力も主制御部9に入力され、制御信号が各投影光学系13に送信されて各投影レンズ群131,132の配置位置が調整される。
【0049】
この状態で、当該ワークWが露光エリアに達すると、各露光パターンプログラム91により各露光ユニット1内の空間光変調器12が制御され、露光エリアをワークWが通過する際に所定の露光パターンで露光が行われる。引き続き周回機構21は定速で動作を続け、ワークWは露光エリアを過ぎて回収作業位置に達すると、そのタイミングでアンローダ5が動作し、ワークWを搬出ステージ3から回収して搬出コンベア50に移載する。そして、搬出コンベア50はワークWを反転機構81に搬出し、反転機構81はワークWを裏返して保持し直し、裏側の面の露光のため、隣接している不図示の別の直描式露光装置に送る。
【0050】
一方、搬入コンベア40には次のワークWが搬入されており、並行して同様の動作が繰り返される。即ち、プリアライメントをした上でのステージ3への載置、主搬送路上を移動しながらの撮像素子61による撮像とオートフォーカス用センサ63による距離計測、そして露光エリアを通過する際の露光が同様に行われる。このようにして周回機構21が一連のステージ3を定速で周回させながら、ローダ4が一つずつワークWを載置し、各ワークWは露光エリアを順次通過して露光が行われる。
【0051】
実施形態の直描式露光装置では、上記のように無終端状の周回路に沿ってステージ3が周回し、ステージ3が載置作業位置に位置したタイミングで当該ステージ3へのワークWの載置動作が行われる。そして、当該ステージ3が露光エリアを通過する際に露光が行われ、その後、回収作業位置に達した際に当該ステージ3からワークWが回収される。このようなシンプルな動作を行うシンプルな機構であるので、装置コストの低減が可能となる。また、タクトタイムを律速するのは各露光ユニット1における露光であって、ワークWの搬送動作によって律速がされることはない。このため、高い生産性で露光プロセルを実行できる実用的な装置が提供される。
【0052】
尚、撮像素子61の撮像結果による露光パターンプログラム91の書き換えは、撮像素子61がワークWの検出をした時点で位置がずれていれば、露光エリアを通過する際にも同様にずれているという前提に立っている。この場合、撮像素子61による撮像位置でのずれ(量と方向)と露光エリアを通過する際のずれとが全く同じであるとして補正を行う場合もあるが、再現性のある異なるずれであるとして補正をする場合もある。即ち、検出素子61によるずれが露光エリアを通過する際の相関性を予め調べておき、それを考慮して露光パターンプログラムを書き換える場合もある。
上記の点は、オートフォーカス手段についても同様である。オートフォーカス用センサ63が計測した距離をそのまま使用して投影光学系13を制御する場合の他、距離の変化に再現性があるとして制御する場合もあり得る。即ち、オートフォーカス用センサ63の下方を通過する際の距離と露光エリアを通過する際の距離に相違があるが、その相違の仕方に再現性があれば、それを予め調べておき、それを加味してオートフォーカス用の制御信号を生成する場合もあり得る。
【0053】
上記の例では、本アライメントは、露光パターンの光の照射位置のアライメント(位置合わせ)であったが、露光パターンの形状自体を補正することもあり得る。例えば、ワークWの形状が多少歪んでいる際にその歪みに合わせて最適な露光パターンで露光を行うこともあり得る。ワークWの歪みは、複数のアライメントマークを撮像してその画像データを処理することで判断でき、その結果に従って露光パターン書き換えプログラム62が露光パターンプログラム91を書き換えるようにする。歪みの他、ワークWの寸法が多少異なっている場合にそれに対応して露光パターンを補正することもあり得る。ワークWの寸法が基準値と異なっていることは、複数のアライメントマークを撮像して両者の距離を基準値と比較することで知り得る。したがって、その結果で露光パターン書き換えプログラム62が露光パターンの拡大又は縮小を行い、その上で露光を行うこともあり得る。
また、
図1ではオートフォーカス用センサ63は1個のみ示されているが、実際には、複数個のオートフォーカス用センサ63が設けられている。各オートフォーカス用センサ63による距離の計測結果が異なる場合があり得るが、その場合は、計測点の間の距離については計測結果から演算(例えば平均を取る)により算出する。
【0054】
尚、上記実施形態において、ステージ3に対してワークWを吸着する吸着機構7が設けられている点は、ワークWの位置ずれを防止して位置精度の高い露光を可能にする意義がある。即ち、撮像素子61がアライメントマークを撮像した後にワークWがずれると露光位置の精度低下に直結するが、この実施形態ではワークWはステージ3に吸着されているので、そのような問題はない。したがって、ワークWの吸着は、少なくとも撮像素子61によるアライメントマークの検出位置と露光エリアとの間においてされていれば足りる。但し、プリアライメントの後に位置ずれが生じてアライメントマークが撮像素子61の検出可能範囲を外れてしまうとアライメント不能になってしまうので、プリアライメントの作業位置から露光エリアとの間においてワークWの吸着がされることがより好ましい。
【0055】
さらに、ワークWの吸着は、ワークWに反り等がある場合にも形状精度の高い露光を可能にする意義もある。例えば、ワークWがリジッドなプリント基板である場合、僅かな反り等の変形が生じている場合もある。この場合、ワークWがステージ3に対して十分な力で吸着されていると、ステージ3に対する密着によって変形が解消し、その状態で露光が行える。このため、変形に関わらず露光精度が低下することがなくなる。この目的では、少なくとも露光領域を通過する際、ワークWはステージ3に吸着されていれば足りる。
【0056】
尚、ワークWにアライメントマークが形成されていない場合もあり、撮像素子61がアライメントマーク以外のものを撮像する場合もあり得る。例えば、アライメントマークは、ワークW上に既に形成されている回路パターンを撮像してアライメント用の信号を出力する場合や、ワークW自体の輪郭を撮像してアライメント用の信号を出力する場合もあり得る。
【0057】
上記実施形態では、ワーク載置部としてステージ3が使用されたが、この点は柔軟性のない部材とすることで露光精度を高める意義がある。ワーク載置部は、露光の際にワークWの姿勢を最適な姿勢となるようにする部材であるから、ワークWが露光エリアを通過する際に露光ヘッドの光軸に対して垂直で平坦な姿勢である必要がある。このためには、柔軟性のない部材を採用し、周回の際に光軸に対して垂直となるように周回機構21を構成することが簡便である。即ち、柔軟性のない部材であるステージ3をワーク載置部として採用することは、露光の際のワークWの姿勢を保持するために構成をシンプルにする意義がある。
【0058】
柔軟性のある部材とワーク載置部として使用することも可能であり、例えばフレキシブルなベルトのワーク載置部として使用することもできる。ステンレスのようなスチール製の搬送用のベルトが市販されており、発塵も少ないので好適に使用することができる。この他、フッ素樹脂のような樹脂製の搬送ベルトも使用され得る。
【0059】
周回機構21における駆動輪22や従動輪23の構成としては、前述したように噛み合い歯による噛み合いの他、摩擦力によってワーク載置部を周回させる構成もあり得る。上記柔軟性のある部材をワークの場合に、特にあり得る構成である。さらに、駆動部分とワーク載置部との間の力の伝達については、磁力を使用する場合もあり得る。即ち、駆動輪とワーク載置部とを磁力でカップリングさせておき、駆動輪を回転させることでワーク載置部を周回させる構成も採用され得る。
【0060】
尚、露光エリアにおいて露光ヘッドの光軸に対して垂直で平坦な姿勢とするには、周回機構21においてテンション調整をすることが好ましい。例えば、上記のようなフレキシブルな部材をワーク載置部として使用する場合、露光エリアを通過する際に弛みが生じると、ワークWの姿勢が変化してしまい露光精度が低下してしまう。したがって、少なくとも露光エリアを通過する際にはワーク載置部に適度なテンションが印加されていることが好ましい。このための構成としては、従動輪23に対して適度な逆向きのトルクを与えることで達成できる。即ち、駆動輪22が回転してワーク載置部を引っ張る際に従動輪23に逆向きのトルクを与え、それに抗して駆動輪22が回転するように構成する。
【0061】
上記構成は、ステージ3のような柔軟性のないワーク載置部を連結した構造の場合にも効果的である。柔軟性のない部材を連結した構造では、連結部分でバックラッシュがあり得る。このバックラッシュの影響で露光エリアにおいてワーク載置部が僅かに傾いてしまい、そのために露光精度が低下してしまう場合があり得る。これを防止するには、同様に従動輪23に逆向きのトルクを印加し、両側からワーク載置部を引っ張った状態とすれば良い。
【0062】
尚、上述した直描式露光装置の動作において、周回機構21は定速で各ステージ3を周回させており、装置が正常に動作している間は特に移動が停止するということはない。但し、必要に応じて適宜のタイミングで停止するシーケンスが採用されることもあり得る。例えば、ワークWをプリアライメントしてのステージ3への載置の際、停止していた方がやり易い場合があり、その場合には周回機構21の動作を一時的に停止することもあり得る。プリアライメントされた状態でワークWを載置した後、周回機構21は動作を再開する。また、撮像素子61による撮像の際にも停止していた方が良い場合もあり、その場合には移動を一時的に停止する場合もある。このように移動を一時的に停止する場合、そのタイミングではワークWは露光エリアに位置しないようにする。露光エリアに位置してしまうと、露光時間(光量)の制御が難しくなるからである。逆に言えば、ワークWが停止しない構成は、露光ユニット1における空間光変調器12の制御が煩雑にならないという意義を有する。
【0063】
上記実施形態において、アライメントの構成は適宜変更される。例えば、プリアライメントだけで必要な位置精度が確保される場合、本アライメントは行われず、撮像素子61等は設けられない。
また、オートフォーカス手段についても、搬送系2の精度が十分に高ければ不要とされることもあり得る。即ち、投影光学系13の焦点深度や必要な露光コントランスとの関係で、搬送系2がワークWを十分に水平に搬送できる機構であれば、オートフォーカス手段が不要とされることもあり得る。
【0064】
尚、上記実施形態では複数の露光ユニット1が設けられていたが、露光ユニット1が1個のみの場合もあり得る。また、片面のみの露光プロセスの場合、反転機構81は設けられず、隣接した別の直描式露光装置も設けられない。
また、ワークWとしては、リジッドな板状の他、フレキシブルなシート状の部材である場合もある。典型的にはフレキシブルプリント基板である。
さらに、露光プロセスとしてはプリント基板のような回路形成を目的とする場合以外に、MEMSのように機構的な微細構造を造り込む目的で露光が行われる場合もあり、上記構成の直描式露光装置はこのような種々の用途に利用され得る。
【符号の説明】
【0065】
1 露光ユニット
2 搬送系
21 周回機構
22 駆動輪
23 従動輪
3 ステージ
4 ローダ
5 アンローダ
61 撮像素子
62 露光パターン書き換えプログラム
63 オートフォーカス用センサ
64 オートフォーカスプログラム
7 真空吸着機構
71 吸着ボックス
81 反転機構
82 クリーンベンチ機構
9 主制御部
90 露光シーケンスプログラム
W ワーク