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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20221219BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20221219BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221219BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/49
A61K8/40
A61K8/37
A61K8/25
A61K8/19
A61Q19/00
A61Q17/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019537679
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2018031168
(87)【国際公開番号】W WO2019039548
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2017162724
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】香取 崇広
(72)【発明者】
【氏名】八巻 悟史
(72)【発明者】
【氏名】長井 宏一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 百合香
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-151436(JP,A)
【文献】特開2005-015437(JP,A)
【文献】特開2005-298475(JP,A)
【文献】特開2010-168302(JP,A)
【文献】特表2008-508323(JP,A)
【文献】特開2002-020217(JP,A)
【文献】特開平08-188723(JP,A)
【文献】特開2004-002274(JP,A)
【文献】特開2012-001440(JP,A)
【文献】特開2011-236201(JP,A)
【文献】特開2010-059076(JP,A)
【文献】特開2005-350367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/90
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)板状粉末、
(B)6~40質量%の紫外線吸収剤、および、
(C)0.1~3質量%の第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤
を含有する、化粧料。
【請求項2】
(D)紫外線散乱剤をさらに含有する、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
(E)有機変性粘土鉱物をさらに含有する、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】
(F)カチオン界面活性剤以外の界面活性剤をさらに含有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
(G)油相増粘剤をさらに含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
(A)板状粉末が疎水化処理タルクである、請求項1から5のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、衣類、指等と接触してもはがれにくく、紫外線防御作用等の化粧効果の低下が抑制され、なおかつ、使用感にも優れた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に塗布した化粧料は、皮膚から分泌される汗、外的環境からの水分による流れ落ち、衣類や指との接触によるはがれが生じ、化粧効果が低下する。よって、塗布した化粧料の化粧効果を長時間持続させるために様々な試みがなされてきた。
【0003】
近年、汗や水分と接触した場合であっても紫外線防御作用が低下せず、逆に効果が向上するという特異な効果(以下、「紫外線防御能力向上効果」と称する場合がある)を有する日焼け止め化粧料を開発している(特許文献1)。
【0004】
一方、一般に耐水性に優れるとされている油性または油中水型乳化化粧料であっても、衣類や指との接触による化粧はがれは生じる。そこで、化粧料に被膜剤を配合することにより化粧塗膜を強化し、こすれに対する耐性を強くする提案がなされている(特許文献2)。
【0005】
しかし、シリコーン樹脂や被膜剤等を高配合すると、塗布した化粧料の被膜感が強くなり、使用性が損なわれるほか、通常の洗浄料や石鹸で簡単に落とすことができず、専用クレンジング剤を用いなければならないといった問題が生じる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/068298号公報
【文献】特開平8-217619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水、衣類、指等との接触に対して強い耐性を示し、接触後であっても紫外線防御作用等の化粧効果が低下しにくく、使用感にも優れる化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、化粧料において板状粉末と特定のカチオン界面活性剤とを配合すると塗布層がこすれに対して耐性が強くなり、化粧塗膜がはがれにくくなるため、紫外線防御作用等の化粧効果がこすれた後であっても低下しにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(A)板状粉末、
(B)6~40質量%の紫外線吸収剤、および、
(C)カチオン界面活性剤
を含有する、化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記構成とすることにより、水、衣類、指等との接触(こすれ)に対して強い耐性を示し、接触後の紫外線防御作用等の化粧効果の低下を抑制することができる。さらに、従来の耐こすれ性化粧料よりも被膜剤の配合量を低減することができるので、塗布後のてかりやべたつきが少なく、使用感に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の通り、本発明の化粧料は、(A)板状粉末、(B)紫外線吸収剤、および(C)カチオン界面活性剤を含むことを特徴としている。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0012】
<(A)板状粉末>
本発明に係る化粧料に配合される(A)板状粉末(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)としては、板状であれば化粧料に通常配合される粉体を使用することができ、無機粉体や有機粉体が挙げられる。
【0013】
無機粉体には、天然、合成のいずれのものも任意に用いることができ、限定するものではないが、ケイ酸、無水ケイ酸(シリカゲル)、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、雲母、ベントナイト、チタン被覆雲母、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラックおよびこれらの複合体等が含まれる。これら粉体は、紫外線散乱効果を有していてもよい。
【0014】
有機粉体には、限定するものではないが、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、上記化合物の単量体の2種以上からなる共重合体、セルロイド、アセチルセルロース、セルロース、多糖類等が含まれる。
【0015】
本発明の板状粉末は、レーザー回折法による平均粒径が1~100μmで、長辺長さ(a)と厚み(b)の比(アスペクト比、a/b)が2~200のものである。
【0016】
本発明に用いられる板状粉末は、疎水化表面処理が施されていてもよい。疎水化表面処理としては、特に制限されるものではないが、例えば、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル;メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン;トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン等による処理)、脂肪酸処理(パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等による処理)、脂肪酸石鹸処理(ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12-ヒドロキシステアリン酸等による処理)、脂肪酸エステル処理(デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等による処理)等が挙げられる。これらの中でも、ジメチルポリシロキサンまたはステアリン酸カルシウムによる処理が特に好ましい。これらの疎水化処理は、常法に従って行うことができる。
【0017】
本発明で使用される板状粉末は、原料鉱物を通常の方法で好ましくは湿式解砕して製造したものでもよく、あるいは市販品をそのまま使用してもよい。
【0018】
本発明に用いられる板状粉末としては、こすれに対する耐性(耐こすれ)および乳化安定性の面から、タルク、雲母が好ましい。これら粉末を配合することにより、こすれに対して耐性を高くすることができる。
好ましい市販品の例として、タルクリヤーLHシリーズ(日本タルク社製)、シルキータルクシリーズ(山口雲母社製)、およびフィットパウダーシリーズ(山口雲母社製)、タルクJET化粧品用シリーズ(浅田製粉社製)などを挙げることができる。
【0019】
(A)成分の配合量は、化粧料全量に対して、1~30質量%、好ましくは2~20質量%、より好ましくは3~15質量%、さらに好ましくは4~10質量%である。(A)成分の配合量が1質量%未満ではこすれに対する耐性が十分に得られず、30質量%を超えて配合すると安定性が悪くなるなどの点から好ましくない。
【0020】
<(B)紫外線吸収剤>
本発明に係る化粧料に配合される(B)紫外線吸収剤(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、日焼け止め化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
【0021】
紫外線吸収剤には、特に限定されないが、一般に化粧料に用いられる紫外線吸収剤を広く挙げることができる。具体例としては、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイヒ酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリレート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等が挙げられる。
【0022】
安息香酸誘導体としては、パラ-アミノ安息香酸(PABA)エチル、エチル-ジヒドロキシプロピルPABA、エチルヘキシル-ジメチルPABA、グリセリルPABA、PEG-25-PABA、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルなどが例示される。
【0023】
サリチル酸誘導体としては、ホモサレート、エチルヘキシルサリチレート、ジプロピレングリコールサリチレート、TEAサリチラートなどが例示される。
【0024】
ケイヒ酸誘導体としては、オクチルメトキシシンナメートまたはメトキシケイヒ酸エチルヘキシル、メトキシケイヒ酸イソプロピル、メトキシケイヒ酸イソアミル、シンノキセート、DEAメトキシシンナメート、メチルケイヒ酸ジイソプロピル、グリセリル-エチルヘキサノエート-ジメトキシシンナメート、ジ-(2-エチルヘキシル)-4’-メトキシベンザルマロネートなどが例示される。
【0025】
ジベンゾイルメタン誘導体としては、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタンなどが例示される。
【0026】
β,β-ジフェニルアクリレート誘導体としては、オクトクリレンなどが例示される。
【0027】
ベンゾフェノン誘導体としては、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-2、ベンゾフェノン-3またはオキシベンゾン、ベンゾフェノン-4、ベンゾフェノン-5、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-8、ベンゾフェノン-9、ベンゾフェノン-12などが例示される。
【0028】
ベンジリデンショウノウ誘導体としては、3-ベンジリデンショウノウ、4-メチルベンジリデンショウノウ、ベンジリデンショウノウスルホン酸、メト硫酸ショウノウベンザルコニウム、テレフタリリデンジショウノウスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンショウノウなどが例示される。
【0029】
フェニルベンゾイミダゾール誘導体としては、フェニルベンゾイミダゾールスルホン酸、フェニルジベンゾイミダゾールテトラスルホン酸二ナトリウムなどが例示される。
【0030】
トリアジン誘導体としては、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、エチルヘキシルトリアゾン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、2,4,6-トリス(ジイソブチル-4’-アミノベンザルマロナート)-s-トリアジン、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジンなどが例示される。
【0031】
フェニルベンゾトリアゾール誘導体としては、ドロメトリゾールトリシロキサン、メチレンビス(ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)などが例示される。
【0032】
アントラニル誘導体としては、アントラニル酸メンチルなどが例示される。
【0033】
イミダゾリン誘導体としては、エチルヘキシルジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリンプロピオナートなどが例示される。
【0034】
ベンザルマロナート誘導体としては、ベンザルマロナート官能基を有するポリオルガノシロキサンなどが例示される。
【0035】
4,4-ジアリールブタジエン誘導体としては、1,1-ジカルボキシ(2,2’-ジメチルプロピル)-4,4-ジフェニルブタジエンなどが例示される。
【0036】
(B)成分の配合量は、化粧料全量に対して、6~40質量%、より好ましくは7~35質量%、さらに好ましくは8~30質量%である。(B)成分の配合量が6質量%未満では十分な紫外線防御効果が得られにくく、40質量%を超えて配合しても配合量に見合った紫外線防御効果の増加を期待できず、安定性が悪くなるなどの点から好ましくない。(B)成分は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0037】
<(C)カチオン界面活性剤>
本発明に係る化粧料に配合される(C)カチオン界面活性剤(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある)は、有機アミンやその塩である界面活性剤、四級アンモニウムやその塩である界面活性剤等が好ましい。具体例としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム(セトリモニウムクロリド)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム(ベヘントリモニウムクロリド)、ジステアリルジモニウムクロリド(塩化ジステアリルジメチルアンモニウム)、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、およびクオタニウム-91等から選択される1種以上が好ましい。これらカチオン界面活性剤の中でも、第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が好ましく、さらにジステアリルジモニウムクロリドが特に好ましい。
【0038】
(C)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.1~3質量%、好ましくは0.15~2質量%、より好ましくは0.2~1質量%である。(C)成分の配合量が0.1質量%より少ない場合には水浴およびこすれに対する耐性の効果が得られず、3質量%を超えて配合するとべたつきが生じるなど使用性の点で好ましくない。
【0039】
本発明に係る化粧料には、(D)紫外線散乱剤(以下、単に「(D)成分」と称する場合がある)をさらに配合すると、紫外線防御効果の向上およびこすれに対する耐性の点で好ましい。本発明に用いられる紫外線散乱剤は、特に限定されるものではないが、具体例としては、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化タングステン等を挙げることができる。紫外線防御力と透明性の両立の点から酸化チタン、酸化亜鉛が好ましく、さらには、こすれに対する耐性の点から酸化亜鉛が最も好ましい。また、紫外線散乱剤は、塊状、鱗片状、球状、多孔性球状、花びら状等、どのような形状のものでも用いることができるが、板状のものは(D)成分には含まれない。また、粒径についても特に制限されない。
【0040】
紫外線散乱剤は、表面処理していないものでも各種疎水化表面処理したものでもよいが、疎水化表面処理をしたものが好ましく、疎水化表面処理剤としては、化粧料分野で汎用されているもの、例えば、ジメチコン、アルキル変性シリコーン等のシリコーン、オクチルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、パルミチン酸デキストリンなどのデキストリン脂肪酸エステル、ステアリン酸などの脂肪酸を用いることができる。
【0041】
(D)成分の配合量は、化粧料全量に対して、1~30質量%、好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%である。(D)成分の配合量が1質量%未満では紫外線防御効果およびこすれに対する耐性の効果が得られず、30質量%を超えて配合すると安定性が悪くなるなどの点から好ましくない。
【0042】
本発明に係る化粧料においては、上記(A)、(B)および(C)成分に加えて、紫外線防御能力向上効果が得られる点で、(E)有機変性粘土鉱物、(F)上記(C)成分以外の界面活性剤および(G)油相増粘剤を配合するのが好ましい。
【0043】
本発明に係る化粧料に配合される(E)有機変性粘土鉱物(以下、単に「(E)成分」と称する場合がある)は、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、下記一般式(1)で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものを使用することができる。
(X,Y)2―3(Si,Al)10(OH)1/3・nHO (1)
(但し、X=Al,Fe(III),Mn(III),Cr(III)、Y=Mg,Fe(II),Ni,Zn,Li、Z=K,Na,Ca)
【0044】
具体的にはモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト等の天然または合成(この場合、式中の(OH)基がフッ素で置換されたもの)のモンモリロナイト群(市販品ではビーガム、クニピア、ラポナイト等がある。)およびナトリウムシリシックマイカやナトリウムまたはリチウムテニオライトの名で知られる合成雲母(市販品ではダイモナイト:トピー工業社製等がある。)等の粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られる。
【0045】
ここで用いられる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、下記一般式(2)で表されるものである。
【化1】
(式中、Rは炭素数10~22のアルキル基またはベンジル基、Rはメチル基または炭素数10~22のアルキル基、RおよびRは炭素数1~3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、Xはハロゲン原子またはメチルサルフェート残基を表す。)
【0046】
かかる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤としては、例えばドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、アラキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、アラキルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、アラキルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および相当するブロミド等、更にはジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。本発明の実施にあたっては、これらのうち一種または二種以上が任意に選択される。
【0047】
(E)成分の代表的なものとしては、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト(ジステアルジモニウムヘクトライト)、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。なかでも、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライトが特に好ましい。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン社製)が好ましい。
【0048】
(E)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.1~3質量%、好ましくは0.2~2.5質量%である。(E)成分の配合量が0.1質量%未満では紫外線防御能力の向上効果が得られず、3質量%を超えて配合すると高粘度となり、肌上での伸びが重くなるなどの使用性の点で好ましくない。
【0049】
本発明の化粧料にさらに配合される(F)界面活性剤(以下、単に「(F)成分」と称する場合がある)は、カチオン界面活性剤以外の界面活性剤を指し、乳化形態を実現するため、HLBが8未満の界面活性剤であり、特にシリコーン系界面活性剤が好ましい。
HLBが8未満のシリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、および/またはポリグリセリン・アルキル共変性シリコーンを挙げることができる。具体例には、KF-6017(PEG-10ジメチコン、信越化学工業株式会社製)、KF-6028(PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業株式会社製)、ABIL EM90(セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、Evonik Goldschmidt社製)、KF-6038(ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、信越化学工業株式会社製)、ビスブチルジメチコンポリグリセリル-3等が含まれる。
【0050】
(F)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.1~8質量%、さらに好ましくは0.2~7質量%、より好ましくは0.4~5質量%、さらに好ましくは0.6~3質量%である。
【0051】
本発明の化粧料に配合される(G)油相増粘剤(以下、単に「(G)成分」と称する場合がある)は、本発明の(E)成分以外に油相の粘度を調整することができるものであり、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸もしくはその塩、植物性硬化油、固形もしくは半固形の植物油等が挙げられる。
【0052】
デキストリン脂肪酸エステルは、デキストリンまたは還元デキストリンと高級脂肪酸とのエステルであり、化粧料に一般的に使用されているものであれば特に制限されず使用することができる。デキストリンまたは還元デキストリンは平均糖重合度が3~100のものを用いるのが好ましい。また、デキストリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸としては、炭素数8~22の飽和脂肪酸を用いるのが好ましい。具体例としては、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、(パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸)デキストリン等を挙げることができる。
【0053】
ショ糖脂肪酸エステルは、その脂肪酸が直鎖状あるいは分岐鎖状の、飽和あるいは不飽和の、炭素数12から22のものを好ましく用いることができる。具体例としては、ショ糖カプリル酸エステル、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、酢酸ステアリン酸スクロース等を挙げることができる。
【0054】
脂肪酸は、常温で固形のものを使用することができ、例として、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等を挙げることができる。また、脂肪酸の塩としては、これらのカルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等を挙げることができる。
【0055】
植物性硬化油は、パーム核硬化油、硬化ひまし油、水添ピーナッツ油、水添ナタネ種子油、水添パーム油、水添ツバキ油、水添大豆油、水添オリーブ油、水添マカダミアナッツ油、水添ヒマワリ油、水添小麦胚芽油、水添米胚芽油、水添米ヌカ油、水添綿実油、水添アボカド油等を挙げることができる。
【0056】
また、植物性硬化油と同様に、室温で固形または半固形の植物油も使用することができる。ここで、固形油とは25℃において固体の油を意味し、半固形油とは25℃において半量が固体である油を意味する。より具体的には、融点が44℃~90℃の範囲であり、25℃でB型粘度計により測定した粘度が5000mPa・s以上のもの、さらには10000mPa・s以上であるものが好ましい。室温で固形または半固形の植物油としては、カカオ脂、ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、シアバター等を例示することができる。
【0057】
(G)成分の配合量は、化粧料全量に対して、0.1~15質量%、さらに好ましくは0.2~10質量%、より好ましくは0.4~8質量%、さらに好ましくは0.5~4質量%である。本発明の化粧料に用いられる(G)成分としては、デキストリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0058】
本発明の化粧料には、上記必須成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、化粧料に通常用いられる成分、例えば、油分、水、アルコール類、油性活性剤、水性活性剤、増粘剤、保湿剤、美白剤、酸化防止剤等を必要に応じて適宜配合してよい。
【0059】
本願発明の化粧料は、使用性の観点から、被膜剤の配合量を3質量%以下、さらには1質量%以下とするのが好ましい。
【0060】
本発明の化粧料は、油中水型乳化化粧料、油性化粧料、水中油型乳化化粧料、例えば油分の中に粉末成分が配合された水中油型乳化化粧料などの形態として、常法により製造することができる。なかでも、油中水型乳化化粧料であるのが好ましい。
【0061】
本発明の化粧料は、例えば日焼け止めクリーム、日焼け止め乳液、日焼け止めローションとして提供できるのみならず、日焼け止め効果を付与したファンデーション、化粧下地、メーキャップ化粧料、毛髪化粧料等としても使用でき、常法により製造することができる。
【実施例
【0062】
以下に具体例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。
【0063】
(実施例1、2、5、6および比較例1~3)
以下の表1に掲げた組成を有する化粧料を、油性成分を加温して溶解し粉末を分散させたものに、別途混合した水相を添加し、攪拌処理にて乳化することにより調製した。
【0064】
紫外線防御能残存率の測定方法
Sプレート(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER-PA01)に各例のサンプルを2mg/cmの量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後、その吸光度(400~280nm)を株式会社日立製作所社製U-3500型自記録分光光度計にて測定した。未塗布のプレートをコントロールとし、吸光度(Abs)を以下の式で算出した。
Abs=-log(T/To)
T:サンプルの透過率、To:未塗布プレートの透過率
次に、測定プレートを水に浸し、Sプレートの塗布面を上にして置き、ティッシュペーパーを指に巻きつけ、一定の圧、回数でプレートをこすった。その後、再度Sプレートの吸光度を分光光度計で測定した。
化粧料の塗布直後とティッシュでこすった後の吸光度(積算値)から、下記式より、水、こすれに対する化粧効果の変化率を求めた。変化率が100%未満である場合には、塗布直後に化粧料が有していた化粧効果(紫外線防御能)が低下したことを示し、100%を超える場合には、化粧料塗布直後を上回る化粧効果が残存していることを示す。
化粧効果の変化率(%)
={(ティッシュでこすった後の吸光度の積算値)/(塗布直後の吸光度の積算値)}×100
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示すように、(A)板状粉末を含まない化粧料(比較例1)および(C)カチオン界面活性剤を含まない化粧料(比較例2)はいずれも、水浴およびこすれにより、化粧料塗布直後よりも化粧効果が低下した。また、合計粉末量が同じであっても、球状粉末のみを含む化粧料(比較例3)も水浴およびこすれにより化粧効果が低下した。
一方、本願発明の(A)、(B)および(C)成分を配合する化粧料(実施例1、2)は、水浴およびこすれの後であっても紫外線防御能で表される化粧効果を十分に維持しており、むしろ化粧料塗布直後よりも高い紫外線防御効果を有していた。よって、本願発明の化粧料は水やこすれに対して高い耐性を有することが示された。また、実施例1、2、5および6の化粧料は安定性も良く、使用感にも優れていた。
【0067】
次に、実施例1の化粧料について被膜剤(トリメチルシロキシケイ酸)の配合量を多くした場合の使用感(べたつき)について、下記の基準に基づいて評価した。結果は表2に示す。
<評価基準>
A:パネル10人中8名以上がべたつかないと回答した。
B:パネル10人中4~7名がべたつかないと回答した。
C:パネル10人中0~3名がべたつかないと回答した。
【0068】
【表2】
【0069】
実施例1、3および4の化粧料はいずれもこすれに対して良好な耐性を示した。表2に示すように、被膜剤の配合量が少ない場合(実施例1)にはべたつきが少なく、使用性が最も良好な化粧料が得られたが、被膜剤の配合量が増加するにつれて(実施例3、実施例4)べたつきを感じる傾向にあった。
【0070】
(処方例)
以下に、本発明の化粧料の処方例を挙げる。なお、配合量はすべて製品全量に対する質量%で表す。
【0071】
製法
下記表3~8について、表中に示す成分のうち油相成分を均一に加熱混合して油相部を調製し、この油相部に粉末成分を分散させて混合物を得た。次いで、水相成分を加温溶解して水相部を調製し、前記混合物に添加し、撹拌処理にて乳化することにより、それぞれ日焼け止めクリーム(処方例1)、日焼け止めローション(処方例2)、化粧下地(処方例3)、BBクリーム(処方例4)、ファンデーション(処方例5)、ヘアスプレー原液(処方例6)を得た。処方例6については、ヘアスプレー原液とLPガスとを1:1で混合しエアゾール化することによって、日焼け止めヘアスプレーを製造した。
【0072】
処方例1.日焼け止めクリーム
【表3】
【0073】
処方例2.日焼け止めローション
【表4】
【0074】
処方例3.化粧下地
【表5】
【0075】
処方例4.BBクリーム
【表6】
【0076】
処方例5.ファンデーション
【表7】
【0077】
処方例6.ヘアスプレー
【表8】