(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/895 20060101AFI20221219BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20221219BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20221219BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221219BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221219BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221219BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20221219BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K8/895
A61K8/894
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/81
A61K8/891
A61Q5/06
(21)【出願番号】P 2019539444
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2018031309
(87)【国際公開番号】W WO2019044685
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2017167693
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】土居 亮介
(72)【発明者】
【氏名】白神 裕人
(72)【発明者】
【氏名】山下 貴弘
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-171146(JP,A)
【文献】特開2009-155274(JP,A)
【文献】特開2009-242294(JP,A)
【文献】特開2001-002521(JP,A)
【文献】特開昭64-079104(JP,A)
【文献】特開2001-048737(JP,A)
【文献】特開平05-139929(JP,A)
【文献】特許第5732165(JP,B1)
【文献】Shea Butter & Honey Curl Defining Creme,Mintel GNPD,ID:4828337,MINTEL,2017年05月,URL(http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/)
【文献】Quick Mute Cream,Mintel GNPD,ID:5289849,MINTEL,2017年02月,URL(http://www.gnpd.com/sinatra/gnpd/frontpage/)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)架橋型シロキサンエラストマー
を0.01~10質量%、
(B)半固形油分を含む固形油分
を1.0~20質量%、
(C)液状油分
を1.0~40質量%、および
(D)55質量%以上の水
を含有し、
(C)成分に対する(B)成分の配合比率((B)/(C))が0.25~1.5であ
り、
前記(A)成分が、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーおよび(ジメチコン/(PEG-10/15))クロスポリマーから選択される一種以上であり、
前記半固形油分がワセリンであり、
前記固形油分が、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスおよびミリスチン酸ミリスチルから選択される一種以上であり、
前記(C)成分が、イソドデカンおよびメチルポリシロキサンから選択される一種以上である、
油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
固形または半固形(ただし、スティック状は除く)である、請求項
1に記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
ケラチン組織ケア製品に使用するための、請求項1
または2に記載の油中水型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料に関する。さらに詳しくは、固形または半固形の化粧料であって、特に毛髪等のケラチン線維に適用すると優れた整髪効果を発揮し、潤いを与えながら、べたつきを生じない化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、整髪剤にはワックス、ロウ等の油分や整髪樹脂が配合され、良好なヘアスタイルのセット力やキープ力が実現されてきた。一方、近年では、ツヤやてかりが少ない、自然な質感のヘアスタイルが好まれる傾向にあり、また、使用性に関してもべたつきのないものが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロウ類および流動油分に、整髪樹脂として水溶性高分子を配合することにより、ナチュラルな整髪性がありながら、べたつきが少ない整髪用化粧料が提案されている。
また、特許文献2には、植物由来の半固形油分、キャンデリラロウ、液状油分、界面活性剤と高級脂肪酸とから得た複合体を配合することにより、ヘアアレンジがし易く、かつ、油っぽさやべたつきが少ない乳化型毛髪化粧料が提案されている。
【0004】
しかしながら、ロウ類や整髪樹脂を多く配合すると整髪効果は上がるものの、油っぽさやごわつきが生じ、自然なスタイリングを求める消費者のニーズには十分応えられていなかった。また、整髪剤におけるべたつきはある程度軽減されたものの、多くの整髪剤は、消費者が使用後に手に残った整髪剤を拭き取ったり洗い流すなどして使用されているのが実情であり、べたつきが残らない整髪剤は実現されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-45546号公報
【文献】特開2009-209103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた整髪効果を持ちながら、塗布した組織に潤いを与える機能が高く、クリームやワックスとは異なるさらりとした指取りの感覚を有し、手や髪にべたつきが生じない油中水型乳化化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、架橋型シロキサンエラストマーと、固形油分と、液状油分と、水とを含有し、固形油分と液状油分とを特定の比率に調整することにより、整髪効果を有しながら、べたつきが極限にまで抑制され、クリームやワックスとは異なるさらりとした指取りの感覚を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(A)架橋型シロキサンエラストマー
(B)固形油分
(C)液状油分、および
(D)55質量%以上の水
を含有し、(C)成分に対する(B)成分の比率((B)/(C))が0.25~1.5である、油中水型乳化化粧料を提供する。さらに、本発明に係る化粧料は、固形または半固形であって、スティック状でないことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記構成とすることにより、塗布した組織に潤いを与える機能を有し、べたつきのない、さらりとした触感の化粧料を得ることができる。特に、毛髪等のケラチン組織に塗布した場合には切れ毛やもみあげなどのまとまりを良くしたり、髪の表面を整えるという整髪効果を発揮し、毛髪等に自然なツヤを与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】転動抵抗測定の結果を示すグラフである。縦軸は転動抵抗の程度であり、グラフの伸びが高いほど転動抵抗が大きいことを表す。
【
図2】転動抵抗の程度を摺動サイクル数の増加と共に示したグラフである。縦軸は転動抵抗の程度であり、グラフの伸びが高いほど転動抵抗が大きいことを表す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の通り、本発明の油中水型乳化化粧料は、(A)架橋型シロキサンエラストマー、(B)固形油分、(C)液状油分および(D)水を含むことを特徴としている。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0012】
<(A)架橋型シロキサンエラストマー>
本発明に係る油中水型乳化化粧料に配合される(A)架橋型シロキサンエラストマー(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、ポリジメチルシロキサンを三次元架橋させたシロキサンエラストマー(シリコーンエラストマー)であり、乳化性および非乳化性のものを含む。
【0013】
乳化性架橋型シロキサンエラストマーとしては、特に限定されるものではないが、架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、アルキル基含有架橋型ポリオキシエチレンメチルポリシロキサン、架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、アルキル基含有架橋型ポリグリセリン変性シリコーン等が挙げられる。これら乳化性架橋型シロキサンエラストマーは、シリコーン油、ミネラルオイル、トリエチルヘキサノイン、スクワラン等の各種油分に膨潤された膨潤物の形態で市販されているものを用いることができる。具体例としては以下のものが挙げられる。
【0014】
ポリオキシエチレンメチルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-210(((PEG-10/15)/ジメチコン)クロスポリマー、ジメチコンの混合物で架橋物は20~30%)(信越化学工業株式会社製)、9011シリコーンエラストマーブレンド((PEG-12/ジメチコン)クロスポリマー、シクロメチコンの混合物)(東レ・ダウコーニング株式会社製)等が挙げられる。
【0015】
アルキル基含有ポリオキシエチレンメチルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-310((PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、ミネラルオイルの混合物で架橋物は25~35%)、KSG-320((PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-330((PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、トリエチルヘキサノインの混合物で架橋物は15~25%)、KSG-340((PEG-15/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、(PEG-10/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、スクワランの混合物で架橋物は25~35%)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0016】
ポリグリセリン変性シリコーンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-710((ジメチコン/ポリグリセリン-3)クロスポリマー、ジメチコンの混合物で架橋物は20~30%(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0017】
アルキル基含有ポリグリセリン変性シリコーンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-810((ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー、ミネラルオイルの混合物で架橋物は25~35%)、KSG-820((ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-830((ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー、トリエチルヘキサノインの混合物で架橋物は15~25%)、KSG-840((ラウリルジメチコン/ポリグリセリン3)クロスポリマー、スクワランの混合物で架橋物は25~35%)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
非乳化性架橋型シロキサンエラストマーとしては、特に限定されるものではないが、メチルポリシロキサンクロスポリマー、メチルフェニルポリシロキサンクロスポリマー、ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー、ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマー、アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、セテアリルジメチコンクロスポリマー等が挙げられる。これら非乳化性架橋型シロキサンエラストマーは、シリコーン油、ミネラルオイル、トリエチルヘキサノイン、スクワラン等の各種油分に膨潤された膨潤物の形態で市販されているものを用いることができる。具体例としては以下のものが挙げられる。
【0019】
メチルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物としては、9040シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12%)、9041シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は16%)、9045シリコーンエラストマーブレンド(ジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は12.5%)、EL-8040IDシリコーンオーガニックブレンド(ジメチコンクロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は18%)(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等のジメチコンクロスポリマーの膨潤物や、KSG-15((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は4~10%)、KSG-16((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、ジメチコン6mPa・sの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-1610((ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、メチルトリメチコンの混合物で架橋物は15~20%)(以上、信越化学工業株式会社製)等のジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物等が挙げられる。
【0020】
メチルフェニルポリシロキサンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-18A((ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマー、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンの混合物で架橋物は10~20%)(信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-41A((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、ミネラルオイルの混合物で架橋物は20~30%)、KSG-42A((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は15~25%)、KSG-43((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、トリエチルヘキサノインの混合物で架橋物は25~35%)、KSG-44((ビニルジメチコン/ラウリルジメチコン)クロスポリマー、スクワランの混合物で架橋物は25~35%)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0022】
ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、KSG-042Z((ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコン)クロスポリマー、イソドデカンの混合物で架橋物は約20%)、KSG-045Z((ラウリルポリジメチルシロキシエチルジメチコン/ビス-ビニルジメチコン)クロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は約20%)(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、VELVESIL 125(アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、シクロペンタシロキサンの混合物で架橋物は約12.5%)、VELVESIL 034(アルキル(C30-45)セテアリルジメチコンクロスポリマー、カプリリルメチコンの混合物で架橋物は約16%)(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0024】
セテアリルジメチコンクロスポリマーの膨潤物としては、VELVESIL DM(セテアリルジメチコンクロスポリマー、ジメチコン5mPa・sの混合物で架橋物は約17%)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)等が挙げられる。
【0025】
(A)成分の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して、0.01~10質量%、好ましくは0.1~8質量%、より好ましくは0.4~5質量%、さらに好ましくは0.4~3質量%である。(A)成分の配合量が0.01質量%未満ではべたつきが生じ、毛髪に塗布した場合には不自然なてかりが生じ、10質量%を超えて配合すると油っぽい使用感となり、整髪時のセット力が低下するなどの点から好ましくない。
【0026】
本発明の(A)成分としては、上記の乳化性架橋型シロキサンエラストマーおよび非乳化性架橋型シロキサンエラストマーから選択される一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。また、さらっとした使用感を向上させるために、乳化性架橋型シロキサンエラストマーから選択される一種ないし二種以上と非乳化性架橋型シロキサンエラストマーから選択される一種ないし二種以上とを組み合わせて用いるのが好ましい。
【0027】
<(B)固形油分>
本発明に係る油中水型乳化化粧料に配合される(B)固形油分(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、化粧料に通常使用される、常温(25℃)で固形の油分であって、具体例としては、天然由来および合成の、油脂、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油などが挙げられる。
【0028】
油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、モクロウ、硬化ヒマシ油等が例示される。
【0029】
炭化水素油としては、オゾケライト、セレシン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等が例示される。
【0030】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸等が例示される。
【0031】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等);分岐鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、)等が例示される。
【0032】
エステル油としては、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリン、水添ホホバ油等が例示される。
【0033】
上記固形油分の中でも、べたつきのなさや手での伸ばしやすさの観点から、炭化水素油およびエステル油から選択される一種または二種以上であることが好ましい。
【0034】
本発明に係る油中水型乳化化粧料においては、上記固形油分として半固形油分を配合することができる。
本発明において用いられる半固形油分としては、特に限定されないが、ワセリン、トリラノリン脂肪酸グリセリル、軟質ラノリン脂肪酸、分岐またはヒドロキシル化した脂肪酸コレステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット等)、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、乳酸ミリスチル、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、ダイマージリノール酸(フィトステリル/ベヘニル)、ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、オレイン酸フィトステリル、テトラ(べヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル等が例示される。本発明の化粧料においては、整髪効果を向上させる観点から固形油分にワセリンを配合するのが好ましい。
【0035】
(B)成分の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して、20質量%以下、好ましくは1.0~20質量%である。(B)成分の配合量が1.0質量%未満では化粧料として十分な硬度が得られず、20質量%を超えて配合するとのびが悪くなるなどの点から好ましくない。
【0036】
<(C)液状油分>
本発明に係る油中水型乳化化粧料に配合される(C)液状油分(以下、単に「(C)成分」と称する場合がある)は、化粧料に通常使用される、常温(25℃)で液状の油分であって、具体例としては、天然由来および合成の、油脂、脂肪酸、エステル油、炭化水素油、高級アルコール、シリコーン油等が挙げられる。
【0037】
油脂としては、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油等が例示される。
【0038】
脂肪酸としては、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等が例示される。
【0039】
エステル油としては、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソパルミチン酸オクチル、オレイン酸イソデシル、エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル等が例示される。
【0040】
炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、オクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン等が例示される。
【0041】
高級アルコールとしては、オクチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が例示される。
【0042】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等の環状シリコーン等が例示される。
【0043】
(C)成分の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して、1.0~40質量%、好ましくは3.0~30質量%、より好ましくは5.0~25質量%、である。(C)成分の配合量が1.0質量%未満では塗布時ののびが悪く、40質量%を超えて配合するとべたつきが生じ、毛髪に塗布した場合には不自然なてかりが生じるなどの点から好ましくない。
【0044】
本発明に係る油中水型乳化化粧料においては、べたつきを抑え、かつ、のびを良くするために、(B)固形油分と(C)液状油分との配合比率((B)/(C))を、質量比にして0.25~1.5とするのが好ましく、さらには0.5~1.2とするのがより好ましい。(B)成分の配合比率を高くするとべたつきが生じ、のびが悪くなる。また、(C)成分の配合比率を高くすると、整髪効果が低くなる。
【0045】
本発明に係る油中水型乳化化粧料は、さらに(D)水(以下、単に「(D)成分」と称する場合がある)を必須成分としている。
(D)成分の配合量は、油中水型乳化化粧料全量に対して、55質量%以上である。水分量を55質量%未満とすると、べたつきが生じ、毛髪等の整髪効果が劣る傾向がある。
【0046】
本発明の化粧料は、上記必須成分(A)~(D)に加えて、化粧料に配合し得る他の任意成分を発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。任意成分としては以下のものが例示される。
【0047】
(E)界面活性剤を配合することにより、乳化安定性を向上させることができる。本発明に係る化粧料に配合される(E)界面活性剤としては、油中水型乳化物を製造する際に通常用いられる界面活性剤であって、特に限定されないが、HLBが8以下である非イオン性界面活性剤やシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。なかでも、べたつきのなさや軽さの観点からシリコーン系界面活性剤を用いるのが好ましい。シリコーン系界面活性剤は、シリコーン骨格にポリオキシアルキレン構造を導入したポリエーテル変性シリコーンのうち架橋型でないものをいう。
【0048】
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、PEG-10ジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等のポリエーテル変性シリコーンが挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して配合することもできる。
【0049】
また、シリコーン系界面活性剤は、当該界面活性剤と溶媒とからなるシリコーンゲルの状態で配合してもよく、市販されているシリコーンゲルを使用することができる。例えば、KF-6017、KF-6028、KF-6038(以上、信越化学工業株式会社製)等が例示される。なお、これらのシリコーンゲルに溶媒として含まれる油分も上記成分(C)に分類され、その配合量は成分(C)の配合量に加算されることは言うまでもない。
【0050】
本発明の化粧料における(E)界面活性剤の配合量は、通常は、0.05~20質量%、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~5質量%である。
【0051】
(F)保湿剤を配合することにより、適用後の組織(毛髪や肌など)の保湿力を向上させることができる。
保湿剤の具体例としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコール類;フルクトース、グルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、トレハロース等の糖類が挙げられる。
【0052】
本発明の化粧料に保湿剤を配合する場合、その配合量は、通常は0.1~50質量%、好ましくは1~30質量%、より好ましくは5~20質量%である。
【0053】
上記以外の任意成分としては、例えば、増粘剤、セラミド類、ビタミン類、紫外線吸収剤、キレート剤、殺菌剤、防腐剤、植物抽出液、アミノ酸、各種薬剤、エタノール等の低級アルコール類等が挙げられる。
【0054】
本発明の化粧料は、従来から用いられている方法に従って製造することができる。簡潔に言えば、油性成分と水性成分とを別々に必要に応じて加熱しながら混合し、油相中に水相を乳化し、次いで得られた乳化物を容器に充填して徐冷することにより製造できる。
【0055】
本発明の化粧料は、多量の水を含んでいるため、塗布した組織(毛髪や肌など)に潤いを与えることができる。また、固形油分と液状油分の配合量を特定の比率に調整することによって特有の硬度を有しているため、べたつき感がなく、肌上に塗布した際には乳化が崩れて内相の水が溢れ出ることによりみずみずしい感触が得られる。さらに、シロキサンエラストマーの配合によりさらりとした感触が得られる。
【0056】
本発明の化粧料の硬度は、50~500であることが好ましく、より好ましくは75~450、さらに好ましくは100~400である。ここで「硬度」は、製造翌日に25℃の恒温槽に3時間入れた後の化粧料をレオメーター(SUN社製COMPAC100-II)を用いて、荷重200g、感圧軸8φ、針入度10.0mm、針入速度300mm/minにて測定した場合の値をいう。
【0057】
本発明の化粧料は、例えば広口容器等に収容されており、固形または半固形の化粧料であり、スティック状化粧料は本発明の化粧料には含まれない。また、本発明の化粧料は、手指等に取って塗布して用いられるのが好ましい。なお、化粧料を手指に取る際には化粧料が収容される容器から指で直接取ってもよいし、へら等の道具を用いて取ってもよい。
【0058】
本発明の化粧料は、バーム基剤とも言われ、全身ケア用として使用することができるが、のびが良く、整髪効果を有するので、ケラチン組織のケア用および整髪用として使用するのが好ましい。また、本発明の化粧料は、べたつきがないので、整髪用化粧料として用いても使用後に手指に残った化粧料を拭き取ったり洗い流す必要がない。
【実施例】
【0059】
本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、配合量は特記しない限り質量%を意味する。
【0060】
下記の表1に掲げた組成を有する油中水型乳化化粧料を、各例の組成に含まれる油性成分と水性成分とを別々に加熱しながら混合し、油相中に水相を乳化し、次いで得られた乳化物を容器に充填して徐冷することによって調製した。調整した化粧料について以下の試験を行った。
【0061】
1.効果試験
10名の専門パネルによる実使用性試験を行った。使用性項目は、手や髪へのべたつきのなさ、手での伸ばしやすさ、アレンジ力(ヘアスタイルの作りやすさ)、セット力(ヘアスタイルの保持力)であり、それぞれの項目について下記の基準に基づいて評価した。結果は表に示す。
<評価基準>
A:パネルの9名以上が優れていると回答した。
B:パネルの7名または8名が優れていると回答した。
C:パネルの3名~6名が優れていると回答した。
D:パネル2名以下が優れていると回答した。
【0062】
【0063】
水分の配合量を55質量%未満にした場合(比較例1、比較例4)にはべたつきが生じ、アレンジ力(ヘアスタイルの作りやすさ)およびセット力(ヘアスタイルの保持力)が劣る傾向がみられた。固形油分の配合比率を高くした場合((B)成分/(C)成分=2.0、比較例2)にはセット力は良好であるが、アレンジ力は劣り、伸ばしにくく、べたつきが生じた。一方、固形油分の配合比率を低くした場合((B)成分/(C)成分=0.21、比較例3)には、伸ばしやすく、べたつきはないが、アレンジ力およびセット力がいずれも劣っていた。
【0064】
上記比較例に対して、本願発明の必須成分を配合し、固形油分と液状油分の配合比率を0.25~1.5とした場合には、いずれも十分な整髪力を有するとともに、伸ばしやすさやべたつきの点においても良好な化粧料が得られた。
【0065】
2.塗布後乾燥時のべたつき感(転動抵抗)
次に、以下に掲げる組成からなるヘアワックスを、(2)~(10)を加熱・溶解して油相とし、(11)に(12)、(13)および(15)を加え撹拌溶解後に(1)を加えて均一分散させて水相とし、水相に油相を加えて乳化させた後に(14)、(16)を加えて、調製した。調製したヘアワックスを比較例5として、前記実施例10とともに下記の方法により転動抵抗を測定し、べたつきの評価を比較した。
【0066】
比較例5(ヘアワックス) 質量%
(1)カオリン 2.0
(2)フェニールメチルポリシロキサン 5.0
(3)アモジメチコン 1.0
(4)キャンデリラロウ 18.0
(5)リシノレイン酸フィトステリル 5.0
(6)ヒドロキシステアリン酸水添ヒマシ油 3.0
(7)オレイン酸デシル 5.0
(8)メチルシクロポリシロキサン 5.0
(9)オクタメチルトリシロキサン 3.0
(10)イソステアリン酸 3.0
(11)イオン交換水 残余
(12)1,3-ブチレングリコール 5.0
(13)2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム(実分30%) 8.0
(14)キサンタンガム 1.0
(15)EDTA-2Na・2H2O 0.05
(16)フェノキシエタノール 0.5
【0067】
前記の実施例10および比較例5の試料について、特許第3945729号に記載される装置を用いて、試料とプローブとの間にかかる転動抵抗を測定することにより、乾燥時のべたつきを測定した。測定条件は、摺動速度1.2cm/s、摺動ストローク20mm、サンプル量20μL、ステージ温度32℃、室温25℃、相対湿度50%とした。結果を
図1および
図2に示す。
【0068】
図1の結果から明らかなように、実施例10の試料は、比較例5の試料に比べ、転動抵抗が低く、乾く時のべたつきが少ないことが確認された。なお
図1の縦軸は転動抵抗であり、グラフの伸びが高いほど転動抵抗が大きいことを表す。
また、
図2の結果から明らかなように、摺動サイクル数が増加するにつれて比較例5の試料はべたつきが強くなるが、実施例10の試料はべたつきの上昇が緩やかであり、比較例5に比してべたつきが少ないことが示される。これは、実施例10の試料は乾燥するにつれてべたつきが生じにくいことを表す。