IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メルク パテント ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図1
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図2
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図3
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図4
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図5
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図6
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図7
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図8-1
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図8-2
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図8-3
  • 特許-電子デバイスの調製方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電子デバイスの調製方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/10 20060101AFI20221219BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20221219BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H05B33/10
H05B33/22 D
H05B33/14 B
C09K11/06 660
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019530469
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2017081305
(87)【国際公開番号】W WO2018104202
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-02
(31)【優先権主張番号】16202544.9
(32)【優先日】2016-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ベアル、ゲーレ
(72)【発明者】
【氏名】レオンハルト、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ツェン、シンロン
(72)【発明者】
【氏名】ハンブルガー、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト、ビーテ
(72)【発明者】
【氏名】シャイブレ、カチャ・マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヤトシュ、アンヤ
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-035370(JP,A)
【文献】特開2015-185640(JP,A)
【文献】特開2014-192119(JP,A)
【文献】特開2014-099366(JP,A)
【文献】特開2016-110944(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046274(WO,A1)
【文献】特表2012-528209(JP,A)
【文献】国際公開第2010/136111(WO,A1)
【文献】特開2008-124156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0113101(US,A1)
【文献】特開2011-066388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H01L 51/50
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面を形成する第1の機能層と第2の機能層を含む電子デバイスを調製する方法であって、
下記の方法工程:
a1)第1の有機機能材料と第1の溶媒とを含有する第1の溶液を、支持体上に堆積させること;
a2)前記第1の溶液を乾燥させ、任意に前記第1の有機機能材料をアニーリングして、第1の機能層を得ること;
b1)第2の有機機能材料と第2の溶媒とを含有する第2の溶液を、前記第1の機能層上に堆積させること;および
b2)前記第2の溶液を乾燥させ、任意に前記第2の有機機能材料をアニーリングして、第2の機能層を得ること
を含み、前記第2の溶媒における前記第1の有機機能材料の絶対溶解度が、25℃で、0.1~200g/Lの範囲であり、前記第2の溶媒における前記第2の有機機能材料の絶対溶解度が、25℃で、5.0g/Lより高く、前記第2の溶媒における前記第1の有機機能材料の溶解速度が、25℃で、0.116g/(L・分)未満であることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第2の溶媒が、25℃で、0.066nm/秒未満の前記第1の機能層に対する層損傷速度(LDR)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下記の条件:
d(層1)>LDR・t(b1)
(式中、d(層1)は、前記第1の機能層の厚さ[nm]であり;LDRは、25℃で測定した層損傷速度[nm/秒]であり;t(b1)は、方法工程b1が実施される期間[秒]である)が適用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
下記の条件:
DISS(材料1/溶媒2)≧2・t(b1)
(式中、tDISS(材料1/溶媒2)は、25℃で、7.00gの前記第1の有機機能材料を1.00Lの前記第2の溶媒に溶解させるのに必要な溶解時間[秒]であり;t(b1)は、方法工程b1が実施される期間[秒]である)が適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の有機機能材料が、非架橋性ポリマーである、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非架橋性ポリマーが、正孔輸送材料である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記正孔輸送材料が、ポリシラン、アニリンコポリマー、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン、ポリ(N-ビニル)カルバゾール、ポリピロール、ポリアニリン、ポリトリアリールアミン、およびこれらの混合物からなるリストから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の溶液中の前記第2の有機機能材料の含有量が、前記第2の溶液の全重量を基準として0.001~20重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の有機機能材料が、発光材料である、請求項1~8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記発光材料が、スチルベン、スチルベンアミン、スチリルアミン、クマリン、ルブレン、ローダミン、チアゾール、チアジアゾール、シアニン、チオフェン、パラフェニレン、ペリレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ケトン、キノリン、イミン、アントラセン、ピレンと、好ましくはIr、Ru、Pd、Pt、OsまたはReを含有するリン光金属錯体、およびこれらの混合物からなるリストから選択される蛍光またはリン光発光体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
方法工程b1が、600秒未満の期間で実施される、請求項1~10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
方法工程b1が、5~50℃の範囲の温度で実施される、請求項1~11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
方法工程b1における第2の有機機能材料と第2の溶媒とを含有する前記第2の溶液の前記第1の機能層上への前記堆積が、印刷法またはコーティング法により実施される、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の溶媒が、ケトン、置換および無置換の芳香族、脂環式または直鎖状エーテル、エステル、アミド、芳香族アミン、硫黄化合物、ニトロ化合物、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素、インダン誘導体、ならびにハロゲン化芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素からなるリストから選択される有機溶媒である、請求項1~13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の溶媒が、1つの芳香族6員炭素環系または1つもしくは2つの脂肪族5もしくは6員炭素環系を含有する、8~14個の炭素原子と1~3個の酸素および/または窒素原子とを有する有機溶媒である、請求項1~14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の溶媒が、760mmHgで195~350℃の範囲の沸点を有する有機溶媒である、請求項1~15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記電子デバイスが、有機エレクトロルミネッセントデバイスである、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面を有する2つの隣接する機能層が速度論的に制御された方法で溶液から形成される電子デバイス、たとえば有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)の調製方法に関する。方法は、印刷またはコーティング法による迅速で効率的な電子デバイスの製造に特に適する。本発明はさらに、前記方法により得ることができる電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、OLEDは、小分子材料の場合は真空蒸着により、高分子材料の場合はスピンコーティングまたはディップコーティングにより作成されてきた。さらに最近では、OLEDの作成において有機薄膜層を直接堆積させるのに、他の技術、たとえばインクジェット印刷が使用されるようになっている。こうした技術は、費用効率が高く、規模拡大に適することが見出されている。多層印刷における主な課題の1つは、基板上にインクの均一な堆積を得ることによって良好なデバイス性能をもたらす明確に画定された均一な機能層を創出するために、それぞれの印刷パラメータを特定し調節することである。多層印刷法においては、上に新しい機能層が印刷される基板上の既存の機能層の剥離、部分溶解、再溶解または他の損傷のリスクが常に存在する。これは、機能層の界面にデバイス性能の低下をもたらす欠陥を引き起こす。そのため、予め架橋された第1の機能層の上に第2の機能層を印刷する方法が、先行技術において開発されている。この目的のためには、架橋性機能材料が必要である。第1の有機機能材料を架橋させると、第2の機能層を上に印刷する際に、第1の機能層の剥離、部分溶解、再溶解または他の損傷を防ぐことができる。これにより、2つの機能層の間に欠陥のない界面を生成することができる。
【0003】
G.Liaptsisらは、架橋性小分子系に基づく溶液処理された有機二重発光層ダイオードを記載している(Angew.Chem.Int.Ed.2013、52、9563-9567)。ここでは、新規架橋性緑色発光IrIII錯体とホスト材料としてのスピロビフルオレンの合成および特徴評価が記載されている
さらに、US2012/0205637A1では、OLEDが、架橋されていてもよい機能層を形成するために、インクジェット印刷によって液体組成物(インクジェット液)から堆積させる小分子有機半導体材料で形成されている。N-メチルピロリドン(NMP)、エチルベンゾアート、ベンジルアセタート、および1-テトラロンが、インクジェット液の溶媒として使用されている。US2012/0205637A1におけるOLED製造方法は、下記の通りである:基板上にHILインクジェット液をインクジェット印刷し、続いて室温で10分間真空乾燥させることにより正孔注入層(HIL)を作成する。結果として得られる有機層を次いで250℃で30分間ホットプレートでの焼成に付して、さらに溶媒を除去し、HIL材料を架橋させる。架橋させたHIL上にHTLインクジェット液をインクジェット印刷し、続いて室温で10分間真空乾燥させることにより正孔輸送層(HTL)を作成する。結果として得られる有機層を次いで、200℃で30分間ホットプレートでの焼成に付して、さらに溶媒を除去し、HTL材料を架橋させる。架橋されたHTL上にEMLインクジェット液をインクジェット印刷し、続いて室温で10分間真空乾燥させ、次いで100℃で60分間焼成することにより発光層(EML)を作成する。正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、LiFを含有する電子注入層、およびアルミニウム電極(カソード)は、従来の方法で順次真空蒸着した。
【0004】
US2012/0205637A1に記載のOLED製造方法は、多数の異なる方法工程、たとえばインクジェット印刷、乾燥、架橋および真空蒸着工程を必要とする。したがって、方法は、非常に複雑であること特徴とし、製造のための複雑な設備を必要とする。したがって、簡略化された手順により費用効果の高い方法でOLED製造する新規な方法を見出すことに関心が寄せられている。
【0005】
代替案として、いわゆる直交溶媒の概念に依存する多層印刷技術が開発された。ここでは、第1の有機化合物を第1の溶媒を含有する溶液から堆積させる。第1の有機化合物層を乾燥させた後、第1の有機化合物層の上に第2の有機化合物を第2の溶媒を含有する溶液から堆積させ、乾燥させる。第1の有機化合物は第1の溶媒に可溶であり、第2の有機化合物は第2の溶媒に可溶である。しかし、第2の溶媒は、第1の有機化合物が第2の溶媒に可溶とならないように選択される。したがって、直交溶媒の概念は、下にある層を損傷することなく溶解法により有機化合物の幾つかの層を堆積させることを可能とする。
【0006】
US2005/0191927A1は、少なくとも2つの有機層を含む有機電子デバイスを形成する方法に関し、ここで、前記方法は、(a)第1の有機材料を含む第1の有機層を、第1の有機液体媒体からの蒸着および液相成長から選択される方法よって適用すること;および(b)光活性化合物を含む第2の有機層を、第2の有機液体媒体からの液相成長により第1の有機層の少なくとも一部の上に直接適用することを含み、ここで、第1の有機材料は第2の有機液体媒体に難溶性である。
【0007】
T.Chibaらは、溶液処理された白色リン光タンデムOLEDを記載する(Adv.Mater.2015、27、4681-4687)。隣接する層に使用される材料の直交溶解度およびそれらの熱安定性が、作成のための溶液ベースのプロトコルの実現可能性を決定する重要な因子であることが見出された。したがって、隣接する層に使用される溶媒と材料の慎重な選択が求められる。
【0008】
A.M.Gaikwadらは、有機電界効果トランジスタ(OFET)に使用される溶液処理された有機半導体について、直交溶媒をどのように決定できるかについて記載している(Org.Electr.2016、30、18-29)。
【0009】
多層溶液処理OLEDにおける最近の進歩についての概説が、S.Hoらにより、J.Phot.Energy2015、5、1-18に記載されている。
【0010】
しかしながら、直交溶媒の概念には、下記のような欠点がある:電子デバイスにおいて連続する溶液処理層を調製するために直交溶媒を使用することは通常、極性(たとえば、無極性有機溶媒と水性溶媒)または化学的組成(たとえば、炭化水素溶媒と高度にフッ素化された溶媒)に大きな差がある一組の溶媒を選ぶことにより達成される。このアプローチは、層を形成するために溶液処理される材料の適切な官能基化を必要とし、第1の場合には、処理すべき材料のための極性置換基を極性溶媒から結合させることによりなされ、後者の場合には、相当量のフッ素化された側鎖を含ませる必要がある。これが材料設計の自由度を低下させ、それ故、電子デバイスにおける材料の性能のその機能における最適化を制限する。直交溶媒を使用することのもう一つの欠点は、薄膜中の残存溶媒である:極性溶媒(たとえば水)は、デバイスの寿命のようなデバイス性能パラメータにとって有害であることが知られている。薄膜中の残存溶媒は、とりわけフッ素化された溶媒の場合、薄膜の表面エネルギーにも影響を及ぼし、これが、これらの層の上への溶液堆積時に濡れ性の問題を引き起こす。
【0011】
したがって、先行技術における欠点を克服し、有機機能材料を溶液から堆積させて機能層を形成する、OLEDを調製するための新規な方法を見出す必要がある。
【発明の概要】
【0012】
多数のOLEDの調製方法が先行技術において提案されてきており、そこでは、溶液から有機機能材料を堆積させることにより隣接する機能層が形成される。しかしながら、溶液から多層OLED構造を形成するために要する方法工程の数と時間は、依然として多い。したがって、溶液ベースの方法によるOLEDの調製を改善する必要がある。
【0013】
本発明の1つの目的は、良好な層特性および性能を有する均一な機能層を形成するための有機機能材料の効率的で制御された堆積を可能とする、電子デバイスの調製方法を提供することである。本発明の1つの目的は、第2の機能層が上に印刷される第1の機能層の剥離、部分溶解、再溶解または他の損傷を防止することである。本発明のさらなる目的は、先行技術と比較してより少ない方法工程を含み、したがって、より容易で、迅速で費用効率の高い電子デバイスの調製方法を提供することである。また、本発明の目的は、デバイス性能の改善、たとえばより長いデバイス寿命を示すOLEDの調製方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、前記調製方法によって得ることができるOLEDを提供することである。もう一つの利点は、材料設計および合成に対する制約を低減することである。第1の層を形成する材料については、膜形成後にその溶解度を低下させる化学的手段を分子構造に含ませる必要がない。したがって、潜在的に有用な材料の範囲が拡大する。
【0014】
材料の溶解度、溶媒の物理的性質(表面張力、粘度、沸点など)、印刷条件(印刷技術、空気、窒素、温度など)、および乾燥とアニーリングのパラメータがOLEDの層構造の品質とその性能に重大な影響を与えることを認識して、本発明者らは、広範な研究を実施した。
【0015】
そうすることで、驚くべきことに、請求項1に定義するような電子デバイスを調製する方法が、上記の技術的課題および本発明の目的を解決することが見出された。
【0016】
特に、本発明は、界面を形成する第1の機能層と第2の機能層を含む電子デバイスを調製する方法に関し、方法は、下記の方法工程:
a1)第1の有機機能材料と第1の溶媒とを含有する第1の溶液を、支持体上に堆積させること;
a2)前記第1の溶液を乾燥させ、任意に前記第1の有機機能材料をアニーリングして、第1の機能層を得ること;
b1)第2の有機機能材料と第2の溶媒とを含有する第2の溶液を、第1の機能層上に堆積させること;および
b2)前記第2の溶液を乾燥させ、任意に前記第2の有機機能材料をアニーリングして、第2の機能層を得ること;
を含み、第2の溶媒における第1の有機機能材料の絶対溶解度が、25℃で、0.1~200g/Lの範囲であり、第2の溶媒における第2の有機機能材料の絶対溶解度が、25℃で、5.0g/Lより高い。
【0017】
本発明者らは、驚くべきことに、上記の電子デバイスの調製方法が、良好な層特性および性能を有する均一な機能層を形成するための有機機能材料の効率的で制御された堆積を可能とすることを見出している。特に、本発明による調製方法は、2つの隣接する機能層の間に欠陥のない明確に画定された均一な界面の形成を可能とする。これは、第2の機能層が上に印刷される第1の機能層の剥離、部分溶解、再溶解または他の損傷を防止する速度論的制御によるものである。
【0018】
また、上記の電子デバイスを調製する方法は、先行技術と比較してより少ない方法工程を含み、したがって、より容易で、迅速で費用効率が高いことが見出されている。その上、前記調製方法によって製造されるOLEDは、デバイス性能の改善、たとえば寿命の改善を示す。加えて、第2の機能層を形成するために第2の有機機能材料を上に堆積させる第1の機能層の溶解性を抑制するための第1の有機機能材料の架橋や他の処理は必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、表面上で結合して1つの液滴となる3×3の小滴行列の位置を図示する印刷パターンを示す。
図2図2は、非常に近接して印刷された9つの小さな小滴からなる大きな液滴を示す。
図3図3は、小滴の概略側面図である。小滴直径は、上から見下ろすカメラを通して測定したものとして示されている。
図4図4は、層損傷試験前後の触知測定によって得ることができる高さプロファイルを示す。
図5図5は、ピークトゥバレーの定義と溶媒暴露後の測定を示す。
図6図6:浸漬時間に亘る小滴、層に対する溶媒の損傷、および直径測定の例示的な写真。
図7図7:KPIの損傷指標(DI)への変換と、基準カメラ写真の相関。
図8-1】図8-1:層損傷試験結果。
図8-2】図8-2:層損傷試験結果。
図8-3】図8-3:層損傷試験結果。
図9図9は、デバイス例1~4に使用されているデバイスの層構造(積層)を示す。デバイスは、基板、ITOアノード、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、緑色発光層(G-EML)、正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、およびAlカソードを含有する。
【態様の説明】
【0020】
本発明は、界面を形成する第1の機能層と第2の機能層を含む電子デバイスを調製する方法に関し、方法は、下記の方法工程:
a1)第1の有機機能材料と第1の溶媒とを含有する第1の溶液を、支持体上に堆積させること;
a2)前記第1の溶液を乾燥させ、任意に前記第1の有機機能材料をアニーリングして、第1の機能層を得ること;
b1)第2の有機機能材料と第2の溶媒とを含有する第2の溶液を、第1の機能層上に堆積させること;および
b2)前記第2の溶液を乾燥させ、任意に前記第2の有機機能材料をアニーリングして、第2の機能層を得ること
を含み、第2の溶媒における第1の有機機能材料の絶対溶解度が、25℃で、0.1~200g/L、好ましくは5.0~200g/L、より好ましくは5.1~200g/Lの範囲であり、第2の溶媒における第2の有機機能材料の絶対溶解度が、25℃で、5.0g/Lより高く、好ましくは5.1g/Lより高く、より好ましくは5.2g/Lより高く、さらにより好ましくは5.3g/Lより高く、さらにより好ましくは5.4g/Lより高く、さらにより好ましくは5.5g/Lより高く、最も好ましくは6.0g/Lより高い。
【0021】
第2の溶媒における第2の有機機能材料の絶対溶解度は、25℃で、1,000g/L以下、より好ましくは500g/L以下、さらにより好ましくは250g/L以下、最も好ましくは200g/L以下であることが好ましい。
【0022】
第2の溶媒における第2の有機機能材料の絶対溶解度は、ISO7579:2009に対応する下記の手順に従い決定される。
試験溶液の調製
おおよその溶解度の約40%、60%、80%、100%、120%および140%(質量基準)の濃度となるように染料の測定試料を採取して、6種の懸濁液を調製する。利用した最低濃度で10%以上の染料が溶解せずに残留した場合、90%を超える染料が溶解するまで濃度を低下させる。最高濃度で残留物が測定試料の25%未満の場合、測定試料の質量を増加させる。
【0023】
必要量の染料を容器に入れ、ピペットを使用して正確に20mlの溶媒を添加する。溶媒の損失を防止するため、直ちに容器を封止する。機械的振とう機を用いて容器を(23±2)℃で3時間振とうする。著しい凝集塊が見えないことを確認する。
【0024】
染料と溶媒を3時間振とうした後、懸濁液の一部を遠心分離チューブに入れ、各チューブにキャップをする。チューブを(23±2)℃で10分間遠心分離する。たとえば、上澄み液に浸けたピペットチューブから上澄み液が滑らかに流れるか否か観察することにより、上澄み液が清明か否か確認する。そうでない場合、または疑わしい場合、さらに10分間遠心分離する。各チューブから上澄み液を清潔で乾燥した容器に移し、しっかりと封止する。
溶解させた染料の濃度の光度定量
試験溶液は、ベール・ランベルトの法則に従い、反復可能な測定ができるほど十分に安定していると予想される。吸収ピークの最大値が数回の反復測定中に安定していない場合、計算用に別のより安定したピークを選択するか、スペクトル全体の評価を検討する必要がある。
較正溶液の調製
較正溶液は、ベール・ランベルトの法則に従うものとする。2cmの分光光度計セルを使用する場合、黄色染料(低吸収)については約0.15g/l、青色染料(高吸収)については約0.02g/lの濃度が通常は適切である。正確に100.0mgの染料を秤量瓶に量り取り、何も失われないように注意しながらそれを100mlの容量フラスコに移す。60mlの溶媒を添加し、超音波浴にて染料を溶解させる。必要であれば室温まで冷却し、マークのところまで溶媒を補い、よく振とうする。こうして調製した溶液中の染料濃度は正確に1.0g/lであり、これをベール・ランベルトの法則に従うように希釈する(たとえば、0.2g/Lまたは0.02g/Lに)必要がある。
【0025】
溶液中の染料濃度が低いため、希釈すべき溶液の密度は、純粋な溶媒の密度とほぼ同一であるので、希釈に必要な溶液の質量は、次式を用いて得ることができる:
【0026】
【数1】
【0027】
(式中、
mは、必要な溶液のグラム単位の質量であり;
Vは、必要な溶液のミリリットル単位の体積であり;
ρは、23℃でのグラム毎ミリリットル単位の溶媒の密度である)。
【0028】
必要な質量の溶液を秤量瓶またはシリンジ(揮発性溶媒の場合)に量り取り、100mlの容量フラスコに移す。秤量瓶またはシリンジを溶媒ですすぎ、フラスコの中の溶液にすすぎ液を添加し、マークのところまで溶媒を補い、よく振とうする。
試験溶液の調製と希釈
指定したように試験溶液を調製し、それぞれを較正溶液の濃度に匹敵する濃度に希釈する。たとえば、0.02g/Lの濃度を得るには、a)1g/L;b)0.02g/Lの2回の希釈工程が必要である。したがって、量り取られる量は、1gを超える。10mmセルを使用すると、必要な希釈工程の数を減らすことができる。
【0029】
試験溶液中の染料の相対量を、次式を用いて計算する:
【0030】
【数2】
【0031】
(式中、
Dは、試験溶液中の染料の相対量であり;
は、選択したピーク最大値での希釈試験溶液の吸光度であり;
は、較正溶液中のグラム毎リットル単位の染料の濃度であり;
は、選択したピーク最大値での較正溶液の吸光度であり;
は、希釈試験溶液中の上澄み液のグラム毎リットル単位の最終濃度である)。
【0032】
この等式を使用して、上澄み溶液中の染料の量と溶媒の体積の比を計算して溶媒中の染料の濃度を決定し、これが、使用した条件下での溶解度に相当する:
【0033】
【数3】
【0034】
(式中、
Sは、グラム毎リットル単位の染料の溶解度であり;
pは、グラム毎リットル単位の溶媒の密度である)。
【0035】
本発明はさらに、前記調製方法によって得ることができるOLEDに関する。
【好ましい態様】
【0036】
第2の溶媒における第1の有機機能材料の溶解速度は、25℃で、0.116g/(L・分)未満であることが好ましい。
【0037】
第2の溶媒における第1の有機機能材料の溶解速度は、下記の手順に従い決定される:
第1の有機機能材料を透明なガラスフラスコに量り取る。次いで第2の溶媒を固体混合物に一気に添加し、その量は、7g/Lの最終濃度に到達するように計算する。マグネチックスターラーを用いて混合物を室温(25℃)、600rpmで完全に溶解するまで撹拌する。これは、混合物の目視検査で判断する。溶解試験の終盤に、未溶解粒子の識別に役立てるため、混合物をさらに視線に垂直な照明の下で検査する。クロノメーターを用いて「溶解時間」tDISSを測定し、溶媒を添加し撹拌を開始してから材料の最後の塊が溶液中に消失するまでの時間を数値化する。溶解速度は、7g/Lを完全溶解が達成されるまでの時間(「溶解時間」)で割ることにより決定される。
【0038】
好ましい態様において、第2の溶媒は、25℃で、0.066nm/秒未満の第1の機能層に対する層損傷速度(LDR)を有する。
【0039】
第1の機能層に対する第2の溶媒の層損傷速度(LDR)は、下記の手順に従い決定される:
第1の機能層の安定性の試験を第2の溶媒に対して行う。この第2の溶媒を、プリンタ(任意のドロップ・オン・デマンドインクジェットプリンタ/プリントヘッドを使用可能)の溶媒安定性10pl使い捨てカートリッジに充填する。カートリッジのサイズが小滴の体積を決定する。この場合、10ピコリットルカートリッジを使用する。プリンタは、振動のない環境で作動させ、水平でなければならない。印刷条件の正確な調節は、毎秒4メートルの小滴速度である。印刷は、単一のノズルのみを使用して適切に行う。第1の機能層を有する基板をまずプリンタの基板ホルダ上に配置する。特定の液滴体積を有するように印刷パターンをプログラムする。表面上の液滴は、非常に近接して3×3行列に配置される9つの小さな個々の小滴からなる。印刷後、個々の小滴は結合して90ピコリットルの液滴体積の単一の液滴を形成する(体積は、一連の実験に亘り一定に保つ必要がある)。
【0040】
典型的には300秒間の浸漬時間後、基板を真空乾燥室に入れて溶媒を除去し、層を完全に乾燥させる。圧力は、60秒間のポンピング後に1・10-4mbarに達する。基板は、少なくとも10分間十分に乾燥させる。乾燥後、基板を取り出し、表面への損傷を定量化する。層への損傷を定量化するには、触知測定、たとえばプロフィロメトリまたはAFM(原子間力顕微鏡法)を行うことができる。プロファイル測定と交差する方向の最低点と最高点との差が決定される。値は、ナノメートルの単位を有する。層損傷速度を決定するには、この差を浸漬時間で割る。層損傷速度の単位は、ここではナノメートル毎秒[nm/秒]である。一般に、浸漬時間は、典型的な溶液処理工程の範囲内でなければならない。
【0041】
本発明の方法においては、下記の等式:
【0042】
【数4】
【0043】
(式中、d(層1)は、第1の機能層の厚さ[nm]であり;LDRは、25℃で、測定した層損傷速度[nm/秒]であり;t(b1)は、方法工程b1が実施される期間[秒]である)
が満たされることが好ましい。
【0044】
t(b1)は、方法工程b1を実施するのに必要な期間である。このような期間は本質的に、第1の機能層上に第2の溶液の堆積を行い完結させるための時間と、方法工程b2の準備のために最終的に基板を搬送する時間を含む。第2の溶液の第1の機能層への堆積の完了後の不必要な遅延は、t(b1)には考慮されていない。
【0045】
第2の溶媒は、方法工程b1を遂行するのに必要な期間と比較して、第1の有機機能材料を非常にゆっくりと溶解することが好ましい。
【0046】
したがって、本発明の方法においては、下記の等式:
【0047】
【数5】
【0048】
(式中、tDISS(材料1/溶媒2)は、25℃で、7.00gの第1の有機機能材料を1.00Lの第2の溶媒に溶解させるのに必要な溶解時間[秒]であり;t(b1)は、方法工程b1が実施される期間[秒]である)
が満たされることが好ましい。
【0049】
溶解時間tDISS(材料1/溶媒2)は、第2の溶媒における第1の有機機能材料の溶解速度を決定する手順において上記したように決定される。
【0050】
本発明の好ましい態様において、第1の有機機能材料は、非架橋性ポリマーである。第1の有機機能材料は、正孔輸送材料である非架橋性ポリマーであることがさらに好ましい。好ましい正孔輸送材料は、ポリシラン、アニリンコポリマー、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン、ポリ(N-ビニル)カルバゾール、ポリピロール、ポリアニリン、ポリトリアリールアミン、およびこれらの混合物からなるリストから選択される。
【0051】
第2の溶液中の第2の有機機能材料の含有量は、第2の溶液の全重量を基準として好ましくは0.001~20重量%の範囲、より好ましくは0.01~10重量%の範囲、最も好ましくは0.1~5重量%の範囲である。
【0052】
本発明の好ましい態様において、第2の有機機能材料は、発光材料である。好ましい発光材料は、スチルベン、スチルベンアミン、スチリルアミン、クマリン、ルブレン、ローダミン、チアゾール、チアジアゾール、シアニン、チオフェン、パラフェニレン、ペリレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ケトン、キノリン、イミン、アントラセン、ピレンと、好ましくはIr、Ru、Pd、Pt、OsまたはReを含有するリン光金属錯体、およびこれらの混合物からなるリストから選択される蛍光またはリン光発光体である。前述の好ましい発光材料のうちの2種、3種またはそれ以上を組み合わせて使用して混合物を形成してもよい。
【0053】
好ましくは、方法工程b1)は、600秒未満の期間、より好ましくは300秒未満の期間で実施される。
【0054】
好ましくは、方法工程b1)は、5~50℃の範囲、より好ましくは10~35℃の範囲の温度で実施される。
【0055】
好ましくは、方法工程b1)は、印刷法またはコーティング法により実施される。より好ましくは、方法工程b1)は、インクジェット印刷法により実施される。
【0056】
本発明による方法において使用すべき第1の溶媒は、特に限定されない。第1の溶媒として、第1の有機機能材料の十分な溶解度が確保できる任意の溶媒を使用してもよい。第1の溶媒は、単一の溶媒であっても2種以上の溶媒であってもよい。好ましい態様において、第1の溶媒は、1種、2種またはそれ以上の有機溶媒を含有する。第1の溶媒として使用してもよい、適する溶媒は、有機溶媒、たとえばケトン、置換および無置換の芳香族、脂環式または直鎖状エーテル、エステル、アミド(たとえば、ジ-C1~2-アルキルホルムアミド)、芳香族アミン、硫黄化合物、ニトロ化合物、炭化水素、ハロゲン化炭化水素(たとえば、塩素化炭化水素)、芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素(たとえば、ナフタレン誘導体、ピロリジノン、ピリジン、ピラジン)、インダン誘導体、ならびにハロゲン化芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素である。好ましい態様において、第1の溶媒は、1種、2種またはそれ以上の有機溶媒からなる。
【0057】
本発明による方法において使用すべき第2の溶媒は、第2の溶媒における第1の有機機能材料の絶対溶解度が、25℃で、0.1~200g/Lの範囲となり、第2の溶媒における第2の有機機能材料の絶対溶解度が、25℃で、0.1~200g/Lの範囲となるように、自由に選ぶことができる。好ましくは、第2の溶媒における第1の有機機能材料の絶対溶解度は、25℃で、5.0~200g/L、より好ましくは25℃で5.1~200g/Lの範囲であり、第2の溶媒における第2の有機機能材料の絶対溶解度は、25℃で、5.0~200g/L、より好ましくは25℃で5.1~200g/Lの範囲である。最も好ましくは、第2の溶媒における第1の有機機能材料の絶対溶解度は、25℃で、5.1~150g/Lの範囲であり、第2の溶媒における第2の有機機能材料の絶対溶解度は、25℃で、5.1~150g/Lの範囲である。本発明において使用する場合、絶対溶解度は、標準的手順ISO7579:2009に従い決定される。ISO7579:2009は、染料の有機溶媒における溶解度を決定するための2つの方法を規定する。これらは、溶媒の影響下で化学的に変化せず、特定の乾燥条件下で安定しており不揮発性である染料に適用可能である。揮発性溶媒(沸点が120℃より低い)の場合は重量法が推奨され、あまり揮発性の高くない溶媒(沸点が120℃より高い)の場合は測光法が推奨される。第2の溶媒は、単一の溶媒であっても2種以上の溶媒であってもよい。好ましい態様において、第2の溶媒は、1種、2種またはそれ以上の有機溶媒からなる。
【0058】
好ましい態様において、第1の溶媒と第2の溶媒は同じである。
【0059】
好ましくは、第2の溶媒は、1つの芳香族6員炭素環系または1つもしくは2つの脂肪族5もしくは6員炭素環系を含有する、8~14個の炭素原子と1~3個の酸素および/または窒素原子とを有する有機溶媒である。
【0060】
本発明の好ましい態様において、第1の溶媒と第2の溶媒は、25℃および760mmHgにおいて液体である。
【0061】
好ましくは、第2の溶媒は、760mmHgで195~350℃の範囲、より好ましくは210~300℃の範囲、最も好ましくは220~290℃の範囲の沸点を有する有機溶媒である。
【詳細な説明】
【0062】
本発明の方法に従い調製される有機エレクトロルミネッセントデバイスは、2つ以上の機能層を有する層状積層構造を含み、ここで、第1の機能層と第2の機能層は隣接しており、一緒になって界面を形成している。第1の機能層と第2の機能層は、電子注入層、電子輸送層、電子阻止層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、および発光層からは独立して選択される。通常、第1の機能層と第2の機能層は同一ではなく、それは、これらが異なる機能を有しているか、異なる有機機能材料を含有しているかのいずれかであることを意味する。こうした有機機能材料はたとえば、電子注入材料、電子輸送材料、電子阻止材料、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔阻止材料、発光材料、たとえば蛍光発光体またはリン光発光体、ホスト材料、マトリックス材料、励起子阻止材料、nドーパント、pドーパント、およびワイドバンドギャップ材料である。機能層は、前述の有機機能材料の1種以上を含有してもよい。
【0063】
第1の有機機能材料は、非架橋性ポリマーであることが好ましい。より好ましくは、第1の有機機能材料は、正孔輸送材料である非架橋性ポリマーである。好ましい正孔輸送材料は、ポリシラン、アニリンコポリマー、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン、ポリ(N-ビニル)カルバゾール、ポリピロール、ポリアニリン、ポリトリアリールアミン、およびこれらの混合物からなるリストから選択される。
【0064】
第2の有機機能材料は、発光材料であることが好ましい。好ましい発光材料は、スチルベン、スチルベンアミン、スチリルアミン、クマリン、ルブレン、ローダミン、チアゾール、チアジアゾール、シアニン、チオフェン、パラフェニレン、ペリレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ケトン、キノリン、イミン、アントラセン、ピレンと、好ましくはIr、Ru、Pd、Pt、OsまたはReを含有するリン光金属錯体、およびこれらの混合物からなるリストから選択される蛍光またはリン光発光体である。前述の好ましい発光材料のうちの2種、3種またはそれ以上を組み合わせて使用して混合物を形成してもよい。
【0065】
方法工程a1)において、第1の有機機能材料と第1の溶媒とを含有する第1の溶液を、支持体上に堆積させる。第1の溶液を上に堆積させる支持体は、OLEDに使用してもよい任意の基板であってもよい。その他、支持体は、電極(たとえば、アノードもしくはカソード)、またはOLEDに使用すべき任意の機能層、たとえば電子注入層、電子輸送層、電子阻止層、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層もしくは発光層であってもよい。支持体は、方法工程a1)において、第1の溶液を堆積させる基礎を形成する。
【0066】
方法工程a2)において、方法工程a1)において支持体上に堆積させた第1の溶液を乾燥させ、任意にアニーリングする。乾燥は、方法工程a1)において支持体上に堆積させた第1の溶液から溶媒を除去するために実施される。方法工程a2)における乾燥は、気泡形成を回避し、均一な機能層を得るために、好ましくは比較的低温、たとえば室温(25℃)で比較的長時間をかけて実施される。ただし、方法工程a2)において、高温で、好ましくは25~100℃の範囲、より好ましくは25~60℃の範囲で乾燥を実施することも可能である。方法工程a2)における乾燥は、好ましくは減圧下で、より好ましくは10-6mbar~1barの範囲、特に好ましくは10-6mbar~100mbarの範囲、最も好ましくは10-6mbar~10mbarの範囲の圧力で実施される。方法工程a2)における乾燥時間は、達成すべき乾燥度に依存する。方法工程a2)における乾燥は、好ましくは1~60分の期間内、より好ましくは1~30分の期間内で実施される。
【0067】
方法工程a2)における乾燥に続き、任意にアニーリングを行ってもよい。方法工程a2)における任意のアニーリングは、好ましくは80~300℃の範囲の高温で、より好ましくは150~200℃の範囲の温度で、最も好ましくは160~220℃の範囲の温度で実施される。方法工程a2)における任意のアニーリングは、好ましくは減圧下で、より好ましくは1~1013mbarの範囲の圧力で実施される。方法工程a2)における任意のアニーリングは、好ましくは1~60分の期間内、より好ましくは10~60分の期間内で実施される。
【0068】
好ましい態様において、方法工程a2)において乾燥とアニーリングを組み合わせて単一の工程として遂行する。この場合、乾燥とアニーリングの条件は同一である。特に好ましい態様において、乾燥のために開示される温度、圧力および時間条件が、乾燥とアニーリングに使用される。代替的な特に好ましい態様において、アニーリングのために開示される温度、圧力および時間条件が、乾燥とアニーリングに使用される。
【0069】
方法工程a2)における乾燥と任意のアニーリングは、1~90分の合計時間内に、より好ましくは1~60分の合計時間内に実施されることが好ましい。これは、乾燥と任意のアニーリングが遂行される条件が同一であるか異なるものであるかに関わらず、全ての場合に適用される。
【0070】
方法工程b1)において、第2の有機機能材料と第2の溶媒とを含有する第2の溶液を、方法工程a2)において得られた第1の機能層の上に堆積させる。方法工程b1)は、5~50℃の範囲の温度、より好ましくは10~35℃の範囲の温度で実施されることが好ましい。方法工程b1)は、10分未満の期間、より好ましくは5分未満の期間で実施されることが好ましい。
【0071】
方法工程b2)において、方法工程b1)において第1の機能層上に堆積させた第2の溶液を乾燥させ、任意にアニーリングする。方法工程b2)における乾燥は、気泡形成を回避し、均一な機能層を得るために、好ましくは比較的低温、たとえば室温(25℃)で比較的長時間をかけて実施される。ただし、方法工程b2)において、高温で、好ましくは25~100℃の範囲、より好ましくは25~60℃の範囲で乾燥を実施することも可能である。方法工程b2)における乾燥は、好ましくは減圧下で、より好ましくは10-6mbar~1barの範囲、特に好ましくは10-6mbar~100mbarの範囲、最も好ましくは10-6mbar~10mbarの範囲の圧力で実施される。方法工程b2)における乾燥時間は、達成すべき乾燥度に依存する。方法工程b2)における乾燥は、好ましくは1~60分の期間内、より好ましくは1~30分の期間内で実施される。
【0072】
方法工程b2)における乾燥に続き、任意にアニーリングを行ってもよい。方法工程b2)における任意のアニーリングは、好ましくは80~300℃の範囲の高温で、より好ましくは150~200℃の範囲の温度で、最も好ましくは160~220℃の範囲の温度で実施される。方法工程b2)における任意のアニーリングは、好ましくは減圧下で、より好ましくは1~1013mbarの範囲の圧力で実施される。方法工程b2)における任意のアニーリングは、好ましくは1~60分の期間内、より好ましくは10~60分の期間内で実施される。
【0073】
方法工程b2)において乾燥とアニーリングを組み合わせて単一の工程として遂行することが特に好ましい。この場合、乾燥とアニーリングの条件は同一である。特に好ましい態様において、乾燥のために開示される温度、圧力および時間条件が、乾燥とアニーリングに使用される。好ましい代替的態様において、アニーリングのために開示される温度、圧力および時間条件が、乾燥とアニーリングに使用される。
【0074】
方法工程b2)における乾燥と任意のアニーリングは、1~90分の合計時間内に、より好ましくは1~60分の合計時間内に実施されることが好ましい。これは、乾燥と任意のアニーリングが遂行される条件が同一であるか異なるものであるかに関わらず、全ての場合に適用される。
【0075】
第1と第2の溶液は、当技術分野で公知の任意適切な溶液処理技術を使用して液体組成物として堆積させてもよい。たとえば、溶液は、たとえば印刷法、たとえばインクジェット印刷、ノズル印刷、オフセット印刷、転写印刷、凸版印刷、グラビア印刷、輪転印刷、フレキソ印刷もしくはスクリーン印刷などを用いて;またはたとえば、コーティング法、たとえばスプレーコーティング、スピンコーティング、スロットコーティング、カーテンコーティング、フラッドコーティング、ローラーコーティングもしくはディップコーティングなどを用いて堆積させることができる。
【0076】
本発明の好ましい態様において、方法工程a1)およびb1)における堆積は、同じ溶液処理技術により、より好ましくは印刷法またはコーティング法により、最も好ましくはインクジェット印刷法により実施される。
【0077】
最も好ましい第2の溶媒の例とその沸点(BP)および室温での物理的状態を、以下の表1に示す。
【0078】
【表1-1】
【0079】
【表1-2】
【0080】
【表1-3】
【0081】
【表1-4】
【0082】
【表1-5】
【0083】
【表1-6】
【0084】
【表1-7】
【0085】
【表1-8】
【0086】
好ましくは、第2の溶媒は室温(25℃)および標準圧力(760mmHg)では液体であり、それは、760mmHgで25℃以下の融点を有することを意味する。
【0087】
好ましくは、第2の溶媒は、195~350℃の範囲、より好ましくは195~275℃の範囲、さらにより好ましくは210~300℃の範囲、さらにより好ましくは210~270℃の範囲、さらにより好ましくは220~290℃の範囲、最も好ましくは220~260℃の範囲の沸点を有する有機溶媒であり、ここで、沸点は、760mmHgで与えられる。
【0088】
好ましくは、第1の溶液は、1~70mN/mの範囲、好ましくは10~50mN/mの範囲、より好ましくは20~40mN/mの範囲の表面張力を有する。
【0089】
好ましくは、第2の溶液は、1~70mN/mの範囲、好ましくは10~50mN/mの範囲、より好ましくは20~40mN/mの範囲の表面張力を有する。
【0090】
本発明において使用する溶液の表面張力は、光学的方法であるペンダントドロップ特徴評価により測定される。この測定技術は、バルク気相中のニードルから液滴を分注する。液滴の形状は、表面張力と重力と密度差との関係に由来する。ペンダントドロップ法を用い、液滴形状分析を使用して表面張力をペンダントドロップの影画像から計算する。一般に使用され市販されている高精度液滴形状分析ツール、即ちKruess GmbHのDSA100を使用して全ての表面張力測定を遂行した。表面張力は、ソフトウェア「DSA4」により、DIN55660-1に従い決定される。測定は全て、22℃乃至24℃の範囲である周囲温度で遂行した。標準的な操作手順は、新しい使い捨ての液滴分注システム(注射器およびニードル)を用いた各調合物の表面張力の決定を含む。各液滴は、後で平均化される60回の測定を伴う1分の持続時間に亘って測定される。各調合物について、3滴測定される。最終的な値が、前記測定を平均化したものである。ツールは、表面張力が周知の様々な液体に照らして定期的にクロスチェックされる。
【0091】
好ましくは、第1の溶液は、0.8~50mPasの範囲、より好ましくは1~40mPasの範囲、より好ましくは2~20mPasの範囲、最も好ましくは2~15mPasの範囲の粘度を有する。
【0092】
好ましくは、第2の溶液は、0.8~50mPasの範囲、より好ましくは1~40mPasの範囲、より好ましくは2~20mPasの範囲、最も好ましくは2~15mPasの範囲の粘度を有する。
【0093】
本発明において使用する溶液の粘度は、Haake MARSIII形式レオメーター(Thermo Scientific)の1°コーンプレート回転式レオメーターを用いて測定される。この装置により、温度とせん断速度の正確な制御が可能である。粘度の測定は、23.4℃(+/-0.2℃)の温度および500s-1のせん断速度で行われる。各サンプルは3回測定され、得られた測定値を平均する。データの測定および処理は、DIN1342-2に従いソフトウェア「Haake RheoWin Job Manager」を使用して実施される。Haake MARSIII レオメーターは、Thermo Scientificと最初の使用前に認定標準工場較正を受けたツールにより定期的に較正される
好ましくは、第1の溶媒は、置換および無置換の芳香族または非芳香族、環状または直鎖状エステル、たとえばエチルベンゾアート、ブチルベンゾアート;置換および無置換の芳香族または直鎖状エーテル、たとえば3-フェノキシトルエンまたはアニソール誘導体;置換または無置換のアレーン誘導体、たとえばキシレン;インダン誘導体、たとえばヘキサメチルインダン;置換および無置換の芳香族または直鎖状ケトン;置換および無置換のヘテロ環式化合物、たとえばピロリジノン、ピリジン;フッ素化または塩素化炭化水素;および直鎖状または環状シロキサンからなる群から選択される。
【0094】
特に好ましい第1の溶媒は、1,2,3,4-テトラメチルベンゼン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,2-ジヒドロナフタレン、1,2-ジメチルナフタレン、1,3-ベンゾジオキソラン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ジメチルナフタレン、1,4-ベンゾジオキサン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジメチルナフタレン、1,5-ジメチルテトラリン、1-ベンゾチオフェン、1-ブロモナフタレン、1-クロロメチルナフタレン、1-エチルナフタレン、1-メトキシナフタレン、1-メチルナフタレン、1-メチルインドール、2,3-ベンゾフラン、2,3-ジヒドロベンゾフラン、2,3-ジメチルアニソール、2,4-ジメチルアニソール、2,5-ジメチルアニソール、2,6-ジメチルアニソール、2,6-ジメチルナフタレン、2-ブロモ-3-ブロモメチルナフタレン、2-ブロモメチルナフタレン、2-ブロモナフタレン、2-エトキシナフタレン、2-エチルナフタレン、2-イソプロピルアニソール、2-メチルアニソール、2-メチルインドール、3,4-ジメチルアニソール、3,5-ジメチルアニソール、3-ブロモキノリン、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、5-デカノリド、5-メトキシインダン、5-メトキシインドール、5-tert-ブチル-m-キシレン、6-メチルキノリン、8-メチルキノリン、アセトフェノン、アニソール、ベンゾニトリル、ベンゾチアゾール、ベンジルアセタート、ブロモベンゼン、ブチルベンゾアート、ブチルフェニルエーテル、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキシルヘキサノアート、デカヒドロナフトール、ジメトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、ジフェニルエーテル、プロピオフェノン、エチルベンゼン、エチルベンゾアート、γ-テルピン、メンチルイソバレラート、ヘキシルベンゼン、インダン、ヘキサメチルインダン、インデン、イソクロマン、クメン、m-シメン、メシチレン、メチルベンゾアート、o-、m-、p-キシレン、プロピルベンゾアート、プロピルベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ペンチルベンゼン、フェネトール、エトキシベンゼン、フェニルアセタート、p-シメン、プロピオフェノン、sec-ブチルベンゼン、t-ブチルベンゼン、チオフェン、トルエン、ベラトロール、モノクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピロリジノン、モルホリン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、デカリン、および/またはこれらの化合物の混合物から選択される。
【0095】
第1の溶液中の第1の有機機能材料の含有量は、第1の溶液の全重量を基準として好ましくは0.001~20重量%の範囲、より好ましくは0.01~10重量%の範囲、最も好ましくは0.1~5重量%の範囲である。
【0096】
第2の溶液中の第2の有機機能材料の含有量は、第2の溶液の全重量を基準として好ましくは0.001~20重量%の範囲、より好ましくは0.01~10重量%の範囲、最も好ましくは0.1~5重量%の範囲である。
【0097】
こうした有機機能材料はたとえば、電子注入材料、電子輸送材料、電子阻止材料、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔阻止材料、発光材料、たとえば蛍光発光体またはリン光発光体、ホスト材料、マトリックス材料、励起子阻止材料、nドーパント、pドーパント、およびワイドバンドギャップ材料である。機能層は、前述の有機機能材料の1種以上を含有してもよい。
【0098】
第1の有機機能材料は、非架橋性ポリマーであることが好ましい。より好ましくは、第1の有機機能材料は、正孔輸送材料である非架橋性ポリマーである。好ましい正孔輸送材料は、ポリシラン、アニリンコポリマー、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン、ポリ(N-ビニル)カルバゾール、ポリピロール、ポリアニリン、ポリトリアリールアミン、およびこれらの混合物からなるリストから選択される。
【0099】
第2の有機機能材料は、発光材料であることが好ましい。好ましい発光材料は、スチルベン、スチルベンアミン、スチリルアミン、クマリン、ルブレン、ローダミン、チアゾール、チアジアゾール、シアニン、チオフェン、パラフェニレン、ペリレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ケトン、キノリン、イミン、アントラセン、ピレンと、好ましくはIr、Ru、Pd、Pt、OsまたはReを含有するリン光金属錯体、およびこれらの混合物からなるリストから選択される蛍光またはリン光発光体である。前述の好ましい発光材料のうちの2種、3種またはそれ以上を組み合わせて使用して混合物を形成してもよい。
【0100】
本発明において第1または第2の溶液として使用される溶液は、電子デバイス、たとえば有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)などの機能層の製造に利用することができる少なくとも1種の有機機能材料を含む。有機機能材料は一般に、電子デバイスのアノードとカソードの間に導入される有機材料である。有機機能材料は、好ましくは有機導電体、有機半導体、有機蛍光化合物、有機リン光化合物、有機光吸収化合物、有機感光性化合物、有機光増感剤、および遷移金属、希土類、ランタニド、およびアクチニドの有機金属錯体から選択される他の有機光活性化合物から選択される。特に好ましい有機機能材料はたとえば、電子注入材料、電子輸送材料、電子阻止材料、正孔注入材料、正孔輸送材料、正孔阻止材料、発光材料、たとえば蛍光発光体またはリン光発光体、ホスト材料、マトリックス材料、励起子阻止材料、nドーパント、pドーパント、およびワイドバンドギャップ材料である。
【0101】
有機機能材料の好ましい態様は、WO2011/076314A1に詳細に開示されており、これは、参照により本願に組み込まれる。
【0102】
有機機能材料は、低分子量を有する化合物、ポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーとすることができ、ここで、有機機能材料はさらに、混合物の形態であってもよい。
【0103】
好ましい態様において、第1の溶液は、第1の有機機能材料として2種以上の異なる有機機能材料を含む。第1の有機機能材料を構成するこうした2種以上の異なる有機機能材料は、低分子量分子またはポリマーまたは少なくとも1種の低分子量分子と少なくとも1種のポリマーの混合物のいずれかであってもよい。特に好ましい態様において、第1の溶液は、低分子量を有する2種の異なる有機機能材料、低分子量を有する1種の有機機能材料とポリマーである1種の有機機能材料、またはポリマーである2種の有機機能材料を、第1の有機機能材料として含む。
【0104】
好ましい態様において、第2の溶液は、第2の有機機能材料として2種以上の異なる有機機能材料を含む。第2の有機機能材料を構成するこうした2種以上の有機機能材料は、低分子量分子またはポリマーまたは少なくとも1種の低分子量分子と少なくとも1種のポリマーの混合物のいずれかであってもよい。特に好ましい態様において、第2の溶液は、低分子量を有する2種の異なる有機機能材料、低分子量を有する1種の有機機能材料とポリマーである1種の有機機能材料、またはポリマーである2種の有機機能材料を、第2の有機機能材料として含む。
【0105】
好ましくは、低分子量を有する有機機能材料は、3,000g/mol以下、特に好ましくは2,000g/mol以下、とりわけ好ましくは1,800g/mol以下の分子量Mを有する。
【0106】
好ましくは、ポリマーである有機機能材料は、10,000g/mol以上、特に好ましくは20,000g/mol以上、とりわけ好ましくは50,000g/mol以上の分子量Mを有する。ここで、ポリマーの分子量Mは、好ましくは10,000~2,000,000g/molの範囲、特に好ましくは20,000~1,000,000g/molの範囲、非常に特に好ましくは50,000~300,000g/molの範囲である。分子量Mは、内部ポリスチレン標準に対してGPC(=ゲル浸透クロマトグラフィー)により決定される。
【0107】
有機機能材料は多くの場合、フロンティア軌道の特性によって説明され、これを以下により詳細に記載する。分子軌道、特に最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)、それらのエネルギー準位、および材料の最低三重項状態Tまたは最低励起一重項状態Sのエネルギーも、量子化学計算により決定される。金属を含まない有機物質を計算するには、まず、「基底状態/半経験的/デフォルトスピン/AM1/電荷0/スピン一重項」法を用いて構造最適化が行われる。続いて、最適化された構造に基づきエネルギー計算が行われる。「6-31G(d)」基底集合(電荷0、スピン一重項)を伴う「TD-SCF/DFT/デフォルトスピン/B3PW91」法がここでは用いられる。金属含有化合物の場合、構造は「基底状態/ハートリーフォック/デフォルトスピン/LanL2MB/電荷0/スピン一重項」法により最適化される。エネルギー計算は上述の有機物質の場合の方法と同様に行われるが、金属原子の場合は「LanL2DZ」基底集合が用いられ、配位子の場合は「6-31G(d)」基底集合が用いられるという違いがある。エネルギー計算により、HOMOエネルギー準位HEhまたはLUMOエネルギー準位LEhがハートリー単位で得られる。サイクリックボルタンメトリ測定を参照して較正される電子ボルト単位のHOMOおよびLUMOエネルギー準位は、それから下記のように決定される:
【0108】
【数6】
【0109】
本願の目的のため、これらの値をそれぞれ材料のHOMOおよびLUMOエネルギー準位とみなすこととする。
【0110】
最低三重項状態Tは、記載の量子化学計算から生じる最低エネルギーを有する三重項状態のエネルギーと定義される。
【0111】
最低励起一重項状態Sは、記載の量子化学計算から生じる最低エネルギーを有する励起一重項状態のエネルギーと定義される。
【0112】
ここで記載される方法は、使用されるソフトウェアパッケージから独立しており、常に同じ結果を与える。この目的のために頻繁に使用されるプログラムの例は、「Gaussian09W」(Gaussian Inc.)とQ-Chem4.1(Q-Chem、Inc.)である。
【0113】
ここで正孔注入材料とも呼ばれる正孔注入特性を有する材料は、正孔、即ち、正電荷のアノードから有機層への移動を単純化または促進する。一般には、正孔注入材料は、アノードのフェルミ準位の領域以上にあるHOMO準位を有する。
【0114】
ここで正孔輸送材料とも呼ばれる正孔輸送特性を有する化合物は、一般にはアノードまたは隣接層、たとえば正孔注入層から注入される正孔、即ち、正電荷を輸送することができる。正孔輸送材料は一般に、好ましくは少なくとも-5.4eVの高HOMO準位を有する。電子デバイスの構造によっては、正孔輸送材料を正孔注入材料として利用することも可能となり得る。
【0115】
正孔注入および/または正孔輸送特性を有する好ましい化合物としては、たとえば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール-パラ-フェニレン-ジアミン、トリアリールホスフィン、フェノチアジン、フェノキサジン、ジヒドロフェナジン、チアントレン、ジベンゾ-パラ-ジオキシン、フェノキサチイン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロール、およびフラン誘導体、ならびに高HOMO(HOMO=最高被占分子軌道)を有するさらなるO、SまたはN含有ヘテロ環式化合物が挙げられる。ポリマー、たとえばPEDOT:PSSも、正孔注入および/または正孔輸送特性を有する化合物として使用することができる。
【0116】
正孔注入および/または正孔輸送特性を有する化合物として、フェニレンジアミン誘導体(US3615404)、アリールアミン誘導体(US3567450)、アミノ置換カルコン誘導体(US3526501)、スチリルアントラセン誘導体(JP-A-56-46234)、多環式芳香族化合物(EP1009041)、ポリアリールアルカン誘導体(US3615402)、フルオレノン誘導体(JP-A-54-110837)、ヒドラゾン誘導体(US3717462)、アシルヒドラゾン、スチルベン誘導体(JP-A-61-210363)、シラザン誘導体(US4950950)、ポリシラン(JP-A-2-204996)、アニリンコポリマー(JP-A-2-282263)、チオフェンオリゴマー(特開平1(1989)-211399号)、ポリチオフェン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリピロール、ポリアニリン、および他の導電性高分子、ポルフィリン化合物(JP-A-63-2956965、US4720432)、芳香族ジメチリデン型化合物、カルバゾール化合物、たとえばCDBP、CBP、mCPなど、芳香族第3級アミンおよびスチリルアミン化合物(US4127412)、たとえば、ベンジジン型のトリフェニルアミン、スチリルアミン型のトリフェニルアミン、およびジアミン型のトリフェニルアミンなどに特に言及してもよい。アリールアミンデンドリマー(特開平8(1996)-193191号)、単量体トリアリールアミン(US3180730)、1以上のビニルラジカルおよび/または活性水素を含有する少なくとも1つの官能基を含有するトリアリールアミン(US3567450およびUS3658520)、またはテトラアリールジアミン(2つの第3級アミン単位はアリール基を介して結合されている)を使用することも可能である。より多くのトリアリールアミノ基が分子中に存在していてもよい。フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ブタジエン誘導体、およびキノリン誘導体、たとえばジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリンヘキサカルボニトリルなども適切である。
【0117】
少なくとも2つの第3級アミン単位を含有する芳香族第3級アミン(US2008/0102311A1、US4720432およびUS5061569)、たとえばNPD(α-NPD=4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニル-アミノ]ビフェニル)(US5061569)、TPD232(=N,N’-ビス-(N,N’-ジフェニル-4-アミノフェニル)-N,N-ジフェニル-4,4’-ジアミノ-1,1’-ビフェニル)またはMTDATA(MTDATAまたはm-MTDATA=4,4’,4’’-トリス[3-メチルフェニル)フェニルアミノ]-トリフェニルアミン)(JP-A-4-308688)、TBDB(=N,N,N’,N’-テトラ(4-ビフェニル)-ジアミノビフェニレン)、TAPC(=1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロ-ヘキサン)、TAPPP(=1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-3-フェニルプロパン)、BDTAPVB(=1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン)、TTB(=N,N,N’,N’-テトラ-p-トリル-4,4’-ジアミノビフェニル)、TPD(=4,4’-ビス[N-3-メチルフェニル]-N-フェニルアミノ)-ビフェニル)、N,N,N’,N’-テトラフェニル-4,4’’’-ジアミノ-1,1’,4’,1’’,4’’,1’’’-クアテルフェニルなどが好ましく、同様に、カルバゾール単位を含有する第3級アミン、たとえばTCTA(=4-(9H-カルバゾール-9-イル)-N,N-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゼンアミン)などが好ましい。同様に、US2007/0092755A1によるヘキサアザトリフェニレン化合物、およびフタロシアニン誘導体(たとえばHPc、CuPc(=銅フタロシアニン)、CoPc、NiPc、ZnPc、PdPc、FePc、MnPc、ClAlPc、ClGaPc、ClInPc、ClSnPc、ClSiPc、(HO)AlPc、(HO)GaPc、VOPc、TiOPc、MoOPc、GaPc-O-GaPc)が好ましい。
【0118】
下記の式(TA-1)~(TA-12)のトリアリールアミン化合物が特に好ましく、EP1162193B1、EP650955B1、Synth.Metals 1997、91(1-3)、209、DE19646119A1、WO2006/122630A1、EP1860097A1、EP1834945A1、JP08053397A、US6251531B1、US2005/0221124、JP08292586A、US7399537B2、US2006/0061265A1、EP1661888、およびWO2009/041635の文献に開示されている。式(TA-1)~(TA-12)の前記化合物は、置換されていてもよい。
【0119】
【化1-1】
【0120】
【化1-2】
【0121】
【化1-3】
【0122】
【化1-4】
【0123】
【化1-5】
【0124】
正孔注入材料として利用できるさらなる化合物が、EP0891121A1およびEP1029909A1に記載され、注入層は一般に、US2004/0174116A1に記載されている。
【0125】
正孔注入および/または正孔輸送材料として一般的に利用されるこれらのアリールアミンおよびヘテロ環式化合物は、ポリマー中で、好ましくは-5.8eV(対真空準位)を超え、特に好ましくは-5.5eVを超えるHOMOを生じる。
【0126】
電子注入および/または電子輸送特性を有する化合物は、たとえば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、アントラセン、ベンゾアントラセン、ピレン、ペリレン、ベンゾイミダゾール、トリアジン、ケトン、ホスフィンオキシド、およびフェナジン誘導体、ならびにトリアリールボラン、および低LUMO(LUMO=最低空分子軌道)を有するさらなるO、SまたはN含有ヘテロ環式化合物である。
【0127】
電子輸送および電子注入層に特に適する化合物は、8-ヒドロキシキノリンの金属キレート(たとえばLiQ、AlQ、GaQ、MgQ、ZnQ、InQ、ZrQ)、BAlQ、Gaオキシノイド錯体、4-アザフェナントレン-5-オール-Be錯体(US5529853A、式ET-1参照)、ブタジエン誘導体(US4356429)、ヘテロ環式光学的光沢剤(US4539507)、ベンゾイミダゾール誘導体(US2007/0273272A1)、たとえばTPBI(US5766779、式ET-2参照)など、1,3,5-トリアジン、たとえばスピロビフルオレニルトリアジン誘導体(たとえばDE102008064200による)、ピレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、スピロフルオレン、デンドリマー、テトラセン(たとえばルブレン誘導体)、1,10-フェナントロリン誘導体(JP2003-115387、JP2004-311184、JP2001-267080、WO02/043449)、シラシクロペンタジエン誘導体(EP1480280、EP1478032、EP1469533)、ボラン誘導体、たとえばSiを含有するトリアリールボラン誘導体(US2007/0087219A1、式ET-3参照)など、ピリジン誘導体(JP2004-200162)、フェナントロリン、とりわけ、1,10-フェナントロリン誘導体、たとえばBCPおよびBphenなど、さらにビフェニルまたは他の芳香族基を介して結合した幾つかのフェナントロリン(US2007-0252517A1)またはアントラセンに結合したフェナントロリン(US2007-0122656A1、式ET-4およびET-5参照)である。
【0128】
【化2-1】
【0129】
【化2-2】
【0130】
【化2-3】
【0131】
同様に適するのは、ヘテロ環式有機化合物、たとえばチオピランジオキシド、オキサゾール、トリアゾール、イミダゾールまたはオキサジアゾールなどである。Nを含有する五員環、たとえばオキサゾールなど、好ましくは1,3,4-オキサジアゾール、たとえばとりわけUS2007/0273272A1に開示されている式ET-6、ET-7、ET-8およびET-9の化合物;チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾールの使用例は、とりわけUS2008/0102311A1、およびY.A.Levin、M.S.Skorobogatova、Khimiya Geterotsiklicheskikh Soedinenii 1967(2)、339-341を参照されたく、好ましくは式ET-10の化合物、シラシクロペンタジエン誘導体である。好ましい化合物は、下記の式(ET-6)~(ET-10)である:
【0132】
【化3】
【0133】
有機化合物、たとえばフルオレノン、フルオレニリデンメタン、ペリレンテトラ炭酸、アントラキノンジメタン、ジフェノキノン、アントロン、およびアントラキノンジエチレンジアミンの誘導体を利用することも同様に可能である。
【0134】
2,9,10-置換アントラセン(1-もしくは2-ナフチル、および4-もしくは3-ビフェニルを有する)、または2つのアントラセン単位を含有する分子(US2008/0193796A1、式ET-11参照)が好ましい。また、非常に有利なのは、9,10-置換アントラセン単位のベンゾイミダゾール誘導体への結合(US2006/147747AおよびEP1551206A1、式ET-12およびET-13参照)である。
【0135】
【化4】
【0136】
電子注入および/または電子輸送特性を生成できる化合物は、好ましくは-2.5eV未満(対真空準位)、特に好ましくは-2.7eV未満のLUMOを生じる。
【0137】
ここでnドーパントは、還元剤、即ち、電子供与体を意味するものと解釈される。nドーパントの好ましい例は、WO2005/086251A2によるW(hpp)および他の電子リッチ金属錯体、P=N化合物(たとえばWO2012/175535A1、WO2012/175219A1)、ナフチレンカルボジイミド(たとえばWO2012/168358A1)、フルオレン(たとえばWO2012/031735A1)、フリーラジカルおよびジラジカル(たとえばEP1837926A1、WO2007/107306A1)、ピリジン(たとえばEP2452946A1、EP2463927A1)、N-ヘテロ環式化合物(たとえばWO2009/000237A1)、ならびにアクリジンおよびフェナジン(たとえばUS2007/145355A1)である。
【0138】
本発明の調合物は、発光体を含んでもよい。発光体という用語は、任意のタイプのエネルギーの移動により生じ得る励起後に、発光を伴う基底状態への放射遷移を許容する材料を意味する。一般に、2つのクラスの発光体、即ち、蛍光およびリン光発光体が公知である。蛍光発光体という用語は、励起一重項状態から基底状態へ放射遷移が生じる材料または化合物を意味する。リン光発光体という用語は、好ましくは遷移金属を含有するルミネッセンス材料または化合物を意味する。
【0139】
ドーパントが系中で上記特性を引き起こす場合、発光体は、ドーパントと呼ばれることも多い。マトリックス材料とドーパントを含む系中のドーパントは、混合物の割合が低い方の成分を意味すると解釈される。これに対応して、マトリックス材料とドーパントを含む系中のマトリックス材料は、混合物の割合が高い方の成分を意味すると解釈される。したがって、リン光発光体という用語は、たとえばリン光ドーパントを意味すると解釈することもできる。
【0140】
発光が可能な化合物は、とりわけ、蛍光発光体およびリン光発光体を含む。これらは、とりわけ、スチルベン、スチルベンアミン、スチリルアミン、クマリン、ルブレン、ローダミン、チアゾール、チアジアゾール、シアニン、チオフェン、パラフェニレン、ペリレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ケトン、キノリン、イミン、アントラセンおよび/またはピレン構造を含有する化合物を含む。室温であっても高効率で三重項状態から発光できる、即ち、電気蛍光ではなく、多くの場合エネルギー効率の上昇をもたらす電気リン光を呈する化合物が特に好ましい。この目的に適するのは、まず、原子番号が36より大きい重い原子を含有する化合物である。上記の条件を満たすd-またはf-遷移金属を含有する化合物が好ましい。ここで、8~10族の元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含有する対応する化合物が特に好ましい。ここで、適する機能性化合物は、たとえばWO02/068435A1、WO02/081488A1、EP1239526A2およびWO2004/026886A2などに記載の様々な錯体である。
【0141】
蛍光発光体として機能できる好ましい化合物を、以下の例により記載する。好ましい蛍光発光体は、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテル、およびアリールアミンのクラスから選択される。
【0142】
モノスチリルアミンは、1つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。ジスチリルアミンは、2つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。トリスチリルアミンは、3つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。テトラスチリルアミンは、4つの置換または無置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましく芳香族アミンを含有する化合物を意味するものと解釈される。スチリル基は、特に好ましくはスチルベンであり、さらに置換されていてもよい。対応するホスフィンとエーテルは、アミンと同様に定義される。本発明の意味でのアリールアミンまたは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3つの置換または無置換の芳香族またはヘテロ芳香族環系を含有する化合物を意味するものと解釈される。好ましくは、これらの芳香族またはヘテロ芳香族環系のうちの少なくとも1つは、好ましくは少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環系である。これらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミン、または芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、1つのジアリールアミノ基が好ましくは9位でアントラセン基に直接結合している化合物を意味するものと解釈される。芳香族アントラセンジアミンは、2つのジアリールアミノ基が好ましくは2,6または9,10位でアントラセン基に直接結合している化合物を意味するものと解釈される。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミン、およびクリセンジアミンはこれと同様に定義され、ここで、ジアリールアミノ基は好ましくはピレンに1位または1,6位で結合している。
【0143】
さらに好ましい蛍光発光体は、とりわけWO2006/122630に記載のインデノフルオレンアミンまたはインデノフルオレンジアミン;とりわけWO2008/006449に記載のベンゾインデノフルオレンアミンまたはベンゾインデノフルオレンジアミン;およびとりわけWO2007/140847に記載のジベンゾインデノフルオレンアミンまたはジベンゾインデノフルオレンジアミンから選択される。
【0144】
蛍光発光体として利用できるスチリルアミンのクラスからの化合物の例は、置換もしくは無置換トリスチルベンアミン、またはWO2006/000388、WO2006/058737、WO2006/000389、WO2007/065549およびWO2007/115610に記載のドーパントである。ジスチリルベンゼンおよびジスチリルビフェニル誘導体は、US5121029に記載されている。さらなるスチリルアミンを、US2007/0122656A1に見出すことができる。
【0145】
特に好ましいスチリルアミン化合物は、US7250532B2に記載の式EM-1の化合物、およびDE102005058557A1に記載の式EM-2の化合物である:
【0146】
【化5】
【0147】
特に好ましいトリアリールアミン化合物は、CN1583691A、JP08/053397AおよびUS6251531B1、EP1957606A1、US2008/0113101A1、US2006/210830A、WO2008/006449、ならびにDE102008035413に開示されている式EM-3~EM-15の化合物とその誘導体である:
【0148】
【化6-1】
【0149】
【化6-2】
【0150】
【化6-3】
【0151】
蛍光発光体として利用できるさらなる好ましい化合物は、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレン(DE102009005746)、フルオレン、フルオランテン、ペリフランテン、インデノペリレン、フェナントレン、ペリレン(US2007/0252517A1)、ピレン、クリセン、デカシクレン、コロネン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、フルオレン、スピロフルオレン、ルブレン、クマリン(US4769292、US6020078、US2007/0252517A1)、ピラン、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ピラジン、ケイ皮酸エステル、ジケトピロロピロール、アクリドン、およびキナクリドン(US2007/0252517A1)の誘導体から選択される。
【0152】
アントラセン化合物のうち、9,10-置換アントラセン、たとえば9,10-ジフェニルアントラセンおよび9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセンなどが特に好ましい。1,4-ビス(9’-エチニルアントラセニル)-ベンゼンも好ましいドーパントである。
【0153】
同様に、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体、たとえばDMQA(=N,N’-ジメチルキナクリドン)など、ジシアノメチレンピラン、たとえばDCM(=4-(ジシアノエチレン)-6-(4-ジメチルアミノスチリル-2-メチル)-4H-ピラン)など、チオピラン、ポリメチン、ピリリウムおよびチアピリリウム塩、ペリフランテン、ならびにインデノペリレンが好ましい。
【0154】
青色蛍光発光体は、好ましくはポリ芳香族化合物、たとえば9,10-ジ(2-ナフチルアントラセン)および他のアントラセン誘導体など、テトラセン、キサンテン、ペリレンの誘導体、たとえば2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレンなど、フェニレン、たとえば4,4’-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-1,1’-ビフェニル、フルオレン、フルオランテン、アリールピレン(US2006/0222886A1)、アリーレンビニレン(US5121029、US5130603)、ビス(アジニル)イミン-ホウ素化合物(US2007/0092753A1)、ビス(アジニル)メテン化合物、およびカルボスチリル化合物などである。
【0155】
さらなる好ましい青色蛍光発光体は、C.H.Chenら:「Recent developments in organic electroluminescent materials」Macro-mol.Symp.125、(1997)1-48および「Recent progress of molecular organic electroluminescent materials and devices」Mat.Sci.and Eng.R、39(2002)、143-222に記載されている。
【0156】
さらなる好ましい青色蛍光発光体は、WO2010/012328A1、WO2014/111269A2、およびPCT/EP2017/066712に開示されている炭化水素である。
【0157】
リン光発光体として機能することができる好ましい化合物を、以下の例により記載する。
【0158】
リン光発光体の例が、WO00/70655、WO01/41512、WO02/02714、WO02/15645、EP1191613、EP1191612、EP1191614、およびWO2005/033244によって明らかにされている。一般に、先行技術に従いリン光OLEDに使用され、有機エレクトロルミネッセンスの分野で当業者に公知であるようなリン光錯体は全て適切であり、当業者は、進歩性を要することなくさらなるリン光錯体を使用することができる。
【0159】
リン光金属錯体は、好ましくはIr、Ru、Pd、Pt、OsまたはReを含有する。
【0160】
好ましい配位子は、2-フェニルピリジン誘導体、7,8-ベンゾキノリン誘導体、2-(2-チエニル)ピリジン誘導体、2-(1-ナフチル)ピリジン誘導体、1-フェニルイソキノリン誘導体、3-フェニルイソキノリン誘導体、または2-フェニルキノリン誘導体である。これらの化合物は全て、青色用に、たとえばフルオロ、シアノおよび/またはトリフルオロメチル置換基により置換されていてもよい。補助配位子は、好ましくはアセチルアセトナートまたはピコリン酸である。
【0161】
特に、式EM-16の四座配位子を有するPtまたはPdの錯体が適している。
【0162】
【化7】
【0163】
式EM-16の化合物は、US2007/0087219A1により詳細に記載されており、ここで、上記式中の置換基と添え字の説明のため、開示を目的としてこの明細書を参照する。さらに、拡張環系を有するPt-ポルフィリン錯体(US2009/0061681A1)およびIr錯体、たとえば2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H、23H-ポルフィリン-Pt(II)、テトラフェニル-Pt(II)テトラベンゾポルフィリン(US2009/0061681A1)、cis-ビス(2-フェニルピリジナト-N,C’)Pt(II)、cis-ビス(2-(2’-チエニル)ピリジナト-N,C’)Pt(II)、cis-ビス(2-(2’-チエニル)-キノリナト-N,C’)Pt(II)、(2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C’)Pt(II)(アセチルアセトナート)、またはトリス(2-フェニルピリジナト-N,C’)Ir(III)(=Ir(ppy)、緑色)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C)Ir(III)(アセチルアセトナート)(=Ir(ppy)アセチルアセトナート、緑色、US2001/0053462A1、Baldo、Thompsonら、Nature 403、(2000)、750-753)、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C’)(2-フェニルピリジナト-N,C’)イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C’)(1-フェニルイソキノリナト-N,C’)イリジウム(III)、ビス(2-(2’-ベンゾチエニル)ピリジナト-N,C’)イリジウム(III)(アセチルアセトナート)、ビス(2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C’)イリジウム(III)(ピコリナート)(FIrpic、青色)、ビス(2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C’)Ir(III)(テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート)、トリス(2-(ビフェニル-3-イル)-4-tert-ブチルピリジン)イリジウム(III)、(ppz)Ir(5phdpym)(US2009/0061681A1)、(45ooppz)Ir(5phdpym)(US2009/0061681A1)、2-フェニルピリジン-Ir錯体の誘導体、たとえばPQIr(=イリジウム(III)ビス(2-フェニルキノリル-N,C’)アセチルアセトナート)など、トリス(2-フェニルイソキノリナト-N,C)Ir(III)(赤色)、ビス(2-(2’-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナト-N,C)Ir(アセチルアセトナート)([BtpIr(acac)]、赤色、Adachiら、Appl.Phys.Lett.78(2001)、1622-1624)である。
【0164】
同様に適するのは、三価のランタニド、たとえばTb3+およびEu3+などの錯体(J.Kidoら、Appl.Phys.Lett.65(1994)、2124、Kidoら、Chem.Lett.657、1990、US2007/0252517A1)、またはマレオニトリルジチオレートを含むPt(II)、Ir(I)、Rh(I)のリン光錯体(Johnsonら、JACS105、1983、1795)、Re(I)トリカルボニル-ジイミン錯体(とりわけWrighton、JACS96、1974、998)、シアノ配位子とビピリジルまたはフェナントロリン配位子を有するOs(II)錯体(Maら、Synth.Metals94、1998、245)である。
【0165】
三座配位子を有するさらなるリン光発光体が、US6824895およびUS10/729238に記載されている。赤色発光リン光錯体は、US6835469およびUS6830828に見出される。
【0166】
リン光ドーパントとして使用される特に好ましい化合物は、とりわけUS2001/0053462A1およびInorg.Chem.2001、40(7)、1704-1711、JACS2001、123(18)、4304-4312に記載の式EM-17の化合物とその誘導体である。
【0167】
【化8】
【0168】
誘導体は、US7378162B2、US6835469B2およびJP2003/253145Aに記載されている。
【0169】
さらに、US7238437B2、US2009/008607A1およびEP1348711に記載の式EM-18~EM-21の化合物とその誘導体を、発光体として利用できる。
【0170】
【化9】
【0171】
同様に、量子ドットを発光体として利用することができ、これらの材料は、WO2011/076314A1に詳細に開示されている。
【0172】
特に、発光化合物と共にホスト材料として利用される化合物は、物質の様々なクラスからの材料を含む。
【0173】
ホスト材料は一般に、利用される発光体材料よりもHOMOとLUMOの間に大きいバンドギャップを有する。加えて、好ましいホスト材料は、正孔または電子輸送材料いずれかの特性を示す。さらに、ホスト材料は、電子および正孔輸送特性の両方を有することができる。
【0174】
ホスト材料は、場合により、特にホスト材料がOLEDにおいてリン光発光体と組み合わせて利用される場合、マトリックス材料とも呼ばれる。
【0175】
特に蛍光ドーパントと共に利用される好ましいホスト材料またはコホスト材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP676461による2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレン、またはジナフチルアントラセン)、特に縮合芳香族基を含有するオリゴアリーレン、たとえばアントラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレン(DE102009005746、WO2009/069566)、フェナントレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレン、スピロフルオレン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、デカシクレン、ルブレンなど、オリゴアリーレンビニレン(たとえばEP676461によるDPVBi=4,4’-ビス(2,2-ジフェニルエテニル)-1,1’-ビフェニルもしくはスピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえばWO04/081017による)、特に8-ヒドロキシキノリンの金属錯体、たとえばAlQ(=アルミニウム(III)トリス(8-ヒドロキシキノリン))もしくはビス(2-メチル-8-キノリノラト)-4-(フェニルフェノリノラト)アルミニウムの金属錯体であって、さらにイミダゾールキレートを含むもの(US2007/0092753A1)、およびキノリン金属錯体、アミノキノリン-金属錯体、ベンゾキノリン-金属錯体、正孔輸送化合物(たとえばWO2004/058911による)、電子輸送化合物、特にケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドなど(たとえばWO2005/084081およびWO2005/084082による)、アトロプ異性体(たとえばWO2006/048268による)、ボロン酸誘導体(たとえばWO2006/117052による)またはベンゾアントラセン(たとえばWO2008/145239による)のクラスから選択される。
【0176】
ホスト材料またはコホスト材料として機能できる特に好ましい化合物は、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/もしくはピレンを含むオリゴアリーレン、またはこれらの化合物のアトロプ異性体のクラスから選択される。本発明の意味でのオリゴアリーレンは、少なくとも3つのアリールまたはアリーレン基が互いに結合している化合物を意味するものと理解されることが意図される。
【0177】
好ましいホスト材料は、特に式(H-1)の化合物から選択される
【0178】
【化10】
【0179】
(式中、Ar、Ar、Arは、出現する毎に同一であるかまたは異なり、任意に置換されていてもよい5~30個の芳香族環原子を有するアリールまたはヘテロアリール基であり、pは、1~5の範囲の整数を表し;Ar、ArおよびArの中のπ電子の合計は、p=1ならば少なくとも30、p=2ならば少なくとも36、p=3ならば少なくとも42である)。
【0180】
式(H-1)の化合物において、Ar基は、特に好ましくはアントラセンを表し、ArおよびAr基は、9および10位で結合しており、ここで、これらの基は、任意に置換されていてもよい。特に非常に好ましくは、Arおよび/またはAr基の少なくとも一方が、1-もしくは2-ナフチル、2-、3-もしくは9-フェナントレニル、または2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-ベンゾアントラセニルから選択される縮合アリール基である。アントラセン系化合物は、US2007/0092753A1およびUS2007/0252517A1に記載されており、たとえば2-(4-メチルフェニル)-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン、9-(2-ナフチル)-10-(1,1’-ビフェニル)アントラセンおよび9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセン、9,10-ジフェニルアントラセン、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン、ならびに1,4-ビス(9’-エチニルアントラセニル)ベンゼンである。2つのアントラセン単位を含有する化合物(US2008/0193796A1)、たとえば10,10’-ビス[1,1’,4’,1’’]テルフェニル-2-イル-9,9’-ビスアントラセニルも好ましい。
【0181】
さらなる好ましい化合物は、アリールアミン、スチリルアミン、フルオレセイン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、シクロペンタジエン、テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾオキサゾリン、オキサゾール、ピリジン、ピラジン、イミン、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール(US2007/0092753A1)の誘導体、たとえば2,2’,2’’-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]、アルダジン、スチルベン、スチリルアリーレン誘導体、たとえば9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)-フェニル]アントラセン、およびジスチリルアリーレン誘導体(US5121029)、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ジケトピロロピロール、ポリメチン、ケイ皮酸エステル、ならびに蛍光染料である。
【0182】
アリールアミンおよびスチリルアミンの誘導体、たとえばTNB(=4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル)が特に好ましい。金属オキシノイド錯体、たとえばLiQまたはAlQをコホストとして使用することができる。
【0183】
オリゴアリーレンをマトリックスとして含む好ましい化合物が、US2003/0027016A1、US7326371B2、US2006/043858A、WO2007/114358、WO2008/145239、JP3148176B2、EP1009044、US2004/018383、WO2005/061656A1、EP0681019B1、WO2004/013073A1、US5077142、WO2007/065678、およびDE102009005746に開示されており、ここで、特に好ましい化合物を式H-2~H-8により記載する。
【0184】
【化11】
【0185】
さらに、ホストまたはマトリックスとして利用できる化合物として、リン光発光体と共に利用される材料が挙げられる。
【0186】
これらの化合物は、ポリマー中の構造要素として利用することもでき、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)、カルバゾール誘導体(たとえばWO2005/039246、US2005/0069729、JP2004/288381、EP1205527またはWO2008/086851による)、アザカルバゾール(たとえばEP1617710、EP1617711、EP1731584またはJP2005/347160による)、ケトン(たとえばWO2004/093207またはDE102008033943による)、ホスフィンオキシド、スルホキシドおよびスルホン(たとえばWO2005/003253による)、オリゴフェニレン、芳香族アミン(たとえばUS2005/0069729による)、双極性マトリックス材料(たとえばWO2007/137725による)、シラン(たとえばWO2005/111172による)、9,9-ジアリールフルオレン誘導体(たとえばDE102008017591による)、アザボロールまたはボロン酸エステル(たとえばWO2006/117052による)、トリアジン誘導体(たとえばDE102008036982による)、インドロカルバゾール誘導体(たとえばWO2007/063754またはWO2008/056746による)、インデノカルバゾール誘導体(たとえばDE102009023155およびDE102009031021による)、ジアザホスホール誘導体(たとえばDE102009022858による)、トリアゾール誘導体、オキサゾールおよびオキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、フェニレンジアミン誘導体、第3級芳香族アミン、スチリルアミン、アミノ置換カルコン誘導体、インドール、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、カルボジイミド誘導体、トリアリールアミノフェノール配位子をさらに含有してもよい8-ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、たとえばAlQ(US2007/0134514A1)、金属錯体/ポリシラン化合物、ならびにチオフェン、ベンゾチオフェンおよびジベンゾチオフェン誘導体が挙げられる。
【0187】
好ましいカルバゾール誘導体の例は、mCP(=1,3-N,N-ジ-カルバゾリルベンゼン(=9,9’-(1,3-フェニレン)ビス-9H-カルバゾール))(式H-9)、CDBP(=9,9’-(2,2’-ジメチル[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス-9H-カルバゾール)、1,3-ビス(N,N’-ジカルバゾリル)ベンゼン(=1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、PVK(ポリビニルカルバゾール)、3,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル、およびCMTTP(式H-10)である。特に言及される化合物は、US2007/0128467A1およびUS2005/0249976A1に開示されている(式H-11およびH-13)。
【0188】
【化12】
【0189】
好ましいテトラアリール-Si化合物が、たとえばUS2004/0209115、US2004/0209116、US2007/0087219A1、およびH.Gilman、E.A.Zuech、Chemistry & Industry(London、United Kingdom)、1960、120に開示されている。
【0190】
特に好ましいテトラアリール-Si化合物を、式H-14~H-20により記載する。
【0191】
【化13-1】
【0192】
【化13-2】
【0193】
リン光ドーパント用のマトリックスの調製に特に好ましい群4からの化合物が、とりわけDE102009022858、DE102009023155、EP652273B1、WO2007/063754およびWO2008/056746に開示されており、ここで、特に好ましい化合物を式H-21~H-24により記載する。
【0194】
【化14】
【0195】
本発明に従い利用でき、ホスト材料として機能できる機能性化合物に関し、少なくとも1個の窒素原子を含有する物質が特に好ましい。これらは、好ましくは芳香族アミン、トリアジン誘導体およびカルバゾール誘導体を含む。したがって、カルバゾール誘導体は、特に、驚くべき高効率を示す。トリアジン誘導体は、電子デバイスの予期しないほどの長寿命をもたらす。
【0196】
複数の異なるマトリックス材料、特に少なくとも1種の電子輸送マトリックス材料と少なくとも1種の正孔輸送マトリックス材料を混合物として利用することも好ましい場合がある。たとえばWO2010/108579に記載されているような、電荷輸送マトリックス材料と、電荷輸送には関与するとしても顕著な程度には関与しない電気的に不活性なマトリックス材料との混合物の使用も同様に好ましい。
【0197】
一重項状態から三重項状態への移行を改善し、発光体特性を有する機能性化合物の支持に利用され、これらの化合物のリン光特性を改善する化合物を利用することがさらに可能である。この目的に適するのは特に、たとえばWO2004/070772A2およびWO2004/113468A1に記載されているような、カルバゾールおよび架橋カルバゾール二量体単位である。この目的に同じく適切なのは、たとえばWO2005/040302A1に記載されているような、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホン、シラン誘導体および類似の化合物である。
【0198】
さらに、調合物は、ワイドバンドギャップ材料を機能材料として含んでもよい。ワイドバンドギャップ材料は、US7,294,849の開示内容の意味の材料を意味するものと解釈される。これらの系は、エレクトロルミネッセントデバイスにおいて特に有利な性能データを呈する。
【0199】
ワイドバンドギャップ材料として利用される化合物は、2.5eV以上、好ましくは3.0eV以上、特に好ましくは3.5eV以上のバンドギャップを好ましくは有することができる。バンドギャップは、とりわけ最高被占分子軌道(HOMO)と最低空分子軌道(LUMO)のエネルギー準位によって計算できる。
【0200】
さらに、調合物は、正孔阻止材料(HBM)を機能材料として含んでもよい。正孔阻止材料は、特にこの材料が発光層または正孔輸送層に隣接する層の形態で配置される場合、多層系において正孔(正電荷)の伝達を防止または最小化する材料を意味する。一般に、正孔阻止材料は、隣接層の中の正孔輸送材料よりも低いHOMO準位を有する。正孔阻止層は多くの場合、OLEDにおいて発光層と電子輸送層の間に配置される。
【0201】
原則として、任意公知の正孔阻止材料を利用することが可能である。本願の他の場所に記載される他の正孔阻止材料に加え、有利な正孔阻止材料は、金属錯体(US2003/0068528)、たとえばビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlQ)などである。Fac-トリス(1-フェニルピラゾラト-N,C2)-イリジウム(III)(Ir(ppz))がこの目的のために同様に利用されている(US2003/0175553A1)。フェナントロリン誘導体、たとえばBCPなど、またはフタルイミド、たとえばTMPPなども同様に利用できる。
【0202】
さらに、有利な正孔阻止材料が、WO00/70655A2、WO01/41512およびWO01/93642A1に記載されている。
【0203】
さらに、調合物は、電子阻止材料(EBM)を機能材料として含んでもよい。電子阻止材料は、特にこの材料が発光層または電子輸送層に隣接する層の形態で配置される場合、多層系において電子の伝達を防止または最小化する材料を意味する。一般に、電子阻止材料は、隣接層の中の電子輸送材料よりも高いLUMO準位を有する。
【0204】
原則として、任意公知の電子阻止材料を利用することが可能である。本願の他の場所に記載される他の電子阻止材料に加え、有利な電子阻止材料は、遷移金属錯体、たとえばIr(ppz)(US2003/0175553)などである。
【0205】
電子阻止材料は、好ましくはアミン、トリアリールアミン、およびその誘導体から選択することができる。
【0206】
さらに、調合物に有機機能材料として利用できる機能性化合物は、低分子量化合物である場合、好ましくは3,000g/mol以下、特に好ましくは2,000g/mol以下、とりわけ好ましくは1,800g/mol以下の分子量を有する。
【0207】
特に興味深いのは、さらに、高いガラス転移温度により特徴付けられる機能性化合物である。これに関連し、調合物に有機機能材料として利用できる特に好ましい機能性化合物は、DIN51005に従い判定されるガラス転移温度が70℃以上、好ましくは100℃以上、特に好ましくは125℃以上、とりわけ好ましくは150℃以上のものである。
【0208】
調合物は、ポリマーを有機機能材料としてさらに含んでもよい。有機機能材料として上に記載される化合物は、比較的低分子量を有することが多く、ポリマーと混合することもできる。これらの化合物を共有結合的にポリマーに組み込むことが同様に可能である。これは、特に、反応性脱離基、たとえば臭素、ヨウ素、塩素、ボロン酸もしくはボロン酸エステル、または反応性重合可能基、たとえばオレフィンもしくはオキセタンによって置換された化合物により可能である。これらは、対応するオリゴマー、デンドリマーまたはポリマー製造用のモノマーとして使用することができる。ここでのオリゴマー化または重合は、好ましくは、ハロゲン官能基もしくはボロン酸官能基により、または重合可能基により起きる。さらに、この種の基を介してポリマーを架橋させることが可能である。本発明による化合物とポリマーを、架橋または非架橋層として利用することができる。
【0209】
有機機能材料として利用できるポリマーは多くの場合、上記の化合物の文脈において記載した単位または構造要素、とりわけWO02/077060A1、WO2005/014689A2およびWO2011/076314A1において開示され広く記載されたものを含有する。これらは、参照することにより本願に組み込まれる。機能材料は、たとえば下記のクラスに由来するものとすることができる:
群1:正孔注入および/または正孔輸送特性を生成することができる構造要素;
群2:電子注入および/または電子輸送特性を生成することができる構造要素;
群3:群1および群2に関連して記載される特性を併せ持つ構造要素;
群4:発光特性、特にリン光基を有する構造要素;
群5:いわゆる一重項状態から三重項状態への移行を改善する構造要素;
群6:結果として得られるポリマーの形態または発光色に影響を与える構造要素;
群7:典型的には骨格として使用される構造要素。
【0210】
ここでの構造要素は、さらに様々な機能を有していてもよく、明確な割り当てが有利である必要はない。たとえば、群1の構造要素が同様に骨格として機能してもよい。
【0211】
群1からの構造要素を含有する有機機能材料として利用される正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーは、好ましくは上記の正孔輸送または正孔注入材料に対応する単位を含有してもよい。
【0212】
群1のさらなる好ましい構造要素は、たとえば、トリアリールアミン、ベンジジン、テトラアリール-パラ-フェニレンジアミン、カルバゾール、アズレン、チオフェン、ピロール、およびフラン誘導体、ならびに高HOMOを有するさらなるO、SまたはN含有ヘテロ環式化合物である。これらのアリールアミンおよびヘテロ環式化合物は、好ましくは-5.8eV(対真空準位)を超え、特に好ましくは-5.5eVを超えるHOMOを有する。
【0213】
とりわけ、下記の式HTP-1の反復単位の少なくとも1つを含有する正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーが好ましい:
【0214】
【化15】
【0215】
(式中、符号は下記の意味を有する:
Arは、各場合において、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なり、単結合、または任意に置換されていてもよい単環式もしくは多環式アリール基であり;
Arは、各場合において、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なり、任意に置換されていてもよい単環式または多環式アリール基であり;
Arは、各場合において、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なり、任意に置換されていてもよい単環式または多環式アリール基であり;
mは、1、2または3である)。
【0216】
式HTP-1A~HTP-1Cの単位からなる群から選択されるHTP-1の反復単位が特に好ましい:
【0217】
【化16】
【0218】
(式中、符号は下記の意味を有する:
は、出現する毎に同一であるかまたは異なり、H、置換もしくは無置換芳香族もしくはヘテロ芳香族基、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アラルキル、アリールオキシ、アリールチオ、アルコキシカルボニル、シリルもしくはカルボキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、またはヒドロキシ基であり;
rは、0、1、2、3または4であり、
sは、0、1、2、3、4または5である)。
【0219】
とりわけ、下記の式HTP-2の反復単位の少なくとも1つを含有する正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーが好ましい:
【0220】
【化17】
【0221】
(式中、符号は下記の意味を有する:
およびTは、チオフェン、セレノフェン、チエノ[2,3-b]チオフェン、チエノ[3,2-b]チオフェン、ジチエノチオフェン、ピロールおよびアニリンから独立して選択され、ここで、これらの基は1つ以上のラジカルRによって置換されていてもよく;
は、出現する毎にハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR00、-C(=O)X、-C(=O)R、-NH、-NR00、-SH、-SR、-SOH、-SO、-OH、-NO、-CF、-SF、任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい、1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいシリル、カルビルまたはヒドロカルビル基から独立して選択され;
およびR00は、それぞれ独立してH、または任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい、1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいカルビルもしくはヒドロカルビル基であり;
ArおよびArは、互いに独立して、任意に置換されていてもよく任意に隣接するチオフェンまたはセレノフェン基の一方または両方の2,3位に結合していてもよい、単環式または多環式アリールまたはヘテロアリール基を表し;
cおよびeは、互いに独立して0、1、2、3または4であり、ここで、1<c+e≦6であり;
dおよびfは、互いに独立して0、1、2、3または4である)。
【0222】
正孔輸送または正孔注入特性を有するポリマーの好ましい例が、とりわけWO2007/131582A1およびWO2008/009343A1に記載されている。
【0223】
群2からの構造要素を含有する有機機能材料として利用される電子注入および/または電子輸送特性を有するポリマーは、好ましくは上記の電子注入および/または電子輸送材料に対応する単位を含有してもよい。
【0224】
電子注入および/または電子輸送特性を有する群2のさらなる好ましい構造要素は、たとえば、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、オキサジアゾール、キノリン、キノキサリン、およびフェナジン基、さらにトリアリールボラン基、または低LUMO準位を有するさらなるO、SもしくはN含有ヘテロ環式化合物から誘導される。これらの群2の構造要素は、好ましくは-2.7eV未満(対真空準位)、特に好ましくは-2.8eV未満のLUMOを有する。
【0225】
有機機能材料は、好ましくは群3からの構造要素を含有するポリマーとすることができ、ここで、正孔および電子移動性を改善する構造要素(即ち、群1および2からの構造要素)は、互いに直接結合している。これらの構造要素の一部は、発光体として機能でき、ここで、発光色は、たとえば緑色、赤色または黄色にシフトされてもよい。したがって、それらの使用は、たとえば、元来青色に発光するポリマーによる他の発光色または広帯域発光の生成にとって有利である。
【0226】
群4からの構造要素を含有する有機機能材料として利用される発光特性を有するポリマーは、好ましくは上記の発光体材料に対応する単位を含有していてもよい。ここで、リン光基、特に8~10族の元素(Ru、Os、Rh、Ir、Pd、Pt)を含有する対応する単位を含有する上記の発光金属錯体を含有するポリマーが好ましい。
【0227】
いわゆる一重項状態から三重項状態への移行を改善する群5の単位を含有する有機機能材料として利用されるポリマーは、好ましくはリン光化合物の支持に利用することができ、好ましくは上記の群4の構造要素を含有するポリマーである。ここでは、高分子三重項マトリックスを使用することができる。
【0228】
この目的に適するのは、特に、たとえばDE10304819A1およびDE10328627A1に記載されているような、カルバゾールおよび連結カルバゾール二量体単位である。同じくこの目的に適するのは、たとえばDE10349033A1に記載されているようなケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、スルホンおよびシラン誘導体、ならびに類似の化合物である。さらに、好ましい構造単位は、リン光化合物と共に利用されるマトリックス材料に関連して上に記載した化合物に由来するものとすることができる。
【0229】
さらなる有機機能材料は、好ましくはポリマーの形態または発光色に影響を与える群6の単位を含有するポリマーである。上に言及されたポリマーの他に、これらは、上記の基にカウントされない少なくとも1つのさらなる芳香族または別の共役構造を有するものである。したがって、これらの基は、電荷担体移動性、非有機金属錯体、または一重項-三重項移行に対して効果がほとんどないか、全くない。
【0230】
ポリマーは、架橋性基、たとえばスチレン、ベンゾシクロブテン、エポキシド、およびオキセタン部分をさらに含んでもよい
この種の構造単位は、結果として得られるポリマーの形態または発光色に影響を与えることができる。したがって、構造単位によっては、これらのポリマーは、発光体として使用することもできる。
【0231】
したがって、蛍光OLEDの場合、6~40個のC原子を有する芳香族構造要素、またはトラン、スチルベンもしくはビススチリルアリーレン誘導体単位が好ましく、そのそれぞれは、1つ以上のラジカルによって置換されていてもよい。ここでは、1,4-フェニレン、1,4-ナフチレン、1,4-もしくは9,10-アントリレン、1,6-、2,7-もしくは4,9-ピレニレン、3,9-もしくは3,10-ペリレニレン、4,4’-ビフェニレン、4,4’’-テルフェニリレン、4,4’-ビ-1,1’-ナフチリレン、4,4’-トラニレン、4,4’-スチルベニレン、または4,4’’-ビススチリルアリーレン誘導体から誘導される基の使用が特に好ましい。
【0232】
有機機能材料として利用されるポリマーは、好ましくは群7の単位を含有し、好ましくは、多くの場合骨格として使用される6~40個のC原子を有する芳香族構造を含有する。
【0233】
これらは、とりわけ、たとえばUS5962631、WO2006/052457A2およびWO2006/118345A1に開示されている4,5-ジヒドロピレン誘導体、4,5,9,10-テトラ-ヒドロピレン誘導体、フルオレン誘導体、たとえばWO2003/020790A1に開示されている9,9-スピロビフルオレン誘導体、たとえばWO2005/104264A1に開示されている9,10-フェナントレン誘導体、たとえばWO2005/014689A2に開示されている9,10-ジヒドロフェナントレン誘導体、たとえばWO2004/041901A1およびWO2004/113412A2に開示されている5,7-ジヒドロジベンゾオキセピン誘導体とcis-およびtrans-インデノフルオレン誘導体、ならびにたとえばWO2006/063852A1に開示されているビナフチレン誘導体、ならびにたとえばWO2005/056633A1、EP1344788A1、WO2007/043495A1、WO2005/033174A1、WO2003/099901A1およびDE102006003710に開示されているさらなる単位を含む。
【0234】
たとえばUS5,962,631、WO2006/052457A2およびWO2006/118345A1に開示されているフルオレン誘導体、たとえばWO2003/020790A1に開示されているスピロビフルオレン誘導体、たとえばWO2005/056633A1、EP1344788A1およびWO2007/043495A1に開示されているベンゾフルオレン、ジベンゾフルオレン、ベンゾチオフェンおよびジベンゾフルオレン基とその誘導体から選択される群7の構造単位が特に好ましい。
【0235】
特に好ましい群7の構造要素は、一般式PB-1で表される:
【0236】
【化18】
【0237】
(式中、符号と添え字は、下記の意味を有する:
A、BおよびB’はそれぞれ、また、異なる反復単位に対して同一であるかまたは異なっており、好ましくは-CR-、-NR-、-PR-、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-CO-、-CS-、-CSe-、-P(=O)R-、-P(=S)R-および-SiR-から選択される二価基であり;
およびRは、出現する毎にH、ハロゲン、-CN、-NC、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR00、-C(=O)X、-C(=O)R、-NH、-NR00、-SH、-SR、-SOH、-SO、-OH、-NO、-CF、-SF、任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいシリル、カルビルまたはヒドロカルビル基から独立して選択され、ここで、RおよびRは、任意にそれらが結合しているフルオレンラジカルと共にスピロ基を形成してもよく;
Xは、ハロゲンであり;
およびR00はそれぞれ独立して、H、または任意に置換されていてもよく任意に1個以上のヘテロ原子を含有していてもよい、1~40個の炭素原子を有する任意に置換されていてもよいカルビルもしくはヒドロカルビル基であり;
gは、各場合において、独立して0または1であり、hは、各場合において、独立して0または1であり、ここで、副単位中のgとhの合計は好ましくは1であり;
mは、1以上の整数であり;
ArおよびArは、互いに独立して任意に置換されていてもよく任意にインデノフルオレンの7,8位または8,9位に結合されていてもよい単環式または多環式アリールまたはヘテロアリール基を表し;
aおよびbは、互いに独立して0または1である)。
【0238】
およびR基がこれらの基が結合しているフルオレン群と共にスピロ基を形成する場合、この基は好ましくはスピロビフルオレンを表す。
【0239】
式PB-1A~PB-1Eの単位からなる群から選択される式PB-1の反復単位が特に好ましい:
【0240】
【化19-1】
【0241】
【化19-2】
【0242】
(式中、Rは、式PB-1について上に記載した意味を有し、rは、0、1、2、3または4であり、Rは、ラジカルRと同じ意味を有する)。
【0243】
は、好ましくは-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)NR00、-C(=O)X、-C(=O)R、-NR00、4~40個、好ましくは6~20個のC原子を有する任意に置換されていてもよいシリル、アリールもしくはヘテロアリール基、または1~20個、好ましくは1~12個のC原子を有する直鎖、分枝もしくは環状アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシ基であり、ここで、1個以上の水素原子は任意にFまたはClによって置換されていてもよく、R、R00基およびXは、式PB-1について上に記載した意味を有する。
【0244】
式PB-1F~PB-1Iの単位からなる群から選択される式PB-1の反復単位が特に好ましい:
【0245】
【化20】
【0246】
(式中、符号は下記の意味を有する:
Lは、H、ハロゲン、または1~12個のC原子を有する任意にフッ素化されていてもよい直鎖状もしくは分枝アルキルもしくはアルコキシ基であり、好ましくはメチル、i-プロピル、t-ブチル、n-ペントキシまたはトリフルオロメチルを表し;
L’は、1~12個のC原子を有する任意にフッ素化されていてもよい直鎖状または分枝アルキルまたはアルコキシ基であり、好ましくはn-オクチルまたはn-オクチルオキシを表す)。
【0247】
本発明を実施するには、上記群1~7の構造要素の2種以上を含有するポリマーが好ましい。さらに、ポリマーは、好ましくは上記の1つの群からの構造要素の2種以上を含有する、即ち、1つの群から選択される構造要素の混合物を含むことが規定されてもよい。
【0248】
特に、発光特性、好ましくは少なくとも1種のリン光基を有する少なくとも1種の構造要素(群4)の他に、少なくとも1種のさらなる上記群1~3、5または6の構造要素を追加で含有するポリマーが特に好ましく、ここで、これらは好ましくは群1~3から選択される。
【0249】
様々なクラスの基の割合は、ポリマー中に存在する場合、広い範囲内とすることができ、ここで、これらは、当業者には公知である。各場合において、上記群1~7の構造要素から選択される、ポリマー中に存在する1つのクラスの割合が、好ましくは各場合において5mol%以上、特に好ましくは各場合において10mol%以上である場合、驚くべき利点を達成することができる。
【0250】
白色発光コポリマーの調製が、とりわけDE10343606A1に詳細に記載されている。
【0251】
溶解度を向上させるため、ポリマーは、対応する基を含有してもよい。好ましくは、ポリマーが置換基を含有し、その結果反復単位1つ当たり平均で少なくとも2個の非芳香族炭素原子、特に好ましくは少なくとも4個、とりわけ好ましくは少なくとも8個の非芳香族炭素原子が存在し、ここで、平均は数平均に関することが規定されてもよい。ここで、個々の炭素原子は、たとえば、OまたはSによって置きかえられていてもよい。ただし、特定の割合の、任意に全ての反復単位が、非芳香族炭素原子を含有する置換基を含有しないことも可能である。ここでは、長鎖置換基は、有機機能材料を用いて得ることができる層に悪影響を及ぼす可能性があるため、短鎖置換基が好ましい。置換基は、好ましくは直鎖中に12個以下の炭素原子、好ましくは8個以下の炭素原子、特に好ましくは6個以下の炭素原子を含有する。
【0252】
発明に従い有機機能材料として利用されるポリマーは、ランダム、交互もしくはレジオ規則性コポリマー、ブロックコポリマー、またはこれらのコポリマー形態の組合せとすることができる。
【0253】
さらなる態様において、有機機能材料として利用されるポリマーは、側鎖を有する非共役ポリマーとすることができ、ここで、この態様は、ポリマーに基づくリン光OLEDの場合に特に重要である。一般に、リン光ポリマーは、ビニル化合物のフリーラジカル共重合によって得ることができ、ここで、これらのビニル化合物は、とりわけUS7250226B2に開示されているように、リン光発光体を有する少なくとも1つの単位および/または少なくとも1つの電荷輸送単位を含有する。さらなるリン光ポリマーが、とりわけJP2007/211243A2、JP2007/197574A2、US7250226B2およびJP2007/059939Aに記載されている。
【0254】
さらなる好ましい態様において、非共役のポリマーは、スペーサー単位により互いに連結された骨格単位を含有する。骨格単位に基づく非共役のポリマーに基づくこうした三重項発光体の例が、たとえばDE102009023154に開示されている。
【0255】
さらなる好ましい態様において、非共役ポリマーは、蛍光発光体として設計することができる。側鎖を有する非共役ポリマーに基づく好ましい蛍光発光体は、アントラセンもしくはベンゾアントラセン基、またはこれらの基の誘導体を側鎖に含有し、ここで、これらのポリマーは、たとえばJP2005/108556、JP2005/285661およびJP2003/338375に開示されている。
【0256】
これらのポリマーは多くの場合、電子または正孔輸送材料として利用することができ、ここで、これらのポリマーは、好ましくは非共役ポリマーとして設計される。
【0257】
さらに、本発明において使用される溶液において有機機能材料として利用される機能性化合物は、高分子化合物の場合、好ましくは10,000g/mol以上、特に好ましくは20,000g/mol以上、とりわけ好ましくは50,000g/mol以上の分子量Mを有する。
【0258】
ここで、ポリマーの分子量Mは、好ましくは10,000~2,000,000g/molの範囲、特に好ましくは20,000~1,000,000g/molの範囲、非常に特に好ましくは50,000~300,000g/molの範囲である。分子量Mは、内部ポリスチレン標準に対してGPC(=ゲル浸透クロマトグラフィー)により決定される。
【0259】
機能性化合物の説明のための上記に引用した出版物は、開示を目的として参照することにより本願に組み込まれる。
【0260】
本発明において使用される溶液は、電子デバイスのそれぞれの機能層の製造に必要な有機機能材料を全て含んでもよい。たとえば、正孔輸送、正孔注入、電子輸送または電子注入層が1種の機能性化合物から正確に構築される場合、溶液は、この化合物を有機機能材料として正確に含む。たとえば、発光層が発光体をマトリックスまたはホスト材料と組み合わせて含む場合、本願において他の場所でより詳細に説明したように、溶液は、有機機能材料として発光体とマトリックスまたはホスト材料の混合物を正確に含む。
【0261】
前記成分の他に、本発明において使用される溶液は、さらなる添加剤および加工助剤を含んでもよい。これらは、とりわけ、表面活性物質(界面活性剤)、滑沢剤およびグリース、粘度を調整する添加剤、伝導性を増加させる添加剤、分散剤、疎水化剤、接着促進剤、流動性向上剤、消泡剤、脱気剤、反応性または非反応性であってもよい希釈剤、充填剤、補助剤、加工助剤、染料、顔料、安定剤、増感剤、ナノ粒子、ならびに阻害剤を含む。
【0262】
本発明はさらに、本発明の方法によって得ることができる電子デバイスに関する。電子デバイスは、上記の本発明の電子デバイスの製造方法によって調製される少なくとも2つの隣接する機能層を有する。
【0263】
本発明の方法において使用される溶液は、好ましい電子または光電子部品、たとえばOLEDの製造に必要とされるような有機機能材料が層中に存在する層または多層構造の製造に利用することができる。
【0264】
本発明において使用される溶液は、好ましくは、基板または基板に施された層のうちの1つの層の上に機能層を形成するために利用することができる。
【0265】
電子デバイスは、2つの電極と、その間の少なくとも2つの機能層を含むデバイスを意味するものと解釈され、ここで、機能層は、少なくとも1種の有機または有機金属化合物を含む。
【0266】
電子デバイスは、好ましくは有機電子デバイス、たとえば有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)、高分子エレクトロルミネッセントデバイス(PLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機、発光トランジスタ(O-LET)、有機ソーラーセル(O-SC)、有機光学検出器、有機光受容器、有機電場消光デバイス(O-FQD)、有機電気センサ、発光電気化学セル(LEC)、または有機レーザーダイオード(O-レーザー)などである。
【0267】
活性成分は一般に、アノードとカソードの間に導入される有機または無機の材料であり、ここで、これらの活性成分は、電子デバイスの特性、たとえばその性能および/またはその寿命を実現、維持および/または向上させるもので、たとえば電荷注入、電荷輸送または電荷阻止材料であるが、特に発光材料とマトリックス材料である。したがって、電子デバイスの機能層の製造に利用できる有機機能材料は、好ましくは電子デバイスの活性成分を含む。
【0268】
有機エレクトロルミネッセントデバイス(OLED)は、本発明の好ましい態様である。OLEDは、カソード、アノード、および少なくとも2つの機能層を含み、ここで、一方の機能層は発光層である。
【0269】
2種以上の三重項発光体の混合物をマトリックスと共に発光層として利用することがさらに好ましい。ここで、短波長発光スペクトルを有する三重項発光体は、より長波長の発光スペクトルを有する三重項発光体のためのコマトリックスとして機能する。
【0270】
この場合、発光層中のマトリックス材料の割合は、蛍光発光層の場合、好ましくは50乃至99.9体積%、特に好ましくは80乃至99.5体積%、とりわけ好ましくは92乃至99.5体積%であり、リン光発光層の場合、70乃至97体積%である。
【0271】
これに対応して、ドーパントの割合は、蛍光発光層の場合、好ましくは0.1乃至50体積%、特に好ましくは0.5乃至20体積%、とりわけ好ましくは0.5乃至8体積%であり、リン光発光層の場合、3乃至15体積%である。
【0272】
有機エレクトロルミネッセントデバイスの発光層は、複数のマトリックス材料を含む系(混合マトリックス系)および/または複数のドーパントをさらに包含してもよい。この場合も、ドーパントは一般に、系中での割合が低い方の材料であり、マトリックス材料は、系中での割合が高い方の材料である。ただし、個々の場合、系中での個々のマトリックス材料の割合は、個々のドーパントの割合より低くてもよい。
【0273】
混合マトリックス系は、好ましくは2または3種の異なるマトリックス材料、特に好ましくは2種の異なるマトリックス材料を含む。ここで、2種の材料の一方は、好ましくは正孔輸送特性を有する材料、またはワイドバンドギャップ材料であり、他方の材料は、電子輸送特性を有する材料である。ただし、混合マトリックス成分の所望の電子輸送および正孔輸送特性は、単一の混合マトリックス成分が主として、あるいは完全に併せ持っていてもよく、この場合、さらなる混合マトリックス成分(複数可)は、他の機能を果たす。ここで、2種の異なるマトリックス材料は、1:50~1:1、好ましくは1:20~1:1、特に好ましくは1:10~1:1、とりわけ好ましくは1:4~1:1の比で存在してもよい。混合マトリックス系は、好ましくはリン光有機エレクトロルミネッセントデバイスで利用される。混合マトリックス系に関するさらなる詳細は、たとえばWO2010/108579に見出すことができる。
【0274】
これらの層とは別に、有機エレクトロルミネッセントデバイスは、さらなる層、たとえば各場合において、1つ以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、励起子阻止層、電子阻止層、電荷生成層(IDMC 2003、Taiwan;Session 21 OLED(5)、T.Matsumoto、T.Nakada、J.Endo、K.Mori、N.Kawamura、A.Yokoi、J.Kido、Multiphoton Organic EL Device Having Charge Generation Layer)および/または有機もしくは無機p/n接合をさらに含んでもよい。ここで、1つ以上の正孔輸送層をたとえば金属酸化物、たとえばMoOもしくはWOなどで、または(過)フッ素化電子不足芳香族化合物でpドープすること、および/または1つ以上の電子輸送層をnドープすることが可能である。たとえば励起子阻止機能を有する、および/またはエレクトロルミネッセントデバイスにおける電荷バランスを制御する中間層を2つの発光層の間に導入することが同様に可能である。ただし、指摘すべきことであるが、これらの層のそれぞれは、必ずしも存在する必要があるとは限らない。
【0275】
機能層、たとえば正孔輸送および/または正孔注入層の厚さは、好ましくは1~500nmの範囲、特に好ましくは2~200nmの範囲とすることができる。
【0276】
本発明のさらなる態様において、電子デバイスは、3つ以上の機能層を含む。ここで、本発明による方法は、好ましくは、数対の隣接する機能層の製造に利用することができる。
【0277】
電子デバイスは、本発明による方法により施されたものではない、低分子量化合物またはポリマーから構築される機能層をさらに含んでもよい。これらは、高真空中での低分子量化合物の蒸発により製造することができる。
【0278】
加えて、有機機能材料を純粋な物質としてではなく、代わりに任意所望のタイプのさらなる高分子、オリゴマー、樹状または低分子量物質と共に混合物(ブレンド)として使用することも好ましい可能性がある。これらは、たとえば機能層の電子または発光特性を改善してもよい。
【0279】
本発明の好ましい態様において、ここでの有機エレクトロルミネッセントデバイスは、2つ以上の発光層を含んでもよい。複数の発光層が存在する場合、好ましくは、これらは380nm乃至750nmに複数の発光極大を有して全体として白色発光を生じる、即ち、蛍光またはリン光を発することができる様々な発光化合物が発光層に使用される。3層系が非常に特に好ましく、ここで、3層は、青色、緑色、およびオレンジ色または赤色発光を呈する(基本的構造については、たとえばWO2005/011013を参照されたい)。白色発光デバイスは、たとえばLCDディスプレイの背面照明として、または一般的な照明用途に適している。
【0280】
複数のOLEDを上下に配置し、実現すべき光収率に関してさらなる効率上昇を可能にすることもできる。
【0281】
光取り出し(out-coupling)を改善するため、OLEDにおける光出力側の最終有機層を、たとえば、ナノ発泡体の形態として全反射の割合の低下をもたらすこともできる。
【0282】
1つ以上の層が昇華プロセスにより施されるOLEDがさらに好ましく、ここで、材料は、真空昇華ユニットの中で10-5mbar未満、好ましくは10-6mbar未満、特に好ましくは10-7mbar未満の圧力で蒸着により施される。
【0283】
さらに、本発明による電子デバイスの1つ以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスによって、またはキャリアガス昇華を活用して施されることが規定されてもよく、ここで、材料は、10-5mbar乃至1barの圧力で施される。
【0284】
さらに、本発明による電子デバイスの1つ以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングなどにより、または任意所望の印刷プロセス、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷もしくはオフセット印刷などであるが、特に好ましくはLITI(光誘起熱イメージング、熱転写印刷)もしくはインクジェット印刷により製造されることが規定されてもよい。
【0285】
これらの層は、請求項に記載の方法とは異なる方法によって適用してもよい。たとえば、好ましくは、適用すべき層の機能材料を溶解するが、機能材料が適用される層を溶解しない直交溶媒をここで使用することができる。
【0286】
電子デバイスは通常、カソードとアノード(電極)を含む。電極(カソード、アノード)は、本発明の目的のために、高度に効率的な電子または正孔注入を確保するため、それらのバンドエネルギーが隣接する有機層のバンドエネルギーに可能な限り近くなるように選択される。
【0287】
カソードは、好ましくは金属錯体、低い仕事関数を有する金属、金属合金または様々な金属、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属もしくはランタノイド(たとえばCa、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Smなど)などを含む多層構造を含む。多層構造の場合、比較的高い仕事関数を有するさらなる金属、たとえばAgを前記金属に加えて使用することもでき、この場合、金属の組合せ、たとえばCa/AgまたはBa/Agなどが一般に用いられる。高誘電率を有する材料の薄い中間層を金属製カソードと有機半導体の間に導入することも好ましい可能性がある。この目的に適するのは、たとえば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属フッ化物、さらに対応する酸化物(たとえばLiF、LiO、BaF、MgO、NaFなど)である。この層の層厚は、好ましくは0.1乃至10nm、特に好ましくは0.2乃至8nm、とりわけ好ましくは0.5乃至5nmである。
【0288】
アノードは、好ましくは高い仕事関数を有する材料を含む。アノードは、好ましくは対真空で4.5eVを超える電位を有する。この目的に適するのは、一方で高い酸化還元電位を有する金属、たとえばAg、PtまたはAuなどである。他方、金属/金属酸化物電極(たとえばAl/Ni/NiO、Al/PtO)も好ましい可能性がある。用途によっては、電極の少なくとも一方は、有機材料の照射(O-SC)または光のカップリングアウト(OLED/PLED、O-lasers)のいずれかを促進するため、透明でなければならない。好ましい構造は、透明なアノードを使用する。ここで、好ましいアノード材料は、伝導性混合金属酸化物である。インジウムスズ酸化物(ITO)またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)が特に好ましい。伝導性のドープされた有機材料、特に伝導性のドープされたポリマー、たとえばポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリアニリン(PANI)など、またはこれらのポリマーの誘導体がさらに好ましい。pドープされた正孔輸送材料を正孔注入層としてアノードに適用することがさらに好ましく、ここで、適切なpドーパントは、金属酸化物、たとえばMoOもしくはWO、または(過)フッ素化電子不足芳香族化合物である。さらなる適切なpドーパントは、HAT-CN(ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン)またはNovaled製の化合物NPD9である。この種の層は、低HOMOエネルギー、即ち、大きな負の値のHOMOエネルギーを有する材料における正孔注入を単純化する。
【0289】
一般に、先行技術に従い機能層に使用される材料は全て、電子デバイスのさらなる機能層に使用することができる。
【0290】
これに対応し、電子デバイスは、それ自体公知の方法で構築され、用途によっては、接点が設けられ、こうしたデバイスの寿命は水および/または空気の存在下では大幅に短くなるため、最終的に密閉される。
【0291】
電子デバイスを調製する方法、およびそこから得ることができる電子デバイス、特に有機エレクトロルミネッセントデバイスは、下記の驚くべき利点の1つ以上により先行技術とは区別される:
1.本発明による方法により得ることができる電子デバイスは、従来の方法により得られる電子デバイスと比較して、非常に高い安定性と非常に長い寿命を呈する。
2.本発明による方法は、従来の設備を用いて実施することができ、それによって費用優位性を実現できる。
3.本発明による方法に利用される有機機能材料は、特定の制約を何ら受けることなく、本発明の方法を包括的に利用することを可能とする。
4.本発明の方法を用いて得ることができる機能層は、特に機能層の均一性に関して優れた品質を呈する。
5.第1の層中の機能材料は、架橋性基を含む必要がない。これらの基は、デバイスの寿命を縮めることが知られている。
6.第1の層は、ハードベーキングまたは熱架橋工程を施す必要がなく、より低いい処理温度を利用することができる。これにより、材料の熱劣化が低減され、それによりデバイス性能が向上する。
【0292】
上記の利点は、他の電子的特性の低下を伴わない。
【0293】
本発明の特徴は全て、特定の特徴および/または工程が相互に排他的でない限り、任意の方法で互いに組み合わせることができる。これは、特に、本発明の好ましい特徴に当てはまる。同様に、必須ではない組合せの特徴は、個別に(かつ組み合わせることなく)使用することができる。
【0294】
さらに指摘すべきことであるが、多くの特徴、特に本発明の好ましい態様の特徴は、それ自体進歩性があり、本発明の態様の一部分に過ぎないとみなすべきではない。これらの特徴について、本発明で請求されているそれぞれの発明に加えて、あるいはその代替として、独立した保護を求めることができる。
【0295】
当業者は、この記載を使用して創作技術を利用する必要なく本発明によるさらなる調合物および電子デバイスを製造することができ、したがって、請求された範囲全体を通じて本発明を実施することができる。
【0296】
以下に実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、それにより限定するものではない。
【0297】
[実施例]
溶解試験
溶媒における材料の溶解度の決定は、測光または重量法による溶解度の決定を記載するISO基準7579:2009に従い遂行することができる。ここでは、考えられる溶媒の沸点が120℃より高いため、測光技術が推奨される。
【0298】
下記に記載する通りの溶解試験を遂行した。実験は、再現性の容易さに特に焦点を当てて設計した。分析対象の材料(複数可)(第1の機能層を形成するために使用されるもの)を透明なガラスフラスコに量り取った。次いで表3に制定したリストに属する溶媒(または予め形成した溶媒混合物)を、7g/Lの最終濃度に到達するように計算して固体混合物に一気に添加した。マグネチックスターラーを用いて混合物を室温(25℃)、600rpmで完全に溶解するまで撹拌した。これは、混合物の目視検査で判断した。溶解試験の終盤に、未溶解粒子の識別に役立てるため、混合物をさらに視線に垂直な照明の下で検査することができる。クロノメーターを用いて本発明で言及されている「溶解時間」tDISSと呼ぶこともある「溶解の時間」を測定し、溶媒を添加し撹拌を開始してから材料の最後の塊が溶液中に消失するまでの時間を数値化した。溶解速度は、7g/Lを完全溶解が達成されるまでの時間(「溶解時間」)で割ることにより決定した。
【0299】
以下に示す結果に関しては、PCT/EP2015/002476に記載の正孔輸送材料(HTL)ポリマー(ポリマーP1)を使用した。溶媒は、25℃での溶解時間tDISSに応じて分類し、溶解タイプにより特徴付けした(表2参照)。溶解試験の結果を表3に提示する。
【0300】
【表2】
【0301】
【表3】
【0302】
HTL層安定性試験方法
1.基板調製
30000×30000×1100ミクロンサイズの透明ガラス基板上に、「試験対象」材料(この場合、図8に示すように、溶解試験に使用したのと同一の材料HTM-2、または異なるHTM、たとえばHTM-1、HTM-3~HTM-7を使用した)を溶液からスピンコーティングする。溶液は、溶媒1リットル当たり5乃至50グラムの材料を含有する。調合物は、固体材料を溶媒に量り入れることにより調製する。調合物を溶解させるが、それは、室温でマグネチックスターラーを用いて室温にて1~6時間混合物を撹拌することにより促進することができる。必要な場合は、溶解を支援するために温度を加えることもできる。完全に溶解した後、調合物をグローブボックスに移し、不活性条件下で0.2ミクロンPTFEフィルターを用いてろ過する。調合物を用いてスライドガラス上に厚さ50nmの層をスピンコーティングする。厚さは、Alpha-step D-500スタイラス型表面形状測定装置を用いて測定する。この調製手順を用いて調製した層の表面は非常に平坦かつ平滑である。平均表面粗さ(RMS)は、1nm未満である。堆積後、基板を特定温度、好ましくは140℃超、より好ましくは140℃~230℃のホットプレート上に最大1時間置くことにより層をアニーリングする。この場合、220℃の温度で30分間を使用した。
2.層損傷試験条件
堆積させた材料層の安定性の試験を溶媒Aに対して行った。この溶媒Aをプリンタ(Dimatix DMP-2831、任意の同様なドロップ・オン・デマンドインクジェットプリンタ/プリントヘッドを使用可能)の溶媒安定性10pl使い捨てカートリッジに充填する。カートリッジのサイズが小滴の体積を決定する。この場合、10ピコリットルカートリッジを使用する。プリンタは、振動のない環境で作動させ、水平でなければならない。印刷条件の正確な調節(詳細な手順は、Dimatixユーザマニュアルを参照されたい)は、毎秒4メートルの小滴速度である。
【0303】
印刷は、単一のノズルのみを使用して行った。1)の手順に従い調製した基板をまずプリンタの基板ホルダ上に配置する。特定の液滴体積を有するように印刷パターン(図1)をプログラムする。この場合、表面上の液滴は、非常に近接して3×3行列に配置される9つの小さな個々の小滴からなる。印刷後、結果として得られる液滴は、図2のように見える-個々の小滴は全て結合して90ピコリットルの液滴体積の単一の液滴を形成する(他の液滴体積も使用できるが、一連の実験に亘り一定に保つ必要がある)。図2の画像は、プリンタの基準カメラを用いて観察することができる。画像は、上から噴射方向に平行に基板を見下ろしている(概略図、図3参照)。
3.層損傷試験手順
印刷直後、基準カメラ(図2)を用いて写真を撮影し、タイマーを始動させる。5分間のいわゆる「浸漬時間」中に写真を数枚撮影する(表4、図8参照)。印刷直後、付着した液滴の直径を測定する。これは、視野とx/y座標がリンクしているため、基準スクリーンを用いて行うことができる。これは、それぞれのマークを付けた位置のx/yデータをエクスポートできるため、2点の距離を計算できることを意味する。この値が液滴直径として使用され、表面上の溶媒の相互作用を記述する。浸漬時間中に撮影された写真を見ることにより、溶媒と表面との相互作用、引いては表面改質を識別することができる。図6の写真をよく見ると、小滴の境界周囲の次第に大きくなる暗色の陰影がついた環が示されている。これが、溶媒による表面の損傷に対応する。5分間の浸漬時間後、基板を真空乾燥室に入れ、溶媒を除去し、層を完全に乾燥させる。圧力は、60秒のポンピング後に1・10-4mbarに達する。基板は、少なくとも10分間十分に乾燥させる。乾燥後、基板を取り出し、表面への損傷を定量化する。プリンタの基準カメラを再度用いて別の写真を撮影する。この写真では、層への損傷を既に明確に識別することができる。加えて、層への損傷を定量化するには、触知測定、たとえばプロフィロメトリ(図4参照)またはAFM(原子間力顕微鏡法)などを行うことができる。層安定性を定量化するための主要性能指標(KPI)として、プロファイル測定と交差する方向の最低点と最高点との差を定義した(図5参照)。値は、ナノメートルの単位を有する。KPIの決定後、値は図7に見ることができる損傷指標(DI)に変換される。これは次いで、特定の溶媒に対する層安定性を識別するためにさらに使用することができる。
【0304】
【表4】
【0305】
第2の溶媒に曝した層の溶解速度の尺度である層損傷速度を決定するため、KPIを、この一連の実験では300秒に設定した浸漬時間で割る。破壊係数の単位は、時間当たりの層磨耗速度の単位であり、ここではナノメートル毎秒[nm/秒]である。一般に、浸漬時間は、典型的な溶液処理工程の範囲内でなければならない。DIに応じ、層中の第1の材料と第2の溶液を調製するために使用される第2の溶媒との所定の組合せについて、0.066nm/秒未満の破壊係数が本発明に従い使用するのに許容可能である。一部の材料について、結果を下記の表に要約する。
デバイス性能
作成方法の説明
予め構造化されたITOとバンク材料で被覆したガラス基板をイソプロパノール中とその後の脱イオン水中での超音波処理を用いて洗浄し、次いでエアガンを用いて乾燥させ、続いてホットプレート上にて230℃で2時間アニーリングした。デバイス構造は、図9に示す通りである。
【0306】
PCT/EP2015/002476に記載されているようなポリマー(たとえば、ポリマーP2)と塩(たとえば、塩D1)の組成物を用いた正孔注入層(HIL)を基板上にインクジェット印刷し、真空中で乾燥させた。HILインクは、3-フェノキシトルエンを用いて例毎に7g/Lで調製した。次いで、HILを空気中200℃で30分間アニーリングした。
【0307】
HILの上に正孔輸送層(HTL)をインクジェット印刷し、真空中で乾燥させ、窒素雰囲気中220℃で30分間アニーリングした。正孔輸送層用の材料として、3-フェノキシトルエンに7g/Lの濃度で溶解させたポリマーHTM-1、HTM-2、HTM-3、HTM-4、HTM-5、HTM-6、またはHTM-7を使用した。ポリマーHTM-1の構造は、PCT/EP2015/002476に記載されているポリマーP2の構造であり、HTM-2は、PCT/EP2015/002476に記載のポリマーP1である。
【0308】
ポリマーHTM-3、HTM-5およびHTM-6の構造とその分子量Mおよび多分散度Dは、下記の通りである:
【0309】
【表5】
【0310】
ポリマーHTM-3、HTM-5およびHTM-6の調製に使用したモノマーは、下記の通りである:
【0311】
【表6】
【0312】
HTM-4の構造は、WO2013/156130A1(Po18)に記載されている。HTM-7の構造は、WO2005/024971A1(ポリマーB)に記載されている。
【0313】
緑色発光層(G-EML)を同様にインクジェット印刷し、真空乾燥させ、窒素雰囲気中150℃で10分間アニーリングした。全ての実施例で、緑色発光層用のインクは、2種のホスト材料(即ち、HM-1とHM-2)、ならびに3-フェノキシトルエンおよびメンチルイソバレラート中16g/Lの濃度に調製した1種の三重項発光体(EM-1)を含有していた。材料は、下記の比、HM-1:HM-2:EM-1=20:60:20で使用した。材料の構造は、下記の通りである:
【0314】
【化21】
【0315】
インクジェット印刷プロセスは全て、黄色光の下、周囲条件下で実施した。
【0316】
次いで、デバイスを真空蒸着チャンバに移し、そこで熱蒸発を用いて、一般の正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、およびカソード(Al)の堆積を行った(図9参照)。次いで、グローブボックス内でデバイスの特徴を明らかにした。
【0317】
正孔阻止層(HBL)において、ETM-1を正孔阻止材料として使用した。この材料は、下記の構造を有する:
【0318】
【化22】
【0319】
電子輸送層(ETL)には、ETM-1とLiQの50:50混合物を使用した。LiQは、リチウム8-ヒドロキシキノリナートである。
【0320】
最後に、Al電極を蒸着する。次いでデバイスをグローブボックスにおいてカプセル化し、周囲空気中で物理的特徴の評価を遂行した。図9は、デバイス構造を示す。
【0321】
Keithley230電圧源によって供給される定電圧によりデバイスを駆動する。
デバイスにかかる電圧およびデバイを通る電流をKeithley199DMMマルチメーターで測定する。デバイスの明度をフォトダイオードとフォトニックフィルターの組合せであるSPL-025Y明度センサで検出する。光電流をKeithley617電位計で測定する。スペクトルの場合、明度センサを分光計入力に接続したガラス繊維に置きかえる。デバイスの寿命は、初期輝度を有する所定電流の下で測定される。次いで、輝度が較正されたフォトダイオードにより経時的に測定される。
結果および考察
デバイス例1(HTM-1上に3-フェノキシトルエンからのEML)、デバイス例2(HTM-1上にメンチルイソバレラートからのEM)、デバイス例3(HTM-2上に3-フェノキシトルエンからのEML)、デバイス例4(HTM-2上にメンチルイソバレラートからのEML)を含む4つのデバイスを調製した。
【0322】
表5は、1000cd/mでの発光効率と外部量子効率(EQE)、および2000cd/mでのデバイス寿命(LT65)をまとめたものである。デバイス実験3からわかるように、3-フェノキシトルエン(溶解試験におけるタイプC、層損傷試験における損傷指標「-」)は、EML用の溶媒として使用した場合、実用的なOLEDの調製に適していない一方、メンチルイソバレラートを用いて調製したEMLインク(デバイス実験4)を使用すると、この一連の実験から最良性能のデバイスを得ることができる。HTM-1に対する実験(デバイス実験1および2)から、損傷指標「0」は実用的なデバイスをもたらすが、性能は損傷指標「++」との組合せよりも悪いことが明らかである。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 界面を形成する第1の機能層と第2の機能層を含む電子デバイスを調製する方法であって、
下記の方法工程:
a1)第1の有機機能材料と第1の溶媒とを含有する第1の溶液を、支持体上に堆積させること;
a2)前記第1の溶液を乾燥させ、任意に前記第1の有機機能材料をアニーリングして、第1の機能層を得ること;
b1)第2の有機機能材料と第2の溶媒とを含有する第2の溶液を、前記第1の機能層上に堆積させること;および
b2)前記第2の溶液を乾燥させ、任意に前記第2の有機機能材料をアニーリングして、第2の機能層を得ること
を含み、前記第2の溶媒における前記第1の有機機能材料の絶対溶解度が、25℃で、0.1~200g/L、好ましくは5.0~200g/L、より好ましくは5.1~200g/Lの範囲であり、前記第2の溶媒における前記第2の有機機能材料の絶対溶解度が、25℃で、5.0g/Lより高く、好ましくは5.1g/Lより高く、より好ましくは5.2g/Lより高いことを特徴とする、方法。
[2] 前記第2の溶媒における前記第1の有機機能材料の溶解速度が、25℃で、0.116g/(L・分)未満である、[1]に記載の方法。
[3] 前記第2の溶媒が、25℃で、0.066nm/秒未満の前記第1の機能層に対する層損傷速度(LDR)を有する、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 下記の条件:
d(層1)>LDR・t(b1)
(式中、d(層1)は、前記第1の機能層の厚さ[nm]であり;LDRは、25℃で測定した層損傷速度[nm/秒]であり;t(b1)は、方法工程b1が実施される期間[秒]である)
が適用される、[3]に記載の方法。
[5] 下記の条件:
DISS (材料1/溶媒2)≧2・t(b1)
(式中、t DISS (材料1/溶媒2)は、25℃で、7.00gの前記第1の有機機能材料を1.00Lの前記第2の溶媒に溶解させるのに必要な溶解時間[秒]であり;t(b1)は、方法工程b1が実施される期間[秒]である)
が適用される、[1]または[2]に記載の方法。
[6] 前記第1の有機機能材料が、非架橋性ポリマーである、[1]~[5]の何れか一項に記載の方法。
[7] 前記非架橋性ポリマーが、正孔輸送材料である、[6]に記載の方法。
[8] 前記正孔輸送材料が、ポリシラン、アニリンコポリマー、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン、ポリ(N-ビニル)カルバゾール、ポリピロール、ポリアニリン、ポリトリアリールアミン、およびこれらの混合物からなるリストから選択される、[7]に記載の方法。
[9] 前記第2の溶液中の前記第2の有機機能材料の含有量が、前記第2の溶液の全重量を基準として0.001~20重量%の範囲、より好ましくは0.01~10重量%の範囲であることを特徴とする、[1]~[8]の何れか一項に記載の方法。
[10] 前記第2の有機機能材料が、発光材料である、[1]~[9]の何れか一項に記載の方法。
[11] 前記発光材料が、スチルベン、スチルベンアミン、スチリルアミン、クマリン、ルブレン、ローダミン、チアゾール、チアジアゾール、シアニン、チオフェン、パラフェニレン、ペリレン、フタロシアニン、ポルフィリン、ケトン、キノリン、イミン、アントラセン、ピレンと、好ましくはIr、Ru、Pd、Pt、OsまたはReを含有するリン光金属錯体、およびこれらの混合物からなるリストから選択される蛍光またはリン光発光体である、[10]に記載の方法。
[12] 方法工程b1が、600秒未満の期間、好ましくは300秒未満の期間で実施される、[1]~[11]の何れか一項に記載の方法。
[13] 方法工程b1が、5~50℃の範囲、好ましくは10~35℃の範囲の温度で実施される、[1]~[12]の何れか一項に記載の方法。
[14] 方法工程b1における第2の有機機能材料と第2の溶媒とを含有する前記第2の溶液の前記第1の機能層上への前記堆積が、印刷法またはコーティング法により実施される、[1]~[13]の何れか一項に記載の方法。
[15] 前記第1の溶媒が、ケトン、置換および無置換の芳香族、脂環式または直鎖状エーテル、エステル、アミド、芳香族アミン、硫黄化合物、ニトロ化合物、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素、インダン誘導体、ならびにハロゲン化芳香族またはヘテロ芳香族炭化水素からなるリストから選択される有機溶媒である、[1]~[14]の何れか一項に記載の方法。
[16] 前記第2の溶媒が、1つの芳香族6員炭素環系または1つもしくは2つの脂肪族5もしくは6員炭素環系を含有する、8~14個の炭素原子と1~3個の酸素および/または窒素原子とを有する有機溶媒である、[1]~[15]の何れか一項に記載の方法。
[17] 前記第2の溶媒が、760mmHgで195~350℃の範囲、好ましくは210~300℃の範囲、より好ましくは220~290℃の範囲の沸点を有する有機溶媒である、[1]~[16]の何れか一項に記載の方法。
[18] 前記電子デバイスが、有機エレクトロルミネッセントデバイスである、[1]~[17]の何れか一項に記載の方法。
[19] [1]~[18]の何れか一項に記載の方法により得ることができる電子デバイス。
【0323】
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9