(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】エピタキシャル堆積用のリアクタの加熱方法及びエピタキシャル堆積用のリアクタ
(51)【国際特許分類】
C23C 16/46 20060101AFI20221219BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C23C16/46
H01L21/31 B
(21)【出願番号】P 2019522493
(86)(22)【出願日】2017-10-30
(86)【国際出願番号】 IB2017056720
(87)【国際公開番号】W WO2018083582
(87)【国際公開日】2018-05-11
【審査請求日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】102016000111143
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501372765
【氏名又は名称】エルピーイー ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】オグリアリ,ヴィンチェンゾ
(72)【発明者】
【氏名】プレッティ,シルヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】プレティ,フランコ
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-207331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/46
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル堆積用のリアクタ(1)であって、1以上の基板(100)を直接的又は間接的に支持するように適合されたディスク状部を有する少なくとも1つのサセプタ(2)と、巻線(41~47)を有するインダクタ(4)とを備え、当該インダクタ(4)が、前記ディスク状部(2)を加熱するように、且つ、前記巻線(41~47)の位置を変えることにより制御されるように適合されている前記リアクタ(1)において、
‐1つの第
1モータ(61)であって、前記インダクタ(4)の少なくとも1つの第1の巻線(43)の位置を、「オープンループ制御」(8)により、
前記第1モータ(61)の運動の結果として変更するように適合されている
前記第1モータ(61)と、
‐
複数の
第1並進アクチュエータ(62)であって、前記少なくとも1つの第1の巻線(43)の対応する複数の点(
図3)に作用して、前記巻線(43)の並進を生じさせるように適合されている
前記第1並進アクチュエータ(62)と、
‐前記第1モータ(61)の前記運動
を複数の
前記第1並進アクチュエータ(62)に伝達するように適合された第
1トランスミッション(63)と、を備えていることを特徴とする、エピタキシャル堆積用リアクタ(1)。
【請求項2】
‐1つの第
2モータであって、前記インダクタ(4)の少なくとも1つの第2の巻線(45,46)の位置を、前記「オープンループ制御」(8)により、
前記第2モータの運動の結果として変更するように適合されている
前記第2モータと、
‐
複数の
第2並進アクチュエータであって、前記少なくとも1つの第2の巻線(45,46)の対応する複数の点(
図3)に作用して、前記巻線の並進を生じさせるように適合されている
前記第2並進アクチュエータと、
‐前記第2モータの前記運動を
複数の
前記第2並進アクチュエータに伝達するように適合されている第
2トランスミッションと、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載のエピタキシャル堆積用リアクタ。
【請求項3】
前記第1トランスミッション(63)及び/又は前記第2トランスミッションが、1本及び/又は2本のベルト又はチェーンから成る、
請求項2に記載のエピタキシャル堆積用リアクタ。
【請求項4】
前記インダクタ(4)が単一の弾性機械的部品の連続導体から成る、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のエピタキシャル堆積用リアクタ。
【請求項5】
前記
第1並進アクチュエータの回転を検出するために使用されるポテンショメータを含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のエピタキシャル堆積用リアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピタキシャル堆積用のリアクタの加熱方法及びエピタキシャル堆積用のリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
いずれのエピタキシャルリアクタも、エピタキシャル成長に供される基板を加熱するための加熱システムを含む。
【0003】
エピタキシャル堆積プロセス段階の前に加熱段階が行われ、また、エピタキシャル堆積プロセス段階後に冷却段階が行われる。
【0004】
加熱は、例えば電磁誘導型であり得る。
【0005】
この場合、しばしば、加熱システムは、サセプタ(エピタキシャルリアクタの反応チャンバ内に配置されている)を直接加熱し、基板が、サセプタ(基板を支持する)から熱を、伝導により受け取る。
【0006】
この場合、常に、加熱システムは、少なくとも1つのインダクタを含む。
【0007】
過去に、本出願人は、このようなインダクタの1以上の巻線が可動であることの可能性を特許文献1にて提示した。
【0008】
この解決法によれば、インダクタは、可撓性ブリッジにより電気的及び機械的に接続された複数の剛性円体(rigid circle)から成っていた。単一の円体が、単一の電気モータと、当該モータのシャフトに取り付けられた単一の並進アクチュエータ(a single translating actuator)とにより移動された。前記アクチュエータにより引き起こされる変形は、可撓性ブリッジが完全に耐えられた。
【0009】
巻線が、所望の位置に、加熱動作の開始前(従ってエピタキシャル堆積の開始よりも十分に前)に配置された。この位置決めが、リアクタの初期設定操作の1つであった。
【0010】
この種の解決法は、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4からも公知である。
【0011】
エピタキシャルリアクタのための加熱システムの主要な目的は、プロセス中の基板の均一な温度を得ることであった。
【0012】
エピタキシャルリアクタのための加熱システムの第2の目的は、プロセス温度に短時間で到達することであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第96/010659号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第2010/059182号公報
【文献】特開2003-133245号公報
【文献】韓国特許第10-0978567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献3から知られる解決策によれば、エピタキシャル堆積プロセスの前にインダクタ全体をサセプタに接近させることにより、サセプタをより迅速に加熱し、そして、エピタキシャル堆積プロセス後に、インダクタ全体をサセプタから遠ざけるように移動させて、サセプタをより迅速に冷却する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本出願人は、行った実験を通して、基板の温度が、プロセス中だけでなく、加熱中(むしろ、エピタキシャル堆積プロセスの前に行われる加熱中の一瞬一瞬)にも均一であることが非常に有利であるということを認識した。その利点は、例えば、熱応力及び欠陥(具体的には「スリップライン」(slip line))の低減に関連し得る。
【0016】
次に、本出願人は、加熱中、及びその後のエピタキシャル堆積中の両方において基板の均一な温度を得ることを可能にする解決策を提供するという目的を設定した。
【0017】
また、本出願人は、プロセス温度に短時間で到達することを可能にする解決策を提供するという目的を設定した。
【0018】
最後に、本出願人は効果的であるだけでなく簡単でもある解決策を提供するという目的を設定した。
【0019】
これらの目的は、添付の特許請求の範囲に記載された技術的特徴を有する加熱方法及びエピタキシャルリアクタのためのリアクタにより、実質的に達成される。
【0020】
本発明は、添付図面と共に考慮されるべき以下の詳細な定義から、より容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】先行技術によるエピタキシャルリアクタの一実施形態の反応チャンバの鉛直断面概略図である。
【
図2】本発明によるエピタキシャルリアクタの一実施形態の反応チャンバの鉛直断面概略図である。
【
図3】
図2のリアクタのインダクタの上面図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
容易に理解されるように、本発明を実際に実行するための様々な方法が存在し、これらは、添付の特許請求の範囲における、本発明の主な有利な態様において定義される。
【0023】
図1は、先行技術によるエピタキシャルリアクタ1の実施形態の反応チャンバの鉛直断面概略図である。
【0024】
反応チャンバには、上壁11(詳細には、透明石英製)、下壁12(詳細には、透明石英製)及び側壁(詳細には、透明石英製)(図示せず)により画成されたキャビティ10が設けられている。
【0025】
サセプタ2がキャビティ10内に配置され、サセプタ2は、エピタキシャル堆積中に基板を支持及び加熱するように適合されている。
図1の場合、単一の基板100が存在し、基板100は支持要素3上に配置されている(支持要素3は、ディスク状の形状、詳細には、高さが直径よりもはるかに小さい円柱形状であり、水平に配置され、グラファイト製であり、SiC(シリコンカーバイド)又はTaC(炭化タンタル)により被覆され得る)。そして、支持要素3は、サセプタ2上に配置されている(サセプタ2は、ディスク状の形状、詳細には、高さが直径よりもはるかに小さい円柱形状であり、水平に配置され、グラファイト製であり、SiC又はTaCにより被覆され得る)。要素3は、本発明の目的にとって不可欠なものではない。
【0026】
加熱システムが設けられており、加熱システムは、少なくとも1つのインダクタ4を含む。インダクタ4は、電力が供給されているときに電磁誘導によりサセプタ2を加熱するように適合されている。インダクタ4は平坦であり、複数の巻線41~47(詳細には、
図1の例においては7つの同心巻線)を含む。これらの巻線は、典型的には、電気的に直列に接続されている。このシステムは、その他のインダクタをチャンバの下に含み得るが、チャンバの上には、通常、何もない。
【0027】
キャビティ10の内側に、基板100に位置合わせされた水平方向の内壁14がある。
【0028】
サセプタ2は、鉛直軸Zを中心とする回転軸5に固定されている。
【0029】
下壁12は、シャフト5を通すための穴及びスリーブ13を有する。
【0030】
インダクタ4は、下壁12の下の、スリーブ13の周囲に配置されている。
【0031】
図2の実施形態は、
図1の解決法又は類似の解決法を改良したものである。
【0032】
図2に、インダクタ4の巻線を移動させるための作動システム6の幾つかの部品、すなわち、電気モータ61、一対のアクチュエータ62(対応する一対のポテンショメータ(図示せず)を有する)、及び、トランスミッション(伝達機構)63が示されている。
【0033】
図2に、上壁11より上に配置されたサーモグラフィカメラ7が示されており、サーモグラフィカメラ7は、チャンバ内の、特にはカメラ7の下の基板100の薄い半径方向領域の温度を測定するように適合されている。詳細には、この半径方向領域は、軸Z(又はその近接部)と基板100の縁部(又はその近接部)との間に延在する。サセプタ及び基板が回転するため、この測定領域で十分である。
【0034】
図2に、コンピュータによる加熱制御システムが示されている。このシステムは、1以上のPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)を含み得る。システム8は、電力供給するためにインダクタ4に、システム6に(特には、モータ61及びポテンショメータに)、サーモグラフィカメラ7に、及び、ユーザインタフェース9に電気接続されている。ユーザインタフェース9は、操作者がコマンドを入力して情報を抽出することを可能にしている。
【0035】
図3に、巻線43,45,46が可動である例示的なケースが概略的に示されている。巻線45及び巻線46(例えば1つの「グループ」を構成する)が、システム6により、巻線43と共に、且つ巻線43とは独立に移動される。巻線43の移動は、3つのアクチュエータ621,622,623(例えば互いに90°離隔して配置されている)により得られる。巻線45及び巻線46から成るグループの移動は、3対のアクチュエータ(例えば互いに90°離隔して配置されている)、又は3つのアクチュエータ624,625,626により得られる(図示されているように、1つのアクチュエータが2つの巻線の2点を同時に移動させる)。
図2においては、図面をより明確にするために、装置の、巻線43の移動を可能にする部分のみが示されており、巻線45及び巻線46を移動させる装置は示されていない。
【0036】
図3において、各巻線は、例えば約330°の円弧の形状を有し、これらの巻線は、例えば直線状のセグメントにより互いに接合されている。
【0037】
本発明よれば、リアクタ(
図2の符号1)は、巻線(
図2の符号41~47)を有する、典型的に平坦(又はほぼ平坦)なインダクタ(
図2の符号4)を含み、インダクタは、サセプタ(
図2の符号2)を加熱するように、且つ、1以上の巻線(
図2の符号41~47)の位置の変更により制御されるように適合されている。
【0038】
リアクタ(
図2の符号1)は作動システムを含み、作動システムは、
‐第1のモータ(
図2の符号61)(具体的には電気モータ)であって、インダクタ(
図2の符号4)の少なくとも1つの第1の巻線(
図2の符号43)の位置(好ましくは、軸方向のみ、すなわち鉛直位置)を、この第1モータの運動の作用により修正するように適合された第1のモータと、
‐第1の複数の並進アクチュエータ(translating actuators)(
図2の符号62)であって、第1巻線(
図2の符号43)の対応する複数の点(
図2及び
図3の両方を参照)に作用し、その並進(好ましくは、軸方向、すなわち鉛直方向の並進(vertical translation)のみ)を生じさせる第1の複数の並進アクチュエータと、
‐第1のトランスミッション(
図2の符号63)(具体的には、第1モータ(
図2の符号61)の運動を第1の複数のアクチュエータ(
図2の符号62)に伝達するように適合されている機械的トランスミッション)と、を備えている。
【0039】
従って、インダクタの1つの巻線(又は巻線のグループ)が、その他の巻きとは独立に移動され得ることが可能である。
【0040】
インダクタの2つの巻線(又は巻線の2つのグループ)を互いに独立に、及び、その他の他の巻線から独立して移動させ得ることが可能である。
【0041】
この場合、作動システムは、さらに、
‐第2のモータ(具体的には電気モータ)であって、インダクタの少なくとも1つの第2の巻線の位置(好ましくは、軸方向のみ、すなわち鉛直位置)を、この第2モータの運動の作用により修正する(modify)ように適合された第2のモータと、
‐第2の複数の並進アクチュエータであって、第2巻線の対応する複数の点に作用し、その並進運動(好ましくは、軸方向、すなわち鉛直方向の並進のみ)を生じさせる第2の複数の並進アクチュエータと、
‐第2モータの運動を第2の複数のアクチュエータに伝達するように適合されている第2のトランスミッション(具体的には、機械的トランスミッション)と、を備えている。
【0042】
一般的及び典型的に、インダクタの幾つかの巻線(又は巻線のグループ)が存在し、これらの巻線は、互いに独立に、及び、その他の巻線から独立して移動できる。
【0043】
図3に概略的に示されているように、第1及び/又は第2のモータは、インダクタの巻線のグループ(例えば、巻線45及び巻線46)の位置を、サセプタ(
図2の符号2)に対して、及び、インダクタのその他の巻線に対して修正するように適合され得る。
【0044】
第1のトランスミッション(
図2の符号64)及び/又は第2のトランスミッションは、1本及び/又は2本のベルト又はチェーンから成る。ベルトは、好ましくは歯付きである。
【0045】
インダクタ(
図2及び
図3の符号4)は、好ましくは、単一の機械的部品からつくられた連続的な導体から成る。前記機械的部品は、その巻線の1つを軸方向に、隣接する巻線を検知可能なほどには変位させずに並進させるように十分に弾性でなければならず、すなわち剛性であってはならない。この理由は、アクチュエータによりもたらされる変形が、巻線の全長に沿って分散されることによる。
【0046】
各アクチュエータ(
図2の符号62)は、モータから受け取った回転を、トランスミッションを介して並進運動に変換する。対応する巻線の位置決めが確実であるように、アクチュエータの実際の並進運動を測定することが好ましい。この目的のために、簡単なポテンショメータをアクチュエータに関連付けて、アクチュエータが発生させる並進運動に対応するアクチュエータの回転を正確に測定することが有利である。
【0047】
次いで、リアクタを所定位置に配置する。アクチュエータを機械的に校正すること、及び、ポテンショメータを電気的に校正することが必要である。
【0048】
次いで、システム8は、モータを、1以上の制御法則に従って駆動し、巻線(より正確には、巻線の点)が所望のように移動したことを確証できる。
【0049】
コンピュータシステム8の機能は、とりわけ、リアクタ1の加熱を制御すること、及び、リアクタ1の冷却を制御することである。
【0050】
システム8は、手段(具体的には、以下に説明する本発明による加熱方法を具体的に実施可能なハードウェア手段及びソフトウェア手段)を含み得る。
【0051】
本発明による加熱方法によれば、サセプタ(
図2の符号2)を、第1の温度から第2の温度に加熱している間、及び、エピタキシャル堆積のプロセスの前に、インダクタ(
図2の符号4)の少なくとも1つの第1の巻線(
図2の符号43)の、又は第1の巻線のグループの、サセプタ、及び、インダクタ(
図2の符号4)のその他の巻線に対する位置が修正される。一般的に、第2の温度は第1の温度よりも高い。
【0052】
多くの場合、サセプタの、第1の温度から第2の温度への加熱中、及びエピタキシャル堆積のプロセスの前に、インダクタの、少なくとも1つの第2の巻線の、又は第2の巻線のグループの、サセプタ、及び、インダクタ(
図2の符号4)のその他の巻線に対する位置が変更される。
【0053】
第2巻線の位置の変更は、通常、第1巻線の位置の変更とは独立している。
【0054】
位置の変更は、前記加熱中に1回の変更であってよいが、より典型的には、位置は繰り返し変更されるであろう。
【0055】
このようにして、温度遷移中でさえも基板の全てを一定の温度に保持する試みが可能である。例えば、開始時には全てが25℃、1分後には全てが50℃、さらに1分後には全てが75℃、さらに1分後には全てが100℃、さらに1分後には全てが100℃・・そして最後には全てが1150℃になり、その後、エピタキシャル堆積の期間中、全てが1150℃である。温度遷移中に温度の均一性を得るために、サセプタの熱慣性を考慮に入れる必要があることに留意されたい。この例によれば、温度遷移の各温度範囲(25℃~50℃、50℃~75℃、75℃~100℃・・・1125℃~1150℃)を、インダクタの巻線の各々の位置に関連付けることが可能である。
【0056】
上述の第1の温度は、例えば0℃~50℃、すなわち「周囲温度(ambient temperature)」であってよく、又は、100℃~300℃、すなわち「ローディング(装填)温度(loading temperature)」であり得る。リアクタに応じて、a)1以上の基板、又は、b)1以上の基板を有する1以上の支持要素、又は、c)1以上の基板を有するサセプタを装填することが可能である。
【0057】
上述の第2の温度は、500℃~2000℃の間であってよく、すなわち、エピタキシャル堆積プロセスの「プロセス温度(process temperature)」であり得る。
【0058】
概して、リアクタを第1温度から第2温度に加熱する期間全体にわたり、1以上の巻線の位置が、適切に且つ繰り返し変更され(サセプタから遠ざけられ又はサセプタに接近され)、この変更は、サセプタの上面の温度及び支持されている基板の温度が、好ましくは加熱期間全体における一瞬一瞬に均一であるように行われる(so that the temperature of the upper face of the susceptor and of the supported substrates is uniform preferably instant by instant during the entire heating period)。
【0059】
或いは、1以上の巻線の位置が、第1温度と第2温度との間の温度範囲においてのみ、適切に且つ繰り返し変更される(サセプタから遠ざけられ又はサセプタに接近される)。例えば、前記第1温度が「周囲温度」(例えば25℃)又は「ローディング温度(loading temperature)」(例えば150℃)であり、前記第2温度が「プロセス温度」(例えば1150℃)である場合、1以上の巻線が、例えば、500℃と「プロセス温度」との間の温度範囲においてのみ、それらの位置が適切且つ繰り返し修正される。すなわち、「周囲温度」又は「ローディング温度」と、例えば500℃との間の温度範囲においては、いずれの巻線の位置も変更されない。この代替案は、例えば、特定条件における基板の特定温度の不安定性が許容される場合に有用であり得る。
【0060】
インダクタの幾何学形状(具体的には、平坦)は、サセプタの幾何学形状(高さが直径よりもはるかに小さい円柱状)に適合する。
【0061】
サセプタはかなり薄いため、下面と上面との温度差はかなり小さく(例えば、50℃~100℃)、サセプタの温度は、一次近似で放射状図により概略的に表され得る。
【0062】
これらの位置変更は、通常、制御システムの制御下で行われる。
【0063】
加熱中及び堆積前に、巻線の位置の制御が「オープンループ」(open loop)であることが好ましく、また、インダクタの電気制御が「オープンループ」であることが好ましい。これは単純な制御であるが、この用途のための「クローズドループ」(closed loop)制御よりもはるかに優れている。
【0064】
好ましくは、「オープンループ」制御中、温度を、例えばサーモグラフィカメラを用いて測定できる。制御法則を、例えば表形式で保存でき、表の各行が、異なる温度(例えば、サーモグラフィカメラにより測定された基板の平均温度)に対応し、各温度に対して、インダクタに供給されるべき電力が、例えばインダクタの巻線の鉛直方向位置として提示される。第1の温度(例えば周囲温度)から開始して、第1の電力及び第1の位置が設定される。サーモグラフィカメラが第2の温度を測定すると第2の電力及び第2の位置が設定され、という具合に続いていく。
【0065】
「オープンループ制御」のためのデータは、典型的に、1以上の実験的キャンペーン(experimental campaigns)から得られる。巻線の位置が「実験則(experimental law)」に従って修正されるときに最良の結果が得られることが観察されている。
【0066】
「オープンループ」制御を用いる利点は、プロセスごとに「プロセスレシピ(process recipe)」の最終温度(「プロセス温度」と見なし得る)が、一次近似の熱レベルで変化するだけであり、前記温度に達するまでには上昇しないことである。常に同一の(又は非常に類似の)温度上昇が実現されなければならないため、「クローズドループ」制御(その性質上、様々な不測の状況の管理には優れている)を含めることは無意味である。このようにして、ただ1つの実験的キャンペーンを通して、最適な法則を特定し、サセプタの熱慣性の問題を排除し、そして、制御されたシステムの危険な不安定性を回避することが可能である。
【0067】
エピタキシャル堆積プロセス中(すなわち、加熱段階の後で冷却段階の前)には、異なる方法で動作することが好ましい。
【0068】
エピタキシャル堆積プロセス中には、インダクタのいずれの巻線の位置も修正されない。すなわち、各巻線の位置が維持される。インダクタには「クローズドループ制御」により電力が供給される。
【0069】
「クローズドループ」制御中、温度を、例えばサーモグラフィカメラを用いて測定でき、インダクタに供給されるべき電力が、所望の温度(すなわち、例えば操作者により設定されたプロセス温度)と、サーモグラフィカメラにより測定された温度(例えば、基板の平均温度)との差に基づいて算出される。
【0070】
幾つかの用途においては、加熱操作の最後の部分において(例えば、加熱の最後の50℃~100℃の間)、巻線を固定状態に維持して、インダクタの「クローズドループ」電気制御を実行することが好ましい場合がある。
【符号の説明】
【0071】
1 リアクタ
2 サセプタ
3 支持要素
4 インダクタ
8 コンピュータシステム
11 上壁
43 巻線
61 電気モータ
62 アクチュエータ
63 トランスミッション
100 基板
621 アクチュエータ
Z 回転軸