IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-推定装置、推定プログラム及び推定方法 図1
  • 特許-推定装置、推定プログラム及び推定方法 図2
  • 特許-推定装置、推定プログラム及び推定方法 図3
  • 特許-推定装置、推定プログラム及び推定方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】推定装置、推定プログラム及び推定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20221219BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20221219BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20221219BHJP
   G01K 3/08 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01M10/48 301
H01M10/48 P
H02J7/04 L
H02J7/10 L
G01K3/08
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020045267
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021150019
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】赤嶺 尚志
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-147680(JP,A)
【文献】特開2018-170263(JP,A)
【文献】米国特許第8936394(US,B2)
【文献】特開2018-087716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/04
H02J 7/10
G01K 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の内部温度を推定する推定装置であって、
休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の電圧の計測値を用いて、休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の電圧差ΔVを算出する電圧差算出部と、
休止終了時における前記二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定する内部温度推定部と、
前記内部温度の推定値Ti,sim及び休止時間を用いて、休止開始時から休止終了時までの前記二次電池の自己放電による電圧差ΔVsocを特定する自己放電電圧差特定部と、
前記電圧差ΔVから前記自己放電による電圧差ΔVsocを減算することにより、休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の分極電圧の差ΔVを算出する分極電圧差算出部と、
前記内部温度の推定値Ti,simによって定まる時定数と、前記休止時間と、休止終了時の前記二次電池の分極電圧Vに基づき、休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の分極電圧差の推定値ΔVp,simを算出する分極電圧差推定部と、
前記分極電圧差の推定値ΔVp,simと前記分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値未満であるか否か判定する分極電圧判定部と、
前記分極電圧差の推定値ΔVp,simと前記分極電圧の差ΔVの差が前記第1の閾値未満であるときの前記内部温度の推定値Ti,simを、前記二次電池の内部温度として出力する内部温度出力部と
を備える、推定装置。
【請求項2】
二次電池の内部温度を推定する推定装置であって、
休止終了時における前記二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定する内部温度推定部と、
前記二次電池の表面における放熱量qout,sを決定する放熱量決定部と、
前記放熱量qout,sと、前記二次電池の内部温度の推定値Ti,simに基づき、休止終了時の前記二次電池の表面温度の推定値Ts,simを算出する表面温度推定部と、
前記表面温度の推定値Ts,simと、休止終了時における前記二次電池の表面温度の計測値Tとの差が、第2の閾値未満であるか否か判定する表面温度判定部と、
前記表面温度の推定値Ts,simと前記表面温度の計測値Tの差が前記第2の閾値未満であるときの前記内部温度の推定値Ti,simを、前記二次電池の内部温度として出力する内部温度出力部と
を備える、推定装置。
【請求項3】
前記二次電池の表面における放熱量qout,sを決定する放熱量決定部と、
前記放熱量qout,sと、前記二次電池の内部温度の推定値Ti,simに基づき、休止終了時の前記二次電池の表面温度の推定値Ts,simを算出する表面温度推定部と、
前記表面温度の推定値Ts,simと、休止終了時における前記二次電池の表面温度の計測値Tとの差が、第2の閾値未満であるか否か判定する表面温度判定部と
を備え、
前記内部温度出力部は、前記分極電圧差の推定値ΔVp,simと前記分極電圧の差ΔVの差が前記第1の閾値未満であり、かつ、前記表面温度の推定値Ts,simと前記表面温度の計測値Tの差が前記第2の閾値未満であるときの前記内部温度の推定値Ti,simを、前記二次電池の内部温度として出力する、請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記分極電圧差の推定値ΔVp,simと前記分極電圧の差ΔVの差が前記第1の閾値以上である場合、前記内部温度推定部は、前記分極電圧差の推定値ΔVp,simと前記分極電圧の差ΔVの大小に応じて、前記内部温度の推定値Ti,simの値を変更する、請求項1又は3に記載の推定装置。
【請求項5】
前記内部温度推定部は、
前記分極電圧差の推定値ΔVp,simが前記分極電圧の差ΔVよりも大きい場合、前記内部温度の推定値Ti,simを、既定の推定値Ti,simの値よりも小さな値に変更し、
前記分極電圧差の推定値ΔVp,simが前記分極電圧の差ΔVよりも小さい場合、前記内部温度の推定値Ti,simを、既定の推定値Ti,simの値よりも大きな値に変更する、請求項4に記載の推定装置。
【請求項6】
前記表面温度の推定値Ts,simと前記二次電池の表面温度Tの差が前記第2の閾値以上である場合において、
前記放熱量決定部は、前記表面温度の推定値Ts,simと前記二次電池の表面温度Tの大小に応じて、前記放熱量qout,sの値を変更し、
前記内部温度推定部は、変更された前記放熱量qout,sを用いて、前記内部温度の推定値Ti,simを算出する、請求項2又は3に記載の推定装置。
【請求項7】
前記放熱量決定部は、
前記表面温度の推定値Ts,simが、前記表面温度の計測値Tよりも大きい場合、前記放熱量qout,sを、既定の放熱量qout,sの値よりも大きな値に変更し、
前記表面温度の推定値Ts,simが、前記表面温度の計測値Tよりも小さい場合、前記放熱量qout,sを、既定の放熱量qout,sの値よりも小さい値に変更する、請求項6に記載の推定装置。
【請求項8】
二次電池の内部温度を推定する推定プログラムであって、演算装置に対し、
休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の電圧の計測値を用いて、休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の電圧差ΔVを算出させるステップと、
休止終了時における前記二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定させるステップと、
前記内部温度の推定値Ti,sim及び休止時間を用いて、休止開始時から休止終了時までの前記二次電池の自己放電による電圧差ΔVsocを特定させるステップと、
前記電圧差ΔVから前記自己放電による電圧差ΔVsocを減算させることにより、休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の分極電圧の差ΔVを算出させるステップと、
前記内部温度の推定値Ti,simによって定まる時定数と、前記休止時間と、休止終了時の前記二次電池の分極電圧Vに基づき、休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の分極電圧差の推定値ΔVp,simを算出させるステップと、
前記分極電圧差の推定値ΔVp,simと前記分極電圧の差ΔVの差が、第1の閾値未満であるか否か判定させるステップと、
前記分極電圧差の推定値ΔVp,simと前記分極電圧の差ΔVの差が前記第1の閾値未満であるときの前記内部温度の推定値Ti,simを、前記二次電池の内部温度として出力させるステップと
を実行させる、推定プログラム。
【請求項9】
二次電池の内部温度を推定する推定プログラムであって、演算装置に対し、
休止終了時における前記二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定させるステップと、
前記二次電池の表面における放熱量qout,sを決定させるステップと、
前記放熱量qout,sと、前記内部温度の推定値Ti,simに基づき、休止終了時の前記二次電池の表面温度の推定値Ts,simを算出させるステップと、
前記表面温度の推定値Ts,simと、休止終了時における前記二次電池の表面温度の計測値Tとの差が、第2の閾値未満であるか否か判定させるステップと、
前記表面温度の推定値Ts,simと前記表面温度の計測値Tの差が前記第2の閾値未満であるときの前記内部温度の推定値Ti,simを、前記二次電池の内部温度として出力させるステップと
を実行させる、推定プログラム。
【請求項10】
二次電池の内部温度を推定する推定方法であって、
休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の電圧の計測値を用いて、休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の電圧差ΔVを算出するステップと、
休止終了時における前記二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定するステップと、
前記内部温度の推定値Ti,sim及び休止時間を用いて、休止開始時から休止終了時までの前記二次電池の自己放電による電圧差ΔVsocを特定するステップと、
前記電圧差ΔVから前記自己放電による電圧差ΔVsocを減算することにより、休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の分極電圧の差ΔVを算出するステップと、
前記内部温度の推定値Ti,simによって定まる時定数と、前記休止時間と、休止終了時の前記二次電池の分極電圧Vに基づき、休止開始時及び休止終了時の前記二次電池の分極電圧差の推定値ΔVp,simを算出するステップと、
前記分極電圧差の推定値ΔVp,simと前記分極電圧の差ΔVの差が、第1の閾値未満であるか否か判定するステップと、
前記分極電圧差の推定値ΔVp,simと前記分極電圧の差ΔVの差が前記第1の閾値未満であるときの前記内部温度の推定値Ti,simを、前記二次電池の内部温度として出力するステップと
を含む、推定方法。
【請求項11】
二次電池の内部温度を推定する推定方法であって、
休止終了時における前記二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定するステップと、
前記二次電池の表面における放熱量qout,sを決定するステップと、
前記放熱量qout,sと、前記内部温度の推定値Ti,simに基づき、休止終了時の前記二次電池の表面温度の推定値Ts,simを算出するステップと、
前記表面温度の推定値Ts,simと、休止終了時における前記二次電池の表面温度の計測値Tとの差が、第2の閾値未満であるか否か判定するステップと、
前記表面温度の推定値Ts,simと前記表面温度の計測値Tの差が前記第2の閾値未満であるときの前記内部温度の推定値Ti,simを、前記二次電池の内部温度として出力するステップと
を含む、推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の内部温度を推定する推定装置、推定プログラム及び推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等の電力を駆動力として利用する車両では、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池が使用されている。このような二次電池の内部温度を推定する技術の一例として、特許文献1は、休止終了時のバッテリ内のセルのコア温度を算出する方法を開示する。この方法では、休止開始時及び休止終了時のセルの表面温度と、休止開始時のセルのコア温度と、休止開始時のセルの表面温度とコア温度が収束する時間と、休止時間に基づいて、休止終了時のセルのコア温度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8936394号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1が開示する方法では、実際の休止時間が、休止開始時のセルの表面温度とコア温度が収束する時間よりも短くなった場合、二次電池の内部温度の推定値に誤差が生じる。このため、二次電池の内部温度の推定精度が低いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、二次電池の内部温度の推定精度を向上させることが可能な推定装置、推定プログラム及び推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る二次電池の内部温度を推定する推定装置は、休止開始時及び休止終了時の二次電池の電圧の計測値を用いて、休止開始時及び休止終了時の二次電池の電圧差ΔVを算出する電圧差算出部と、休止終了時における二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定する内部温度推定部と、内部温度の推定値Ti,sim及び休止時間を用いて、休止開始時から休止終了時までの二次電池の自己放電による電圧差ΔVsocを特定する自己放電電圧差特定部と、電圧差ΔVから自己放電による電圧差ΔVsocを減算することにより、休止開始時及び休止終了時の二次電池の分極電圧の差ΔVを算出する分極電圧差算出部と、内部温度の推定値Ti,simによって定まる時定数と、休止時間と、休止終了時の二次電池の分極電圧Vに基づき、休止開始時及び休止終了時の二次電池の分極電圧差の推定値ΔVp,simを算出する分極電圧差推定部と、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値未満であるか否か判定する分極電圧判定部と、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値未満であるときの内部温度の推定値Ti,simを、二次電池の内部温度として出力する内部温度出力部とを備える。
【0007】
本発明の別の態様に係る二次電池の内部温度を推定する推定装置は、休止終了時における二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定する内部温度推定部と、二次電池の表面における放熱量qout,sを決定する放熱量決定部と、放熱量qout,sと、二次電池の内部温度の推定値Ti,simに基づき、休止終了時の二次電池の表面温度の推定値Ts,simを算出する表面温度推定部と、表面温度の推定値Ts,simと、休止終了時における二次電池の表面温度の計測値Tとの差が、第2の閾値未満であるか否か判定する表面温度判定部と、表面温度の推定値Ts,simと表面温度の計測値Tの差が第2の閾値未満であるときの内部温度の推定値Ti,simを、二次電池の内部温度として出力する内部温度出力部とを備える。
【0008】
さらに、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値以上である場合、内部温度推定部は、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの大小に応じて、内部温度の推定値Ti,simの値を変更することができる。
【0009】
さらに、分極電圧差の推定値ΔVp,simが分極電圧の差ΔVよりも大きい場合、内部温度推定部は、内部温度の推定値Ti,simを、既定の推定値Ti,simの値よりも小さな値に変更し、分極電圧差の推定値ΔVp,simが分極電圧の差ΔVよりも小さい場合、内部温度の推定値Ti,simを、既定の推定値Ti,simの値よりも大きな値に変更することができる。
【0010】
さらに、表面温度の推定値Ts,simと二次電池の表面温度Tの差が第2の閾値以上である場合において、放熱量決定部は、表面温度の推定値Ts,simと二次電池の表面温度Tの大小に応じて、放熱量qout,sの値を変更し、内部温度推定部は、変更された放熱量qout,sを用いて、内部温度の推定値Ti,simを算出することができる。
【0011】
さらに、放熱量決定部は、表面温度の推定値Ts,simが、表面温度の計測値Tよりも大きい場合、放熱量qout,sを、既定の放熱量qout,sの値よりも大きな値に変更し、表面温度の推定値Ts,simが、表面温度の計測値Tよりも小さい場合、放熱量qout,sを、既定の放熱量qout,sの値よりも小さい値に変更することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係る二次電池の内部温度を推定する推定プログラムは、演算装置に対し、休止開始時及び休止終了時の二次電池の電圧の計測値を用いて、休止開始時及び休止終了時の二次電池の電圧差ΔVを算出させるステップと、休止終了時における二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定させるステップと、内部温度の推定値Ti,sim及び休止時間を用いて、休止開始時から休止終了時までの二次電池の自己放電による電圧差ΔVsocを特定させるステップと、電圧差ΔVから自己放電による電圧差ΔVsocを減算させることにより、休止開始時及び休止終了時の二次電池の分極電圧の差ΔVを算出させるステップと、内部温度の推定値Ti,simによって定まる時定数と、休止時間と、休止終了時の二次電池の分極電圧Vに基づき、休止開始時及び休止終了時の二次電池の分極電圧差の推定値ΔVp,simを算出させるステップと、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が、第1の閾値未満であるか否か判定させるステップと、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値未満であるときの内部温度の推定値Ti,simを、二次電池の内部温度として出力させるステップとを実行させる。
【0013】
本発明の他の態様に係る二次電池の内部温度を推定する推定プログラムは、演算装置に対し、休止終了時における二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定させるステップと、二次電池の表面における放熱量qout,sを決定させるステップと、放熱量qout,sと、内部温度の推定値Ti,simに基づき、休止終了時の二次電池の表面温度の推定値Ts,simを算出させるステップと、表面温度の推定値Ts,simと、休止終了時における二次電池の表面温度の計測値Tとの差が、第2の閾値未満であるか否か判定させるステップと、表面温度の推定値Ts,simと表面温度の計測値Tの差が第2の閾値未満であるときの内部温度の推定値Ti,simを、二次電池の内部温度として出力させるステップとを実行させる。
【0014】
本発明の他の態様に係る二次電池の内部温度を推定する推定方法は、休止開始時及び休止終了時の二次電池の電圧の計測値を用いて、休止開始時及び休止終了時の二次電池の電圧差ΔVを算出するステップと、休止終了時における二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定するステップと、内部温度の推定値Ti,sim及び休止時間を用いて、休止開始時から休止終了時までの二次電池の自己放電による電圧差ΔVsocを特定するステップと、電圧差ΔVから自己放電による電圧差ΔVsocを減算することにより、休止開始時及び休止終了時の二次電池の分極電圧の差ΔVを算出するステップと、内部温度の推定値Ti,simによって定まる時定数と、休止時間と、休止終了時の二次電池の分極電圧Vに基づき、休止開始時及び休止終了時の二次電池の分極電圧差の推定値ΔVp,simを算出するステップと、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が、第1の閾値未満であるか否か判定するステップと、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値未満であるときの内部温度の推定値Ti,simを、二次電池の内部温度として出力するステップとを含む。
【0015】
本発明の他の態様に係る二次電池の内部温度を推定する推定方法は、休止終了時における二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定するステップと、二次電池の表面における放熱量qout,sを決定するステップと、放熱量qout,sと、内部温度の推定値Ti,simに基づき、休止終了時の二次電池の表面温度の推定値Ts,simを算出するステップと、表面温度の推定値Ts,simと、休止終了時における二次電池の表面温度の計測値Tとの差が、第2の閾値未満であるか否か判定するステップと、表面温度の推定値Ts,simと表面温度の計測値Tの差が第2の閾値未満であるときの内部温度の推定値Ti,simを、二次電池の内部温度として出力するステップとを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、二次電池の内部温度の推定精度を向上させることが可能な推定装置、推定プログラム及び推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る推定装置の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る推定装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る推定装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図4】休止開始時及び休止終了時の電圧差ΔV、自己放電による電圧差ΔVsoc、及び分極電圧の差ΔVの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る推定装置10の構成を示すブロック図である。推定装置10は、車両に設置された二次電池の内部温度を推定する装置である。推定装置10の具体例として、例えば、車両に設置されるECU(Electronic Control Unit)等が挙げられる。
【0019】
推定装置10は、通信インタフェース(I/F)11と、記憶装置12と、演算装置13とを備える。通信I/F11は、推定装置10と、車両に設置された二次電池及び他の装置との間で、信号の送受信を行うインタフェースである。推定装置10は、二次電池の表面温度を検出する温度センサ(図示せず)から通信I/F11を介して、二次電池の表面温度を取得できる。また、推定装置10は、二次電池の電圧を検出する電圧センサ(図示せず)から通信I/F11を介して、二次電池の電圧を示す電圧値を取得できる。
【0020】
記憶装置12は、演算装置13が実行する推定プログラム、演算装置13が処理する種々の情報が保存される記憶装置である。
【0021】
演算装置13は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の演算装置である。演算装置13は、記憶装置12に保存された推定プログラムを実行することにより、推定プログラムによって規定される推定方法を実行する。推定プログラムには、イベント検出部130と、休止時間計測部131と、電圧取得部132と、電圧差算出部133と、放熱量決定部134と、温度推定部135と、自己放電電圧差特定部136と、分極電圧差算出部137と、分極電圧差推定部138と、分極電圧判定部139と、表面温度判定部140と、内部温度出力部141が含まれる。なお、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路が、これらのプログラムモジュールを実行してもよい。
【0022】
イベント検出部130は、車両の休止開始及び休止終了を検出するプログラムモジュールである。イベント検出部130は、車両の休止開始を示す休止開始イベントを検出すると、その旨を休止時間計測部131及び電圧取得部132に通知する。また、イベント検出部130は、車両の休止終了を示す休止終了イベントを検出すると、その旨を休止時間計測部131及び電圧取得部132に通知する。
【0023】
休止時間計測部131は、車両の休止時間を計測するプログラムモジュールである。休止時間計測部131は、休止開始イベントが検出された旨の通知を受信すると、休止時間の計測を開始する。そして、休止時間計測部131は、休止終了イベントが検出された旨の通知を受信すると、休止時間の計測を終了し、休止時間を記憶装置12に保存する。
【0024】
電圧取得部132は、車両に搭載された二次電池の電圧値を取得するプログラムモジュールである。電圧取得部132は、休止開始イベントが検出された旨の通知を受信すると、電圧センサから休止開始時の二次電池の電圧の計測値を取得し、当該計測値を記憶装置12に保存する。また、電圧取得部132は、休止終了イベントが検出された旨の通知を受信すると、電圧センサから休止終了時の二次電池の電圧の計測値を取得し、当該計測値を記憶装置12に保存する。
【0025】
電圧差算出部133は、休止開始時及び休止終了時の二次電池の電圧差ΔVを算出するプログラムモジュールである。電圧差算出部133は、記憶装置12から休止開始時及び休止終了時の二次電池の電圧の計測値を取得し、休止終了時の電圧の計測値から休止開始時の電圧の計測値を減算することにより、電圧差ΔVを算出する。
【0026】
放熱量決定部134は、二次電池の表面における放熱量qout,sを決定するプログラムモジュールである。放熱量qout,sの初期値は、任意の値、例えば、予め計測した二次電池の表面における放熱量の代表値とすることができる。放熱量決定部134は、二次電池の表面温度の推定値Ts,simと、二次電池の表面温度の計測値Tの差の大小に応じて、放熱量qout,sを決定することができる。
【0027】
温度推定部135は、休止終了時の二次電池の内部温度の推定値Ti,sim及び表面温度の推定値Ts,simを算出するプログラムモジュールである。具体的には、温度推定部135は、数式1又は数式2に基づき、内部温度の推定値Ti,sim及び表面温度の推定値Ts,simを算出することができる。なお、温度推定部135は、内部温度推定部及び表面温度推定部に相当する。
【数1】
ここで、Cp,sは二次電池の表面における熱容量を示す。tは休止時間を示す。qin,sは、二次電池の表面温度と内部温度の差による二次電池の受熱量を示す。kは二次電池の熱伝達係数を示す。数式1は、二次電池の表面における熱容量Cp,sと表面温度の推定値Ts,simの時間変化量の積が、受熱量qin,sと放熱量qout,sの差と等しいことを意味する。
【数2】
ここで、Cp,iは二次電池の内部における熱容量を示す。tは休止時間を示す。qout,iは、二次電池の内部温度と表面温度の差による二次電池の放熱量を示す。kは二次電池の熱伝達係数を示す。数式2は、二次電池の内部における熱容量Cp,iと内部温度の推定値Ti,simの時間変化量の積と放熱量qout,iは、大きさが等しく、正負が逆であることを意味する。
【0028】
自己放電電圧差特定部136は、休止終了時の内部温度の推定値Ti,sim及び休止時間を用いて、休止時間における二次電池の自己放電による電圧差ΔVsocを特定するプログラムモジュールである。自己放電電圧差特定部136は、休止終了時の内部温度の推定値Ti,sim及び休止時間と、自己放電による電圧差ΔVsocとが対応付けられたデータテーブル(以下、「電圧差テーブル」とする。)を参照し、休止終了時の内部温度の推定値Ti,sim及び休止時間に対応付けられた電圧差ΔVsocを特定できる。
【0029】
分極電圧差算出部137は、休止開始時の分極電圧と休止終了時の分極電圧の差ΔVを算出するプログラムモジュールである。休止開始時及び休止終了時の電圧差ΔV、自己放電による電圧差ΔVsoc、及び分極電圧の差ΔVは、図4に示すような関係を有する。このため、分極電圧差算出部137は、電圧差ΔVから電圧差ΔVsocを減算することにより、分極電圧の差ΔVを算出することができる。
【0030】
分極電圧差推定部138は、休止開始時の分極電圧と休止終了時の分極電圧の差の推定値ΔVp,simを算出するプログラムモジュールである。具体的には、分極電圧差推定部138は、二次電池の内部温度の推定値Ti,simと分極電圧モデルの時定数τが対応付けられたデータテーブル(以下、「時定数テーブル」とする。)を参照し、温度推定部135が算出した二次電池の内部温度の推定値Ti,simに対応付けられた時定数τを特定する。次いで、分極電圧差推定部138は、数式3に示す分極電圧モデルに基づき、休止時間t及び時定数τを用いて、休止開始時から休止終了時までの分極電圧Vを算出する。
【数3】
ここで、分極電圧差推定部138は、分極電圧差算出部137が算出した分極電圧の差ΔVを、数式3のVの初期値として設定する。Vの初期値は、休止開始時の分極電圧Vp,sim,startに相当する。次いで、分極電圧差推定部138は、数式3に基づき、休止開始時から休止終了時までの分極電圧Vを算出し、休止終了時の分極電圧Vp,sim,endを得る。
【0031】
そして、分極電圧差推定部138は、数式4に基づき、休止開始時の分極電圧Vp,sim,startと、休止終了時の分極電圧Vp,sim,endを用いて、休止開始時及び休止終了時の分極電圧差の推定値ΔVp,simを算出する。
【数4】
【0032】
分極電圧判定部139は、分極電圧差推定部138が算出した分極電圧差の推定値ΔVp,simと、分極電圧差算出部137が算出した分極電圧の差ΔVの差の絶対値が、閾値α未満であるか否か判断するプログラムモジュールである。閾値αは、電圧の計測精度を考慮して定めることができる。例えば、電圧の計測精度が10mVの場合、閾値αは100mVとすることができる。すなわち、閾値αは、電圧の計測精度の10倍程度の値とすることができる。閾値αは、求める内部温度の推定精度に応じて、電圧の計測精度の任意の倍数とすることができる。
【0033】
表面温度判定部140は、温度推定部135が算出した表面温度の推定値Ts,simと、休止終了時における二次電池の表面温度の計測値Tとの差の絶対値が閾値β未満であるか否か判断するプログラムモジュールである。閾値βは、求める内部温度の推定精度に応じた任意の値とすることができる。
【0034】
内部温度出力部141は、温度推定部135が算出した内部温度の推定値Ti,simを出力するプログラムモジュールである。内部温度出力部141は、内部温度の推定値Ti,simの推定精度に関する所定の条件を満たす場合に、内部温度の推定値Ti,simを出力する。
【0035】
図2及び図3は、推定装置10が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図2及び図3の処理は、イベント検出部130が休止終了イベントを検出した場合に実行される。
【0036】
ステップS101では、電圧差算出部133が、休止開始時及び休止終了時の二次電池の電圧の計測値を記憶装置12から取得し、休止終了時の電圧の計測値から休止開始時の電圧の計測値を減算することにより、二次電池の電圧差ΔVを算出する。
【0037】
ステップS102では、放熱量決定部134が、二次電池の表面における放熱量を示す変数qout,sに初期値を設定する。ステップS103では、温度推定部135が、休止終了時の二次電池の表面温度の計測値Tを記憶装置12から取得し、当該計測値Tを、休止終了時の二次電池の内部温度の推定値を示す変数Ti,simに設定する。ステップS104では、温度推定部135は、数式1又は数式2に基づき、変数qout,s及び変数Ti,simを用いて、休止終了時の表面温度の推定値を算出し、変数Ts,simに設定する。
【0038】
ステップS105では、自己放電電圧差特定部136が、電圧差テーブルを参照し、変数Ti,simに設定された値及び休止時間に対応付けられた電圧差ΔVsocを特定する。ステップS106では、分極電圧差算出部137が、ステップS101で算出された電圧差ΔVから、ステップS105で特定された自己放電による電圧差ΔVsocを減算することにより、休止開始時の分極電圧と休止終了時の分極電圧の差ΔVを算出する。
【0039】
ステップS107では、分極電圧差推定部138が、時定数テーブルを参照し、変数Ti,simに設定された値に対応付けられた時定数τを特定する。ステップS108では、分極電圧差推定部138は、数式3に示す分極電圧モデルに基づき、ステップS106で算出された分極電圧の差ΔVと、休止時間t及び時定数τを用いて、休止終了時の分極電圧Vp,sim,endを算出する。次いで、分極電圧差推定部138は、数式4に基づき、休止開始時の分極電圧Vp,sim,startに相当する分極電圧の差ΔVと、休止終了時の分極電圧Vp,sim,endを用いて、休止開始時の分極電圧と休止終了時の分極電圧の差の推定値ΔVp,simを算出する。
【0040】
ステップS109では、分極電圧判定部139が、ステップS108で算出された分極電圧差の推定値ΔVp,simと、ステップS106で算出された分極電圧の差ΔVの差の絶対値が、閾値α未満であるか否か判断する。分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差の絶対値が閾値α以上である場合(NO)、ステップS110に処理が分岐する。
【0041】
ステップS110では、温度推定部135は、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの大小に応じて、変数Ti,simの値を変更し、ステップS104に処理が戻る。より詳細には、温度推定部135は、分極電圧差の推定値ΔVp,simが分極電圧の差ΔVよりも大きい場合、変数Ti,simの値を、変数Ti,simの既定値よりも小さくする。一方、分極電圧差の推定値ΔVp,simが分極電圧の差ΔVよりも小さい場合、温度推定部135は、変数Ti,simの値を、変数の既定値よりも大きくする。
【0042】
ステップS109において、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差の絶対値が閾値α未満である場合(YES)、ステップS111に処理が分岐する。ステップS111では、表面温度判定部140が、変数Ts,simと、休止終了時における二次電池の表面温度の計測値Tとの差の絶対値が閾値β未満であるか否か判断する。変数Ts,simと表面温度の計測値Tとの差の絶対値が閾値β以上である場合(NO)、ステップS112に処理が分岐する。
【0043】
ステップS112では、放熱量決定部134が、変数Ts,simと表面温度の計測値Tの差の大小に応じて、変数qout,sの値を変更する。より詳細には、放熱量決定部134は、変数Ts,simが表面温度の計測値Tよりも大きい場合、変数qout,sの値を、変数qout,sの既定値よりも大きな値に変更する。一方、変数Ts,simが表面温度の計測値Tよりも小さい場合、変数qout,sの値を、変数qout,sの既定値よりも小さな値に変更する。
【0044】
ステップS113では、温度推定部135は、変更された放熱量qout,sを用いて、数式1及び数式2に基づき、休止終了時の二次電池の内部温度の推定値及び表面温度の推定値を算出し、算出した内部温度の推定値及び表面温度の推定値を、変数Ti,sim及び変数Ts,simに設定し、ステップS105に処理が戻る。
【0045】
ステップS111において、変数Ts,simと表面温度の計測値Tとの差の絶対値が閾値β未満である場合(YES)、ステップS114に処理が分岐する。ステップS114では、内部温度出力部141が、変数Ti,simに設定されている値を、二次電池の内部温度の推定値として出力し、図3の処理が終了する。
【0046】
上述した実施形態では、推定装置10の電圧差算出部133が、休止開始時及び休止終了時の二次電池の電圧差ΔVを算出する。また、温度推定部135が、休止終了時における二次電池の内部温度の推定値Ti,simを決定する。次いで、自己放電電圧差特定部136が、内部温度の推定値Ti,sim及び休止時間を用いて、休止開始時から休止終了時までの二次電池の自己放電による電圧差ΔVsocを特定する。分極電圧差算出部137は、二次電池の電圧差ΔV及び電圧差ΔVsocを用いて、休止開始時及び休止終了時の二次電池の分極電圧の差ΔVを算出する。一方、分極電圧差推定部138は、内部温度の推定値Ti,simによって定まる時定数と、休止時間と、休止終了時の二次電池の分極電圧Vに基づき、休止開始時及び休止終了時の二次電池の分極電圧差の推定値ΔVp,simを算出する。そして、分極電圧判定部139が、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値未満であるか否か判定する。
【0047】
このように、分極電圧判定部139の判定対象である分極電圧差の推定値ΔVp,simは、内部温度の推定値Ti,simによって定まる時定数と、実際の休止時間と、休止終了時の二次電池の分極電圧Vに基づいて算出される。そのため、内部温度の推定値Ti,simの推定精度が高い程、分極電圧差の推定値ΔVp,simの推定精度が高くなるため、分極電圧差の推定値ΔVp,simと、休止開始時及び休止終了時の電圧の計測値に基づく分極電圧の差ΔVとの差は小さくなる。したがって、第1の閾値を小さな値とした場合、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値未満であることは、内部温度の推定値Ti,simの推定精度が高いことを意味する。
【0048】
一方、放熱量決定部134は、二次電池の表面における放熱量qout,sを決定する。次いで、温度推定部135が、放熱量qout,sと、二次電池の内部温度の推定値Ti,simに基づき、休止終了時の二次電池の表面温度の推定値Ts,simを算出する。そして、表面温度判定部140が、表面温度の推定値Ts,simと、休止終了時における二次電池の表面温度の計測値Tとの差が、第2の閾値未満であるか否か判定する。
【0049】
このように、表面温度判定部140の判定対象である表面温度の推定値Ts,simは、放熱量qout,sと、内部温度の推定値Ti,simに基づいて算出される。そのため、内部温度の推定値Ti,simの推定精度が高い程、表面温度の推定値Ts,simの推定精度が高くなる。通常、二次電池の実際の内部温度は、二次電池の表面温度の計測値Tから所定の範囲内にある。そのため、この所定の範囲に基づいて第2の閾値を設定した場合、内部温度の推定値Ti,simの推定精度が高いとき、すなわち、表面温度の推定値Ts,simの推定精度が高いときに限り、表面温度の推定値Ts,simと、休止終了時における二次電池の表面温度の計測値Tとの差が第2の閾値未満になる。したがって、表面温度の推定値Ts,simと表面温度の計測値Tとの差が第2の閾値未満であることは、内部温度の推定値Ti,simの推定精度が高いことを意味する。
【0050】
内部温度出力部141は、このように分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値未満であり、かつ、表面温度の推定値Ts,simと表面温度の計測値Tの差が第2の閾値未満であるときの内部温度の推定値Ti,simを、二次電池の内部温度として出力する。すなわち、推定装置10は、分極電圧差の推定値ΔVp,simと表面温度の推定値Ts,simに基づく内部温度の推定値Ti,simの推定精度の条件を満たす場合に限り、内部温度の推定値Ti,simを二次電池の内部温度として出力するため、二次電池の内部温度の推定精度を向上させることができる。
【0051】
また、温度推定部135は、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値以上である場合、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの大小に応じて、内部温度の推定値Ti,simの値を変更する。具体的には、分極電圧差の推定値ΔVp,simが分極電圧の差ΔVよりも大きい場合、温度推定部135は、内部温度の推定値Ti,simを、既定の推定値Ti,simの値よりも小さな値に変更して、内部温度の推定値Ti,simの値を実際の内部温度に近づける。一方、表面温度の推定値Ts,simが表面温度の計測値Tよりも小さい場合、温度推定部135は、内部温度の推定値Ti,simを、既定の推定値Ti,simの値よりも大きな値に変更して、内部温度の推定値Ti,simの値を実際の内部温度に近づける。これにより、温度推定部135は、内部温度の推定値Ti,simの推定精度を高めることができる。
【0052】
さらに、放熱量決定部134は、表面温度の推定値Ts,simと二次電池の表面温度Tの差が第2の閾値以上である場合、表面温度の推定値Ts,simと二次電池の表面温度Tの大小に応じて、放熱量qout,sの値を変更する。具体的には、放熱量決定部134は、表面温度の推定値Ts,simが表面温度の計測値Tよりも大きい場合、放熱量qout,sを既定の放熱量qout,sの値よりも大きな値に変更して、放熱量qout,sを実際の放熱量に近づける。一方、表面温度の推定値Ts,simが表面温度の計測値Tよりも小さい場合、放熱量qout,sを既定の放熱量qout,sの値よりも小さい値に変更して、放熱量qout,sを実際の放熱量に近づける。そして、温度推定部135は、変更された放熱量qout,sを用いて、内部温度の推定値Ti,simを算出する。これにより、温度推定部135は、内部温度の推定値Ti,simの推定精度を高めることができる。
【0053】
<その他の実施形態>
他の実施形態では、内部温度出力部141は、分極電圧差の推定値ΔVp,simと分極電圧の差ΔVの差が第1の閾値未満である場合、内部温度の推定値Ti,simを二次電池の内部温度として出力してもよい。すなわち、推定装置10は、分極電圧差の推定値ΔVp,simに関する内部温度の推定値Ti,simの推定精度の条件を満たす場合に、二次電池の内部温度として出力してもよい。
【0054】
また、他の実施形態では、内部温度出力部141は、表面温度の推定値Ts,simと表面温度の計測値Tの差が第2の閾値未満である場合、内部温度の推定値Ti,simを、二次電池の内部温度として出力してもよい。すなわち、推定装置10は、表面温度の推定値Ts,simに関する内部温度の推定値Ti,simの推定精度の条件を満たす場合に、二次電池の内部温度として出力してもよい。
【0055】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに提供することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに提供されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限られたものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0057】
10 推定装置
133 電圧差算出部
134 放熱量決定部
135 温度推定部
136 自己放電電圧差特定部
137 分極電圧差算出部
138 分極電圧差推定部
139 分極電圧判定部
140 表面温度判定部
141 内部温度出力部
図1
図2
図3
図4