(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】電気モータの駆動される移動部の位置の無接触での決定方法、電気モータ、ならびにこの電気モータを使用してピペット操作の液体を吸引および分配するピペット操作システム
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20221219BHJP
【FI】
H02K11/215
(21)【出願番号】P 2019562584
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(86)【国際出願番号】 EP2018061403
(87)【国際公開番号】W WO2018206404
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-21
(31)【優先権主張番号】102017110388.0
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501401397
【氏名又は名称】ハミルトン・ボナドゥーツ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エティンガー,レト
(72)【発明者】
【氏名】ラスト,ユルク
(72)【発明者】
【氏名】ジセル,フリドリン
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0022030(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0203801(US,A1)
【文献】特開2001-190520(JP,A)
【文献】国際公開第2017/017084(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/164165(WO,A1)
【文献】特開2008-289344(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0072830(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/215
G01D 5/245
G01B 7/00
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁界センサ(8)による電気モータ(2)の駆動される移動部(4)の位置を無接触で決定する方法であって、前記移動部がステータ(6)に対して移動可能に配置され、複数の永久磁石(40)を有し、前記複数の永久磁石が、周期的に離間される複数の極大値を有する移動部磁界を発生させ、前記複数の磁界センサが前記移動部の移動経路(43)に沿って配置され、
前記複数の磁界センサにより、前記移動部の位置にて左右される、前記複数の永久磁石にて発生される一時的な磁界のための複数の測定値(70)を決定するステップと、
前記複数の測定値のサブセット(72)を選択するステップと、
前記複数の測定値(70)
の前記サブセット(72)から固有のスペクトル信号成分(74)を決定するステップであって、前記固有のスペクトル信号成分が、前記移動部の磁界の隣接する同方向の極大値の間の距離に対応する空間周波数を有する、ステップと、
前記固有のスペクトル信号成分により、前記駆動される移動部の位置を決定するステップと、
を含
み、
前記駆動される移動部(4)の位置を決定するステップは、前記固有のスペクトル信号成分(74)の位相角にて実施され、
前記駆動される移動部(4)の位置を決定するステップは、前記固有のスペクトル信号成分(74)の位相角を、既知の位置を基準とした前記駆動される移動部のオフセット量へ変換するステップを含む、
方法。
【請求項2】
前記固有のスペクトル信号成分(74)を決定するステップは、前記複数の測定値(70)の少なくとも一部に対してGoertzelアルゴリズムを適用して実施される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記固有のスペクトル信号成分(74)を決定するステップは、前記複数の測定値(70)の少なくとも一部に対して高速フーリエ変換(FFT)を適用して実施される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の測定値の前記サブセット(72)は、互いに隣接して配置される磁界センサ(8)から取得される、
請求項
1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記複数の測定値の前記サブセット(72)は、4個から10個の間の測定値、また具体的には5個から8個の間の測定値、さらに具体的には6個の測定値を有する、
請求項
1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記複数の測定値の前記サブセット(72)を選択するステップは、
前記移動部の前記移動経路(43)に沿う前記磁界センサ(8)の空間的配置構成に従って前記複数の測定値(70)を整理するステップと、
その絶対値が所定の閾値を超える第1の測定値を決定するステップと、
前記複数の測定値の前記サブセット(72)として前記第1の測定値および隣接する測定値を選択するステップと、
を含む、請求項
1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第1の測定値を提供する前記磁界センサの位置、および前記固有のスペクトル信号成分(74)の位相角にて示される前記駆動される移動部のオフセット量から、前記駆動される移動部(4)の位置が計算される、
請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の測定値の前記サブセット(72)を選択するステップは、
最も大きい合計絶対値を有する隣接する磁界センサ(8)の所定の数の測定値のサブセットを選択するステップ
を含む、請求項
1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記複数の測定値を決定するステップは、
前記複数の磁界センサ(8)により測定データを提供するステップと、
前記測定データを較正するステップにより前記複数の測定値を生成するステップであって、較正するステップは、前記電気モータの駆動要素により、また具体的には前記電気モータの電流通過コイル(60)により、動作中に発生する駆動磁界成分を補償するステップを含む、ステップと、
を含む、請求項1から
8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
較正ステップは、
前記複数の磁界センサ(8)のオフセット量を補償するステップ、および/または、
製造の不正確さを補償するステップ、また具体的には不正確に配置される磁界センサにて生じる測定エラーを補償するステップ、
をさらに含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の測定値(70)を決定するステップと、前記固有のスペクトル信号成分(74)を決定するステップと、前記駆動される移動部(4)の位置を決定するステップとが、前記移動部の移動中に繰り返し実施され、具体的には1000分の1秒当たり少なくとも1回実行され、さらに具体的には10000分の1秒当たり少なくとも1回実行される、
請求項1から
10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
電気モータ(2)の駆動される移動部を移動させる方法であって、
請求項1から
11のいずれかの方法に従い、前記駆動される移動部(4)の位置を決定するステップと、
前記駆動される移動部の決定された位置に基づき、前記駆動される移動部を移動させるステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記電気モータ(2)が前記移動部の移動経路(43)に沿って配置される複数のコイル(60)を備え、
前記駆動される移動部を移動させるステップは、制御下で前記複数のコイルに電流を供給するステップを含む、
請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記駆動される移動部(4)がピペット操作デバイス(100)のピストンであるか、または前記駆動される移動部が前記ピストンを移動させるためにピペット操作デバイスのピストンに結合され、ピペット操作の液体(32)が前記ピストンの移動により吸引または分配される、
請求項
12または
13に記載の方法。
【請求項15】
無接触での位置決定を伴う電気モータ(2)であって、
周期的に離間される複数の極大値を有する移動部磁界を発生させる複数の永久磁石(40)を有する駆動される移動部(4)と、
前記駆動される移動部がステータに対して移動可能に配置される、スタータ(6)と、
移動経路に沿って存在する前記磁界を測定するために前記移動部の移動経路(43)に沿って配置される複数の磁界センサ(8)と、
前記複数の磁界センサから測定データを受け取る位置決定ユニット(12)とを備え、
前記位置決定ユニット(12)は、
前記測定データから複数の測定値(70)を提供することであって、前記複数の測定値(70)が、前記移動部の位置にて左右される、前記複数の永久磁石にて発生される一時的な磁界のためのサンプリングポイントであり、
前記複数の測定値のサブセット(72)を選択し、
前記複数の測定値(70)
の前記サブセット(72)から固有のスペクトル信号成分(74)を決定することであって、前記固有のスペクトル信号成分が前記移動部磁界の隣接する同方向の極大値の間の距離に対応する空間周波数を有し、ならびに
前記固有のスペクトル信号成分に基づいて
、前記固有のスペクトル信号成分(74)の位相角により、前記駆動される移動部の位置を決定
し、
前記固有のスペクトル信号成分(74)の位相角を、既知の位置を基準とした、前記駆動される移動部(4)のオフセット量へ変換する
構成とされる、電気モータ(2)。
【請求項16】
前記複数の磁界センサ(8)は、複数のHallセンサである、
請求項
15に記載の電気モータ(2)。
【請求項17】
前記複数の磁界センサ(8)は、前記移動部の前記移動経路(43)に沿ってほぼ一様に配置される、
請求項
15または
16に記載の電気モータ(2)。
【請求項18】
隣接する永久磁石(40)は、反対の極性を有する、
請求項
15から
17のいずれかに記載の電気モータ。
【請求項19】
前記複数の永久磁石(40)が直列に配置され、隣接する永久磁石が、互いの方を向く同様の極性を有するように方向付けられる、
請求項
15から
18のいずれかに記載の電気モータ。
【請求項20】
前記駆動される移動部(4)は、4個から8個の間の永久磁石、また具体的には5個または6個の永久磁石を有する、
請求項
15から
19のいずれかに記載の電気モータ(2)。
【請求項21】
前記複数の永久磁石(40)が互いに固着される、
請求項
15から
20のいずれかに記載の電気モータ(2)。
【請求項22】
前記移動部磁界の隣接する同方向の極大値の間の距離が、10mmから20mmの間、具体的には12mmから15mmの間、より具体的には13mmから14mmの間である、
請求項
15から
21のいずれかに記載の電気モータ(2)。
【請求項23】
前記位置決定ユニット(12)は、前記サンプリングポイントに対してGoertzelアルゴリズムを適用して前記固有のスペクトル信号成分(74)を決定する構成とされる、
請求項
15から
22のいずれかに記載の電気モータ(2)。
【請求項24】
前記複数の測定値の前記サブセット(72)は、4個から10個の間の測定値、また具体的には5個から8個の間の測定値、さらに具体的には6個の測定値を有する、
請求項
15から23のいずれかに記載の電気モータ(2)。
【請求項25】
前記位置決定ユニット(12)は、マイクロコントローラを備える、
請求項
15から
24のいずれかに記載の電気モータ(2)。
【請求項26】
前記ステータ(86)は、前記移動部(4)の移動経路(43)に沿って配置される複数のコイル(60)を備え、前記駆動される移動部が、前記複数のコイルに対して電流を制御下で供給することにより、移動可能となる、
請求項
15から
25のいずれかに記載の電気モータ(2)。
【請求項27】
前記駆動される移動部(4)の決定された位置に基づいて前記複数のコイル(60)を通る電流の流れを調整する構成とされる、前記位置決定ユニット(12)に結合される制御ユニット(14)をさらに備える、
請求項
26に記載の電気モータ(2)。
【請求項28】
前記電気モータはリニアモータであり、前記駆動される移動部(4)は前記移動経路上で線形的に移動可能である、
請求項
15から
27のいずれかに記載の電気モータ(2)。
【請求項29】
前記駆動される移動部(4)は、前記ステータに対して回転可能に移動可能であるロータであり、前記移動部の前記移動経路がほぼ円形である、
請求項
15から
27のいずれかに記載の電気モータ(2)。
【請求項30】
前記ロータの所定部分が通過することを検出する基準ポイントセンサ(10)をさらに備える、
請求項
29に記載の電気モータ(2)。
【請求項31】
ピペット操作の液体(32)を吸引および分配するピペット操作システム(100)であって、
液体の方を向く端部および液体から離れる方の端部を有するピストンと、
その中に前記ピストンが配置されるピペット操作チャネルであって、前記ピペット操作チャネルの端部にピペット操作先端部(26)が配置され、前記ピストンを移動させることにより、前記ピペット操作先端部を通してピペット操作の液体(32)を吸引および分配することが可能である、ピペット操作チャネルと、
請求項
15から
30のいずれかに記載の電気モータ(2)であって、前記駆動される移動部(4)が前記ピストンの一部、または前記駆動される移動部が前記ピストンに駆動可能に結合される、電気モータ(2)と、
を備える、ピペット操作システム(100)。
【請求項32】
前記ピストンの少なくとも前記液体の方を向く端部が前記ピペット操作チャネルに対してのシール(41)を有し、それにより前記ピストンの前記液体の方を向く端部と前記ピペット操作先端部(26)との間の前記ピペット操作チャネル内に密閉される容積が存在する、
請求項
31に記載のピペット操作システム(100)。
【請求項33】
データ処理システム上での実行時に請求項1から
14のいずれかに記載の方法を実施するプログラム命令を含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気モータの分野に関する。詳細には、本発明は、電気モータの移動部の位置を決定することに関する。より詳細には、本発明は、電気モータにて駆動されるピペット操作システムの分野である。
【背景技術】
【0002】
ピペット操作システムは、多くの場合に、移動可能なピストンである移動手段が高精度で移動される技術システムの一例である。ピペット操作システムでは、ピペット操作の液体(pipetting liquid)がピストンの移動によりピペット操作先端部を通って吸引または分配される。多くの用途において、また特に、ラボラトリオートメーションの分野において、液体を放出および吸上、すなわち液体の分配および吸引が、非常に正確に行われる必要がある。これにより、ピストンを用いて可能な限り正確な移動を行うために全般的な労力が伴われる。したがって、ピストンが電気モータにて駆動されるとき、電気モータの移動部が正確に移動することが望まれる。従来の技術では、ピペット操作システムのピストンの位置を決定し、およびそれに従って電気モータを制御するアプローチが存在する。しかしながら、位置決定を伴うこの種の従来のシステムは満足できるものではない。さらに、多くの他の技術分野において、電気モータにて駆動される構成要素が正確に移動される技術的システムが存在する。
【0003】
したがって、位置決定の改善方法と、改善された電気モータと、改善されたピペット操作システムとを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の例示的な実施形態は、複数の磁界センサによる電気モータの駆動される移動部の位置を無接触で決定する方法を含み、ここでは、移動部がステータに対して移動可能に配置され、複数の永久磁石を有し、複数の永久磁石が、周期的に離間される複数の極大値を有する移動部磁界(moving-portion magnetic field)を発生させ、またここでは、複数の磁界センサが移動部の移動経路に沿って配置される。この方法は、複数の磁界センサにより、移動部の位置にて左右される、複数の永久磁石にて発生される一時的な磁界のための複数の測定値を決定するステップと、複数の測定値から固有のスペクトル信号成分を決定するステップであって、固有のスペクトル信号成分が、移動部磁界の隣接する同方向の極大値(like maxima)の間の距離に対応する空間周波数を有するステップと、固有のスペクトル信号成分により、駆動される移動部の位置を決定するステップと、を含む。
【0005】
本発明の例示的な実施形態は、電気モータの移動部の直接の効率的な位置決定を可能にし、すなわち移動の発生源での直接的な位置決定を可能にする。移動部の位置の無接触での決定により、電気モータに作用する追加の駆動質量(driven mass)の形態の追加の負荷が存在しない。電気モータまたは下流の駆動される構成要素の移動部がセンサを機械的に作動させる従来のアプローチと比べ、位置の無接触での決定がより大型の力学をサポートでき、構成要素の摩耗を防止でき、システム全体のロバスト性を向上できる。
【0006】
この方法は、移動部の無接触での位置決定のために移動部を駆動するために何らかの形で存在する永久磁石を使用できる。このことに関して、永久磁石にて発生される磁界が移動部の移動のための基準として使用され、それに加えて、移動部の移動経路に沿って測定可能に存在する事実が利用される。永久磁石にて発生される磁界が移動部の位置決定のための基準を形成する。しかしながら、駆動磁石に加えて設けられる、位置を決定するためにのみ機能する永久磁石が存在することも可能であり、ここで、その磁界が位置決定のために測定されて使用される。この例では、追加の永久磁石がさらに移動部に駆動可能に接続され、磁界センサが追加の永久磁石の移動経路に沿って配置される。
【0007】
複数の永久磁石が移動部内に配置され、その結果、移動部磁界が、周期的に離間される複数の極大値を有するように形成される。移動部磁界という表現は、移動部の基準システム内に存在し、永久磁石の固定される配置構成によりこのシステム内で静止する磁界を意味する。極大値が局所的な極大値であり、すなわち、直接の環境、局所的な磁石のS極およびN極とそれぞれ比較される。周期的に離間される極大値という表現は、移動部磁界が交互のS極およびN極を有し、交互のS極およびN極のシーケンスおよび間隔が移動部磁界の少なくとも一部で繰り返されることを明らかにする。したがって、永久磁石は、交互のS極およびN極を有し、強い振動成分を有する移動部磁界を発生させる。移動部磁界がステータの基準システム内に一時的な磁界を発生させ、この磁界の一時的な形態が移動部の位置にて左右される。移動部磁界が周期的に離間される複数の極大値を有するため、複数の永久磁石にて発生されて複数の磁界センサに適用される一時的な磁界が、移動部磁界の隣接する同方向の極大値の間の距離に対応する空間周波数を有する強い信号成分を有している。この信号成分は、本明細書では、磁界センサにて決定される測定値によって決定される固有のスペクトル信号成分と称される。この固有のスペクトル信号成分を用いることで、駆動される移動部の位置が効率的に決定される。永久磁石にて発生される磁界内の強い周期的な成分が存在し、およびこの空間周波数を用いて固有のスペクトル信号成分を標的化により決定すること(targeted determination)により、電気モータの移動部の直接の効率的な位置決定が可能となる。
【0008】
この方法は、リニアモータ、および回転ロータを有する電気モータのそれぞれに適用可能であり、さらには任意の他の種類の電気モータにも適用可能である。リニアモータでは、移動部が線形の移動経路を有する。ロータの移動経路が、例えば空隙に隣接する構成要素などの、ロータの特定の構成要素が動作中に通過するすべてのポイントの総体として表される。結果として、回転ロータを有する電気モータ内の移動部の移動経路が円形経路として表される。移動部の移動経路に沿う磁界センサの配置構成が同様の幾何学的な基本構造を有するものでよく、すなわち、例えば、線形または円形の配置構成を有し、一方でこの配置構成が移動部の移動経路に対してオフセットされる。しかしながら、他の配置構成も同様に可能である。リニアモータでは、例えば、磁界センサが移動部の移動経路の周りの螺旋経路内に配置され得る。
【0009】
線形電気モータでは、移動部が、移動部の移動経路上で互いを対象として設置される複数の棒磁石を備えることができ、複数の棒磁石のそれぞれが逆の極性を有する。この例では、個別の永久磁石の長さが局所的なN極と局所的なS極との間の距離に相当してよく、または移動部磁界の隣接する同方向の極大値の間の距離の半分に相当してよい。
【0010】
複数の永久磁石は、周期的に離間される複数の極大値を有する移動部磁界を発生させるように配置される。周期的に離間される極大値が等しい大きさの磁界値を有することが必須なわけではなく、またすべての極大値が均等に離間されることが必須なわけでもない。例えば、移動部磁界がその端部に向かうに連れて乱れる(fray)可能性があり、その結果、移動部磁界の中央部分とは異なる極大値の間の距離がそこに生じる。移動部磁界が一様に離間される複数の極大値を有することが重要である。移動部磁界の2つの極大値の間の距離は極間距離(pole distance)またはピッチとも称される。極間距離は、空間的配置構成と、可能性として、永久磁石の間の距離とに関連する。移動部磁界の極大値の間の距離が幾何学的な意味において正確な距離でないことが理解される。特に、永久磁石の配置における製造公差および他の不正確さを理由として、移動部磁界の極大値の間の距離がわずかに変化してもよい。周期的に離間される複数の極大値の間の距離が公称距離である。
【0011】
複数の測定値は、ほぼ同時に測定される測定値である。したがって、複数の測定値は、特定の測定時間における複数の永久磁石にて発生される磁界の空間的分布を表す。複数の測定値は、一時的な磁界のサンプリングポイントである。具体的に、複数の測定値は、ステータの基準システム内にその時点で存在し、移動部の永久磁石にて発生される磁界のサンプリングされる値である。次いで、特定の測定時間における磁界のこのような空間的分布は、固有のスペクトル信号成分の上で考察した空間周波数に対して分析される。スペクトル固有の信号成分は、複数の永久磁石の位置を示す信号成分である。その理由は、その空間周波数が移動部磁界の隣接する同方向の極大値の間の距離に対応するためである。このことに関し、空間周波数が移動部磁界の隣接する同方向の極大値の間の距離に対応するという表現は、サンプリングポイントがこの空間周波数を正確に基準として分析されることを意味する。しかしながら、固有のスペクトル信号成分は、隣接する同方向の極大値の間の距離に加え、永久磁石を基準とした磁界センサのオフセット量を考慮する空間周波数を有することも可能である。また、この例では、固有のスペクトル信号成分の空間周波数が、本発明の意味において、隣接する同方向の極大値の間の距離に対応する。空間周波数が、単に、永久磁石に対して磁界センサの配置構成の幾何学的構造に適合される。ほぼ同時に測られる測定値という表現は、可能な限りの測定値が磁界のスナップショットを表すことを意図することを意味する。しかしながら、この表現は、測定値が互いにいくらかの一時的なオフセット量を有してよいことをさらに含む。これは、例えば、測定値が一連の連続的な測定に属する場合に当てはまり、例えば、その出力がアナログ-デジタル変換器に連続的に適用されるようなアナログの磁界センサを使用する場合にも当てはまり、ここでは、デジタル化される測定データがわずかに異なる時間の測定を表すことになる。一般に、信号処理チェーンには実際的制限が存在する可能性があり、この理由として、特定の適用シナリオにおいて、測定値を一時的に完全に同期することが不可能であるか、またその高い複雑性/並列性を理由として所望されないものである。
【0012】
ステータが複数の電磁石を装備でき、複数の電磁石により、電気モータの移動部が駆動される。電磁石はコイルであっても巻線を有してもよく、それを介して適切な制御により時間変化する磁界が発生される。
【0013】
別の態様によると、駆動される移動部の位置を決定することは、固有のスペクトル信号成分の位相角にて実施される。複数の永久磁石にて発生される磁界の極大値は、例えば特定の磁界センサの位置のような既知の位置からどの程度離間されているかを位相角にて決定することが可能である。このようにして、駆動される移動部の位置は、特に正確で効率的である手法で決定される。固有のスペクトル信号成分の振幅により、駆動される移動部の位置を決定することと比べると、位相角による決定は、より高いロバスト性を有する。振幅は、永久磁石と磁界センサとの間の距離に対して非常に迅速に変化するが、互いに対しての極大値の相対位置は、永久磁石から一定の距離のところでやはり正確かつ高い信頼性で決定される。また、永久磁石を非常に正確に配置することを達成することは、非常に狭い範囲内で永久磁石の磁化を維持することよりも移動部を製造することに伴う労力を少なくできる。したがって、位相角にて位置を決定することは、労力/複雑さと精度との間でより良好の折り合いをつけこと可能にする。
【0014】
別の実施形態によると、駆動される移動部の位置を決定することは、固有のスペクトル信号成分の位相角を既知の位置を基準とした駆動される移動部のオフセット量へ変換することを含む。これに関し、既知の位置は、システム全体の製造データと併せて最新の測定変数にて知り得る。例えば、既知の位置は、移動部の特定のポイントに最も接近する磁界センサの決定にて知り得、ここではこの磁界センサがどこに配置されているかを明らかにする製造データと連係される。磁界センサの公称位置からの製造由来のずれが測定され得、駆動される移動部の位置の計算に含まれる。また、既知の位置がステータの電磁石を制御することで知り得ることも可能である。言い換えると、移動部の位置が電磁石を制御することで推定され、これが既知の位置としてみなされ、ならびに固有のスペクトル信号成分の位相角に基づいて表現されるオフセット量により移動部の正確な位置が決定されることが可能である。
【0015】
別の実施形態によると、固有のスペクトル信号成分を決定することは、複数の測定値の少なくとも一部に対してGoertzelアルゴリズムを適用することで実施される。Goertzelアルゴリズムは、サンプリングポイントから、または一時的な磁界のサンプリングポイントのサブセットから、単一のスペクトル信号成分を抽出する。したがって、サンプリングポイントにて形成される信号の周波数スペクトルの包括的分析を必要とすることなく、固有のスペクトル信号成分が決定される。したがって、Goertzelアルゴリズムが、非常に効率的で、迅速で、省資源的である固有のスペクトル信号成分の決定を促進する。Goertzelアルゴリズムは、Goertzel関数としても知られている。Goertzelアルゴリズム自体の説明およびGoertzelアルゴリズムを使用する任意のスペクトル成分の決定の説明は、例えば、以下の刊行物、Petr SyselおよびPavel Rajmicらの「Goertzel algorithm generalized to non-integer multiples of fundamental frequency」、EURASIP Journal on Advances in Signal Processing 2012で確認できる。この文献の中身は、その全体が、その文献に対しての参照により本願に組み込まれる。
【0016】
別の実施形態によると、固有のスペクトル信号成分を決定することは、複数の測定値の少なくとも一部に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)を適用することで実施される。高速フーリエ変換は、サンプリングポイントにて画定される信号のスペクトル分析を可能にする離散フーリエ変換の効率的な実装形態である。この場合、スペクトル分析から固有のスペクトル信号成分が決定される。したがって、高速フーリエ変換は、サンプリングポイントから、またはサンプリングポイントのサブセットから固有のスペクトル信号成分を決定するための、上述したGoertzelアルゴリズムの1つの代替形態を意味する。
【0017】
別の実施形態によると、この方法は、複数の測定値のサブセットを選択するステップをさらに含む。この例では、固有のスペクトル信号成分が複数の測定値のサブセット内で決定される。言い換えると、固有のスペクトル信号成分を決定するために、一時的な磁界のサンプリングポイントのサブセットのみが使用される。サンプリングポイントとして複数の測定値のサブセットを選択することにより、測定値を、相対的に関連性の高い測定値のサブセットのみに限定することを可能にし、それによって、その後の固有のスペクトル信号成分の決定およびその後の駆動される移動部の位置決定において高い精度を確保することを可能にする。
【0018】
別の実施形態によると、複数の測定値のサブセットは、互いに隣接して配置される磁界センサから取得される。このようにして、測定値の整合性のあるセットが選択され、そこから、固有のスペクトル信号成分が特に高い信頼性の手法で決定される。
【0019】
別の実施形態によると、複数の測定値のサブセットは、4個から10個の間の測定値、また具体的には5個から8個の間の測定値、さらに具体的には6個の測定値を有する。言及した個数の測定値により、固有のスペクトル信号成分の決定において、高い信頼性と精度との間で特に良好に折り合いをつけ、および複雑さを容易に制御することを可能にする。
【0020】
別の実施形態によると、複数の測定値のサブセットを選択することは、移動部の移動経路に沿う磁界センサの空間的配置構成に従って複数の測定値を整理するステップと、その絶対値が所定の閾値を超えるような第1の測定値を決定するステップと、複数の測定値の上記サブセットとして上記第1の測定値および隣接する測定値を選択するステップと、を含む。このようにして、固有のスペクトル信号成分の決定において、可能な限り高い関連性を有する測定値を使用することが保証され、それにより隣接する測定値を選択することで高い信頼性が確保される。また、この選択は、特に効率的な手法で行われる。その理由は、測定値の明確な分析により第1の測定値のみが選出され、上記のサブセットのうちの他の測定値が磁界センサとの関連性を介して選択されるからである。その絶対値が所定の閾値を超える第1の測定値を決定するステップでは、上記第1の測定値を捜索するときの方向が、特定の用途において適切に決定される。
【0021】
別の実施形態によると、第1の測定値を供給する磁界センサの位置、および固有のスペクトル成分の位相角にて示される駆動される移動部のオフセット量から、駆動される移動部の位置が計算される。言い換えると、移動部の正確な位置が、第1の測定値を供給する上記の「その」磁界センサに対して、駆動される移動部のオフセット量から決定される。第1の測定値を供給した磁界センサの位置が、それに対してオフセット量が加算、またはそこからオフセット量が減算される既知の位置の一例である。
【0022】
代替的な実施形態によると、複数の測定値のサブセットは、最も大きな合計絶対値を有する隣接する磁界センサの所定の数の測定値のセットとして選択される。このようにして、最も強力な磁界の領域を表す測定値が選択され、それによって、位置決定にて高い信頼性が保証される。
【0023】
別の実施形態によると、複数の測定値を決定することは、複数の磁界センサにて測定データを提供するステップと、測定データを較正することで複数の測定値を生成するステップであって、上記較正が、電気モータの駆動要素により、また具体的には電気モータの電流通過コイルにより、動作中に発生される駆動磁界成分(drive magnetic-field component)を補償することを含むステップと、を含む。このようにして、すべての磁界成分を検出して、したがって、永久磁石にて発生される磁界ならびに電磁石にて発生される磁界の両方を信号成分として含む、生の測定データから、複数の測定値が生成され、複数の測定値が本質的に、永久磁石にて発生される磁界の信号成分のみを含む。したがって、駆動磁界成分を補償することは、ステータの電磁石にて発生される(したがって、移動部の永久磁石によるものではない)信号成分を除去することとみなされ得る。このようにして、固有のスペクトル信号成分は、特に高い信頼性の手法で決定される。駆動磁界成分を補償することは、アルゴリズム的手法で実施され、例えば対応するフィルタを介し、または参照用テーブルを使用することを介することで実施され、ここでは、電気モータの駆動要素の一時的な制御、すなわち電気モータの電磁石の制御を入力として使用可能である。
【0024】
別の実施形態によると、上記の較正は、複数の磁界センサのオフセット量を補償、および/または、製造の不正確さを補償、また具体的には不正確に配置される磁界センサにて生じる測定エラーを補償すること、をさらに含む。このようにして、磁界センサのセンサ固有のオフセット量を原因、または公称位置に対して不正確に配置される磁界センサを原因とする、磁界センサの内在的な不正確な測定が補償される。さらに、このようにして固有のスペクトル信号成分は、特に高い信頼性の手法で決定される。
【0025】
別の実施形態によると、複数の測定値を決定するステップと、固有のスペクトル信号成分を決定するステップと、駆動される移動部の位置を決定するステップとは、移動部の移動中に繰り返し実施される。動作中に上記ステップを繰り返し実施することで、駆動される移動部の位置が多様な時間に決定され、その結果、移動部の更新される位置が好適な規則的なインターバルで利用可能となる。具体的な実施形態では、上記ステップは1000分の1秒当たり少なくとも1回実施される。言い換えると、これらのステップは1秒当たり少なくとも1000回実行され、その結果、移動部の更新される位置が1秒当たり少なくとも1000回利用可能となる。別の実施形態では、上記ステップが10分の1秒当たり少なくとも1回実施される。結果として、移動部のためにより多くの回数で更新される位置データが利用可能となる。複数の測定値のサブセットを選択するステップおよび/または測定データを較正するステップが一実施形態で実施されるとき、これらのステップまたはこれらのステップのうちの1つのステップが同様に繰り返し実行される。これは、本明細書で説明される方法のすべての他のステップまたは修正形態にも適用される。
【0026】
本発明の例示的な実施形態は、電気モータの駆動される移動部を移動させる方法をさらに含み、この方法は、上記実施形態のうちの任意の実施形態で説明するように、駆動される移動部の位置を無接触で決定する方法に従い、駆動される移動部の位置を決定するステップと、駆動される移動部の決定された位置に基づき、駆動される移動部を移動させるステップと、を含む。このようにして、駆動される移動部の移動を制御可能となり、ここでは、駆動される移動部の上記移動が、駆動される移動部の決定された位置にて左右される。したがって、閉制御ループが提供され、この閉制御ループにより、駆動される移動部の移動が非常に高い精度で実行される。
【0027】
別の実施形態によると、電気モータは、移動部の移動経路に沿って配置される複数のコイルを備え、ここでは、駆動される移動部を移動させるステップは、制御下で複数のコイルに電流を供給することを含む。このようにして、電気モータのコイルが複数の電磁石を形成し、複数の電磁石を介して移動部が高い精度で移動される。
【0028】
別の実施形態によると、駆動される移動部は、ピペット操作デバイスのピストンであり、ここでは、ピペット操作の液体は、ピストンの移動にて吸引または分配される。代替的な実施形態では、駆動される移動部は、ピペット操作デバイスのピストンに結合され、その結果、駆動される移動部の移動がピストンの移動を引き起こす。この結合は、例えばリニアモータの移動部とピペット操作デバイスのピストンとの間のピストンロッドを介することなど、または回転可能に移動可能であるロータとピペット操作デバイスのピストンとの間の歯車構成などの比較的複雑な結合部などにより、複雑さを比較的低減して実行される。
【0029】
本発明の例示的な実施形態は、無接触での位置決定を伴う電気モータをさらに含み、電気モータは、周期的に離間される複数の極大値を有する移動部磁界を発生させる複数の永久磁石を有する駆動される移動部と、ここでは駆動される移動部はステータに対して移動可能に配置されるスタータと、移動経路に沿って存在する磁界を測定するために移動部の移動経路に沿って配置される複数の磁界センサと、複数の磁界センサから測定データを受け取る位置決定ユニットと、を備える。位置決定ユニットは、測定データから複数の測定値を提供し、複数の測定値が、移動部の位置にて左右される、複数の永久磁石にて発生される一時的な磁界のためのサンプリングポイントであること、複数の測定値から固有のスペクトル信号成分を決定することであって、上記固有のスペクトル信号成分が、移動部磁界の隣接する同方向の極大値の間の距離に対応する空間周波数を有すること、ならびに、固有のスペクトル信号成分に基づいて駆動される移動部の位置を決定すること、を行う構成とされる。
【0030】
電気モータの駆動される移動部の位置の無接触での決定の方法に関連して本明細書にて上述した追加の特徴、修正形態、および技術的な効果は、無接触での位置決定を伴う電気モータを同様に適用可能である。具体的に、電気モータの位置決定ユニットは、上述の方法の修正および/または追加されるステップを実行する構成とされる。
【0031】
電気モータの駆動される移動部は、ステータ、および複数の磁界センサに対して移動可能である。言い換えると、移動部は、ステータおよび複数の磁界センサにて画定される静止システムと称されるシステム内で移動する。電気モータは、複数の磁界センサに対して移動部が線形に移動するリニアモータでよいことを強調しておく。また、電気モータは、ステータおよび複数の磁界センサにて形成されるシステム内で回転する回転可能に移動可能であるロータを移動部として有することも可能である。
【0032】
本発明の別の実施形態によると、隣接する永久磁石は反対の極性を有する。移動部磁界の隣接する多様な極大値の間隔、すなわち永久磁石構成にて発生される移動部磁界の磁石のS極と磁石のN極との間の空間的距離が、永久磁石の長さまたは隣接する永久磁石の間の間隔に対応していてもよい。
【0033】
別の実施形態によると、複数の永久磁石は直列に配置され、ここでは隣接する永久磁石は、互いの側を向く同様の極性を有するように方向付けられる。具体的には、永久磁石は棒磁石であってもよい。永久磁石は、移動部の移動経路上に直列に配置される。隣接する同方向の極大値の間の距離が永久磁石の長さの2倍であってよい。このような構成を用いることで、一方で、高い磁界密度およびひいては電気モータの強い力と、他方での、移動部磁界の極大値を明確に画定することおよびひいては位置決定を非常に正確なものにすることと、の間において特に良好に折り合いをつけることが達成される。
【0034】
リニアモータでは、移動部は複数の永久磁石を有することができ、複数の永久磁石のそれぞれがS極およびN極を有し、同様の極性を互いに隣接させるように配置される。言い換えると、隣接する永久磁石のそれぞれは、それらのN極またはS極を互いに隣接して位置させるように配置される。回転可能に移動可能なロータを備える電気モータでは、永久磁石は、隣接する永久磁石が空隙に向かう方向に交互の極性を有するように配置構成される。したがって、隣接する永久磁石の中心間の距離は、移動部磁界の極間距離またはピッチである。ロータの場合、極間距離が幾何学的角度寸法として明記される。しかしながら、極間距離を幾何学的長さ寸法として明記することも可能である。固有のスペクトル信号成分の空間周波数は、永久磁石に沿う移動部磁界の極大値の間隔を基準とした、磁界センサと永久磁石との間の径方向のオフセット量に基づいて調整される。これは上述のシナリオの一例であり、これに従って、固有のスペクトル信号成分の空間周波数は、システム全体の幾何学的構造を考慮するが、それでも移動部磁界の同方向の極大値の間の距離に対応する。
【0035】
別の実施形態によると、複数の磁界センサは、複数のHallセンサである。ここでは、磁界センサに存在する磁界が非常に直接的に測定される。
【0036】
別の実施形態によると、複数の磁界センサは、移動部の移動経路に沿ってほぼ一様に配置される。磁界センサのほぼ一様な配置構成は、サンプリングポイント間のインターバルを規則的にすることを可能にし、それによって、固有のスペクトル信号成分の特に正確で高い信頼性の決定が可能となる。さらに、磁界センサの規則的な配置構成は、電磁石にて発生される磁界成分を非常に良好にフィルタリングして除去することを可能にする。リニアモータでは、磁界センサが直線に沿って配置され、それによって、非常に明確で単純な構成を可能とする。磁界センサは、別の形で配置されてもよく、例えば移動部の移動経路の周りで螺旋経路内に配置されてもよい。回転可能に移動可能であるロータを備える電気モータでは、磁界センサが円形経路上に配置される。
【0037】
別の実施形態によると、駆動される移動部は、4個から8個の間の永久磁石、また具体的には5個または6個の永久磁石を有する。永久磁石のこの指定数は、スタータの電磁石を介する移動部の効率的な移動と、良好な位置決定と、の間で良好に折り合いをつけるものである。具体的には、永久磁石のこの指定数は、固有のスペクトル信号成分の決定における、高精度および信頼性と、その複雑さを良好に制御することと、の間で良好に折り合いをつけることを可能にする。
【0038】
別の実施形態によると、複数の永久磁石は互いに固着される。このようにして、移動部磁界の極間ピッチ(pole pitch)を、製造テクノロジに関連させて良好に制御できる永久磁石の寸法にて画定することが、単純な手段にて達成される。
【0039】
別の実施形態によると、移動部磁界の隣接する同方向の極大値の間の距離は、10mmから20mmの間、具体的には12mmから15mmの間、より具体的には13mmから14mmの間である。示されるこれらの値は、移動部を寸法決定することと、移動部の移動のために十分な磁界密度を達成することと、固有のスペクトル信号成分の決定における良好な処理可能である分解能と、の間で良好に折り合いをつけるのを可能にする。
【0040】
別の実施形態によると、位置決定ユニットは、固有のスペクトル信号成分の位相角により、駆動される移動部の位置を決定する構成とされる。これに関して、位置決定ユニットは、固定のスペクトル信号成分の位相角を、既知の位置を基準とした、駆動される移動部のオフセット量へ変換する構成とされる。
【0041】
別の実施形態によると、位置決定ユニットは、サンプリングポイントに対してGoertzelアルゴリズムを適用することで固有のスペクトル信号成分を決定する構成とされる。高速フーリエ変換(FFT)または別の適切な種類の信号処理を適用することで固有のスペクトル信号成分を決定することも可能である。
【0042】
別の実施形態によると、位置決定ユニットは、複数の測定値のサブセットを選択し、および複数の測定値のサブセット内で固有のスペクトル信号成分を決定する構成とされる。
【0043】
別の実施形態によると、複数の測定値のサブセットは、4個から10個の間の測定値、また具体的には5個から8個の間の測定値、さらに具体的には6個の測定値を有する。
【0044】
別の実施形態によると、位置決定ユニットは、マイクロコントローラを備える。マイクロコントローラを用いることで、固有のスペクトル信号成分および駆動される移動部の位置が非常に迅速かつ効率的に決定される。マイクロコントローラがこれらの処理ステップのために最適化され、その結果、駆動される移動部の位置がほぼ実時間で実現される。しかしながら、測定データから移動部の位置を決定するためにユニバーサルマイクロコントローラを使用することも可能である。一般に、例えばさらには、適切なソフトウェアを有するコンピュータなどの、任意の種類のデータ処理デバイスが使用される。例示の適切なマイクロコントローラとして、Renesas(登録商標)RX71MおよびRenesas(登録商標)RX63Tがある。
【0045】
別の実施形態によると、ステータは、移動部の移動経路に沿って配置される複数のコイルを有し、ここでは、駆動される移動部は、複数のコイルに対して電流を制御下で供給することで移動可能となる。
【0046】
別の実施形態によると、複数の磁界センサの配置構成は、複数のコイルの配置構成に適合される。リニアモータでは、磁界センサおよびコイルは、移動部の移動経路に沿って等しい規則的なインターバルで配置される。ロータを備える電気モータでは、磁界センサおよびコイルは、ロータの中心から見て等しい規則的な角度インターバルで配置される。磁界センサの配置構成およびコイルの配置構成をこのように適合させることにより、生の測定データから特に高い信頼性および精度で測定値を生成することが可能となる。その理由は、コイルの磁界が磁界センサの視点から非常に規則的であるからである。
【0047】
別の実施形態によると、電気モータは、駆動される移動部の決定された位置に基づいて複数のコイルを通る電流の流れを制御する構成とされ、位置決定ユニットに結合される制御ユニットをさらに備える。このようにして、閉制御ループが提供され、この閉制御ループでは、測定データから決定された移動部の位置に基づいて複数のコイルを介して移動部の位置が制御される。
【0048】
別の実施形態によると、電気モータは、リニアモータであり、ここでは、駆動される移動部は移動経路上で線形的に移動可能である。
【0049】
代替的な実施形態によると、駆動される移動部は、ステータに対して回転可能に移動可能であるロータであり、ここでは、移動部の移動経路がほぼ円形である。上述のように、移動部の移動経路は、一回転中にロータの特定の構成要素が通過するすべてのポイントの総体として画定される。具体的には、移動部の移動経路は、一回転中に永久磁石の空隙の側を向く表面の1つのポイントが通過するポイントのセットとして画定される。
【0050】
別の実施形態によると、電気モータは、ロータの所定の部分が通過することを検出する基準ポイントセンサを備える。このようにして、ロータの回転数が測定される。このようにして、移動部、すなわち本例ではロータの、上述した位置決定と併せて、ロータの総回転が決定される。
【0051】
電気モータの駆動される移動部の位置の無接触での決定の方法の上述の実施形態のうちの任意の実施形態は、上述のすべての実施形態における電気モータに適用可能である。個々のまたは任意の組み合わせの、本方法の実施形態のすべての特徴の組み合わせが、個々のまたは任意の組み合わせの、電気モータのデバイスの実施形態のすべての特徴と併せて、ここで明確に開示される。
【0052】
移動部の位置の無接触の決定は、移動部の絶対位置を決定することに関連してよく、または移動部の相対位置を決定することに関連してよいことに概して留意されたい。言い換えると、位置決定の結果が絶対位置であってよく、または何らかの他の手法で決定される移動部の粗雑な部分(coarse position)を基準とした相対位置であってよい。
【0053】
本発明の例示的な実施形態は、ピペット操作の液体を吸引および分配するためのピペット操作システムをさらに含み、このピペット操作システムは、液体の側を向く端部および液体から離れる側の端部を有するピストンと、その中にピストンが配置されるピペット操作チャネルであって、ピペット操作チャネルの一方の端部にピペット操作先端部が配置され、ピストンを移動させることにより、ピペット操作先端部を通してピペット操作の液体を吸引および分配することが可能なピペット操作チャネルと、上述の例示的な実施形態のうちの任意の実施形態による電気モータであって、駆動される移動部がピストンまたはピストンの一部、あるいは駆動される移動部がピストンに駆動可能に結合される電気モータと、を備える。電気モータに関連させて、および電気モータの駆動される移動部の位置の無接触での決定の方法に関連させて、上述した追加の特徴、修正形態、および技術的な効果は、ピペット操作の液体を吸引および分配するためのピペット操作システムにも同様に適用可能である。
【0054】
ピペット操作システム内で、無接触での位置決定を利用する電気モータは、上述の例示的な実施形態にて指摘のように、特に有利に使用される。説明する電気モータを用いる位置決定は、具体的には迅速かつ正確な形で行われる。したがって、ピペット操作システムのピストンは、ハイダイナミクスで制御される。これは特に、ピペット操作システムにて有利である。その理由は、ピペット操作システムは、例えばラボラトリオートメーションで使用される場合、可能な限り短時間で、また可能な限りの高精度で多数のピペット操作オペレーションを実行することを意図するからである。特に有利には、このような電気モータは、ピペット操作オペレーションのために非常に高速でピストンを前後に移動させる比較的新しいピペット操作システムで使用され、ここでは、ピストンのストロークが吸引または分配される液体のボリュームよりも何倍も大きく、液体を吸引または分配することが、ハイダイナミクスで確立される圧力波を介して行われる。具体的には、ハイダイナミクスを特徴とするこのようなシステムでは、電気モータの移動部の迅速かつ正確な位置決定が非常に有益である。このようなハイダイナミクスのピペット操作システムは、WO2017/0107084A1で開示されている。この出願の内容は、この出願に対しての参照により本願に完全に組み込まれる。具体的には、本願のピペット操作システムは、WO2017/0107084A1の特許請求の範囲のすべての特徴を、個別または任意の組み合わせで有するようにさらに実装される。
【0055】
別の実施形態によると、ピストンの少なくとも液体の方を向く端部は、ピペット操作チャネルに対するシールを有し、それによって、ピストンの液体の側を向く端部とピペット操作先端部との間のピペット操作チャネル内に密閉される容積が存在する。ピストンの液体から離れる方の端部は、ピペット操作チャネルに対するシールを有してもよい。ピストンの両側の端部に2つのシールを用いることにより、双方向の移動のためにピペット操作チャネル内でピストンがほぼ対称に挙動することが保証される。
【0056】
本発明の例示的な実施形態は、データ処理システム上での実行時に上述の実施形態のうちの任意の実施形態による方法を実施するプログラム命令を含むコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品をさらに含む。これに関し、本方法の個別のステップはプログラム命令にて開始され、他の構成要素にて実行され、またはデータ処理システム自体の中で実行される。
【0057】
以下で、図を参照しながら本発明の追加の例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による電気モータを示す、部分的な概略長手方向断面図および部分的なブロック図である。
【
図2】本発明の別の例示的な実施形態による電気モータを示す、部分的な概略横方向断面図および部分的なブロック図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による電気モータ内での信号処理チェーンを示すブロック図である。
【
図4】固有のスペクトル信号成分の決定の実施例を示し、磁界センサの例示的な測定値を示すグラフである。
【
図5】本発明の例示的な実施形態によるピペット操作システムを示し、部分的な概略長手方向断面図および部分的なブロック図である。
【
図6】
図5のピペット操作システムで例えば使用され得る例示的な移動部の移動部磁界を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
図1は、本発明の例示的な実施形態による電気モータ2を示す。電気モータ2は、ステータ6と、ロータ4とを有する。加えて、電気モータ2は、複数の磁界センサ8と、位置決定ユニット12と、制御ユニット14とを有する。電気モータ2はリニアモータであり、リニアモータ内で移動部4は、ステータ6および複数の磁界センサ8に対して線形移動経路上を移動する。
【0060】
ステータ6は、中空シリンダ61にて形成されるチャネル62を有する。中空シリンダ61の周りに複数のコイル60が配置される。本実施例では、12個のコイル60が中空シリンダ61の周りに配置される。コイル60が駆動され、三相電流により移動部4を移動させる。三相電流を示すために、コイル60は、交互に文字U、V、およびWを有する。三相電流を供給することが単に例示であり、およびコイル60を通る任意適切な種類の電流フローが、移動部4に対して磁力を加えることに使用されることを強調しておく。移動部に対して磁力を加えるためにステータのコイルが如何にして励磁され得るかは当業者によく知られている。したがって、コイル60を通る特定の電流フローに関するさらなる言及は必要ない。
【0061】
移動部4は、複数の永久磁石40を備える。本実施例では、移動部4は、6個の永久磁石40を有する。6個の永久磁石40は棒磁石であり、各棒磁石はその一方の端部にS極を有し、そのもう一方の端部にN極を有する。6個の永久磁石40が互いに反対の極性を有するように配置される。言い換えると、第1の永久磁石のN極が第2の永久磁石のN極に隣接するように配置され、第2の永久磁石のS極が第3の永久磁石のS極に隣接するように配置され、第3の永久磁石のN極が第4の永久磁石のN極に隣接して配置されるなどである。永久磁石40のそれぞれの隣接する端部が互いに固着され、その結果、6個の永久磁石40が1つのユニットを形成する。永久磁石40のこの配置構成により、交互的な移動部磁界が得られる。このような配置の永久磁石の隣接するN極とS極との間に、単一の永久磁石の長さに相当する固定される極間距離が存在する。移動部磁界の同方向の極大値の間の距離がDで示され、永久磁石の長さの2倍に相当する。
【0062】
移動部4は、ステータ6のチャネル62を通って延在する線形の移動経路43に沿って移動可能である。移動部4は、第1の端部キャップ41と、第2の端部キャップ42とを有する。端部キャップ41,42により、移動部4はチャネル62内で支持され、その結果、移動部4は移動経路43に沿って移動できるが、移動経路43に対して直角の方向にはほぼ移動可能でない。
【0063】
図1の例示的な実施形態では、電気モータ2は、12個の磁界センサ8を有する。磁界センサ8は、Hallセンサである。例示する適切なHallセンサとして、Asahi Kasei Microdevices(登録商標)からのAllegro(登録商標)A1308LLHLX-1-TおよびEQ-433Lがある。しかしながら、他の種類の磁界センサも同様に使用できる。磁界センサ8は、移動部4の移動経路43に沿って配置される。具体的に、磁界センサ8は、移動経路43に平行な直線上に配置される。磁界センサ8は、ステータ6のコイル60の外側に配置される。磁界センサ8の配置構成は、コイル60の配置構成に適合される。磁界センサ8の数はコイル60の数に一致する。磁界センサ8およびコイル60の両方が、移動部4の移動経路43に沿って規則的な間隔で配置される。1つのコイルおよび1つの磁界センサのそれぞれは、移動経路43に対して等しい軸方向位置に配置される。
【0064】
複数の磁界センサ8は、位置決定ユニット12に接続される。明確にするために、1つの磁界センサと位置決定ユニット12との間の接続部分のみを示している。位置決定ユニット12は、磁界センサ8から測定データを受け取る。これらの測定データから、位置決定ユニット12は、後述のように移動部4の位置を決定する。
【0065】
位置決定ユニット12は、制御ユニット14に結合され、動作中、移動部4の位置を制御ユニット14に伝達する。制御ユニット14は、位置決定ユニット12にて決定される移動部4の位置を、移動部4の所望の位置と比較し、チャネル62内で所望の位置まで移動部4が移動される形で、ステータ6のコイル60を制御する。これを目的として、制御ユニット14がコイル60に接続される。やはり明確にするために、制御ユニット14とコイル60のうちの1つのコイル60との間の1つの接続部分のみを示している。
【0066】
電気モータ2の動作、また具体的には位置決定ユニット12によるステータ6内での移動部4の位置決定を、
図3および4を参照して以下で詳細に説明する。
【0067】
位置決定ユニット12および制御ユニット14は、上述のように別個のユニットとして実装される。しかしながら、位置決定ユニット12および制御ユニット14は、1つの一体化されるユニットとして形成されることも可能である。位置決定ユニット12および制御ユニット14のそれぞれは、ハードウェアまたはソフトウェア、あるいはハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせを備えることができる。具体的には、位置決定ユニット12および制御ユニット14のそれぞれ、さらには一体化されるユニットは、プロセッサおよびメモリを備えることができる。移動部4の位置決定を含めた、電気モータ2を動作させる方法ステップを実行または開始するコンピュータプログラムが提供され得る。
【0068】
図2は、本発明の別の例示的な実施形態による電気モータ2を示す。やはり、電気モータ2は、複数の永久磁石40を有する移動部4と、複数のコイル60を有するステータ6と、複数の磁界センサ8と、位置決定ユニット12と、制御ユニット14とを備える。
【0069】
本例では、移動部4は回転可能に移動可能なロータである。ロータ4はロータボディ44を有し、ロータボディ44の外側に永久磁石40が設置される。ロータ4は、ロータボディ44の円周の周りに分布される12個の永久磁石を有する。永久磁石40が交互の極性を有する。すなわち、互いに隣接して配置される永久磁石40において、それらのうちの一方が、そのS極を外側に向けて配置され、対してもう一方がそのN極を外側に向けて配置される。移動部磁界の極間距離またはピッチは、隣接する永久磁石の中心間の距離として画定される。極間距離は、幾何学的角度値として明記されまたは特定の径方向位置における幾何学的な長さインターバルとして明記される。移動部磁界の同方向の極大値が距離Dを有し、すなわち極間距離の2倍である。
【0070】
ステータ6のコイル60は、ロータボディ44の周りにおよび永久磁石40の周りに配置され、その結果、永久磁石40とコイル60との間に空隙が得られ、移動部4を移動させるためにその空隙を通してコイル60から永久磁石40まで磁力が加えられる。複数の磁界センサ8は、ロータボディ44の円周の一部に沿ってコイル60の周りに配置される。したがって、複数の磁界センサ8は、ロータ4の移動経路に沿って配置され、ロータ4の移動経路は、この実施例ではロータ4の回転中に永久磁石40の表面にて表される円として画定される。
図2の電気モータ2は6個の磁界センサ8を有する。
【0071】
コイル60および磁界センサ8は、明確にするために
図2に示さないステータハウジング内に配置される。これらの構成要素をステータハウジング内に収容、およびこのようなステータハウジングに対してロータ4を回転可能に支持する多くの可能性が当業者によく知られていることから、本文脈においてさらなる説明は必要ない。
【0072】
さらに、電気モータ2は、基準ポイントセンサ10を備え、基準ポイントセンサ10は、この実施例では、ステータ6内に配置される第1の要素10aと、ロータボディ44上に配置される第2の要素10bとから構成される。本実施例では、第2の要素10bは、有色表面であり、対して第1の要素10aは有色表面10bを検出できる光学センサである。さらに、第1の要素10aは、動作中に有色表面10bの通過を記録するカウンタを装備する。このようにして、ロータ4の回転が測定される。
【0073】
このようなロータ4の回転数の決定に加え、ロータ4の正確な回転位置決定は、磁界センサ8の測定値を用いて位置決定ユニット12にて実施される。次いで、この位置が動作中に制御ユニット14に伝えられ、制御ユニット14は、ロータ4を所望の位置まで回転させることを目的として、この情報を使用し、それに従ってコイル60を励磁する。やはり、明確にするために、磁界センサ8と位置決定ユニット12との間の接続部分のうちの1つのみ、および制御ユニット14とコイル60との間の接続部分のうちの1つのみを、
図2に示している。しかしながら、すべての磁界センサ8は位置決定ユニット12に接続され、すべてのコイル60は制御ユニット14に接続される。
【0074】
以下に、さらに、
図2の電気モータ2の場合における位置決定ユニット12による位置決定を、
図3および4を参照して説明する。
【0075】
図1および
図2は、ステータ、移動部、および磁界センサの例示的な配置構成のみを示していることを強調しておく。多くの他の配置構成も可能である。例えば、移動部を駆動するために提供されて示される永久磁石に加え、位置を決定するために使用される移動部磁界を発生させる別の永久磁石が存在することが可能である。これらの追加の永久磁石は、固有のスペクトル信号成分を高い信頼性で決定することを目的として、駆動のために提供される永久磁石とは異なる間隔で配置される。例えば、回転可能に移動可能なロータを備える電気モータの例では、このような追加の永久磁石をロータの全円周の周りに配置することが可能であり、ここでは磁界センサがロータの移動経路の一部のみに沿って配置される。しかしながら、追加の永久磁石はロータの円周の一部のみの周りに配置されることも可能であり、ここでは磁界センサはロータの移動経路全体に沿って配置される。
【0076】
図3は、本発明の例示的な実施形態による電気モータ内での信号処理チェーンのブロック図を示す。示す信号処理チェーンは、本発明の例示的な実施形態による電気モータの移動部の位置の無接触での決定の方法の詳細な説明を提供する役割も有する。示す信号処理チェーンは、
図1の電気モータおよび
図2の電気モータのそれぞれにおいて使用可能である。
【0077】
図3は、位置決定ユニット12に対する複数の磁界センサ8の接続部と、制御ユニット14に対する位置決定ユニット12の接続部と、複数のコイル60に対する制御ユニット14の接続部とを示している。以下に、磁界センサ8の測定データから移動部の位置を決定する個別のステップを特に説明しながら、位置決定ユニット12を取り扱う。これに関して、説明のために
図4も参照する。
【0078】
位置決定ユニット12は、較正モジュール120と、選択モジュール122と、Goertzelアルゴリズムモジュール124と、位置計算モジュール126とを備える。較正モジュール120は磁界センサ8に接続され、磁界センサ8から測定データを受け取る。較正モジュール120は、選択モジュール122にさらに接続される。さらに、選択モジュール122は、Goertzelアルゴリズムモジュール124に接続され、位置計算モジュール126に接続される。Goertzelアルゴリズムモジュール124は、位置計算モジュール126にさらに接続される。位置計算モジュール126は、制御ユニット14に接続される。加えて、制御ユニット14は較正モジュール120に接続される。
【0079】
較正モジュール120は、磁界センサ8から生の測定データを受け取り、すなわち、較正モジュール120は、磁界センサ8の場所に存在するすべての磁界の重ね合わせを表す測定データを受け取る。磁界センサのそれぞれは、それ自身のアナログ-デジタル変換器を有することができる。磁界センサの出力端子は、同じアナログ-デジタル変換器に迅速に連続して接続され、アナログ-デジタル変換器は、デジタル形態の連続する測定値(measurement series)として測定データを較正モデルまで送ることも可能である。例示的で適切なアナログ-デジタル変換器としては、Analog Devices(登録商標)のAD7266BCPZがある。較正モジュール120は、生の測定データをフィルタリングし、磁界センサ8の場所で移動部の永久磁石にて発生される磁界を表す測定値を生成する。この目的のために、較正モジュール120は、永久磁石内にその起源を有さない信号成分を測定値からフィルタリングして除去する。本実施例では、較正モジュール120は、3つの種類の信号成分をフィルタリングして除去する。
【0080】
1つ目として、測定データは磁界センサ8のオフセット値にて修正される。オフセット値を決定するために、ステータ内に移動部がない状態、およびコイル内に電流がない状態において、電気モータの通常動作の前に磁界センサの測定値が測定される。これらの測定値はオフセット値を表し、個別の磁界センサ8に保存される。較正モジュール120では、これらのオフセット値が通常の動作中に加算または減算される。
【0081】
2つ目として、ステータのコイルにて発生される磁界の信号成分はフィルタリングされて除去される。この目的のために、既知の電圧が試験オペレーションにてコイルに印加され、得られる磁界が測定され、試験の測定データが保存される。通常動作中、制御ユニット14は、較正モジュール120に信号を送信し、制御ユニット14は、その信号を用いて、コイル60に印加される電圧に関する情報を提供する。較正モジュールは、測定された試験データにアクセスし、測定データ内の対応する成分を排除する。
【0082】
3つ目として、磁界センサ8の不正確な配置が補償される。磁界センサ8のそれぞれは、公称位置を有し、磁界センサ8は、電気モータのデザインに従ってその公称位置に配置される。しかしながら、製造中に誤差が生じる可能性があり、それによって、磁界センサのうちの1または複数の磁界センサの実際の位置が公称位置からずれる。この場合、磁界センサは、公称位置にて磁界を測定せず、実際の位置にて磁界を測定する。試験モードでの測定により、対応する補正率または補正アルゴリズムが作成され、それらによって、測定データは、公称位置のために推定される磁界へ変換される。
【0083】
較正モジュールは、複数の永久磁石にて発生される、ステータの基準システム内に存在する一時的な磁界のための測定値のセットを出力として提供する。この較正は、不完全である可能性があり、複数の永久磁石にて発生される一時的な磁界のための測定値が推定されることを強調しておく。この場合においても、このことは一般的な例としてよい。したがって、複数の永久磁石にて発生される一時的な磁界のための測定値は、実際の測定に基づく推定値として表されてもよい。
【0084】
測定値は、選択モジュール122に伝達される。
図4では、測定値が円にて表され、全体として参照符号70を有する。測定値の数、およびひいては磁界センサの数が
図1の電気モータと一致しないが、
図4において左から右に示される測定値は、
図1に示すように、リニアモータに沿う磁界センサの配置構成に合致すると明確に考えてよい。
図4のx軸はcmの単位を示し、ここでxの値は電気モータの基準ポイントを基準、または、例えばリニアモータのチャネルの端部を基準とした距離を示している。
図2の電気モータの位置決定では、選択モジュールが排除されてもよい。
図2の電気モータが6個の磁界センサのみを有する理由、およびロータボディの全円周周りにある永久磁石の配置構成の理由により移動部磁界の一部が常にすべての磁界センサに適用される理由としては、測定値を減らすことが望ましくない可能性がある。
【0085】
選択モジュール122は、較正モジュール120から測定値のセット70を受け取り、関連する測定値のサブセットを選択する。このとき、選択モジュール122は、各測定値に対して、複数の永久磁石にて発生される磁界の絶対値を計算する。絶対値は、センサ基準値からの絶対偏差として定義され、永久磁石から離れた距離のところでの磁界センサの測定値を表す。
図4の線図では、センサ基準値が0値として定義されている。
【0086】
選択モジュール122は、得られた絶対値を連続的にチェックし、これが0cmの位置にある磁界センサに関連する絶対値から開始し、その絶対値は所定の閾値を上回っている。
図4の例示的な実施形態では、所定の閾値は800である。これらの値は、無次元の出力値とみなされ、単に例示的な値を有する。
図4に示す測定値の場合、選択モジュール122は、3.7cmの位置の磁界センサに関連する測定の絶対値を、所定の閾値を上回っている第1の絶対値と決定する。この決定に基づいて、選択モジュール122は、3.7cmの位置の磁界センサに関連する測定値、および関連するサブセットとしての隣接する5つの測定値を選択する。選択される測定値は、説明のために
図4では×印が付されて、参照符号72で示されている。
【0087】
6個の選択される測定値72は、Goertzelアルゴリズムモジュール124に伝達される。加えて、選択モジュール122は、その磁界センサの位置を位置計算モジュール126に伝達し、その測定値が、所定の閾値を上回る第1の絶対値を有する。本実施例では、選択モジュール122が位置3.7cmを位置計算モジュール126に伝達する。この伝達を介して、位置計算モジュール126は、後述のように、移動部の所定の構成要素が位置3.7cmの近くにある情報を提供する。位置3.7cmは、既知の位置と称される。次いで、移動部の正確な位置は、この既知の位置およびGoertzelアルゴリズムモジュール124の結果をリンクさせることで計算される。
【0088】
Goertzelアルゴリズムモジュール124は、Goertzelアルゴリズムのための基準として6個の選択される測定値72を受け取る。言い換えると、6個の選択される測定値72は、サンプリングポイントであり、サンプリングポイントにてGoertzelアルゴリズムが実行される。Goertzelアルゴリズムは、サンプリングポイントからのスペクトル信号成分が移動部磁界の2つの隣接する同方向の極大値の間の距離Dに対応する空間周波数を有することを決定する。したがって、本実施例では、Goertzelアルゴリズムは、移動部の永久磁石の極間距離の2倍に対応する空間周波数におけるサンプリングポイントにて形成される信号のスペクトル成分を決定する。上記固有の空間周波数における上記スペクトル信号成分または上記スペクトル成分は、固有のスペクトル信号成分とも称される。示される実施例では、2つの隣接する同方向の極大値の間の距離Dが1.38cmである。
【0089】
固有のスペクトル信号成分を基準とするサンプリングポイントの分析は、定義される極間ピッチを有する永久磁石が極間ピッチの2倍の空間周波数で強い振動成分を有する磁界を発生させる、考えに基づく。言い換えると、説明される分析は、定義される極間ピッチを有する複数の永久磁石が、有意な程度で、この定義される極間ピッチと共に変化するような磁界も形成する、考えに基づく。この磁界の位置は、固有のスペクトル信号成分を基準としたスペクトル分析にて決定される。
【0090】
固有のスペクトル信号成分は、
図4では参照符号74を有し、その全長に亘って正弦曲線として示される。固有のスペクトル信号成分74は、
図4に示すように、連続曲線として表される。しかしながら、固有のスペクトル信号成分74は、2つの固有値でも表され、すなわち振幅および位相角でも表される。この例で、振幅は、永久磁石にて発生されて固有の空間周波数で振動する磁界成分の強さを表す。位相角は、例えばその測定値が所定の閾値を上回る絶対値を有する第1の磁界センサの位置を基準、あるいは電気モータの端部の位置または他の基準値を基準とするように、既知の位置を基準とした、振動磁界成分のオフセット量を表す。オフセット量は、
図4の本実施例では、その測定値が所定の閾値、すなわち本実施例では3.7cmを上回る第1の絶対値を有する磁界センサの位置と、固有のスペクトル信号成分74の次の局所的な極大値または極小値の位置と、の間の距離として定義される。本実施例では、オフセット量は-0.1cmである。
【0091】
Goertzelアルゴリズムモジュール124は、オフセット量を位置計算モジュール126に伝達し、位置計算モジュール126は、オフセット量と、選択モジュール122から受け取る既知の位置とから、駆動される移動部の位置を計算する。本実施例では、駆動される移動部の位置は3.6cmとなり、これが3.7cmと-0.1cmとの和に一致する。このようにして、位置計算モジュール126が移動部の位置を決定し、この情報を制御ユニット14に伝達する。
【0092】
移動部の決定された位置において移動部のいずれの構成要素またはいずれの部分が見つけられるかは、電気モータの固有のデザインおよび上述の信号処理の特定の実装形態にて決まる。
図3および4の実施例では、上記の信号処理にて決定された移動部の位置が、移動部の移動経路に沿う第2の極の位置である。第2の極の位置を識別するためのバックグラウンドは、第2の極が第1の極よりも明確に識別可能である、考えである。その理由は、追加の極が存在しないことを理由として第1の極にて発生される磁界がより遠くまで延在し、よって弱いからである。この
図4の測定値では、このことが、3.7cmの位置にて磁界センサの測定値の手前で、もう一方の方向において小さいピークが既に存在する、事実から分かる。所定の閾値は、第2の極の磁界の絶対値が所定の閾値を超えるように選択される。この場合、移動部の既知の幾何形状に基づいて、移動部の任意の部分の位置を決定することが可能である。ここで説明する第2の極の位置決定に加え、移動部の特定の構成要素の位置を決定するための他の可能性も存在することを強調しておく。その位置が正確に高い信頼性で決定される構成要素は、所与のシステムにおいて、個々の環境に従うように、当業者にて選択および決定される。
【0093】
図3を参照しながら、複数のモジュールの組み合わせとして位置決定ユニット12を説明する。モジュールは論理ユニットであり、論理ユニットのそれぞれが信号処理オペレーションの特定のステップを実施する。実際の実装形態内の個別のステップの分離がより曖昧でもよく、あるいは処理ステップまたはそれらのサブステップが多様な形で集団化されてもよいことが分かる。位置決定ユニットは、マイクロコントローラであっても、または信号処理のための任意の他の適切なデバイスであってよい。
【0094】
したがって、
図4の例示的な実施形態では、位置決定ユニット12は、磁界センサの測定データから移動部の位置を決定するために30μsから40μsの間を必要とする。これは、制御ユニット14にて移動部の位置が非常に迅速に、また具体的にはほぼ実時間で、使用可能となることを意味する。位置決定ユニット12のハイダイナミクスは、移動部が迅速に移動する場合でも、移動部の位置を効率的に制御することを補助する。
【0095】
図5は、本発明の例示的な実施形態によるピペット操作システム100を示す。ピペット操作システム100は、電気モータ2を備え、電気モータ2は原理的に
図1の電気モータ2に非常に類似する。類似の構成要素には同様の参照符号が付され、重ねて説明しない。
図1の説明を明確に参照されたい。電気モータ2は、
図5のピペット操作システム100内で垂直方向に配置される。
【0096】
中空シリンダ61にて形成されるチャネル62は、ピペット操作システム100のピペット操作チャネル62である。電気モータ2の移動部4は、ピペット操作システム100のピストン4であり、ピストン4は、ピペット操作チャネル62内で移動可能に受容される。
【0097】
移動部の第1の端部キャップ41は、ピストンの下側端部キャップであり、移動部の第2の端部キャップ42は、ピストンの上側端部キャップである。第1の端部キャップ41および第2の端部キャップ42は、ピペット操作チャネル62に対してピストンを密閉するシールである。
【0098】
本実施例では、移動部4は、5個の永久磁石40を備え、永久磁石40は同様の極が互いの側を向くようなペアとして
図1のように配置される。本実施例では、10個のHallセンサ8および10個のコイル60がさらに存在する。永久磁石の数、コイルの数、および磁界センサの数は、実際の実施形態に合うように適合されることが分かる。
【0099】
端部キャップ41,42は、好適には、例えば米国、コネチカット州、ノーウォークのAirpot Corporationから市販されるピストンから知られるような、グラファイトを含む低摩擦材料から形成される。この材料にて実現される低摩擦を可能な限りの完全な形で活用するために、中空シリンダ61は、好適には、ガラスシリンダとして設計され、その結果、移動経路43に沿うピストン4の移動中、グラファイト含有材料がガラス表面上で非常に低摩擦で摺動する。
【0100】
図1から4を参照して上述したように、磁界センサ8は、測定データを位置決定ユニット12まで伝達し、位置決定ユニット12は、さらにピストン4の位置を決定してピストン4の位置を制御ユニット14に伝達し、制御ユニット14は、さらにピストン4の位置に基づいてコイル60を制御する。この制御の詳細に関しては、上述の説明を参照されたい。
【0101】
ピペット操作先端部26は、それ自体は既知である手法で、ピペット操作チャネルの投与側端部に着脱自在に取り付けられる。ピペット操作先端部26は、その内部にピペット操作空間(pipetting space)28を画定し、ピペット操作空間28は、ピペット操作チャネルから離れる側の端部において、ピペット操作開口部30のみを介してアクセス可能である。
図5に示すような、分配プロセスの前の例示の状態において、一定量の投与液32がピペット操作空間28内に存在する。この量は、既に実施された吸引プロセスにて取り上げられたものである。
【0102】
移動部4と投与液32との間に作用ガス(working gas)34が永久的に存在し、作用ガス34は、移動部4と投与液32との間で力を伝達する手段として機能する。ピペット操作先端部26が完全に空である場合でも、作用ガス34は移動部4と投与液32との間に存在する。その理由は、ピペット操作先端部26は、投与液を吸引するために対応する投与液供給源の中に沈められ、その結果、この状態において少なくともピペット操作開口部30にて投与液のメニスカスが存在するからである。したがって、ピペット操作のための関連の各状態において、作用ガス34は、移動部4と投与液32との間に永久的かつ完全に存在することとなり、移動部4および投与液32を互いから分離する。
【0103】
以下で、
図5に示す状態に基づき、ピペット操作システム100の2種類の分配プロセスを説明する。一方は、移動部4を比較的低速で移動させ、および作用ガス34の圧力の比較的小さい増加にてピペット操作開口部30を通して対応する量のピペット操作の液体32を押し出すことが可能である。もう一方は、移動部4を比較的高速で移動させてホイップのように移動させ、および得られる圧力波を用いてピペット操作開口部30を介して所望の量のピペット操作の液体32を押し出すことが可能である。この実施形態では、約1μlの投与液32などといった非常に少量の液体を分配するために、この非常に少量の液体の体積の、例えば約20倍といった複数倍である容積に亘って第1の端部キャップ41の端部表面が通過するような大きいストロークで移動部4の移動が引き起こされる。その結果、圧力波が生じる。非常に迅速に連続する形で、移動部4がピペット操作の液体32の側に向かって移動した後に後退させられ、ここで移動部4は、その非常に少量の液体の体積に対応する形で初期位置に対してその位置を変化させる場所で停止する。移動部4のこの戻りの移動により、圧力波に逆らう圧力低下が生じる。圧力波は、ピペット操作開口部30からその非常に少量の液体を押し出し、その後、消失する。
【0104】
説明する両方の分配プロセスでは、
図1から4を参照して上述したように、移動部が制御下で移動させられる。特に、移動部4は、比較的高速で移動する第2の実施形態では、位置決定のための上述の方法が非常に良好に使用可能となる。その理由は、移動部4の位置が非常に迅速に決定され、移動部4の位置の制御が移動部4の移動のハイダイナミクスに対応し得るからである。同じことが吸引プロセスにも同様に当てはまる。
【0105】
図6は、例えば
図5のピペット操作システム100の移動部4中に設けられた場合の、複数の永久磁石40、さらには移動部磁界45の一部を示している。具体的に、
図6は、
図1および
図5に関連させて本明細書にて上述したように、反対の極性を有する極を互いの側に向かせるように、それぞれが配置される5個の永久磁石40を示す。したがって、移動部磁界の隣接する同方向の極大値の間の距離Dは、2つの永久磁石40の長さに相当する。
【0106】
図6では、移動部磁界45からの、破線にて境界を画定される一部が示されている。移動部磁界45は、複数の磁力線にて示される。
図6は、それぞれの例において永久磁石の間の境界で複数の磁力線が収束していることを明らかにし、これがそれぞれの磁界の極大値を示している。永久磁石の間の境界では、永久磁石の向きに対して直角であり、よって回転対称のシステム内では放射状である強い磁界成分を有する磁界が形成される。このような強い磁界成分は良好に検出される。
【0107】
図6、およびその前の図が正確な縮尺ではないことを強調しておく。
図6、およびその前の図は、本発明の例示的な実施形態の機能的原理を説明するものである。例えば、移動部磁界の強さおよび永久磁石と磁界センサとの間の距離は、特に効率的で高い信頼性の位置決定のために、互いに適合され得ることが分かる。
【0108】
図5のピペット操作システムは、WO2017/017084A1に示す任意の構成要素および修正形態を備えることができる。上記特許出願の内容は、その全体が、その文献に対しての参照により本願に組み込まれる。
【0109】
説明する位置決定の方法、および説明する電気モータは、ピストンをピペット操作の液体に直接に隣接させるピペット操作システムにも適する。
【0110】
さらに、説明する位置決定の方法、および説明する電気モータは、電気モータにて駆動される構成要素が高い精度で移動させられる任意の他の技術的システムにも適する。
【0111】
例示的な実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われ、均等物が採用され得ることが当業者には明らかであろう。本発明は、説明される特定の実施形態のみ限定されるべきではない。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるすべての実施形態を包含する。