(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】蓄電システム及び温度管理方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20221219BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20221219BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221219BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20221219BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221219BHJP
H01M 10/63 20140101ALI20221219BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20221219BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221219BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20221219BHJP
B60L 50/60 20190101ALN20221219BHJP
B60L 58/18 20190101ALN20221219BHJP
B60L 58/26 20190101ALN20221219BHJP
B60L 58/27 20190101ALN20221219BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/44 P
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/63
H01M10/6554
H02J7/00 A
H02J7/02 H
B60L50/60
B60L58/18
B60L58/26
B60L58/27
(21)【出願番号】P 2019113689
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘行
(72)【発明者】
【氏名】野村 富二夫
(72)【発明者】
【氏名】景山 登茂美
(72)【発明者】
【氏名】安田 武司
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/049662(WO,A1)
【文献】特開2016-219146(JP,A)
【文献】特開2006-050763(JP,A)
【文献】特開2003-323918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42 - 10/48
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/52 - 10/667
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン二次電池を蓄電池セルとする複数の蓄電モジュールを直列接続した単位蓄電ユニットを直並列して負荷に電力を供給する蓄電ユニット群と、
前記蓄電ユニット群に充電電流を供給する充電装置と、
前記蓄電ユニット群の単位蓄電ユニットから個々の蓄電モジュール内の温度情報を収集し、収集された温度情報から規定範囲外となる温度の蓄電池セルを特定し、該当する蓄電池セルの温度が規定範囲内に収まるように温度制御を行う温度管理装置と
を具備する蓄電システム。
【請求項2】
前記温度管理装置は、予め前記蓄電池セルの特性に合わせた上限温度閾値と下限温度閾値を設定し、その設定温度閾値の範囲内に収まるように前記温度制御を行う請求項1記載の蓄電システム。
【請求項3】
前記複数の蓄電モジュールは、それぞれ内部の蓄電池セル毎の温度情報を取得する管理ユニットを備え、
前記温度管理装置は、前記複数の蓄電モジュールそれぞれの管理ユニットで取得される温度情報を収集する請求項1記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記単位蓄電ユニットは、前記複数の蓄電モジュールそれぞれの冷却及び加熱を行う熱制御プレートを備え、
前記温度管理装置は、前記複数の蓄電モジュールそれぞれの熱制御プレートに冷却、加熱の指示を送って前記温度制御を行う請求項1記載の蓄電システム。
【請求項5】
前記温度管理装置が規定範囲外となる温度の蓄電池セルを特定し、該当する蓄電池セルの温度が規定範囲内に収まるように温度制御を行っても、前記蓄電池セルの温度が許容範囲を超える場合に異常発生時の処理を実行する異常検出処理装置を備える請求項1記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記温度管理装置は、負荷の動作状態に応じて温度制御範囲を変更する請求項1記載の蓄電システム。
【請求項7】
リチウムイオン二次電池を蓄電池セルとする複数の蓄電モジュールを直列接続し、負荷の要求に合わせて直並列接続される単位蓄電ユニットから、個々の蓄電モジュール内の温度情報を収集し、収集された温度情報から規定範囲外となる温度の蓄電池セルを特定し、該当する蓄電池セルの温度が規定範囲内に収まるように温度制御を行う蓄電システムの温度管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システム及び温度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電システムにあっては、産業用の分野(例えば鉄道車両用車上電源装置、船舶用船上電源装置、水上艦船用高出力電源装置、高出力装備品用電源装置、各種発射装置用電源装置)で、短時間(数秒から数分)に必要なエネルギー(電力)を出力するための高入出力特性と、長時間に渡って運用するための大容量の双方を兼ね備えたニーズが高まってきている。
【0003】
これに対して、従来の蓄電システムは、一般に、コンデンサや鉛蓄電池を蓄電素子として使用している。コンデンサは、高入出力特性に優れているが、容量に限界がある。また、鉛蓄電池は、容量は大きいが、高出力蓄電素子としての特性に限界があり、実現するためには高入出力化した蓄電モジュールが必要である。また、高出力化すればするほど蓄電モジュールの高温化と低温時の即応性及び蓄電池セル間の温度のばらつきによる性能劣化が問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態の課題は、高入出力特性と大容量の双方を兼ね備え、運用モードに応じた温度管理を行って高入出力特性を十分に発揮し、蓄電池セル間の温度のばらつきを抑えて蓄電池セルの性能劣化を防止することのできる蓄電システム及び温度管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る蓄電システムは、蓄電ユニット群と、充電装置と、温度管理装置とを備える。蓄電ユニット群は、リチウムイオン二次電池を蓄電池セルとする複数の蓄電モジュールを直列接続した単位蓄電ユニットを直並列して負荷に電力を供給する。充電装置は、蓄電ユニット群に充電電流を供給する。温度管理装置は、蓄電ユニット群の単位蓄電ユニットから個々の蓄電モジュール内の温度情報を収集し、収集された温度情報から規定範囲外となる温度の蓄電池セルを特定し、該当する蓄電池セルの温度が規定範囲内に収まるように温度制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る蓄電システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態の
図1に示す蓄電ユニットを拡大して示すブロック図である。
【
図3】本実施形態の
図1に示すシステムコントローラの具体的な構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態の
図3に示すシステムコントローラにより蓄電システムの温度管理を行う手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は本実施形態における蓄電システムの構成を示すブロック図である。
図1において、11は電源制御装置、12は蓄電ユニット、13は負荷を示している。
【0010】
電源制御装置11は、システムコントローラ111と、DC/DCコンバータ112と、充電器113と、温度管理装置114を備える。
【0011】
システムコントローラ111は、外部のホスト装置(図示せず)と内部の蓄電ユニット12と信号伝送ラインで接続され、相互に信号を送受信し、その信号の持つ情報に基づいてシステム全体を総括的に制御する。
【0012】
DC/DCコンバータ112は、外部のUPS(Uninterruptible Power Supply)から直流電圧を受けてシステム全体の処理に必要な直流電圧に変換し出力する。
【0013】
充電器113は、ACまたはDCのバスラインを通じて交流または直流の電流を受け取り、充電に必要な直流電流を正極性ライン(+)、接地ライン(-)によるパワーラインに出力する。
【0014】
温度管理装置114は、蓄電ユニット12からの温度情報を監視してその温度が一定範囲に入るように制御する。
【0015】
蓄電ユニット12は、
図2に拡大して示すように、ユニット管理装置121とベースユニット122と拡張ユニット123を備える。
【0016】
ユニット管理装置121は、パワーラインの正極性ライン(+)、接地ライン(-)と接続するためのコンタクタA1,A2と、ユニット全体を流れる電流量を継続する電流センサA3と、個々の蓄電池セルの動作管理と安全管理を行うBMU/SSU(Battery Management Unit / Safety Supervisor Unit)A4を備える。
【0017】
ベースユニット122は、#1~#12の蓄電モジュールB101~B112と、遮断器B2及びヒューズB3を直列に接続して構成される。同様に、拡張ユニット123は、#13~#24の蓄電モジュールC101~C112と、遮断器C2及びヒューズC3を直列に接続して構成される。
【0018】
各ユニット122,123の蓄電モジュールB101~B112,C101~C112は、それぞれ内部に複数の蓄電池セルを直列接続したセル群と、各セルの温度情報を含む状態情報を取得してユニット管理装置121のBMU/SSUA4に通知するCMU(Cell Monitoring Unit)を備える。上記蓄電池セルは、高入出力タイプのリチウムイオン二次電池セルであり、複数セルを直列接続することで、コンデンサ並みの高入出力電池モジュールを実現することができる。
【0019】
遮断器B2は上位からの指示によりモジュール内直列回路を緊急遮断するもので、システム全体の事故をモジュール単位で防止することができる。ヒューズB3は、モジュール内直列回路に過電流が生じた場合に、この過電流に反応して回路を遮断し、他の回路への過電流を防止する。
【0020】
さらに、上記ベースユニット122及び拡張ユニット123は、モジュール配列部の近傍には熱制御プレートB4,C4が配置される。熱制御プレートB4,C4は、詳細は図示しないが、冷却液を循環させて温度を下げる冷却する液冷プレートとヒータによる発熱により温度を上げる発熱プレートを備える。そして、電源制御装置11の温度管理装置114に接続され、温度管理装置114からの指示に従ってモジュール配列部の温度を制御する。
【0021】
なお、上記構成による蓄電ユニット12は、図では1つだけ示しているが、パワーライン及び信号伝送ラインに並列接続することで、任意の容量を確保することができる。
【0022】
上記負荷13は、ここではドライブユニット131及び三相モータ132による駆動装置とし、短時間に高出力を要するものとする。
【0023】
図2は、上記電源制御装置11の具体的な構成を示すブロック図である。この電源制御装置11において、システムコントローラ111は、演算処理を実行するCPU111a、CPU111aの実行プログラムを格納するROM111b、CPU111aの演算処理の作業空間を実装するRAM111c、接続デバイスをCPU実行処理に従って制御するデバイスコントローラ111dを備え、それぞれをバス111eで接続して構成される。デバイスコントローラ111dは、DC/DCコンバータ112、充電器113、温度管理装置114を収容し、これらをCPU実行処理の管理下におく。
【0024】
すなわち、電源制御装置11は、システムコントローラ111の制御処理により、DC/DCコンバータ112によってシステム全体の処理に必要な直流電圧を供給し、充電器113によって蓄電ユニット12の出力状況を監視して充電電流を正極性ライン(+)、接地ライン(-)によるパワーラインに出力して蓄電ユニット12を充放電し、温度管理装置114によって蓄電ユニット12からの温度情報を監視してその温度が一定範囲に入るように制御する。
【0025】
図3は、上記温度管理装置114を用いて蓄電ユニット12の温度を制御する処理の内容を示すフローチャートである。
【0026】
まず、運用が開始されると、システムコントローラ111は、蓄電ユニット12の蓄電モジュールB101~B112,C101~C112に設けられたCMUで定期的に収集される蓄電池セル毎の温度情報をBMU/SSUA4を通じて取得し(ステップS11)、それぞれのセル温度が規定範囲内か否かを判定する(ステップS12)。その中で、一つでも温度が上限閾値以上のセルがある場合には、該当ユニットの熱制御プレートB4,C4に冷却を指示して、セル温度が上限閾値未満となるように制御する(ステップS13,S14)。また、一つでも温度が下限閾値以下のセルがある場合には、該当ユニットの熱制御プレートB4,C4に加熱を指示して、セル温度が下限閾値を超えるように制御する(ステップS15,S16)。上記ステップS12~S16の処理をシステムの運用が停止されるまで継続する(ステップS17)。
【0027】
すなわち、上記構成による蓄電システムでは、蓄電池セルにリチウムイオン二次電池を採用したことにより、コンデンサ並みの高入出力特性(体積パワー密度:W/L)、および鉛蓄電池を超える高容量(体積エネルギー密度:Wh/L)の双方を兼ね備えた蓄電ユニットが実現している。
【0028】
ここで、リチウムイオン二次電池は、温度が高温になると発火の恐れがあるため、60℃以下で使用されるように温度管理する。本実施形態では、上限閾値を例えば55℃に設定し、いずれかのセルがその上限閾値以上になった場合に、直ちに該当ユニットを冷却させ、その発熱を抑圧して発火の危険性を回避する。一方、リチウムイオン二次電池には、低温になるにつれて急激に入出力が低下する特性を有する。そこで、本実施形態では、下限閾値を例えば15℃に設定し、いずれかのセルがその下限閾値以下になった場合に、直ちに該当ユニットを加熱し、そのセル温度の低下を抑制して高入出力特性を維持する。
【0029】
以上のように、本実施形態に係る蓄電システムによれば、蓄電池セルにリチウムイオン二次電池を採用してモジュール化、ユニット化することで、コンデンサ並みの高入出力特性(体積パワー密度:W/L)、および鉛蓄電池を超える高容量(体積エネルギー密度:Wh/L)の双方を兼ね備えつつも、温度管理によって高温使用環境での発火の危険、低温使用環境での高入出力特性の低下を回避することができる。また、リチウムイオン二次電池の採用は、鉛蓄電池に比して軽量小型化が容易で、モジュール化及びユニット化における管理・制御も容易で、システム全体の小型化にも寄与することができる。この結果、体積パワー密度、体積エネルギー密度、出力特性(電圧及び電流)がいずれも良好な特性が得られるようになり、前述の産業用の分野において、特に鉄道車両用車上電源装置、船舶用船上電源装置、水上艦船用高出力電源装置、高出力装備品用電源装置、各種発射装置用電源装置等でのニーズに十分応えることが可能となった。
【0030】
なお、上記実施形態では、蓄電ユニットが1台の場合で説明したが、複数台の蓄電ユニットを並列に接続して大容量化を図った場合には、ユニット単位で温度管理を行うことで、全体をバランスよく運用することが可能となる。
【0031】
また、温度管理装置114において、いずれかのセルが上限閾値以上または下限閾値以下となり、該当ユニットの温度制御を行っても許容温度範囲を超える場合には、システムコントローラ111を通じてホスト装置に異常アラームを発して注意を促す。または即時に該当ユニットを切り離して発火の危険性を回避し、他のユニットへの影響を遮断する。
【0032】
また、例えば負荷13が稼働状態で高出力を要求している場合(高出力モード)と静止状態で低出力の場合(低出力モード)では、適正温度範囲が異なるため、温度管理の閾値をモード別に切り替えると効率を高めることができる。
【0033】
また、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0034】
11…電源制御装置、
111…システムコントローラ、111a…CPU、111b…ROM、111c…RAM、111d…デバイスコントローラ、111e…バス、
112…DC/DCコンバータ、
113…充電器、
114…温度管理装置、
12…蓄電ユニット、
121…ユニット管理装置、A1,A2…コンタクタ、A3…電流センサ、A4…BMU/SSU、
122…ベースユニット、B101~B112…蓄電モジュール(#1~#12)、B2…遮断器、B3…ヒューズ、B4…熱制御プレート、
123…拡張ユニット、C101~C112…蓄電モジュール(#13~#24)、C2…遮断器、C3…ヒューズ、C4…熱制御プレート、
13…負荷、131…ドライブユニット、132…三相モータ。