(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】サージ制御回路及び電力変換器
(51)【国際特許分類】
H02M 1/08 20060101AFI20221219BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20221219BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20221219BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M7/48 E
H03K17/16 D
H03K17/687 A
(21)【出願番号】P 2019192829
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】池田 健太郎
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-129565(JP,A)
【文献】特開2008-067140(JP,A)
【文献】特開2017-221004(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00814564(EP,A1)
【文献】特開2012-249357(JP,A)
【文献】特開平02-254966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 7/48
H03K 17/16
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランジスタのスイッチングにより生じるサージ電流を流すダイオードと、
前記ダイオードのカソードと前記第1トランジスタの制御電極との間に接続されるキャパシタと、
前記ダイオードに流れるサージ電流に応じて、前記第1トランジスタの制御電極と第1基準電圧ノードとの間のインピーダンスを可変させる第1インピーダンス可変回路と、を備え
、
前記第1インピーダンス可変回路は、
前記第1トランジスタの制御電極と第2基準電圧ノードとの間に接続される第2トランジスタと、
前記第2トランジスタの制御電極と前記第2基準電圧ノードとの間の電圧を可変させる可変電圧源と、を有し、
前記第2トランジスタは、前記第1トランジスタの制御電極に応じて電圧レベルが変化する第3電極と、前記第2基準電圧ノードに応じた電圧レベルに設定される第4電極と、を有し、
第2トランジスタの前記第4電極を前記第2基準電圧ノードの電圧よりも低い電圧に設定する負電圧生成回路を備える、サージ制御回路。
【請求項2】
前記第1インピーダンス可変回路は、前記ダイオードに流れるサージ電流が多いほど、前記第1トランジスタの制御電極と前記第1基準電圧ノードとの間のインピーダンスをより高くする、請求項1に記載のサージ制御回路。
【請求項3】
前記第1トランジスタの第1電極からのサージ電流は、前記ダイオードのアノードからカソードを通って、前記キャパシタを介して、前記第1トランジスタの制御電極に流れる、請求項1又は2に記載のサージ制御回路。
【請求項4】
前記ダイオードのアノードは、前記第1トランジスタの第1電極に接続され、
前記ダイオードのカソードは、前記キャパシタの一端に接続され、
前記キャパシタの他端は、前記第1トランジスタの制御電極に接続される、請求項3に記載のサージ制御回路。
【請求項5】
前記可変電圧源は、前記ダイオードにサージ電流が流れるときに、前記第2トランジスタの第1電極と第2電極との間に流れる電流が前記第2トランジスタの第1電極の電圧に対して線形に変化するように、前記第2トランジスタの制御電極の電圧を設定する、請求項
1乃至4のいずれか一項に記載のサージ制御回路。
【請求項6】
前記可変電圧源は、前記第1トランジスタの第1電極と第2電極との間の電圧又は電流に基づいて、前記第2トランジスタの制御電極の電圧を設定する、請求項
5に記載のサージ制御回路。
【請求項7】
前記第2基準電圧ノードよりも電圧レベルが高い第3基準電圧ノードと、前記第1トランジスタの制御電極との間に接続され、前記第1トランジスタの制御電極に対して、前記第1インピーダンス可変回路と対称的に配置される第2インピーダンス可変回路を備える、請求項
1乃至6のいずれか一項に記載のサージ制御回路。
【請求項8】
前記第1トランジスタの制御電極を、前記第1トランジスタのオフ又はオン電圧に設定するか否かを切り替える第1切替器と、
前記第1トランジスタの制御電極を、前記第2トランジスタのオン又はオフ電圧に設定するか否かを切り替える第2切替器と、を備え、
前記第1インピーダンス可変回路及び前記第1切替器は、前記第1トランジスタの制御電極と前記第2基準電圧ノードとの間に直列に接続され、
前記第2インピーダンス可変回路及び前記第2切替器は、前記第1トランジスタの制御電極と前記第3基準電圧ノードとの間に直列に接続される、請求項
7に記載のサージ制御回路。
【請求項9】
直流電圧を交流電圧に変換する電力変換部を備え、
前記電力変換部は、
タイミングをずらしてオン又はオフする複数の第1トランジスタと、
前記複数の第1トランジスタのそれぞれのオン又はオフを切替制御する切替制御部と、 前記複数の第1トランジスタのオン又はオフ時に発生するサージを制御する複数のサージ制御回路と、を有し、
前記サージ制御回路は、
対応する前記第1トランジスタのスイッチングにより生じるサージ電流を流すダイオードと、
前記ダイオードのカソードと前記第1トランジスタの制御電極との間に接続されるキャパシタと、
前記ダイオードに流れるサージ電流に応じて、前記第1トランジスタの制御電極と第1基準電圧ノードとの間のインピーダンスを可変させる第1インピーダンス可変回路と、を備え
、
前記第1インピーダンス可変回路は、
前記第1トランジスタの制御電極と第2基準電圧ノードとの間に接続される第2トランジスタと、
前記第2トランジスタの制御電極と前記第2基準電圧ノードとの間の電圧を可変させる可変電圧源と、を有し、
前記第2トランジスタは、前記第1トランジスタの制御電極に応じて電圧レベルが変化する第3電極と、前記第2基準電圧ノードに応じた電圧レベルに設定される第4電極と、を有し、
第2トランジスタの前記第4電極を前記第2基準電圧ノードの電圧よりも低い電圧に設定する負電圧生成回路を備える、電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、サージ制御回路及び電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等を駆動するスイッチング素子をオン又はオフする際にサージ電圧が発生することがあり、サージ電圧の発生に伴ってリンギングが発生することがある。
【0003】
サージ電圧やリンギングは、スイッチング損失や、機器の故障、ノイズ発生の要因になりうるため、できるだけ抑制するのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の一態様では、サージ電圧やリンギングを抑制できるサージ制御回路及び電力変換器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態によれば、第1トランジスタのスイッチングにより生じるサージ電流を流すダイオードと、
前記ダイオードのカソードと前記第1トランジスタの制御電極との間に接続されるキャパシタと、
前記ダイオードに流れるサージ電流に応じて、前記第1トランジスタの制御電極と第1基準電圧ノードとの間のインピーダンスを可変させる第1インピーダンス可変回路と、を備える、サージ制御回路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態によるサージ制御回路の回路図。
【
図2】第2トランジスタのI-V特性を示すグラフ。
【
図3】ダイオードのアノードからカソードに流れる電流がどこに向かうかを矢印線で示した図。
【
図4】
図1のサージ制御回路から第1インピーダンス可変回路を省略した一比較例のサージ制御回路の回路図。
【
図5】第1トランジスタがオンからオフに変化する直後の第1トランジスタのドレイン電圧波形図。
【
図6】
図1の回路構成に第2インピーダンス変換回路を追加したサージ制御回路の回路図。
【
図7】第2の実施形態によるサージ制御回路の回路図。
【
図9】第3の実施形態の第1変形例のサージ制御回路の回路図。
【
図10】第3の実施形態の第2変形例のサージ制御回路の回路図。
【
図11】第3の実施形態の第3変形例のサージ制御回路の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、サージ制御回路及び電力変換器の実施形態について説明する。以下では、サージ制御回路及び電力変換器の主要な構成部分を中心に説明するが、サージ制御回路及び電力変換器には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態によるサージ制御回路1の回路図である。
図1のサージ制御回路1は、第1トランジスタQ1のスイッチングにより生じるサージ電圧やサージ電流を抑制するものである。第1トランジスタQ1は、MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)トランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのスイッチング素子であり、スイッチング素子の具体的な種類は問わない。第1トランジスタQ1は、制御電極に印加される電圧により、第1電極と第2電極との間に流れる電流を制御する。以下では、第1トランジスタQ1がN型MOSトランジスタである例を主に説明する。
【0010】
第1トランジスタQ1がN型MOSFETの場合、制御電極はゲート、第1電極はドレイン、第2電極はソースである。
【0011】
図1のサージ制御回路1は、ダイオードD1と、キャパシタC1と、第1インピーダンス可変回路2を備えている。
【0012】
ダイオードD1は、第1トランジスタQ1のスイッチングにより生じるサージ電流を流す。キャパシタC1は、ダイオードD1のカソードと第1トランジスタQ1のゲートとの間に接続されている。より具体的には、ダイオードD1のアノードは第1トランジスタQ1のドレインに接続され、カソードはキャパシタC1の一端に接続されている。キャパシタC1の他端は第1トランジスタQ1のゲートに接続されている。
【0013】
第1インピーダンス可変回路2は、ダイオードD1に流れるサージ電流に応じて、第1トランジスタQ1のゲートと第1基準電圧ノードとの間のインピーダンスを可変させる。第1基準電圧ノードは、例えば接地ノードである。より具体的には、第1インピーダンス可変回路2は、ダイオードD1に流れるサージ電流が多いほど、第1トランジスタQ1の制御電極と第1基準電圧ノードとの間のインピーダンスをより高くする。
【0014】
第1インピーダンス可変回路2は、第2トランジスタQ2と可変電圧源3を有してもよい。第2トランジスタQ2は、第1トランジスタQ1のようなスイッチング動作を行うのではなく、アナログ動作を行う。ここで、アナログ動作とは、飽和領域で動作することを意味する。第2トランジスタQ2は、例えばN型MOSトランジスタでもよいし、バイポーラトランジスタでもよい。本明細書では、第2トランジスタQ2がN型MOSトランジスタの例を説明する。
【0015】
可変電圧源3は、第1トランジスタQ1の制御電極とソース(第1基準電圧ノード)との間に接続されている。
【0016】
図2は第2トランジスタQ2のI-V特性を示すグラフである。
図2の横軸は第2トランジスタQ2のドレイン-ソース間電圧Vds、縦軸はドレイン-ソース間電流Idsである。可変電圧源3は、ダイオードD1にサージ電流が流れる場合に、第2トランジスタQ2が飽和領域内の動作点op1から動作点op2に遷移するように、第2トランジスタQ2のゲート電圧を調整する。
【0017】
このように、可変電圧源3は、ダイオードD1にサージ電流が流れるときに、第2トランジスタQ2の第1電極と第2電極との間に流れる電流が第2トランジスタQ2の第1電極の電圧に対して線形に変化するように、第2トランジスタQ2の制御電極の電圧を設定する。より具体的には、第2トランジスタQ2のドレイン電圧とドレイン電流との関係が線形になるように、第2トランジスタQ2のゲート電圧を設定する。
【0018】
図1では図示していないが、第1トランジスタQ1のドレイン-ソース間電圧又はドレイン-ソース間電流を検出するモニタ部を設け、このモニタ部で検出されたドレイン-ソース間電圧又はドレイン-ソース間電流に基づいて、可変電圧源3は第2トランジスタQ2の制御電極の電圧を設定してもよい。
【0019】
この他、
図1のサージ制御回路1は、第1切替器SW1と、第2切替器SW2と、第1切替制御部4と、第2切替制御部5と、制御信号生成器6と、バイアス回路7とを備えていてもよい。
【0020】
第1切替器SW1は、第1トランジスタQ1のゲートを第1トランジスタQ1のオフ電圧に設定するか否かを切り替える。第2切替器SW2は、第1トランジスタQ1のゲートを第1トランジスタQ1のオン電圧に設定するか否かを切り替える。
【0021】
第1切替制御部4は、制御信号生成器6で生成された制御信号により第1切替器SW1を切替制御する。第2切替制御部5は、制御信号生成器6で生成された制御信号の反転信号により第2切替器SW2を切替制御する。
【0022】
制御信号生成器6は、後述するように、第1トランジスタQ1をスイッチングするタイミングに合わせて、制御信号を生成する。例えば、制御信号がハイレベルになると、第1トランジスタQ1がオフし、制御信号がローレベルになると、第1トランジスタQ1がオンするようにしてもよい。制御信号の論理と、第1トランジスタQ1のオン/オフは任意である。
【0023】
第1インピーダンス可変回路2は、第1切替器SW1を介して第1トランジスタQ1の制御電極に電気的に接続されている。
【0024】
次に、本実施形態によるサージ制御回路1の動作を説明する。通常状態では、第1トランジスタQ1は、制御信号生成器6から出力される制御信号の論理に応じて、オン又はオフする。第1トランジスタQ1がN型MOSトランジスタの場合、例えば制御信号がハイレベルのときに第1切替器SW1がオンして第2切替器SW1はオフする。これにより、第1トランジスタQ1のゲートはロー電位になり、第1トランジスタQ1はオフする。制御信号がローレベルになると第1切替器SW1がオフして第2切替器SW2がオンする。これにより、第1トランジスタQ1のゲートはハイ電位になり、第1トランジスタQ1はオンする。なお、制御信号がハイレベルのときに第1切替器SW1がオフして第2切替器SW2がオンするようにしてもよい。
【0025】
第1トランジスタQ1がオンすると、第1トランジスタQ1で駆動される駆動回路9に電流が流れる。
図1の例では、第1トランジスタQ1のドレインに、直流電源8、抵抗R1及びインダクタL1が直列接続された駆動回路9が接続されている例を示している。この駆動回路9は、例えばモータ駆動回路であってもよい。なお、駆動回路9の回路構成は任意である。
【0026】
第1トランジスタQ1がスイッチング動作を行うと、駆動回路9にサージ電圧やサージ電流が発生することがある。
図1のサージ制御回路1では、駆動回路9にサージ電圧やサージ電流が発生すると、ダイオードD1のアノードからカソードに向けて電流が流れる。
図3は、ダイオードD1のアノードからカソードに流れる電流がどこに向かうかを矢印線で示した図である。図示のように、ダイオードD1のアノードからカソードに流れた電流は、第1インピーダンス可変回路2と第1トランジスタQ1の制御電極に流れる。
【0027】
第1インピーダンス可変回路2は、第1トランジスタQ1の制御電極の電圧が高くなるほど、インピーダンスが高くなる特性を有する。よって、駆動回路9にサージ電圧やサージ電流が発生して、ダイオードD1のアノードからカソードに流れる電流が大きくなるほど、第1インピーダンス可変回路2のインピーダンスは高くなり、第1インピーダンス可変回路2には電流が流れにくくなる。このため、ダイオードD1のアノードからカソードに流れた電流の大半は、第1インピーダンス可変回路2には流れずに、第1トランジスタQ1の制御電極に流れる。これはすなわち、駆動回路9にサージ電圧やサージ電流が発生すると、迅速に第1トランジスタQ1の制御電極のゲート電圧を引き上げる動作が行われることを意味し、駆動回路9内のサージ電流を、第1トランジスタQ1のドレイン-ソース間を通して接地ノードに吸収させることができる。
【0028】
このように、第1インピーダンス可変回路2は、第1トランジスタQ1のスイッチングによりサージ電圧やサージ電流が発生したときに、ダイオードD1の順方向電流が増えると、第1トランジスタQ1のゲート電圧を高くなるだけでなく、第1トランジスタQ1のゲートと第1基準電圧ノードとの間のインピーダンスが高くなる。これにより、直列接続されたダイオードD1とキャパシタC1を通って流れるサージ電流が第1インピーダンス可変回路2に流れにくくなり、第1トランジスタQ1のゲート電圧が低くなるのを抑制できる。
【0029】
図4は
図1のサージ制御回路1から第1インピーダンス可変回路2を省略した一比較例のサージ制御回路100の回路図である。
図4では簡略化のために、第1切替器SW1、第2切替器SW2、第1切替制御部4、及び第2切替制御部5を省略している。
図4のサージ制御回路1では、第1トランジスタQ1のスイッチング動作により駆動回路9にサージ電圧やサージ電流が発生すると、ダイオードD1のアノードからカソードに向けて電流が流れる点では、
図1のサージ制御回路1と共通する。しかしながら、キャパシタC1の他端側を流れる電流の一部は、制御信号生成器6側にも流れる。このため、駆動回路9にサージ電圧やサージ電流が発生したときに、第1トランジスタQ1の制御電極の電圧を迅速に引き上げることができず、駆動回路9内のサージ電圧やサージ電流を迅速に吸収できない。
【0030】
図5は、第1トランジスタQ1がオンからオフに変化する直後の第1トランジスタQ1のドレイン電圧波形図である。
図5の波形w1は
図1のドレイン電圧波形、波形w2は
図4のドレイン電圧波形、波形w3は
図4からさらにダイオードD1とキャパシタC1を省略した回路のドレイン電圧波形を示している。
【0031】
ダイオードD1とキャパシタC1を設けることで、第1トランジスタQ1のドレインが変化するまでの応答時間が長くなる。これは、ダイオードD1に寄生容量があるためである。
図4のサージ制御回路1は、波形w2とw3を比較すればわかるように、サージとリンギングが多少は抑制されるものの、十分に抑制できているとは言いがたい。
図1のサージ制御回路1は、波形w1とw2を比較すればわかるように、サージとリンギングをともに十分に抑制できている。
【0032】
なお、波形w1は第1トランジスタQ1のドレインが変化するまでの応答時間が、波形w2よりも長くなっているが、実用上はほとんど問題ない。
【0033】
図6は
図1の回路構成に第2インピーダンス変換回路11を追加したサージ制御回路1aの回路図である。第2インピーダンス変換回路11は、第2切替器SW2と第3基準電圧ノードとの間に接続されている。第3基準電圧ノードは、例えば電源電圧ノードである。第2インピーダンス変換回路11は、第1切替器SW1に直列に接続され、第1トランジスタQ1のゲートと第3基準電圧ノードとの間のインピーダンスを可変することができる。
【0034】
第2インピーダンス変換回路11は、第3トランジスタQ3と、可変電圧源12とを有する。第3トランジスタQ3は、例えばN型MOSトランジスタである。可変電圧源12は、第3トランジスタQ3のゲートとソースの間に接続されている。
【0035】
第2インピーダンス変換回路11及び第2切替器SW2は、第1インピーダンス可変回路2及び第1切替器SW1と対の構成になっている。このように、第2インピーダンス変換回路11は、回路構成上のバランスを取るために設けられており、サージ抑制には特には寄与しないため、省略しても構わない。
【0036】
このように、第1の実施形態によるサージ制御回路1では、第1トランジスタQ1のドレインとゲートの間にダイオードD1及びキャパシタC1を直列接続するだけでなく、第1トランジスタQ1のゲートと接地ノードの間に第1インピーダンス可変回路2を接続する。
【0037】
第1インピーダンス可変回路2では、可変電圧源3により第2トランジスタQ2のゲート電圧を調整することにより、第2トランジスタQ2をアナログ動作させることができる。これにより、駆動回路9にサージ電圧やサージ電流が発生したときに、第2トランジスタQ2のドレイン電圧が高くなるほど、第1インピーダンス可変回路2のインピーダンスを高くすることができる。よって、サージ発生時に、第1トランジスタQ1のゲート電圧を迅速に引き上げ、サージ電流を接地ノードに吸収させることができる。
【0038】
(第2の実施形態)
第1の実施形態によるサージ制御回路1bは、サージ発生時に第2トランジスタQ2をアナログ動作させる必要がある。そこで、第2の実施形態は、サージ発生時に第2トランジスタQ2を確実にアナログ動作させるものである。
【0039】
図7は第2の実施形態によるサージ制御回路1bの回路図である。
図7のサージ制御回路1bは、第1インピーダンス可変回路2内に設けられる負電圧生成回路13を備えている。負電圧生成回路13は、第2トランジスタQ2のソース電圧を第2基準電圧ノードの電圧よりも低い電圧に設定する。第2基準電圧ノードは例えば接地ノードである。負電圧生成回路13は、例えば、第2トランジスタQ2のソースと接地ノードとの間に接続される直流電圧源14を有する。直流電圧源14の負側電圧端子は第2トランジスタQ2のソースに接続されている。なお、負電圧生成回路13の具体的な回路構成は、
図7に示したものに限定されない。
【0040】
第2トランジスタQ2のソース電圧を負電圧に設定することで、
図2のI-V特性上の動作点を見かけ上右側に移動させることができ、第2トランジスタQ2を確実に飽和領域で動作、すなわちアナログ動作させることができる。したがって、駆動回路9にサージ電圧やサージ電流が発生したときに、ダイオードD1に流れる順方向電流が多いほど、第1インピーダンス可変回路2のインピーダンスを高くでき、第1トランジスタQ1のゲート電圧を迅速に高くして、サージ電流を接地ノードに吸収させることができる。なお、
図7のサージ制御回路1bにおける第2インピーダンス変換回路11は、省略しても構わない。
【0041】
図7のサージ制御回路1bは、キャパシタC1と第1トランジスタQ1のゲートとの間に抵抗R2を接続するとともに、第1トランジスタQ1のゲートと第1切替器SW1、第2切替器SW2との間に抵抗R3を接続している。これら抵抗R2,R3は省略してもよい。また、
図1や
図6のサージ制御回路1、1aに抵抗R2,R3を追加してもよい。
【0042】
このように、第2の実施形態では、第2トランジスタQ2のソース電圧を負電圧にするため、サージ発生時に第2トランジスタQ2を確実にアナログ動作させることができ、サージ電圧やサージ電流を迅速に抑制できる。
【0043】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態によるサージ制御回路1、1a、1bは、回路構成の種々の変形が可能である。例えば、
図8は第3の実施形態のサージ制御回路1cの回路図である。
図8のサージ制御回路1cは、
図1のサージ制御回路1内のバイアス回路7を具体化したものである。
図8のバイアス回路7は、ダイオードD1のカソードと第1基準電圧ノードとの間に直列接続される直流電圧源15及び抵抗R2を有する。
図8のバイアス回路7は、
図6のバイアス回路7にも適用可能である。なお、バイアス回路7の具体的な回路構成は任意であり、必ずしも
図8と同一の回路構成である必要はない。なお、
図8のサージ制御回路1cにおける第2インピーダンス変換回路11は、省略しても構わない。また、
図8のサージ制御回路1cに、
図7と同様の抵抗R2,R3を追加してもよい。
【0044】
図9は第3の実施形態の第1変形例のサージ制御回路1dの回路図である。
図9のサージ制御回路1dは、第2インピーダンス変換回路11内の第3トランジスタQ3を、P型MOSトランジスタQ3’に置換したものである。なお、第1インピーダンス可変回路2内の第2トランジスタQ2は、通常はN型MOSトランジスタである。
【0045】
上述した各サージ制御回路1a、1b、1c、1dでは、第1トランジスタQ1のゲート側に第1切替器SW1及び第2切替器SW2を配置し、第2基準電位ノード(例えば接地ノード)側に第2トランジスタQ2を配置し、かつ第3基準電位ノード(例えば電源電圧ノード)側に第3トランジスタQ3を配置しているが、これらの接続順序は逆でもよい。
【0046】
図10は第3の実施形態の第2変形例のサージ制御回路1eの回路図である。
図10のサージ制御回路1eは、第1切替器SW1と第2トランジスタQ2の接続順序を
図6とは逆にし、かつ第2切替器SW2と第3トランジスタQ3の接続順序も
図6とは逆にした回路図である。
図10の第3トランジスタQ3を省略してもよい。
図10のサージ制御回路1eでは、第1インピーダンス可変回路2内の第2トランジスタQ2のゲートとソースの間に可変電圧源3が接続されており、第2トランジスタQ2のソースと接地ノードの間に第1切替器SW1が接続されている。第2インピーダンス変換回路11の構成も第1インピーダンス可変回路2と同様である。
【0047】
図11は第3の実施形態の第3変形例のサージ制御回路1fの回路図である。
図11のサージ制御回路1fでは、第1インピーダンス可変回路2内の第2トランジスタQ2のソースと接地ノードとの間に第1切替器SW1が接続される点では
図10と共通するが、第2トランジスタQ2のゲートと接地ノードの間に可変電圧源3が接続される点で
図10とは異なる。なお、
図10と
図11のサージ制御回路1e、1fでも、第2インピーダンス変換回路11を省略してもよい。
【0048】
このように、本開示によるサージ制御回路には、種々の回路構成が考えられるが、いずれの回路構成においても、上述したダイオードD1、キャパシタC1及び第1インピーダンス可変回路2が設けられており、駆動回路9にサージ電圧やサージ電流が発生したときに、ダイオードD1に流れる順方向電流が多いほど、第1インピーダンス可変回路2のインピーダンスを高くする。これにより、第1トランジスタQ1のゲート電圧を迅速に高くして、サージ電流を接地ノードに吸収することができ、サージ抑制効果を高めることができる。
【0049】
上述した種々の回路構成のサージ制御回路1~1fは、電力変換器21にて用いることができる。
図12は電力変換器21の一例を示す回路図である。
図12の電力変換器21は、三相モータ22を駆動するための交流電圧を発生させるものである。
図12の電力変換器21は、複数のアーム23a~23fと、直流電源24と、コンバータ25と、平滑コンデンサC2とを有する。
【0050】
複数のアーム23a~23fのそれぞれは、上述した回路構成のサージ制御回路1~1fを有し、所定のタイミングでオン又はオフ動作を行う。
【0051】
コンバータはDC-DCコンバータであり、直流電源8からの直流電圧を、電圧レベルの異なる直流電圧に変換する。平滑コンデンサは、コンバータから出力される電圧を平滑化する。
【0052】
6個のアーム23a~23fのうち、2つのアームが同時にオンし、モータ内の対応するコイルに電流を流す。同時にオンする2つのアームを順次切り替えることで、モータを三相駆動することができる。
【0053】
なお、電力変換器21の具体的な回路構成は、
図12に示したものに限定されない。
【0054】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f サージ制御回路、2 第1インピーダンス可変回路、3 可変電圧源、4 第1切替制御部、5 第2切替制御部、6 制御信号生成器、7 バイアス回路、9 駆動回路、11 第2インピーダンス変換回路、12 可変電圧源、13 負電圧生成回路、14 直流電圧源、SW1 第1切替器、SW2 第2切替器、21 電力変換器、22 三相モータ、23a~23f アーム、24 直流電源、25 コンバータ