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特許7196078発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子及び発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/20 20060101AFI20221219BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20221219BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20221219BHJP
   B29K 25/00 20060101ALN20221219BHJP
【FI】
C08J9/20 CET
C08F290/06
B29C44/00 G
B29K25:00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019534567
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2018028907
(87)【国際公開番号】W WO2019026972
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2017151473
(32)【優先日】2017-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田村 充宏
(72)【発明者】
【氏名】大原 洋一
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-109279(JP,A)
【文献】特開2016-183255(JP,A)
【文献】特開2015-214641(JP,A)
【文献】特開2004-155870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08F 290/00-290/14
B29C 44/00-44/60、67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーとからなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、融点40℃以上の外添剤を含み、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡し成形することで得られる発泡成形体の静止摩擦係数が4.0以下であり、
表層部の主成分がポリシロキサンであり、
前記表層部は、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の最外層より30nm以上250nm以下の範囲であり、
前記「主成分がポリシロキサンである」とは、ポリシロキサン成分が共重合体100重量%に対して50重量%以上含まれている状態であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
前記外添剤が、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸モノグリセライド、植物油のいずれか1種又は複数の混合物であることを特徴とする請求項1に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
前記ポリシロキサン含有マクロモノマーが両末端及び/または側鎖に官能基を有することを特徴とする請求項1または2に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項4】
前記ポリシロキサン含有マクロモノマーの官能基が、ビニル基であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項5】
前記スチレン系単量体が89.0重量部以上99.2重量部以下であり、前記ポリシロキサン含有マクロモノマーが0.8重量部以上11.0重量部以下である(スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーとの合計量が100重量部である)ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなることを特徴とするポリスチレン系予備発泡粒子。
【請求項7】
請求項6に記載のポリスチレン系予備発泡粒子を成形してなることを特徴とする発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーとからなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系予備発泡粒子及び発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系発泡成形体は、その軽量性や緩衝性能から、容器、梱包材、建築土木部材、自動車部材など多岐にわたって使用されている。
【0003】
しかし、発泡性ポリスチレン系樹脂からなる発泡成形体は、発泡成形体同士や他の樹脂部材、鋼板などと擦り合わされた場合、キュッキュという不快な擦れ音が発生しやすいという問題点がある。特に自動車部材分野では悪路走行などで振動を伴いやすいため、擦れ音の発生が使用感を損ねる原因となる。
【0004】
このような問題を解決するため、脂肪族系化合物やシリコーン系化合物を表面に塗布または樹脂粒子に混練された発泡成形体が開示されている。例えば特許文献1にはポリシロキサン含有単量体とスチレン系単量体の共重合体であり、樹脂粒子の表面部にポリシロキサンが存在する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子で擦れ音の発生を抑制する方法が記載されている。
【0005】
しかしながら、シリコーン系化合物を樹脂粒子表面に塗布した場合は当該樹脂粒子を成形体に成形した際の樹脂粒子同士の融着を悪化させる傾向があり製品の強度を損なう傾向にある。更には、擦れた際に樹脂粒子が外れ落ち、成形体表面がいびつになることで静止摩擦係数が上昇し擦れ音を発生させる可能性がある。
【0006】
また、特許文献2では基本樹脂としてのポリスチレン系樹脂と、ポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂とを含む発泡成形体、また、特許文献3では植物由来ポリエチレン系樹脂と、ビニル芳香族系モノマーを重合して得られる樹脂とを含む複合樹脂粒子で静止摩擦係数を抑制する方法が記載されている。
【0007】
しかしながら、擦れ音抑制を考える場合はこれらの手法では十分な効果を得ることができない。
【0008】
また、マクロモノマーをスチレン系単量体に共重合させる例は、特許文献4、5に記載されている。しかしながら、これらの手法はいずれもマクロモノマーに擦れ音抑制性能を期待したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2016-183255号公報
【文献】特開2014-193950号公報
【文献】特開2013-006966号公報
【文献】特開2008-231175号公報
【文献】WO2006/106653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような状況に鑑み、本発明は、予備発泡機や成形金型を汚染することなく擦れ音を抑制でき、さらに、融着性に優れた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリスチレン粒子表面にのみポリシロキサンを共重合し、更に融点40℃以上の外添剤を塗布することにより、成形体が擦れた際に発生する不快音を抑制し、成形体が擦れた際に粒子が剥がれ落ちるのを抑制でき、擦れ音抑制性能が長期間維持されるという新規知見を見出し、本発明の完成に至った。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0012】
〔1〕スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーとからなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、融点40℃以上の外添剤を含み、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡し成形することで得られる発泡成形体の静止摩擦係数が4.0以下であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、予備発泡機や成形金型を汚染することなく擦れ音を抑制できる発泡成形体が得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。まあ、異なる実施形態及び/又は実施例に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態及び/又は実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0015】
本発明の一実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーとからなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、融点40℃以上の外添剤を含み、当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡し成形することで得られる発泡成形体の静止摩擦係数が4.0以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明の一実施形態で用いられるスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン系誘導体を使用することができる。これらスチレン系単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。特に、スチレンであることが、発泡性、成形加工性が良好である点から好ましい。
【0017】
本発明の一実施形態では、スチレン系単量体にスチレンと共重合可能なモノマーを本発明の効果を阻害しない範囲で使用しても良い。スチレンと共重合可能なモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、セチルメタクリレートなどのアクリル酸及びメタクリル酸のエステル、あるいはアクリロニトリル、ジメチルフマレート、エチルフマレートなどの各種単量体、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの2官能性単量体も包含する。これら共重合可能なモノマーを1種又は2種以上使用し共重合に供しても良い。
【0018】
これらは、本発明の一実施形態において、スチレン系単量体に加算される。そのため、スチレン系単量体と共重合可能な他のモノマーとの合計量が共重合体100重量%に対して89.0重量%以上99.5重量%以下であることが好ましい。
【0019】
前記ポリシロキサン含有マクロモノマーは、スチレン系単量体と共重合するために、官能基を有する。少なくともポリシロキサン含有マクロモノマー1分子あたり複数個の官能基を側鎖若しくは両末端に有するのが好ましい。官能基の官能基当量は、100g/mol以上2万g/mol以下が好ましく、1千g/mol以上1万g/mol以下がより好ましい。官能基当量が100g/mol未満になると、ポリシロキサン含有マクロモノマー同士の重合が増えるためにスチレンとの共重合体が得られ難くなる傾向がある。官能基当量が2万g/molを超えるとスチレン系単量体との反応性が低いために共重合し難い傾向がある。
【0020】
前記ポリシロキサン含有マクロモノマーを得る方法に特に限定はなく、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが用いられる。
【0021】
官能基を少なくとも側鎖に有するポリシロキサン含有マクロモノマー(以下、「側鎖型のポリシロキサン含有マクロモノマー」とも称する)の製造方法として例えば、環状、直鎖状または分岐状のオルガノシロキサン(好ましくは環状オルガノシロキサン)を、酸、アルカリ、塩、フッ素化合物などの触媒を用いて重合する方法を挙げることができる。前記重合に用いるオルガノシロキサンのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2万以下、より好ましくは1万以下である。前記方法において、前記オルガノシロキサンとともに官能基を有するシランおよび/または官能基を有する環状、直鎖状、または分岐状オルガノシロキサンを用いる方法を、より好ましくあげることができる。
【0022】
あるいは、溶液中、スラリー中、もしくはエマルジョン中において、ポリシロキサンと、好ましくは官能基を有するシランおよび/または官能基を有する環状、直鎖状または分岐状オルガノシロキサンとを前述と同様の触媒などの存在下平衡化する方法をあげることができる。ポリシロキサンは、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が2万以上であることが好ましく、より好ましくは5万以上、さらに好ましくは10万以上である。
【0023】
また、側鎖型のポリシロキサン含有マクロモノマーの製造方法は、例えば、特開2006-291122号公報に記載の公知の乳化重合法により得ることができる。
【0024】
すなわち、1,3,5,7-オクタメチルシクロテトラシロキサンに代表される環状シロキサン、および/またはジメチルジメトキシシランなどの加水分解性基を有する2官能シラン、必要に応じてメチルトリエトキシシラン、テトラプロピルオキシシランなどの3官能以上のアルコキシシラン、メチルオルソシリケートなどの3官能以上のシランの縮合体、並びに必要に応じてメルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、アクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルフェニルジメトキシメチルシランなどの官能基を用いてポリシロキサン含有マクロモノマーを得ることができる。中でも、メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシランが、スチレン系単量体との共重合の観点から好ましい。
【0025】
ポリシロキサン含有マクロモノマーの粘度は動粘度として25℃で10mm/s以上が好ましく、50mm/s以上がより好ましい。粘度が高いほどシロキサン鎖が長いため擦れ音抑制性能が発現しやすくなる。
【0026】
ポリシロキサン含有マクロモノマーの主鎖であるポリシロキサンの分子量は、GPCを用いて求めたポリスチレン換算重量平均分子量で1千以上50万以下が好ましく、3千以上30万以下がより好ましい。分子量が高いほどシロキサン鎖が長いため擦れ音抑制性能が発現しやすいが、粘度が高すぎるとハンドリング性が悪くなり重合が難しくなる。
【0027】
本発明の一実施形態で用いられるポリシロキサン含有マクロモノマーの官能基は、スチレン系単量体と反応する官能基であれば特に制限はない。スチレン系単量体との反応性からビニル基が好ましく、ビニル基を含む官能基の中でもメタクリロイル基若しくはアクリロイル基がさらに好ましい。
【0028】
ポリシロキサン含有マクロモノマーを構成する主鎖の例として、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン共重合体などのポリオルガノシロキサン、側鎖アルキル基の一部が水素原子に置換されたポリオルガノハイドロジェンシロキサンなどを用いることができる。なかでもポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジメチルシロキサン-ジフェニルシロキサン共重合体が好ましく、さらにポリジメチルシロキサンが経済的にも容易に入手できるので最も好ましい。
【0029】
ポリシロキサン含有マクロモノマーの官能基の官能基数は、1.5個以上であることが好ましく、1.7個以上がさらに好ましい。官能基数が1.5個未満であるとスチレン系単量体との反応性が低いために共重合し難い傾向がある。上限は、50.0個以下であり、好ましくは30.0個以下、より好ましくは10.0個以下である。50.0個を超えると、ポリシロキサン含有マクロモノマー同士の反応が起こり、スチレン系単量体との反応性が悪化する問題ある。
【0030】
本発明の一実施形態における発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成する基材樹脂における単量体組成は、共重合体100重量%に対してスチレン系単量体89.0重量%以上99.5重量%以下、ポリシロキサン含有マクロモノマー0.5重量%以上11.0重量%以下(なお、「共重合体100重量%」とは、「スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーとの合計量が100重量%」と同義である)が好ましく、より好ましくは、スチレン系単量体89.0重量%以上99.5重量%未満、ポリシロキサン含有マクロモノマー0.5重量%超11.0重量%以下であり、さらに好ましくは、スチレン系単量体89.8重量%以上99.2重量%以下、ポリシロキサン含有マクロモノマー0.8重量%以上10.2重量%以下である。ポリシロキサン含有マクロモノマーの成分比率が多いと、発泡剤が抜けやすくなるため発泡性、成形性に劣る傾向があり、表面が美麗な発泡成形体を得づらい。ポリシロキサン含有マクロモノマーの成分比率が少ないと擦れ音抑制性能が十分に発揮されない。また、例えば、スチレン系単量体96.7重量%以上98.8重量%以下、ポリシロキサン含有マクロモノマー1.2重量%以上3.3重量%以下であってもよく、スチレン系単量体97.5重量%以上98.5重量%以下、ポリシロキサン含有マクロモノマー1.5重量%以上2.5重量%以下であってもよい。
【0031】
本発明の一実施形態において融点40℃以上の外添剤とは、例えば、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドなどの脂肪酸トリグリセライド;ラウリン酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライドなどの脂肪酸ジグリセライド;ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、リノール酸モノグリセライドなどの脂肪酸モノグリセライド;ヒマシ硬化油などの植物油などが挙げられる。これら外添剤は単独で用いても良いし、2種以上を混合しても良い。中でも、ステアリン酸トリグリセライド及びヒマシ硬化油は発泡成形体の融着を促進するために好ましい。また、これら外添剤は発泡剤含浸時に水系に添加してもよいし、脱水後に若しくは乾燥後に添加し被覆してもよく、被覆方法によらない。好ましい被覆方法は、乾燥後に添付し、混合撹拌することにより被覆する方法である。例えば、袋の中に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子と外添剤とを加え手で振ることでブレンドする方法や、リボンミキサー、スーパーミキサー、ナウターミキサー、パムアペックスミキサー等のブレンド機を使用する方法などが挙げられる。
【0032】
外添剤の融点としては40℃以上である。融点が40℃未満であると常温で液状化する外添剤があり、成形時の融着性を損なう傾向がある。また、外添剤の融点の上限値は150℃以下であり、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましい。融点が上限値を越えると成形加工時に溶融せず、融着促進効果を損なう傾向がある。
【0033】
外添剤の添加量は、0.02重量部以上0.50重量部以下が好ましく、0.03重量部以上0.20重量部以下がより好ましい。添加量が0.02重量部未満であると融着促進の効果が得られず、0.50重量部超であると表面が外添剤により侵食され表面美麗性を損なう傾向がある。
【0034】
本発明の一実施形態において、静止摩擦係数は、4.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。静止摩擦係数が4.0超であると成形体を擦り合わせたときの引っかかりが大きく、擦れ音抑制効果を損なう傾向がある。
【0035】
本発明の一実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、表層部の主成分がポリシロキサンであることが好ましい。
【0036】
本発明の一実施形態における「表層部」とは、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の最外層より30nm以上250nm以下の範囲を示す。「主成分がポリシロキサンである」とは、ポリシロキサン成分が共重合体100重量%に対して50重量%以上含まれている状態であり、好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。
【0037】
ポリシロキサン成分が50重量%未満であると擦れ音抑制性能が発現し難くなる傾向がある。
【0038】
本発明の一実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子におけるTHFに不溶なゲル成分は5wt%以上45wt%以下であることが好ましく、より好ましくは12wt%以上40wt%以下である。ゲル成分が5wt%未満であると、擦れ音抑制性能が十分に発揮されない。ゲル成分が45wt%を超えると、発泡性、成形性が劣る傾向があり、表面美麗な発泡成形体を得難くなる傾向がある。
【0039】
本発明の一実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子はTHFに可溶な成分のGPCで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が、20万以上40万以下であることが好ましく、25万以上35万以下がより好ましい。重量平均分子量が低いと部材として使用する際の圧縮強度などの機械的強度に劣る傾向にある。また、重量平均分子量が高いと表面性のよい成形体が得られづらい。本発明の一実施形態では分子量の調整のために、スチレンと共重合可能なモノマーとしてジビニルベンゼン、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの二官能性単量体を用いることができる。
【0040】
本発明の一実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する方法としては、水性懸濁液中でスチレン系単量体を重合させ、続いてポリシロキサン含有マクロモノマーを添加して重合する方法(以下、「懸濁重合」とも称する)、または、ポリスチレン系樹脂粒子を含む水性懸濁液に、スチレン系単量体およびポリシロキサン含有単量体を連続的または断続的に添加することにより、ポリスチレン系樹脂粒子にスチレン系単量体およびポリシロキサン含有マクロモノマーを含浸させ、重合させるいわゆるシード重合法、等があげられる。中でも、均一な粒径の粒子が得られること、コア・シェル構造を得やすいこと、分散安定性が良いことの観点から、シード重合法がより好ましい。
【0041】
水性懸濁液とはポリスチレン系樹脂粒子および単量体液滴を、水または水溶液に分散させた状態を指し、水中には水溶性の界面活性剤や単量体が溶解していても良く、また、水に不溶の分散剤、開始剤、連鎖移動剤、架橋剤、気泡調整剤、難燃剤、可塑剤等が共に分散していても良い。
【0042】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子と水との重量比は、得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子/水の比として、1.0/0.6~1.0/3.0が好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態において、懸濁重合及びシード重合は一段階目の重合を行うことにより主要な反応を行った後、一段階目よりも高温での二段階目の重合反応で残存モノマーを低減させることが好ましい。
【0044】
一段階目の重合に用いられる重合開始剤としては、一般に熱可塑性重合体の製造に用いられるラジカル発生型重合開始剤を用いることができ、代表的なものとしては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル-t-ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、などの有機過酸化物や、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても良い。
【0045】
懸濁重合及びシード重合に使用できる分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、カオリンなどの難水溶性無機塩、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子などが挙げられる。難水溶性無機塩を使用する場合には、α―オレフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダなどのアニオン系界面活性剤を併用することが効果的である。これらの分散剤は必要に応じて重合の途中で添加しても良い。
【0046】
分散剤の使用量は、種類によるが難水溶性無機塩としては水100重量部に対して0.1重量部以上3.0重量部以下、アニオン系界面活性剤や水溶性高分子としては30ppm以上500ppm以下が好ましい。
【0047】
発泡剤としては、例えば、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、ネオペンタン等の炭素数3以上5以下の炭化水素である脂肪族炭化水素類、例えば、ジフルオロエタン、テトラフルオロエタン等のオゾン破壊係数がゼロであるハイドロフルオロカーボン類等の揮発性発泡剤があげられる。これらの発泡剤は併用しても何ら差し支えない。また、発泡剤の使用量としては、ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対して、好ましくは4重量部以上10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以上9重量部以下である。発泡剤の量が少ないと発泡倍率を得ることが難しく、発泡剤の量が多いと発泡剤をポリスチレン系樹脂粒子に含浸する工程で樹脂の凝集が生じやすくなる。
【0048】
本発明の一実施形態において、ポリシロキサン含有マクロモノマーの添加時期は、ポリスチレン系樹脂粒子の重合転化率が60%以上99%以下の時点であり、より好ましくは75%以上95%以下の時点である。重合転化率が60%未満の時点でポリシロキサン含有マクロモノマーを添加すると、粒子同士が凝集し異常重合となる傾向がある。重合転化率が99%を超えた時点でポリシロキサン含有マクロモノマーを添加すると、ポリスチレン系樹脂粒子とポリシロキサン含有マクロモノマーとの重合反応が進まず、凝集する傾向がある。
【0049】
本発明の一実施形態において、ポリシロキサン含有マクロモノマーの添加速度は、共重合体100重量%に対して0.2重量%/hr以上10.0重量%/hr以下であり、より好ましくは0.4重量%/hr以上8.0重量%/hr以下である。添加速度が0.2重量%/hr未満であると、生産性が悪化し大量生産に不向きである。添加速度が10.0重量%/hrを超えると重合中の樹脂粒子同士が凝集し、異常重合となる傾向がある。
【0050】
本発明の一実施形態では、スチレン系単量体の重合転化率60%以上99%以下の時点で、ポリシロキサン含有マクロモノマーを添加すると同時にラジカルの発生する開始剤を添加することが好ましい。ラジカルが発生する開始剤としては、過酸化物系及び/またはアゾ化合物系開始剤が好ましく、過酸化物系開始剤がより好ましい。過酸化物系開始剤の代表的なものとしては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、イソプロピル-t-ブチルパーオキシカーボネート、過安息香酸ブチル、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーピバレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、などの有機過酸化物が挙げられる。また、アゾ化合物系開始剤の代表的なものとしては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用しても良い。
【0051】
また、スチレン系単量体の重合転化率60%以上99%以下の時点で、ラジカルの発生する開始剤と同時に、共重合体100重量%に対してポリシロキサン含有マクロモノマー0.5重量%以上11.0重量%以下を、0.2重量%/hr以上10.0重量%/hr以下の速度で添加することが好ましい。
【0052】
本発明の一実施形態において使用する添加剤としては、目的に応じて溶剤、可塑剤、気泡調整剤、難燃剤等が使用できる。
【0053】
溶剤としては沸点50℃以上のものがあげられ、トルエン、へキサン、ヘプタン等のC6以上の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロオクタン等のC6以上の脂環族炭化水素、などが挙げられる。
【0054】
可塑剤としては、沸点200℃以上の高沸点可塑剤が挙げられ、例えば、ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の植物油;ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等の脂肪族エステル;流動パラフィン、シクロヘキサン等の有機炭化水素;等があげられる。
【0055】
気泡調整剤としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0056】
本発明の一実施形態において用いられる難燃剤および難燃助剤としては、公知慣用のものが使用できる。
【0057】
難燃剤の具体例としては、例えば、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモブタン、ヘキサブロモシクロヘキサン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系化合物;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、2,4,6-トリブロモフェノール等の臭素化フェノール類;テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、2,2-ビス[4'(2'',3''-ジブロモアルコキシ)-3',5'-ジブロモフェニル]-プロパン等の臭素化フェノール誘導体;臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン・ブタジエン共重合体、臭素化スチレン・ブタジエングラフと共重合体などの臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、Chemtura社製EMERALD3000、及び、特表2009-516019号公報に開示されている化合物)などが挙げられる。これら難燃剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0058】
難燃助剤の具体例としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、2,3-ジメチルー2,3-ジフェニルブタン等の開始剤を使用してもよい。
【0059】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、一般的な予備発泡方法によって、予備発泡粒子とすることができる。具体的には攪拌機を具備した容器内に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を入れ水蒸気等の熱源により加熱することで、所望の発泡倍率までに予備発泡を行う。
【0060】
更に発泡性ポリスチレン系予備発泡粒子は、一般的な型内成形方法によって成形し、発泡成形体にすることができる。具体的には、閉鎖し得るが密閉しえない金型内に充填し、水蒸気により加熱融着することで発泡成形体とする。
【0061】
本発明の一実施形態の発泡成形体は発泡倍率45倍に予備発泡し、成形した場合の擦れ音および発泡成形体の静止摩擦係数を評価した。本発明の一実施形態の発泡成形体の静止摩擦係数を測定した際の、当該発泡成形体の製造条件は以下であった。
<条件>
篩により所定の粒子径に分級される前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、吹き込み蒸気圧0.09~0.12MPaの条件でかさ倍率45倍へ予備発泡し、得られたスチレン系予備発泡粒子を、吹き込み蒸気圧0.07MPaで型内成形を行うことで、厚み25mmで長さ400mm×幅350mmの平板状の発泡成形体を得た。
【0062】
本発明の一実施形態には、スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーとからなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、融点40℃以上の外添剤を含み、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡し成形することで得られる発泡成形体の静止摩擦係数が4.0以下であり、当該発泡成形体の静止摩擦係数は、以下の条件で製造される前記発泡成形体に関して測定されるものである発泡性ポリスチレン系樹脂粒子も包含される。
<条件>
篩により所定の粒子径に分級される前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、吹き込み蒸気圧0.09~0.12MPaの条件でかさ倍率45倍へ予備発泡し、得られたスチレン系予備発泡粒子を、吹き込み蒸気圧0.07MPaで型内成形を行うことで、厚み25mmで長さ400mm×幅350mmの平板状の発泡成形体を得る。
【0063】
また、本発明の一実施形態には、スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーとからなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡し成形することで得られる発泡成形体であって、当該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は融点40℃以上の外添剤を含み、発泡成形体の静止摩擦係数が4.0以下である発泡成形体も包含される。
【0064】
本発明の一実施形態の発泡成形体は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の予備発泡方法および型内成形方法の種類によらず、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子表面に存在するポリシロキサン含有マクロモノマーの種類や含有量に依存して、擦れ音や静止摩擦係数が決まる。静止摩擦係数は物質それぞれが有している固有の数値であり、発泡成形体の静止摩擦係数を測定する場合、発泡成形体表面の物質に依存している。発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、予備発泡工程および発泡成形工程を経て発泡成形体となるが、共重合体は当該工程を経ても内外の組成が変化しない。そのため、静止摩擦係数は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子表面に存在するポリシロキサン含有マクロモノマーの種類や含有量に依存している。
【0065】
なお、本発明は、以下のような構成とすることも可能である。
【0066】
〔1〕スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーとからなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、融点40℃以上の外添剤を含み、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡し成形することで得られる発泡成形体の静止摩擦係数が4.0以下であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【0067】
〔2〕前記外添剤が、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸モノグリセライド、植物油のいずれか1種又は複数の混合物であることを特徴とする〔1〕に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【0068】
〔3〕前記ポリシロキサン含有マクロモノマーが両末端及び/または側鎖に官能基を有することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【0069】
〔4〕前記ポリシロキサン含有マクロモノマーの官能基が、ビニル基であることを特徴とする〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【0070】
〔5〕前記スチレン系単量体が89.0重量部以上99.2重量部以下であり、前記ポリシロキサン含有マクロモノマーが0.8重量部以上11.0重量部以下である(スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーとの合計量が100重量部である)ことを特徴とする〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【0071】
〔6〕表層部の主成分がポリシロキサンであることを特徴とする〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子。
【0072】
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させてなることを特徴とするポリスチレン系予備発泡粒子。
【0073】
〔8〕〔7〕に記載のポリスチレン系予備発泡粒子を成形してなることを特徴とする発泡成形体。
【0074】
さらに、本発明は、以下のような構成とすることも可能である。
【0075】
本発明の第1は、スチレン系単量体とポリシロキサン含有マクロモノマーからなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子であって、融点40℃以上の外添剤が表面に塗布され、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡し成形することで得られる発泡成形体の静止摩擦係数が4.0以下であることを特徴とする発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【0076】
本発明の第2は、塗布される融点40℃以上の外添剤が、脂肪酸トリグリセライド、脂肪酸ジグリセライド、脂肪酸モノグリセライドのいずれか1種又は複数の混合物であることを特徴とする第1の発明に記載の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に関する。
【実施例
【0077】
以下に実施例、及び比較例を挙げるが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0078】
<GPC測定>
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に対して、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子0.02gをテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す場合がある)20mLに溶解させた後、ゲル成分をろ過した。次いで、THFに可溶な成分のみをゲルパーミェーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、以下の条件にてGPC測定を行い、GPC測定チャートおよび、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を得た。尚、得られた値はポリスチレン換算の相対値である。
測定装置:東ソー社製、高速GPC装置 HLC-8220
使用カラム:東ソー社製、SuperHZM-H×2本、SuperH-RC×2本
カラム温度:40℃、移動相:THF(テトラヒドロフラン)
流量:0.35mL/分、注入量:10μL
検出器:RI。
【0079】
<発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のポリシロキサン層の厚み測定>
未反応のポリシロキサン含有マクロモノマーを除去するために、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を2g秤量し、エタノール不溶分・可溶分に分別した。エタノール不溶分を更にヘキサン不溶分・可溶分に分別し、不溶分をTEM観察に用いた。TEM観察には、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子表面を含む断面について、凍結条件下ウルトラミクロトームにより超薄切片を作成し、断面のポリシロキサンが主成分の層の厚みを10個測定し平均値を算出した。
凍結超薄切片作成(クライオウルトラミクロトーム)
装置:ライカ製 FC6
透過型電子顕微鏡(TEM)
装置:日立ハイテクノロジーズ製 H-7650
観察条件:加速電圧 100kV。
【0080】
<予備発泡粒子の製造>
篩により所定の粒子径に分級した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を、加圧式予備発泡機「大開工業製、BHP」を用いて、吹き込み蒸気圧0.09~0.12MPaの条件でかさ倍率45倍へ予備発泡した。その後、常温下で1日放置して嵩倍率45倍のスチレン系予備発泡粒子を得た。
【0081】
<発泡成形体の製造>
得られたスチレン系予備発泡粒子を、成形機「ダイセン製、KR-57」を用いて吹き込み蒸気圧0.07MPaで型内成形を行うことで、厚み25mmで長さ400mm×幅350mmの平板状の発泡成形体を得た。
【0082】
<発泡成形体の表面性>
発泡成形体の表面の状態を目視観察にて評価した。数値が大きいほうが粒子同士の隙間が少ない美麗な表面状態であり、5点満点で表現した3以上を合格とした。
【0083】
5:隙間が見当たらない
4:部分的に隙間があるが、ほとんどわからない
3:ところどころ隙間があるが、全体としては許容できる
2:隙間が目立つ
1:隙間が多い。
【0084】
<融着性評価>
得られた発泡成形体を破断し、破断面を観察した。粒子界面ではなく、粒子が破断している割合を求めて、以下の基準にて、融着性を判定した。
合格:粒子破断の割合が70%以上。
不合格:粒子破断の割合が70%未満。
【0085】
<静止摩擦係数測定>
得られた発泡成形体を、バーチカルスライサー(桜エンジニアリング製)を用いて長さ60mm幅60mm厚み4mmの片面スキンの試験片を切り出した。
【0086】
試験片を温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室に12時間静置した。その後、同環境下で試験片を表面性試験機HEIDON Type:14FW(新東科学株式会社製)を使用し、荷重200g、往復距離50mm、摺動速度3000mm/分の条件で鉄板と10往復擦り合わせ、擦れあわせごとの静止摩擦係数の平均値を求めた。
【0087】
<擦れ音測定>
得られた発泡成形体を、バーチカルスライサー(桜エンジニアリング製)を用いて長さ300mm幅60mm厚み25mmの両面にスキン層を有する直方体の試験片を切り出した。また、底辺120mm高さ60mm厚み25mmの両面にスキン層を有する三角柱の試験片を切り出し、両者を温度23℃、湿度50%の恒温恒湿室に12時間静置した。その後、同環境下で直方体の試験片の上に三角柱の試験片を角部が当たるように載せ、三角柱の試験片の上に2000gの荷重を載せた。その状態で試験片を幅50mmの区間を6000mm/分の速度で10往復させた。
【0088】
その際に発生した擦れ音を集音マイクで広い、音域と音圧とを測定した。人間が不快と感じる5000以上2万Hz以下の音域で周囲音との差が最も大きい音圧を求めた。
【0089】
<燃焼速度>
得られた発泡成形体から、熱線スライサーを用いて、長さ356mm×幅101.6mm×厚み12mmのサンプルを切断して、燃焼試験用試験片を得た。燃焼速度は、得られた試験片を用いて、米国自動車安全基準FMVSS302に準拠した方法で評価した。
【0090】
炎の延焼速度は次の式で求めた。
【0091】
燃焼速度(mm/min.)=60*(D/T)
D:炎が進んだ距離(mm)、最後まで延焼した場合は25.4cm
T:延焼に要した時間(秒)
評価は以下の基準とした。
○:標線前に自消。
×:燃焼速度80mm/min.超。
【0092】
<使用ポリシロキサン含有マクロモノマー種>
MPS:側鎖型メタクリロイル含有ポリシロキサン(分子量:20万、粘度:不明、官能基数:7.5個、官能基当量:9300g/mol)
X-22-164B:両末端型メタクリロイル含有ポリシロキサン(分子量:0.35万、粘度:55mm/s、官能基数:2.1個、官能基当量:1630g/mol)(信越シリコーン社製)
KF-2012:片末端型メタクリロイル含有ポリシロキサン(分子量:0.40万、粘度:60mm/s、官能基数:0.8個、官能基当量:4600g/mol)(信越シリコーン社製)
<使用外添剤種>
ヒマシ硬化油:カスターワックス、融点:84度(日油社製)
VT-50:ステアリン酸トリグリセライド、リケマールVT-50、融点:67度(理研ビタミン社製)
S-100:ステアリン酸モノグリライド、リケマールS-100、融点:67度(理研ビタミン社製)
リモネン:(R)-(+)-リモネン、融点:-74度(和光純薬工業社製)
ヤシ油:融点:25度
DBS:セバシン酸ジブチル、融点:-11度(和光純薬工業社製)
(実施例1)
<ポリスチレン系樹脂種粒子の製造>
攪拌機を具備した反応器に、純水100重量部、第3リン酸カルシウム0.4重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01重量部、塩化ナトリウム0.5重量部及び造核剤としてポリエチレンワックス0.07重量部を入れて攪拌して水懸濁液とした。その後、スチレン単量体100重量部に重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド0.2重量部及び1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.2重量部を溶解し、反応器に加え、98℃に昇温してから4.5時間かけて重合した。その後、得られた重合物を冷却して、その内容物を取り出し脱水・乾燥した。続いて、篩い分けして粒子径0.4~0.5mmのポリスチレン系樹脂種粒子を得た。
【0093】
<発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造>
撹拌機付属の6Lのオートクレーブに、純水重量167重量部、第3リン酸カルシウム1.2重量部、α―オレフィンスルフォン酸ソーダ0.022重量部、塩化ナトリウム0.2重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(10時間半減期温度99℃)0.04重量部、粒子径が0.4~0.5mmのポリスチレン系樹脂種粒子20重量部を仕込んだ後、攪拌を開始した。続いて、90℃まで昇温させた後、ベンゾイルパーオキサイド30%溶液0.22重量部を5時間、スチレン単量体78.5重量部を5時間30分かけて反応器中に仕込みながら重合した。この際、スチレン単量体の添加終了時期(90℃昇温後5時間目)にメタクリロイル含有ポリシロキサン(メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン含有量:2.5重量%、分子量:20万)1.5重量部とジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート0.075重量部とを1時間30分かけて仕込み、30分間90℃を保持した。その後、120℃まで昇温し1時間保持した後、98℃まで冷却してシクロヘキサン1.0重量部、ノルマルリッチブタン(ノルマルブタン70%、イソブタン30%)6.5重量部を仕込み、更に110℃に昇温して1.5時間保持した後、40℃まで冷却した。懸濁液を取り出し脱水・乾燥・分級して、粒子径が0.6~1.15mmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0094】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.0mmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た後、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100重量部に対してヒマシ硬化油を0.15重量部加え、ポリ袋の中で撹拌混合した。更に加圧式予備発泡機「BHP-300(大開工業製)」で予備発泡し嵩倍率45倍の予備発泡粒子を得た。得られた予備発泡粒子を室温で1日養生させた後、成形機「KR-57(ダイセン製)」を用いて300×450×25(t)mmサイズの金型にて発泡成形品を得、成形体の表面性、静止摩擦係数、擦れ音を評価した。評価結果は表1に示した。
【0095】
(実施例2~12、比較例1~6)
表1に記載のとおり、ポリシロキサン含有マクロモノマーの種類、量、添加時期、添加時間及び添加開始剤の種類、量等を変更した以外は、実施例1と同様の方法で発泡性ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を得て、同様の評価を実施した。
【0096】
(実施例13)
撹拌機付属の6Lのオートクレーブに、純水重量167重量部、第3リン酸カルシウム1.2重量部、α―オレフィンスルフォン酸ソーダ0.022重量部、塩化ナトリウム0.2重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(10時間半減期温度99℃)0.04重量部、粒子径が0.4~0.5mmのポリスチレン系樹脂種粒子20重量部を仕込んだ後、攪拌を開始した。次いで、難燃剤としてピロガードSR-130(第一工業製薬製)3.0重量部とジクミルパーオキサイド0.6重量部をスチレン10重量部に溶解した後、上記懸濁液の中に添加した。その後、60℃で1時間保持した後、ベンゾイルパーオキサイド30%溶液0.03重量部を添加し、90℃まで昇温し1時間30分保持した。続いて、ベンゾイルパーオキサイド30%溶液0.2重量部を4時間30分、スチレン単量体68重量部を4時間50分かけて反応器中に仕込みながら重合した。この際、スチレン単量体の添加終了時期(90℃昇温後4時間20分目)にメタクリロイル含有ポリシロキサン(メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン含有量:2.5重量%、分子量:20万)2.0重量部とジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート0.1重量部とを2時間かけて仕込み、30分間90℃を保持した。その後の操作は実施例1と同様の操作を行い、評価結果を表1に示した。
【0097】
(実施例14)
撹拌機付き6Lオートクレーブに純水96重量部、第3リン酸カルシウム0.17重量部、α-オレフィンスルフォン酸ソーダ0.048重量部、難燃剤として臭素化ブタジエン・スチレン共重合体(ケムチュラ社製「EMERALD 3000」臭素含有量64%)3.0重量部、難燃助剤としてジクミルパーオキサイド0.2重量部、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.1重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート0.37重量部、及び、可塑剤としてやし油1.4重量部を仕込んだ。その後、スチレン98重量部を仕込み、98℃まで昇温して重合を実施した。重合2時間目に第3リン酸カルシウム0.10重量部添加し、5時間重合を行った。続いてメタクリロイル含有ポリシロキサン(メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン含有量:2.5重量%、分子量:20万)2.0重量部とジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート0.1重量部とを2時間かけて添加し、更に30分重合した。更に、シクロヘキサン1.0重量部と発泡剤としてノルマルリッチブタン(ノルマルブタン70%、イソブタン30%)6.5重量部とを仕込んで120℃まで昇温し4時間発泡剤の含浸及び重合を行った。その後、40℃まで冷却後、洗浄・脱水・乾燥することにより発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。
【0098】
得られた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を篩い分けして粒子径0.5~1.0mmの発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を得た。その後の操作は実施例1と同様の操作を行い、評価結果を表1に示した。
【0099】
(実施例15)
スチレン系単量体78.0重量部の代わりに、スチレン単量体73.0重量部とアクリル酸ブチル5.0重量部とを事前に混合し、合計78.0重量部の単量体を5時間30分掛けて添加し、メタクリロイル含有ポリシロキサン2.0重量部とジ-t-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート0.1重量部とを2時間かけて仕込んだ以外は実施例2と同様に行った。評価結果を表1に示した。
【表1】