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  • 特許-経口超音波プローブ及び使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】経口超音波プローブ及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
A61B8/12 ZDM
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019570889
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018038788
(87)【国際公開番号】W WO2018237162
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-10-05
(31)【優先権主張番号】62/524,196
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518442044
【氏名又は名称】オーラル ディアグノスティックス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Oral Diagnostix LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】カッツバーグ,リチャード ダブリュ.
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/034785(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0374331(US,A1)
【文献】実開昭57-193817(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顎関節を画像化する経口超音波プローブであって、
長手軸を有するハンドル部分であって、電源に接続されるように構成されている前記ハンドル部分と、
前記ハンドル部分の前記長手軸に対して、ある作用角で配置されるように、頭部に向かってくの字型である経口部分であって、音波を放射して受けるように構成された前記経口部分と、
を含み、
前記経口部分の前記作用角は鋭角であり、
前記ハンドル部分は第1の幅を有し、前記経口部分は第2の幅を有し、前記第2の幅は前記第1の幅より大きく、
前記ハンドル部分と前記経口部分は厚さがほぼ同じであり、前記厚さは前記第1の幅以下であり、
前記第1の幅及び前記第2の幅の各々は、前記頭部に向かってくの字型の曲がる方向に沿って画定され、前記厚さは、前記頭部に向かってくの字型の曲がる方向と直交して画定される、
経口超音波プローブ。
【請求項2】
前記作用角は45度未満である、請求項1に記載の経口超音波プローブ。
【請求項3】
前記作用角は約30度である、請求項1に記載の経口超音波プローブ。
【請求項4】
前記ハンドル部分はある長手方向長さを有し、前記経口部分の長さは、前記ハンドル部分の前記長手方向長さの約3分の1である、請求項1に記載の経口超音波プローブ。
【請求項5】
前記ハンドル部分及び前記経口部分は、ほぼフラットな側面と、前記側面間の間隔である前記厚さと、を画定する、請求項1に記載の経口超音波プローブ。
【請求項6】
前記経口部分の遠位端が丸みを帯びている、請求項5に記載の経口超音波プローブ。
【請求項7】
前記経口部分は、その遠位端に、前記音波を放射して受けるように構成されたトランスデューサアパーチャを含む、請求項1に記載の経口超音波プローブ。
【請求項8】
前記ハンドル部分が電源ケーブルを介して前記電源に接続されている、或いは、前記電源が、前記ハンドル部分に接続された少なくとも1つのバッテリである、請求項1に記載の経口超音波プローブ。
【請求項9】
前記電源は、制御装置に結合されているか、前記制御装置の一部分である、請求項8に記載の経口超音波プローブ。
【請求項10】
ハンドル部分及び経口部分を有し、頭部に向かってくの字型になっている経口プローブを使用して顎関節を画像化する方法であって、
前記経口プローブの前記ハンドル部分を保持するステップと、
前記経口プローブの前記経口部分のトランスデューサアパーチャが前記顎関節とほぼ向き合うように、前記経口部分を、患者の口内の、頬部と歯茎の間の凹部に挿入するステップと、
前記経口プローブの前記経口部分の前記トランスデューサアパーチャを介して音波を放射して受けることによって、少なくとも解剖学的矢状面における前記顎関節の画像を生成するステップと、を含み、
前記経口部分の幅は前記ハンドル部分の幅(W1)よりも大きく、前記ハンドル部分と前記経口部分は厚さがほぼ同じであり、
前記第1の幅及び前記第2の幅の各々は、前記頭部に向かってくの字型の曲がる方向に沿って画定され、前記厚さは、前記頭部に向かってくの字型の曲がる方向と直交して画定される、
方法。
【請求項11】
音波を放射して受ける前記ステップによって、軸方向面、冠状面、及び矢状面を含む、全ての解剖学的面における前記顎関節の画像が生成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記経口プローブの前記トランスデューサアパーチャから放射される前記音波の振幅、周波数、及び継続時間を制御するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記経口プローブを電源に接続するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記経口プローブの前記経口部分は、前記ハンドル部分の長手軸に対して、ある作用角で配置されており、前記作用角は鋭角である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記経口部分の前記作用角は約30度である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ハンドル部分及び前記経口部分は、ほぼフラットな側面と、前記側面間の間隔である厚さと、を画定する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記ハンドル部分は第1の幅を有し、前記経口部分は第2の幅を有し、前記第2の幅は前記第1の幅より大きい、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記経口プローブの前記経口部分の遠位端が丸みを帯びている、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年6月23日に出願された米国特許仮出願第62/524,196号の優先権を主張するものであり、その全開示内容が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、顎、即ち顎関節の超音波画像化の為の経口プローブに関する。
【背景技術】
【0003】
顎関節症(TMD)は、潜在的に体が衰弱していく症状の一群を表す重大な公衆衛生問題の1つであり、米国の人口の約5~12%に影響を及ぼしている。TMDは、(慢性腰痛に次ぐ)2番目に多い筋骨格疾患であり、痛みと身体障害を伴い、多くの場合は、円板が変位して起こる顎関節(TMJ)の機械的な機能不全の結果である。痛みを伴うTMDは、個人の日常活動、心理社会的機能、及び生活の質に影響を及ぼしうる。円板変位に関する研究では、円板変位を評価する為の臨床的アプローチが診断につながりうるのは、感度がわずか0.34~0.54Vp-pである場合であることが示されている。その為、臨床診断、個々のプレゼンテーションにおける治療の意思決定、及び円板変位の診断結果の確認を改善するには画像化が必要となる。
【0004】
現在あるTMJ画像化技術として、パノラマX線撮影、円錐ビームCT(CBCT)(硬組織のみ)、及び磁気共鳴画像化(MRI)がある。これらの技術及び有効性がTMD診断において広く普及する為には幾つかの障壁があり、それは例えば、パノラマX線撮影及びCBCTでは電離放射線に曝露することの医療リスクがあること、CBCT及びMRIが両方とも高コストであること、病院及び医療画像検査室に置かれているMRIへのアクセスが限定されること、患者に関連する閉所恐怖症の懸念とこれに対する不安軽減の為の管理要件等である。関節造影も以前は画像化に用いられていたが、その侵襲性の為に用いられなくなった。
【0005】
TMJの超音波画像化を開発する先行の試みは最適なものではなかった。それは、利用される画像化プローブのサイズが大きく、生体構造の軸方向面及び冠状面だけの画像化アプローチに限定されたことで、患者の顔の側面の外側からしか画像を取得できなかった為である。骨が障壁となって、音波の浸透がTMJ軟組織生体構造全体のうちの表面までに制限される。超音波エネルギがTMJの軸方向及び冠状の生体構造全体を画像化するだけの浸透能力を有していたとしても、これら2つの生体構造面の画像化だけでは円板変位を十分に描写できない。研究では、図1に示されるような、外側から画像化するアプローチで達成される特異度は、口を閉じた姿勢での円板変位に関してはわずか22.8%、口を開いた姿勢での円板変位に関してはゼロであった。
【0006】
図1は、そのような、大きなプローブで外側から行われる、最適ではない超音波画像化を示す。顔の外側からのアプローチは臨床的に容認されていない。その理由は、1)TMJの顆、結節、及び頬骨弓の骨の、顕著な輪郭の生体構造によって音の浸透が厳しく制限される為、並びに2)画像化が軸方向面(横断面)及び冠状面(長手方向面)のみの描写に限定される為である。外側の骨が障壁となって、音波の浸透がTMJ生体構造のうちの表面までに制限される。TMJの造影断層撮影、CT、及びMRIに由来する包括的な文献及び包括的な臨床エクスペリエンスから、TMJ円板変位を有効且つ正確に描写する為には矢状面を画像化することが好ましいことが分かった。
【0007】
そこで、通常の医療用超音波画像化に必須の特徴として、動的TMJ機能を正確に描写できる画像化モダリティが必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術における問題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
顎関節を画像化する経口超音波プローブであって、長手軸を有するハンドル部分であって、電源に接続されるように構成されているハンドル部分と、ハンドル部分の長手軸に対して、ある作用角で配置されるように、頭部に向かってくの字型である経口部分であって、音波を放射して受けるように構成された経口部分と、を含む経口超音波プローブ。経口部分の作用角は鋭角であることが好ましい。
【0010】
一実施形態では、作用角は、45度未満、且つ/又は約30度である。ある特定の実施形態では、ハンドル部分がある長手方向長さを有し、経口部分の長さが、ハンドル部分の長手方向長さの約3分の1であり、ハンドル部分が第1の幅を有し、経口部分が第2の幅を有し、第2の幅は第1の幅より大きく、ハンドル部分と経口部分は厚さがほぼ同じであり、この厚さは第1の幅以下でありハンドル部分及び経口部分が、ほぼフラットな側面と、それらの側面間の間隔である厚さと、を画定し、経口部分の遠位端が丸みを帯びており、経口部分が、その遠位端に、音波を放射して受けるように構成されたトランスデューサアパーチャを含み、ハンドル部分が電源ケーブルを介して電源に接続されているか、電源が、ハンドル部分に接続された少なくとも1つのバッテリであり、且つ/又は、電源は、制御装置に結合されているか、制御装置の一部分である。
【0011】
ハンドル部分及び経口部分を有し、頭部に向かってくの字型になっている経口プローブを使用して顎関節を画像化する方法であって、経口プローブのハンドル部分を保持するステップと、経口プローブの経口部分のトランスデューサアパーチャが顎関節とほぼ向き合うように、経口部分を、患者の口内の、頬部と歯茎の間の凹部に挿入するステップと、経口プローブの経口部分のトランスデューサアパーチャを介して音波を放射して受けることによって、少なくとも解剖学的矢状面における顎関節の画像を生成するステップと、を含む方法。
【0012】
本方法の一実施形態では、音波を放射して受けるステップによって、軸方向面、冠状面、及び矢状面を含む、全ての解剖学的面における顎関節の画像が生成される。別の実施形態では、本方法は更に、経口プローブのトランスデューサアパーチャから放射される音波の振幅、周波数、及び継続時間を制御するステップ、及び/又は、経口プローブを電源に接続するステップを含む。本方法の特定実施形態では、経口プローブの経口部分が、ハンドル部分の長手軸に対して、ある作用角で配置されており、作用角は鋭角であり、経口部分の作用角は約30度であり、ハンドル部分及び経口部分が、ほぼフラットな側面と、それらの側面間の間隔である厚さと、を画定し、ハンドル部分は第1の幅を有し、経口部分は第2の幅を有し、第2の幅は前記第1の幅より大きく、且つ/又は、経口プローブの経口部分の遠位端が丸みを帯びている。
【0013】
以下の詳細説明を参照し、添付図面と関連させて検討することにより、本発明、並びに本発明に伴う利点の多くがよりよく理解され、それによって、それらの正当な価値がより完全に、容易に認識されるであろう。添付図面は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】顎関節を画像化する、先行技術の方法の概略図である。
図2A】乃至
図2C】本発明の一例示的実施形態による経口プローブの斜視図及び立面図である。
図3A】乃至
図3C】本発明による、患者の口内の顎関節内を画像化する、一例示的プローブ方位及び窓の概略図である。
図4】本発明及び方法に従って生成された、顎関節の一例示的ソノグラム画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、全般的には、円板変位障害の診断及び治療の為に患者の口内(例えば、顎関節)を画像化する経口超音波プローブ10及びその使用方法に関する。本発明は、好ましくは、顎関節(TMJ)の構造及び機能を描写する効果的な画像化モダリティとして経口矢状高分解能動的超音波を提供する。本発明は、TMJ円板変位を検出し、病気の発症及び進行を評価し、長期的な診断を促進して治療結果を監視することが可能な画像化ツールでありうる。本発明は特に、TMJ円板変位の画像化を推進して、患者の病歴及び臨床検査を補完し、TMJ障害の診断及び治療における開業臨床医の臨床研究及び画像化能力向上の為の動的TMJ画像化を提供し、関節機能不全がある患者の定期的スクリーニングに特に有用な、関節の多次元可視化を可能にし、円板の構造、或いは関節包又は関節滲出液の一部としての構造を明確に示す画像を提供し、患者の安心を最適化する人間工学的な設計になっている。
【0016】
本発明の経口超音波画像化により達成される、臨床現場でのTMJ画像化は、TMD患者における円板変位の有無及び重症度を確定するスクリーニングプロトコルに用いられてよい。本発明の別の利点として、非侵襲的処置を提供すること、電離放射線のリスクがないこと、関節の機能及び機構の3D及び4Dの画像化が可能であること、利用しやすく、持ち運びが容易であること、インタラクティブなポイントオブケア臨床アシスタントであること、費用が安いこと等がある。
【0017】
超音波画像化は、TMJ診断において現在見られる欠点の多くを排除したり最小化したりする、高度に先進的な医療技術である。本発明の一利点として、TMDの超音波画像化は、拡張臨床診断、無症候性疾患のスクリーニング、及び研究において、より容易に利用可能であって、用途が広範であることが見込まれる。
【0018】
本発明の経口プローブ10は、解剖学的矢状面を描写する経口軟組織窓200を介してTMJの超音波画像を取得するように設計されており、関節の生体構造全体を包含する十分な画像化深度を有する。本発明のプローブ10は、好ましくは、この研究分野に影響を及ぼし、ポイントオブケア臨床診断に用いられる経口矢状画像化を提供する。
【0019】
超音波プローブ(又はトランスデューサ)10は、体内組織から跳ね返ってエコーを形成する音波を形成し、更に、そのエコーを受けて制御装置又はコンピュータ12に送り、制御装置又はコンピュータ12はそのエコーを使用して画像又はソノグラムを生成する。プローブ10は電源14に接続されるように構成されており、電源14は制御装置12とは別個であってよく、制御装置12の一部であってもよい。制御装置12は、計算も行うが、処理画像を表示及び/又は印刷することが可能である。一実施形態では、プローブ10は、電源ケーブルCを介して電源14に接続されている。或いは、電源14は、プローブ10に接続されているか収容されている1つ以上のバッテリであってよい。制御装置12は更に、プローブ10から放射される音波の振幅、周波数、及び継続時間を変化させるパルス制御を含んでよい。
【0020】
プローブ10は、音響的、機械的、且つ電気的に最適化された設計になっている。プローブ10は、例えば、中心周波数が8~10MHzの広帯域(最低でも70%超の帯域幅)、32素子、約0.3mmピッチ、及び高さ約3.5mmであってよい。プローブ10の音響設計では、ピエゾ複合材料が、例えば、浅い深度範囲(例えば、40~45mm)での高分解能に最適化されたマッチングレイヤ部品及びバッキング部品と一体化されてよい。プローブ10の電気設計は、最小限のプローブサイズの構造を可能にする専用回路で構成されてよい。プローブケーブル出口122は、最小限の円周まで小さくしてよい。
【0021】
図2A~2Cに示されるように、経口プローブ10は、大まかには、プローブ10の把持及び操作をしやすくするように構成されたハンドル部分102と、顎関節の超音波画像化の為に患者の口内に挿入されるように構成された経口部分104とを含む。プローブ10は、プローブ10が患者の口内に挿入されても患者が安心できる人間工学的な構成であることが好ましい。プローブ10は、口内の後部上顎領域の軟組織凹部の頬部と歯茎の間にぴったり収まるように特に人間工学的に最適化されてよい。プローブ10の人間工学的構成は、ほぼフラットな側面106及び108と、側面106及び108の間に延びた、対向する、概ね丸みを帯びたへり110及び112とを含んでよい。好ましい一実施形態では、プローブ10のへり110及び112における厚さTが比較的薄く、その為、プローブ10は、スパチュラによく似た、(特に従来のプローブの丸みを帯びた形状と比較すると)ほぼフラットな形状になっている。
【0022】
プローブ10の人間工学的構成は更に、コンパクトであって、一部の従来型プローブのように、かさばったり、エッジが四角に区切られた矩形であったりしないことが好ましい。経口部分104の遠位端118は、患者の更なる安心の為に丸みを帯びてよい。経口部分104の長さは、ハンドル部分102の長さより短いことが好ましい。例えば、経口部分104は、ハンドル部分102の約3分の1の長さであってよい。一実施形態では、プローブ10の全長が約5.66インチ又は約14cmである場合、経口部分104の長さが約1.88インチ又は約4.5cmであり、ハンドル部分102の長さが約3.77インチ又は約9.5cmである。経口部分104の幅Wは、ハンドル部分102の幅W2より大きいことが好ましい。経口部分104の幅Wは、例えば、約0.45インチ又は約1.1cmであってよい。プローブ10の厚さTは、ハンドル部分102と経口部分104の両方において同じであることが好ましく、ハンドル部分102の幅W以下であることが好ましい。厚さTは、例えば、約0.35インチ又は約0.9cmであってよい。プローブ10の人間工学的且つコンパクトな設計により、更に、患者の顎の画像化中に患者の顎の動きを制限しないことが可能になり、これによって、TMJの動きのより正確な画像が得られるとともに、患者の安心が更に高まる。
【0023】
経口部分104は、ハンドル部分102の長手軸114に対して作用角αで配置されて、頭部に向かってくの字型になっており、これは、経口部分104が患者の口内に挿入されたときの顎関節の画像化と患者の安心とを最適化する為である。作用角αは、90度未満であることが好ましく、45度未満であることがより好ましく、約30度であることが最も好ましい。経口部分104は、トランスデューサアパーチャ120を介して音波を放射して受けるように構成されている。好ましい一実施形態では、図2A及び2Cにおいて最もよく示されるように、トランスデューサアパーチャ120は、経口部分104の遠位端118又はその近くに配置されている。
【0024】
本発明による超音波画像化は、パルスエコー技術を用いて実施可能であり、この技術では、例えば、経口部分104及びアパーチャ120を介して音波/エネルギを送り、受ける。経口プローブ10は、電気エネルギを高周波音エネルギの短いパルスに変換し、このパルスが患者の組織内に送られる。その後、プローブ10は受信器となって、組織から反射された音エネルギのエコーを検出する。動いている患者の組織のリアルタイム画像が、TMJの顆、円板、及び筋肉の動きを描写する制御装置12によって生成及び表示されることが可能である。本発明によれば、任意の解剖学的面(仮想面)、即ち、軸方向面(又は水平面)、冠状面(又は垂直面)、及び矢状面(又は正中面)の画像が生成可能である。解剖学的軸方向面は体を頭蓋部と尾部(頭部と足部)に分割し、解剖学的冠状面は体を背部と腹部(後部と前部)に分割し、解剖学的矢状面は体を左部と右部に分割する。経口プローブ10は、軸方向面及び冠状面に加えて矢状面でのTMJの画像が得られるように設計されており、これによって、TMJの円板、顆、及び窩(並びにそれらの動き)を含む、TMJの最も効果的且つ正確な描写が実現される。
【0025】
TMJの最適な可視化は、(頬部と歯茎の間の)経口窓200を通して実施可能であり、この部分は骨がない為に音の十分な伝達が可能である。図3A~3Cは、本発明の経口プローブ10の好ましい方位の概略図であり、顎関節の顆及び円板の、骨が邪魔にならない矢状超音波画像を取得する為にはプローブ10が上顎弓上部の頬部と歯茎の間の窓200にどのように配置されるべきかを示している。
【0026】
経口プローブ10を使用する、本発明による、顎関節を画像化する一方法は、主に、経口プローブ10を電源に接続した後に、経口プローブ10のハンドル部分102を保持及び操作するステップと、経口プローブ104のトランスデューサアパーチャ120が顎関節とほぼ向き合うように、経口部分104を、患者の口内の、頬部と歯茎の間の窓200に挿入するステップと、を含む。プローブ10は、患者の口内に適切に挿入及び配置された後、トランスデューサアパーチャ120を介して音波を放射して受けるように活性化され、それによって、顎関節の、少なくとも解剖学的矢状面における画像、好ましくは全ての解剖学的面、即ち、軸方向面、冠状面、及び矢状面における画像が(ソフトウェア及び制御装置12によって)生成される。経口プローブ10のトランスデューサアパーチャ120から放射される音波の振幅、周波数、及び継続時間は、制御装置12によって制御及び調節されてよい。
【0027】
本発明は、非盲検予備観測では、矢状経口ソノグラフィで取得された最初のTMJ画像をもたらした。被験者の全ての関節において、顆、及びその顆下面が、図4に示されるように可視であった。顆(C)は、別の骨との関節の為に骨の端部にある、丸みを帯びた隆起部であって、垂直方向を向いていて低エコーであるが、これに対して、顆下面は、弓状であってエコー源性であり、キャップ状の外観を有する(図4の小さな矢じり)。顆は、顎の開閉による、その並進運動及び回転運動から識別可能でもある。
【0028】
特定の実施形態を選択して本発明を説明してきたが、当業者であれば理解されるように、添付の特許請求項で定義されている本発明の範囲から逸脱しない限り、その実施形態において様々な変更及び修正が行われてよい。
図1
図2
図3
図4