(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ムコ多糖症IIIA型(MPS IIIA)を処置するための、スルファミダーゼ(SGSH)バリアント、ベクター、組成物並びに方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/46 20060101AFI20221219BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221219BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221219BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221219BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20221219BHJP
C12N 9/14 20060101ALI20221219BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20221219BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K38/46 ZNA
A61K35/76
A61K48/00
A61P25/28
C12N15/55
C12N9/14
C12N15/864 100Z
C12N7/01
(21)【出願番号】P 2019562293
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(86)【国際出願番号】 US2018032454
(87)【国際公開番号】W WO2018209317
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】301040958
【氏名又は名称】ザ・チルドレンズ・ホスピタル・オブ・フィラデルフィア
【氏名又は名称原語表記】THE CHILDREN’S HOSPITAL OF PHILADELPHIA
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】デイビッドソン, ビバリー, エル.
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ヨンホン
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531490(JP,A)
【文献】527. Overcoming Limitations Inherent in Sulfamidase to Improve MPS IIIA Gene Therapy,Molecular Therapy, May 2017,Vol.25, No.5S1,p.243
【文献】Biochemical and Biophysical Research Communications, 2001年,Vol.280,p.1251-1257,doi:10.1006/bbrc.2001.4265
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/46
A61K 35/76
A61K 48/00
A61P 25/28
C12N 9/00-9/99
C12N 15/00-15/90
C12N 7/01
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルファミダーゼ(SGSH)を哺乳動物の中枢神経系に送達するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子
を含む組成物であって、
前記rAAV粒子が、前記哺乳動物において細胞が、スルファミダーゼ(SGSH)バリアントを発現及び分泌するように、前記哺乳動物の脳脊髄液(CSF)に接触する前記細胞に形質導入するのに効果的な、スルファミダーゼ(SGSH)バリアントをコードする核酸を含み、
前記SGSHバリアントが、配列番号1と少なくとも90%同一であり、且つ配列番号1の264位にアミノ酸置換を有するものであり、
前記
組成物が、前記哺乳動物の中枢神経系(CNS)に投与されるためのものである、
組成物。
【請求項2】
スルファミダーゼ(SGSH)の発現又は機能の欠乏又は欠損によって引き起こされる哺乳動物の疾患を処置するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子
を含む組成物であって、
前記rAAV粒子が、スルファミダーゼ(SGSH)バリアントをコードする核酸を含み、
前記SGSHバリアントが、配列番号1と少なくとも90%同一であり、且つ配列番号1の264位にアミノ酸置換を有するものであり、
前記
組成物が、前記哺乳動物の中枢神経系(CNS)に接触する細胞に形質導入するのに効果的な形で、前記哺乳動物のCNSに投与されるためのものであり、
前記疾患を処置するために前記細胞が前記スルファミダーゼ(SGSH)バリアントを発現及び分泌する、
組成物。
【請求項3】
スルファミダーゼ(SGSH)を哺乳動物の中枢神経系に送達するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子
を含む組成物であって、
前記rAAV粒子が、スルファミダーゼ(SGSH)バリアントをコードする核酸を含み、
前記SGSHバリアントが、配列番号1と少なくとも90%同一であり、且つ配列番号1の264位にアミノ酸置換を有するものであり、
前記
組成物が、前記哺乳動物において細胞が、SGSHバリアントを発現及び分泌するように、脳実質細胞又は前記哺乳動物の脳脊髄液(CSF)に接触する細胞に形質導入するのに効果的な形で、前記哺乳動物の脳実質組織、クモ膜下腔、及び/又は髄腔内に投与されるためのものである、
組成物。
【請求項4】
スルファミダーゼ(SGSH)の発現又は機能の欠乏又は欠損によって引き起こされる哺乳動物の疾患を処置するための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子
を含む組成物であって、
前記rAAV粒子が、一対のAAV逆位末端反復配列の間に挿入されたスルファミダーゼ(SGSH)バリアントをコードする核酸を含み、
前記SGSHバリアントが、配列番号1と少なくとも90%同一であり、且つ配列番号1の264位にアミノ酸置換を有するものであり、
前記
組成物が、脳実質細胞又は前記哺乳動物の脳脊髄液(CSF)に接触する細胞に形質導入するのに効果的な形で、前記哺乳動物の脳実質組織、クモ膜下腔、及び/又は髄腔内に投与されるためのものであり、
前記疾患を処置するために前記細胞が前記SGSHバリアントを発現及び分泌する、
組成物。
【請求項5】
前記rAAV粒子がAAVカプシドタンパク質を含み、前記核酸が一対のAAV逆位末端反復配列(ITR)の間に挿入される、請求項1~4のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項6】
前記AAVカプシドタンパク質が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10及びAAV-2i8 VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質、又はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10若しくはAAV-2i8 VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシド配列と
90%若しくはそれ以上の同一性を有するカプシド配列からなる群に由来するか、又は当該群から選択される、請求項5に記載の
組成物。
【請求項7】
ITRの対の1つ又は複数が、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10若しくはAAV-2i8 ITR、又はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10若しくはAAV-2i8 ITR配列と
90%若しくはそれ以上の同一性を有するITRに由来するか、これを含むか、又はこれからなる、請求項5に記載の
組成物。
【請求項8】
前記核酸が発現調節エレメントをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項9】
前記発現調節エレメントがプロモーターを含む、請求項8に記載の
組成物。
【請求項10】
前記発現調節エレメントがエンハンサーエレメントを含む、請求項8に記載の
組成物。
【請求項11】
前記発現調節エレメントが、CMVエンハンサー、チキンベータアクチンプロモーター、CAGプロモーター及び/又は配列番号2に示されるCMVエンハンサーと
90%若しくはそれ以上の同一性を有する配列及び/又は配列番号3に示されるCAGプロモーターと
90%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む、請求項8に記載の
組成物。
【請求項12】
前記核酸が、イントロン、フィラーポリヌクレオチド配列及び/若しくはポリAシグナルのうちの1つ又は複数、又はそれらの組合せをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項13】
前記
組成物の投与が、複数のrAAV粒子の投与を含む、請求項5~11のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項14】
前記
組成物が、rAAV粒子を約1×10
6~約1×10
18vg/kgの用量で投与
するためのものである、請求項13に記載の
組成物。
【請求項15】
前記送達又は投与が、脳室内注射及び/又は実質組織内注射を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項16】
前記
組成物が、前記哺乳動物の脳室、クモ膜下腔、及び/又は髄腔内に投与又は送達
されるためのものである、請求項1~15のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項17】
前記脳室が側脳室を含む、請求項16に記載の
組成物。
【請求項18】
前記細胞が、脳室上皮、軟膜、内皮、脳室、髄膜、グリア細胞及び/又はニューロンを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項19】
前記細胞が、前記SGSHバリアントを前記哺乳動物のCNSに分泌する、請求項1~18のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項20】
前記脳室上皮、軟膜、内皮、脳室、髄膜、グリア細胞及び/若しくはニューロンが、前記SGSHバリアントを発現し、並びに/又は前記脳室上皮、軟膜、内皮、脳室、髄膜細胞、グリア細胞、及び/若しくはニューロンが、前記SGSHバリアントをCSFに分泌する、請求項18に記載の
組成物。
【請求項21】
前記
組成物の投与が、CNSに対してSGSHバリアントの発現又はSGSH機能の増加をもたらす、請求項1~20のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項22】
前記
組成物が、脳の1~5箇所に注射されるためのものである、請求項1~21のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項23】
前記
組成物が、吻側側脳室;及び/又は尾側側脳室;及び/又は右側脳室;及び/又は左側脳室;及び/又は右吻側側脳室;及び/又は左吻側側脳室;及び/又は右尾側側脳室;及び/又は左尾側側脳室に投与されるためのものである、請求項1~22のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項24】
前記
組成物の投与が、正常なSGSHの発現の約5~50%の間までSGSHバリアントの発現を増加させる、請求項1~23のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項25】
前記
組成物の投与が、正常なSGSHの発現の50%より高くまでSGSHバリアントの発現を増加させる、請求項1~23のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項26】
前記哺乳動物における内在性SGSHの欠損又は欠乏による認知障害又は欠損を阻害、減少、又は低減させるためのものである、請求項1~25のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項27】
前記哺乳動物における内在性SGSHの欠損又は欠乏による認知機能喪失又は空間学習喪失を増加、改善、保存、回復、又は救出させるためのものである、請求項1~26のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項28】
前記哺乳動物の記憶障害又は欠損を増加、改善、保存、回復、又は救出させるためのものである、請求項1~27のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項29】
細胞における
β-グルクロニダーゼの産生又は蓄積を阻害又は減少させるためのものである、請求項1~28のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項30】
ニューロンの変性又は死を阻害、減少、又は防止させるためのものである、請求項1~28のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項31】
SGSH欠損又は欠乏の症状又は有害作用を改善、低減、又は減少させるためのものである、請求項1~28のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項32】
前記哺乳動物が非げっ歯類哺乳動物である、請求項1~31のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項33】
前記非げっ歯類哺乳動物が霊長類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、又はイヌである、請求項32に記載の
組成物。
【請求項34】
前記非げっ歯類哺乳動物が霊長類である、請求項32に記載の
組成物。
【請求項35】
前記霊長類がヒトである、請求項33に記載の
組成物。
【請求項36】
前記ヒトが小児である、請求項35に記載の
組成物。
【請求項37】
前記哺乳動物、霊長類、又はヒトが内在性SGSHの発現又は機能の喪失又は低減を示す、請求項1~32のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項38】
前記哺乳動物、霊長類、又はヒトが、喪失又は低減したSGSHの発現又は機能に関して、ホモ接合体(Sgsh
-/-)又はヘテロ接合体(Sgsh
+/-)である、請求項1~32のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項39】
前記疾患がSGSHの発現又は機能の欠乏又は欠損によって引き起こされる、請求項1~38のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項40】
1つ又は複数の免疫抑制剤とともに投与されるための、請求項1~39のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項41】
前記SGSHバリアントが哺乳動物である、請求項1~40のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項42】
前記SGSHバリアントが、霊長類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、又はイヌSGSHである、請求項1~40のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項43】
前記SGSHバリアントがヒトである、請求項1~40のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項44】
前記SGSHバリアントの形質導入細胞による分泌が、配列番号1として示される非バリアントSGSHと比較して高くなることを示す、請求項1~43のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項45】
前記SGSHバリアントの細胞による取り込みが、配列番号1として示される非バリアントSGSHの取り込みと比較して増加することを示す、請求項1~44のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項46】
前記SGSHバリアントの細胞による取り込みが、マンノース-6-リン酸受容体を必要としない、請求項45に記載の
組成物。
【請求項47】
前記SGSHバリアントが、CNSにおける非形質導入細胞に分配される、請求項1~46のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項48】
前記SGSHが、前記CNS細胞によって取り込まれる、請求項47に記載の
組成物。
【請求項49】
前記SGSHバリアントが、配列番号1と少なくとも9
5%同一である、請求項1~48のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項50】
前記SGSHバリアントが、配列番号1のバリアントを含む、請求項1~48のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項51】
前記SGSHバリアントが、
配列番号1の264位
にグルタミン(Q)への置換を有す
る、請求項1~48のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項52】
前記SGSHバリアントが、
配列番号1の264位にアスパラギン(N)からグルタミン(Q)への置換を有す
る、請求項1~48のいずれか一項に記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[導入]
[0002]ムコ多糖症IIIA型(MPS IIIA)は、スルファミダーゼの欠乏によって引き起こされるリソソーム蓄積症である。スルファミダーゼ(SGSH)の変異によって引き起こされるMPS IIIAは、社会能力の喪失並びに攻撃的行動、活動亢進、及び睡眠障害を伴う進行性の神経変性を特徴とする。身体的特徴は、軽度及び可変的であることが多い。リソソーム蓄積症の脳病理を修正するため、本発明者らのグループと他の研究者らは、欠如している酵素をコードする遺伝子の脳への導入に成功した。この遺伝子治療方法の基礎は、リソソーム酵素の効率的な分泌にある。酵素が遺伝子修正細胞から効果的に分泌された後、近くの細胞によって取り込まれ、クロスコレクションをもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【0002】
[0003]本明細書に開示したように、改変スルファミダーゼ(SGSH)は分泌及び取り込みが改善され、MPS IIIA処置により高い治療効果をもたらす。SGSHの5つの異なるマンノース-6-リン酸化(M6P)部位の変異の効果が評価された。分泌の効率は変動的であり、改変は形質導入又はトランスフェクトした細胞からの分泌に影響した。1つの特定のM6P部位の改変、N264Qは、SGSH分泌のレベルの上昇をもたらした。
【0003】
[0004]さらなる研究は、SGSH M6P部位の改変がいくつかのさらなる有益な特質を与えることを示した。第1に、改変は酵素分泌を増加させただけでなく、細胞での酵素蓄積も減少させ、蓄積があった場合、二次的なリソソーム機能障害を与える可能性があった。第2に、このSGSHバリアントは、細胞で正確にプロセシングされ、リソソームで活性型に成熟した。第3に、驚くべきことにこのSGSHバリアントは、おそらく正常な、非改変SGSHに使用されるものと異なる受容体を使用することによって、細胞によってより効率的に取り込まれるようである。結果として、この改変SGSHは、MPS IIIA患者の遺伝子治療又は酵素置換治療において野生型SGSHよりも優れていると期待される。本明細書で開示したMPS IIIA動物モデル研究において、この改変SGSHは、おそらく特質、又はより多くの特質のために、MPS IIIA動物における認知効果及び/又は認知障害の低減の提供に関して野生型SGSHより優れていた。
【0004】
[0005]本発明により、スルファミダーゼ(SGSH)を哺乳動物の中枢神経系に送達する方法を提供する。一実施形態では、方法は、哺乳動物において細胞が、スルファミダーゼ(SGSH)バリアントを発現及び分泌するように、哺乳動物の脳脊髄液(CSF)に接触する細胞に形質導入するのに効果的なスルファミダーゼ(SGSH)バリアントをコードする核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を、哺乳動物の中枢神経系(CNS)に投与するステップを含む。
【0005】
[0006]本発明により、スルファミダーゼ(SGSH)の発現又は機能の欠乏又は欠損によって引き起こされる哺乳動物の疾患を処置する方法を提供する。一実施形態では、方法は、哺乳動物の中枢神経系(CNS)に接触する細胞に形質導入するのに効果的な形で、スルファミダーゼ(SGSH)バリアントをコードする核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を、哺乳動物のCNSに投与するステップを含み、疾患を処置するために細胞がスルファミダーゼ(SGSH)バリアントを発現及び分泌する。
【0006】
[0007]本発明により、スルファミダーゼ(SGSH)を哺乳動物の中枢神経系に送達する方法を提供する。一実施形態では、方法は、哺乳動物において細胞が、SGSHバリアントを発現及び分泌するように、脳実質細胞又は哺乳動物の脳脊髄液(CSF)に接触する細胞に形質導入するのに効果的な形で、スルファミダーゼ(SGSH)バリアントをコードする核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を、哺乳動物の脳実質組織、クモ膜下腔、及び/又は髄腔内に投与するステップを含む。
【0007】
[0008]本発明により、スルファミダーゼ(SGSH)の発現又は機能の欠乏又は欠損によって引き起こされる哺乳動物の疾患を処置する方法を提供する。一実施形態では、方法は、脳実質細胞又は哺乳動物の脳脊髄液(CSF)に接触する細胞に形質導入するのに効果的な形で、一対のAAV逆位末端反復配列の間に挿入されたスルファミダーゼ(SGSH)バリアントをコードする核酸を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子を、哺乳動物の脳実質組織、クモ膜下腔、及び/又は髄腔内に投与するステップを含み、疾患を処置するために、細胞がSGSHバリアントを発現及び分泌する。
【0008】
[0009]本発明の方法では、投与及び送達は、脳室に対してであってもよい。本発明の方法では、rAAV粒子の投与又は送達は、哺乳動物の脳室、クモ膜下腔、及び/又は随腔内に対してであってもよい。本発明の方法では、投与又は送達は、側脳室に対してであってもよい。本発明の方法では、投与又は送達は、脳室上皮細胞、軟膜細胞、内皮細胞、脳室細胞、髄膜細胞、グリア細胞及び/又はニューロンに対してであってもよい。
【0009】
[0010]本発明の方法では、rAAVが投与又は送達される細胞は、前記哺乳動物のCNSにSGSHバリアントを分泌する。本発明の方法では、rAAVが投与又は送達される細胞は、前記哺乳動物のCSFにSGSHバリアントを分泌する。
【0010】
[0011]本発明の方法では、脳室上皮細胞、軟膜、内皮、脳室、髄膜、グリア細胞及び/若しくはニューロンは、SGSHバリアントを発現し、並びに/又は脳室上皮、軟膜、内皮、脳室、髄膜細胞、グリア細胞及び/若しくはニューロンはCSFにSGSHバリアントを分泌する。
【0011】
[0012]本発明の方法では、rAAV粒子又は粒子は、一対のAAV逆位末端反復配列(ITR)の間にスルファミダーゼ(SGSH)バリアントをコードする核酸が挿入されたAAVカプシドタンパク質及びベクターゲノムを含む。
【0012】
[0013]本発明の方法では、AAVカプシドタンパク質は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10及びAAV-2i8 VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシドタンパク質、又はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10若しくはAAV-2i8 VP1、VP2及び/若しくはVP3カプシド配列と70%若しくはそれ以上の同一性を有するカプシド配列に由来する、又はからなる群から選択されてもよい。
【0013】
[0014]本発明の方法では、AAV ITRの対の1つ又は複数は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10若しくはAAV-2i8 ITR、又はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-Rh10若しくはAAV-2i8 ITR配列と70%若しくはそれ以上の同一性を有するITRに由来する、を含む又はからなってもよい。
【0014】
[0015]本発明の方法では、スルファミダーゼ(SGSH)バリアントをコードする核酸は、核酸の発現をモジュレートする発現調節エレメントをさらに含む。ある特定の実施形態では、発現調節エレメントはプロモーターを含む。ある特定の実施形態では、発現調節エレメントはエンハンサーエレメントを含む。
【0015】
[0016]特定の実施形態では、発現調節エレメントは、CMVエンハンサー、チキンベータアクチンプロモーター、CAGプロモーター及び/又は配列番号2に示されるCMVエンハンサーと80%若しくはそれ以上の同一性を有する配列及び/又は配列番号3に示されるCAGプロモーターと80%若しくはそれ以上の同一性を有する配列を含む。
【0016】
[0017]本発明の方法では、核酸は、イントロン、フィラーポリヌクレオチド配列及び/若しくはポリAシグナルのうちの1つ若しくは複数、又はそれらの組合せをさらに含んでもよい。
【0017】
[0018]ある特定の実施形態では、複数のrAAV粒子が対象に投与又は送達される。
【0018】
[0019]ある特定の実施形態では、rAAV粒子は約1×106~約1×1018vg/kgの用量で投与される。
【0019】
[0020]ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、哺乳動物1キログラムあたり約1×107~1×1017、約1×108~1×1016、約1×109~1×1015、約1×1010~1×1014、約1×1010~1×1013、約1×1010~1×1013、約1×1010~1×1011、約1×1011~1×1012、約1×1012~1×1013、又は約1×1013~1×1014ベクターゲノム(vg/kg)の用量で投与される。
【0020】
[0021]ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、1×106~1×1016vg/mlの約0.5~4mlの用量で投与される。
【0021】
[0022]ある特定の実施形態では、本発明の方法は、複数のAAV空カプシドを投与するステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、投与のためのAAV空カプシドと共に製剤化される。
【0022】
[0023]ある特定の実施形態では、AAV空カプシドは、1.0~100倍過剰量のrAAVベクター粒子と共に投与される、又は製剤化される。ある特定の実施形態では、AAV空カプシドは、rAAV粒子に対して約1.0~100倍過剰量のAAV空カプシドと共に投与される、又は製剤化される。
【0023】
[0024]ある特定の実施形態では、AAV空カプシドと共に製剤化されたrAAV粒子は、哺乳動物への投与又は送達に適している。
【0024】
[0025]ある特定の実施形態では、AAV空カプシドは、哺乳動物への投与又は送達用に製剤化されている。
【0025】
[0026]ある特定の実施形態では、投与又は送達は、脳室内注射及び/又は実質組織内注射を含む。
【0026】
[0027]ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、脳の単一箇所に注射される。ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、脳の1~5箇所に注射される。
【0027】
[0028]ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、吻側側脳室;及び/又は尾側側脳室;及び/又は右側脳室;及び/又は左側脳室;及び/又は右吻側側脳室;及び/又は左吻側側脳室;及び/又は右尾側側脳室;及び/又は左尾側側脳室に投与される。
【0028】
[0029]ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、哺乳動物の大槽、脳室内腔、脳室、クモ膜下腔、髄腔内、及び/又は脳室上皮のいずれかに単回又は多回用量で投与される。
【0029】
[0030]ある特定の実施形態では、方法は、CNSに対してSGSHバリアントの発現又はSGSHの機能の増加をもたらす。ある特定の実施形態では、方法は、正常なSGSHの発現の約5~50%の間までSGSHバリアントの発現を増加させる。ある特定の実施形態では、方法は、正常なSGSHの発現の50%より高くまでSGSHバリアントの発現を増加させる。
【0030】
[0031]ある特定の実施形態では、方法は、前記哺乳動物における内在性SGSHの欠損又は欠乏による認知障害又は欠損を阻害、減少、又は低減する。
【0031】
[0032]ある特定の実施形態では、方法は、前記哺乳動物における内在性SGSHの欠損又は欠乏による認知機能喪失又は空間学習喪失を増加、改善、保存、回復、又は救出する。
【0032】
[0033]ある特定の実施形態では、方法は、哺乳動物の記憶障害又は欠損を増加、改善、保存、回復、又は救出する。
【0033】
[0034]ある特定の実施形態では、方法は、ニューロンの機能又は生存を増加、保存、回復、又は救出する。
【0034】
[0035]ある特定の実施形態では、方法は、皮質ニューロンの機能又は生存を増加、保存、回復、又は救出する。
【0035】
[0036]ある特定の実施形態では、方法は、皮質運動ニューロンの機能又は生存を増加、保存、回復、又は救出する。
【0036】
[0037]ある特定の実施形態では、方法は、ニューロンの変性又は死を阻害、減少、又は防止する。
【0037】
[0038]ある特定の実施形態では、方法は、皮質ニューロンの変性又は死を阻害、減少、又は防止する。
【0038】
[0039]ある特定の実施形態では、方法は、皮質運動ニューロンの変性又は死を阻害、減少、又は防止する。
【0039】
[0040]ある特定の実施形態では、方法は、SGSH欠損又は欠乏の症状又は有害作用を改善、低減、又は減少する。
【0040】
[0041]ある特定の実施形態では、方法は、SGSH欠損又は欠乏の症状又は有害作用を安定化、その悪化を防止する、又は好転させる。
【0041】
[0042]ある特定の実施形態では、症状又は有害作用は、初期若しくは後期の症状;行動、人格、若しくは言語症状;運動機能症状;及び/又は認知症状である。
【0042】
[0043]ある特定の実施形態では、方法により、形質導入細胞によるSGSHバリアントの分泌が、配列番号1として示される非バリアントSGSHの分泌と比較して高くなる。
【0043】
[0044]ある特定の実施形態では、方法により、非形質導入細胞によるSGSHバリアントの取り込みが、配列番号1として示される非バリアントSGSHの取り込みと比較して高くなる。
【0044】
[0045]ある特定の実施形態では、方法は、細胞における二次酵素(例えば、ベータグルクロニダーゼ)の産生又は蓄積を阻害又は減少する。
【0045】
[0046]哺乳動物を含む発明の対象。一実施形態では、哺乳動物は非げっ歯類哺乳動物である。別の実施形態では、哺乳動物は霊長類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、又はイヌである。別の実施形態では、哺乳動物は霊長類である。
【0046】
[0047]別の実施形態では、霊長類はヒトである。一態様では、ヒトは小児である。特定の態様では、小児は約1歳~約8歳である。
【0047】
[0048]発明の対象は、内在性SGSHの発現又は機能の喪失又は低減を示す哺乳動物、例えば霊長類及びヒトを含む。
【0048】
[0049]発明の対象は、喪失又は低減したSGSHの発現又は機能に関して、ホモ接合体(Sgsh-/-)又はヘテロ接合体(Sgsh+/-)である、哺乳動物、例えば霊長類及びヒトを含む。
【0049】
[0050]発明の方法は、SGSHの発現又は機能の欠乏又は欠損によって又はそれと関連して引き起こされた任意の疾患又は障害の処置を含む。
【0050】
[0051]ある特定の実施形態では、方法は、1つ又は複数の免疫抑制剤を投与するステップを含む。特定の実施形態では、免疫抑制剤は、前記rAAV粒子の投与又は送達の前、又はそれと同時に投与される。
【0051】
[0052]ある特定の実施形態では、免疫抑制剤は抗炎症剤である。
【0052】
[0053]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは哺乳動物である。特定の態様では、SGSHバリアントは霊長類、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、又はイヌSGSHである。
【0053】
[0054]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントはヒトである。
【0054】
[0055]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントの形質導入細胞による分泌は、配列番号1として示される非バリアントSGSHと比較して高くなることを示す。
【0055】
[0056]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントの細胞による取り込みは、配列番号1として示される非バリアントSGSHの取り込みと比較して増加することを示す。
【0056】
[0057]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントの細胞による取り込みは、マンノース-6-リン酸受容体を必要としない。
【0057】
[0058]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは、CNSにおける非形質導入細胞に分配される。
【0058】
[0059]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは、脳脊髄液(CSF)によって非形質導入CNS細胞に分配される。
【0059】
[0060]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは、形質導入細胞と離れて位置する非形質導入CNS細胞に分配される。
【0060】
[0061]ある特定の実施形態では、SGSHは、前記CNS細胞によって取り込まれる。
【0061】
[0062]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは配列番号1と少なくとも90%同一である。
【0062】
[0063]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは配列番号1のバリアントを含む。
【0063】
[0064]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは、264位にアミノ酸置換を有する配列番号1と少なくとも90%同一である。
【0064】
[0065]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは、264位にアスパラギン(N)からグルタミン(Q)への置換を有する配列番号1と少なくとも90%同一である。
【0065】
[0066]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは、264位にアミノ酸置換を有する配列番号1を含む。
【0066】
[0067]ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは、264位にアスパラギン(N)からグルタミン(Q)への置換を有する配列番号1を含む。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】LSD治療のためのAAV送達手法を示す図である。脳実質組織及び脳脊髄液(CSF)への注射。いくつかの血清型に関しては、下にある神経細胞へのCSF分布のための脳室上皮の有効な形質導入。
【
図2】in vitroでのリソソーム酵素の分泌を評価するステップを示す図である。
【
図3】天然のSGSHは十分に分泌されないことを示す図である。
【
図4A】SGSH M6Pの改変のリストを示す図である。
【
図4B】SGSHのM6P部位の改変が分泌を改善することを示す図である。
【
図5A】SGSHv4の特性(培地)を示す図である。
【
図5B】SGSHv4の特性(細胞ライセート)を示す図である。
【
図6A】細胞ライセートにおけるSGSHの発現を示す図である。
【
図6C】勾配遠心分離後に単離されたF1、F2、F3及びF4画分におけるSGSH及びSGSHv4タンパク質レベルを示す、(4回の生物学的な複製の)代表的なウェスタンブロットを示す図である。LAMP1、Bip、及びGrasp65が使用され、それぞれリソソーム、ER、及びゴルジマーカーの富化を同定した。アスタリスク(
*)は、非グリコシル化SGSHを示し、矢印はグリコシル化SGSHを示す;PNFは、核除去画分(post-nuclear fraction)。
【
図7】SGSHv4がM6PR非依存的に取り込まれることを示す図である。
【
図8A】SGSHv4が取り込み後完全にプロセシングされることを示す図である(SGSH免疫組織学)。
【
図8B】SGSHv4が取り込み後完全にプロセシングされることを示す図である(SGSH発現)。
【
図9】MPSIIIAマウスにおけるSGSHv4遺伝子治療及びAAV4がマウス脳室上皮を標的化することを示す図である。
【
図10】AAV.SGSHv4が、モリス水迷路による疾患の読み出しに影響することを示す図である:アクイジションフェーズ。
【
図11A】SGSHv4が、認知障害を改善することを示す図である(標的象限にいる時間)。
【
図11B】SGSHv4が、認知障害を改善することを示す図である(標的象限で移動した距離)。
【
図12】CSFにおけるSGSH活性を示す図である。
【
図14】AAV.SGSHv4が、CSFにおいてβ-グルクロニダーゼ(β-glu)活性により二次酵素に影響することを示す図である。
【
図15】脳におけるβ-glu活性を示す図である。
【
図16A】注射部位の対側で回収された組織からの実質組織におけるGAGの定量を示す図である:海馬(HPC)、線条体(Str)、後頭皮質(OccCx)、及び小脳(Cb)。n=4~6。データは、平均±SDを示す。
*p<0.05;
**p<0.01,
***p<0.001;
****p<0.0001。One-way ANOVA後、Tukeyのポストホックテスト。
【
図16B】注射部位の片側半球から収集した切片におけるGFAPの免疫反応性によって測定したグリアのアストロサイト増加を示す図である。代表的な顕微鏡写真は、皮質(Cx)及び線条体(Str)由来である;群あたりn=3のマウス、3つの切片/マウス。スケールバー、100μm。挿入画は、単離したGFAP免疫反応性グリアを示す。
【
図16C】皮層(C)及び線条体(D)において、GFAP免疫反応性が陽性な総面積の画分の閾値画像解析測定を示す図である。データは、平均±SEM、3匹のマウス/群、及び3つの切片/マウスを示す。各切片に関して、指定した皮層の3個の無作為の分野(100μm×100μm)及び線条体の12個の無作為の分野(100μm×100μm)で解析が行われた。
*p<0.05;
**p<0.01,
****p<0.001、Kruskal-Wallisノンパラメトリック検定。
【
図16D】皮層(C)及び線条体(D)において、GFAP免疫反応性が陽性な総面積の画分の閾値画像解析測定を示す図である。データは、平均±SEM、3匹のマウス/群、及び3つの切片/マウスを示す。各切片に関して、指定した皮層の3個の無作為の分野(100μm×100μm)及び線条体の12個の無作為の分野(100μm×100μm)で解析が行われた。
*p<0.05;
**p<0.01,
****p<0.001、Kruskal-Wallisノンパラメトリック検定。
【発明を実施するための形態】
【0068】
[0092]本明細書は、本明細書に記載の方法を必要とする、SGSHの活性又は発現の増加により恩恵を受けるであろう哺乳動物、例えば、内在性SGSHの発現又は機能の喪失又は低減を示す対象に投与するための方法及び使用を提供する。したがって、一実施形態では、哺乳動物において正常なSGSHと比較してSGSHの活性又は発現は低減し、又はSGSHは存在しない。特定の実施形態では、SGSHを必要とする哺乳動物はMPS IIIAを有する又は有するリスクがある。
【0069】
[0093]ある特定の実施形態では、本明細書は、SGSHの活性又は発現の欠乏又は欠損によって引き起こされる哺乳動物の疾患を、中枢神経系の組織又は体液に直接、ベクター、例えばSGSHの活性、任意選択で、ベクター形質導入細胞による野生型の分泌よりも高い分泌及び/又は非形質導入細胞による野生型SGSHの取り込みよりも高い取り込みを示すSGSHバリアントを有するタンパク質の発現を導くrAAV粒子(本明細書ではrAAV-SGSH粒子と呼ばれる)を投与することによって処置する方法を提供する。本明細書は、動物モデルの脳及び/又は脊髄へのrAAV-SGSH送達/投与が、脳/CNSの様々な領域におけるSGSHの発現、形質導入細胞からのSGSHの分泌、及びSGSHの広範な分布、並びに細胞による取り込みを提供するのに効果的であることを示すデータを開示する。
【0070】
[0094]さらなる実施形態では、本明細書に記載の方法又は使用が使用され、SGSH欠乏の1つ又は複数の症状の数、重症度、頻度、進行度、又は発症を処置、防止、阻害、低減、減少、又は遅延する。
【0071】
[0095]ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は脳に投与される。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は前記哺乳動物の脳脊髄液(CSF)に投与される。
【0072】
[0096]ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は脳室系に投与される。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は脳室に投与される。
【0073】
[0097]ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は脳実質組織、クモ膜下腔、及び/又は髄腔内に投与される。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は前記哺乳動物の大槽、脳室内腔、クモ膜下腔、髄腔内、及び/又は脳室上皮に投与される。
【0074】
[0098]さらに別の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は吻側側脳室に投与され;及び/又は尾側側脳室に投与され;及び/又は右側脳室に投与され;及び/又は左側脳室に投与され;及び/又は右吻側側脳室に投与され;及び/又は左吻側側脳室に投与され;及び/又は右尾側側脳室に投与され;及び/又は左尾側側脳室に投与される。
【0075】
[0099]さらに追加の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、前記哺乳動物の脳室上皮細胞などのCNS細胞にAAV粒子が接触及び形質導入するように投与される。そのような形質導入したCNS細胞(例えば脳室上皮細胞)はコードされたSGSHを発現し、SGSHは細胞により分泌される。特定の実施形態では、SGSHはCSF、及び/又は脳(例えば、線条体、視床、髄質、小脳、後頭皮質、前頭皮質、及び/又は前頭前野皮質、脊髄)、及び/又はCNSで発現される。特定の実施形態では、SGSHはCSF、脳(例えば、線条体、視床、髄質、小脳、後頭皮質、前頭皮質、及び/又は前頭前野皮質、脊髄)、及び/又はCNSに分泌される。特定の実施形態では、SGSHはCSF、脳(例えば、線条体、視床、髄質、小脳、後頭皮質、前頭皮質、及び/又は前頭前野皮質、脊髄)、及び/又はCNSに分泌され、非形質導入CNS細胞によって取り込まれる。
【0076】
[0100]任意の好適な哺乳動物は、本明細書に記載の方法又は使用によって処置され得る。典型的には、哺乳動物は本明細書に記載の方法を必要としており、SGSHの活性若しくは発現を欠乏若しくは欠損していると疑われる、又はしている。
【0077】
[0101]哺乳動物の非限定的な例としては、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、テナガザル、チンパンジー、オラウータン、サル、マカクなど)、飼育動物(例えば、イヌ及びネコ)、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ)、及び実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)が挙げられる。ある特定の実施形態では、哺乳動物はヒトである。ある特定の実施形態では、哺乳動物は非げっ歯類哺乳動物(例えば、ヒト、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、イヌなど)である。ある特定の実施形態では、非げっ歯類哺乳動物はヒトである。哺乳動物は、任意の年齢又は任意の発生段階であってもよい(例えば、大人、10代、小児、乳児、又は子宮内の哺乳動物)。哺乳動物は、雄又は雌であってもよい。ある特定の実施形態では、哺乳動物は動物疾患モデル、例えば、SGSHの発現又は機能の欠乏又は欠損の研究に使用される動物モデルであってもよい。
【0078】
[0102]本明細書に記載の方法又は組成物によって処置した哺乳動物(対象)は大人(18歳又はそれ以上)及び小児(18歳より小さい)を含む。小児の年齢は、1~2歳、又は2~4、4~6、6~18、8~10、10~12、12~15及び15~18歳の範囲である。小児はまた、乳児も含む。乳児は、典型的には1~12カ月齢の範囲である。
【0079】
[0103]ある特定の実施形態では、哺乳動物は、喪失又は低減したSGSHの発現又は機能に関して、ホモ接合体(Sgsh-/-)である。ある特定の実施形態では、哺乳動物は、喪失又は低減したSGSHの発現又は機能に関して、ヘテロ接合体(Sgsh+/-)である。
【0080】
[0104]アデノ随伴ウイルス(AAV)はパルボウイルス科の小型非病原性ウイルスである。現在までに、多くの血清学的に異なるAAVが同定されており、ヒト又は霊長類から1ダースより多くが単離されている。AAVは、複製のヘルパーウイルスへの依存によってこの科の他のメンバーと異なる。
【0081】
[0105]AAVゲノムは、宿主細胞ゲノムに安定的に組み込まれ;広宿主域を有し;分裂細胞と非分裂細胞の両方にin vitro及びin vivoで形質導入し、形質導入した遺伝子の高レベルの発現を維持することが示されている。AAVウイルス粒子は、熱安定性であり、溶媒、界面活性剤、pHの変化、温度に耐性であり、CsCl勾配又は他の方法によってカラム精製及び/又は濃縮され得る。AAVゲノムは、一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)、プラス鎖又はマイナス鎖のいずれかを含む。ヘルパーウイルスの非存在下では、AAVは遺伝子座に特異的な形で、例えば第19染色体のq腕に組み込まれ得る。AAVのおよそ5kbのゲノムは、プラス又はマイナス極性のいずれかの一本鎖DNAの1つのセグメントからなる。ゲノムの末端は、ヘアピン構造に折りたたまれ、ウイルスDNA複製起点として働くことができる短い逆方向末端反復配列(ITR)である。
【0082】
[0106]AAV「ゲノム」は、最終的にパッケージング又はカプセル化されAAV粒子を形成する、組換え核酸配列を指す。AAV粒子は、カプシドタンパク質とパッケージングされたAAVゲノムを含むことが多い。組換えプラスミドを使用して組換えベクターを構築又は製造する場合、ベクターゲノムは組換えプラスミドのベクターゲノム配列に相当しない「プラスミド」の部分を含まない。組換えプラスミドのこの非ベクターゲノム部分は「プラスミド骨格」と呼ばれ、プラスミドのクローニング及び増幅、増殖及び組換えウイルス産生に必要なプロセスに重要であるが、それ自体はウイルス(例えばAAV)粒子にパッケージング又はカプセル化されない。したがって、ベクター「ゲノム」は、ウイルスタンパク質によってパッケージング又はカプセル化される核酸を指し、AAVの場合にはカプシド又はカプシドタンパク質である。
【0083】
[0107]AAVビリオン(粒子)は、直径およそ25nmの非エンベロープ、二十面体粒子である。AAV粒子は互いに作用してカプシドを形成する、3つの関連カプシドタンパク質、VP1、VP2、及びVP3から構成される二十面体対称を含む。右のORFがカプシドタンパク質、VP1、VP2、及びVP3をコードすることが多い。これらのタンパク質は、それぞれ1:1:10の比で見出されることが多いが、様々な比であってもよく、全て右側ORF由来である。VP1、VP2、及びVP3カプシドタンパク質は、選択的スプライシング及び独特の開始コドンの使用によって互いに異なる。欠失解析により、選択的にスプライシングされたメッセージから翻訳されるVP1の除去又は変更は、感染性粒子の産生の低減をもたらすことが示されている。VP3コード領域内の変異は、任意の一本鎖子孫DNA又は感染性粒子の産生の失敗をもたらす。
【0084】
[0108]AAV粒子はAAVカプシドを含むウイルス粒子である。ある特定の実施形態では、AAV粒子のゲノムは、1つ、2つ、又は全てのVP1、VP2、及びVP3ポリペプチドをコードする。
【0085】
[0109]最も天然のAAVのゲノムは、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)を含有することが多く、左のORF及び右のORFと呼ばれることがある。左のORFは、一本鎖子孫ゲノムの産生に加えて複製及び転写の制御に関与する、非構造Repタンパク質、Rep40、Rep52、Rep68、及びRep78をコードすることが多い。2つのRepタンパク質は、ヒト第19染色体のq腕の領域へのAAVゲノムの優先的な組込みと関連している。Rep68/78は、NTP結合活性並びにDNA及びRNAヘリカーゼ活性を有することが示されている。いくつかのRepタンパク質は、核局在シグナル並びにいくつかの潜在的なリン酸化部位を有する。ある特定の実施形態では、AAV(例えばrAAV)のゲノムはいくつか又は全てのRepタンパク質をコードする。ある特定の実施形態では、AAV(例えばrAAV)のゲノムはRepタンパク質をコードしない。ある特定の実施形態では、1つ又は複数のRepタンパク質はトランスで送達することができ、したがって、ポリペプチドをコードする核酸を含むAAV粒子に含まれない。
【0086】
[0110]AAVゲノムの末端は、ウイルスDNA複製起点として働くT型ヘアピン構造へと折りたたむ能力を有する短い逆方向末端反復配列(ITR)を含む。したがって、AAVのゲノムは、一本鎖ウイルスDNAゲノムに隣接する1つ又は複数の(例えば一対の)ITR配列を含む。ITR配列はそれぞれ約145塩基の長さを有することが多い。ITR領域内に、ITR、GAGC反復配列モチーフ及び末端分離部位(trs)の機能に中心的であると考えられる2つのエレメントが記載されている。反復配列モチーフは、ITRが線状又はヘアピン構造のいずれかである場合にRepに結合することが示されている。この結合は、切断のためRep68/78をtrsに配置し、部位及び鎖特異的な形で起こると考えられる。複製におけるそれらの役割に加えて、これらの2つのエレメントはウイルスの組込みに中心的であると考えられる。第19染色体内に含有される組込み遺伝子座は、trsと隣接するRep結合部位である。これらのエレメントは遺伝子座特異的組込みに機能性及び必要であることが示されている。
【0087】
[0111]ある特定の実施形態では、AAV(例えばrAAV)は2つのITRを含む。ある特定の実施形態では、AAV(例えばrAAV)は一対のITRを含む。ある特定の実施形態では、AAV(例えばrAAV)は、SGSHの機能又は活性を有するポリペプチドを少なくともコードするポリヌクレオチドに隣接する(すなわち、各5’及び3’末端)一対のITRを含む。
【0088】
[0112]用語「ベクター」は、核酸の挿入又は組込みによって操作され得る小さい担体核酸分子、プラスミド、ウイルス(例えばAAVベクター)、又は他のビヒクルを指す。ポリヌクレオチドが細胞によって転写及び続いて翻訳されるように、AAVベクターなどのベクターを使用してポリヌクレオチドを細胞に導入/移送することができる。
【0089】
[0113]「発現ベクター」は、宿主細胞での発現に必要な必須の制御領域を有する遺伝子又は核酸配列を含有する特殊なベクターである。ベクターの核酸配列は通常、細胞での増殖のための少なくとも1つの複製起点、及び異種ポリヌクレオチド配列、発現調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー)、イントロン、ITR(複数可)、ポリアデニル化シグナルなど任意選択でさらなるエレメントを含有する。
【0090】
[0114]ウイルスベクターは、ウイルスゲノムを含む1つ又は複数の核酸エレメントに由来する又は基づく。特定のウイルスベクターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む。
【0091】
[0115]本明細書に開示したように、ベクター形質導入細胞によって発現される場合、野生型SGSHよりも高い分泌を示すSGSHバリアントをコードする核酸配列を含むベクター(例えば、AAV)を提供する。本明細書に開示したように、非形質導入細胞による野生型SGSH(例えば、配列番号1)よりも高い取り込みを示すSGSHバリアントをコードする核酸配列を含むベクター(例えば、AAV)も提供する。本明細書は、ベクター形質導入細胞によって発現される場合、野生型SGSH(例えば、配列番号1)よりも高い分泌を示すSGSHバリアント、及び非形質導入細胞による野生型SGSH(例えば、配列番号1)よりも高い取り込みを示すSGSHバリアントをコードする核酸配列を含むベクター(例えば、AAV)も提供する。
【0092】
[0116]用語「組換え」は、組換えウイルス、例えばレンチウイルス又はパルボウイルス(例えばAAV)ベクターなどのベクターの修飾物、並びに組換えポリヌクレオチド及びポリペプチドなどの配列の修飾物として、組成物が天然では通常起こらない様式で操作されている(すなわち、工学的に操作された)ことを意味する。AAVベクターなどの組換えベクターの特定の例は、野生型ウイルス(例えばAAV)ゲノムに通常存在しないポリヌクレオチドがウイルスゲノム内に挿入される場合である。組換えポリヌクレオチドの例は、5’、3’及び/若しくはイントロン領域あり又はなしで、SGSHポリペプチドをコードする核酸(例えば遺伝子)がベクターにクローニングされる場合であり、遺伝子は通常ウイルス(例えばAAV)ゲノムと関連する。用語「組換え」は、本明細書において常にウイルス及びAAVベクターなどのベクター、並びにポリヌクレオチドなどの配列に関して使用されるわけではないが、ポリヌクレオチド、核酸、導入遺伝子等を含む「組換え」形態は、そのような省略にかかわらず明示的に含まれる。
【0093】
[0117]組換えウイルス「ベクター」又は組換え「AAVベクター」は、ウイルス(例えばAAV)から野生型ゲノムを除去する分子的な方法の使用、及びSGSHコード核酸配列などの非天然核酸との置き換えによって、AAVなどのウイルスの野生型ゲノムに由来する。典型的には、AAVに関して、AAVゲノムの一方又は両方の逆方向末端反復配列(ITR)配列がrAAVベクターに保持される。SGSHコード核酸配列などのウイルス(例えばAAV)ゲノムの核酸に関して、ウイルスゲノムの全て又は一部が非天然の配列と置き換えられているため、「組換え」ウイルスベクター(例えばrAAV)はウイルス(例えばAAV)ゲノムと区別される。したがって、非天然配列の組込みは、ウイルスベクター(例えばAAV)を「組換え」ベクターと定義し、AAVの場合には「rAAVベクター」と呼ばれ得る。
【0094】
[0118]AAVベクター(例えばrAAVベクター)はパッケージングされてもよく、本明細書において、ex vivo、in vitro、又はin vivoで、細胞へのその後の感染(形質導入)のための「AAV粒子」と呼ばれる。組換えAAVベクターがAAV粒子にカプセル化又はパッケージングされる場合、粒子は「rAAV粒子」とも呼ばれ得る。ある特定の実施形態では、AAV粒子はrAAV粒子である。rAAV粒子は、rAAVベクター又はその部分を含むことが多い。rAAV粒子は1つ又は複数のrAAV粒子(例えば複数のAAV粒子)であってもよい。rAAV粒子は、典型的には、rAAVベクターゲノムをカプセル化又はパッケージングするタンパク質を含む(例えばカプシドタンパク質)。rAAVベクターへの言及は、rAAV粒子の言及にも使用され得ることに留意されたい。
【0095】
[0119]任意の好適なAAV粒子(例えばrAAV粒子)は、本明細書の方法又は使用に使用され得る。rAAV粒子、及び/又はrAAV粒子に含まれるゲノムは、任意の好適なAAVの血清型又は株に由来し得る。rAAV粒子、及び/又はrAAV粒子に含まれるゲノムは、2つ又はそれ以上のAAVの血清型又は株に由来し得る。したがって、rAAVは、任意のAAVの血清型又は株のタンパク質及び/若しくは核酸、又はその部分を含むことができ、AAV粒子は、哺乳動物細胞の感染及び/若しくは形質導入に好適である。AAV血清型の非限定的な例としては、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10、又はAAV-2i8が挙げられる。
【0096】
[0120]ある特定の実施形態では、複数のrAAV粒子は、同じ株若しくは血清型(又はサブグループ若しくはバリアント)の、又は、それに由来する粒子を含む。ある特定の実施形態では、複数のrAAV粒子は、2つ又はそれ以上の異なるrAAV粒子の(例えば異なる血清型及び/又は株の)混合物を含む。
【0097】
[0121]本明細書で使用する場合、用語「血清型」は、他のAAVの血清型とは血清学的に異なるカプシドを有するAAVを指すために使用される区別である。血清学的な区別性は、別のAAVと比較した場合に、1つのAAVに対する抗体間の交差反応性の欠如に基づいて決定される。そのような交差反応性の違いは、通常カプシドタンパク質配列/抗原決定基の違いによる(例えばAAV血清型のVP1、VP2、及び/又はVP3の配列の違いによる)。カプシドバリアントを含むAAVバリアントが、参照のAAV又は他のAAVの血清型と血清学的に異なることはない可能性にもかかわらず、それらは、参照又は他のAAV血清型と比較して少なくとも1つのヌクレオチド又はアミノ酸残基が異なる。
【0098】
[0122]ある特定の実施形態では、rAAV粒子はある特定の血清型を除外する。一実施形態では、rAAV粒子はAAV4粒子ではない。ある特定の実施形態では、rAAV粒子は抗原的に又は免疫学的にAAV4と異なる。違いは標準的な方法で決定され得る。例えば、ELISA及びウェスタンブロットを使用して、ウイルス粒子が抗原的に又は免疫学的にAAV4と異なるかどうか決定され得る。さらに、ある特定の実施形態では、rAAV2粒子はAAV4と異なる組織向性を保持する。
【0099】
[0123]ある特定の実施形態では、rAAVベクターは、ベクターをパッケージングする1つ又は複数のカプシドタンパク質の血清型に相当する第1の血清型ゲノムに基づく。例えば、AAVベクターゲノムを含む1つ又は複数のAAV核酸(例えばITR)の血清型は、rAAV粒子を含むカプシドの血清型に相当する。
【0100】
[0124]ある特定の実施形態では、rAAVベクターゲノムは、ベクターをパッケージングする1つ又は複数のAAVカプシドタンパク質の血清型と異なるAAV(例えばAAV2)血清型ゲノムに基づいてもよい。例えば、rAAVベクターゲノムは、AAV2由来核酸(例えばITR)を含み得るが、3つのカプシドタンパク質のうちの少なくとも1つ又は複数が異なる血清型、例えば、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74、若しくはAAV-2i8血清型又はそのバリアントに由来する。
【0101】
[0125]ある特定の実施形態では、参照血清型に関連するrAAV粒子又はそのベクターゲノムは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74又はAAV-2i8粒子のポリヌクレオチド、ポリペプチド、又はサブ配列と少なくとも60%又はそれ以上(例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%等)同一の配列を含む、又はそれからなるポリヌクレオチド、ポリペプチド、又はそのサブ配列を有する。特定の実施形態では、参照血清型に関連するrAAV粒子又はそのベクターゲノムは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、Rh10、Rh74、又はAAV-2i8血清型のカプシド又はITR配列と少なくとも60%又はそれ以上(例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%等)同一の配列を含む、又はそれからなるカプシド又はITR配列を有する。
【0102】
[0126]ある特定の実施形態では、本明細書の方法は、rAAV9粒子の使用、投与、又は送達を含む。ある特定の実施形態では、本明細書の方法は、rAAV2粒子の使用、投与、又は送達を含む。
【0103】
[0127]ある特定の実施形態では、rAAV9粒子はAAV9カプシドを含む。ある特定の実施形態では、rAAV9粒子は、天然又は野生型AAV9粒子の相当するカプシドタンパク質と少なくとも60%、65%、70%、75%又はそれ以上同一であり、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%等、100%まで同一である1つ又は複数のカプシドタンパク質(例えば、VP1、VP2、及び/又はVP3)を含む。ある特定の実施形態では、rAAV9粒子は、天然又は野生型AAV9粒子の相当するカプシドタンパク質と少なくとも75%又はそれ以上同一であり、例えば80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%等、100%まで同一であるVP1、VP2、及びVP3カプシドタンパク質を含む。ある特定の実施形態では、rAAV9粒子は天然又は野生型AAV9粒子のバリアントである。いくつかの態様では、AAV9バリアントの1つ又は複数のカプシドタンパク質は、天然又は野生型AAV9粒子のカプシドタンパク質(複数可)と比較して1、2、3、4、5、5~10、10~15、15~20又はそれ以上のアミノ酸置換を有する。
【0104】
[0128]ある特定の実施形態では、rAAV2粒子はAAV2カプシドを含む。ある特定の実施形態では、rAAV2粒子は、天然又は野生型AAV2粒子の相当するカプシドタンパク質と少なくとも60%、65%、70%、75%又はそれ以上同一であり、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%等、100%まで同一である1つ又は複数のカプシドタンパク質(例えば、VP1、VP2、及び/又はVP3)を含む。ある特定の実施形態では、rAAV2粒子は、天然又は野生型AAV2粒子の相当するカプシドタンパク質と少なくとも75%又はそれ以上同一であり、例えば80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%等、100%まで同一であるVP1、VP2、及びVP3カプシドタンパク質を含む。ある特定の実施形態では、rAAV2粒子は天然又は野生型AAV2粒子のバリアントである。いくつかの態様では、AAV2バリアントの1つ又は複数のカプシドタンパク質は、天然又は野生型AAV2粒子のカプシドタンパク質(複数可)と比較して1、2、3、4、5、5~10、10~15、15~20又はそれ以上のアミノ酸置換を有する。
【0105】
[0129]ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、それらが1つ又は複数の所望のITR機能(例えば、所望であれば、DNA複製を可能にするヘアピンを形成する能力;AAV DNAの宿主細胞ゲノムへの組込み;及び/又はパッケージング)を保持する限り、天然又は野生型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV-rh74、AAV-rh10、又はAAV-2i8の相当するITRと少なくとも75%又はそれ以上同一であり、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%等、100%まで同一である1つ又は2つのITR(例えば一対のITR)を含む。
【0106】
[0130]ある特定の実施形態では、rAAV9粒子は、それらが1つ又は複数の所望のITR機能(例えば、所望であれば、DNA複製を可能にするヘアピンを形成する能力;AAV DNAの宿主細胞ゲノムへの組込み;及び/又はパッケージング)を保持する限り、天然又は野生型AAV2粒子の相当するITRと少なくとも75%又はそれ以上同一であり、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%等、100%まで同一である1つ又は2つのITR(例えば一対のITR)を含む。
【0107】
[0131]ある特定の実施形態では、rAAV2粒子は、それらが1つ又は複数の所望のITR機能(例えば、所望であれば、DNA複製を可能にするヘアピンを形成する能力;AAV DNAの宿主細胞ゲノムへの組込み;及び/又はパッケージング)を保持する限り、天然又は野生型AAV2粒子の相当するITRと少なくとも75%又はそれ以上同一であり、例えば80%、85%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%等、100%まで同一である1つ又は2つのITR(例えば一対のITR)を含む。
【0108】
[0132]rAAV粒子は、任意の好適な数の「GAGC」反復配列を有するITRを含み得る。ある特定の実施形態では、AAV2粒子のITRは、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10又はそれ以上の「GAGC」反復配列を含む。ある特定の実施形態では、rAAV2粒子は3つの「GAGC」反復配列を含むITRを含む。ある特定の実施形態では、rAAV2粒子は4つより少ない「GAGC」反復配列を有するITRを含む。ある特定の実施形態では、rAAV2粒子は、4つより多い「GAGC」反復配列を有するITRを含む。ある特定の実施形態では、rAAV2粒子のITRは、最初の2つの「GAGC」反復配列の4番目のヌクレオチドがTではなくCであるRep結合部位を含む。
【0109】
[0133]rAAV粒子へのパッケージング/カプセル化のためのrAAVベクターに組み込まれ得るDNAの例示的な好適な長さは、約5キロベース(kb)又はそれ以下であり得る。特定の実施形態では、DNAの長さは約5kbより小さい、約4.5kbより小さい、約4kbより小さい、約3.5kbより小さい、約3kbより小さい、又は約2.5kbより小さい。
【0110】
[0134]ポリペプチドの発現を導くポリヌクレオチドを含む組換えAAVベクターは、当技術分野で公知の好適な組換え技術を使用して生成され得る(例えば、Sambrookら、1989年参照)。組換えAAVベクターは、典型的には、形質導入可能なAAV粒子にパッケージングされ、AAVウイルスパッケージングシステムを使用して増殖する。形質導入可能なAAV粒子は、哺乳動物細胞に結合及び侵入し、続いて核酸積荷(例えば、異種遺伝子)を細胞の核に送達することができる。したがって、形質導入可能な完全なrAAV粒子を構成し、哺乳動物細胞に形質導入する。哺乳動物細胞に形質導入するように構成されたrAAV粒子は、複製可能ではないことが多く、自己複製のためにはさらなるタンパク質機構が必要である。したがって、哺乳動物細胞に形質導入するように構成されるrAAV粒子は、哺乳動物細胞に結合及び侵入し、細胞に核酸を送達するように工学的に操作され、送達のための核酸はrAAVゲノムの一対のAAV ITRの間に位置することが多い。
【0111】
[0135]形質導入可能なAAV粒子を産生するための好適な宿主細胞としては、限定はされないが、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞が挙げられ、異種rAAVベクターの受容体として使用され得る、又は使用されている。安定なヒト細胞株由来の細胞、HEK293(例えば、アメリカ培養細胞系統保存機関から受託番号ATCC CRL1573で容易に入手可能)が使用され得る。ある特定の実施形態では、アデノウイルス5型のDNA断片によって形質転換され、アデノウイルスE1a及びE1b遺伝子を発現する、改変ヒト胚腎臓細胞株(例えば、HEK293)が使用され、組換えAAV粒子が生成される。改変HEK293細胞株は、容易にトランスフェクトされ、rAAV粒子を産生する特に便利なプラットフォームを提供する。哺乳動物細胞に形質導入することができる高力価のAAV粒子を生成する方法は、当技術分野で公知である。例えば、AAV粒子はWright、2008年及びWright、2009年に示されるように製造され得る。
【0112】
[0136]ある特定の実施形態では、AAV発現ベクターのトランスフェクションより前、又はそれと同時にAAVヘルパー構築物を宿主細胞にトランスフェクトすることによって宿主細胞にAAVのヘルパー機能が導入される。したがって、AAVヘルパー構築物が時々使用され、AAV rep及び/又はcap遺伝子の少なくとも一過的な発現を提供し、生産的なAAVの形質導入に必要なAAV機能の欠如を補足する。AAVヘルパー構築物は、AAV ITRを欠くことが多く、それ自体では複製もパッケージングもできない。これらの構築物は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス、又はビリオンの形態であってもよい。RepとCap両方の発現産物をコードする一般的に使用されるプラスミドpAAV/Ad及びpIM29+45などのいくつかのAAVヘルパー構築物が記載されている。Rep及び/又はCapの発現産物をコードするいくつかの他のベクターが公知である。
【0113】
[0137]本明細書で使用される「導入遺伝子」は、細胞又は生物に導入しようとする又は導入されている核酸/ポリヌクレオチドを便利に指す。導入遺伝子は、ポリペプチド又はタンパク質(例えばSGSH)をコードする遺伝子などの任意の核酸を含み、一般には天然に生じるAAVゲノム配列に関して異種性である。
【0114】
[0138]用語「形質導入する」は、ベクター(例えばAAV粒子)による細胞又は宿主生物への核酸の導入を指す。したがって、rAAV粒子による細胞へのSGSH導入遺伝子の導入は、細胞の「形質導入」と呼ばれ得る。導入遺伝子は形質導入細胞のゲノム核酸に組み込まれても組み込まれなくてもよい。導入した導入遺伝子が受容細胞又は生物の核酸(ゲノムDNA)に組み込まれる場合、導入遺伝子はその細胞又は生物で安定に維持され、受容細胞又は生物の子孫細胞又は子孫生物にさらに受け継がれる又は遺伝する。最終的に、導入した導入遺伝子は受容細胞又は宿主生物に、染色体外に、又は一過性にのみ存在し得る。したがって、「形質導入細胞」は、形質導入によって導入遺伝子が導入されている細胞である。したがって、「形質導入した」細胞は、導入遺伝子が導入されている細胞又はその子孫である。形質導入細胞は増殖することができ、導入遺伝子が転写され、コードタンパク質が発現される。遺伝子治療用の使用及び方法のため、形質導入細胞は哺乳動物由来であり得る。
【0115】
[0139]非形質導入細胞は、AAVベクターが導入されていないものを指す。形質導入細胞によるSGSH分泌は、非形質導入細胞によって取り込まれ、それらの細胞に利点をもたらし得る。したがって、形質導入細胞によるSGSH分泌及びその後の脳脊髄液又は血管系によるCNSの他の領域への送達(分布)は、今度は非形質導入細胞によって取り込まれるSGSHを提供できる。
【0116】
[0140]本明細書で使用する場合、用語、スルファミダーゼ(SGSH)タンパク質又はポリペプチドは、バリアント、例えば1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、及び/又は付加/挿入を有するSGSHを含む。特定の実施形態では、SGSHバリアントは、1つ又は複数の置換、欠失、及び/又は付加/挿入を有する配列番号1である。さらに特定の実施形態では、SGSHバリアントは、1~5個のアミノ酸置換を有する配列番号1である。より特定の実施形態では、SGSHバリアントは、264位にアミノ酸置換、例えばアスパラギン(N)からグルタミン(Q)への置換を有する配列番号1である。
【0117】
[0141]SGSH活性を有するSGSHポリペプチドは、好適なアッセイを使用して、配列番号1のヒト野生型SGSHの活性又は機能の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、若しくは約100%、又はそれ以上を示すSGSHタンパク質又はそのバリアントを指す。ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは、配列番号1のヒトSGSHの分泌よりも形質導入細胞からの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は約100%高い分泌を示すSGSHタンパク質を指す。ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは、配列番号1のヒトSGSHの取り込みよりも細胞による少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は約100%高い取り込みを示すSGSHタンパク質を指す。
【0118】
[0142]SGSHは、少なくとも部分的な若しくは全ての、又はより高いSGSH活性を保持するSGSHポリペプチドのバリアント形態を含み得る。SGSH及びそのバリアントは、任意の好適な生物から(例えば、哺乳動物から、ヒトから、非ヒト哺乳動物から、例えば、イヌ、ブタ、ウシなどから)得ることができる。ある特定の実施形態では、SGSHバリアントは、配列番号1に示されるSGSHタンパク質と少なくとも60%同一性、少なくとも70%同一性、少なくとも75%同一性、少なくとも80%同一性、少なくとも85%同一性、少なくとも90%同一性、少なくとも95%同一性、少なくとも96%同一性、少なくとも97%同一性、少なくとも98%同一性、又は99%同一性を有する。
【0119】
[0143]ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、AAVカプシドタンパク質及びSGSHをコードする導入遺伝子/核酸を含む。ある特定の実施形態では、rAAV粒子はAAVカプシドタンパク質並びにSGSHポリペプチドの発現及び/又は分泌を導く核酸を含む。代表的なヒトSGSHアミノ酸配列を配列番号1に示す。
【0120】
[0144]ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、AAVカプシドタンパク質及びSGSHポリペプチドをコードする導入遺伝子/核酸を含む。ある特定の実施形態では、rAAV粒子は、AAVカプシドタンパク質並びにSGSHポリペプチドの発現及び/又は分泌を導く導入遺伝子/核酸を含む。ある特定の実施形態では、投与される核酸はSGSHをコードする。ある特定の実施形態では、SGSHポリペプチドは、配列番号1に示されるタンパク質と少なくとも60%同一性、少なくとも70%同一性、少なくとも75%同一性、少なくとも80%同一性、少なくとも85%同一性、少なくとも90%同一性、少なくとも95%同一性、少なくとも96%同一性、少なくとも97%同一性、少なくとも98%同一性、又は99%同一性を有する。
【0121】
[0145]ある特定の実施形態では、方法又は使用は、rAAV-SGSH粒子を哺乳動物に投与又は送達するステップ、及び任意選択で1つ又は複数の免疫抑制剤を哺乳動物に投与するステップを含む。ある特定の実施形態では、方法又は使用は、rAAV-SGSH粒子を哺乳動物に投与又は送達するステップ、及び任意選択で2、3、4つ又はそれ以上の免疫抑制剤を哺乳動物に投与するステップを含む。
【0122】
[0146]ある特定の実施形態では、免疫抑制剤は抗炎症剤である。ある特定の実施形態では、免疫抑制剤はミコフェノール酸、又はその誘導体である。そのようなミコフェノール酸誘導体の例は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)である。ある特定の実施形態では、免疫抑制剤はシクロスポリン、又はその誘導体である。
【0123】
[0147]ある特定の実施形態では、免疫抑制剤は、哺乳動物へのrAAV-SGSH粒子の投与前、投与中、及び/又は投与後に投与される。ある特定の実施形態では、免疫抑制剤は、哺乳動物へのrAAV-SGSH粒子の投与と同時に投与される。ある特定の実施形態では、免疫抑制剤は、哺乳動物へのrAAV-SGSH粒子の投与後に投与される。
【0124】
[0148]rAAV粒子及び/又は免疫抑制剤は、特定の投与経路に好適な任意の好適な配合で製剤化され得る。様々な薬学的に許容される製剤が市販されており、医師によって入手可能である。
【0125】
[0149]rAAV粒子は任意の好適な経路により投与され得る。ある特定の実施形態では、方法又は使用は、rAAV-SGSH粒子を哺乳動物の中枢神経系(CNS)に投与するステップを含む。ある特定の実施形態では、中枢神経系は、脳、脊髄、及び脳脊髄液(CSF)を含む。ある特定の実施形態では、方法又は使用は、rAAV-SGSH粒子を哺乳動物の脳又は脊髄又はCSFに投与するステップを含む。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は脳又は脊髄の一部に投与される。
【0126】
[0150]ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、脳実質組織、クモ膜下腔、及び/又は髄腔内に投与される。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、前記哺乳動物の大槽、脳室内腔、脳室、クモ膜下腔、及び/又は脳室上皮のうちの1つ又は複数に投与される。
【0127】
[0151]さらなる実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、脳室系に投与される。さらに別の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、1つ又は複数の吻側側脳室;及び/又は尾側側脳室;及び/又は右側脳室;及び/又は左側脳室;及び/又は右吻側側脳室;及び/又は左吻側側脳室;及び/又は右尾側側脳室;及び/又は左尾側側脳室に投与される。
【0128】
[0152]ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、例えば細胞をrAAV-SGSH粒子と接触させることによって、哺乳動物のCSFに接触する1つ又は複数の細胞に投与される。CSFに接触する細胞の非限定的な例としては、脳室上皮細胞、軟膜の細胞、内皮細胞、及び/又は髄膜細胞が挙げられる。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は脳室上皮細胞に投与される。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、例えば脳室上皮細胞をrAAV-SGSH粒子と接触させることによって、脳室上皮細胞に送達される。
【0129】
[0153]ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は局所的に投与/送達される。「局所送達」は、哺乳動物内の標的部位への直接的な送達を指す(例えば、組織又は体液に直接的に)。例えば、rAAV-SGSH粒子は、器官、組織又は具体的な解剖学的な場所へ直接注射によって局所的に送達され得る。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は脳、脊髄、又はその組織若しくは体液へ直接注射によって送達又は投与される(例えば脳室上皮細胞、軟膜の細胞、内皮細胞、及び/又は髄膜細胞などのCSF)。例えば、rAAV-SGSH粒子は、直接注射によって、CSF、大槽、脳室内腔、脳室、クモ膜下腔、及び/又は髄腔内;及び/又は脳室上皮;及び/又は吻側側脳室;及び/又は尾側側脳室;及び/又は右側脳室;及び/又は左側脳室;及び/又は右吻側側脳室;及び/又は左吻側側脳室;及び/又は右尾側側脳室;及び/又は左尾側側脳室に直接送達され得る。
【0130】
[0154]ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、脳又は脊髄の組織若しくは体液への直接注射によって、脳又は脊髄の組織、体液若しくは細胞に送達される。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、定位的注射によって脳又は脊髄の組織若しくは体液に送達される。
【0131】
[0155]ある特定の実施形態では、1つ又は複数のrAAV-SGSH粒子は、脳、脊髄、若しくはその部分、又はその組織若しくは体液(例えば脳室上皮細胞などのCSF)への直接注入により送達又は投与される。特定の態様では、rAAV-SGSH粒子は、脳室上皮細胞、軟膜の細胞、内皮細胞、及び/又は髄膜細胞に形質導入する。
【0132】
[0156]ある特定の実施形態では、方法又は使用は、rAAV粒子を構成して哺乳動物の脳又は脊髄細胞に形質導入し、哺乳動物の脳又は脊髄においてSGSH活性を有するポリペプチドの発現を導く、rAAV粒子を哺乳動物の脳又は脊髄、若しくはその一部に投与するステップを含む。ある特定の実施形態では、SGSHが投与部位に遠位の中枢神経組織(例えば脳、例えば線条体、視床、髄質、小脳、後頭皮質、前頭前野皮質)において発現及び/又は検出される。ある特定の実施形態では、SGSHは、中枢神経組織(例えば脳、例えば線条体、視床、髄質、小脳、後頭皮質、及び/又は前頭前野皮質)に広く存在し又は検出され、投与部位から離れた及び任意選択で、他の(例えば非形質導入)細胞によって取り込まれる中枢神経組織(例えば脳、例えば線条体、視床、髄質、小脳、後頭皮質、及び/又は前頭前野皮質)に渡る分布を示している。
【0133】
[0157]有効量のrAAV粒子、例えばrAAV-SGSH粒子は、経験的に決定され得る。投与は、1つ又は複数の用量で、処置の過程に渡って連続的又は断続的に行われ得る。有効な用量の投与は、当業者によって決定され得、AAV血清型、ウイルス力価、及び処置される哺乳動物の体重、状態及び種によって異なり得る。単回及び多回投与(例えば1~5回又はそれ以上)が、処置する医師によって選択される用量レベル、標的、及びタイミングで行われ得る。例えば、十分な酵素活性を維持するために必要な場合、多回用量が投与され得る。
【0134】
[0158]ある特定の実施形態では、複数のrAAV-SGSH粒子が投与される。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、約1~約5ml中約1×105~約1×1018vg/mlの用量で;1×107~約1×1016vg/mlの約1~約3mlの用量で;又は1×108~約1×1015vg/mlの約1~約2mlの用量で投与される。ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、処置される哺乳動物の体重あたり約1×108~約1×1015vg/kgの用量で投与される。
【0135】
[0159]ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、約1×106~約1×1018vg/kgの用量で投与される。例えば、rAAV-SGSH粒子は、1×107~1×1016vg/mlの約0.1~5ml、1×105~1×1016vg/mlの約0.5~5ml、1×105~1×1016vg/mlの約1~5ml、1×107~1×1014vg/mlの約1~3mlの用量で、又は1×108~1×1013vg/mlの約1~2mlの用量で投与され得る。
【0136】
[0160]ある特定の実施形態では、rAAV-SGSH粒子は、処置される哺乳動物の体重あたり約1×108vg/kg、約5×108vg/kg、約1×109vg/kg、約5×109vg/kg、約1×1010vg/kg、約5×1010vg/kg、約1×1011vg/kg、約5×1011vg/kg、約1×1012vg/kg、約5×1012vg/kg、約1×1013vg/kg、約5×1013vg/kg、約1×1014vg/kg、約5×1014vg/kg、又は約1×1015vg/kgの用量で投与される。
【0137】
[0161]本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される」又は「生理学的に許容される」は、投与、in vivo送達又は接触のうちの1つ又は複数の経路に好適である、生物学的に許容される組成物、製剤、液体若しくは固体、又はそれらの混合物を意味する。「薬学的に許容される」又は「生理学的に許容される」組成物は、生物学的に又はその他の点で望ましくない材料ではなく、例えば、材料は実質的に望ましくない生物学的な効果を起こさずに対象に投与され得る。そのような組成物、「薬学的に許容される」及び「生理学的に許容される」製剤並びに組成物は無菌であり得る。そのような医薬製剤及び組成物は、例えば、rAAV-SGSH粒子を対象に投与するステップに使用され得る。
【0138】
[0162]そのような製剤及び組成物としては、溶剤(水性又は非水性)、溶液剤(水性又は非水性)、エマルション(例えば水中油型又は油中水型)、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、分散及び懸濁培地、コーティング剤、等張及び吸収促進剤又は遅延剤が挙げられ、薬学的な投与又はin vivo接触若しくは送達に適応する。水性及び非水性溶剤、溶液剤、及び懸濁剤としては、懸濁化剤及び増粘剤が挙げられ得る。補足的な活性化合物(例えば、保存剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、及び抗真菌剤)も、製剤及び組成物に組み込まれ得る。
【0139】
[0163]医薬組成物は、典型的には薬学的に許容される賦形剤を含有する。そのような賦形剤は、組成物を受ける個人に有害な抗体の産生をそれ自体では誘導しない任意の医薬剤を含み、過度の毒性なく投与され得る。薬学的に許容される賦形剤としては、限定はされないが、ソルビトール、Tween80、並びに水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体が挙げられる。例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;及び酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩など、薬学的に許容される塩が含まれ得る。さらに、界面活性剤、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質がそのようなビヒクルに存在し得る。
【0140】
[0164]医薬組成物は、本明細書に示されるように、又は当業者に公知のように、特定の投与又は送達の経路に適応するように製剤化され得る。したがって、医薬組成物は、様々な経路による投与又は送達に好適な担体、希釈剤、又は賦形剤を含む。
【0141】
[0165]rAAV-SGSH粒子などのrAAV粒子の注射又は注入に好適な医薬剤形は、無菌注射可能若しくは注入可能な溶液又は分散液の即時調製に適し、任意選択でリポソームにカプセル化される無菌水溶液又は分散液を含み得る。全ての場合において、最終形態は無菌液体であり、製造、使用、及び保存の条件下で安定であるべきである。液体担体又はビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル、及びそれらの好適な混合物を含む溶媒又は液体分散培地であり得る。例えば、リポソームの形成によって、分散剤の場合に必要な粒径の維持によって、又は界面活性剤の使用によって適当な流動性が維持され得る。等張剤、例えば糖、緩衝剤又は塩(例えば塩化ナトリウム)が含まれ得る。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延する薬剤の組成物、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンでの使用によってもたらされ得る。
【0142】
[0166]rAAV-SGSH粒子の溶液又は懸濁液は、以下の構成成分のうちの1つ又は複数を任意選択で含み得る;注射用水などの無菌希釈液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの生理食塩水溶液、人工的なCSF、界面活性剤、固定油、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、グリセリン、又は他の合成溶媒;パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸などの抗菌剤及び抗真菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸、クエン酸、又はリン酸などの緩衝剤並びに塩化ナトリウム又はデキストロースなどの浸透圧の調整剤。
【0143】
[0167]本発明の組成物、方法及び使用に適切な医薬製剤、組成物及び送達系は、当技術分野で公知である(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2003年)20版、Mack Publishing Co.、Easton、PA;Remington’s Parmaceutical Sciences(1990年)18版、Merck Publishing Co.、Easton、PA;The Merck Index(1996年)12版、Mack Publishing Group、Whitehouse、NJ;Parmaceutical Principles of Solid Dosage Forms(1993年)、Technonic Publishing Co., Inc.、Lancaster、Pa.;Ansel and Stoklosa、Pharmaceutical Calculations(2001年)11版、Lippincott Williams & Wilkins、Baltimore、MD;及びPoznanskyら、Drug Delivery Systems(1980年)、R.L.Juliano編、Oxford、N.Y.、253~315頁参照)。
【0144】
[0168]rAAV-SGSH粒子などのrAAV粒子、及びそれらの組成物は、容易な投与及び均一な投与量のために単位剤形に製剤化され得る。本明細書で使用する場合、単位剤形は、処置される個体のための均一の投与量として適した物理的に別個の単位を指す;必要な医薬担体と関連して所望の治療効果をもたらすように算出された既定量の活性化合物を含有する各単位。単位剤形は、所望の効果(複数可)をもたらすのに必要だと考えられるrAAV粒子(例えば、rAAV-SGSH粒子)の量による。必要な量は、単回用量で製剤化され得、又は多回投与量単位で製剤化され得る。用量は好適なrAAV粒子濃度に調整され、任意選択で抗炎症剤と組み合わされ、使用のためにパッケージングされ得る。
【0145】
[0169]一実施形態では、医薬組成物は十分な遺伝物質(rAAV粒子)を含み、治療有効量、すなわち問題の疾患状態の症状若しくは有害作用を低減若しくは改善するのに十分な量又は所望の利点を与えるのに十分な量を提供する。
【0146】
[0170]本明細書で使用する場合、「単位剤形」は、処置される対象のための均一の投与量として適した物理的に別個な単位を指す;任意選択で、1つ又は複数の用量で投与される場合、所望の効果(例えば予防又は治療効果)をもたらすように算出される医薬担体(賦形剤、希釈剤、ビヒクル又は充填剤)と関連して、既定量を含有する各単位。単位剤形は、例えば、アンプル及びバイアル内であり、液体組成物、又はフリーズドライ若しくは凍結乾燥状態の組成物;例えば、in vivoでの投与又は送達の前に添加され得る無菌液体担体を含み得る。個々の単位剤形は、複数用量キット又は容器に含まれ得る。したがって、例えば、rAAV-SGSH粒子、及びその医薬組成物は、容易な投与及び均一な投与量のため、単一又は複数の単位剤形にパッケージングされ得る。
【0147】
[0171]rAAV-SGSH粒子を含有する製剤は、典型的には、有効量を含有し、有効量は当業者によって容易に決定される。rAAV-SGSH粒子は、典型的には、約1%~約95%(w/w)の範囲の組成物であり、好適であればより高くもあり得る。投与される量は、処置を検討される哺乳動物又はヒト対象の年齢、体重及び健康状態などの因子による。用量応答曲線を確立する日常の試験を通して、有効投与量は当業者によって確立され得る。
【0148】
[0172]ある特定の実施形態では、方法は、本明細書に示されるように複数のrAAV-SGSH粒子を哺乳動物に投与するステップを含み、SGSHの発現又は機能の欠乏又は欠損(例えばMPSIIIA)の1つ又は複数の症状の重症度、頻度、進行度、又は発症時間が減少、低減、予防、阻害、又は遅延される。ある特定の実施形態では、方法は、哺乳動物に複数のrAAV-SGSH粒子を投与し、MPIIIAの症状又は有害作用を処置するステップを含む。ある特定の実施形態では、方法は、哺乳動物に複数のrAAV-SGSH粒子を投与し、MPSIIIAの症状又は有害作用を安定化、悪化、すなわち進行を遅延若しくは防止する、又は好転させるステップを含む。
【0149】
[0173]ある特定の実施形態では、方法は、本明細書に示されるように複数のrAAV-SGSH粒子を哺乳動物の中枢神経系、又はその部分に投与するステップを含み、SGSHの発現又は機能の欠乏又は欠損(例えばMPSIIIA)の1つ又は複数の症状の重症度、頻度、進行度、又は発症時間が減少、低減、予防、阻害、又は少なくとも約5~約10、約10~約25、約25~約50、若しくは約50~約100日間遅延される。
【0150】
[0174]ある特定の実施形態では、症状又は有害作用は初期若しくは後期の症状;行動、人格、若しくは言語症状;睡眠障害;及び/又は認知症状を含む。
【0151】
[0175]本明細書の方法及び使用によって処置可能なMPSIIIAの初期の症状/有害作用の例は、言語障害及び行動問題の進行又は悪化を改善又は減速又は予防することを含む。MPSIIIAの他の症状は、不穏状態、攻撃的若しくは破壊的行動、又は不安の低減又は修正を含む。いくつかの例では、症状は、自閉症スペクトラム障害、社会的相互作用及びコミュニケーションの困難を特徴とする状態を含む。MPSIIIAの他の症状は、睡眠障害を含む。MPSIIIAが進行すると、さらなる症状は、知的能力及び/又は発達の阻害、喪失又は悪化、並びに発達退行又は以前に習得した技術の喪失を含む。MPSIIIAの後期では、人々は発作及び運動障害を発症し得る。本発明の方法及び使用は、MPSIIIAのいずれかの又は全ての前述の症状を処置若しくは改善、又は重症度若しくは頻度を低減することを目的とするものを含む。
【0152】
[0176]用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」及び「導入遺伝子」は本明細書で交換可能に使用され、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)並びにそれらのポリマーを含む、核酸、オリゴヌクレオチドの全ての形態を指す。ポリヌクレオチドは、ゲノムDNA、cDNA及びアンチセンスDNA、並びにスプライス又は非スプライスmRNA、rRNA、tRNA及び抑制DNA又はRNA(RNAi、例えば小さい若しくは短いヘアピン(sh)RNA、マイクロRNA(miRNA)、小さい若しくは短い干渉(si)RNA、トランススプライシングRNA、又はアンチセンスRNA)を含む。ポリヌクレオチドは、天然に生じる、合成、及び意図的に改変又は変更されたポリヌクレオチド(例えば、バリアント核酸)を含み得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、又は三本鎖、線状又は環状であってもよく、任意の好適な長さであってもよい。ポリヌクレオチドの議論において、特定のポリヌクレオチドの配列又は構造は、5’から3’方向で配列を提供する決まりに従って本明細書に記載され得る。
【0153】
[0177]ポリペプチドをコードする核酸は、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含むことが多い。他に示さない限り、特定の核酸配列は縮重したコドン置換も含む。
【0154】
[0178]核酸は、オープンリーディングフレームに作動可能に連結した1つ又は複数の発現調節又は制御エレメントを含み得、1つ又は複数の制御エレメントは、哺乳動物細胞においてオープンリーディングフレームによってコードされたポリペプチドの転写及び翻訳を導くように構成される。発現調節/制御エレメントの非限定的な例としては、転写開始配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、TATAボックスなど)、翻訳開始配列、mRNA安定性配列、ポリA配列、分泌配列などが挙げられる。発現調節/制御エレメントは任意の好適な生物のゲノムから得ることができる。
【0155】
[0179]「プロモーター」は、ヌクレオチド配列、通常コード配列の上流(5’)を指し、RNAポリメラーゼの認識及び正確な転写に必要な他の因子を提供することによってコード配列の発現を導く及び/又は調節する。「プロモーター」は、TATAボックス、及び任意選択で転写開始の部位を特定するために働く他の配列から構成される短いDNA配列である最小のプロモーターを含み、発現の調節のために制御エレメントが添加される。
【0156】
[0180]「エンハンサー」は転写活性を刺激し得るDNA配列であり、発現のレベル又は組織特異性を増強するプロモーターの先天的エレメント又は異種エレメントであり得る。いずれの方向(5’->3’又は3’->5’)でも操作することができ、プロモーターの上流又は下流のいずれかに位置する場合であっても機能することが可能であり得る。
【0157】
[0181]プロモーター及び/又はエンハンサーは、その全体が天然の遺伝子から導出する、又は天然で見出された異なるエレメントに由来する異なるエレメントから構成され、又は合成DNAセグメントから構成されもし得る。プロモーター又はエンハンサーは、刺激、生理学的又は発生的条件に応答する転写開始の有効性をモジュレート/調節するタンパク質因子の結合に関与するDNA配列を含み得る。
【0158】
[0182]非限定的な例としては、SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスLTRプロモーター;アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、CMV最初期プロモーター領域(CMVIE)などのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、pol IIプロモーター、pol IIIプロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーターなどが挙げられる。さらに、マウスメタロチオネイン遺伝子などの非ウイルス遺伝子由来の配列も、本明細書での使用が見出される。例示的な構成プロモーターとしては、ある特定の構成又は「ハウスキーピング」機能をコードする以下の遺伝子のプロモーターが挙げられる:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、アデノシンデアミナーゼ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセロールムターゼ、アクチンプロモーター、及び当業者に公知の他の構成プロモーター。さらに、多くのウイルスプロモーターが真核細胞内で構成的に機能する。これらは、他にも多くある中で、SV40の初期及び後期プロモーター;モロニー白血病ウイルス及び他のレトロウイルスの長い末端反復配列(LTR);並びに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターを含む。したがって、上で参照した構成プロモーターのいずれかを使用して、異種遺伝子インサートの転写を調節できる。
【0159】
[0183]誘導性プロモーターの調節下の導入遺伝子は、誘導剤の存在下でのみ又は多くは発現される(例えば、メタロチオネインプロモーターの調節下での転写は、ある特定の金属イオンの存在下で大幅に増加する)。誘導性プロモーターは、それらの誘導因子が結合される場合に転写を刺激する応答エレメント(RE)を含む。例えば、血清因子、ステロイドホルモン、レチノイン酸、及びサイクリックAMPのREがある。特定のREを含有するプロモーターは、誘導応答を得るために選択され得、いくつかの場合では、RE自体が異なるプロモーターに結合し、それにより誘導能を組換え遺伝子に付与することができる。したがって、好適なプロモーターを選択することにより(構成的対誘導性;強い対弱い)、遺伝子改変細胞におけるポリペプチドの発現の存在とレベルの両方を調節することが可能である。ポリペプチドをコードする遺伝子が、誘導性プロモーターの調節下にある場合、in situでのポリペプチドの送達は、in situで遺伝子改変細胞をポリペプチドの転写が可能な条件に曝露することによって、例えば、薬剤の転写を調節する誘導性プロモーターの特異的な誘導物質の腹腔内注射によって引き起こされる。例えば、メタロチオネインプロモーターの調節下で遺伝子によってコードされたポリペプチドの遺伝子改変細胞によるin situ発現は、遺伝子改変細胞をin situで適切な(すなわち、誘導性)金属イオンを含有する溶液と接触させることによって増強される。
【0160】
[0184]核酸/導入遺伝子は、別の核酸配列と機能性の関係に置かれた場合、「作動可能に連結される」。ポリペプチドをコードする核酸/導入遺伝子、又はSGSHポリペプチドの発現を導く核酸(例えばSGSH活性を有するポリペプチド)は、コードされたポリペプチドの転写を調節する誘導性プロモーター又は組織特異的プロモーターを含み得る。
【0161】
[0185]ある特定の実施形態では、CNS特異的又は誘導性プロモーター、エンハンサーなどは、本明細書に記載の方法及び使用に用いられる。CNS特異的プロモーターの非限定的な例としては、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、グリア繊維酸性タンパク質(GFAP)、及びニューロン特異的エノラーゼ(NSE)由来の遺伝子から単離したものが挙げられる。誘導性プロモーターの非限定的な例としては、エクジソン、テトラサイクリン、低酸素及びIFNのDNA応答エレメントが挙げられる。
【0162】
[0186]ある特定の実施形態では、発現調節エレメントはCMVエンハンサーを含む。ある特定の実施形態では、発現調節エレメントはベータアクチンプロモーターを含む。ある特定の実施形態では、発現調節エレメントはチキンベータアクチンプロモーターを含む。ある特定の実施形態では、発現調節エレメントは、CMVエンハンサー及びチキンベータアクチンプロモーターを含む。
【0163】
[0187]本明細書で使用する場合、用語「改変する」又は「バリアント」及びそれらの文法的バリエーションは、核酸、ポリペプチド、又はそれらのサブ配列が参照配列から外れることを意味する。したがって、改変及びバリアント配列は、参照配列と実質的に同じ、より高い若しくはより低い発現、活性、又は機能を有するが、参照配列の部分的な活性又は機能は少なくとも保持し得る。バリアントの特定の型は、変異タンパク質であり、変異、例えばSGSHのミスセンス又はナンセンス変異を有する遺伝子によってコードされたタンパク質を指す。
【0164】
[0188]「核酸」又は「ポリヌクレオチド」バリアントは、野生型と比較して遺伝的に変更された改変配列を指す。配列は、コードされたタンパク質配列を変更することなく遺伝的に改変され得る。或いは、配列はバリアントタンパク質、例えばバリアントSGSHタンパク質をコードするように遺伝的に改変され得る。核酸又はポリヌクレオチドバリアントは、野生型タンパク質配列などの参照配列と少なくとも部分的な配列同一性を依然として保持するタンパク質をコードするようにコドン改変された、及びバリアントタンパク質をコードするようにコドン改変された組合せ配列も指すことができる。例えば、そのような核酸バリアントのいくつかのコドンは、それらによってコードされるSGSHタンパク質のアミノ酸を変更することなく変えられ、核酸バリアントのいくつかのコドンは、今度はそれらによってコードされるSGSHタンパク質のアミノ酸を変えて変えられる。
【0165】
[0189]用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、本明細書において交換可能に使用される。本明細書に開示される「核酸」又は「ポリヌクレオチド」又は「導入遺伝子」によってコードされる「ポリペプチド」は、ポリペプチドがある程度のSGSH活性を保持する限り、天然に生じる野生型及びその機能性多型タンパク質、機能性サブ配列(断片)、並びにその配列バリアントと同様に、部分又は全長の天然のSGSH配列を含む。したがって、本発明の方法及び使用において、核酸配列によってコードされたそのようなポリペプチドは、欠陥があり、又はその活性、機能、若しくは発現が不十分であり、処置した哺乳動物で欠損又は不在の内在性SGSHタンパク質と同一である必要はない。
【0166】
[0190]改変の非限定的な例としては、1つ又は複数のヌクレオチド又はアミノ酸置換が挙げられる(例えば、約1~約3、約3~約5、約5~約10、約10~約15、約15~約20、約20~約25、約25~約30、約30~約40、約40~約50、約50~約100、約100~約150、約150~約200、約200~約250、約250~約500、約500~約750、約750~約1000又はそれ以上のヌクレオチド又は残基)。
【0167】
[0191]アミノ酸改変の例は、保存的なアミノ酸置換又は欠失である。特定の実施形態では、改変又はバリアント配列(例えばSGSH)は、非改変配列(例えば野生型SGSH)の少なくとも一部の機能又は活性を保持する。さらに特定の実施形態では、改変又はバリアント配列(例えばSGSH)は、非改変配列(例えば野生型SGSH)と比較して、細胞による分泌の改善を示す。さらに別の特定の実施形態では、改変又はバリアント配列(例えばSGSH)は、非改変配列(例えば野生型SGSH)の取り込みと比較して、細胞による取り込みの改善を示す。
【0168】
[0192]アミノ酸改変の別の例は、AAV粒子のカプシドタンパク質に導入される標的化ペプチドである。rAAVベクターを、血管内皮細胞など、中枢神経系に標的化するペプチドが同定されている。したがって、例えば、脳の血管に沿う内皮細胞は、改変されたrAAV粒子によって標的化され得る。そのようなペプチドを含むように改変されたカプシドタンパク質を有するrAAV-SGSH粒子は、本明細書に示されるようにSGSHを中枢神経系(例えば、脳、脊髄等)に導入するために使用され得る。
【0169】
[0193]そのように改変されたrAAVは、別の型の組織(例えば肝臓組織)よりも1つの型の組織(例えばCNS組織)に優先的に結合できる。ある特定の実施形態では、改変カプシドタンパク質を有するrAAVは、相当する非改変カプシドタンパク質よりも高いレベルで結合することによって脳血管内皮組織を「標的化」し得る。例えば、改変カプシドタンパク質を有するrAAVは、非改変rAAVよりも50%~100%高いレベルで脳血管内皮組織に結合し得る。
【0170】
[0194]「核酸断片」は、所与の核酸分子の一部分である。大多数の生物のデオキシリボ核酸(DNA)は遺伝物質であるが、リボ核酸(RNA)はDNAに含有される情報のタンパク質への移行に関与する。開示されたヌクレオチド配列及びそれらにコードされるタンパク質又は部分長のタンパク質の断片及びバリアントも本発明に包含される。「断片」又は「部分」は、ポリペプチド若しくはタンパク質をコードするヌクレオチド配列、又はポリペプチド若しくはタンパク質のアミノ酸配列の全長又は全長未満を意味する。ある特定の実施形態では、断片又は部分は生物学的に機能性である(すなわち、野生型SGSHの活性又は機能の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%を保持する)。
【0171】
[0195]分子の「バリアント」は、天然の分子の配列と実質的に類似の配列である。ヌクレオチド配列に関して、バリアントは、遺伝コードの縮重のため、天然のタンパク質の同一のアミノ酸配列をコードするそれらの配列を含む。これらのような天然に生じる対立遺伝子バリアントは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びハイブリダイゼーション技術のように、分子生物学的技術を使用して同定され得る。バリアントヌクレオチド配列は、例えば、部位特異的変異誘発を使用して生成された天然のタンパク質をコードするもの、並びにアミノ酸置換を有するポリペプチドをコードするものなど、合成的に導出されたヌクレオチド配列も含む。通常、本発明のヌクレオチド配列バリアントは、天然の(内在性の)ヌクレオチド配列と少なくとも40%、50%、60%、~70%、例えば71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、~79%、通常少なくとも80%、例えば81%~84%、少なくとも85%、例えば86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、~98%の配列同一性を有する。ある特定の実施形態では、バリアントは生物学的に機能性である(すなわち、野生型SGSHの活性又は機能の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%を保持する)。
【0172】
[0196]特定の核酸配列の「保存バリエーション」は、同一又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードするそれらの核酸配列を指す。遺伝コードの縮重のため、多くの機能的に同一の核酸が任意の所与のポリペプチドをコードする。例えば、コドンCGT、CGC、CGA、CGG、AGA及びAGGは全て、アミノ酸アルギニンをコードする。したがって、アルギニンがコドンによって特定される全ての位置で、コドンは、コードされるタンパク質を変更することなく記載した相当するコドンのいずれかに変更され得る。そのような核酸バリエーションは、「保存的に改変されたバリエーション」の一種である「サイレントバリエーション」である。ポリペプチドをコードする本明細書に記載の全ての核酸配列は、特に記載する場合以外は、全ての可能なサイレントバリエーションも記載する。当業者は、核酸の各コドンは(通常メチオニンの唯一のコドンであるATGは除く)、標準的な技術によって機能的に同一の分子を産生するように改変され得ることを理解するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各「サイレントバリエーション」は、各記載の配列に潜在している。
【0173】
[0197]ポリヌクレオチド配列の用語「実質的同一性」は、ポリヌクレオチドが、標準的なパラメーターを使用して記載したアライメントプログラムの1つを使用して参照配列と比較して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、若しくは79%、又は少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、若しくは89%、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、若しくは94%、又は少なくとも95%、96%、97%、98%、若しくは99%配列同一性を有する配列を含むことを意味する。当業者は、これらの値が、適切に調整され、コドンの縮重、アミノ酸類似性、リーディングフレーム位置などを考慮に入れて、2つのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質の相当する同一性を決定し得ることを理解するであろう。これらの目的のためのアミノ酸配列の実質的同一性は通常、少なくとも70%、少なくとも80%、90%、又は少なくとも95%の配列同一性を意味する。
【0174】
[0198]ポリペプチドの文脈において、用語「実質的同一性」は、ポリペプチドが、特定の比較ウインドウで参照配列と少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、若しくは79%、又は80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、若しくは89%、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、若しくは94%、又は95%、96%、97%、98%、若しくは99%の、配列同一性を有する配列を含むことを示す。2つのポリペプチド配列が実質的に同一であるという指標は、1つのポリペプチドが第2のポリペプチドに対して生じる抗体と免疫学的に反応性であることである。したがって、例えば、2つのペプチドが保存的な置換によってのみ異なる場合、ポリペプチドは第2のポリペプチドと実質的に同一である。
【0175】
[0199]本発明は、パッケージング材料及び1つ又は複数の構成要素を含むキットを提供する。キットは、典型的には、構成要素の記載又は構成要素のin vitro,in vivo,若しくはex vivoでの使用の説明書を含む、ラベル又は添付文書を含む。キットは、そのような構成要素のコレクション、例えば、核酸、組換えベクター、rAAV-SGSH粒子、及び任意選択で第2の活性な、例えば別の化合物、薬剤、薬物又は組成物を含有し得る。
【0176】
[0200]キットは、キットの1つ又は複数の構成要素を収容する物理的構造を指す。パッケージング材料は構成要素を無菌的に維持でき、そのような目的のために一般的に使用される材料で製造され得る(例えば、紙、波形繊維、ガラス、プラスチック、ホイル、アンプル、バイアル、チューブ等)。
【0177】
[0201]ラベル又は添付文書は、1つ又は複数の構成要素、用量、作用機序、薬物動態及び薬力学を含む活性成分(複数可)の臨床薬理学を同定する情報を含み得る。ラベル又は添付文書は、製造会社、ロット番号、製造場所及び日付、使用期限を同定する情報を含み得る。ラベル又は添付文書は、製造会社情報、ロット番号、製造場所及び日付を同定する情報を含み得る。ラベル又は添付文書は、キットの構成要素が使用され得る疾患の情報を含み得る。ラベル又は添付文書は、方法、使用、又は処置プロトコール若しくは治療レジメンにおける、キット構成要素の1つ又は複数を使用するための医師又は対象への説明書を含み得る。説明書は、投与量、頻度又は期間、及び本明細書に記載の方法、使用、処置プロトコール又は予防若しくは治療レジメンのいずれかを実施するための説明書を含み得る。
【0178】
[0202]ラベル又は添付文書は、予防又は治療効果など、構成要素が提供し得る任意の利点についての情報を含み得る。ラベル又は添付文書は、特定の組成物を使用することが適切ではないであろう場面に関して、対象又は医師に警告するなど、有害な副作用の可能性、合併症又は反応についての情報を含み得る。有害な副作用又は合併症は、対象が組成物と配合禁忌であり得る1つ又は複数の他の医薬品を摂取していた、摂取することになっている、若しくは現在摂取している、又は対象が組成物と配合禁忌であろう別の処置プロトコール若しくは治療レジメンを受けていた、受けることになっている、若しくは現在受けている場合にも生じ、したがって、説明書はそのような配合禁忌に関する情報を含み得る。
【0179】
[0203]ラベル又は添付文書は、例えば、紙若しくはボール紙、又は構成要素、キット、若しくは梱包材(例えば箱)と別に若しくはそれに添付される、又はキットの構成要素を含有するアンプル、チューブ、若しくはバイアルに添付される「印刷物」を含む。ラベル又は添付文書は、バーコード印刷したラベルなどのコンピュータ読み取り可能な媒体、ディスク、CD-、若しくはDVD-ROM/RAMなどの光ディスク、DVD、MP3、又はRAM及びROMなどの電子保存媒体、又は磁気/光保存媒体、FLASHメモリー、ハイブリッド及びメモリー型カードなどのこれらのハイブリッドをさらに含み得る。
【0180】
[0204]本明細書で使用する用語「約」は、参照値の10%以内(プラス又はマイナス)である値を指す。
【0181】
[0205]用語「処置する」及び「処置」は、治療処置及び予防的又は防止的措置の両方を指し、対象は疾患の発生、進行、又は悪化など、不要な生理学的変化又は障害を予防、阻害、低減又は減少される。本発明の目的のための、有益な又は所望の臨床結果としては、限定はされないが、症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の症状又は有害作用の安定化(すなわち、悪化又は進行なし)、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は寛解、及び鎮静(部分的又は全体的のいずれか)、検出可能か検出可能ではないかが挙げられる。「処置」は、処置を受けない場合に予想される生存と比較して生存を延長することも意味し得る。処置を必要とする対象は、既に状態又は障害にある対象並びに罹患しやすい対象(例えば、遺伝的アッセイによって決定されるように)、例えば喪失若しくは低減したSGSHの発現若しくは機能に関してホモ接合体(Sgsh-/-)である、又は喪失若しくは低減したSGSHの発現若しくは機能に関してヘテロ接合体(Sgsh+/-)であることが同定された対象などを含む。
【0182】
[0206]用語「含む(comprising)」「有する(having)」「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、特に記載しない限り、制約がない用語(すなわち、「含むが限定されない」を意味する)と解釈される。
【0183】
[0207]本明細書に記載の全ての方法及び使用は、本明細書に他に示さない、又は文脈によりはっきりと否定しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。任意の及び全ての例、又は本明細書に記載する例示的な言語(例えば、「など(such as)」又は「例えば(for example)」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図し、他に請求しない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書の言語は、任意の非請求エレメントが本発明の実施に必須であると示していると解釈されるべきではない。
【0184】
[0208]本明細書に開示した全ての特徴は、任意の組合せで組み合わされ得る。本明細書に開示した各特徴は、同じ、等価な、又は類似の目的を果たす代わりの特徴によって置き換えられ得る。したがって、明示的に特に記載しない限り、開示した特徴(例えば、改変核酸、ベクター、プラスミド、組換えベクター(例えばrAAV)配列、ベクターゲノム、又はrAAV粒子)は、等価な又は類似の特徴の種類の例である。
【0185】
[0209]本明細書で使用する場合、形態「1つの(a)」「及び(and)」及び「その(the)」は、文脈が他にはっきりと示さない限り、単数及び複数の参照を含む。したがって、例えば、「核酸(a nucleic acid)」という言及は、複数のそのような核酸を含み、「ベクター(avector)」という言及は複数のそのようなベクターを含み、「ウイルス(a virus)」又は「AAV又はrAAV粒子(AAV or rAAV particle)」という言及は複数のそのようなビリオン/AAV又はrAAV粒子を含む。
【0186】
[0210]本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書で他に示さない限り、範囲内にあるそれぞれ別々の値を個別に指す、簡単な方法として役に立つことを単に意図し、個別に本明細書に引用されたようにそれぞれ別々の値が本明細書に組み込まれる。
【0187】
[0211]したがって、全ての数値又は数値範囲は、文脈が他にはっきりと示さない限り、そのような範囲内の整数及び範囲内の値又は整数の分数を含む。したがって、例示のため、80%又はそれ以上の同一性という言及は、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%等、並びに81.1%、81.2%、81.3%、81.4%、81.5%等、82.1%、82.2%、82.3%、82.4%、82.5%等を含む。
【0188】
[0212]より多い(より大きい)又はより少ないを伴う整数の言及は、それぞれ参照数より多い又はより少ない任意の数を含む。したがって、例えば、100より少ないという言及は、99、98、97等、1番に至るまでの全てを含む;及び10より少ないという言及は、9、8、7等、1番に至るまでの全てを含む。
【0189】
[0213]本明細書で使用する場合、全ての数値又は数値範囲は、文脈が他にはっきりと示さない限り、そのような範囲内の値及び整数の分数、並びにそのような範囲内の整数の分数を含む。したがって、例示のため、1~10などの数値範囲の言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5等を含む。したがって、1~50の範囲という言及は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20等、最大50を含み、並びに1.1、1.2、1.3、1.4、1.5等、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5等を含む。
【0190】
[0214]一連の範囲の言及は、一連の範囲内の異なる範囲の境界の値を合わせる範囲を含む。したがって、例示のため、例えば1~10、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~75、75~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~750、750~1,000、1,000~1,500、1,500~2,000、2,000~2,500、2,500~3,000、3,000~3,500、3,500~4,000、4,000~4,500、4,500~5,000、5,500~6,000、6,000~7,000、7,000~8,000、又は8,000~9,000の一連の範囲の言及は、10~20、10~50、30~50、50~100、100~300、100~1,000、1,000~3,000、2,000~4,000、4,000~6,000等の範囲を含む。
【0191】
[0215]本発明は、通常肯定的な言語を使用して本明細書に開示され、多くの実施形態及び態様を記載する。本発明は、物質若しくは材料、方法ステップ及び条件、プロトコール、又は手順など、全体又は一部で特定の主題が除外される実施形態も特に含む。例えば、本発明のある特定の実施形態又は態様では、材料及び/又は方法ステップが除外される。したがって、本発明は通常、本発明が含まないものに関しては本明細書に示されないが、本発明において明確に除外されない態様は、本明細書に開示される。
【0192】
[0216]本発明のいくつかの実施形態が記載されている。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者は、本発明の様々な変更及び改変を行い、様々な用途及び条件に適用することができる。したがって、以下の実施例は、例示を目的とするが、請求した本発明の範囲を制限しない。
【実施例】
【0193】
実施例1
材料及び方法
リソソーム酵素及び関連バリアント発現ベクターの構築
[0217]ヒトSGSH、TPP1及びβ-glu遺伝子は、ヒトcDNAライブラリーからPCR増幅され、AAV骨格プラスミドにクローニングされた。SGSHバリアントは、オーバーラップPCRによって構築された。
【0194】
リソーム酵素活性アッセイ
[0218]リソソーム酵素活性アッセイは、蛍光基質によって測定された。SGSH活性は、2段階プロトコールによって測定された(例えば、Karpovaら、Journal of Inherited Metabolic Disease 19:278~285頁(1996年)参照)。簡単に言うと、第1のステップは、37℃で17時間、20μlの4-メチルウンベリフェリル(MU)-αGIcNs基質(29mMバルビタール/酢酸緩衝液中5mM、pH6.5)との10μlの試料のインキュベーションを含んだ。第2のステップは、37℃で24時間、10μlのα-グルコシダーゼ(0.2% BSA中10U/ml)との試料のインキュベーションを継続した。反応は、200μlのストップ緩衝液(0.025% Triton X-100を含む500mM炭酸緩衝液、pH10.7)の添加によって終了された。4-MUは標準として使用された。蛍光は励起390nm及び発光460nmで測定された。
【0195】
[0219]TPP1活性は、以前に記載された方法の改変によってアッセイされた(例えば、Tianら、Journal of Biological Chemistry 281:6559~6572頁(2006年);Katz,M.L.ら、Science Translational Medicine 7:313ra180(2015年)参照)。簡単に言うと、10μlの試料は、37℃で、90μlのAla-Ala-Phe7-アミド-4-メチルクマリン基質(150mM NaCl、及び0.1% Triton X-100を含む、100mMクエン酸ナトリウム緩衝液中250μM、pH4.0、Sigma)とインキュベートされた。精製した組換えTPP1が標準として使用された(ニュージャージー州立大学のP.Lobelからのギフト)。プレートは、460nm発光フィルターで読み取られた。
【0196】
[0220]β-glu活性は、基質として4-MU-β-D-グルクロニド(100mM 酢酸緩衝液中10mM、pH4.8、Sgima)とアッセイされた(例えば、Liuら、The Journal of Neuroscience:The Official Journal of the Society for Neuroscience 25:9321~9327頁(2005年)参照)。ストップ緩衝液(0.025% Triton X-100を含む500mM炭酸緩衝液、pH10.7)が添加され、37℃で1時間のインキュベーション後に反応は終了された。4-MUは標準として使用された。蛍光は励起390nm及び発光460nmで測定された。
【0197】
in vitroでのリソソーム酵素分泌研究
[0221]低継代のHEK293細胞は、10% FBSを含むDMEM培地で維持された。トランスフェクションの24時間前、4×104個の細胞が96ウェルプレートの培地100μlに播種された。細胞は、リポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)2000(Invitrogen)を使用して、100ngのプラスミドによってトランスフェクトされた。トランスフェクションの設定時間後(異なる実験に基づき24時間、48時間、又は72時間)、100μlの馴化培地が回収された。細胞は、100μlのライセート緩衝液(コンプリートプロテアーゼインヒビターカクテル、Rocheを含む通常の生理食塩水中0.1% Triton X-100)の添加によって収集された。可溶性のリソソーム酵素は、氷上で2回、2秒間の超音波処理によって細胞から放出された。不溶性の材料は、4℃で15分間、21×103gでの遠心分離によって除去された。馴化培地又は細胞ライセートからの10μlの試料が酵素活性アッセイのために使用された。同じ試料はまた、ウェスタンブロット解析にも使用された。
【0198】
ウェスタンブロット
[0222]細胞ライセート又は培地からの20μlの試料が、4~12% SDS-PAGEゲルにロードされ、0.45μm PVDF膜に移された。一次抗体はマウス抗SGSH 1:2000(Shireからのギフト);二次抗体はHRP標識ヤギ抗マウス、1:20,000(Cell Signaling)。ブロットは、ECL Plus Western Blotting Detection System(GE Healthcare)を使用して現像され、画像のためにフィルムに曝露された。タンパク質定量は、ケミドック(ChemiDoc)(商標)Imaging System(Biorad)を使用して行われた。
【0199】
SGSH酵素取り込み研究
[0223]ヒトMPS IIIA線維芽細胞は、10% FBSを含むDMEM培地で維持された。1×105個の細胞が24ウェルプレートに播種された。24時間後、細胞が90%コンフルエントに達すると、培地は、wtSGSH又はSGSHv4プラスミドによって、及びM6P(最終濃度10mM)の非存在又は存在下でトランスフェクトされたHEK293細胞由来の、100nmol/17時間/mlのSGSH活性を含有する300μlの馴化培地に交換された。6時間のインキュベーション後、馴化培地は除去され、細胞は、Ca2+及びMg2+を含む500μlのHBSSで3回洗浄された。細胞は、活性アッセイ又はウェスタンブロットのために回収及びプロセシングされた。同じ細胞は、免疫組織学のためにもプロセシングされた。
【0200】
免疫蛍光顕微鏡
[0224]細胞は、Ca2+及びMg2+を含む500μlのHBSSで3回洗浄され、室温で10分間、PBS中4%パラホルムアルデヒドで固定され、ブロッキングされ、室温で1時間、透過処理された(PBS中10%ヤギ血清及び0.1% Triton X-100)。細胞は、4℃で終夜、2%ヤギ血清を含有するPBS中マウス抗SGSH一次抗体(1:200)と、次いで室温で1時間、Alexaコンジュゲート二次抗体(Invitrogen) 1:2000とインキュベートされた。細胞は、Fluoeo-Gel封入剤(Electron Microscopy Sciences)によってカバースリップされ、蛍光顕微鏡(Leica Microsystems)によって解析された。
【0201】
動物、AAVベクター投与及び組織収集
[0225]Sgsh遺伝子座に自然発生的な変異を持つB6.Cg-Sgshmps3a/PstJ株のMPS IIIAマウスは、ジャクソン研究所から購入され(例えば、Bhattacharyyaら、Glycobiology 11:99~103頁(2001年);Bhaumikら、Glycobiology 9:1389~1396頁(1999年)参照)、動物施設で維持され、認可されたIACUCプロトコールに従った。wtSGSH又はSGSHv4酵素をコードするAAV4ベクターは、HEK293細胞での三重トランスフェクション及びCsCl精製によって産生された。8週齢のMPS IIIAマウス疾患(Sgsh-/-)又はヘテロ接合体(Sgsh+/-)マウスは、イソフルランによって麻酔された。AAVベクター(5×1010gp)は、側脳室に定位的に注射された(A/P -2.18-mm、M/L -2.9mm、D/V -3.5mm)。マウスは行動試験が完了した後、屠殺された。CSFは、解剖顕微鏡下で大槽を通るガラスキャピラリーによって収集された。CSF収集後、マウスは冷PBSによって灌流され、脳領域が回収された。脳組織は、酵素活性アッセイのために200μlの氷冷ホモジナイゼーション緩衝液(コンプリートプロテアーゼインヒビターカクテル、Rocheを含む通常の生理食塩水中0.1% Triton X-100)中でホモジナイズされた。
【0202】
モリス水迷路
[0226]モリス水迷路は、以前に記載されたように実施された(例えば、Vorhees,C.V.&Williams,M.T. Nature Protocols 1:848~858頁(2006年)参照)。簡単に言うと、直径100cmのプールは3/4まで水で満たされ、酸化チタン(IV)(Sigma)によって濁らせた。プールは、任意に象限に分けられた。透明なプラットフォームは、1つの象限(標的象限と名付けた)において水の表面の0.5cm下に置かれた。マウスは、アクイジションフェーズの5日間調べた。それらは、アクイジションフェーズ中の各日に4回の試験を与えられた。各試験では、マウスは壁に向かって水に放された。それらは、プラットフォームにたどり着くのに60秒かかり、プラットフォームに15秒滞在した。これが達成されなかった場合、それらはプラットフォームに誘導された。各試験において、プラットフォームを見つけ出までのレイテンシーが記録された。プローブ試験は6日目に実施された。プラットフォームは除去され、開始位置は標的の場所と反対の象限であった。試験の長さは60秒であった。標的象限で費やした時間及び移動した距離が記録された。データは、Any-maze行動トラッキングソフトウェア(ANY-maze)によって解析された。
【0203】
実施例2
天然のSGSHは比較的分泌されない
[0227]トリペプチジルペプチダーゼ1(TPP1)及びβ-グルクロニダーゼ(β-glu)によるSGSHの分泌能を比較するため、HEK293細胞は、組換えタンパク質コード配列以外は同一の発現プラスミドによってトランスフェクトされた(
図2)。72時間後、収集した培地及び細胞ライセート中のリソソーム酵素活性が解析された。
図3に示したように、細胞ライセートと比較して20%より少ないSGSH活性が培地中で検出されたが、TPP-1又はβ-glu発現細胞では、それぞれおよそ50%及び75~80%が分泌された。この発見は、ウェスタンブロットによるタンパク質の総レベルを評価する場合に反映された(
図3)。
【0204】
バリアントSGSHは、分泌及び取り込みの改善を示す
[0228]リソソーム酵素のマンノース又はM6Pの翻訳後修飾は、N結合オリゴ糖側鎖で起こる。SGSHは、アミノ酸位置41、142、151、264、及び413にAsn残基を許容するグリカンを有する、5つの潜在的なN-グリコシル化コンセンサス配列(Asn-Xaa-Ser/Thr)を有する。5つのSGSH酵素バリアントは、示したようにAsnからGlnに逐次的に置換されて(
図4A)構築され、それらの分泌及び取り込み特性が評価された。
【0205】
[0229]ほとんどのSGSHバリアントは、野生型タンパク質と区別できず、1つのバリアントは酵素活性を喪失し(SGSHv3)(
図4B)、1つのバリアント、SGSHv4は培地中でおよそ2倍のSGSH活性のレベルを示した。さらに、SGSHv4発現細胞は、細胞においてより低いレベルのSGSH活性を示し;野生型がトランスフェクトされた細胞の約60%であった。これらのデータは、SGSHv4が分泌を改善し、同時にトランスフェクトされた細胞内でさらなるSGSHの過負荷を低減することを示す(
図4B)。
【0206】
[0230]HEK293細胞は、野生型又はSGSHv4を発現するプラスミドによってトランスフェクトされ、培地及び細胞ライセート中の酵素活性及びタンパク質レベルは、24、48、及び72時間後にモニターされ、時間的に酵素分泌をモニターした。SGSHv4バリアント発現プラスミドによってトランスフェクトされた細胞は、野生型酵素を発現するプラスミドによってトランスフェクトされたものよりも全ての時間でより効率的にSGSHを分泌した。24時間までは、SGSHv4-トランスフェクト細胞の培地では野生型SGSH発現ベクターによってトランスフェクトされた細胞と比較してほぼ4倍の酵素があった(
図5A)。逆に、SGSH活性の細胞レベルは、全ての時点で、野生型SGSH発現細胞に対してSGSHv4発現細胞で低かった(
図5B)。細胞ライセートのウェスタンブロットは、同様にSGSHv4発現細胞における前駆体SGSHのレベルの低減も示し(
図6A、6B)、より多くの前駆体が、(野生型SGSH発現ベクターによって生じるように)保持及び成熟酵素にプロセシングされるよりも分泌されるという考えを支持した。前駆体と成熟形態の両方でのSGSHv4のより低い分子量は、おそらくM6P部位の喪失の結果としてリン酸化レベルの低下による。
【0207】
SGSHv4取り込みはM6PR非依存的である
[0231]遺伝子治療によるクロスコレクションの基本原理は、過剰発現する(形質導入された)細胞から酵素が効果的に分泌され、また、分泌された酵素は非形質導入細胞によってエンドサイトーシス(取り込み)されることを必要とする。そのため、MPS IIIA患者の線維芽細胞における野生型及びSGSHv4の取り込みが解析された。野生型SGSH又はSGSHv4を発現するHEK293細胞からの馴化培地が、6時間患者の線維芽細胞にアプライされ、次いで細胞は収集され、細胞ライセートにおける活性が評価された。驚くべきことに、SGSHv4発現産物、N264Qは、野生型SGSHと比較して患者の線維芽細胞によってより効果的に取り込まれ、SGSH N264Qの入力の>60%が細胞に入り、対して野生型SGSHでは<40%であった(
図7)。さらに、10mM M6Pの存在下では、野生型SGSHの取り込みはブロックされたが、N264Qはされなかった(
図7)。重要なことに、野生型とN264Q SGSHの両方は成熟酵素にプロセシングされ、いったん内部移行され、リソソーム送達を支持する(
図8A、8B)。
【0208】
AAV.SGSHv4はin vivoでの治療特性を改善する
[0232]in vivoでのSGSHv4をSGSHと比較するため、MPS IIIAモデルマウスは、同じ用量で異なる導入遺伝子(AAV.SGSH及びAAV.SGSHv4)をコードするAAV4ベクターによって脳室内に注射された;マウスにおいて、AAV4はもっぱら上衣細胞を標的化する(
図9)(Davidsonら PNAS USA 97:3428~3432頁(2000年);Liuら J.Neurosci.25:9321~9327頁(2005年))。マウスは、隠れたプラットフォームを見つけ出すレイテンシーによって評価された空間学習により、行動遂行に関してモリス水迷路を使用して解析された(
図10)。AAV.SGSHv4処置MPS IIIAマウスでは、5日目のレイテンシーは正常、ヘテロ接合体の同腹仔と等価であり、両群は未処置の疾患マウスよりも著しく良く遂行した。反対に、AAV.SGSH処置マウスは、未処置の疾患マウスに類似していた(
図10)。AAV.SGSHv4によって処置されたMPS IIIAマウスはまた、標的象限で費やした時間及び移動した距離を評価する場合、それらのヘテロ接合体の同腹仔と類似して遂行したが、AAV.SGSHによって処置されたMPS IIIAマウスは未処置の疾患マウスと類似して行動した(
図11A、11B)。データは、AAV.SGSHではなくAAV.SGSHv4の脳室内注射が、MPS IIIAマウスの空間学習及び記憶障害を修正するのに十分であることを示す。
【0209】
AAV.SGSHv4処置によるSGSH活性の上昇及び二次リソソーム酵素レベルの改善
[0233]AAV.SGSHv4処置マウスのCSFにおけるSGSH活性は、ヘテロ接合体レベルの80%に達し、AAV4.SGSH処置マウスのおよそ2倍であった(
図12)。拡散の程度を評価するため、海馬、線条体、後頭皮質、及び小脳由来の試料は、解剖され、酵素活性を評価された。未処置のMPS IIIA組織は、約1~4%のヘテロ接合体レベルを有する。AAV.SGSHv4又はAAV.SGSHによって処置されたMPS IIIAマウスは、未処置のMPS IIIAマウスと比較してSGSH活性が増加したが、AAV.SGSHv4処置マウスからの脳領域は、AAV.SGSH処置マウスからの組織のおよそ2倍であった。AAV.SGSHv4処置マウスにおけるSGSH活性は、海馬、線条体、後脳皮質、及び小脳におけるヘテロ接合体レベルの、それぞれ35%、14.5%、16%及び14%であった(
図13)。
【0210】
[0234]MPS IIIAマウスの脳においてβ-glu活性の著しい上昇があり、SGSH欠乏に副次的である(例えば、Bhaumikら、Glycobiology 9:1389~1396頁(1999年)参照)。MPS IIIAマウスのCSFにおけるβ-glu活性は、ヘテロ接合体レベルの160%であり、AAV.SGSHv4遺伝子移行後、ヘテロ接合体レベルの120%まで減少し、それに対してAAV.SGSH処置後のヘテロ接合体レベルは147%であった(
図14)。脳実質組織では、MPS IIIAマウスのβ-glu活性はヘテロ接合体マウスのものよりも著しく高く、海馬、線条体、後脳皮質、及び小脳におけるヘテロ接合体レベルの、それぞれ185%、242%、237%及び190%であった。AAV.SGSHv4は、β-glu活性レベルを海馬及び線条体におけるヘテロ接合体レベルの120%及び166%に減少させ、それはAAV.SGSH処置マウスからの組織ライセートに見出されるものより著しく低かった(ヘテロ接合体レベルに対して、海馬では163%、線条体では207%)。AAV.SGSHv4処置MPS IIIAマウスの後脳皮質及び小脳におけるβ-glu活性は、未処置のMPS IIIAマウスと比較して減少され、AAV.SGSH処置マウスよりも低かったが、互いに統計的に有意な差はなかった(
図15)。
【0211】
実施例3
[0235]AAV.SGSHv4は、MPS IIIAマウスの神経病理を緩和する。マウス(8週齢)は、AAV.SGSH又はAAV.HSNv4を側脳室に注射された。動物は、14週間後に屠殺され、神経病理学的な読み出しへの影響の解析のため組織が回収された。データは、
図16A~16Dに示される。
【0212】
実施例4
[0236]天然のSGSHは、十分に分泌されない。反対に、データは、改変SGSHv4が細胞による分泌及び細胞取り込みの増加を示したことを示す。AAV.SGSHv4はまた、in vivoでCNSにおいて酵素レベルの上昇、及び実質組織における浸透の改善をもたらした。AAV.SGSHv4は、MPS IIIAマウスモデルにおいて行動障害の修正に関して非改変AAV.SGSHよりも優れていた。したがって、本明細書で例示したバリアントSGSHは1つ又は複数の以下の特性:細胞分泌の増強、CNSにおけるin vivoでの体内分布の改善を示し、バイスタンダー細胞の取り込み及びクロスコレクションの改善を示した。さらに、ベータ-グルクロニダーゼ、別の可溶性リソソームヒドラーゼのリン酸化レベルはSGSHv4によって変更された。
【0213】
[0237]例示的な野生型又は非改変/非バリアントSGSHが以下の配列番号1として示される:
10 20 30 40 50
MSCPVPACCA LLLVLGLCRA RPRNALLLLA DDGGFESGAYNNSAIATPHL
60 70 80 90 100
DALARRSLLF RNAFTSVSSC SPSRASLLTG LPQHQNGMYGLHQDVHHFNS
110 120 130 140 150
FDKVRSLPLL LSQAGVRTGI IGKKHVGPET VYPFDFAYTEENGSVLQVGR
160 170 180 190 200
NITRIKLLVR KFLQTQDDRP FFLYVAFHDP HRCGHSQPQYGTFCEKFGNG
210 220 230 240 250
ESGMGRIPDW TPQAYDPLDV LVPYFVPNTP AARADLAAQYTTVGRMDQGV
260 270 280 290 300
GLVLQELRDA GVLNDTLVIF TSDNGIPFPS GRTNLYWPGTAEPLLVSSPE
310 320 330 340 350
HPKRWGQVSE AYVSLLDLTP TILDWFSIPY PSYAIFGSKTIHLTGRSLLP
360 370 380 390 400
ALEAEPLWAT VFGSQSHHEV TMSYPMRSVQ HRHFRLVHNLNFKMPFPIDQ
410 420 430 440 450
DFYVSPTFQD LLNRTTAGQP TGWYKDLRHY YYRARWELYDRSRDPHETQN
460 470 480 490 500
LATDPRFAQL LEMLRDQLAK WQWETHDPWV CAPDGVLEEKLSPQCQPLHN
EL
【0214】
以下の配列番号2に示される例示的なCMVエンハンサー:
gcgttacataacttacggtaaatggcccgcctggctgaccgcccaacgacccccgcccattgacgtcaataatgacgtatgttcccatagtaacgccaatagggactttccattgacgtcaatgggtggagtatttacggtaaactgcccacttggcagtacatcaagtgtatcatatgccaagtacgccccctattgacgtcaatgacggtaaatggcccgcctggcattatgcccagtacatgaccttatgggactttcctacttggcagtacatctacgtattagtcatcgctattaccatgg
【0215】
以下の配列番号3に示される例示的なCAGプロモーター:
【化1】
ATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTCGAGGTGAGCCCCACGTTCTGCTTCACTCTCCCCATCTCCCCCCCCTCCCCACCCCCAATTTTGTATTTATTTATTTTTTAATTATTTTGTGCAGCGATGGGGGCGGGGGGGGGGGGGGGGCGCGCGCCAGGCGGGGCGGGGCGGGGCGAGGGGCGGGGCGGGGCGAGGCGGAGAGGTGCGGCGGCAGCCAATCAGAGCGGCGCGCTCCGAAAGTTTCCTTTTATGGCGAGGCGGCGGCGGCGGCGGCCCTATAAAAAGCGAAGCGCGCGGCGGGCGGGGAGTCGCTGCGACGCTGCCTTCGCCCCGTGCCCCGCTCCGCCGCCGCCTCGCGCCGCCCGCCCCGGCTCTGACTGACCGCGTTACTCCCACAGGTGAGCGGGCGGGACGGCCCTTCTCCTCCGGGCTGTAATTAGCGCTTGGTTTAATGACGGCTTGTTTCTTTTCTGTGGCTGCGTGAAAGCCTTGAGGGGCTCCGGGAGGGCCCTTTGTGCGGGGGGAGCGGCTCGGGGGGTGCGTGCGTGTGTGTGTGCGTGGGGAGCGCCGCGTGCGGCTCCGCGCTGCCCGGCGGCTGTGAGCGCTGCGGGCGCGGCGCGGGGCTTTGTGCGCTCCGCAGTGTGCGCGAGGGGAGCGCGGCCGGGGGCGGTGCCCCGCGGTGCGGGGGGGGCTGCGAGGGGAACAAAGGCTGCGTGCGGGGTGTGTGCGTGGGGGGGTGAGCAGGGGGTGTGGGCGCGTCGGTCGGGCTGCAACCCCCCCTGCACCCCCCTCCCCGAGTTGCTGAGCACGGCCCGGCTTCGGGTGCGGGGCTCCGTACGGGGCGTGGCGCGGGGCTCGCCGTGCCGGGCGGGGGGTGGCGGCAGGTGGGGGTGCCGGGCGGGGCGGGGCCGCCTCGGGCCGGGGAGGGCTCGGGGGAGGGGCGCGGCGGCCCCCGGAGCGCCGGCGGCTGTCGAGGCGCGGCGAGCCGCAGCCATTGCCTTTTATGGTAATCGTGCGAGAGGGCGCAGGGACTTCCTTTGTCCCAAATCTGTGCGGAGCCGAAATCTGGGAGGCGCCGCCGCACCCCCTCTAGCGGGCGCGGGGCGAAGCGGTGCGGCGCCGGCAGGAAGGAAATGGGCGGGGAGGGCCTTCGTGCGTCGCCGCGCCGCCGTCCCCTTCTCCCTCTCCAGCCTCGGGGCTGTCCGCGGGGGGACGGCTGCCTTCGGGGGGGACGGGGCAGGGCGGGGTTCGGCTTCTGGCGTGTGACCGGCGGCTCTAGAGCCTCTGCTAACCATGTTCATGCCTTCTTCTTTTTCCTACAGCTCCTGGGCAACGTGCTGGTTATTGTGCTGTCTCATCATTTTGGCAAA
【0216】
参考文献
Katz, M. L. et al. AAV gene transfer delaysdisease onset in a TPP1-deficient canine model of the late infantile form ofBatten disease (2015) Science Translational Medicine 7, 313ra180.
Liu, G., Martins, I., Wemmie, J. A.,Chiorini, J. A. & Davidson, B. L. Functional correction of CNS phenotypesin a lysosomal storage disease model using adeno-associated virus type 4vectors. (2005) The Journal of Neuroscience : the Official Journal of theSociety for Neuroscience 25, 9321-9327.
Davidson, B. L. et al. Recombinantadeno-associated virus type 2, 4, and 5 vectors: transduction of variant celltypes and regions in the mammalian central nervous system (2000) Proceedings ofthe National Academy of Sciences of the United States of America 97, 3428-3432.
Bhaumik, M. et al. A mouse model formucopolysaccharidosis type III A (Sanfilippo syndrome) (1999) Glycobiology 9,1389-1396.
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Tian, Y., Sohar, I., Taylor, J. W. &Lobel, P. Determination of the substrate specificity of tripeptidyl-peptidase Iusing combinatorial peptide libraries and development of improved fluorogenicsubstrates (2006) The Journal of Biological Chemistry 281, 6559-6572.
Bhattacharyya, R., Gliddon, B., Beccari,T., Hopwood, J. J. & Stanley, P. A novel missense mutation in lysosomalsulfamidase is the basis of MPS III A in a spontaneous mouse mutant (2001)Glycobiology 11, 99-103.
Vorhees, C. V. & Williams, M. T. Morriswater maze: procedures for assessing spatial and related forms of learning andmemory (2006) Nature Protocols 1, 848-858.
【0217】
[関連出願情報]
[0001]本特許出願は、2017年5月12日に出願された米国特許出願第62/505,423号の利点及び優先権を主張する。上記出願の全内容は、全文、表、及び図面を含み、参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【配列表】