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特許7196038映像表示装置、及びそれを用いたヘッドマウントディスプレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】映像表示装置、及びそれを用いたヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20221219BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20221219BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/04 A
H04N5/64 511A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019153574
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021033076
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久野 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 竜志
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】内山 允史
(72)【発明者】
【氏名】毛利 考宏
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-109717(JP,A)
【文献】特開2018-116261(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087576(WO,A1)
【文献】特開2018-165815(JP,A)
【文献】特開2019-120815(JP,A)
【文献】特開2018-040818(JP,A)
【文献】特開2017-090561(JP,A)
【文献】特開2001-166252(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0250431(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109239926(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/02
G02B 27/01
G02B 5/04
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに映像を投射する映像表示装置であって、
該映像表示装置は、
映像光を生成する映像生成部と、
該映像生成部で生成された映像光を投射する投射光学部と、
該投射光学部で投射された映像光を複製して出射する映像光複製部と、
該映像光複製部で複製された映像光をユーザに投射する導光部を備え、
前記投射光学部は少なくとも1個の投射レンズを備え、
前記映像光複製部が映像光を複製する間隔は前記投射レンズの外径よりも小さく、
前記映像光複製部は入射する映像光の一部を反射し一部を透過する複数の部分反射面を有し、該複数の部分反射面は前記入射する映像光の光軸に対して斜めに配置されており、
前記映像光複製部は、映像光が入射する入射面と、前記複数の部分反射面と、複製した映像光を出射する出射面を備えたプリズムからなり、前記複数の部分反射面の間隔は前記投射レンズの外径よりも小さく、
前記映像光複製部は、前記入射面に近い第1の部分反射面と次に近い第2の部分反射面を有し、前記第2の部分反射面での反射光が全て前記第1の部分反射面を透過することを特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
ユーザに映像を投射する映像表示装置であって、
該映像表示装置は、
映像光を生成する映像生成部と、
該映像生成部で生成された映像光を投射する投射光学部と、
該投射光学部で投射された映像光を複製して出射する映像光複製部と、
該映像光複製部で複製された映像光をユーザに投射する導光部を備え、
前記投射光学部は少なくとも1個の投射レンズを備え、
前記映像光複製部が映像光を複製する間隔は前記投射レンズの外径よりも小さく、
前記映像光複製部は入射する映像光の一部を反射し一部を透過する複数の部分反射面を有し、該複数の部分反射面は前記入射する映像光の光軸に対して斜めに配置されており、
前記映像光複製部は、映像光が入射する入射面と、前記複数の部分反射面と、複製した映像光を出射する出射面を備えたプリズムからなり、前記複数の部分反射面の間隔は前記投射レンズの外径よりも小さく、
前記投射レンズの光軸が前記プリズムの中心軸に対して前記プリズムの出射方向とは逆方向に偏心して配置されていることを特徴とする映像表示装置。
【請求項3】
ユーザに映像を投射する映像表示装置であって、
該映像表示装置は、
映像光を生成する映像生成部と、
該映像生成部で生成された映像光を投射する投射光学部と、
該投射光学部で投射された映像光を複製して出射する映像光複製部と、
該映像光複製部で複製された映像光をユーザに投射する導光部を備え、
前記投射光学部は少なくとも1個の投射レンズを備え、
前記映像光複製部が映像光を複製する間隔は前記投射レンズの外径よりも小さく、
前記映像光複製部は入射する映像光の一部を反射し一部を透過する複数の部分反射面を有し、該複数の部分反射面は前記入射する映像光の光軸に対して斜めに配置されており、
前記映像光複製部は、映像光が入射する入射面と、該入射面から入射した映像光を反射する反射面と、該反射面で反射した映像光を複製するための複数の部分反射面と、該複製した映像光を出射する出射面を備えたプリズムからなり、
前記複数の部分反射面の間隔は前記投射レンズの外径よりも小さく、
前記投射光学部と前記プリズムは、前記投射レンズの中心軸を通る光が前記反射面で反射した光軸が前記プリズムの中心軸に対して該プリズムの出射方向とは逆方向に偏心するように配置されていることを特徴とする映像表示装置。
【請求項4】
請求項に記載の映像表示装置であって
前記プリズムが映像光を複製する方向を第一の方向とし、
前記複数の部分反射面のそれぞれの反射率は前記入射面側から第一の方向に行くにつれて高くなることを特徴とする映像表示装置。
【請求項5】
請求項に記載の映像表示装置であって
前記プリズムは、前記複数の部分反射面の間隔が1mmから15mmの範囲にあることを特徴とする映像表示装置。
【請求項6】
請求項2に記載の映像表示装置であって
前記プリズムは、前記部分反射面の前記出射面と直行する面からの角度が45度より大きいことを特徴とする映像表示装置。
【請求項7】
請求項に記載の映像表示装置であって
前記プリズムは、前記部分反射面をオプティカルコンタクトにより接合したことを特徴とする映像表示装置。
【請求項8】
請求項に記載の映像表示装置であって
前記プリズムは映像歪み補正機能を有することを特徴とする映像表示装置。
【請求項9】
請求項に記載の映像表示装置であって
前記映像歪み補正機能は、前記プリズムが映像光を出射する際、所定の角度に屈折して出射することを特徴とする映像表示装置。
【請求項10】
請求項に記載の映像表示装置であって
前記投射光学部の射出瞳は、前記投射光学部よりも前記映像光複製部に近い位置にあることを特徴とする映像表示装置。
【請求項11】
請求項10に記載の映像表示装置であって、
前記投射光学部の射出瞳は、前記投射光学部の内部にあることを特徴とする映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドマウントディスプレイなどに用いる導光板を利用した映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD:Head Mounted Display)やヘッドアップディスプレイ(HUD:Head up Display)などの映像表示装置では、投射光学部から出射された映像光をユーザの目まで伝搬させるための光学系として、導光板が用いられる。
【0003】
HMDやHUDに用いられる映像表示装置は、目が移動しても映像を視認可能な領域であるアイボックスの広さが、視認性や装着性といった観点から重要である。またHMDでは、日常生活での補助や保守点検などの作業支援を行うことを想定しており、映像表示装置は長時間駆動実現のために高い光利用効率が求められる。
【0004】
本技術分野における先行技術文献として特許文献1や特許文献2がある。特許文献1では、複数の部分反射面を用いて垂直方向に射出瞳を複製し、導光板を用いて水平方向に射出瞳を複製することでアイボックスを拡大する映像表示装置が開示されている。また、特許文献2では回折格子を備えた2個の導光板を用いることで2次元に射出瞳を複製してアイボックスを拡大する画像表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-210633号公報
【文献】特開2011-248318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、複製された複数の射出瞳の関係について記載されていない。このため射出瞳の複製の仕方によっては、複数の射出瞳に輝度ムラが生じ、結果として表示映像に輝度ムラが発生することがある。
【0007】
また、特許文献2では、回折格子を用いた射出瞳の複製は導光板に入射した光をすべて利用できないため光利用効率が低く、高い光利用効率の映像表示装置を実現できない。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、アイボックスが広く、高い光利用効率で輝度ムラなく映像を表示可能な映像表示装置及びそれを用いたHMDを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、その一例を挙げるならば、ユーザに映像を投射する映像表示装置であって、映像表示装置は、映像光を生成する映像生成部と、映像生成部で生成された映像光を投射する投射光学部と、投射光学部で投射された映像光を複製して出射する映像光複製部と、映像光複製部で複製された映像光をユーザに投射する導光部を備え、投射光学部は少なくとも1個の投射レンズを備え、映像光複製部が映像光を複製する間隔は投射レンズの外径よりも小さい構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アイボックスが広く、高い光利用効率で輝度ムラを低減し均一な映像を表示可能な映像表示装置及びそれを用いたHMDを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1におけるHMDの使用形態を示す図である。
図2】実施例1における映像表示装置を搭載したHMDの機能構成ブロック図である。
図3】実施例1における映像表示装置の機能ブロック構成図である。
図4】実施例1における映像表示装置の構成図である。
図5】実施例1における導光板の構成を説明する図である。
図6】実施例1における部分反射面アレイの面間隔を説明する図である。
図7】実施例1における導光板内部および導光板から出射される映像光の光路を示す図である。
図8】実施例1における瞳拡大プリズムの構成を説明する図である。
図9】実施例1における投射光学ユニットを説明する図である。
図10】実施例1における瞳拡大プリズムが複製する射出瞳を説明する図である。
図11】実施例1における瞳拡大プリズムにおいて、1つの部分反射面によって反射し出射される射出瞳を模式的に表した図である。
図12】実施例1における導光板への入射光と映像歪みの関係を説明する図である。
図13】実施例1における導光板に入射する映像光の結合方法を説明するための図である。
図14】実施例1における導光板において、部分反射面の角度を導光板面に対して180度異ならせた構成図である。
図15】実施例1における瞳拡大プリズムに入射する映像光の光路を説明する図である。
図16】実施例1における瞳拡大プリズムの形状を説明する図である。
図17】実施例2における映像表示装置の構成図である。
図18】実施例2における瞳拡大プリズムの構成を説明する図である。
図19】実施例2における瞳拡大プリズムが複製する射出瞳を説明する図である。
図20】実施例3における映像表示装置の構成図である。
図21】実施例3における瞳拡大プリズムの構成を説明する図である。
図22】実施例4における映像表示装置の構成図である。
図23】実施例4における映像表示装置の他の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
<HMDについて>
図1は本実施例におけるHMDの使用形態を示す図である。図1に示すように、HMD101はユーザ2の頭部に装着され、外界が視認可能な状態でユーザ2は図示しない映像表示装置からの映像をユーザの瞳15を介して虚像3として視認できる。なお、図1では片眼に映像を表示する場合を図示したが、両眼の構成としてもよい。
【0014】
図2は、本実施例における映像表示装置1を搭載したHMD101の機能構成ブロック図である。図2において、HMD101には映像表示装置1の他に、HMD101全体を制御するコントローラ106、外部情報102を取得するセンシング手段105、外部サーバ103と通信する通信手段104、電力供給手段108、記憶媒体107、操作入力手段109などが具備されている。なお制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。
【0015】
外部情報102、例えばユーザ2の体勢、向き、動きや外界の明るさ、音、空間情報をなどである。
【0016】
ユーザ2の体勢、向き、動きを検出するためのセンシング手段として一例を挙げるならば、傾斜センサ、加速度センサやGPSセンサなどが挙げられる。外界の明るさ、音、空間情報を検出するためのセンシング手段としては、照度センサ、音センサ、赤外線センサなどの撮像素子が搭載可能である。
【0017】
通信手段104は、ターネット上の情報や、スマートフォン、タブレット、PCなどの電子機器などの外部サーバ103とアクセスできる通信装置であり、例えばBluetooth(登録商標)、Wifi(登録商標)などで実現できる。
【0018】
ユーザ2は、操作入力手段109によりHMD101を操作するための入力を行う。操作入力手段109は、例えば音センサを用いた音声認識や、感圧センサあるいは静電容量センサを用いたタッチパネル入力や、赤外線センサを使用したジェスチャ入力などで実現できる。
【0019】
<映像表示装置について>
図3は、本実施例における映像表示装置の機能ブロック構成図である。映像示装置1は、映像生成部4と、投射光学部5と、映像光複製部6と、導光部7とを有する。
【0020】
映像生成部4は、光源と照明光学部と映像を生成する映像生成装置で構成されている。光源としてはRGBのLED(Light Emitting Diode)またはRGBのLD(Laser Diode)が挙げられる。もちろん光源として白色のLEDを用いてもよい。この場合は、映像生成素子にカラーフィルタを具備する必要がある。照明光学部は、光源の光を均一にして映像生成装置に照明する。映像生成装置には液晶またはデジタルミラーデバイス(DMD)等を用いればよい。また、映像生成装置として有機ELやμLEDなどの自発光映像生成素子を用いてもよい。この場合、光源および照明光学部が不要となり、映像生成部4の小型軽量化が可能となる。
【0021】
投射光学部5は、1枚または複数のレンズからなる投射レンズを備えており、映像生成部4で生成された映像を投射する。
【0022】
映像光複製部6は、投射光学部5の投射レンズの射出瞳を複製しながら、映像光を導光部7に伝達する。
【0023】
導光部7は、例えば回折格子や、体積ホログラムや、複数の部分反射面を備えた導光板を用いて、シースルー性を備えた映像表示装置1及びそれを備えたHMDとすることができる。
【0024】
図4は、本実施例における映像表示装置の構成図である。図4において、(a)は、導光板8の正面側から見た図を示し、(b)は、導光板8の上側から見た図を示す。図3における映像光複製部6は、瞳拡大プリズム9からなり、導光部7は、透明基板内部に複数の部分反射面を有した導光板8からなる。投射光学部5は、一例として2枚のレンズからなる投射光学ユニット10で構成される。
【0025】
前述したように投射光学ユニット10は、映像生成部4で生成された映像光を瞳拡大プリズム9に出射する。瞳拡大プリズム9は、内部に配置された部分反射面によって、図4のy方向に瞳を複製し映像光をx方向の導光板8に出射する。導光板8に入射した映像光は、導光板内部を全反射により伝搬しながら、内部に配置された部分反射面アレイ14によって映像光の伝播方向に瞳を複製し、ユーザに映像光を投射する。瞳拡大プリズム9と導光板8により、2次元に瞳を拡大することで、広いアイボックスを持つ映像表示装置が実現できる。
【0026】
<導光板について>
次に導光板の構成を説明する。図5は、本実施例における導光板の構成図である。図5において、(a)は導光板8の正面図、(b)は導光板8の平面図を示している。
【0027】
図5において、導光板8は、入射面16と、互いに略平行な第1の内面反射面11と第2の内面反射面12とを備え、内部に複数の互いに平行な部分反射面13が配列された部分反射面アレイ14を備える。第1の内面反射面11と第2の内面反射面12とによる全反射により、瞳複拡大プリズム9から出射された映像光は図の横方向(水平方向)に伝搬する。また、部分反射面アレイ14により、全反射で導光する映像光の一部を反射して進行方向を変え、第1の内面反射面11を透過して導光板8の外部に出射させる。部分反射面アレイ14で反射し映像光が複製されるので水平方向のアイボックスが拡大する。導光板8の外部に出射された映像光の一部はユーザの瞳15に入射する。これにより、ユーザは映像表示装置1が表示する映像を視認できる。
【0028】
<導光板面間隔について>
次に部分反射面アレイ14の反射面間隔について説明する。図6は、本実施例における導光板8の一部分を示した図であり、部分反射面アレイの面間隔を説明する図である。
【0029】
図6において、(a)は導光板正面から見たときに部分反射面13が離れて配置された場合、(b)は部分反射面13が重なりを持って配置された場合、(c)は部分反射面13が重なりを持たず、かつ隙間なく配置された場合を示している。
【0030】
図6(a)のように導光板正面から見たときに部分反射面13が離れて配置された場合、図6(a)のa領域のように映像光が出射されない領域が存在するため、ユーザに投射される映像に暗線が生じ輝度ムラとなる。
【0031】
図6(b)のように部分反射面が重なりを持って配置された場合、図6(b)のb領域のように2個の部分反射面から映像光が出射される領域が存在するため、ユーザに投射される映像に明線が生じ輝度ムラとなる。
【0032】
そのため、部分反射面13の間隔は図6(c)のように部分反射面13が略重なりを持たずかつ略隙間なく配置されていることが好ましい。部分反射面13が重なりを持たずかつ隙間なく配置された導光板とすることで、輝度ムラが少ない映像をユーザに投射することができる。
【0033】
<部分反射面の角度について>
次に、部分反射面アレイ14の第2の内面反射面12に対する角度θについて説明する。図7は、本実施例における導光板内部および導光板から出射される映像光の光路を示す図である。
【0034】
図7(a)は導光板内部を全反射により伝播する映像光が、部分反射面13によって反射し、導光板8から出射されるまでの光路を示したものである。角度θは全反射によって映像光が導光板内部を伝搬可能な角度にする必要がある。導光板内部を全反射する画角中心の光19が導光板内部を伝搬するときの導光板表面に対する入射角は2θと表せる。また画角中心に対してαの角度でユーザに投射される光20が、導光板内部において導光板表面に入射する角度θrは導光板屈折率nを用いて式(1)で表すことができる。
θr=2θ-arcsin(sinα÷n) …(1)
θrで入射する光が全反射する条件は、導光板8の屈折率で決まる臨界角θc=arcsin(1÷n)を用いて式(2)のように書ける。
θr=2θ-arcsin(sinα÷n)>θc …(2)
【0035】
導光板8が映像光を伝播するためには、映像光の全ての画角において上式を満たす必要がある。映像光の水平方向のFOV(画角:Field of View)をFOV_Hで表すと上式から部分反射面の角度θは式(3)を満たす必要がある。
θ>0.5×(arcsin(sin(FOV_H÷2)÷n)+θc) …(3)
【0036】
次に、図7(b)のように映像光が部分反射面13の裏面で入射する場合を考える。光線21のように部分反射面13の裏面で反射する光は映像光として使用できない。そのため光線21は光損失となる。加えて射出瞳の所定の画角成分が暗くなるため、表示映像に輝度ムラが生じる。部分反射面アレイ14によって複数回、裏面反射が起こりうるため、光線21のように部分反射面13に対して大きな角度で入射するときの反射率は可能な限り小さいことが望ましい。角度θrで導光板内部を全反射伝搬する光が部分反射面に入射する角度θbは式(4)で表すことができる。
θb=θ+θr=3θ-arcsin(sinα÷n) …(4)
【0037】
通常、部分反射面を成す反射膜と導光板は屈折率差があるため、裏面反射は入射角度θbが90度に近づくにつれて急激に高くなる。そのため、すべての映像光でθbを90度以下、好ましくは86度以下、より好ましくは83度以下にする必要がある。
よって少なくとも式(5)を満たす必要がある。
3θ+arcsin((sin(FOV_H÷2)÷n)<90 …(5)
θの条件に直すと、
θ<30-(arcsin(sin(FOV_H÷2)÷n)÷3 …(6)
式(3)、(6)から、望ましい部分反射面の角度θの範囲が導光板屈折率nと映像光の水平画角FOV_Hで求まる。
【0038】
一般的なガラスまたは樹脂の屈折率n=1.5~1.7、HMDの水平方向の画角(FOV_H)10度~40度のとき、式(3)、(6)から部分反射面角度θは18度~30度の範囲とすればよい。
【0039】
<部分反射面の反射率について>
部分反射面アレイ14の反射率は、部分反射面13の反射率をそれぞれ異ならせた構成も考えることができるが、複数のコーティングの設計や実装等が必要なためコストが増加する。そのため、コスト面から略等反射率を持つ部分反射面で部分反射面アレイを構成することが望ましい。
【0040】
また、部分反射面アレイ14は反射率が高いほどユーザに投射される映像の輝度が高まるため、映像表示装置の光利用効率を高めることができる。しかし、部分反射面アレイ14は反射率が高いほど、ユーザが導光板越しに視認する外界からの光の透過率が低下するため、シースルー性が低下する。そのため、シースルー性の観点からは部分反射面アレイ14の反射率は少なくとも30%以下にすることが望ましい。
【0041】
図7(b)における光線21のような部分反射面の裏面で反射する裏面反射は、光損失や輝度ムラの原因となるため、極力裏面反射率を抑えることが望ましい。導光板基板の接合には、接着剤で接合してもよいし、オプティカルコンタクトで接合してもよい。基板の接合に接着剤を使用すると導光板と接着剤の屈折率差のために、裏面反射率が高くなる。裏面反射をおさえるために、オプティカルコンタクトで接合することが効果的である。その場合、加えて接着剤で起こりうる光の散乱も抑制できるため、コントラスト向上やシースルー性も向上することが可能になる。
【0042】
また、部分反射面13の反射率を高くすると裏面での裏面反射率も高くなり、裏面反射による光損失や輝度ムラの影響が大きくなる。そのため、裏面反射による光損失や輝度ムラの影響を考慮すると部分反射面13の反射率は15%以下にすることが望ましい。
【0043】
<瞳拡大プリズム機能について>
図8は、本実施例における瞳拡大プリズムの構成を説明する図である。図8において、(a)、(b)及び(c)は、それぞれ瞳拡大プリズム9の側面図、正面図及び平面図を示している。図8において、瞳拡大プリズム9は、入射面22と、出射面23を有し、複数の部分反射面24を有する。部分反射面24は、互いに略平行である。図8では一例として4枚の部分反射面24を備えた瞳拡大プリズム9を示しているが、部分反射面の枚数は4枚より少なくて多くても構わない。以降、部分反射面24は、入射面22に近い側から順に第一の部分反射面、第二の部分反射面のように称する。
【0044】
図8において、投射光学部5が出射した映像光は、瞳拡大プリズム9に入射面22から入射する。瞳拡大プリズム9は透明度が高い媒質で構成されており、入射面22から入射した光は、瞳拡大プリズム9の内部を伝搬する。瞳拡大プリズム9の材質は、例えばガラスでも樹脂でもよい。また、映像が多重に表示されることを防ぐため、瞳拡大プリズム9の材質は複屈折性を有さないか少ないとよい。
【0045】
瞳拡大プリズム9に入射した映像光は、瞳拡大プリズム9の内部を伝搬し、複数の部分反射面24によって反射され、出射面23から出射される。投射光学部5が出射した映像光は、瞳拡大プリズム9の出射面23、側面25、26、27で全反射せずに伝播するように構成するとよい。映像光が全反射すると、映像の反転や迷光が生じる場合があり、本構成によって映像の解像度低下を防ぐことができる。
【0046】
<瞳拡大プリズムと投射レンズ>
図9は、本実施例における投射光学部5の一例である投射光学ユニット10を示す図である。図9では、投射光学ユニット10は2枚のレンズ28A、28B、を有している例を示す。図9において、29は投射光学ユニット10の射出瞳を示し、30は投射光学ユニット10の射出瞳径を、46は投射レンズ径を表している。なお、投射レンズ径といった場合、最も映像光複製部6に近いレンズの外径を指す。投射光学ユニット10を出射した映像光は、映像光複製部6によって複製されて複数映像光となった後、導光板8に入射する。射出瞳29が導光板入射面位置から大きくはなれていると、導光板入射時に射出瞳29が欠けることになり、輝度をムラが生じる。また、映像光の導光板8へのカップリング効率が低下する。そのため、投射光学部5の射出瞳29の位置は映像投射部よりも映像光複製部6に近い位置にある方がよく、映像光複製部6の内部にあるとなおよい。また投射光学部5の射出瞳29の位置は導光板8の入射面16の位置と略等しいとよい。これにより射出瞳欠けによる輝度ムラを低減し、映像光複製部6が出射した映像光の導光板8へのカップリング効率を高め、映像表示装置全体の光利用効率を高めることができる。
【0047】
本実施例の別の観点では、投射光学部5の射出瞳29の位置は、映像光複製部6の内部に位置すると、投射光学部5から出射する映像光は、射出瞳の位置で光学有効直径が最も小さくなるため、投射光学部5の射出瞳が映像光複製部6の内部に位置するように構成することで、映像光複製部6を小型化できる。
【0048】
<瞳拡大プリズムによる均一な瞳の複製>
次に、瞳拡大プリズムが射出瞳を複製する際、輝度ムラが生じないための構成について説明する。
【0049】
図10は、本実施例における瞳拡大プリズム9が複製する射出瞳29を模式的に表したものであり、投射光学ユニット10の主光線と瞳拡大プリズム9によって複製される射出瞳29の位置関係を表している。実際には部分反射面で2回以上反射する光路も考えられるが、図10に示した光路が光利用効率の観点からも映像光の主成分であり、部分反射面で2回以上反射する光路は省略している。
【0050】
図10(a)は一例として3枚の部分反射面24を備える瞳拡大プリズム9を示している。図10(a)に示すように、瞳拡大プリズム9が複製する複数の射出瞳29の間隔が射出瞳径30よりも大きい場合、瞳拡大プリズム9が複製した複数の射出瞳29間で隙間が生じる。射出瞳29間で隙間があると、導光板8から出射する映像光の間にも隙間があるようになり、該隙間の付近から利用者が映像を見ると、ユーザは映像の一部が顕著に暗い映像を視認することになる。
【0051】
図10(b)は一例として4枚の部分反射面24を備える瞳拡大プリズム9を示している。なお、部分反射面の枚数は4枚よりも少なくても多くても構わない。図10(b)に示すように、瞳拡大プリズム9が複製する複数の射出瞳29の間隔を射出瞳径30よりも小さくすることで、複数の射出瞳29が重なり、導光板から投射した映像に上述した映像の一部が顕著に暗い領域が無くなる。つまり、部分反射面24の間隔L1、L2、L3が射出瞳径30よりも小さいとよい。言い換えれば、投射レンズ径46は射出瞳径30よりも大きく、入射幅302は投射レンズ径46よりも大きいので、部分反射面24の間隔L1、L2、L3は、投射レンズ径46よりも小さくする必要があり、また、入射幅302よりも小さくする必要がある。このような構成とすることで、導光板8から出射する映像光に映像の欠けや、暗線を防ぐことができる。
【0052】
ここで、HMDに搭載される投射レンズは小型であることが望ましく、通常投射レンズ径46は15mm以下である。極端に小型な投射レンズは射出瞳径が小さく、射出瞳を重ねての複製が困難となる。そのため投射レンズ径46は1mm以上であることが望ましい。よって部分反射面間隔は1mmから15mmの範囲にあることが望ましい。
【0053】
次に、均一な射出瞳を出射するための瞳拡大プリズム9と投射光学ユニット10の構成について説明する。
【0054】
図11は、一例として第2の部分反射面24によって反射し、出射される射出瞳29を模式的に表したものである。図11(a)に示す場合、第2の部分反射面によって反射し出射される射出瞳29のなかで、第1の部分反射面を透過して出射される領域Aと、第1の部分反射面を透過せずにそのまま出射される領域Bに分かれる。部分反射面24は所定の透過率を持つため、部分反射面24をより多く通過する領域Aは領域Bよりも暗くなり、領域Aと領域Bで輝度差が生じ、射出瞳29のなかの点線を境に射出瞳分布に輝度ムラ生じ、導光板で投射する映像に輝度ムラが生じる。
【0055】
よって、均一な射出瞳を出射するためには第Nの部分反射面で反射した光はすべて第N-1の部分反射面を透過するように部分反射面をオーバーラップさせる必要がある。(Nは2以上の整数)。そこで、図11(b)のEに示すように、投射光学ユニット10の中心軸を、瞳拡大プリズム9の中心軸Dに対して、瞳拡大プリズム9の出射方向とは逆方向に偏心させて配置することで、第2の部分反射面によって反射し出射される射出瞳はすべて第1の部分反射面を透過させることができる。このような構成とすることで射出瞳29を輝度ムラなく出射させることができる。同様に第3の部分反射面によって反射し出射される射出瞳はすべて第2の部分反射面を透過し、第4の部分反射面によって反射し出射される射出瞳はすべて第3の部分反射面を透過する。そのため瞳拡大プリズム9は均一に射出瞳を出射することができる。
【0056】
以上のように瞳拡大プリズム9の部分反射面24および投射光学ユニット10を構成することで、均一に射出瞳を複製でき、導光板が投射する映像光に輝度ムラがなく広いアイボックスを実現できる。
【0057】
<瞳拡大プリズムの反射率>
瞳拡大プリズム9に入射した映像光は、瞳拡大プリズム9の内部を伝搬する間に、複数の部分反射面24で反射または透過するごとに強度が減衰する。そこで、部分反射面の反射率を入射面側から離れていくに従って次第に大きくすることによって、瞳拡大プリズム9が出力する映像光の強度密度を略一定にでき、利用者が視認する映像の輝度ムラを低減できる。特に瞳拡大プリズム9の部分反射面24のうちで最上部に配置された(最も入射面から離れた部分反射面)部分反射面24はアルミニウムや銀によるミラーコートが望ましい。このような構成とすることで瞳拡大プリズム9に入射した映像光の略すべてを出射し利用することができる。
【0058】
また、瞳拡大プリズム9の部分反射面24において、所定の反射率を得るために、部分反射面24はアルミニウムや銀による金属膜コートを有してもよい。これにより、金属膜は反射率や透過率の偏光依存性が少ないため、映像表示装置1は投射光学部5が出力する映像光の偏光によらず、均一な輝度の映像を表示できる。なお、同様に、導光板8の部分反射面13において、所定の反射率を得るために、部分反射面アレイ14はアルミニウムや銀による金属膜コートを有してもよい。
【0059】
本実施例における別の観点では、導光板8の部分反射面アレイ14及び瞳拡大プリズム9の部分反射面24において所定の反射率を得るために、誘電体多層膜のコートを有してもよい。誘電体多層膜コートの反射率及び透過率特性は、入射する偏光に依存し、通常S偏光の反射率はP偏光の反射率より高くなる。本実施例において、瞳拡大プリズム9が有する部分反射面24の法線ベクトルはxy平面内に位置し、導光板8が有する部分反射面アレイ14の法線ベクトルはxz平面内に位置するように、瞳拡大プリズム9及び導光板8を配置する構成としている。そのため、瞳拡大プリズム9の部分反射面24に対してS偏光として入射した映像光は、導光板8の部分反射面アレイ14に対して略P偏光として入射する。また、瞳拡大プリズム9の部分反射面24に対してP偏光として入射した映像光は、導光板8の部分反射面アレイ14に対して略S偏光として入射する。
【0060】
このため、本実施例の映像光複製部6及び導光板8は以下のように構成してもよい。すなわち、映像光複製部6は、偏光板及び波長板の一方又は両方と、瞳拡大プリズム9とを有する。導光板8の部分反射面アレイ14及び瞳拡大プリズム9の部分反射面24において所定の反射率を得るために、部分反射面アレイ14及び部分反射面24は誘電体多層膜のコートを有する。投射光学部5が出射した映像光は偏光板及び波長板のいずれか又は両方を通過し、瞳拡大プリズム9に入射する。瞳拡大プリズム9に入射する光の偏光は、部分反射面24に対してS偏光及びP偏光以外の偏光(例えば、+45度偏光、-45度偏光、右回り偏光、左回り偏光など)である。
【0061】
S偏光及びP偏光の反射率をRS及びRPとする。一例として、4枚の部分反射面24を備えた瞳拡大プリズムの場合に均一に射出瞳を複製するための部分反射面24の反射率の一例を示すと、例えば第1の部分反射面においてRS=30~50%及びRP=5~15%、第2の部分反射面においてRS=45~60%及びRP=15~25%、第3の部分反射面においてRS=75~85%及びRP=30~40%、第4の部分反射面においてRS、RPは90%以上である。これにより、部分反射面24で反射して導光板8から出射する映像光の光束量が互いに略等しくなり、利用者が視認する映像の輝度を略均一にできる。
【0062】
以上のように複数の部分反射面24の反射率を調節することで均一に射出瞳を複製できる。また、瞳拡大プリズム9に入射した映像光の略すべてが導光部に向かって出射し利用でき、高い光利用効率で射出瞳を複製し広いアイボックスを実現できる。
【0063】
また、部分反射面の接合を接着材でなくオプティカルコンタクトで接合しても良い。オプティカルコンタクトで接合することにより、接着剤で起こりうる光の散乱を抑制できるため、コントラスト向上やシースルー性も向上することが可能になる。
【0064】
<瞳拡大プリズムと導光板の結合手法および映像歪み補正>
次に、瞳拡大プリズム9と導光板8の結合方法について説明する。まず前提として、導光板8への入射光と映像歪みの関係について説明する。図12は、本実施例における導光板への入射光と映像歪みの関係を説明する図である。図12においては、簡略化のため瞳拡大プリズム9及びその光路は省略している。図12(a)は画角中心の主光線が導光板8の入射面16から入射し、部分反射面13で反射し、導光板8の正面から出射されるまでの光路を示している。図12(a)に示すように導光板の頂角18の角度αが部分反射面角度θの2倍の2θでないと、入射面16で画角中心の主光線が屈折するため、映像の歪みが発生する。そのため図12(b)のように導光板の頂角18を2θとすることで、画角中心の主光線が屈折せず、導光板から出射されるため映像歪みを無くすことができる。
【0065】
また、図12(c)のように映像歪みを補正する三角プリズム32を配置させてもよい。映像光は、三角プリズム入射面55に対して垂直に入射し、三角プリズム出射面54で映像光を所定の角度γだけ屈折させて出射させることで、導光板の入射面16での屈折による映像歪みを補正する。角度γは、導光板の頂角18の角度α、部分反射面角度θのとき、導光板の屈折率をnとして、arcsin(nsin(2θ-α))とすれば映像歪みを補正できる。角度arcsin(nsin(2θ-α))で屈折して映像光を出射させるには、三角プリズム32を導光板8と同一の媒質であるか、または屈折率が略等しい媒質から形成し、頂角31の角度βがβ=2θ-αを満たす三角プリズム32とすればよい。
【0066】
図12(c)の構成では図12(b)の構成よりも導光板の入射面16が広くなるので、導光板に入射する光量を増加させることができ、映像表示装置全体の光利用効率を向上することができる。基板から切断して導光板を製造する場合、頂角18角度αがθと略等しい形状は、入射面をカットする工程が減るので、製造面で有利である。そのため製造面の観点からα=β=θとすることが望ましい。
【0067】
次に、瞳拡大プリズム9を配置する場合、図13(a)のように瞳拡大プリズム9の出射後に三角プリズム32を配置すればよい。前述したように、角度arcsin(nsin(2θ-α))で屈折して映像光を出射させるために三角プリズム32は導光板8と同一の媒質であるか、または屈折率が略等しい媒質から形成し、頂角31の角度βをβ=2θ-αとすればよい。
【0068】
また、図13(b)に示すように、三角プリズム32でなく、瞳拡大プリズム9に映像歪み補正の機能をもたせることもできる。すなわち、映像光を、瞳拡大プリズム9の出射面23で所定の角度γだけ屈折させて出射させることで、導光板の入射面16での屈折による映像歪みを補正する。角度γは、導光板の頂角18の角度α、部分反射面角度θのとき、導光板の屈折率をnとして、arcsin(nsin(2θ-α))とすれば映像歪みを補正できる。角度arcsin(nsin(2θ-α))で屈折して映像光を出射させるための、瞳拡大プリズム9の一例を述べると、瞳拡大プリズム9を導光板と同一の媒質であるか、または屈折率が略等しい媒質から形成し、瞳拡大プリズム角度33の角度δを鈍角として、δ=2θ+90度を満たせばよい。
【0069】
図13(c)は図13(a)の点線Fでの断面図を示し、図13(d)は図13(b)の点線Gでの断面図を示している。図13(d)と図13(c)を比較してわかるように、瞳拡大プリズム9に映像歪み補正の機能をもたせることで部分反射面が長くなり、前述したオーバーラップし、均一な射出瞳を出射するという観点から効果的である。また瞳拡大プリズム9に映像歪み補正の機能をもたせることで、映像表示装置1の部品点数を減らすことができ、コストの低減、質量の低減、サイズの低減を行うことが可能となる。
【0070】
また、図14に示すように、部分反射面13の角度を導光板面に対して180度異ならせても良い。この場合ユーザの瞳は導光板8に対して図13(a)、(b)とは逆側に来ることになる。
【0071】
<瞳拡大プリズムの迷光>
図15は、本実施例における瞳拡大プリズムに入射する映像光の光路を説明する図である。すなわち、投射光学ユニット10から出射して瞳拡大プリズム9に入射し、瞳拡大プリズム9の内部を伝搬する映像光の光線の一例を示す図である。
【0072】
図15において、映像が歪まないためには光線56で示した画角中心の主光線が瞳拡大プリズムの入射面22および出射面23に垂直に入射する必要がある。瞳拡大プリズムの入射面と出射面がなす角57が直角の場合、部分反射面24の出射面23と直行する面からの角度Ψは45度とすればよい。
【0073】
光線34は、図15(a)において投射光学ユニット10から出射する光線の角度が最も右向きとなる光線である。光線34のような角度で入射した光は光線35のように出射面23または側面37で全反射して光線36のように出射されると反転した映像がユーザに投射されることとなる。
【0074】
これを防ぐために図15(b)のように投射光学ユニット10を傾けて瞳拡大プリズム9に入射させることが有効である。このとき投射光学部を傾けた角度Φだけ瞳拡大プリズム9の瞳拡大プリズムの入射面と出射面がなす角57を傾斜させ、部分反射面の角度Ψを45度より大きくΨ=45度+Φ÷2とすることで、全反射して光線36のように出射される光が無くすことができる。加えて画角中心の主光線は瞳拡大プリズムの入射面22および出射面23に垂直に入射するので映像の歪みも生じない。上記のように全反射迷光を無くすためには角度瞳拡大プリズム9の屈折率をn、垂直方向の画角をFOV_Vとしたとき、必要な傾き角度Φはarcsin(sin(FOV_V÷2)÷n)以上必要である。
【0075】
また、瞳拡大プリズム9の側面25、26、27、37は砂すり及び黒塗りのいずれか又は両方の処理が施されていることが好ましい。これにより側面25、26、27、37に入射した光に起因する反転画像の迷光の発生を防止できる。
【0076】
<瞳拡大プリズムのカット>
次に、小型化の観点から瞳拡大プリズム9の外形について説明する。図16は瞳拡大プリズム9を上側から見た図であり、光束径38は投射光学部から出射される映像光のうち最も光束が大きくなる径を示している。図16(a)で示した瞳拡大プリズム9において光束径38が無い領域をカットすることができる。一例を図16(b)、(c)に示した。図16(b)は側面37が側面25と平行になるようにカットした瞳拡大プリズム9である。図16(c)は光束径38が削れないように小型化のため図16(b)をさらにカットした瞳拡大プリズム9である。図16(b)、(c)は図16(a)と比較して小型であるが、外形を成す辺が1個増加しており、図16(a)の瞳拡大プリズム9と比較して、カットのための工程が加わる。また、図16(b)と(c)を比較すると、側面37が側面25と平行である図16(b)の瞳拡大プリズム9の方がカットのための治具が減るため、安価に製造可能である。以上、光束径38が削れないような一例を示したが、小型化に重点をおいて、光束径38を削るようなカットをしてもよい。
【0077】
以上のように、本実施例によれば、アイボックスが広く、高い光利用効率で輝度ムラを低減し均一な映像を表示可能な映像表示装置及びそれを用いたHMDを提供できる。
【実施例2】
【0078】
図17は、本実施例における映像表示装置の構成図である。図17において、(a)は、導光板8の正面側から見た図を示し、(b)は、導光板8の上側から見た図を示す。図17において、図4と同じ構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。図17において、図4と異なる点は、瞳拡大プリズム9に替えて瞳拡大プリズム39を有し、映像生成部4および投射光学ユニット10を瞳拡大プリズム39の紙面横方向に配置した点である。
【0079】
図18は、本実施例における瞳拡大プリズム39の構成を説明する図である。図18において、(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ、瞳拡大プリズム39の側面図、正面図及び平面図を示す。
【0080】
図18において、瞳拡大プリズム39は、入射面41と、出射面23を有し、複数の部分反射面24と映像光を結合するための反射面40を有する。本実施例の瞳拡大プリズム39は射出瞳複製のための部分反射面24に加えて、投射光学部からの映像光を結合するための反射面40を備える点が図4とは異なる。
【0081】
複数の部分反射面24と結合するための反射面40は互いに略平行である。図18では一例として4枚の部分反射面24を備えた瞳拡大プリズム39を示しているが、部分反射面の枚数は4枚よりも少なくても多くてもなんら構わない。
【0082】
投射光学部である投射光学ユニット10から出射した映像光は、瞳拡大プリズム39に入射面41から入射し、結合のための反射面40で反射して複数の部分反射面24で反射または透過し、出射される。
【0083】
図19は、本実施例における瞳拡大プリズムが複製する射出瞳を説明する図である。すなわち、投射光学ユニット10の主光線と瞳拡大プリズム39によって複製される射出瞳29の位置関係を模式的に表している。実際には部分反射面24で2回以上反射する光路も考えられるが、図19に示した光路が光利用効率の観点からも映像光の主成分であり、2回以上反射する光路は省略している。
【0084】
図19は一例として4枚の部分反射面24を備える瞳拡大プリズム39を示している。部分反射面の枚数は4枚よりも少なくても多くてもなんら構わない。実施例1で述べたように、映像の欠けや、暗線が生じることなく、射出瞳を複製するためには複製された複数の射出瞳29が重なる必要がある。つまり、部分反射面24の間隔L1、L2、L3を射出瞳径よりも小さくするとよい。言い換えれば、部分反射面24の間隔L1、L2、L3を投射レンズ径46よりも小さくするとよい。このような構成とすることで、瞳拡大プリズム39は映像の欠けや、暗線が生じることなく、射出瞳を複製することができる。
【0085】
次に、均一な射出瞳を出射するための瞳拡大プリズム39と投射光学ユニット10の構成について説明する。
【0086】
均一な射出瞳を出射するためには第Nの部分反射面24で反射した光はすべて第N-1の部分反射面24を透過するように部分反射面24をオーバーラップさせる必要がある。(Nは2以上の整数)。また、図19に示すように、投射光学ユニット10の中心軸を通る光が反射面40で反射した光軸Hを、瞳拡大プリズム39の中心軸Dに対して、瞳拡大プリズム39の出射方向とは逆方向にEで示すように偏心させて配置することで、第Nの部分反射面24によって反射し出射される射出瞳はすべて第N-1の部分反射面24を透過させることができる。このような構成とすることで射出瞳29を輝度ムラなく出射させることができる。
【0087】
また、実施例1で述べたように、瞳拡大プリズムの側面や出射面での全反射による映像反転を防ぐために、部分反射面24および反射面40の角度Ψは45度より大きくΨ=45度+Φ÷2とすればよい。上記のように全反射迷光を無くすためには瞳拡大プリズム39の屈折率をn、垂直方向の画角をFOV_Vとしたとき、必要な傾き角度Φはarcsin(sin(FOV_V÷2)÷n)以上必要である。
【0088】
このように、本実施例によれば、映像光を結合するための反射面40を瞳拡大プリズム39の内部に設けているため、映像生成部4および投射光学ユニット10を瞳拡大プリズム39の横方向に配置することができ、映像表示装置1のデザインの自由度を高くできる。
【実施例3】
【0089】
図20は、本実施例における映像表示装置の構成図である。図20において、(a)は、導光板8の正面側から見た図を示し、(b)は、導光板8の上側から見た図を示す。図20において、図4と同じ構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。図20において、図4と異なる点は、瞳拡大プリズム9に替えて瞳拡大プリズム42を有し、映像生成部4および投射光学ユニット10を瞳拡大プリズム42の紙面横方向に配置した点である。図21(a)、(b)、及び(c)は、それぞれ、本実施例における瞳拡大プリズム42の側面図、正面図及び平面図である。
【0090】
図21において、瞳拡大プリズ42は、入射面43と、出射面23を有し、少なくとも2以上の略平行な部分反射面44と、少なくとも2以上の略平行な部分反射面45とを有する。部分反射面44と部分反射面45とは平行ではなく、部分反射面44と部分反射面45がなす角は、略90度でもよいし、90度以外でもよい。
【0091】
投射光学部である投射光学ユニット10から出射した映像光は、瞳拡大プリズム42に入射面43から入射する。瞳拡大プリズム42に入射した映像光は、部分反射面44または部分反射面45で反射または透過することで投射光学部の射出瞳を複製し、瞳拡大プリズム42の出射面23から出射する。
【0092】
本実施例によれば、部分反射面44と部分反射面45によって射出瞳を上下方向に複製し、出射するので、投射光学部である投射光学ユニット10を導光板8の中央部に配置することができる。そのため映像表示装置のデザインの自由度を高くできる。加えて実施例1と実施例2の瞳拡大プリズムと比較をして入射面43から出射面23までの距離が短くなっており、投射光学部の射出瞳を導光板入射面に近づけやすい構成となっている。そのため導光板のカップリング効率を向上させ、導光板入射時の射出瞳の欠けを低減させることができる。
【実施例4】
【0093】
図22は、本実施例における映像表示装置の構成図である。図22において、(a)は、導光板8の正面側から見た図を示し、(b)は、導光板8の上側から見た図を示す。図22において、図4と同じ構成には同じ符号を付し、その説明は省略する。図22において、図4と異なる点は、瞳拡大プリズム9に替えて映像光複製部47を有し、映像光複製部47は複数の回折領域48,49を有する点である。
【0094】
図22において、投射光学部である投射光学ユニット10から出射した映像光は回折領域48に入射すると映像光は回折し、映像光複製部47の内部に取り込まれ、映像光複製部47の内部を全反射により図の垂直方向に伝搬する。全反射導光する過程で映像光は回折領域49に到達するごとに一部の光が回折し、映像光が複製され、映像光複製部47から出射する。
【0095】
図22では一例として映像光複製部47により垂直方向に射出瞳が4個複製されている場合を示している。実施例1で述べたように、映像の欠けや、暗線が生じることなく、射出瞳を複製するためには複製された複数の射出瞳が重なる必要がある。つまり図22に示した複製間隔L1、L2、L3を射出瞳径よりも小さくするとよく、投射レンズ径46よりも小さくする必要がある。このような構成とすることで、映像光複製部47は映像の欠けや、暗線が生じることなく、射出瞳を複製することができる。
【0096】
また、図23に示すように導光板51に複数の回折領域52、53を備えてもよく、導光板51が映像光複製部47を備える構成としてもよい。この場合、回折領域を構成する回折格子は例えば反射型の体積ホログラムや透過型の体積ホログラムにより実現できる。同様に、像の欠けや、暗線が生じることなく、射出瞳を複製するためには射出瞳が重なる必要があり、複製間隔L1、L2、L3を射出瞳径よりも小さくするとよく、投射レンズ径46よりも小さくする必要がある。このような構成とすることで、映像光複製部47は映像の欠けや、暗線が生じることなく、射出瞳を複製することができる。
【0097】
本実施例によれば、内部の部分反射面により射出瞳を複製する瞳拡大プリズム9と比較して、回折格子あるいは反射型の体積ホログラムや透過型の体積ホログラムを用いることで映像複製部を小型にすることができる。
【0098】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0099】
1:映像表示装置、2:ユーザ、4:映像生成部、5:投射光学部、6:映像光複製部、7:導光部、8、51:導光板、9、39、42:瞳拡大プリズム、10:投射光学ユニット、11:第1の内部反射面、12:第2の内部反射面、13:部分反射面、14:部分反射面アレイ、16、22、41、43:入射面、18、31:頂角、23:出射面、24、44、45:部分反射面、25、26、27:側面、28:レンズ、29:射出瞳、30:射出瞳径、32:三角プリズム、33:瞳拡大プリズム角度、38:光束径、40:反射面、44、45:部分反射面、46:投射レンズ径、47:映像光複製部、48、49、52、53:回折領域、54:三角プリズム出射面、55:三角プリズム入射面、57:瞳拡大プリズムの入射面と出射面がなす角、101:HMD
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23