(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-16
(45)【発行日】2022-12-26
(54)【発明の名称】装置、その制御プログラム及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020112958
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2020-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】神山 直久
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-509694(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0055324(US,A1)
【文献】特開平08-194983(JP,A)
【文献】特許第4040116(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備える装置であって、前記プロセッサは、
被検体に注入された造影剤によって反射された超音波の信号強度を示す複数フレームの造影画像における関心領域について、前記信号強度の時間変化を示す第1の時間強度曲線を作成
すること、
該第1の時間強度曲線における極大値側の第1の包絡線と、前記第1の時間強度曲線における極小値側の第2の包絡線を作成
すること、
前記複数フレームの中から選択された少なくとも1つのフレームの造影画像
における前記関心領域の前記信号強度を特定
することであって、ユーザインターフェースが、前記少なくとも1つのフレームの選択を行うユーザーの入力を受け付けると、前記複数フレームの中から、前記少なくとも1つのフレームの選択が行われる、前記関心領域の前記信号強度を特定すること、
前記選択されたフレームに対応する時間における前記第1の時間強度曲線上の前記信号強度の位置を、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間の距離に対する割合で特定
すること、
前記信号強度の時間変化を示す第2の時間変化曲線であって、前記選択されたフレームに対応する時間において前記割合の位置を通り、なおかつ前記選択されたフレームに対応する時間以外の他の時間について、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間において、前記割合の位置から特定した位置を通る第2の時間強度曲線を作成する
こと
を実行するよう構成される
装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記選択されたフレームに対応する時間以外の他の時間について、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間において、前記割合と同じ割合の位置を特定し、該位置を通る前記第2の時間強度曲線を作成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記複数フレームの中から選択された複数のフレームの造影画像の各々における前記関心領域の前記信号強度を特定し、
前記選択された複数のフレームの各々に対応する時間について、前記割合を特定し、
前記選択された複数のフレームに対応する時間以外の他の時間について、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間において、前記割合を用いた補間及び補外により特定した位置を通る前記第2の時間強度曲線を作成する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記ユーザインタフェースにおいて選択されたフレームの造影画像における前記関心領域の前記信号強度を特定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記ユーザインタフェースが、前記複数フレームの中から、前記ユーザーが適切な画像として定められた条件を満たすと判断した造影画像のフレームを選択する入力を受け付け、
前記条件が、前記関心領域とターゲットの大きさが同じであり、かつ造影画像において前記関心領域に音響陰影が含まれていないことである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記第2の時間強度曲線と前記第1の時間強度曲線との交点に対応するフレームの造影画像のデータ群をメモリに記憶し、該メモリから前記データ群を読み出して該データ群に基づく造影画像の関心領域の第3の時間強度曲線を作成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は超音波診断装置であって、造影剤が注入された被検体に対して超音波を送信し、該超音波のエコーを受信する超音波プローブをさらに備え、
前記プロセッサは、前記超音波のエコーに基づいて前記造影画像を作成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、造影剤が注入された被検体に対して超音波を送信し、該超音波のエコーを受信する超音波プローブを備える超音波診断装置とネットワークを介して接続されており、
前記造影画像は、前記超音波プローブが受信した前記超音波のエコーに基づいて作成された画像である、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記造影画像のデータは、前記超音波プローブが受信した前記超音波のエコーに基づいて前記超音波診断装置によって作成され、前記ネットワークを介して前記装置へ入力される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
プロセッサを備える装置の制御プログラムであって、前記プロセッサに、
被検体に注入された造影剤によって反射された超音波の信号強度を示す複数フレームの造影画像における関心領域について、前記信号強度の時間変化を示す第1の時間強度曲線を作成
すること、
該第1の時間強度曲線における極大値側の第1の包絡線と、前記第1の時間強度曲線における極小値側の第2の包絡線を作成
すること、
前記複数フレームの中から選択された少なくとも1つのフレームの造影画像
における前記関心領域の前記信号強度を特定
することであって、ユーザインターフェースが、前記少なくとも1つのフレームの選択を行うユーザーの入力を受け付けると、前記複数フレームの中から、前記少なくとも1つのフレームの選択が行われる、前記関心領域の前記信号強度を特定すること、
前記選択されたフレームに対応する時間における前記第1の時間強度曲線上の前記信号強度の位置を、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間の距離に対する割合で特定
すること、
前記信号強度の時間変化を示す第2の時間変化曲線であって、前記選択されたフレームに対応する時間において前記割合の位置を通り、なおかつ前記選択されたフレームに対応する時間以外の他の時間について、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間において、前記割合の位置から特定した位置を通る第2の時間強度曲線を作成する
こと
、を実行させるよう構成される装置の制御プログラム。
【請求項11】
前記ユーザインタフェースが、前記複数フレームの中から、前記ユーザーが適切な画像として定められた条件を満たすと判断した造影画像のフレームを選択する入力を受け付け、
前記条件が、前記関心領域とターゲットの大きさが同じであり、かつ造影画像において前記関心領域に音響陰影が含まれていないことである、請求項10に記載の制御プログラム。
【請求項12】
超音波診断装置と、該超音波診断装置とネットワークを介して接続されたサーバとを有するシステムであって、
前記超音波診断装置は、
造影剤が注入された被検体に対して超音波を送信し、該超音波のエコーを受信する超音波プローブと、
前記造影剤によって反射された超音波の信号強度を示す造影画像を前記超音波のエコー信号に基づいて作成し、前記造影画像のデータを前記ネットワークを介して前記サーバへ出力する第1のプロセッサと、を備え、
前記サーバは、第2のプロセッサを備え、該第2のプロセッサは、
複数フレームの前記造影画像における関心領域について、前記信号強度の時間変化を示す第1の時間強度曲線を作成
すること、
該第1の時間強度曲線における極大値側の第1の包絡線と、前記第1の時間強度曲線における極小値側の第2の包絡線を作成
すること、
前記複数フレームの中から選択された少なくとも1つのフレームの造影画像
における前記関心領域の前記信号強度を特定
することであって、ユーザインターフェースが、前記少なくとも1つのフレームの選択を行うユーザーの入力を受け付けると、前記複数フレームの中から、前記少なくとも1つのフレームの選択が行われる、前記関心領域の前記信号強度を特定すること、
前記選択されたフレームに対応する時間における前記第1の時間強度曲線上の前記信号強度の位置を、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間の距離に対する割合で特定
すること、
前記信号強度の時間変化を示す第2の時間変化曲線であって、前記選択されたフレームに対応する時間において前記割合の位置を通り、なおかつ前記選択されたフレームに対応する時間以外の他の時間について、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間において、前記割合の位置から特定した位置を通る第2の時間強度曲線を作成する
こと、
を実行するよう構成されるシステム。
【請求項13】
前記ユーザインタフェースが、前記複数フレームの中から、前記ユーザーが適切な画像として定められた条件を満たすと判断した造影画像のフレームを選択する入力を受け付け、
前記条件が、前記関心領域とターゲットの大きさが同じであり、かつ造影画像において前記関心領域に音響陰影が含まれていないことである、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体に注入された造影剤の時間強度曲線を作成する装置、その制御プログラム及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
造影画像は、造影剤によって反射された超音波の信号強度を示す画像である。超音波診断装置では、造影画像に設定された関心領域(ROI:Region Of Interest)内について時間強度曲線が作成されることがある(例えば、特許文献1参照)。この時間強度曲線は、関心領域内の信号強度の時間変化を示し、TIC(Time Intensity Curve)とも呼ばれる。
【0003】
時間強度曲線の特徴によって、腫瘍の鑑別診断をすることができる。例えば、ユーザーは、鑑別診断のため、造影画像において、ターゲットと参照部の各々に関心領域を設定する。一例では、ターゲットは腫瘤であり、参照部は腫瘤の周囲の正常な肝実質である。2つの関心領域内の各々の信号強度の比を分析することは、腫瘍の鑑別診断の助けとなりうる。また、時間強度曲線で評価可能なパラメータは、上述の2つの関心領域内の各々の信号強度の比の他にも数多くある。例えば、時間強度曲線の最大勾配、最小勾配、曲線の積分値(Area under the curve)なども、時間強度曲線で評価可能なパラメータである。
【0004】
時間強度曲線で評価可能なパラメータのいくつかは、20~30秒間かそれ以上の計測値が必要で、被検体にとって長時間の息止めが難しい場合もある。このような場合、ユーザーは、被検体に「小さい呼吸」を指示する。そして、ユーザーは、呼吸によって超音波のスキャン断面が多少ずれることを許容しつつ、時間強度曲線の概形を評価する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
呼吸によって超音波のスキャン断面がずれることは、関心領域内の腫瘤の信号の一部が肝実質の信号と入れ替わり、関心領域内の信号強度が変化することを引き起こしうる。また、例えば超音波プローブと体表との接触の悪さや、肺などの障壁によって発生した音響陰影の影響下に、ターゲットが周期的に入ってしまう場合にも、周期的に関心領域内の信号強度の変化が起こってしまう。これらは、時間強度曲線において凹凸の変動として現れ、本来得られるべき理想的な時間強度曲線からの乖離を生じさせる。このような乖離が大きくなるほど、時間強度曲線の評価パラメータの誤差も大きくなりうる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、装置は、プロセッサを備え、プロセッサは、被検体に注入された造影剤によって反射された超音波の信号強度を示す複数フレームの造影画像における関心領域について、前記信号強度の時間変化を示す第1の時間強度曲線を作成し、この第1の時間強度曲線における極大値側の第1の包絡線と、前記第1の時間強度曲線における極小値側の第2の包絡線を作成する。そして、プロセッサは、前記複数フレームの中から選択された少なくとも1つのフレームの造影画像であって、適切な画像として定められた条件を満たす造影画像における前記関心領域の前記信号強度を特定し、前記選択されたフレームに対応する時間における前記第1の時間強度曲線上の前記信号強度の位置を、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間の距離に対する割合で特定する。さらに、プロセッサは、前記信号強度の時間変化を示す第2の時間変化曲線であって、前記選択されたフレームに対応する時間において前記割合の位置を通り、なおかつ前記選択されたフレームに対応する時間以外の他の時間について、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間において、前記割合の位置から特定した位置を通る第2の時間強度曲線を作成する。
【0008】
他の態様において、システムは、超音波診断装置と、該超音波診断装置とネットワークを介して接続されたサーバとを有する。超音波診断装置は、造影剤が注入された被検体に対して超音波を送信し、該超音波のエコーを受信する超音波プローブと、前記造影剤によって反射された超音波の信号強度を示す造影画像を前記超音波のエコー信号に基づいて作成し、前記造影画像のデータを前記ネットワークを介して前記サーバへ出力する第1のプロセッサと、を備える。またサーバは、第2のプロセッサを備える。この第2のプロセッサは、複数フレームの前記造影画像における関心領域について、前記信号強度の時間変化を示す第1の時間強度曲線を作成し、この第1の時間強度曲線における極大値側の第1の包絡線と、前記第1の時間強度曲線における極小値側の第2の包絡線を作成する。そして、前記複数フレームの中から選択された少なくとも1つのフレームの造影画像であって、適切な画像として定められた条件を満たす造影画像における前記関心領域の前記信号強度を特定し、前記選択されたフレームに対応する時間における前記第1の時間強度曲線上の前記信号強度の位置を、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間の距離に対する割合で特定する。さらに、第2のプロセッサは、前記信号強度の時間変化を示す第2の時間変化曲線であって、前記選択されたフレームに対応する時間において前記割合の位置を通り、なおかつ前記選択されたフレームに対応する時間以外の他の時間について、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間において、前記割合の位置から特定した位置を通る第2の時間強度曲線を作成する。
【発明の効果】
【0009】
上記態様における装置及びシステムによれば、前記第1の時間強度曲線における極大値側の第1の包絡線と、前記第1の時間強度曲線における極小値側の第2の包絡線の間を通る前記第2の時間強度曲線が、前記割合の位置を用いて作成されることにより、より正確な時間強度曲線を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態による超音波診断装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態による時間強度曲線の作成処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】関心領域が設定された造影画像を示す図であり、腫瘤が肝実質よりも高輝度である造影画像を示す図である。
【
図5】肝実質が腫瘤よりも高輝度である造影画像を示す図である。
【
図7】スキャン面がずれた後の造影画像であって、腫瘤が肝実質よりも高輝度である造影画像を示す図である。
【
図9】スキャン面がずれた後の造影画像であって、肝実質が腫瘤よりも高輝度である造影画像を示す図である。
【
図10】第1の時間強度曲線に対する第1の包絡線及び第2の包絡線を示す図である。
【
図11】第1の時間強度曲線において、選択された3フレームの信号強度を示す図である。
【
図12】選択されたフレームに対応する時間における第1の時間強度曲線上の信号強度の位置を、第1の包絡線と第2の包絡線の間の距離に対する割合で特定することを説明する図である。
【
図14】第2実施形態によるシステムの一例を示すブロック図である。
【
図15】第2実施形態による処理の一例を示すフローチャートであり、時間強度曲線が作成される前の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
先ず、第1実施形態について説明する。
図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送信ビームフォーマ3及び送信機4を含む。超音波プローブ2は、被検体に対して超音波スキャンを実行して超音波のエコーを受信する。より具体的には、超音波プローブ2は、パルス超音波を被検体(図示せず)に放射する複数の振動素子2aを有する。複数の振動素子2aは、送信ビームフォーマ3および送信機4によってドライブされパルス超音波を放射する。
【0012】
超音波診断装置1は、さらに受信機5及び受信ビームフォーマ6を含む。振動素子2aから放射されたパルス超音波は、被検体内において反射して振動素子2aに戻るエコーを生成する。エコーは、振動素子2aによって電気信号に変換されてエコー信号となり、受信機5に入力される。エコー信号は、受信機5において所要のゲインによる増幅等が行なわれた後に受信ビームフォーマ6に入力され、この受信ビームフォーマ6において受信ビームフォーミングが行われる。受信ビームフォーマ6は、受信ビームフォーミング後の超音波データを出力する。
【0013】
受信ビームフォーマ6は、ハードウェアビームフォーマであってもソフトウェアビームフォーマであってもよい。受信ビームフォーマ6がソフトウェアビームフォーマである場合、受信ビームフォーマ6は、グラフィックス処理ユニット(GPU)、マイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、または論理演算を実行することができる他の種類のプロセッサのうちの任意の1つまたは複数を含む1つまたは複数のプロセッサを備えることができる。受信ビームフォーマ6を構成するプロセッサは、後述のプロセッサ7とは別のプロセッサで構成されていてもよいし、プロセッサ7で構成されていてもよい。
【0014】
超音波プローブ2は、送信ビームフォーミングおよび/または受信ビームフォーミングの全部または一部を行うための電気回路を含むことができる。例えば、送信ビームフォーマ3、送信機4、受信機5、および受信ビームフォーマ6の全部または一部は、超音波プローブ2内に設けられていてもよい。
【0015】
超音波診断装置1は、送信ビームフォーマ3、送信機4、受信機5、および受信ビームフォーマ6を制御するためのプロセッサ7も含む。さらに、超音波診断装置1は、ディスプレイ8、メモリ9及びユーザインタフェース10を含む。
【0016】
プロセッサ7は、超音波プローブ2と電子通信している。プロセッサ7は、超音波プローブ2を制御して超音波データを取得することができる。プロセッサ7は、振動素子2aのどれがアクティブであるか、および超音波プローブ2から送信される超音波ビームの形状を制御する。プロセッサ7はまた、ディスプレイ8とも電子通信しており、プロセッサ7は、超音波データを処理してディスプレイ8上に表示するための超音波画像にすることができる。「電子通信」という用語は、有線通信と無線通信の両方を含むように定義することができる。プロセッサ7は、一実施形態によれば中央処理装置(CPU)を含むことができる。他の実施形態によれば、プロセッサ7は、デジタル信号プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、または他のタイプのプロセッサなど、処理機能を実行することができる他の電子構成要素を含むことができる。他の実施形態によれば、プロセッサ7は、処理機能を実行することができる複数の電子構成要素を含むことができる。例えばプロセッサ7は、中央処理装置、デジタル信号プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、およびグラフィックスプロセッシングユニットを含む電子構成要素のリストから選択された2つ以上の電子構成要素を含むことができる。
【0017】
プロセッサ7は、RFデータを復調する複合復調器(図示せず)を含むこともできる。別の実施形態では、処理チェーンの早いうちに復調を実行することができる。
【0018】
プロセッサ7は、複数の選択可能な超音波モダリティに従った1つまたは複数の処理動作をデータに行うように構成されている。エコー信号が受信されるとき、データは走査セッション中にリアルタイムで処理することができる。この開示のために、「リアルタイム」という用語は、いかなる意図的な遅延もなく行われる手順を含むように定義される。
【0019】
また、データは、超音波の走査中に一時的にバッファ(図示せず)に格納し、ライブ操作またはオフライン操作でリアルタイムではなく処理することができる。この開示において、「データ」という用語は、本開示においては、超音波診断装置を用いて取得される1つまたは複数のデータセットを指すように使用することができる。
【0020】
超音波データは、プロセッサ7によって他のまたは異なるモード関連モジュール(例えば、Bモード、カラードップラ、Mモード、カラーMモード、スペクトルドップラ、造影モード、エラストグラフィ、TVI、歪み、歪み速度、など)で処理して超音波画像のデータを作ることができる。例えば、1つまたは複数のモジュールが、Bモード、カラードップラ、Mモード、カラーMモード、スペクトルドップラ、造影モード、エラストグラフィ、TVI、歪み、歪み速度、およびそれらの組合せ、などの超音波画像を生成することができる。本明細書では、特に造影モードで表示される造影画像について後述する。
【0021】
画像ビームおよび/または画像フレームは保存され、データがメモリに取得された時を示すタイミング情報を記録することができる。前記モジュールは、例えば、画像フレームを座標ビーム空間から表示空間座標に変換するために走査変換演算を実行する走査変換モジュールを含むことができる。被検体に処置が実施されている間にメモリから画像フレームを読み取り、その画像フレームをリアルタイムで表示する映像プロセッサモジュールが設けられてもよい。映像プロセッサモジュールは画像フレームを画像メモリに保存することができ、超音波画像は画像メモリから読み取られディスプレイ8に表示される。
【0022】
なお、走査変換演算前の超音波データをローデータ(raw data)というものとする。また、走査変換演算後のデータを画像データというものとする。
【0023】
プロセッサ7が複数のプロセッサを含む場合、プロセッサ7が担当する上述の処理タスクを、複数のプロセッサが担当してもよい。例えば、第1のプロセッサを使用して、RF信号を復調および間引きすることができ、第2のプロセッサを使用して、データをさらに処理した後、画像を表示することができる。
【0024】
また、例えば受信ビームフォーマ6がソフトウェアビームフォーマである場合、その処理機能は、単一のプロセッサで実行されてもよいし、複数のプロセッサで実行されてもよい。
【0025】
ディスプレイ8は、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどである。
【0026】
メモリ9は、任意の既知のデータ記憶媒体であり、非一過性の記憶媒体及び一過性の記憶媒体を含む。非一過性の記憶媒体は、例えば、HDD(Hard Disk:ハードディスク)、ROM(Read Only Memory)などの不揮発性の記憶媒体である。非一過性の記憶媒体は、CD(Compact Disk)やDVD(Digital Versatile Disk)などの可搬性の記憶媒体を含んでいてもよい。プロセッサ7によって実行されるプログラムは、非一過性の記憶媒体に記憶されている。
【0027】
一過性の記憶媒体は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶媒体である。
【0028】
ユーザインタフェース10は、操作者の入力を受け付けることができる。例えば、ユーザインタフェース10は、ユーザーからの指示や情報の入力を受け付ける。ユーザインタフェース10は、キーボード(keyboard)、ハードキー(hard key)、トラックボール(trackball)、ロータリーコントロール(rotary control)及びソフトキー等を含んで構成されている。ユーザインタフェース10は、ソフトキー等を表示するタッチスクリーンを含んでいてもよい。
【0029】
次に、本例の超波診断装置1における作用について説明する。先ず、超音波診断装置1は、造影剤が注入された被検体の造影画像を取得する。具体的には、プロセッサ7は、超音波プローブ2を制御して、造影剤が注入された被検体に対する超音波の送信を開始する。超音波プローブ2は、造影剤によって反射された超音波を含むエコーを受信する。プロセッサ7は、エコー信号に対して公知の処理を行なって、造影剤によって反射された超音波の信号強度を示す造影画像を作成する。造影画像は、例えば被検体の肝臓についての画像である。プロセッサ7は、造影画像のデータをメモリ9に記憶する。造影画像のデータに加え、Bモード画像のデータが取得されメモリ9に記憶されてもよい。
【0030】
メモリ9に記憶される造影画像のデータは、複数のフレームのデータであり、所要の時間の長さを有する。この時間の長さは、被検体にとって息止めが難しい時間の長さであり、一例では60秒以上で、2分から5分の長さである。ただし、時間の長さは一例にすぎず、例示したものに限られるものではない。造影画像のデータは、被検体が呼吸をしながら取得される。
【0031】
次に、このようにして取得された造影画像についての時間強度曲線の作成について、
図2に示すフローチャートに基づいて説明する。一例では、時間強度曲線が作成される造影画像はリアルタイム画像ではない画像である。先ず、ステップS1では、プロセッサ7は、メモリ9に記憶された造影画像のデータを読み出し、ディスプレイ8に表示する。プロセッサ7は、造影画像CIを表示させるユーザーの入力をユーザインタフェース10が受け付けると、造影画像CIを表示してもよい。一例では、ディスプレイ8に表示される造影画像CIは静止画像であり、メモリ9に記憶され読み出された複数のフレームの中から選択された1フレームの画像である。一例では、後述する関心領域Rの設定に適した造影画像CIが、ユーザーによって選択され表示される。プロセッサ7は、造影画像CIに加えて、Bモード画像(図示省略)をディスプレイ8に表示してもよい。
【0032】
次に、ステップS2では、
図3に示すように、ディスプレイ8に表示された造影画像CIに、関心領域Rが設定される。ユーザインタフェース10は、ディスプレイ8に表示されている造影画像CIに関心領域Rを設定するユーザーの入力を受け付ける。ユーザインタフェース10が入力を受け付けると、プロセッサ7は、造影画像CIに関心領域Rを設定する。
【0033】
関心領域Rは、造影画像CIにおけるターゲットに配置される。一例では、ターゲットは腫瘤Mである。本明細書では、関心領域Rは、円形の腫瘤Mと同じ大きさである。また、本明細書では腫瘤Mは腫瘍であるものとする。
【0034】
次に、ステップS3では、プロセッサ7は、関心領域Rについて、
図4に示す第1の時間強度曲線(TIC)T1を作成する。第1の時間強度曲線T1は、関心領域R内の信号強度(輝度)の平均の時間変化である。
図4において、第1の軸(ここでは横軸)が時間を示し、第2の軸(ここでは縦軸)が信号強度を示している(後述の
図4以外の図についても同様)。第1の時間強度曲線TI1は、凹凸を有している。この凹凸が形成される要因について以下に説明する。
【0035】
被検体に注入された造影剤は、腫瘍に流入した後に、周囲の肝実質Pに流入する。従って、
図3に示すように、まず関心領域Rの内部の信号強度が、その周囲の肝実質Pの信号強度よりも大きくなる。その後、
図5に示すように、関心領域Rの内部の信号強度は、肝実質Pの信号強度よりも小さくなる。
【0036】
上述のように、造影画像は被検体が呼吸をしながら取得される。従って、呼吸に伴って超音波のスキャン面がずれる。これについて、
図6に基づいて説明する。
図6には、呼吸によってずれる前の第1のスキャン面SP1と、ずれた後の第2のスキャン面SP2が示されている。第1のスキャン面SP1の造影画像CIが表示されている状態で、なおかつ腫瘤Mの全体が造影剤で染まった状態で、関心領域Rが設定される。従って、
図3は第1のスキャン面SP1の造影画像CIを示している。
図6は、第1及び第2のスキャン面SP1、SP2と直交する平面図である。ここでは、腫瘤Mは球体であり、第1のスキャン面SP1は、球体である腫瘤Mの中心を通るものとする。
【0037】
超音波のスキャン面が、第1のスキャン面SP1から第2のスキャン面SP2に移動すると、第2のスキャン面SP2における腫瘤Mの幅D2は、第1のスキャン面SP1における腫瘤Mの幅D1よりも小さくなる。
図7は、第2のスキャン面SP2の造影画像CIを示し、腫瘤Mが周囲の肝実質Pよりも高輝度(信号強度が大)である状態を示す。第2のスキャン面SP2の造影画像CIにおける腫瘤Mは、第1のスキャン面SP1のそれよりも小さい。一方、第1のスキャン面SP1における造影画像CIが表示されている時に設定された関心領域R1は、スキャン面が移動してもそのままの大きさを維持する。従って、第2のスキャン面SP2の造影画像CIにおいて、関心領域Rよりも腫瘤Mが小さくなる。これは、関心領域Rに、肝実質Pが含まれることを意味するので、関心領域Rの平均強度は、第1のスキャン面SP1におけるそれよりも小さくなる。スキャン面のずれに伴って関心領域Rの平均強度が小さくなると、第1の時間強度曲線T1に凹部が形成される。
【0038】
また、
図8に示すように、造影画像CIにおいて関心領域Rに音響陰影Sが含まれる場合も、関心領域Rの平均強度が小さくなる。音響陰影は、例えば超音波プローブ2と体表との接触の悪さや、肺などの障壁によって発生しうる。
図8では、腫瘤Mが肝実質Pより高輝度である状態を示している。
【0039】
一方、
図5は、肝実質Pが腫瘤Mよりも高輝度である第1のスキャン面SP1の造影画像CIを示している。腫瘤Mと関心領域Rは同じ大きさであり、関心領域Rは肝実質Pを含んでいない。この状態からスキャン面がずれると、
図9に示す状態となる。
図9は、第2のスキャン面SP2の造影画像CIを示す。第2のスキャン面SP2の造影画像CIにおいては、腫瘤Mが小さくなり、関心領域Rは、腫瘤Mよりも高輝度である肝実質Pを含むので、関心領域Rの平均強度は、第1のスキャン面SP1におけるそれよりも大きくなる。このように、スキャン面のずれに伴って関心領域Rの平均強度が大きくなると、第1の時間強度曲線T1に凸部が形成される。
【0040】
ステップS3において第1の時間強度曲線T1が作成されると、ステップS4へ移行する。このステップS4では、プロセッサ7は、ステップS1においてメモリ9から読み出された複数のフレームの造影画像のデータのうち、少なくとも1つのフレームの造影画像のデータを選択する。ここで選択されるフレームの造影画像のデータは、適切な画像として定められた条件を満たす造影画像のデータである。
【0041】
適切な画像として定められた条件は、一例では断面が移動せず関心領域Rと腫瘤Mの大きさが同じであり、なおかつ造影画像CIにおいて関心領域Rに音響陰影Sが含まれていないことである。関心領域Rと腫瘤Mの大きさが同じであるか否か、関心領域Rに音響陰影が含まれていないか否かは、一例では、造影画像CIやこの造影画像CIと対応するフレームのBモード画像においてユーザーによって判断されてもよい。判断の助けとなるよう、Bモード画像にも関心領域Rが表示されていてもよい。
【0042】
プロセッサ7は、一例ではユーザインタフェース10が、フレームの選択を行なうユーザーの入力を受け付けると、上述のフレームの選択を行なう。例えば、ユーザインタフェース10は、ディスプレイ8に表示された複数フレームの造影画像CIの中から、適切な画像として定められた条件を満たすとユーザーが判断した適切な造影画像CIのフレームを選択する入力を受け付ける。
【0043】
次に、ステップS5では、プロセッサ7は、
図10に示すように、第1の時間強度曲線T1に対する第1の包絡線E1及び第2の包絡線E2を作成する。第1の包絡線E1は、第1の時間強度曲線T1における極大値及び極小値のうち、極大値により近い包絡線、言い換えれば第1の時間強度曲線T1の極大値側の包絡線である。第2の包絡線E2は、第1の時間強度曲線T1における極大値及び極小値のうち、極小値により近い包絡線、言い換えれば第1の時間強度曲線T1の極小値側の包絡線である。
【0044】
ステップS6では、プロセッサ7は、ステップS4において選択されたフレームの造影画像CIにおける関心領域Rの信号強度SIを特定する。この信号強度SIは、関心領域R内の信号強度(輝度)の平均である。この信号強度SIとして、
図11には、第1の時間強度曲線T1における3つの点Pt1、Pt2、Pt3の信号強度SI1、SI2、SI3が示されている。点Pt1~Pt3は、ステップS4において選択されたフレームに対応する。
【0045】
ステップS6では、さらにプロセッサ7は、ステップS4において選択されたフレームに対応する時間における第1の時間強度曲線T1上の信号強度の縦軸方向における位置を、第1の包絡線E1と第2の包絡線E2の間の距離Dに対する割合αで特定する。例えばプロセッサ7は、
図11に示された時間t1、t2、t3における信号強度SI1~SI3の位置を、第1の包絡線E1と第2の包絡線E2の間の距離Dに対する割合α1、α2、α3で特定する。
図12に基づいてもう少し詳しく説明する。
図12には第1の時間強度曲線T1における点Pt3(時間t3、信号強度SI3)が示されている。ここでは、割合α3の特定を例にして説明する。時間t3において、第1の包絡線E1と第2の包絡線E2の間の縦軸方向における距離Dは、第1の包絡線E1上の点Pmaxと第2の包絡線E2上の点Pminの間隔である。プロセッサ7は、時間t3における信号強度SI3の位置として、距離Dを基準とする点Pminからの割合α3を特定する。
【0046】
割合α3の特定についてより詳しく説明する。信号強度SI3、点Pmaxの信号強度SImax及び点Pminの信号強度SIminの関係は、α3を用いて下記(式1)のように表せる。
SI3=SImax×α3+SImin(1-α3) ・・・(式1)
ただし、0≦α3≦1である。
【0047】
プロセッサ7は、信号強度SI3、SImax、SIminの値を用いて(式1)からα3を算出する。プロセッサ7は、割合α1、α2についても同様にして算出する。
【0048】
次に、ステップS7では、プロセッサ7は、割合α1~α3に基づいて、
図13において破線で示す第2の時間強度曲線T2を作成する。第2の時間強度曲線T2は第1の包絡線E1と第2の包絡線E2の間を通る。より具体的には、第2の時間強度曲線T2は、選択されたフレームに対応する時間t1~t3において割合α1~α3(信号強度SI1~SI3)の位置を通る。なおかつ第2の時間強度曲線T2は、時間t1~t3以外の他の時間について、第1の包絡線E1と第2の包絡線E2の間において、割合α1~α3の位置から特定した位置を通る。具体的には、プロセッサ7は、時間t1~t3以外の他の時間について、第1の包絡線E1と第2の包絡線E2の間において、割合α1~α3を用いた補間及び補外により、第2の時間強度曲線T2が通る位置を特定する。
【0049】
次に、ステップS8では、プロセッサ7は、第1の時間強度曲線T1及び第2の時間強度曲線T2をディスプレイ8に表示する。プロセッサ7は、第2の時間強度曲線T2の概形を評価する公知の評価パラメータを算出してもよい。第2の時間強度曲線T2は、適切な画像として定められた条件を満たす造影画像CIにおける信号強度から、第1の包絡線E1と第2の包絡線E2の間の距離Dに対する割合αを算出し、この割合αを用いて作成されるので、より正確な時間強度曲線である。このため、第2の時間強度曲線T2を用いれば、誤差の少ない評価パラメータを得ることができる。これは、腫瘍の鑑別診断をより正確に行なうことを可能とする。
【0050】
プロセッサ7は、第2の時間強度曲線T1と第1の時間強度曲線T1との交点に対応するフレームの造影画像CIのデータからなるデータ群をメモリ9に記憶してもよい。プロセッサ7は、メモリ9からこのデータ群を読み出し、データ群に基づく造影画像CIの関心領域の第3の時間強度曲線(図示省略)を作成してもよい。
【0051】
次に、第1実施形態の変形例について説明する。先ず、第1変形例について説明する。第1変形例では、ステップS6において、プロセッサ7は、ステップS4において選択された1つのフレームに対応する時間における1つの割合αのみを算出してもよい。第1変形例では、ステップS4において、1つのフレームのみが選択されるようになっていてもよい。
【0052】
プロセッサ7は、算出されたこの1つの割合αを通るよう、ステップS7において第2の時間強度曲線T2を作成する。なおかつ、プロセッサ7は、算出された1つの割合αに対応する時間以外の時間について、第1の包絡線E1と第2の包絡線E2の間において割合αと同じ割合の位置を特定し、この位置を通るよう第2の時間強度曲線T2を作成する。
【0053】
次に、第2変形例について説明する。ステップS4において、プロセッサ7は、ユーザインタフェース10における入力を用いる代わりに、画像認識を用いて、適切な画像として定められた条件を満たす造影画像のフレームを選択してもよい。例えばプロセッサ7は、Bモード画像において適切な画像として定められた条件、すなわち関心領域Rと腫瘤Mの大きさが同じであり、関心領域Rに音響陰影が含まれていないフレームを画像認識によって選択する。画像認識には、機械学習の技術が用いられてもよい。このBモード画像のフレームの選択は、選択されるBモード画像のフレームと対応する造影画像のフレームを選択することを意味し、適切な画像として定められた条件を満たす造影画像のフレームを選択することを意味する。
【0054】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。
図14に示すシステム100は、超音波診断装置1とサーバ101を備える。超音波診断装置1及びサーバ101は、ネットワーク102を介して接続されている。
【0055】
超音波診断装置1は、第1実施形態と同様の構成であり、各構成要素についての詳細な説明を省略する。ただし、第2実施形態では、超音波診断装置1のプロセッサ7を、第1のプロセッサ7として説明する。超音波診断装置1の構成要素として、
図14では第1のプロセッサ7のみが図示されているが、第2実施形態における超音波診断装置1は、他にも
図1に示された構成要素を有している。
【0056】
サーバ101は、例えばワークステーションであってもよく、超音波診断装置1を含む複数の超音波診断装置を管理する管理センターに設置されていてもよい。サーバ101は、公知のサーバの構成要素を有し、第2のプロセッサ103、第2のディスプレイ104、第2のメモリ105及び第2のユーザインタフェース106を有している。
【0057】
次に、本例のシステム100における作用について説明する。システム100では、第1の時間強度曲線T1及び第2の時間強度曲線T2は、サーバ101において作成される。
【0058】
図15は、第1の時間強度曲線T1及び第2の時間強度曲線T2が作成される前の処理を示すフローチャートである。先ず、ステップS101において、超音波診断装置1が造影画像CIを取得する。すなわち、超音波プローブ2が被検体に対して超音波を送信し、第1のプロセッサ7がエコー信号に基づいて造影画像CIを作成する。本例においても、Bモード画像が作成されてもよい。
【0059】
ステップS102では、第1のプロセッサ7は、造影画像CIのデータをサーバ101へ送信する。造影画像CIのデータは、超音波診断装置1からネットワーク102を介してサーバ101へ送信される。超音波診断装置1からサーバ101へ入力された造影画像CIのデータは、第2のメモリ105に記憶される。例えば、超音波診断装置1からサーバ101へ送信される造影画像CIのデータは、画像データである。なお、超音波診断装置1からサーバ101へBモード画像のデータが送信され第2のメモリ105に記憶されてもよい。
【0060】
造影画像CIのデータがサーバ101へ送信された後、第1の時間強度曲線T1及び第2の時間強度曲線T2が作成される。第1の時間強度曲線T1及び第2の時間強度曲線T2は、第1実施形態と同様に、
図2に示すフローチャートに従って処理が行なわれる。ただし、処理の主体が第1実施形態と異なっており、第1の実施形態においてプロセッサ7が行なう処理を、第2のプロセッサ103が行なう。すなわち、先ずステップS1において第2のプロセッサ103が第2のメモリ105から造影画像のデータを読み出して第2のディスプレイ104に表示した後、ステップS2以降における処理が行なわれる。このステップS2以降では、第1実施形態においてプロセッサ7が行なっていた処理を、第2のプロセッサ103が行なう。また、第1実施形態においてユーザインタフェース10が受け付けていた入力を、第2のユーザインタフェース106が受け付ける。ステップS8では、第1の時間強度曲線T1及び第2の時間強度曲線T2は、第2のディスプレイ104に表示される。
【0061】
超音波診断装置1からサーバ101へ送信される造影画像CIのデータがローデータである場合、第2のプロセッサ103は、ローデータから造影画像CIの画像データを作成し、ステップS1~ステップS8の処理が行なわれる。
【0062】
第2実施形態においても、第2のプロセッサ103は、第2の時間強度曲線T1と第1の時間強度曲線T1との交点に対応するフレームの造影画像CIのデータからなるデータ群を、第2のメモリ105に記憶してもよい。また、第2のプロセッサ103が、第1実施形態と同様に、第2のメモリ105からデータ群を読み出して第3の時間強度曲線を作成してもよい。
【0063】
第2実施形態においても、第1実施形態の第1及び第2変形例と同様の処理が行なわれてもよい。
【0064】
本発明についてある特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を施してもよく、均等物に置換してもよい。加えて、本発明の範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、本発明が添付の特許請求の範囲内に属するすべての実施形態を含むことになることを意図している。
【0065】
例えば、第1及び第2の実施形態において説明した
図2のフローチャートは一例であり、各ステップの順番は
図2に図示されたものに限られるものではない。
【0066】
第1及び第2の実施形態は、造影画像CIにおけるターゲットに設定された関心領域Rについて作成される第1の時間強度曲線T1を補正して第2の時間強度曲線T2を作成する例について説明している。特に図示しないが、造影画像において、ターゲットに加えて肝実質にも関心領域が設定され、時間強度曲線が作成されるようになっていてもよい。
【0067】
また、上記実施形態は、
プロセッサが、
被検体に注入された造影剤によって反射された超音波の信号強度を示す複数フレームの造影画像における関心領域について、前記信号強度の時間変化を示す第1の時間強度曲線を作成し、
該第1の時間強度曲線における極大値側の第1の包絡線と、前記第1の時間強度曲線における極小値側の第2の包絡線を作成し、
前記複数フレームの中から選択された少なくとも1つのフレームの造影画像であって、適切な画像として定められた条件を満たす造影画像における前記関心領域の前記信号強度を特定し、
前記選択されたフレームに対応する時間における前記第1の時間強度曲線上の前記信号強度の位置を、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間の距離に対する割合で特定し、
前記信号強度の時間変化を示す第2の時間変化曲線であって、前記選択されたフレームに対応する時間において前記割合の位置を通り、なおかつ前記選択されたフレームに対応する時間以外の他の時間について、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間において、前記割合の位置から特定した位置を通る第2の時間強度曲線を作成する、ことを含む装置の制御方法としてもよい。
【0068】
さらに、上記実施形態は、
超音波診断装置と、該超音波診断装置とネットワークを介して接続されたサーバとを有するシステムの制御方法であって、
前記超音波診断装置は、
造影剤が注入された被検体に対して超音波を送信し、該超音波のエコーを受信する超音波プローブと、
前記造影剤によって反射された超音波の信号強度を示す造影画像を前記超音波のエコー信号に基づいて作成し、前記造影画像のデータを前記ネットワークを介して前記サーバへ出力する第1のプロセッサと、を備え、
前記サーバは、第2のプロセッサを備えており、
前記方法は、前記第2のプロセッサの制御方法であって、
複数フレームの前記造影画像における関心領域について、前記信号強度の時間変化を示す第1の時間強度曲線を作成し、
該第1の時間強度曲線における極大値側の第1の包絡線と、前記第1の時間強度曲線における極小値側の第2の包絡線を作成し、
前記複数フレームの中から選択された少なくとも1つのフレームの造影画像であって、適切な画像として定められた条件を満たす造影画像における前記関心領域の前記信号強度を特定し、
前記選択されたフレームに対応する時間における前記第1の時間強度曲線上の前記信号強度の位置を、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間の距離に対する割合で特定し、
前記信号強度の時間変化を示す第2の時間変化曲線であって、前記選択されたフレームに対応する時間において前記割合の位置を通り、なおかつ前記選択されたフレームに対応する時間以外の他の時間について、前記第1の包絡線と前記第2の包絡線の間において、前記割合の位置から特定した位置を通る第2の時間強度曲線を作成する、ことを含むシステムの制御方法としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
7 プロセッサ、第1のプロセッサ
8 ディスプレイ
9 メモリ
10 ユーザインタフェース
100 システム
101 サーバ
102 ネットワーク
103 第2のプロセッサ
104 第2のディスプレイ
105 第2のメモリ
106 第2のユーザインタフェース