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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】車両用作動装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/04 20060101AFI20221219BHJP
   B62L 3/02 20060101ALI20221219BHJP
   B60T 7/10 20060101ALI20221219BHJP
   G05G 25/04 20060101ALI20221219BHJP
   F16D 25/08 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G05G1/04 A
B62L3/02 C
B62L3/02 D
B60T7/10 R
G05G25/04 Z
F16D25/08 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019207124
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021081854
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】海老沼 隆敏
(72)【発明者】
【氏名】小関 伸一
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/064190(WO,A1)
【文献】実開昭61-054984(JP,U)
【文献】特開平10-129567(JP,A)
【文献】特開2005-350053(JP,A)
【文献】特開2010-221735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05G 1/04
B62L 3/02
B60T 7/10
G05G 25/04
F16D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸(35)の回りに回動自在なレバー(2)と、
前記レバー(2)をハンドル(10)の前方に支持するホルダ(3)と、
前記ホルダ(3)に支持された作動ユニット(4)と、
前記レバー(2)の作動を前記作動ユニット(4)へ伝達するロッド(5)と、
前記軸(35)の回りの前記レバー(2)の初期位置を調節する調節機構(7)と、を備え、
前記ロッド(5)は、一端に球面(5a)を有し、
前記調節機構(7)は、前記球面(5a)を受ける球面受け部(70)を一端に有する受け部材(71)を備え、
前記レバー(2)は、前記受け部材(71)の前記球面受け部(70)とは反対側の部分が入る貫通孔(24h)を有し、
前記調節機構(7)は、前記貫通孔(24h)に沿って前記受け部材(71)を変位させる変位機構(72)を備え、
前記レバー(2)は、前記貫通孔(24h)に沿う軸線(C3)の回りの前記受け部材(71)の回転を規制する回転規制部(25)を備えることを特徴とする車両用作動装置。
【請求項2】
前記ロッド(5)を覆うフード(6)を更に備え、
前記受け部材(71)は、前記フード(6)を係合する係合部(71a)を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用作動装置。
【請求項3】
前記球面受け部(70)は、前記球面(5a)の周囲を覆う覆い部(70a,70b)を備え、
前記係合部(71a)は、前記覆い部(70a,70b)に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用作動装置。
【請求項4】
前記球面受け部(70)は、前記球面(5a)の周囲を覆う覆い部(70a,70b)を備え、
前記覆い部(70a,70b)は、上下方向に沿う軸線(C2)を中心とする前記ロッド(5)の揺動を許容する凹部(70c)を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両用作動装置。
【請求項5】
前記レバー(2)が初期位置にある場合のロッド傾斜角度をロッド初期角度A1とし、前記レバー(2)がグリップタッチ位置にある場合のロッド傾斜角度をロッド最終角度A2としたとき、以下の式(1)を満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用作動装置。
A1≦A2/4 ・・・(1)
【請求項6】
前記受け部材(71)は、前記貫通孔(24h)に沿って延びる雄ねじ部(71b)を有し、
前記変位機構(72)は、
前記貫通孔(24h)を挟んで前記雄ねじ部(71b)の一方側に螺合する第一ナット(73)と、
前記貫通孔(24h)を挟んで前記雄ねじ部(71b)の他方側に螺合する第二ナット(74)と、を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両用作動装置。
【請求項7】
前記レバー(2)は、
前記ホルダ(3)に接続される基部(20)と、
前記基部(20)から後方に突出する後方突出部(24)と、を備え、
前記後方突出部(24)は、前記レバー(2)が延びる方向に開口する前記貫通孔(24h)を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用作動装置。
【請求項8】
前記回転規制部(25)は、前記レバー(2)において前記軸(35)の後方に設けられた面であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用作動装置。
【請求項9】
前記球面(5a)は、前記ロッド(5)の軸線(C1)上に配置されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の車両用作動装置。
【請求項10】
前記作動ユニット(4)は、クラッチ装置を断接する液圧を制御するクラッチ制御ユニットであることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の車両用作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のハンドルに設けられたレバーによりブレーキ装置又はクラッチ装置を作動させる車両用作動装置が知られている。例えば、特許文献1では、車両用作動装置をハンドルに接続する支持構造と、支持構造に接続された作動ユニットと、支持構造に回動自在に接続された作動レバーと、作動レバーの動きを遮断して作動ユニットを作動させるために作動レバーの作動角度ストロークを作動ユニットへ伝達するように支持構造に対して回動自在に接続された調節レバーと、調節レバーによる作用を受けるトランスミッション部と、作動ユニットを外部環境から保護するフードと、を備える。調節レバーは、支持構造に対する調節レバーの停止位置を調節する調節手段を備える。トランスミッション部は、作動ユニットのピストンと接触する作動端部と、調節手段に当接する接続端部と、を有する。調節手段は、調節レバーのネジ穴に螺合される調節ネジを含む。調節ネジは、トランスミッション部の接続端部と接触する漏斗状のインターフェースハウジングを有する。調節ネジ(インターフェースハウジング)は、調節レバーの停止位置を調節する際に自身の軸線の回りに回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-513927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、調節ネジが自身の軸線の回りに回動する場合、フードがねじれてしまうため、調節ネジにフードを直接取り付けることができない。この場合、フードによってトランスミッション部の接続端部とインターフェースハウジングとが接触する部分(接触部分)を覆うことができない。そのため、土砂や塵埃、雨水等の異物が上記の接触部分に侵入する可能性がある。
【0005】
そこで本発明は、ロッドと受け部材とが接触する部分への異物の侵入を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係る車両用作動装置は、軸(35)の回りに回動自在なレバー(2)と、前記レバー(2)をハンドル(10)の前方に支持するホルダ(3)と、前記ホルダ(3)に支持された作動ユニット(4)と、前記レバー(2)の作動を前記作動ユニット(4)へ伝達するロッド(5)と、前記軸(35)の回りの前記レバー(2)の初期位置を調節する調節機構(7)と、を備え、前記ロッド(5)は、一端に球面(5a)を有し、前記調節機構(7)は、前記球面(5a)を受ける球面受け部(70)を一端に有する受け部材(71)を備え、前記レバー(2)は、前記受け部材(71)の前記球面受け部(70)とは反対側の部分が入る貫通孔(24h)を有し、前記調節機構(7)は、前記貫通孔(24h)に沿って前記受け部材(71)を変位させる変位機構(72)を備え、前記レバー(2)は、前記貫通孔(24h)に沿う軸線(C3)の回りの前記受け部材(71)の回転を規制する回転規制部(25)を備える。
【0007】
(2)上記(1)に記載の車両用作動装置では、前記ロッド(5)を覆うフード(6)を更に備え、前記受け部材(71)は、前記フード(6)を係合する係合部(71a)を備えてもよい。
【0008】
(3)上記(2)に記載の車両用作動装置では、前記球面受け部(70)は、前記球面(5a)の周囲を覆う覆い部(70a,70b)を備え、前記係合部(71a)は、前記覆い部(70a,70b)に設けられていてもよい。
【0009】
(4)上記(1)から(3)のいずれか一項に記載の車両用作動装置では、前記球面受け部(70)は、前記球面(5a)の周囲を覆う覆い部(70a,70b)を備え、前記覆い部(70a,70b)は、上下方向に沿う軸線(C2)を中心とする前記ロッド(5)の揺動を許容する凹部(70c)を有してもよい。
【0010】
(5)上記(1)から(4)のいずれか一項に記載の車両用作動装置では、前記レバー(2)が初期位置にある場合のロッド傾斜角度をロッド初期角度A1とし、前記レバー(2)がグリップタッチ位置にある場合のロッド傾斜角度をロッド最終角度A2としたとき、以下の式(1)を満たしてもよい。
A1≦A2/4 ・・・(1)
【0011】
(6)上記(1)から(5)のいずれか一項に記載の車両用作動装置では、前記受け部材(71)は、前記貫通孔(24h)に沿って延びる雄ねじ部(71b)を有し、前記変位機構(72)は、前記貫通孔(24h)を挟んで前記雄ねじ部(71b)の一方側に螺合する第一ナット(73)と、前記貫通孔(24h)を挟んで前記雄ねじ部(71b)の他方側に螺合する第二ナット(74)と、を備えてもよい。
【0012】
(7)上記(1)から(6)のいずれか一項に記載の車両用作動装置では、前記レバー(2)は、前記ホルダ(3)に接続される基部(20)と、前記基部(20)から後方に突出する後方突出部(24)と、を備え、前記後方突出部(24)は、前記レバー(2)が延びる方向に開口する前記貫通孔(24h)を有してもよい。
【0013】
(8)上記(1)から(7)のいずれか一項に記載の車両用作動装置では、前記回転規制部(25)は、前記レバー(2)において前記軸(35)の後方に設けられた面であってもよい。
【0014】
(9)上記(1)から(8)のいずれか一項に記載の車両用作動装置では、前記球面(5a)は、前記ロッド(5)の軸線(C1)上に配置されていてもよい。
【0015】
(10)上記(1)から(9)のいずれか一項に記載の車両用作動装置では、前記作動ユニット(4)は、クラッチ装置を断接する液圧を制御するクラッチ制御ユニットであってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記(1)に記載の車両用作動装置によれば、レバーは、貫通孔に沿う軸線の回りの受け部材の回転を規制する回転規制部を備えることで、以下の効果を奏する。
回転規制部によって受け部材の回転が規制されるため、ロッドを覆うフードを設けた場合には、フードを受け部材まで覆うことができる。そのため、フードによってロッドと受け部材とが接触する部分を覆うことができる。したがって、ロッドと受け部材とが接触する部分への異物の侵入を抑制することができる。
【0017】
本発明の上記(2)に記載の車両用作動装置によれば、ロッドを覆うフードを更に備え、受け部材は、フードを係合する係合部を備えることで、以下の効果を奏する。
受け部材とは異なる部材に係合部を設けた場合と比較して、フードを係合しやすい。
【0018】
本発明の上記(3)に記載の車両用作動装置によれば、球面受け部は、球面の周囲を覆う覆い部を備え、係合部は、覆い部に設けられていることで、以下の効果を奏する。
球面の周囲の限られたスペースを係合部の設置位置として有効に活用することができる。加えて、フードを必要最小の大きさにできる。
【0019】
本発明の上記(4)に記載の車両用作動装置によれば、球面受け部は、球面の周囲を覆う覆い部を備え、覆い部は、上下方向に沿う軸線を中心とするロッドの揺動を許容する凹部を有することで、以下の効果を奏する。
回転規制部によって受け部材の回転が規制されるため、覆い部においてロッドの揺動に応じた部分のみに凹部を形成できる。加えて、凹部によってロッドの揺動が許容されるため、ロッドを広い範囲で揺動することができる。加えて、ロッドと受け部材とが接触する部分を軸に近づけることができる。したがって、小型化に寄与し且つレシオ特性の設定自由度が向上する。
【0020】
本発明の上記(5)に記載の車両用作動装置によれば、レバーが初期位置にある場合のロッド傾斜角度をロッド初期角度A1とし、レバーがグリップタッチ位置にある場合のロッド傾斜角度をロッド最終角度A2としたとき、以下の式(1)を満たす。
A1≦A2/4 ・・・(1)
この構成によれば、A1>A2/4の場合と比較して、以下の効果を奏する。ロッドの揺動に応じた部分のみに凹部を形成しやすい。凹部によってロッドの揺動が許容されるため、ロッドを広い範囲で揺動しやすい。加えて、ロッドと受け部材とが接触する部分を軸に近づけやすい。したがって、小型化しやすく且つレシオ特性の設定自由度を向上しやすい。
【0021】
本発明の上記(6)に記載の車両用作動装置によれば、受け部材は、貫通孔に沿って延びる雄ねじ部を有し、変位機構は、貫通孔を挟んで雄ねじ部の一方側に螺合する第一ナットと、貫通孔を挟んで雄ねじ部の他方側に螺合する第二ナットと、を備えることで、以下の効果を奏する。
変位機構が第一ナット及び第二ナットを備える、いわゆるダブルナット構造であるため、簡単な構成でレバーの位置を無段階で調節することができる。
【0022】
本発明の上記(7)に記載の車両用作動装置によれば、レバーは、ホルダに接続される基部と、基部から後方に突出する後方突出部と、を備え、後方突出部は、レバーが延びる方向に開口する貫通孔を有することで、以下の効果を奏する。
レバーを初期位置からグリップタッチ位置まで軸の回りに回動させることにより、ロッドを傾けつつ車幅方向内側へ押し込むことができる。加えて、簡単な構成で限られたスペースを貫通孔の設置位置として有効に活用することができる。
【0023】
本発明の上記(8)に記載の車両用作動装置によれば、回転規制部は、レバーにおいて軸の後方に設けられた面であることで、以下の効果を奏する。
簡単な構成で限られたスペースを回転規制部の設置位置として有効に活用することができる。
【0024】
本発明の上記(9)に記載の車両用作動装置によれば、球面は、ロッドの軸線上に配置されていることで、以下の効果を奏する。
球面がロッドの軸線上に配置されない場合と比較して、小型化しやすい。
【0025】
本発明の上記(10)に記載の車両用作動装置によれば、作動ユニットは、クラッチ装置を断接する液圧を制御するクラッチ制御ユニットであることで、以下の効果を奏する。
ブレーキ装置とは異なり、クラッチ装置に有効なレシオ特性を採用することができる。例えば、レバーを握る際の初期荷重は維持したまま、レバーを握り込んだ状態での操作荷重を通常(レシオ特性を変えない場合)よりも下げることができる。これにより、レバーを握る際の操作感を重くしつつ、レバーを握り込んだ状態での操作感を軽くすることができるため、クラッチ装置を作動させる際のレバーの操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る作動装置の分解斜視図である。
図2】実施形態に係る作動装置の後面図である。
図3】実施形態に係る作動装置の左側面図である。
図4】実施形態に係る受け部材の斜視図である。
図5図2のV-V断面図である。
図6】実施形態に係る作動装置の停止状態の断面を含む上面図である。
図7】実施形態に係る作動装置の作動状態の断面を含む上面図である。
図8図5のVIII-VIII断面図である。
図9】ロッド傾斜角度と操作荷重との関係であるレシオ特性を示す図である。
図10】実施形態の変形例に係る変位機構の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する作動装置が搭載される自動二輪車(鞍乗型車両)のハンドルにおける向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、ハンドルの前方(ハンドルグリップの軸線と直交する車両前方)を示す矢印FR、ハンドルの左方(ハンドルグリップの軸線と平行な車幅方向外方)を示す矢印LH、及びハンドルの上方(車両上方)を示す矢印UPが示されている。なお、ハンドルグリップの軸線は、車幅方向に対して後傾している。
【0028】
<作動装置>
図1は、自動二輪車のハンドル(バーハンドル)の左側部に設けられる作動装置1を示す。以下、自動二輪車を単に「車両」ということがある。図1を参照し、作動装置1は、上下方向に沿う軸35(ボルト35)の回りに回動自在なレバー2と、レバー2をハンドル10(図6参照)の前方に支持するホルダ3と、ホルダ3に接続された作動ユニット4と、レバー2の作動を作動ユニット4へ伝達するロッド5と、ロッド5を覆うフード6と、軸35の回りのレバー2の初期位置を調節する調節機構7と、車両の始動時の安全機構(スタートセーフティ機構)であるインヒビタースイッチ8と、を備える。
【0029】
<レバー>
図6に示すように、レバー2は、ハンドル10の前方に配置されている。レバー2は、乗員によって把持されていない状態(図6参照)と、乗員によって把持されてハンドルグリップ11に当接している状態(図7参照)との間で軸35の回りに回動自在である。以下、レバー2が乗員によって把持されていない状態の位置(レバー2を握り込む前の位置)を「初期位置」、レバー2が乗員によって把持されてハンドルグリップ11に当接している状態の位置を「グリップタッチ位置」ともいう。図6は初期位置、図7はグリップタッチ位置をそれぞれ示す。
【0030】
レバー2は、車幅方向にクランク状に延びている。レバー2は、ホルダ3に接続される基部20と、基部20から車幅方向外方に延びる第一延在部21と、第一延在部21の車幅方向外端から車幅方向外側に向かうに従って後方に位置するように傾斜して延びる第二延在部22と、第二延在部22の車幅方向外端から車幅方向外方に延びる第三延在部23と、基部20から後方に突出する後方突出部24と、を備える。
【0031】
レバー2の基部20は、上下方向に開口し軸35を挿通可能な貫通孔20hと、車幅方向内方に開口し不図示のリターンスプリング(付勢部材)の一端部を収容する内側開口20iと、を有する。リターンスプリングの一端部は、内側開口20iの内壁部に取り付けられる。
【0032】
レバー2の基部20は、リターンスプリング(不図示)によってホルダ3に向けて付勢されている。これにより、レバー2は、初期においてハンドルグリップ11から最も離れている(図6参照)。一方、レバー2がリターンスプリングの付勢力に抗して握り込まれると、ハンドルグリップ11に近づく。レバー2は、グリップタッチ位置において、第三延在部23の後端がハンドルグリップ11に当接する(図7参照)。
【0033】
後方突出部24は、車幅方向(レバー2の第一延在部21が延びる方向)に開口する貫通孔24hを有する。貫通孔24hは、受け部材71の球面受け部70とは反対側の部分が入る孔である。
【0034】
<ホルダ>
ホルダ3は、レバー2の基部20を軸35の回りに回動自在に支持している。図1に示すように、ホルダ3は、レバー2の基部20を上下方向から挟む一対のレバー支持部30A,30Bと、一対のレバー支持部30A,30Bの前部に連結された前壁部31と、作動ユニット4を支持するユニット支持部32と、インヒビタースイッチ8を支持するスイッチ支持部33と、ハンドル10(図6参照)に接続されるハンドル接続部34と、を備える。
【0035】
一対のレバー支持部30A,30Bは、レバー2の基部20上部を支持する上支持部30Aと、レバー2の基部20下部を支持する下支持部30Bと、である。一対のレバー支持部30A,30Bは、上下方向に開口し軸35を挿通可能な貫通孔30hを有する。例えば、一対のレバー支持部30A,30Bの間にレバー2の基部20を配置し、軸35(ボルト35の軸部)をレバー支持部30A,30B及びレバー2の基部20の各貫通孔30h,24hに挿通する。次に、各貫通孔24hに挿通されたボルト35の軸部の突出部にナット36を螺着する。これにより、レバー2をホルダ3に取り付けることができる。
【0036】
前壁部31は、車幅方向外側に開口し不図示のリターンスプリングの他端部を収容する外側開口31iを有する。リターンスプリングの他端部は、外側開口31iの内壁部に取り付けられる。外側開口31iは、レバー2の初期位置において内側開口20iと対向する(図6参照)。
【0037】
図5に示すように、ユニット支持部32は、前壁部31の車幅方向内端から車幅方向内方に向かって延びている。ユニット支持部32は、ハンドル10(図6参照)と略平行に延びている。ユニット支持部32は、作動ユニット4を収容する収容空間32aを有する。
【0038】
図3に示すように、スイッチ支持部33は、下支持部30Bの後部下部に設けられている。スイッチ支持部33は、ユニット支持部32の左側部の下方に配置されている。スイッチ支持部33は、ユニット支持部32と略平行に延びている。スイッチ支持部33は、インヒビタースイッチ8の外周を覆っている。
【0039】
図5に示すように、ハンドル接続部34は、ユニット支持部32の車幅方向外端部から後方に向かって突出している。図3の側面視で、ハンドル接続部34は、ハンドル10(図6参照)の前面に沿う弧状の接続面34aを有する。ハンドル接続部34は、ハンドル10の前部を上下方向の外側から挟むようにハンドル10に取り付けられる。
【0040】
<作動ユニット>
作動ユニット4は、クラッチ装置(不図示)を断接する液圧を制御するマスターシリンダ(クラッチ制御ユニット)である。作動ユニット4は、レバー2の作動角度に応じてクラッチ油圧(液圧)を制御する。
例えば、作動ユニット4は、レバー2が初期位置(図6参照)にある場合、クラッチ装置に油圧を供給する。これにより、クラッチ装置は、動力伝達可能な接続状態となる。
一方、作動ユニット4は、レバー2がグリップタッチ位置(図7参照)にある場合、クラッチ装置に油圧を供給しない。これにより、クラッチ装置は、動力伝達不能な切断状態となる。
【0041】
図5に示すように、作動ユニット4は、ユニット支持部32の収容空間32aに配置されたピストン40と、ホルダ3に形成されたハウジング41と、ハウジング41に接続されたリザーバタンク42(図2参照)と、クラッチ装置に接続された不図示のケーブルと、を備える。
【0042】
ピストン40は、ハンドル10(図6参照)と略平行に延びている。ピストン40の車幅方向外端部には、車幅方向内側に窪む凹部40cが形成されている。凹部40cは、ロッド5の車幅方向内端を収容可能に車幅方向外側に開口している。凹部40cは。図5の断面視でU字状をなしている。図中符号43は、ピストン40の車幅方向外端部を支持する環状のワッシャを示す。
【0043】
<ロッド>
ロッド5は、レバー2の作動を作動ユニット4へ伝達する。ロッド5は、車幅方向に延びている。ロッド5は、車幅方向外端(一端)に球面5aを有する。球面5aは、ロッド5の軸線C1上に配置されている。球面5aは、車幅方向外側に向かって凸をなす半球面状をなしている。
【0044】
ここで、図6図7の上面視で、軸35の中心を通りかつ前後方向に延びる第一仮想線L1と、軸35の中心及び球面5aの径方向中心を通る第二仮想線L2とのなす角度を「ロッド傾斜角度」とする。
図中において、符号A1はレバー2が初期位置にある場合のロッド傾斜角度(以下「ロッド初期角度」ともいう。)、符号A2はレバー2がグリップタッチ位置にある場合のロッド傾斜角度(以下「ロッド最終角度」ともいう。)をそれぞれ示す。
【0045】
例えば、ロッド初期角度A1及びロッド最終角度A2は、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
A1≦A2/4 ・・・(1)
本実施形態では、A1≒A2/8である。
【0046】
<フード>
図5に示すように、フード6は、ロッド5の周囲を覆っている。フード6は、可撓性を有する筒状の部材である。例えば、フード6は、ゴム等の弾性材料で形成されている。図中符号60は、フード6の車幅方向内端(第一環部61)を支持する支持部材を示す。
【0047】
フード6は、ホルダ3に支持される環状の第一環部61と、第一環部61から車幅方向外方に延びた後に径方向内側に湾曲する筒状の第一筒部62と、第一筒部62の湾曲端(径方向内側端)から車幅方向外方に延びる筒状の第二筒部63と、第二筒部63の車幅方向外端に接続される環状の第二環部64と、を備える。第一環部61、第一筒部62、第二筒部63及び第二環部64は、同一の部材で一体に形成されている。第二筒部63は、変形前の状態において、第一筒部62との接続部から車幅方向外側に向かうに従って徐々に拡径している。
【0048】
<調節機構>
調節機構7は、ロッド5の球面5aを受ける球面受け部70を車幅方向内端(一端)に有する受け部材71と、レバー2の貫通孔24hに沿って受け部材71を変位させる変位機構72と、を備える。
【0049】
図4に示すように、球面受け部70は、ロッド5の球面5aを覆う覆い部70a,70bを備える。覆い部70a,70bは、上下方向に沿う軸線C2(図5参照)を中心とするロッド5の揺動を許容する凹部70cを有する。凹部70cは、覆い部70a,70bにおいて前後方向に開口する部分である。言い換えると、覆い部70a,70bは、ロッド5の球面5aを上下方向の外側から覆っている。覆い部70a,70bは、ロッド5の球面5aを上方から覆う上覆い部70aと、ロッド5の球面5aを下方から覆う下覆い部70bと、である。
【0050】
図5に示すように、受け部材71は、フード6を係合する係合部71aと、貫通孔24hに沿って延びる雄ねじ部71bと、係合部71aと雄ねじ部71bとの間に配置された当接部71cと、を備える。
【0051】
図4に示すように、係合部71aは、覆い部70a,70bに設けられている。係合部71aは、覆い部70a,70bの基端の外周に沿うように設けられている。係合部71aは、ロッド5の球面5aの最外形よりも大きい円環状をなしている。係合部71aには、フード6の第二環部64が係合されている(図5参照)。
【0052】
図5に示すように、雄ねじ部71bは、後方突出部24の幅(貫通孔24hの全長)よりも長く延びている。雄ねじ部71bの外径は、雄ねじ部71bが貫通孔24hに沿って移動可能な大きさとされている。雄ねじ部71bの先端には、Oリング71eが取り付けられている。
【0053】
当接部71cは、レバー2の回転規制部25に当接する部分である。図8に示すように、雄ねじ部71bの軸線に沿う方向から見て、当接部71cは、雄ねじ部71bよりも大きい外形を有する。当接部71cは、回転規制部25に当接する平坦な当接面71dを有する。なお、当接面71dは、平坦な面であることに限らず、レバー2の回転規制部25の形状に合わせた面(例えば凹凸形状を有する面)であってもよい。図8の断面視で、一対のレバー支持部30A,30Bと当接部71cとの間には、隙間が形成されている。
【0054】
図5に示すように、変位機構72は、貫通孔24hを挟んで雄ねじ部71bの一方側に螺合する第一ナット73と、貫通孔24hを挟んで雄ねじ部71bの他方側に螺合する第二ナット74と、を備える。変位機構72は、第一ナット73及び第二ナット74を備える、いわゆるダブルナット構造である。
【0055】
例えば、第一ナット73及び第二ナット74を雄ねじ部71bに沿って移動させることにより、レバー2の位置(レバー2の初期位置におけるハンドルグリップ11に対するレバー2の離間位置)を無段階で調節することができる。例えば、レバー2の後方突出部24を第一ナット73及び第二ナット74で挟み込むことにより、レバー2を位置決めすることができる。
【0056】
<回転規制部>
図5に示すように、レバー2は、貫通孔24hに沿う軸線C3の回りの受け部材71の回転を規制する回転規制部25を備える。回転規制部25は、レバー2において軸35の後方の後壁部に設けられた面である。回転規制部25は、レバー2において後方突出部24の車幅方向内側に配置されている。回転規制部25は、上面視で軸線C3と平行な平面である。以下、回転規制部25を「回転規制面25」ともいう。
【0057】
図8の断面視で、レバー2の後壁部は、上下方向に延びる直線状の回転規制面25と、回転規制面25の上端から上側に向かうに従って前方に位置するように傾斜して延びる上傾斜面26と、回転規制面25の下端から下側に向かうに従って前方に位置するように傾斜して延びる下傾斜面27と、を備える。回転規制面25は、レバー2の後壁部の上下方向の中央部に設けられている。
【0058】
<インヒビタースイッチ>
インヒビタースイッチ8は、車両の始動時の安全機構(スタートセーフティ機構)である。図2に示すように、インヒビタースイッチ8は、作動ユニット4の下方に配置されている。インヒビタースイッチ8は、作動ユニット4のピストン40と略平行に延びている。インヒビタースイッチ8は、ピストン40と略平行な筒型のスイッチである。図3に示すように、インヒビタースイッチ8は、上下方向に延びる軸35の後方に配置されている。
【0059】
インヒビタースイッチ8の車幅方向端部は、外部に露出している。図2に示すように、インヒビタースイッチ8の車幅方向内端には、不図示の配線に接続される端子80が設けられている。図中符号81は、インヒビタースイッチ8の軸線回りの移動を規制するストッパ(位置決め凸部)を示す。
【0060】
インヒビタースイッチ8の外周(車幅方向端部以外の部位)は、スイッチ支持部33によって覆われている。これにより、外観性が向上するとともに、インヒビタースイッチ8への異物の侵入を抑制することができる。加えて、インヒビタースイッチ8を外的要因から保護することができる。例えば、ホルダ3が外部から衝撃を受けたとしても、インヒビタースイッチ8を衝撃から保護することができる。
【0061】
<作用効果>
以上説明したように、上記実施形態の作動装置1は、軸35の回りに回動自在なレバー2と、レバー2をハンドル10の前方に支持するホルダ3と、ホルダ3に支持された作動ユニット4と、レバー2の作動を作動ユニット4へ伝達するロッド5と、軸35の回りのレバー2の初期位置を調節する調節機構7と、を備え、ロッド5は、一端に球面5aを有し、調節機構7は、球面5aを受ける球面受け部70を一端に有する受け部材71を備え、レバー2は、受け部材71の球面受け部70とは反対側の部分が入る貫通孔24hを有し、調節機構7は、貫通孔24hに沿って受け部材71を変位させる変位機構72を備え、レバー2は、貫通孔24hに沿う軸線C3の回りの受け部材71の回転を規制する回転規制部25を備える。
この構成によれば、レバー2は、貫通孔24hに沿う軸線C3の回りの受け部材71の回転を規制する回転規制部25を備えることで、以下の効果を奏する。
回転規制部25によって受け部材71の回転が規制されるため、ロッド5を覆うフード6を設けた場合には、フード6を受け部材71まで覆うことができる。そのため、フード6によってロッド5と受け部材71とが接触する部分を覆うことができる。したがって、ロッド5と受け部材71とが接触する部分への異物の侵入を抑制することができる。
【0062】
加えて、調節ネジが自身の軸線の回りに回動する場合と比較して、ロッド5の脱落防止部(覆い部70a,70b)を上下方向のみに設ければ済むため、ロッド5の前後方向の揺動角度を大きくすることができる。その結果、ロッド初期角度A1及びロッド最終角度A2を小さくでき、レシオ特性(レシオカーブ)を有利に設定することができる(図9参照)。図9において、横軸はロッド傾斜角度、縦軸はレバーレシオをそれぞれ示す。
【0063】
ここで、レバーレシオRLは、以下の式(1)により算出される。
RL=K1/K2 ・・・(1)
上記の式(1)において、K1はレバー2の支点(軸35の中心)と力点(レバー2を把持する部位、例えば第三延在部23の車幅方向中心)との間の距離、K2はレバー2の支点と作用点(レバー2の操作力がロッド5に作用する部位、例えばロッド5の軸線)との間の距離をそれぞれ示す(図6図7参照)。
【0064】
例えば、初期のトータルレシオ(油圧レシオ×レバーレシオ)を小さくすることにより、初期の操作性を向上することができる。加えて、レバー2を握り込んでいく過程においてリターンスプリングの反力が最大となる領域でのレバーレシオを大きくすることができる。これにより、レバー2を握り始めてから握り終わるまでの全域にわたって操作荷重を最小限に抑えつつ、操作性を向上することができる(図9参照)。
【0065】
仮に、調節ネジが自身の軸線の回りに回動する場合、回動部の外形が大きくなり、回動部を軸に近づけることが困難となる可能性が高い。これに対し、上記実施形態では、受け部材71の回転がないため、受け部材71の球面受け部70の外形を小さくすることができる。これにより、雄ねじ部71b(アジャストボルト)を軸35に近づけることができるため、レバーレシオを大きくしやすい。レバーレシオを大きくした分、レバー2の全長を小さくできるため、レバー2を軽量化しやすい。
【0066】
上記実施形態では、ロッド5を覆うフード6を備え、受け部材71は、フード6を係合する係合部71aを備えることで、以下の効果を奏する。
受け部材71とは異なる部材に係合部71aを設けた場合と比較して、フード6を係合しやすい。
【0067】
上記実施形態では、球面受け部70は、球面5aの周囲を覆う覆い部70a,70bを備え、係合部71aは、覆い部70a,70bに設けられていることで、以下の効果を奏する。
球面5aの周囲の限られたスペースを係合部71aの設置位置として有効に活用することができる。加えて、フード6を必要最小の大きさにできる。
【0068】
上記実施形態では、覆い部70a,70bは、上下方向に沿う軸線C2を中心とするロッド5の揺動を許容する凹部70cを有することで、以下の効果を奏する。
回転規制部25によって受け部材71の回転が規制されるため、覆い部70a,70bにおいてロッド5の揺動に応じた部分のみに凹部70cを形成できる。加えて、凹部70cによってロッド5の揺動が許容されるため、ロッド5を広い範囲で揺動することができる。加えて、ロッド5と受け部材71とが接触する部分を軸35に近づけることができる。したがって、小型化に寄与し且つレシオ特性の設定自由度が向上する。
【0069】
上記実施形態では、レバー2が初期位置にある場合のロッド傾斜角度をロッド初期角度A1とし、レバー2がグリップタッチ位置にある場合のロッド傾斜角度をロッド最終角度A2としたとき、以下の式(1)を満たす。
A1≦A2/4 ・・・(1)
この構成によれば、A1>A2/4の場合と比較して、以下の効果を奏する。ロッド5の揺動に応じた部分のみに凹部70cを形成しやすい。凹部70cによってロッド5の揺動が許容されるため、ロッド5を広い範囲で揺動しやすい。加えて、ロッド5と受け部材71とが接触する部分を軸35に近づけやすい。したがって、小型化しやすく且つレシオ特性の設定自由度を向上しやすい。
【0070】
上記実施形態では、受け部材71は、貫通孔24hに沿って延びる雄ねじ部71bを有し、変位機構72は、貫通孔24hを挟んで雄ねじ部71bの一方側に螺合する第一ナット73と、雄ねじ部71bの他方側に螺合する第二ナット74と、を備えることで、以下の効果を奏する。
変位機構72が第一ナット73及び第二ナット74を備える、いわゆるダブルナット構造であるため、簡単な構成でレバー2の位置を無段階で調節することができる。
【0071】
上記実施形態では、レバー2は、ホルダ3に接続される基部20と、基部20から後方に突出する後方突出部24と、を備え、後方突出部24は、レバー2が延びる方向に開口する貫通孔24hを有することで、以下の効果を奏する。
レバー2を初期位置からグリップタッチ位置まで軸35の回りに回動させることにより、ロッド5を傾けつつ車幅方向内側へ押し込むことができる。加えて、簡単な構成で限られたスペースを貫通孔24hの設置位置として有効に活用することができる。
【0072】
上記実施形態では、回転規制部25は、レバー2において軸の後方に設けられた面であることで、以下の効果を奏する。
簡単な構成で限られたスペースを回転規制部25の設置位置として有効に活用することができる。
【0073】
上記実施形態では、球面5aは、ロッド5の軸線C1上に配置されていることで、以下の効果を奏する。
球面5aがロッド5の軸線C1上に配置されない場合と比較して、小型化しやすい。
【0074】
上記実施形態では、作動ユニット4は、クラッチ装置を断接する液圧を制御するクラッチ制御ユニットであることで、以下の効果を奏する。
ブレーキ装置とは異なり、クラッチ装置に有効なレシオ特性を採用することができる。例えば、レバー2を握る際の初期荷重は維持したまま、レバー2を握り込んだ状態での操作荷重を通常(レシオ特性を変えない場合)よりも下げることができる。これにより、レバー2を握る際の操作感を重くしつつ、レバー2を握り込んだ状態での操作感を軽くすることができるため、クラッチ装置を作動させる際のレバー2の操作性が向上する。
【0075】
<変形例>
なお、上記実施形態では、受け部材71は、フード6を係合する係合部71aを備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、受け部材71とは異なる部材に係合部71aが設けられていてもよい。
【0076】
上記実施形態では、球面受け部70は、球面5aの周囲を覆う覆い部70a,70bを備え、係合部71aは、覆い部70a,70bに設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、球面受け部70は、覆い部70a,70bを有しなくてもよい。例えば、係合部71aは、覆い部70a,70bとは異なる部位に設けられていてもよい。
【0077】
上記実施形態では、覆い部70a,70bは、上下方向に沿う軸線C2を中心とするロッド5の揺動を許容する凹部70cを有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、覆い部70a,70bは、凹部70cを有しなくてもよい。例えば、覆い部70a,70bは、上下方向に沿う軸線C2を中心とするロッド5の揺動を許容可能に弾性変形してもよい。
【0078】
上記実施形態では、レバー2が初期位置にある場合のロッド傾斜角度をロッド初期角度A1とし、レバー2がグリップタッチ位置にある場合のロッド傾斜角度をロッド最終角度A2としたとき、以下の式(1)を満たす例を挙げて説明したが、これに限らない。
A1≦A2/4 ・・・(1)
例えば、上記の式(1)を満たさなくてもよい。すなわち、ロッド初期角度A1及びロッド最終角度A2は、A1>A2/4を満たしてもよい。
【0079】
上記実施形態では、受け部材71は、貫通孔24hに沿って延びる雄ねじ部71bを有し、変位機構72は、貫通孔24hを挟んで雄ねじ部71bの一方側に螺合する第一ナット73と、貫通孔24hを挟んで雄ねじ部71bの他方側に螺合する第二ナット74と、を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、変位機構172は、単一のナット173を有してもよい(図10参照)。
【0080】
図10の例では、ナット173は、環状の頭部173aと、雄ねじ部71bに螺合する筒状の雌ねじ部173bと、備える。頭部173aは、雄ねじ部71bの軸線に沿う方向から見て、雌ねじ部173bよりも大きくかつ当接部71cよりも小さい外形を有する。
【0081】
雌ねじ部173bは、貫通孔24hに沿って延びている。雌ねじ部173bの一端は、頭部173aに結合されている。雌ねじ部173bの他端部には、Oリング173cが取り付けられている。雌ねじ部173bは、貫通孔24hの軸線C3回りに回動自在とされている。雌ねじ部173bの外周面には、径方向内側に窪む凹部173dが形成されている。凹部173dは、雌ねじ部173bの周方向に間隔をあけて複数(例えば4つ)配置されている。なお、凹部173dの設置数は4つに限らず、1つであってもよいし、4つ以外の複数であってもよい。
【0082】
後方突出部24は、球状のクリックボール175と、クリックボール175を雌ねじ部173bの外周面に向けて付勢するスプリング176(付勢部材)と、を収容する収容部177を有する。図10の例では、クリックボール175は、スプリング176の付勢力によって雌ねじ部173bの凹部173dに入り込んでいる。クリックボール175が凹部173dに入り込むことにより、ナット173の貫通孔24h(軸線C3)に沿う方向の移動が規制される。
【0083】
例えば、ナット173の頭部173aを把持して雌ねじ部173bを貫通孔24hの軸線C3の回りに回動させることにより、雌ねじ部173bに螺合する雄ねじ部71bを貫通孔24hの軸線C3に沿って移動させることができる。そのため、レバー2の位置(レバー2の初期位置におけるハンドルグリップ11に対するレバー2の離間位置)を調節することができる。例えば、ナット173の回動後にクリックボール175を凹部173dに入り込ませることにより、レバー2を位置決めすることができる。
【0084】
図10の例においても、受け部材71は、フード6(図5参照)を係合する係合部71aと、貫通孔24hに沿って延びる雄ねじ部71bと、係合部71aと雄ねじ部71bとの間に配置された当接部71cと、を備える。
【0085】
係合部71aは、覆い部70bに設けられている。係合部71aは、覆い部70bの基端の外周に沿うように設けられている。係合部71aには、フード6の第二環部64(図5参照)が係合される。
【0086】
雄ねじ部71bは、後方突出部24の幅(貫通孔24hの全長)よりも長く延びている。雄ねじ部71bの外径は、雄ねじ部71bが貫通孔24hに沿って移動可能な大きさとされている。雄ねじ部71bの先端には、Oリング71eが取り付けられている。
【0087】
当接部71cは、レバー2の回転規制部25に当接する部分である。雄ねじ部71bの軸線に沿う方向から見て、当接部71cは、雄ねじ部71bよりも大きい外形を有する。当接部71cは、回転規制部25に当接する平坦な当接面71dを有する。なお、当接面71dは、平坦な面であることに限らず、レバー2の回転規制部25の形状に合わせた面(例えば凹凸形状を有する面)であってもよい。
【0088】
図10の例においても、回転規制部25によって受け部材71の回転が規制されるため、ロッド5を覆うフード6を設けた場合には、フード6を受け部材71まで覆うことができる。そのため、フード6によってロッド5と受け部材71とが接触する部分を覆うことができる。したがって、ロッド5と受け部材71とが接触する部分への異物の侵入を抑制することができる。
【0089】
上記実施形態では、レバー2は、ホルダ3に接続される基部20と、基部20から後方に突出する後方突出部24と、を備え、後方突出部24は、レバー2が延びる方向に開口する貫通孔24hを有する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、後方突出部24は、基部20とは異なる部位に設けられていてもよい。
【0090】
上記実施形態では、回転規制部25は、レバー2において軸35の後方に設けられた面である例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、回転規制部25は、レバー2とは異なる部材に設けられた面であってもよい。
【0091】
上記実施形態では、球面5aは、ロッド5の軸線C1上に配置されている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、球面5aは、ロッド5の軸線C1からオフセットした位置に配置されていてもよい。
【0092】
上記実施形態では、作動ユニット4は、クラッチ装置を断接する液圧を制御するクラッチ制御ユニットである例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、作動ユニット4は、ブレーキ装置を制御する制御装置であってもよい。
【0093】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、前記鞍乗型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪且つ後二輪の他に、前二輪且つ後一輪の車両も含む)の車両も含まれる。また、本発明は、自動二輪車のみならず、自動車等の四輪の車両にも適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 作動装置(車両用作動装置)
2 レバー
3 ホルダ
4 作動ユニット
5 ロッド
5a 球面
6 フード
7 調節機構
10 ハンドル
20 基部
24 後方突出部
24h 貫通孔
25 回転規制部
35 ボルト(車両の上下方向に沿う軸)
70 球面受け部
70a 上覆い部(覆い部)
70b 下覆い部(覆い部)
70c 凹部
71 受け部材
71a 係合部
71b 雄ねじ部
72 変位機構
73 第一ナット
74 第二ナット
172 変位機構
C1 ロッドの軸線
C2 上下方向に沿う軸線
C3 貫通孔に沿う軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10