(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】非水二次電池及び非水二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20221219BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20221219BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20221219BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20221219BHJP
H01M 50/627 20210101ALI20221219BHJP
H01M 50/673 20210101ALI20221219BHJP
H01M 10/0525 20100101ALN20221219BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0566
H01M50/46
H01M50/55 101
H01M50/627
H01M50/673
H01M10/0525
(21)【出願番号】P 2020012184
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-158861(JP,A)
【文献】特開2011-150868(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207530(WO,A1)
【文献】特表2021-517725(JP,A)
【文献】特開2002-151052(JP,A)
【文献】特開昭57-015368(JP,A)
【文献】特開2017-033855(JP,A)
【文献】特表2019-515472(JP,A)
【文献】特開2018-006113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 10/0566
H01M 50/46
H01M 50/627
H01M 10/0525
H01M 50/55
H01M 50/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シート、負極シート、及びセパレータを有する積層体と、前記積層体を収納するケースと、を備え、
前記正極シート、前記負極シート、及び前記セパレータは、いずれも面内で厚みが均一であり、
前記積層体の中央部から上部の厚みが前記中央部から下部の厚みより小さく、
前記積層体は、少なくとも前記積層体の前記上部において、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートのそれぞれの間を貼り合わせた接着層をさらに有する、
非水二次電池。
【請求項2】
前記積層体の上端面は、前記接着層及び前記セパレータが露出し前記積層体に非水電解液を浸透させる第1端面と、前記接着層及び前記セパレータが露出せず前記積層体に前記非水電解液を浸透させない第2端面と、を有し、
前記第1端面の面積は、前記第2端面の面積より小さい、
請求項1に記載の非水二次電池。
【請求項3】
前記正極シート及び前記負極シートはいずれも、電極を構成する活物質塗工領域と、前記活物質塗工領域から突出させた形状を有する活物質未塗工領域のタブ部と、を有し、
前記第2端面は、前記正極シート及び前記負極シートの前記タブ部によって前記接着層及び前記セパレータが塞がれる端面を含む、
請求項2に記載の非水二次電池。
【請求項4】
前記タブ部以外の前記上端面の一部に取り付けられた絶縁性のテープを備え、
前記テープは、前記第2端面の一部を構成し前記接着層及び前記セパレータの端面を覆うように配設される、
請求項3に記載の非水二次電池。
【請求項5】
前記ケースは、前記積層体に前記非水電解液を注液する注液口を有し、
前記非水二次電池は、前記積層体と前記注液口との間を隔離する絶縁性の隔離部材をさらに備え、
前記隔離部材は、前記第2端面の一部を構成し前記接着層及び前記セパレータの端面を覆うように配設される、
請求項3又は4に記載の非水二次電池。
【請求項6】
前記接着層による、前記正極シートと前記セパレータとの間の剥離強度、及び前記負極シートと前記セパレータとの間の剥離強度が、前記積層体の前記下部より前記積層体の前記上部の方が大きい、
請求項1~5のいずれか1項に記載の非水二次電池。
【請求項7】
前記接着層は、前記積層体の前記中央部から前記積層体の上端面まで通じる空間を有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の非水二次電池。
【請求項8】
正極シート、負極シート、及びセパレータを有する積層体と、前記積層体を収納するケースと、を備えた非水二次電池の製造方法であって、
前記正極シート、前記負極シート、及び前記セパレータは、いずれも面内で厚みが均一であり、
前記製造方法は、
少なくとも前記積層体の上部において、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートのそれぞれの間に接着層を配して、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートを積層させる積層工程と、
前記積層体の両面から加圧板で挟み込んで加圧する加圧工程と、
前記加圧工程により加圧された前記積層体を前記ケースに収納し、前記積層体に非水電解液を含浸させる含浸工程と、
を含み、
前記積層工程及び前記加圧工程により、前記積層体の中央部である積層体中央部から上部の厚みが前記積層体中央部から下部の厚みより小さくなるように、前記積層体を形成する、
非水二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記加圧板は、前記加圧板の中央部である加圧板中央部から上部の厚みが前記加圧板中央部から下部の厚みより大きくなるような断面形状を有する、
請求項8に記載の非水二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記加圧板は、前記加圧板の中央部である加圧板中央部から上部の位置が前記加圧板中央部から下部の位置より前記積層体に近接され且つ均一な厚みをもつような断面形状を有する、
請求項8に記載の非水二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記加圧工程は、前記加圧板で印加する加圧力が、前記積層体中央部から上部において前記積層体中央部から下部より大きくなるように加圧する、
請求項8に記載の非水二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記加圧工程は、前記加圧板の温度又は加圧時の接着層の温度が、前記積層体中央部から上部において前記積層体中央部から下部より高い状態で加圧する、
請求項8~11のいずれか1項に記載の非水二次電池の製造方法。
【請求項13】
前記積層工程は、前記積層体の下部においても前記接着層を配し、前記積層体の上部と前記積層体の下部とで異なる接着剤を用いて、或いは前記積層体の上部より前記積層体の下部の方で量を少なくした接着剤を用いて、前記接着層を形成する、
請求項8~12のいずれか1項に記載の非水二次電池の製造方法。
【請求項14】
前記含浸工程は、前記ケースと前記積層体との間において前記積層体の下部まで注液ノズルを差し込み、前記注液ノズルから前記非水電解液を注入する工程を含む、
請求項8~13のいずれか1項に記載の非水二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水二次電池及び非水二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池では、正極シートと負極シートとによりセパレータを挟み込む構造により発電体を形成する。また、二次電池は、発電体の面積の大きさにより電池容量が決まる。二次電池では、1つの二次電池の体積あたりの電池容量(以下容量効率と称す)を高めるために、発電体の二次電池内への収納方法が様々考えられている。収納方法の1つとして、広い面積のシート状の発電体を巻いて筒形状とする捲回体構造がある。また、別の収納方法として、複数の正極板と複数の負極板及び複数のセパレータを、正極シートと負極シートとの間にセパレータが挟まれる形態で積層する積層構造がある。
【0003】
特許文献1には、負極表面に被膜の集中が生じたとしても電池性能の劣化を抑えることのできるリチウムイオン二次電池が記載されている。特許文献1に記載の二次電池は、正極板と負極板とがセパレータを挟んで捲回された捲回体構造の発電体と非水電解液とを電槽に収容した非水二次電池である。
【0004】
そして、特許文献1に記載の二次電池では、次のような特徴を有する。即ち、負極板はナトリウム塩を有する添加物を含み、非水電解液はリチウム塩を有する添加剤を含んでいる。さらに、極板群は、巻き軸方向の両側面の間の中央となる位置を含んで巻き軸方向に所定の幅を有する中央部分を捲回方向に延設させており、正極板の正極容量に対応する負極板の負極容量が中央部分では中央部分の両側面側に隣接する部分に比べて大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のような捲回体構造の発電体を備えた非水二次電池では、非水電解液を注入し、捲回体構造の積層体に非水電解液を含浸させるに際し、捲回する軸方向の端部から含浸していき、最後に中央部が含浸することになる。また、積層構造の発電体を備えた非水二次電池では、積層体に非水電解液を含浸させるに際し、四辺の端部から含浸していき、中央部が最後に含浸することになる。
【0007】
このように、非水二次電池は、その製造過程において積層体に非水電解液を含浸させる必要があるが、中央部に非水電解液が含浸するのは最後となる。
【0008】
しかしながら、このように非水電解液が含浸する過程において、中央部まで非水電解液が含浸しきれず中央部にガスが溜まる場合がある。その場合、例えば負極板のナトリウム塩(カルボキシメチルセルロース等)やそれによる生成物がその中央部に押しやられ、中央部に高抵抗の負極被膜が形成されてしまう。その結果、発電体の中央部と端部とで抵抗ムラが生じ、電気化学反応が不均一となってしまう。
非水電解液の含浸は、ナトリウム塩を生成するような非水二次電池に限らず、他の非水二次電池でも電池性能に影響を与えるため、均一な含浸が望まれる。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、発電体の端部と中央部とで生じ得る抵抗ムラを低減させることが可能な非水二次電池、及びその製造方法を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る非水二次電池は、正極シート、負極シート、及びセパレータを有する積層体と、前記積層体を収納するケースと、を備え、前記正極シート、前記負極シート、及び前記セパレータは、いずれも面内で厚みが均一であり、前記積層体の中央部から上部の厚みが前記中央部から下部の厚みより小さく、前記積層体は、少なくとも前記積層体の前記上部において、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートのそれぞれの間を貼り合わせた接着層をさらに有する、ものである。
【0011】
この態様に係る非水二次電池は、上述の構造により積層体の上端面からの非水電解液の含浸を抑制することができる。これにより、非水二次電池において、発電体の端部と中央部とで生じ得る抵抗ムラを低減させることが可能になり、電気化学反応の均一化を図ることができる。
【0012】
また、前記積層体の上端面は、前記接着層及び前記セパレータが露出し前記積層体に非水電解液を浸透させる第1端面と、前記接着層及び前記セパレータが露出せず前記積層体に前記非水電解液を浸透させない第2端面と、を有し、前記第1端面の面積は、前記第2端面の面積より小さい、ことが好ましい。これにより、積層体の上端面からの非水電解液の含浸をさらに抑制することができ、より抵抗ムラを低減させることができる。
【0013】
さらに、前記正極シート及び前記負極シートはいずれも、電極を構成する活物質塗工領域と、前記活物質塗工領域から突出させた形状を有する活物質未塗工領域のタブ部と、を有し、前記第2端面は、前記正極シート及び前記負極シートの前記タブ部によって前記接着層及び前記セパレータが塞がれる端面を含む、ことが好ましい。これにより、元々備えることが多いタブ部を用いて、積層体の上端面からの非水電解液の含浸をさらに抑制することができる。
【0014】
さらに、前記非水二次電池は、前記タブ部以外の前記上端面の一部に取り付けられた絶縁性のテープを備え、前記テープは、前記第2端面の一部を構成し前記接着層及び前記セパレータの端面を覆うように配設される、ことが好ましい。これにより、積層体をケースに挿入するためにまとめることに利用可能なテープを用いて、積層体の上端面からの非水電解液の含浸をさらに抑制することができる。
【0015】
ここで、前記ケースは、前記積層体に前記非水電解液を注液する注液口を有し、前記非水二次電池は、前記積層体と前記注液口との間を隔離する絶縁性の隔離部材をさらに備え、前記隔離部材は、前記第2端面の一部を構成し前記接着層及び前記セパレータの端面を覆うように配設される、こともできる。これにより、簡易な構造で積層体の上端面からの非水電解液の含浸をさらに抑制することができる。
【0016】
また、前記接着層による、前記正極シートと前記セパレータとの間の剥離強度、及び前記負極シートと前記セパレータとの間の剥離強度が、前記積層体の前記下部より前記積層体の前記上部の方が大きい、ことが好ましい。これにより、積層体の上端面からの非水電解液の含浸をさらに抑制することができる。
【0017】
また、前記接着層は、前記積層体の前記中央部から前記積層体の上端面まで通じる空間を有する、ことが好ましい。これにより、ガス抜けをより良好にすることができ、非水電解液の含浸をよりスムーズに行うことができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る非水二次電池の製造方法は、正極シート、負極シート、及びセパレータを有する積層体と、前記積層体を収納するケースと、を備えた非水二次電池の製造方法であって、前記正極シート、前記負極シート、及び前記セパレータは、いずれも面内で厚みが均一であり、前記製造方法は、少なくとも前記積層体の上部において、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートのそれぞれの間に接着層を配して、前記正極シート、前記セパレータ、及び前記負極シートを積層させる積層工程と、前記積層体の両面から加圧板で挟み込んで加圧する加圧工程と、前記加圧工程により加圧された前記積層体を前記ケースに収納し、前記積層体に非水電解液を含浸させる含浸工程と、を含み、前記積層工程及び前記加圧工程により、前記積層体の中央部である積層体中央部から上部の厚みが前記積層体中央部から下部の厚みより小さくなるように、前記積層体を形成する、ものである。
【0019】
この態様に係る非水二次電池の製造方法は、上述の構造により積層体の上端面からの非水電解液の含浸を抑制することができる。これにより、製造された非水二次電池において、発電体の端部と中央部とで生じ得る抵抗ムラを低減させることが可能になり、電気化学反応の均一化を図ることができる。
【0020】
また、前記加圧板は、前記加圧板の中央部である加圧板中央部から上部の厚みが前記加圧板中央部から下部の厚みより大きくなるような断面形状を有する、こともできる。これにより、簡単な構造の加圧板で積層体を両端から加圧して、上述のような非水二次電池を製造することができる。
【0021】
或いは、前記加圧板は、前記加圧板の中央部である加圧板中央部から上部の位置が前記加圧板中央部から下部の位置より前記積層体に近接され且つ均一な厚みをもつような断面形状を有する、こともできる。これにより、簡単な構造の加圧板で積層体を両端から加圧して、上述のような非水二次電池を製造することができる。
或いは、前記加圧工程は、前記加圧板で印加する加圧力が、前記積層体中央部から上部において前記積層体中央部から下部より大きくなるように加圧する、こともできる。これにより、簡単な構造の加圧板で積層体を両端から加圧して、上述のような非水二次電池を製造することができる。
【0022】
また、前記加圧工程は、前記加圧板の温度又は加圧時の接着層の温度が、前記積層体中央部から上部において前記積層体中央部から下部より高い状態で加圧する、ことが好ましい。これにより、簡易に積層体を両端から加圧して、発電体の抵抗ムラをさらに抑制した非水二次電池を製造することができる。
【0023】
また、前記積層工程は、前記積層体の下部においても前記接着層を配し、前記積層体の上部と前記積層体の下部とで異なる接着剤を用いて、或いは前記積層体の上部より前記積層体の下部の方で量を少なくした接着剤を用いて、前記接着層を形成する、ことが好ましい。これにより、積層体の上部と下部とで異なる種類や量の接着剤を用いる簡易な方法で、発電体の抵抗ムラをさらに抑制した非水二次電池を製造することができる。
【0024】
また、前記含浸工程は、前記ケースと前記積層体との間において前記積層体の下部まで注液ノズルを差し込み、前記注液ノズルから前記非水電解液を注入する工程を含む、ことが好ましい。これにより、簡易に積層体の上端面からの非水電解液の含浸を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、発電体の端部と中央部とで生じ得る抵抗ムラを低減させることが可能な非水二次電池、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施形態1に係る非水二次電池の外観の一例を示す図である。
【
図2】実施形態1に係る非水二次電池のケースに収納される積層体の一例を示す断面図である。
【
図3】比較例に係る非水二次電池のケースに収容される積層体を示す外観図である。
【
図4】非水二次電池に収容される積層体の一例における非水電解液の含浸の様子を示す図である。
【
図5】
図2の積層体を有する発電体及び
図3の積層体を有する発電体における抵抗測定試験の結果を示す図である。
【
図6】実施形態2に係る非水二次電池のケースに収容される積層体の一例を示す概略上面図である。
【
図7】実施形態2に係る非水二次電池のケースに収納される積層体の一例を示す斜視図である。
【
図8】実施形態2に係る非水二次電池の他の例を示す断面図である。
【
図9】実施形態3に係る非水二次電池のケースに収納される積層体の一例を示す正面図である。
【
図10】実施形態4に係る非水二次電池の製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
【
図11】
図10の製造方法で用いる加圧板の一例を示す断面図である。
【
図12】
図10の製造方法で用いる加圧板の他の例を示す断面図である。
【
図13】
図10の製造方法で用いることが可能な注液ノズルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。また、実施形態において、同一又は同等の要素には、同一の符号を付すことがあり、重複する説明は適宜省略される。
【0028】
(実施形態1)
実施形態1について、
図1~
図5を参照しながら説明する。
図1は、実施形態1に係る非水二次電池の外観の一例を示す図である。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る非水二次電池1は、ケース10、蓋11、負極極柱12、及び正極極柱13を備えることができる。なお、
図1で例示する非水二次電池1を複数組み合わせることで組電池を形成することができ、非水二次電池1はその組電池の1つのセルとすることができる。
【0030】
ケース10には、非水二次電池1の電気エネルギーを蓄積する発電体が収納される。蓋11は、発電体をケース10に密閉するための蓋である。ケース10及び蓋11は、例えばアルミニウム又はその合金などとすることができる。負極極柱12及び正極極柱13は、ケース10内の発電体と電気的に接続され、発電体に対して電流の入出力を行うための電極である。また、負極極柱12及び正極極柱13は、
図1に示すように、ケース10から突出するように設けられる。
【0031】
図1では図示を省略したが、非水二次電池1では、ケース内に格納される発電体に取り付けられる負極極柱12及び正極極柱13をケース外に取り出すための取り出し穴が蓋11に設けられる。そして、負極極柱12及び正極極柱13は、蓋11に設けられた取り出し穴を介してケース内に設けられる集電部品と接合される。本実施形態では、非水二次電池1のケース10内に収納される発電体に特徴の1つを有する。
【0032】
そこで、以下では、本実施形態に係る非水二次電池1の発電体について、
図2~
図5を併せて参照しながら詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る非水二次電池のケースに収納される積層体の一例を示す断面図である。
【0033】
非水二次電池1の発電体は、正極シート15、負極シート16、及びセパレータ17を有する積層体(積層電極体)14を備える。正極シート15、負極シート16には、各電極を構成する活物質塗工領域を有する。例えば、正極シート15には、活物質として、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2等が塗工される。また、負極シート16には、活物質として、例えば、黒鉛(C)、チタネイト(Li4Ti5O12)等が塗工される。
【0034】
正極シート15の枚数、負極シート16の枚数は問わない。積層体14の積層方向は
図1に示す方向とすることができる。発電体として機能させるために、積層体14では、正極シート15と負極シート16とが交互に積層されることができ、正極シート15と負極シート16の間にセパレータ17が挟み込まれる。また、積層体14の一端又は両端の外側にも極板(正極シート15又は負極シート16)にセパレータ17が積層される。
【0035】
ここで、正極シート15は面内での厚みが均一であり、負極シート16も面内での厚みが均一であり、セパレータ17も面内で厚みが均一であるものとする。ここで、均一とは実質的に均一であればよい。なお、正極シート15、負極シート16、及びセパレータ17のそれぞれの厚みは異なっていてもよい。
【0036】
そして、積層体14は、
図2で示すように、積層体14の中央部(積層体中央部)から上部14uの厚みD1が積層体中央部から下部14dの厚みD2より小さいものとする。ここで、中央部とは、積層体14の面における中央部分を指すことができ、
図2において一点鎖線で示すような面の中央を含む部分であればよい。また、下部14dの厚みD2として最大厚みを例示しているがこれに限らない。また、積層体中央部から下部14dでは、下側に向かうにつれて厚みを増やした例を挙げているが、一定の厚みであってもよい。ここで一定とは、実質的に一定であればよく、例えば積層体中央部で生じ得る変曲部を除いて一定とすることもできる。
【0037】
また、積層体14は、少なくとも積層体14の上部14uにおいて、正極シート15、セパレータ17、及び負極シート16のそれぞれの間を貼り合わせた接着層18をさらに有するものとする。なお、
図2においては、便宜上、接着層18を隣接する正極シート15、セパレータ17、及び負極シート16と離間させて描いているが、離間していないものとする。
【0038】
接着層18は、正極シート15、セパレータ17、及び負極シート16のそれぞれの間を、より具体的には正極シート15とセパレータ17との間及びセパレータ17と負極シート16との間を、貼り合わせる熱可塑性樹脂等の接着剤を有することができる。つまり、本実施形態における積層体14は、少なくとも積層体中央部から上部14uにおいて極板(正極シート15、負極シート16)とセパレータ17とを、接着剤で貼り合わせることで構成される。無論、
図2で例示しているように、積層体中央部から下部14dにおいても接着剤で貼り合わせてもよい。なお、本実施形態では、接着層18を予め設けたセパレータ17に、正極シート15又は負極シート16を貼り合わせて積層体14を製造することを前提として説明する。但し、接着層18は、正極シート15や負極シート16に予め設けてもよい。また、接着層18が設けられる範囲も、正極シート15や負極シート16より突出したセパレータ17と同じ範囲に設けられていてもよいし、正極シート15や負極シート16よりも短い範囲でもよい。
【0039】
このように、上部14uのみで接着層18を設け、且つ、下部14dでは上部14uに比べて十分に極板とセパレータ17との間を密着させないことで、積層体14の厚みの差(D2>D1)を生じさせることができる。また、下部14dに接着層18を設けるか否かに拘わらず、積層体14の厚みの差は、上部14uを下部14dに比べて、強く圧縮することや接着層18の接着強度(剥離強度)を強くすることなどにより生じさせることができる。ここで剥離強度の差は、例えば、加圧力、加圧時の温度、使用する接着剤(接着層18を形成する接着剤)の量及び/又は種類のうち、少なくとも1つを異ならせることで生じさせることができる。量を異ならせる場合には、上部14uより下部14dの方で接着剤の量を少なくすることになる。また、接着層18は、正極シート15とセパレータ17との間、セパレータ17と負極シート16との間で、積層体14の厚みへの寄与度が同じになるように形成しておくことができるが、この寄与度が異なるように形成しておくこともできる。
【0040】
発電体として機能させるために、このような積層体14をケース10に収納した状態で、図示しない注入口(例えば負極極柱12及び正極極柱13を取り付ける前の蓋11に形成された穴など)から有機溶媒などの非水電解液を注入し、積層体14に含浸させる。また、積層体14は、非水電解液が積層体14の端面から極板とセパレータ17との間を通って積層体14に含浸されることで、発電体として機能させることができる。
【0041】
非水電解液は、非水溶媒に支持塩が含有された組成物である。ここで、非水溶媒としては、次の群から選択された一種または二種以上の材料を用いることができる。上記群は、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等からなる。支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(CF3SO2)2、LiC(CF3SO2)3、LiI等から選択される一種又は二種以上のリチウム化合物(リチウム塩)を用いることができる。また、非水電解液には、例えば、リチウムビスオキサレートボレート(LiBOB)等の被膜形成剤が添加されているものとする。
【0042】
このような含浸の様子を説明するに先立ち、
図3を参照しながら比較例について説明する。
図3は、比較例に係る非水二次電池のケースに収容される積層体を示す外観図である。
【0043】
図3で示す比較例に係る積層体104は、正極シート105、負極シート106、セパレータ(図示せず)を有するとともに、正極シート105とセパレータとの間及びセパレータと負極シート106との間に均一の厚みをもった接着層が形成されている。なお、この接着層については
図3では図示を省略している。正極シート105は、電極を構成する活物質塗工領域105aと、活物質塗工領域105aから突出させた形状を有する活物質未塗工領域のタブ部105bと、を有する。負極シート106も同様に活物質塗工領域106a及びタブ部106bを有する。
【0044】
比較例では、ケース内に発電体の元となる積層体104が入れられた後に、非水電解液がケース内に注入されるが、積層体104の四辺(タブ部105b,106bを除く)の厚みが同じである。そのため、比較例では、注液時、非水電解液の含浸は積層体104の各四辺から同様に進行し、積層体中央部が最後に含浸するため、積層体中央部まで非水電解液が含浸しきれず中央部にガスGが溜まる事態が生じ易い。その場合、負極シート106のナトリウム塩がその中央部に押しやられ、中央部に高抵抗の負極被膜が形成されてしまう。その結果、積層体104から生成された発電体では、中央部と端部とで抵抗ムラが生じ、電気化学反応が不均一となってしまう。
【0045】
これに対し、
図2に示した積層体14は、スムーズに積層体中央部まで非水電解液を含浸させることができ、抵抗ムラを少なくすることができる。その理由について説明する。
【0046】
積層体14では、比較例と異なり、積層体14における上部14uと下部14dとの厚み差を生じさせる構造を採用することで、積層体14の上端面側から含浸する非水電解液を下端面側から含浸する非水電解液より少なくしている。これにより、積層体14では、非水電解液の浸透方向を主に一方向からとすることができる。また、積層体14では、比較例と異なり、積層体中央部のガス溜まり場(極板とセパレータとの間)を少なくすることができる。また、液圧は、上端面側より下端面側の方が高い。
【0047】
よって、積層体14にはガスGの抜け口ができ、ガスGが貯まり難く(積層体14ではガスが抜け易く)なり、結果としてナトリウム塩等やそれに起因する生成物が拡散し易くなり、それらの積層体中央部での蓄積が抑制される。その結果、積層体14から生成された発電体は、面方向の抵抗ムラを低減させ、電気化学反応の均一化を図ることができる。なお、上記の生成物は、活性物質やそのバインダなどによっても異なるが、その一例としてナトリウムビスオキサレートボード(NaBOB)が挙げられる。また、ナトリウム塩としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。本実施形態に係る非水二次電池1は、非水電解液の均一な含浸を実現するものであり、ナトリウム塩が生成されるような非水二次電池に限定されるものではない。
【0048】
図2で示す積層体14を有する発電体と
図3で示す比較例に係る積層体104を有する発電体との抵抗について、
図4及び
図5を併せて参照しながら説明する。
図4は、非水二次電池に収容される積層体の一例における非水電解液の含浸の様子を示す図である。
図5は、
図2の積層体を有する発電体及び
図3の積層体を有する発電体における抵抗測定試験の結果を示す図である。
【0049】
図4に示す発電体14aでは、中央部にガスGが貯まることがある。但し、
図4において例示するガスGの領域は比較例における領域の例に過ぎない。
図4における垂直方向(高さ方向)の中央部を通る水平方向(x軸方向)に沿って抵抗値を測定した結果は、次のようになる。
【0050】
即ち、本実施形態における積層体14から生成した発電体ではx軸方向にあまり変化がないのに対し、比較例に係る積層体104から生成した発電体ではx軸方向の中央部分において高抵抗となる。
【0051】
図5には、積層体104の厚み、積層体14の上部14uの厚みD1及び下部14dの厚みD2を規定して実施した試験の結果を示している。
図5で示す試験は、正極シートとして活物質:LiNiCoMnO
2が塗工されたアルミニウムシートであって厚みが150μmのシートと、負極シートして活物質:黒鉛が塗工された銅のシートであって厚みが180μmのシートと、を50枚ずつ交互に積層して用いた。また、この試験では、正極シートと負極シートとの間にはセパレータを挟み込み、積層体の両端面にもセパレータを配設し、これらのセパレータとしては厚み20μmのポリエチレンを用いた。また、この試験では、正極シート、負極シート、及びセパレータのいずれも、縦70mm×横150mmの寸法のものを用いた。また、この試験では、接着剤としてアクリル系接着剤を用い、正極シート及び負極シートのいずれもタブ部を備えず、積層体の四辺全ての端面から非水電解液を含浸させた。また、被膜系製剤としては、LiBOBを用い、非水電解液におけるLiBOBの濃度が0.03mol/kgとなるように、非水電解液にLiBOBを添加した。
【0052】
その結果、
図5に示すように、サンプルNo.1の下部/上部の厚み比が1である積層体(つまり比較例の積層体104のような積層体)では、抵抗の最大値と最小値との比(max/min比)が1.6となり、抵抗ムラがかなり生じていることが分かる。サンプルNo.2では、下部/上部の厚み比を0.99まで小さくした結果、max/min比が1.4となり、抵抗ムラがサンプルNo.1に比べて低減できていることが分かる。さらに、サンプルNo.3では、下部/上部の厚み比を0.98まで小さくした結果、max/min比が1.1となり、抵抗ムラがサンプルNo.2に比べて大幅に低減できていることが分かる。さらに、サンプルNo.4,5では、それぞれ下部/上部の厚み比を0.96,0.94まで小さくした結果、max/min比が1.0,1.0となり、抵抗ムラが誤差の範囲に収まっていることが分かる。また、
図5で示した試験結果の傾向は、試験条件を変更した場合でも同様に見られた。
【0053】
図5で示した結果からも、本実施形態では、スムーズに積層体中央部まで非水電解液を含浸させることができ、抵抗ムラを少なくすることができていることが分かる。
【0054】
また、上述したように本実施形態では、接着層18による、正極シート15とセパレータ17との間の剥離強度及び負極シート16とセパレータ17との間の剥離強度が、積層体中央部から下部14dより積層体中央部から上部14uの方が大きいことが好ましい。これにより、上部14uの方が下部14dより極板とセパレータ17との密着度合いを上げることができ、その結果、上部14uの上端面からの非水電解液をさらに少なくし、より抵抗ムラを低減させることができる。
【0055】
以上では、積層構造の発電体がケース10に収納された例を挙げて説明した。但し、発電体は、例えばセパレータ、正極シート、セパレータ、負極シート、セパレータが積層された積層体が捲回された捲回体として、捲回軸方向の端部を上下方向としてケースに収納させることもでき、ケース内には1又は複数の捲回体を収納させることができる。その場合の上記積層体中央部は捲回体の上下方向の中央部を指すこととなり、捲回体の上下方向から非水電解液が含浸していくことになる。よって、捲回軸方向の端部を上下方向として捲回体を収納させた場合であっても、積層構造の発電体を採用した場合と同様に、本実施形態における抵抗ムラを低減させる効果を奏すると言える。
【0056】
(実施形態2)
実施形態2に係る非水二次電池について、
図6~
図8を併せて参照しながら、主に実施形態1との相違点を中心に説明するが、実施形態1における様々な例が適用可能である。
図6は、本実施形態に係る非水二次電池のケースに収容される積層体の一例を示す概略上面図で、
図7は、その積層体の一例を示す斜視図である。
【0057】
図7に示す積層体24の上端面は、
図6に示すような第1端面24su及び第2端面を有することができる。第1端面24suは、積層体24(特に接着層(以下、接着層18)及びセパレータ(以下、セパレータ17))が露出し極板とセパレータ17との間を通って積層体24に非水電解液を浸透させる端面である。第2端面は、上述したような積層体24の露出がなく積層体24に非水電解液を浸透させない端面である。
【0058】
図6及び
図7では、第2端面が負極シート側のタブ部24n、正極シート側のタブ部24p、及びタブ部以外の上端面の一部に取り付けられた絶縁性のテープ25により形成されている例を挙げている。つまり、本例における第2端面は、正極シート及び負極シートのタブ部24p,24nによって積層体24の他の部分(接着層18及びセパレータ17を含む)が塞がれる端面を含み、テープ25によって積層体24(接着層18及びセパレータ17を含む)が塞がれる端面を含む。積層体24が塞がれる端面では、非水電解液の浸透が防がれる。このように、タブ部24n、タブ部24p、及びテープ25はいずれも、第2端面の一部を構成し積層体24の端面を覆う(塞ぐ)ように配設されることができる。
【0059】
ここで、タブ部24nは、負極シートにおける活物質塗工領域から突出させた形状を有する活物質未塗工領域であり、タブ部24pは、正極シートにおける、活物質塗工領域から突出させた形状を有する活物質未塗工領域である。また、タブ部24pは正極シートの複数のタブ部が束ねられたものとすることができ、タブ部24nは負極シートの複数のタブ部が束ねられたものとすることができる。具体的には、タブ部24pとタブ部24nをそれぞれ個別に束ねるが、束ね方は問わない。
【0060】
また、束ねられたタブ部24p,24nのそれぞれに対しては集電部品が取り付けられる。集電部品の形状や集電方法は問わない。なお、
図7で示したタブ部24pとタブ部24nは、集電部品が取り付けられたものとすることができる。タブ部24p,24nの集電部品はそれぞれ、蓋11を介して、台座22,23、取り出し電極(例えば、負極極柱12及び正極極柱13)と接合される。台座22,23は、
図1で示した蓋11に密着され、積層体24がケース10に収納された後の密閉性を高める。
【0061】
また、テープ25は、例えばPP(ポリプロピレン)等で形成しておくことができる。なお、
図7では、テープ25は積層体24の上端面を覆うような箇所及びその近辺だけ設けられているが、積層体24の上下方向の周囲を覆うように1周以上巻くこともできる。
【0062】
そして、本実施形態では、第1端面24suの面積は第2端面の面積より小さいものとすることができる。即ち、本実施形態における積層体24は、ケース10の蓋11等に設けられる注液口側の積層体端部(積層体24の上端面)が50%以上、閉口されている。これにより、本実施形態では、実施形態1に比べ、積層体の上端面から含浸される非水電解液の量を減らすことができ、より抵抗ムラを低減させることができる。
【0063】
また、元々備えることが多いタブ部24p,24nを用いて、積層体24の上端面からの非水電解液の含浸をさらに抑制することができる。また、テープ25は、積層体24をケース10に挿入するためにまとめることに利用することができ、そのようなテープ25を用いて、積層体24の上端面からの非水電解液の含浸をさらに抑制することができる。
【0064】
また、テープ25は設けなくてもよく、その場合、第2端面は正極シートのタブ部24p及び負極シートのタブ部24nによって接着層18及びセパレータ17が塞がれる端面を形成する。そして、図示しないが、その端面の面積だけで第1端面の面積以上となるように、タブ部24p,24nを形成しておけばよい。代替構成として、タブ部24p,24nを設けなくても、或いは設けた場合でも接着層18及びセパレータ17を覆わないように導出させることもできる。そのような構成においては、テープ25によって接着層18及びセパレータ17が塞がれる端面(上端面)の面積だけで、第1端面の面積以上となるように、テープ25の幅を決めておけばよい。
【0065】
次に、テープ25の代わりとなる、或いはテープ25と併せて設けることが可能な部材の例について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、本実施形態に係る非水二次電池の他の例を示す断面図である。
【0066】
図8に示すように、ケース10に対応するケース30には正極シート、負極シート、及びセパレータ17を有する積層体34が収納されている。そして、ケース30は、積層体34に非水電解液を注液する注液口31を有する。例えば、注液口31には、非水電解液が収容された収容器32を差し込むことで、非水電解液をケース30の内部に注入することができる。
【0067】
そして、
図8に示す例では、非水二次電池は、積層体34と注液口31との間を隔離する絶縁性の隔離部材33を備えることができる。隔離部材33は、第2端面の一部を構成し積層体34(特に接着層18及びセパレータ17)の端面を覆う(塞ぐ)ように配設されることができ、これにより簡易な構造でテープ25と同様の役割を果たすことができる。例えば、
図8に示すように、正極シートのタブ部34pと負極シートのタブ部34nとを積層体34の水平方向に沿って離間させて配置し、それによって生じる空間に隔離部材33を配設しておくことができる。この空間は、例えば、タブ部34pの集電部品とタブ部34nの集電部品との間に生じる空間とすることができる。なお、隔離部材33は、
図8の紙面垂直方向にあるケース内壁などに固定しておくことができる。
【0068】
但し、隔離部材33は、接着層18及びセパレータ17を直接覆わなくてもよい。隔離部材33は、注液口31側から注入される非水電解液が最初にセパレータ17の上端面に当たらず、積層体34の下部側に流れるような流路を形成するように配置されていれば、上端面からの非水電解液の含浸を抑制することができる。隔離部材33は、例えば板状のものとすることができるが、上記流路を形成するためにより複雑な形状であってもよい。
【0069】
(実施形態3)
実施形態3に係る非水二次電池について、
図9を併せて参照しながら、主に実施形態1との相違点を中心に説明するが、実施形態1,2における様々な例が適用可能である。
図9は、本実施形態に係る非水二次電池のケースに収納される積層体の一例を示す正面図である。
【0070】
実施形態1では、少なくとも積層体中央部から上部において接着層が形成される例を挙げたが、本実施形態における接着層は、
図9において流路44aで例示するように、積層体44の積層体中央部から積層体44の上端面まで通じる(連通する)空間を有する。このような空間をどの程度、どの位置に形成するかに応じて、接着層における接着剤の疎密度合いを変えることができる。このような空間はガスを上端面側に逃がす役割を果たすことができる。
【0071】
2本の流路44aが、水平方向の中心線(2点鎖線で示す線)にほぼ対称に設けられた例を挙げたが、流路の数は問わない。無論、流路は、この例のように水平方向の中心線に対称に対で設けることが好ましいが、これに限ったものではない。また、流路44aは、複数層存在する接着層のそれぞれに設けておくことができ、一部の接着層に設けておかないこともでき、さらには各接着層で流路の向きや形状を異ならせておくこともできる。なお、流路44aを積層体44の上部44uにのみ設けたが、下部44dにも設けておくこともできる。
【0072】
本実施形態では、上記空間を設けるように接着層を形成すること、より具体的には上記空間を設けるように接着剤の塗布を行うことで、ガス抜けをより良好にすることができ、非水電解液の含浸をよりスムーズに行うことができる。その結果、本実施形態では、実施形態1,2の効果に加えて、さらに抵抗ムラを低減させることができる。
【0073】
(実施形態4)
実施形態4として、実施形態1~3に係る非水二次電池を製造する際に適用可能な製造方法について、
図10~
図13を参照しながら説明する。
図10は、本実施形態に係る非水二次電池の製造方法の一例を説明するためのフロー図である。
【0074】
本実施形態に係る製造方法は、積層工程(ステップS1)、加圧・接着工程(ステップS2)、含浸工程(ステップS3)を含むことができる。非水二次電池の各構成要素については、実施形態1等で説明した通りである。
【0075】
ステップS1では、少なくとも積層体の上部において、正極シート、セパレータ、及び負極シートのそれぞれの間に接着層を配して、正極シート、セパレータ、及び負極シートを積層させる。ステップS1の処理後に実行されるステップS2では、積層体の両面から加圧板で挟み込んで加圧することで、正極シート、セパレータ、及び負極シートのそれぞれの間を接着する。なお、この加圧板は、積層体の両面から挟むため、一対用いられる。また、各面側の加圧板は複数枚で構成されることもできる。ステップS2の加圧・接着工程は加圧工程と称することもできる。ステップS2の処理後に実行されるステップS3では、加圧された積層体をケースに収納し、積層体に非水電解液を含浸させる。
【0076】
本実施形態では、特に、積層工程及び加圧・接着工程により、積層体中央部から上部の厚みが積層体中央部から下部の厚みより小さくなるように、積層体を形成する。このような形成を可能にするより具体的な例について、
図11及び
図12を参照しながら説明する。
図11は、
図10の製造方法で用いる加圧板の一例を示す断面図で、
図12は、
図10の製造方法で用いる加圧板の他の例を示す断面図である。
【0077】
例えば、
図11に示すように、加圧板50は一対で積層体54を両面から挟み込むように用いられる。各加圧板50は、一点鎖線で示す加圧板50の中央部(加圧板中央部)から上部の厚みd1が加圧板中央部から下部の厚みd2より大きくなるような断面形状を有する。つまり、各加圧板50は、加圧板中央部を境界として、下部に比べて上部が膨れたような断面形状を有する。また、加圧板50は、
図11で例示するような屈曲部51を有するものとすることができ、屈曲部51は丸みをもたせておくこともできる。
【0078】
加圧板50の代替構成として、
図12に示すような加圧板60を用いて加圧することもできる。加圧板60は一対で積層体64を両面から挟み込むように用いられる。各加圧板60は、加圧板中央部から上部の位置が加圧板中央部から下部の位置より積層体64(加圧する対象の積層体)に近接され且つ均一な厚みd3をもつような断面形状を有するものである。つまり、この例における加圧板60は、
図12で例示するように屈曲部61を有するものとすることができる。ここで、均一とは実質的に均一であればよい。例えば、加圧板60の製造方法によっては、上部側の厚み及び下部側の厚みとそれらの境界部分(屈曲部61)での厚みとが若干異なるようになることもある。また、屈曲部61は丸みをもたせておくこともできる。
【0079】
図11の例、
図12の例のいずれにおいても、簡単な構造の加圧板で積層体を両端から加圧することができ、例えば
図2の積層体14のようなD1<D2の積層体を形成し、それを収納した非水二次電池を製造することができる。
【0080】
また、加圧・接着工程は、加圧板で印加する加圧力が、積層体中央部から上部において積層体中央部から下部より大きくなるように加圧することでも、例えば
図2の積層体14のようなD1<D2の積層体を形成することができる。具体的には、積層体中央部から上部又は積層体中央部から下部のいずれか一方を最初に加圧し、次いで加圧力を変えて他方を加圧することができる。これにより、簡単な構造の加圧板で積層体を両端から加圧して、上述のような非水二次電池を製造することができる。
【0081】
また、上述した様々な例において、加圧・接着工程は、加圧板の温度又は加圧時の接着層の温度が、積層体中央部から上部において積層体中央部から下部より高い状態で加圧することが好ましい。例えば、
図11,
図12で例示したような一続きの加圧板50,60を用いた場合でも、その位置に応じて温度を変化させることはできる。
【0082】
温度が高い程、密着度合いを高くし、剥離強度を上げることができる。よって、このような温度変化を伴う簡易な加圧・接着工程を採用することで、例えば
図2の積層体14のようなD1<D2の積層体を形成した上で、より積層体上端面からの非水電解液の含浸を抑制することができ、より抵抗ムラを低減させることができる。また、上述したように、使用する接着剤を積層体の上部と下部とで異ならせるだけでも、剥離強度を変えることができる。
【0083】
次に、隔離部材33で形成したような流路を形成するための他の例における製造方法について、
図13を参照しながら説明する。
図13は、
図10の製造方法で用いることが可能な注液ノズルの一例を示す図である。
【0084】
図13では、含浸工程において用いることが可能な注液ノズル35を例示している。注液ノズル35は、
図8で説明した注液口31において収容器32の代わりに挿入することができる。
【0085】
そして、含浸工程は、ケース30と積層体34との間において積層体34の下部まで注液ノズル35(注液ノズル35の先端35a)を差し込み、注液ノズル35から非水電解液を注入する工程を含む。注液ノズル35は、積層体34が破損しないような柔らかい材質のチューブであることが好ましい。
【0086】
このような構成により、非水電解液が積層体34の下部に流れ込ませることができ、簡易に上端面からの非水電解液の含浸を抑制することができる。なお、注液口及び注液ノズルのセットが1つであり図面左側に設ける例を挙げたが、例えば図面右側にも設けておくなど、複数セットとしてもよい。
【0087】
(他の実施形態等)
なお、本発明は上記実施形態1~4に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1~4で説明した各部材の形状や材質など、或いは製造方法は、例示したものに限らず、非水二次電池としての機能が果たせるもの、或いはそのような非水二次電池が製造できる方法であればよい。また、本発明は、それぞれの実施形態を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 非水二次電池
10、30 ケース
11 蓋
12 負極極柱
13 正極極柱
14、24、34、44、54、64 積層体
14a 発電体
14d、44d 積層体の下部
14u、44u 積層体の上部
15 正極シート
16 負極シート
17 セパレータ
18 接着層
22,23 台座
24n、34n 負極側のタブ部
24p、34p 正極側のタブ部
24su 第1端面
25 テープ
31 注液口
32 収容器
33 隔離部材
35 注液ノズル
35a 先端
44a 流路
50、60 加圧板、
51、61 屈曲部